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2014 年の原油価格見通し

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2014 年の原油価格見通し
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2013 年 12 月 25 日
2014 年の原油価格見通し
市場調査部シニアエコノミスト
世界経済が回復する中でも上値の重い展開
03-3591-1197
井上
淳
[email protected]
○ 今秋以降の原油相場は、エジプトの情勢悪化やシリアへの軍事介入懸念による原油価格の押し上げ
が剥落した後も高止まりが続いている
○ 高止まりの背景には、①中東の全般的な不安定さ、②金融緩和の影響、③足元の需給均衡、④2014
年の景気回復期待などがあるが、中東リスクや金融緩和による下支え効果は今後弱まる見込み
○ 2014年はファンダメンタルズの影響が相対的に増すと見られ、原油需要が緩慢な増加にとどまるこ
とや需給の逼迫しにくい状況が予想されることなどから、原油価格は上値の重い展開になる見通し
1.はじめに
9月中旬から値を下げる展開となっていた原油価格が、足元で再び反発している(図表 1)。2011
年以降、世界経済の成長テンポが減速する中でも原油価格は高値を維持してきただけに、世界経済の
回復が予想される2014年は、再び原油価格に対する押し上げ圧力が高まるのではないかと懸念される
ところだ。しかし、みずほ総合研究所では、2014年の原油相場は引き続き高値圏での推移ではあるも
のの上値の重い展開となり、WTIは年平均で96ドル(2013年見込み=98ドル)、ブレントも103ドル
程度(2013年見込み=109ドル)になると予想している。本稿では、夏場以降の値動きから原油市場を
取り巻く状況を考察し、2014年の原油価格について考える。
図表 1
原油価格の推移
(ドル/バレル)
150
140
露・シリアの化学兵器
について国際管理を提案
(13/9/9)
米イラン制裁強化
(在米資産凍結)(12/2/5)
130
シリアで化学兵器を使用し
たとみられる事件(13/8/21)
EUイラン産原油
輸入禁止(12/7/1)
120
シリアで化学兵器施設
の破壊開始(13/10/6)
イラン核問題
暫定合意
(13/11/24)
エジプトで大統領の辞任を求
めるデモ(13/6/28)
110
ブレント
100
WTI
90
80
70
11/10
12/1
12/4
12/7
12/10
13/1
(注)直近値は、2013/12/24終値。
(資料)Bloomberg
1
13/4
13/7
13/10
(年/月)
2.シリアへの軍事介入が回避された後も高値圏にとどまる原油価格
( 1 ) シリア・エジプト・プレミアムの剥落
6月末にエジプトで大統領の辞任を要求するデモが発生し、次いで内戦の続くシリアへの軍事介入が
取り沙汰されたことから、原油価格は夏場に高騰した。しかし、9月上旬をピークにシリア問題を巡る
緊張が和らぐと、その後は値を下げる展開となった(前頁図表 1)。9月下旬から10月中旬にかけて
下落が一服する局面も見られたものの、シリアで化学兵器施設の破壊が始まると再び下落基調を強め、
110.5ドル(9月6日終値)まで値を上げていたWTIも11月5日には93.4ドル(終値)まで下落してい
る。エジプトのデモ(6月28日)を前にした5~6月の平均が95ドル程度であったことを考えれば、今夏
のエジプトやシリアの情勢を受けた地政学プレミアム(以降、「シリア・エジプト・プレミアム」と
表記)も、この頃までに概ね剥落したと見ることができよう。
ブレント価格も同様に、一時は116.6ドル(8月28日終値)まで上昇していたが、11月7日には、比
較的落ち着いた値動き見せていた5月初めからエジプトでデモが発生する前までの平均価格(103.3ド
ル)と同程度の103.5ドルに値を下げており、シリア・エジプト・プレミアムは11月上旬の時点でほ
ぼ解消したと判断できる。
( 2 ) その後も高止まりが続く原油価格
しかし、ブレント価格はその後値を戻す展開となり、足元では再び110ドルを上回る水準で推移す
るようになっている(12月24日終値=111.9ドル、前頁図表 1)。WTI価格についても、エジプト
でデモが発生する前の水準に値を戻すと下落に歯止めがかかり、足元では再び100ドルを窺う水準ま
で反発している(12月24日終値=99.2ドル、前頁図表 1)。現在の原油価格は、ブレントが原油価格
の大きく切り上がったアラブの春以降の平均価格と概ね同水準であり、WTIについてはそれを上回
る価格で推移するなど、シリア・エジプト・プレミアムが剥落したと考えられる11月上旬以降も、高
止まりが続いている(図表 2)。
図表 2
(2010/1/1=100)
180
アラブの春以降の原油高
2011年初~エジプトのデモ(2013/6/28)発生前までの平均
160
ブレント原油
140
WTI原油
120
100
80
60
10
11
12
13
(注)直近値は2013/12/24終値。
(資料)Bloomberg
2
(年)
3.高止まりの背景にある4つの要因
原油価格が高止まりしている背景には、①中東・北アフリカ地域の不安定化や、②世界的な金融緩
和といった、2011年以降、一貫して原油価格の押し上げに寄与してきたと考えられる要因がある。同
じコモディティーでも、銅やアルミニウムの市況が、世界経済の減速に沿って徐々に値を下げてきた
ことを考えれば、そうした要因が原油の高止まりに大きく寄与してきたことが強く示唆されよう(図
表 3、図表 4)。
さらに足元では、③需給バランスの均衡も高止まりの一因になっていると考えられるほか、④2014
年の世界経済の回復が意識される時期になってきたこともあって、原油価格が高止まりしやすい状況
を生んでいると見られる(図表 5)。
2014年の原油相場は、2011年以降の高値をもたらしてきた中東・北アフリカの情勢悪化と金融緩和
の影響、ならびに需給環境や世界経済の景気動向といった4つの要因が鍵を握ると考えられる。
図表 3
世界経済の実質経済成長率
図表 4
原油相場と銅・アルミ相場との比較
(2010/1/1=100)
180
(%)
6
5
160
4
140
ブレント原油
3
WTI原油
120
2
100
1
0
LME 銅 3カ月物
80
▲1
05
06
07
08
09
10
11
12
60
13
(注)2013年はIMFによる成長率の見込み値。
(資料)IMF
LME アルミニウム 3カ月物
10
11
12
(年)
(注)直近値は2013/12/24終値。
(資料)Bloomberg
図表 5
高止まりを生んでいる4つ要因
原油価格
シリア問題の
一応の終息
①中東地域
の不安定化
原油価格
②金融緩和
の影響
③足元の
需給均衡
2013年9~12月
(資料)みずほ総合研究所
3
④世界経済の
回復期待
13
(年)
4.中東プレミアムと金融緩和による下支え効果の逓減
( 1 ) 不安定な中東情勢によって原油価格は依然長期間にわたって下落しにくい状況
すでに述べたように、今夏の原油高を招いたシリアへの軍事介入問題は、軍事介入の回避によって
一応の終息を見たと考えて良いだろう。シリアが化学兵器を隠匿し、それが今後明らかになるといっ
た事態にでもならない限りは、軍事介入が再び取り沙汰される可能性は低いと考えられる。
しかし、シリアの内戦自体は現在も続いており、エジプトではデモが続くなどの政情不安や治安回
復の遅れが伝えられている。シリアの内戦ではしばしば宗派対立の側面が指摘されることからも分か
るように、周辺国に飛び火するリスクを依然内包している。また、エジプトについても、中東と欧州
をつなぐスエズ運河やスメド・パイプラインを抱える輸送拠点であるだけに、ひとたび情勢が悪化す
れば再び供給途絶リスクが高まりかねない。エジプト情勢については、混乱が終息するまでは引き続
き潜在的な地政学リスクを意識せざるを得ない状況が続くことになろう。
その他にも、そうした潜在的なリスクに加え、現時点ですでに原油供給の減少が見られる地域の混
乱も長期化する可能性が高い。例えば、リビアでは、政情不安や断続的なストライキによって原油生
産が大幅に減少したままの状態が続いており、シーア派勢力の台頭によって政情が不安定化したイラ
クでも国内で頻発するテロの影響から原油供給の一部に途絶がみられる。
2011年から2013年にかけて原油相場が長期間にわたって軟調地合いになることを阻んできた中東
の不安定化については今後も留意が必要であり、そうしたリスクに対する懸念が完全に払拭できない
中では、引き続き原油価格が下落基調に転じにくいとの認識を持つ必要があるだろう。
( 2 ) ただし、イランの態度軟化は原油価格の押し下げ要因に
中東地域の安定化にはかなりの時間を要することを覚悟しなければならない状況にあって、光明と
も言えるのがイランを巡る問題での進展だ。イランは、核開発を巡って欧米との対立を深めて来たが、
安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国との協議で、11月24日に「第1段階の措置」と呼ばれる暫
定合意に達した。
暫定合意の履行期間である今後6カ月間は、イランに与えられた最終合意に向けての「試用期間」
と位置づけられる。これまでの長年にわたる対立を考えればイランに対する警戒感がすぐに解けるこ
とはないだろうが、原油相場への影響という文脈に限れば、少なくとも「試用期間」の続く2014年半
ばまでは、イラン問題で再び緊張が高まるような事態は避けられると考えて良いだろう。
そしてなんと言っても、イランがウラン濃縮に対する制限を受け入れたことにより、リビアへの空
爆(2011年)、イランに対する経済制裁(2012年)、そしてシリアへの軍事介入懸念(2013年)と原
油価格の急騰を招いた要因の中で唯一当時の状況のまま膠着していたイラン問題が解決に向けて動
き出した影響は大きい。イランを除く地域では引き続き不安定な情勢が続くため、原油価格の大幅な
下押しは当面望めないとしても、「試用期間」の経過とともにイラン要因は徐々に剥落し、嵩上げさ
れた原油価格を下押しする要因となるであろう。
4
( 3 ) QE3の縮小も下支え効果が逓減する一因に
中東の不安定化と並んで原油価格の高止まり要因となっていたと見られる金融面からの相場の下
支えについても、今後は変化する可能性が出てきている。12月の米FOMC(12月17~18日)で2014年
1月からQE3を縮小することが決定され、これまで極めて緩和的な状態が続いてきた金融環境も次
第に変化していくと考えられるためだ。
いわゆる投機筋の先物ポジション(WTI)は、米国の長期金利が名目成長率を下回り始めた2003
年頃から急拡大し始め、そうした緩和的な金融環境が一旦終了した2007年からは先物ポジションの拡
大にも歯止めがかかっている(図表 6)。さらに、リーマンショック後に米国で金融緩和が開始され
た時期と、投機筋が原油先物(WTI)のロングポジションを再び拡大させ始めた時期も、多少の前
後はあるにせよ概ね一致している。そして、2010年になって米国の長期金利が再び名目成長率を下回
るようになると、投機筋がロングポジションを拡大させると同時にショートポジションを減らすとい
う傾向が顕著となり、現在でもそうした局面が続いている。
このように2000年代以降の原油相場は、先進国の金融環境、なかでも特に米国の金融環境ないしは
金融緩和の影響を強く受けてきたことが窺える。そのため、今後、米国がQE3を縮小していくこと
によって、投機筋の原油投機に対する思惑も変化していく可能性が高く、高値維持の構造を金融面か
ら下支えしてきた量的緩和の要因も徐々に弱まっていくと見られる。
ただし、ここで慎重に考えなければならないのは、1月から始まるQE3の縮小は、たとえそれが
出口戦略へ向けての第一歩であったとしても、緩和ペースの鈍化であって引き締めではないという
図表 6
米国の金融環境と投機筋の先物ポジション(WTI)
(%)
15
140
120
米国の長期金利(左目盛)
10
米国の名目成長率(左目盛)
100
5
80
0
60
(万枚)
金利-成長率ギャップ(左目盛)
40
投機筋のロング・ポジション(右目盛)
▲5
投機筋のショート・ポジション(右目盛)
20
▲ 10
0
投機筋のネットロング・ポジション(右目盛)
▲ 15
▲ 20
83
85
87
89
91
93
95
99
97
(資料)Bloomberg
5
01
03
05
07
09
11
13
(年)
ことだ。また、当面は低金利を維持するというフォワードガイダンスにも留意が必要だろう。つまり、
足元では徐々に名目成長率と長期金利の差が縮まってきているという意味において、金融環境もこれ
までの極めて緩和的だった状況に変化が見られるものの、米国で景気回復と低金利の維持が並走する
状況では、金融環境が景気動向との対比で緩和的であり続けるということを予想させる。したがって、
QE3の縮小が始まっても、金融面から原油相場を押し上げる圧力自体がすぐに全てなくなってしま
うわけではなく、原油価格の値崩れを誘発するようなことにはなりないくいと考えることもできる。
原油価格の高止まりをもたらしてきた地政学リスクと金融緩和の影響については、これまでのよう
な下支え効果や時に高騰を招いたリスクの高まりは収まる可能性が高いと考えられるものの、それは
原油相場を下落基調に転じさせるようなものではなく、原油需要や需給バランスの動向から乖離した
高値が維持できなくなるというものでしかない。引き続き両要因とも下値の堅さ、すなわち下落に対
する抵抗力としての作用は維持される可能性があると考えておくべきだろう。
しかし、たとえそうであったとしても、これまでファンダメンタルズから乖離した高値をもたらし
てきた不安定な中東情勢や緩和的な金融環境といった要因が、その度合いを弱めていけば、原油価格
の押し上げ圧力も徐々に逓減していくことは間違いないと見られる。
5.2014 年は需給要因の影響が相対的に高まるものの、原油価格の押し上げ圧力は緩慢
( 1 ) 乖離縮小の調整局面へ
すでに述べたように、2014年の原油相場は引き続き地政学リスクや緩和的な金融環境に下値を支え
られる構造が続くものの、それはこれまでほどの強い下支え構造ではなくなると見られることから、
ファンダメンタルズの影響が相対的に高まると考えられる。そして、2014年は、米国経済ならびに世
界経済が再び成長ペースを加速させる可能性が高いと見られることから、いずれは需要面から原油価
格に押し上げ圧力が加わると考えるのが自然だ。
ただ、これまで世界経済の減速に沿って市場が軟調に推移してきた銅やアルミニウムと異なり、高
止まりしてきた原油相場については、景気拡大のテンポアップがそのまま即原油価格の上昇には繋が
らず、一旦は調整が入る可能性が高いと見ている。そして、地政学や金融環境の面から下値の堅い状
況が続く可能性があることを考えれば、それは原油価格が景気に見合った状況になるまで価格の上昇
が抑制されるといった形の調整になると予想される。
( 2 ) 世界経済の回復下でも原油の需給は逼迫せず
そして、2014年の原油相場は、ファンダメンタルズとの乖離を生んできた押上げ圧力の調整が進ん
だ後も、引き続き上値の重い展開が予想される。よりファンダメンタルズに即した相場になるとはい
え、そのファンダメンタルズがそれほど強含んだものにならないと見られるためだ。世界経済の回復
によって拡大が見込まれる原油需要も、2014年の中国の経済成長率が7%台前半になると予想されるこ
6
となどから力強さに欠けるものとなろう。そして、原油の需給に逼迫感が生じにくいことが、そうし
た原油価格の押上げ圧力をさらに弱めると予想される。
原油の需給バランスは、足元(2013年7~9月期)でほぼ均衡しており(図表 7)、それが足元で原
油価格が高止まりしている一因にもなっていると見られる。しかし、今後を展望する上では、そうし
た足元の需給均衡が需要の盛り上がりによって生じているだけではなく、OPECの供給抑制の影響も大
きいことが重要なポイントとなってくる(図表 8)。つまり、OPECの原油生産が今後も現状程度の水
準に抑えられたとしても、非OPECの原油生産がこのまま増加し続ければ、再び原油の需給バランスは
緩和的な状態になる可能性が高いと考えられるのである。OPECは、いずれ減産を余儀なくされると予
想されるが、それでも2014年は、原油需給が大きく逼迫する状況にならないと見られ、予想される超
過需要も2012~13年に積み上がった原油在庫に比べればわずかなものになるであろう(図表 9)。む
しろ、OPECによる減産の主因となっているリビアの原油生産(図表 10)が回復すれば、2014年も原
油は供給超過が続く可能性すらある。そして、イラン問題が進展してイランの原油輸出が2014年後半
から僅かでも再開されるようであれば、超過供給の可能性は一段と高まるだろう。
図表 7
原油の需給バランス
(100万バレル/日)
図表 8
(100万バレル/日)
OECDの在庫変動(左目盛)
非OECDの在庫変動( 〃 )
世界全体の在庫変動( 〃 )
原油供給(右目盛)
原油需要( 〃 )
6
5
4
4.0
94
3.5
2.5
90
2
88
1.5
1
86
1.0
0
84
0.5
▲1
82
80
10
11
12
13
2.0
0.0
▲ 1.0
(年)
11
93
12
13
(年)
(資料)IEA
図表 9
95
在庫減
▲ 0.5
(資料)IEA
(100万バレル/日)
在庫増
3.0
3
▲2
非OPEC(原油供給)
OPEC ( 〃 )
原油供給
原油需要
(2010/Q4の原油需要対比、
100万バレル/日)
96
92
原油需給とOPECの減産
原油の需給予測
超過需要 (右目盛)
需要 (左目盛)
供給 ( 〃 )
図表 10
(対需要比、%)
予測
2.0
(2012/8との比較、
100万バレル/日)
0.5
0.0
89
1.0
▲ 0.5
87
0.5
▲ 0.5
79
▲ 1.0
77
イラン
サウジアラビア
31.7
31.4
0.0
81
ナイジェリア
イラク
その他
32.0
▲ 1.0
85
83
リビア
OPEC全体(数値は生産量)
1.5
91
OPECの原油生産
▲ 1.5
30.8
30.8
30.5 30.5
▲ 2.0
30.9
30.9
30.9 31.0
30.6
30.6
30.3
75
▲ 1.5
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年)
30.0
▲ 2.5
12/9
(注)予測は、みずほ総合研究所
(資料)IEA
12/11
13/1
13/3
13/5
13/7
13/9
13/11
(年/月)
(資料)OPEC
7
6.高値圏での推移ながらも上値の重い展開が予想される 2014 年の原油相場
ここまでで見てきたように、中東情勢の全般的な情勢不安は引き続き原油相場の下支え要因になる
と見られるものの、2014年半ばまではイランやシリアに起因した原油価格の高騰が発生するリスクは
低く、むしろイランの態度軟化が生む原油相場の下押し圧力によって全般的な中東不安から来る原油
価格押し上げ圧力は減殺されるものと予想している。
さらに、QE3の縮小に伴いこれまで原油価格をファンダメンタルズから乖離させてきた金融要因
からの押し上げ圧力も徐々に弱まっていく可能性が高いだろう。その上、世界経済の回復に伴う原油
需要の増加が緩やかなものになると見られることや、非OPECの増産を背景に原油市場は当面需給が逼
迫する環境にないことなども、原油価格の上昇圧力を弱める要因となろう。そのため、世界経済が回
復していく中でも原油価格が上昇基調を強める展開は見込まれず、年前半に調整が入る可能性が高い
こともあって、原油価格は上値の重い展開になると予測される。
その結果、徐々に値を下げる相場になることが予想されるブレントは、2014年に年平均で103ドルに
落ち着くと予測している(図表 11)。WTIについては、米国で中西部からメキシコ湾へのパイプ
ライン開通に伴い原油在庫の余剰感が緩和する可能性があることから、価格の押し下げ圧力がブレン
トほどには高まらないと見られるが、それでも価格は横這い圏での値動きに終始し、2014年は年平均
で96ドル程度の相場になる見通しである(図表 11)。
図表 11
2013
見込み
98
2014
予測
96
110.9
111.7
109
ブレント
(資料)Bloomberg。予測は、みずほ総合研究所
103
WTI
2011
95.1
2012
94.2
原油価格の見通し
2013/Q1
94.4
112.6
Q2
94.2
Q3
105.8
103.4
109.7
Q4
2014/Q1
見込み
予測
97
96
109
105
Q2
予測
96
Q3
予測
96
103
102
(ドル/バレル)
Q4
2015/Q1
予測
予測
96
96
101
101
(ドル/バレル)
120
115
原油の供給要因
110
押し下げ圧力
イランの態度軟化
105
ブレント
100
WTI
95
原油の需要要因
シリア問題
90
全般的な中東不安
金融緩和要因
押し上げ圧力
・下支え効果
85
80
Q1
Q2
Q3
見込み
予測
予測
予測
予測
予測
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
2013
2014
15
(資料)Bloomberg。予測は、みずほ総合研究所
●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに
基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
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