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空気マグネシウム電池の製作と活用

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空気マグネシウム電池の製作と活用
中学第一分野
空気マグネシウム電池の製作と活用
群馬県新里村立新里中学校
小 林 明 郎*
目 的
電池を学習する際、ボルタの電池やレモン電池をつ
くることがあるが、大きな電気量を取り出せないこと
から、実用化されている電池との隔たりが大きかった。
そこで、身近な物質を使って高出力で、一人一人の
生徒に組み立てやすい空気マグネシウム電池(図 1)
を開発した。さらに、この電池を使って、中学校の授
業で実施できる実験を検討し、実践した。
図 2 電池の反応式
また、次に示す副反応が起こっていると考えられる。
Mg + 2H2O → Mg2++ 2OH−+ H2 ↑
電池の構成は
(+)
(−)Mg │ NaCl 水溶液│ O2(C)
で、構造を図 3 に示す。
図 1 空気マグネシウム電池
概 要
今回開発した空気マグネシウム電池は、空気中の酸
素を正極活物質(電子を受け取る物質)、マグネシウ
ムを負極活物質(電子を出す物質)、食塩水を電解液
とするもので、この電池の反応式と両極の標準電極電
位および標準電極電位から求めた起電力を図 2 に示
す。
*
28
図 3 電池の構造
こばやし あきお 群馬県新里村立新里中学校 教諭 〒 376-0125 群馬県勢多郡新里村大字山上 827
@(0277)74-8549 E-mail [email protected]
電池を開発するにあたり、一人一人の生徒が組み立
てられるよう、安全で身近でかつ安価な材料を探した。
そして、授業において生徒が短時間で組み立てられる
ように構造を簡単にした。
電池の特性を調べるために、この電池に、1.5V 用、
2.5V 用の豆電球や、マブチ 280 モーター、ミニ四駆用
モーターを負荷として、電圧と電流の変化を測定した。
電圧の変化を図 4 に、電流の変化を図 5 に示す。この
グラフから放電特性が安定していることや実用電池に
近い電流特性をもっているといえる。
図6
標準電極電位と起電力
さらに、この空気マグネシウム電池を使って、中学
校の授業で実施可能な次のような実験を検討した。
ア 材料を変えて電圧や電流の変化を調べる
イ 両極の化学変化を確かめる
ウ 電気量とマグネシウムの減少量との関係を調べる
エ 食塩水の濃度と電圧や電流の関係を調べる
(水との反応で電流が流れるため、酸素を使ってい
ることを確かめる方法は見つからなかった。
)
図 4 電圧特性
教材・教具の製作方法
ø.材料の準備
マグネシウム板(40 × 90mm)、60 メッシュの銅網
(40 × 85mm、5 × 80mm)、活性炭(粒状活性炭をφ
1mm 程に砕く)約 3g、コーヒーフィルター(50 ×
100mm、20 × 100mm)
、フィルムケース、食塩、水
マグネシウム:大阪冨士工業株式会社 @ 06-6498-0130
銅網:泰豊トレーディング株式会社
@ 03-5210-3171
¿.組み立て方
図 5 電流特性
また、カドミウム標準電池を使い、メートルブリッ
ジ法で起電力を測定した。つないだ瞬間は約 1.91V で、
しだいに下り、約 1.55V になった。起電力が変化して
いたことから、空気マグネシウム電池では、同時にい
くつかの反応が起こっていることが分かった。そこで、
図 6 に示すように、水とマグネシウムの反応も電池を
構成していると考えた。
図 7 の a のようにコーヒーフィルターの上に、活性
炭を敷きつめ、銅網を重ね、b のようにコーヒーフィ
ルターの三方を折り返す。次に、c のようにマグネシ
ウムの上にフィルター片を 1cm 出るように置き(食塩
水を吸い上げる部分)、その上に正極集電体を重ね、c
の矢印の部分をしっかり持って、d のように一重に丸
める。この時、マグネシウムと銅網が触れるとショー
トするため、フィルターが銅網を確実に覆っているこ
とを確認する。丸めた後、細長い銅網をマグネシウム
板の端にひっかけ、e のようにフィルムケースに入れ
る。そして、少量の食塩水を注ぐと電流を取り出せる。
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実践効果
生徒は自分で組み立てた空気マグネシウム電池で、
豆電球や模型用モーターを作動できたため、実用電池
と結びつき、興味・関心が高まったと考える。また、
ほとんどの生徒が自分の課題(「金属や水溶液などの
物質を変えた時、電流や電圧が変化するか」など)を
もつことができた。このことから、生徒は電池の基本
的な原理を理解できたと考える。
生徒の学習活動の様子や生徒の感想「電流が流れる
組み合わせはたくさんあるんだなと思った。」「将来の
夢、巨大電池を作って自家発電をする。」などから、
生徒は自分の考えを生かして探究的に活動し、電池の
基本的な原理の理解を深めたと考える。
生徒はこの空気マグネシウム電池を使った探究的な
活動をとおして、目的をもって物質の特性を調べるお
もしろさを感じ化学変化への興味が増したと考える。
また、ブラックボックスと考えていた電池を自分の創
意工夫を加えていけるものであると感じたと考える。
その他補遺事項
本研究は平成 10 年度群馬県総合教育センター長期
研修の成果である。産業科学課辻村好一課長、大谷龍
二指導主事をはじめ多くの先生方と、前任校・大胡町
立大胡中学校の方々に、心より厚くお礼申し上げます。
図 7 電池の組み立て方
学習指導方法
電池の基本的な原理について理解を深め、学習で扱
う電池が実用電池と結びつくことを目指し、「化学変
化とイオン」の発展として探究的な学習を行った。
第1時
既習のボルタ電池をもとに、電池の基本的な原理
(電子を出す物質と、電子を受け取る物質を組み合わ
せることによって、電流を取り出す)を考えた。
その後、空気マグネシウム電池で動く模型や市販の
空気亜鉛電池をみた。そして、生徒一人一人が電池を
組み立てて、空気マグネシウム電池も化学電池である
ことを、観察や実験を通して確かめた。
第2時
電池の化学変化(化学変化は条件を変えると反応の
激しさが変化する)に視点を当てて、自分の課題を見
つけ観察や実験の計画を立てた。
第3時
課題が似ている生徒で班を作り、分担して課題を追
究し、結果を処理した。
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