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環境システム・リサイクル科学研究部門

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環境システム・リサイクル科学研究部門
●環境システム・リサイクル科学研究部門
難処理人工物:
そのリサイクルシステムの最適化
教授
いとう
ひであき
伊 藤秀章
主な研究と特徴
資源循環型社会の構築が唱えられる中で,企業の生産活動や
一般の消費活動から排出され,無害化処理や再資源化処理が極
めて困難な難処理人工物は,適正な処理のもとに管理・保管・
再利用されることが強く望まれている.その実現のためには,
難処理人工物の特定とその最適処理技術の開発が必須である.
当研究室では廃棄物による各種環境リスクの指標である処理優
先度指数 (FTP) と再資源化・無害化処理の困難度の指標である
難処理指数 (FUW) の二つの指数の関数としてレスキュー・ナン
バー (RN) を定義して,難処理人工物の処理方法を最適化する
ための定量的評価システムを開発している.特にこれを無機系
固体(セラミック系)廃棄物に適用し,その再資源化・無害化
処理技術の開発を進めている.
(1) セラミックス系廃棄物のリスク評価と最適処理法の開発
大量に使用される構造材料セラミックスは,最終処分場の
枯渇と有害金属による土壌・水質汚染が危惧されている.また,
電子・磁性材料,誘電体・圧電体材料,光学材料等の高機能セ
ラミックスは,重金属,有害金属を含むために FTP が高い.一
方,セラミックスは,化学的安定性・機械的強度に優れ,その
分解・回収処理には多大なエネルギーが必要であり,FUW が
高い.これらの難処理セラミックス系廃棄物による環境リスク
を評価し,優先すべき研究対象物質を明確にするとともに,有
効な再資源化・無害化処理のための技術開発をおこなっている.
(2) 水熱処理によるセラミック廃棄物の分離・回収と再資源化
低エネルギーでセラミックスを再資源化する手法として,
熱水の高い反応性に注目し,そのリサイクルシステムを開発し
ている.例えば,構造材料では超硬合金スクラップの水熱処理
による WC または W 及び Co の回収,部分安定化ジルコニア
(TZP) 廃材の高温熱水中での「低温劣化現象」を利用したジル
コニア (m-ZrO2) 粉末の回収,酸性溶媒中の水熱処理による窒化
ケイ素焼結体廃材からの高純度β -Si3N4 粉末の回収が可能であ
る.また,機能性材料では,Nd-Fe-B 系焼結磁石からの Nd や
B の水熱鉱化法による回収処理をおこなっている.
(3) メカノケミカル処理によるセラミックス廃材からの有害金
属の抽出と再利用
低環境負荷プロセスである酸性溶媒中の湿式ボールミル法
により,圧電体(PZT または PLZT)廃材からの Pb の分別回収
が可能である.また,キレート剤を用いたボールミル処理によ
り鉛ガラスからの Pb の回収実験をおこなっている.
(4) 無機及び有機系廃棄物から合成した多孔質バルク体の環境
浄化材への有効応用
無機系産業廃棄物と有機系産業廃棄物を原料に用い,これ
らを粘土鉱物とともに混練・成形・焼成することにより,吸着
機能を有する多孔質バルク体を合成することができる.また,
大量に廃棄される石炭飛灰や焼却飛灰の水熱処理によりゼオラ
イトを合成し,その重金属や有機物質に対する吸着特性を調べ
ている.このような多孔質吸着体は,安価な汚水・汚染土壌の
浄化材料へのカスケード・リサイクルが期待できる.
(5) マイクロ波プラズマ処理による焼却飛灰の無害化
ダイオキシンなどの有害有機化合物が濃縮された焼却飛灰
等をマイクロ波プラズマ照射下で処理することにより,低出力,
短時間で完全無害化を達成している.
今後の展望
難処理人工物に対するグローバルな視野と適正な処理・管理
のためのメソドロジーを確立するために,融合研究グループと
協力して,レスキュー・ナンバー(RN)による難処理人工物の
最適処理評価システムの開発を進めたい.そのために,無機系
固体廃棄物に関する事例研究を推進するとともに,本評価シス
テムの基本的コンセプトに基づいたデータベースの早期構築を
目指している.将来においては静脈系産業に対する RN による
評価システムと動脈系産業に対する LCA 評価システムの運用に
より,
物資の流れ(フロー)と蓄積(ストック)を制御した物質・
エネルギー循環型社会の設計に寄与したいと考えている.
経歴
1967 年名古屋工業大学工業化学科卒業,69 年名古屋大学大学院工学研究科
修士課程修了,72 年同博士課程修了,同年工学博士,79 年名古屋大学工学
部助手,81 ∼ 82 年米国マサチューセッツ工科大学客員研究員,84 年名古屋
大学工学部講師,89 年同助教授,95 年同大学理工科学総合研究センター助
教授 , 99 年同難処理人工物研究センター教授 ,04 同エコトピア科学研究機構
教授・副機構長
所属学会
日本化学会,廃棄物学会 , 日本セラミックス協会,日本高圧力学会,粉体粉
末冶金協会,表面技術協会,日本材料学会,電気化学会,American Ceramic
Society,Electrochemical Society
主要論文・著書
(1)
セラミックス廃材からの有価及び有害金属の資源回収,廃棄物学会誌 ,
15 [4] 168-174 (2004).
(2)
Recycling of WC-Co Cermet by Hydrothermal Treatment in Acidic Aqueous
Solutions, J. Ceram. Soc. Japan, Supplement, 112 [5] S1378-S1392 (2004).
(3)
Preparation of Superhard Ceramic Materials and Evaluation of Their Mechanical
Properties, (Invited Paper) J. Ceram. Soc. Japan, 112 [3] 121-129 (2004).
(4)
Recovery of Lead in Lead Zirconate Titanate Ceramics by Wet Ball Mill with Acidic
Solution, J. Ceram. Soc. Japan, 111 [11] 806-810 (2003).
(5)
Assessment of Environmental Risk and Waste Treatment Technology (Invited
Lecture), in Proc. 1st Intern. Conf. Waste Management (Cadiz, Spain)・WIT Press,
Southampton, UK, 2002), pp. 1-12.
(7) 無機系及び有機系固体産業廃棄物の同時焼成処理により合成した多孔
性吸着材料 , 廃棄物学会論文誌 ,13[4]209-251(2002)
32
●環境システム・リサイクル科学研究部門
現代の錬金術=
廃棄物の安全で
安心な再利用
主な研究と特徴
資源の有限性、自然の浄化能力の有限性が認識され、廃棄物
ゼロをめざすことが緊急課題となっています.廃棄物を最少化
すべく、製品の設計および生産段階から、材料や製品のリサイ
クル・リユース性を考慮に入れて、製品のライフサイクルを最
適化した新しい生産・消費システム(インバース・マニュファ
クチャリング・システム)の概念が提案されてはいるものの、
先端科学技術の推進と新産業の展開に伴い、新規の人工物がつ
ぎつぎと創出され、廃棄物が多様化、特殊化、難処理化してき
ています.さらには、高機能材料・人工物の創出のためには、
有害成分を使用せざるを得ない場合もあり、廃棄物問題に対す
るリサイクル型のアプローチだけでは、先端科学技術の象徴と
も言うべき高機能特殊材料などに由来する難処理人工物(人間
が創り出した処理の難しいものという意味)の問題は解決でき
ません.我が国の産業が環境を守りつつ継続的に発展していく
ためには、難処理人工物の再資源化・無害化処理技術の開発
ならびにその実用化は必要不可欠かつ緊急を要する研究課題で
す.
当研究グループが研究対象とするのは、環境に有害で処理の
難しい廃棄物、なかでも将来大量の発生が見込まれる「複合材
料」
・
「廃電池材料」、化合物が複雑に混合した混合物である「電
炉ダスト」や廃棄物処理に伴い発生する「焼却灰」
・
「焼却飛灰」
・
「シュレッダーダスト」などの分離・分割が極めて困難な混合
物や複合物(難処理複合人工物)を再資源化(分離・回収・再生)
、
あるいは、無害化(安定鉱物への人工復元化)するための処理
技術の開発です.
1. 有害成分を含有する無機系廃棄物の処理プロセス開発
都市ごみ焼却灰・焼却飛灰等に対して、固体塩化剤を用いた
塩化揮発分離法による重金属の分離・回収プロセス技術の開発
を行っています。塩化揮発処理における、前処理としての乾燥
処理、種々の添加物の影響、雰囲気等の影響について検討して
います。
また、汚染土壌に対して、環境への負荷が少なく、低エネル
ギー・低コストな浄化技術として、湿式・乾式処理を併用した
低環境負荷型処理プロセスの開発も行っています。
これらの処理後残渣に対しては、再資源化の観点から、環境
庁告示第 46 号溶出試験による安定性評価ならびに土壌汚染対
策法に係わる含有量規制評価も併せて行っています。
2. 有害成分を含有する無機系残渣の安定鉱物化処理法の開発
有害性分を含有する無機系廃棄物から重金属類を分離・回収
処理した後も、分離できなかった重金属あるいは微量の有害成
分が残渣中には残留する恐れがあります。従来は、この様な無
機系残渣は溶融処理によりガラス化されていましたが、溶融ガ
ラス化では有害成分の環境中への溶出を完全には防止すること
はできません。本研究では、「土と同じ状態にすれば捨てても
安全」との概念に立脚した、「安定鉱物化+結晶化」による無
33
教授
ふじさわ としはる
藤澤敏治
助手
さの ひろゆき
佐 野浩行
害化処理法を開発します。
3. 金属製錬ダストの処理プロセス開発
製鋼電気炉の排ガス中のダストには亜鉛・鉄等の金属が大量
に含有されており、それらを回収し再利用することが重要です。
特に、亜鉛については再資源化のための貴重なリサイクル源と
なっています。しかし、現状では、処理に多大なエネルギーを
要したり、再資源化処理を阻害する成分の存在などにより、効
果的な処理プロセスが確立されているとは言えません。本研究
では、電炉ダスト処理に関して、熱力学的平衡計算シミュレー
ションによってプロセス解析を行ったり、再資源化阻害成分の
効果的除去法の開発等を行っています。
また、最近では鉱石の品位低下に伴い、有害成分を含有する
銅製錬ダストの発生が増加しています。そこで、ダスト発生量
の低減を目指した、ダストリサイクル処理に関する基礎研究も
行っています。
4. 金属系廃棄物の再資源化処理プロセス開発
金属基複合材料は優れた機械的特性を有し、高強度構造材料
や機能性材料として近年ますます多方面にて利用されてきてい
ますが、複合材料はその特性故にリサイクルが最も困難な材料
のひとつであり、現在までのところその効果的なリサイクル技
術は開発されていません。今後、複合材料の利用率がますます
上昇する傾向にあり、複合材料のリサイクルプロセスの開発は
緊急を要する研究課題であります。
また、地球温暖化問題などの理由から、近い将来電気自動
車の急速な普及が見込まれます。電気自動車の中枢部品であ
る Ni-MH バッテリーは、希土類金属、Ni、Co 等の有価かつ稀
少金属を大量に使用しており、これらの回収技術の開発は電気
自動車普及のための要素技術であるといえます。しかし、これ
ら有用金属は安定な金属間化合物の形態として存在し、物理選
別などの低コストなリサイクル手法を活用することが出来ませ
ん。特に、希土類金属、Ni-Co 間の相互分離は非常に困難であり、
未だ有効なリサイクル手法の確立には至っていません。
本研究では、上記のような金属系廃棄物に対する汎用的な金
属間化合物の効果的かつ経済的なリサイクル技術の開発を目指
します。
今後の展望
これら難処理複合人工物の再資源化・無害化処理のためには、
従来対象としてきた一次資源である自然資源ではなく、人工物
を対象とした「新しい分離工学の構築」が不可欠です.つまり、
難処理人工物の再資源化・無害化処理においては、もっぱら自
然資源を対象としてきた我々にとっては、これまで経験してこ
なかった成分の組み合わせを対象としなくてはなりません.自
然界では経験されない成分の組み合わせに対する分離技術を体
系化すると言うことは、従来の分離技術の発展に与えるインパ
クトも大きなものが期待できます.
経歴
(藤澤)1972 年名古屋大学工学部金属学科卒業、74 年同大学大学院工学研究
科修士課程修了、77 年同大学大学院工学研究科博士課程満了、78 年名古屋
(8)レアアース金属の精製とその熱力学 : 金属 , 69(1999), p.888-893
(9)Deoxidation of Neodymium by Halide Flux Treatment: Mater. Trans., JIM, 40(1999),
p.263-267
大学工学部助手 工学博士、90 年同講師、92 年同助教授、96 年同教授、97
年名古屋大学難処理人工物研究センター教授、04 年名古屋大学エコトピア
科学研究機構教授
(佐野)1994 年名古屋大学工学部材料機能工学科卒業、96 年同大学大学院工
学研究科博士課程前期課程修了、99 年同大学大学院工学研究科博士課程後
期課程修了 博士(工学)
、99 年名古屋大学難処理人工物研究センター助手、
04 年名古屋大学エコトピア科学研究機構助手
所属学会
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(佐野)資源・素材学会、廃棄物学会、日本金属学会、日本鉄鋼協会、米国
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TMS
主要論文・著書
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(藤澤)資源・素材学会、廃棄物学会、環境資源工学会、日本金属学会、日
本鉄鋼協会、米国 TMS、日本熱測定学会
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(藤澤)
(1)金属を含有する有機系難処理廃棄物 ASR の資源化 , 自動車技術 , 56(2002),
No.5,p.11-16
(2)Al 基複合材料スクラップのクローズド・リサイクル・プロセスの開発:
資源処理技術 , 48(2001), No.4, p.244-249
(3)金属廃棄物処理と非鉄金属のリサイクル:化学工学の進歩 35 廃棄物の
処理―循環型社会に向けて― , 化学工学会 , 環境パートナーシップ CLUB 共
編 , (2001), p.106-115, 槇書店
(4)資源循環型生産システム:資源・素材 ’99(京都)特別企画シンポジウ
ム
「地球環境問題と資源エネルギー技術の動向」
講演資料集, (1999), p.17-20,(社)
資源・素材学会
(5)Thermodynamics of Cu2O-based Slag Treatment for Recycling ofCopper Scrap:
Proc. Tokyo Symposium on Recycling and Treatment of Metals, (1997), p.15-21
(6)銅のリサイクルプロセス:まてりあ、35 (1996), p. 1294-1297
(7)Thermodynamic Properties of the MgO-BO1.5-SiO2 System at 1723 K: ISIJ
International, 36(1996), p.1360-1365
(8)Elimination of Impurities from Molten Copper: Searching for Oxide Slag Systems
with High Refining Ability: Proc. Second International Symposium on Quality in
Non-Ferrous Pyrometallurgy, (1995), p.205-214, CIM
(9)高純度化技術としての固相エレクトロトランスポート法(総説)
:資源と
素材、111(1995), p.895-902
(佐野)
(1)Harmlessness Treatment by Stable Mineralization of Inorganic Waste Containing
Harmful Components: Proc. Global Symposium on Recycling, Waste Treatment and
Clean Technology, (2004)
(2)Closed Recycling Process for Al-based Composite Materials: High Temperature
Materials and Process, in press
(3)Development of Recycling Process for the Se-As Scrap: Proc. European Metallurgical
Conference EMC2003, p. 1075-1083, (2003)
(4)高温炭材充填層フィルター−重金属コンデンサーにおける電気炉排ガス成分回収の熱
力学的解析(電気炉高温排ガスからの鉄・亜鉛直接分離回収技術の開発
−4): CAMP-ISIJ, 16(2003), p.1079
(5)密閉型製鋼用電気炉排ガスからの鉄・亜鉛直接回収プロセスにおける成
分挙動 : CAMP-ISIJ, 15(2002), p.736
(6)
浸出処理によるニッケル−水素化物2次電池からの有価金属の回収: 資源・
素材 2002, p.61, (2002)
(7)Recovery of Copper from Cu2O-Based Slag Used for Copper Scrap Recycling: Proc.
of James M. Toguri Symposium, p.405-413, (2000)
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●環境システム・リサイクル科学研究部門
核燃料物質のリサイクル
教授
主な研究と特徴
廃棄物に含まれる核燃料物質の合理的なリサイクル方法,
重金属含有廃棄物からの重金属の効率的な分離方法,同位体分
えのきだ
よういち
榎 田洋一
課程1年中退,
東京大学工学部原子力工学科助手,
87 年同講師,
89 年工学博士,
同助教授,90 年米国オークリッジ国立研究所客員研究員,93 年東京大学工
学部システム量子工学科助教授,93 年三菱原子力工業,96 年名古屋大学工
学部原子核工学科助教授,97 年同大学院工学研究科原子核工学専攻助教授,
離,超臨界二酸化炭素を用いるマイクロエマルションの利用に
関する研究を進めることにより,経済的に合理化されたエネル
ギー資源リサイクルに寄与することを目指しています.
原子力エネルギーの利用は高度に制御された原子核反応を
使って質量をエネルギーに変換することを原理としており,エ
ネルギー発生密度が高く,エネルギー発生にともなう二酸化炭
素の放出がないという特長をもっています.しかし,様々な放
射性廃棄物が発生するという宿命があり,その技術的解決方法
が待ち望まれています.放射性廃棄物処理処分が技術的に難し
い理由は,その処理に伴い,放射性廃棄物の総量が処理前より
も増えてしまうことにあります.われわれの研究グループでは,
これまでに一貫して放射性廃棄物ができるだけ発生しない分離
技術の開発を行ってきました.最近では,2 次放射性廃棄物が
発生しない方法として,硝酸や塩酸を用いて放射性廃棄物を溶
解した後に溶媒抽出する方法に代えて,中性リン酸化合物に酸
2001 年同環境量子リサイクル研究センター教授,米国 Idaho 大学客員教授 (
を錯体として付加し,これを有機溶媒と予め混合して放射性廃
棄物を処理することによって,1 ステップで放射性廃棄物から
有用元素を抽出する方法の開発に成功しています.この方法は,
大量の水溶液が 2 次放射性廃棄物となることがない画期的な方
法であります.さらに,超臨界二酸化炭素の中に酸を錯体とし
て導入することに成功しており,超臨界流体が高い浸透性をも
つことや圧力制御によってほぼ完全に金属錯体を分離できるこ
とも利用できる,放射性廃棄物のリサイクルにうってつけの処
29, 255-262, 1992. 6) Estimation of uranium(VI) concentrations by temperature
理方法を完成しつつあります.
今後の展望
放射性廃棄物の処理に関しては,これまでの研究成果が実
際のウラン廃棄物処理に適用可能かどうかを確証するレベルま
でに達しています.また,原子力発電所で発生する使用済み燃
料からのウランやプルトニウムの回収に適用できるのではない
かということから,実際の使用済み燃料も用いた実用研究へと
発展しつつあります.この原理は,放射性廃棄物ばかりではな
く,使用済み自動車排気ガス浄化触媒からの白金族元素回収,
廃蛍光灯からの希土類元素回収等にも応用できると考えられる
ため,今後は,処理対象ごとに最適な処理条件を系統的に整理
していく研究を行う予定です.また,有用元素は超臨界流体に
含まれる有機錯体として回収されるため,超臨界流体を機能性
反応場として利用することにより,付加価値が高く,リサイク
ルにより適した最終製品とする研究も今後実施します.
経歴
1981 年東京大学工学部原子力工学科卒業,84 年同大学院工学系研究科博士
35
文部科学省短期在外研究員 ),2004 年現職.
所属学会
原子力学会,放射化学会,化学工学会,米国化学会,米国原子力学会
主要論文・著書
1) Extraction-chromatographic measurement of oxidation state of neptunium-237
at low concentrations, J. Nucl. Sci. Technol., 24, 859-861, 1987. 2) Axial turbulent
diffusion in fluid between rotating coaxial cylinders, AIChE J., 35, 1211-1214, 1989. 3)
Neptunium valence adjustment through photochemically induced redox reactions
at low concentrations, J. Nucl. Sci. Technol., 26, 770-776, 1989. 4) Reduction stripping of
low-concentration Np(VI) loaded on 30 % tri-n-butyl phosphate through laser-induced
reactions, Nucl. Technol., 88, 47-54, 1989. 5) Application of laser-induced thermal lens
oscillation to concentration measurement in organic solutions, J. Nucl. Sci. Technol.,
profiles in solvent extraction processes with 30 % tri-n-butyl phosphate diluted by
n-dodecane, J. Nucl. Sci. Technol., 29, 461-471, 1992. 7) Determination of uranium(VI)
over wide concentration ranges in aqueous nitric acid and 30 % tri-n-butyl phosphate by
laser-induced thermal lensing spectroscopy, Rad. Acta, 57, 101-104, 1992. 8) Distribution
coefficient correlations for nitric acid, U (VI) and Pu (IV) in two-phase system with aqueous
nitric acid and 30% tri-n-buthylphosphate solutions, J. Nucl. Sci. Technol., 34, 700-707,
1997. 9) Solvent extraction of lanthanides from their oxides with TBP in supercritical CO2,
J. Nucl. Sci. Technol., 35, 515-516, 1998. 10) New method for the removal of uranium
from solid wastes with supercritical CO2 medium containing HNO3-TBP complex, J.
Nucl. Sci. Technol., 38, 461-462, 2001. 11) Cleaning of materials contaminated with metal
oxides through supercritical fluid extraction with CO2 Containing TBP, Prog. Nucl. Ener.,
37, 417-422, 2000. 12) Dissolution behavior of uranium oxides with supercritical CO2
using HNO3-TBP complex as a reactant, J. Nucl. Sci. Technol., 38, 1097-1102, 2001. 13)
Ultrasound-enhanced dissolution of UO2 in supercritical CO2 containing a CO2-philic
complexant of tri-n-butylphosphate and nitric acid, Ind. Eng. Chem. Res., 41, 2282-2286,
2002. 14) Vapor-liquid equilibrium of UO2(NO3)22TBP and supercritical carbon dioxide
mixture, J. Nucl. Sci. Technol., Supp. 3, 270-273, 2002. 15) Nitrogen isotope separation
with displacement chromatography using cryptand polymer, Journal of Nuclear Science
and Technology, 39, 442-446, 2002. 16) Characterization of a tri-n-butyl phosphate-nitric
acid complex: a CO2-soluble extractant for dissolution of uranium dioxide, Ind. Eng.
Chem. Res., 42, 5037-5041, 2003. 17) Extraction of uranium and lanthanides from their
oxides with a high-pressure mixture of TBP-HNO3-H2O-CO2, ACS Symposium Series 860,
10-22, 2003.
●環境システム・リサイクル科学研究部門
土壌・地下水の環境を修復・保全する
微生物生態工学
教授
かたやま あらた
片 山新太
主な研究と特徴
地圏は、人間の居住空間であるとともに,食糧生産や工業生産
の場であり,さらに自然生態系でもあって,人と自然のインター
フェースとして機能している.地圏の微生物による物質の分解過
程は,地圏環境の保全にとりわけ重要であり,人類生存の基盤と
なっている.しかし工場跡地では,種々の汚染化学物質(油,有
機塩素系化合物,ダイオキシン類,農薬,重金属等)による汚染
が深刻となっている.また,
生物系産業廃棄物(汚泥や畜産ふん尿)
の過剰投入による地圏環境の悪化が懸念されている.限られた資
源である地圏,即ち土壌・地下水を対象に,微生物の機能を利用
した保全・制御技術,予防技術の基礎研究を行っている.
1. 土壌地下水における微生物の検出・制御技術
化学物質,特に難分解性化学物質で汚染された土壌の微生物浄化
(バイオレメディエーション)が,安価で有効な方法として期待
されている.しかし、汚染土壌地下水中で分解微生物群が働いて
いるのか不明な場合が多く、技術としての確立をさまたげている。
そこで、分解微生物群の標識・検出する技術を確立することを目
的に研究を行っている。これまで、土壌中の化学物質の資化分解
に関与する微生物群集を培養しないで検出できる方法「14C 標識キ
ノンプロファイル法」を世界に先駆けて開発した。現在、この方
法を用いて土壌地下水環境で化学物質を分解する微生物群の特性
評価を行うとともに、さらに、野外でもこの検出技術を用いるこ
とができるように 13C 標識キノンプロファイル法の開発とともに、
16S-rDNA 解析を組み合わせて用いる方法の研究を進めている。ま
た、ライシメータを用いた野外試験で地下微生物群の評価を行っ
て、土壌地下水を汚染している化学物質の自然減衰の評価試験を
進めている。
2. 難分解性化学物質の嫌気的微生物分解
芳香族塩素系化合物やアルキルフェノール類の土壌地下水や底
質の汚染などが発見されている。嫌気性微生物による浄化技術の
開発が期待されているが芳香族化合物の嫌気分解プロセスは、ま
だ不明の点が多く残されており、技術として開発されるに至って
いない。そこで、嫌気呼吸の酸化剤または発酵基質の効果から分
解微生物群の特徴および分解促進の条件の解明を進めている。
3. 土壌地下水における微生物浄化プロセスの数理モデル
土壌地下水における微生物浄化プロセスは、微生物学的遷移、
季節変動、地下水流れによる物質輸送などが、土壌という多孔体
中で起こるため、その複雑さから予測数理モデルの開発が必要と
されている。飽和多孔体中における物質輸送条件下での、
粘土粒子・
微生物細胞の輸送、および汚染化学物質の物質移動の現象を捉え
るとともに、野外条件下での微生物遷移を明らかにすることによ
って、浄化に影響する重要なパラメータの解明と数理モデルの構
築を行っている。
4. 土壌地下水の保全に関わる周辺学問分野との融合研究
土壌地下水浄化技術のリスク経済評価や、家畜ふんコンポスト
処理のネットワークにおける問題などの研究を進めている。
人口の集中する都市および食料を生産する農耕地で人類は生活
している。環境への化学物質の負荷はやむをえないものがあるが、
今後の展望
それを環境の持つ自然浄化容量未満に保つことが、今後の人類と
自然界の共存に必要不可欠である。環境中の微生物の動態を明ら
かにする微生物生態工学の発展によって、自然浄化容量の把握や、
生態系代謝シミュレーション技術の確立、更には新しい社会設計
への道が開かれることが期待される。
経歴
1980 年広島大学理学部化学科卒業、1986 年東京工業大学大学院総合理工学
研究科化学環境工学専攻修了、1986 年名古屋大学農学部助手、1988 年カリ
フォルニア大学デービス校博士研究員、1993 年名古屋大学農学部助教授、
2000 年名古屋大学難処理人工物研究センター教授、2004 年名古屋大学エコ
トピア科学研究機構教授、現在に至る。
所属学会
日本微生物生態学会、環境科学会、日本農薬学会、土木学会、地盤工学会、
日本土壌肥料学会、日本農芸化学会、International Society of Microbial Ecology、
International Union of Soil Science、International Union of Pure and Applied Chemistry、
American Chemical Society、American Society of Microbiology
主要論文・著書
(1)
Tien, T-H. and Katayama, A. (2004) Biodegradation kinetics of volatile
hydrophobic organic compounds in the cultures with variable fractional
volumes, Biotechnology and Bioengineering, 85(6), 580-588
(2)
Inoue, Y. and Katayama, A. (2004) Application of the Rescue Number to the
evaluation of remediation technologies for contaminated ground, Journal of
Material Cycles and Waste Management, 6: 48-57
(3)
Tang, J-C., Kanamori, T., Inoue, Y., Yasuta, T., Yoshida, S. and Katayama, A. (2004)
Changes in microbial community structure in thermophilic composting process
of manure detected by quinone profile method, Process Biochemistry, 39(12):
1999-2006
(4)
上路雅子、片山新太、中村幸二、星野敏明、山本広基編 (2004) 「農
薬の環境科学最前線−環境への影響評価とリスクコミュニケーション
−」ソフトサイエンス社 pp.349
(5)
Lintelmann, J., Katayama, A., Kurihara, N., Shore, L., and Wenzel, A. (2003)
Endocrine disruptors in the environment, Pure and Applied Chemistry, 75(5),
631-681
(6)
Katayama, A., Funasaka, K., Fujie, K. (2001) Changes in respiratory quinone profile
of a soil applied with pesticides, Biology and Fertility of Soils, 33, 454-459
(7)
片山新太(2000)土壌微生物による農薬分解 - 生物有効性と微生物活
性 -、
「植物と微生物による環境浄化」南澤究、藤田耕之輔、岡崎正規
編、博友社、125-153、東京
(8)
Katayama, A. and Fujie, K. (2000) Characterization of soil microbiota with quinone
profile, In Soil Biochemistry Vol. 10, Ed. by Bollag, J.-M. and Stozky, G., 303-347,
Marcel Dekker, Inc. New York
36
●環境システム・リサイクル科学研究部門
環境共生社会基盤システムの
構築技術に関する研究
教授
たていし
かずお 舘 石和雄
主な研究と特徴
建設分野は大量の資源を消費し,かつ,建設副産物の産業
廃棄物における割合も大きいため,環境共生社会の形成に大き
な責任を負っている.すなわち,社会基盤施設を計画・建設,
供用・維持管理,廃棄・取り替え,リサイクル・リユースのラ
イフサイクルで考え,循環型で低環境負荷型の整備・運用技術
を研究開発する必要がある.
研究目的を達成するため,以下の具体的なプロジェクトテー
マを設定して研究を行っている.
1)低環境負荷型社会基盤システムの構築技術に関する研究
低環境負荷で,かつ地震や台風などの自然災害にも強い構
造物の構築に関して研究を行うことにより,環境負荷やコスト
へどのような効果をもたらすかについてライフサイクルアナリ
シスによって評価するための基礎データを得る.
2)社会基盤施設の高度診断・モニタリングシステムに関する
研究
既存社会基盤施設の維持,更新,廃棄などをライフサイク
ルで考えた上で適切に判断するための技術として,供用下にお
ける構造物の保有性能を定量的に評価するための診断・モニタ
リング技術の開発を行う.
これに関連してこれまでに得られた主な成果は以下のとおりで
ある.
1)地震災害に強い構造物の構築技術の一つとして,鋼部材の
低サイクル疲労設計に着目し,疲労強度に関する基礎データを
実験的に収集した.低サイクル疲労試験に際しては,画像計測
技術を援用した試験システムを新たに開発し,実現象を考える
と非常に重要であるにもかかわらず従来には実験が行えなかっ
した条件下においても,疲労寿命で約2倍の延命効果があるこ
とが明らかとなった.
今後の展望
ライフサイクルにおける環境負荷やコストを最小化する技
術として,社会基盤のロングライフ化に関して,材料,部材,
構造,システムの各レベルにわたる性能劣化予測技術の開発と,
ライフサイクルアナリシスによる評価を取り入れた低環境負荷
型の耐久性向上技術の開発を行う.
また,循環型社会基盤システムの構築を目的として,リユー
スに適した構造形式やリサイクル材の合理的な利用技術など,
資源の循環を促進するためのハード技術を開発し,それとライ
フサイクルアナリシスとを結びつけることにより,安全で,か
つ環境的,経済的合理性を有する社会基盤施設の再生技術につ
いて研究を行う.
経歴
1986 年東京工業大学工学部土木工学科卒業,88 年同大学院総合理工学研究
科博士前期課程修了,東日本旅客鉄道 ( 株 ),90 年東京工業大学工学部助手,
94 年博士(工学)
,95 同大学工学部講師,97 同助教授,東京大学生産技術
研究所助教授,00 年名古屋大学大学院工学研究科助教授,03 年同理工科学
総合研究センター教授
所属学会
土木学会,日本鋼構造協会,日本コンクリート工学協会,溶接学会,日本圧
接協会
主要論文・著書
た高ひずみ領域(極低サイクル領域)における溶接継手部の疲
労試験を可能とした.その結果,溶接継手部では鋼素材に比較
(1) 舘石和雄,判治剛:画像計測を用いた試験システムによる突き合わ
して疲労寿命が 30%程度低下すること,また,溶接熱影響部
(HAZ) ではさらに低サイクル疲労強度が低下し,素材のそれの
50%程度になることなどを明らかにした.
2)鋼橋の架け替え理由の主たるものは鋼材の腐食であるが,
鋼材の腐食形状や腐食程度に関する情報は必ずしも充分でな
く,また,それと力学的性能との関係もまだ充分に明らかにな
っていない.そこで,腐食によって減少した鋼材の板厚や,そ
pp.277-288 (2004)
の腐食形状を広域にかつ簡易に計測するための技術として,デ
ジタルステレオグラフィーによる手法を提案した.これによれ
ば,鋼部材の耐荷力に関係があると思われる鋼材の全体的な腐
(4) 舘石和雄:デジタルステレオビジョンによる広領域ひずみ場計測シス
食形状を充分な精度で計測することが明らかとなった.
3)疲労き裂が生じた鋼部材を延命化するための手法として,
疲労き裂内に樹脂注入を行う手法を提案し,その効果について
実験的,解析的に検討した.それによれば,理想的な条件のも
とであれば,ほとんど無視できる程度に疲労き裂の進展を抑制
することができることが明らかとなった.また,供用下を想定
裂を対象としたき裂進展速度の推定手法,鋼構造論文集 , Vol.8, No.31,
37
せ溶接継手の低サイクル疲労強度の検討,土木学会論文集 , No.752/I-66,
(2) Hanji,T.,Tateishi,K.,Kitagawa,K: 3-D shape measurement of corroded
steel plate surface by using digital stereography, Structural Health Monitoring
and Intelligent Infrastructure, pp.699-704 (2003)
(3) Tateishi,K.,Kitagawa, K.: Delay effect on fatigue crack propagation in steel
members by resin injection, Proc. of the 7th Korea-Japan Joint Seminar on
Steel Bridges (2003)
テムの開発,土木学会論文集 , No.393/VI-53, pp.87-94 (2001)
(5) 舘石和雄,判治剛,山田聡,阿部允:溶接継手部に生じた疲労き
pp.11-16 (2001)
●環境システム・リサイクル科学研究部門
量子エネルギー廃棄物からの
新機能材料創製
助教授
ありた
ゆうじ 有田裕二
主な研究と特徴
人類が将来にわたって成長していくためにはエネルギー資源
の確保が不可欠であり、そのために、量子(原子力)エネルギー、
燃料電池、核融合、自然エネルギー利用など様々なエネルギー
源の開発、高度化が重要である。そのような理念の元研究を行
っている。量子エネルギー利用に伴って排出される廃棄物から
有用物質を回収し機能性材料を創製するための基礎研究さらに
は広くエネルギー発生・有効利用に向けた材料開発基礎研究な
ど以下のテーマで研究を行っている。
(1)量子エネルギー廃棄物リサイクル研究:原子力発電によっ
てウランが消費され、その核分裂によって様々な元素が生成する。
その中には放射能を持つ物が多く含まれるが、一部放射能を持た
ず、有用な物質も生成する。特にモリブデンや貴金属元素は使用
済み核燃料1トン中に数キログラムの割合で含まれ、再処理に
よってさらに濃縮され、天然に産出する鉱石よりも純度がよく有
望な資源となりうる。また、原子力発電に使用する濃縮ウランを
作る際に発生する大量の劣化ウランは興味深い性質を示す元素で
あるが未開拓な物である。このように大きなポテンシャルを持っ
た物質を有効に利用し新たな資源(物質およびエネルギー)とし
て活用していくことは天然資源がどんどん消費されていく現代に
おいて一つの選択肢となりうる。現在は原子力発電の安全な熱交
換(もんじゅのようなナトリウム漏れ事故を防ぐ)や、廃熱の有
効回収の手段として期待されている熱電材料の開発基礎研究を行
っている。
(2)エネルギー関連材料基礎研究:上記の熱電材料研究のほか、
燃料電池に材料として使用されるプロトン導電体や酸素イオン
伝導体についてそのイオン伝導性とミクロ構造や他の物性との関
連について解明をする基礎研究も行っている。さらには、原子力
発電で使用される核燃料についてもその基礎データとなる熱物性
やミクロ構造の解析など行っている。
(3)髙温熱物性測定装置の開発:極限状態での機能材料の開発
においてはその物性を極限状態で測定する装置が不可欠である。
しかしながらそのような装置は手に入らないことも多いため自
ら開発することも必要となってくる。現在、世界で 1500 K から
2000 K の温度域で熱容量を精度よく測定する装置はないといっ
てよくこの装置の開発研究も行っている。現在のところ 1500 か
ら 2000 K の温度域での測定が可能な状態となっている。
(4)XAFS による局所構造解析:X線吸収微細構造スペクトルの
解析によって材料の局所構造(ある特定の元素周り数オングスト
ロームの範囲における原子の存在状態)を解析し、
その構造と様々
な物性について因果関係を解明する研究を行っている。この研究
にはつくばにある高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設に
おいて行っている。放射性物質を高温に加熱した状態で測定を行
う装置を日本で初めて開発しこの分野においては数少ない研究成
果をあげてきた。
(5)安定同位体を用いた機能材料開発:自然界に存在する元素
のうち多くは原子核の重さが異なる安定同位体複数が混じった
状態で使われている。同位体は、化学的性質はほとんど同じであ
り通常の使用では気にされていない。しかしながら同位体をそ
ろった状態で使用すると熱伝導などの熱的な性質が変わること
が知られておりこのことを利用してこれまでよりも非常に性能の
よい材料が開発できることが期待されている。現在炭素及びホウ
素の同位体を用いて炭化ホウ素の熱伝導に及ぼす影響についての
研究も行っている。また、上記劣化ウランも実はウラン238を
99.
8%程度に同位体濃縮したものでありこれを用いた材料開
発研究も行っている。
今後の展望
21世紀のエネルギー環境を明るいものとするため高効率なエ
ネルギー発生材料の開発を進めていく予定である。今後は熱電材
料開発においてはこれまでの基礎研究の知見を基に複合化、製造
技術の開発といったより実用化に向けた研究も各研究機関、民間
企業と協力して進めていくことで早期の社会貢献を目指してい
る。さらに量子エネルギー廃棄物だけでなく様々な廃棄物を資源
と見なして有効利用していく分野の発展を目指している。一方、
熱容量は高温での物質の安定性(反応性)
、温度分布などを評価
する上で重要な基礎データであり、高温熱容量測定装置開発を早
期に完成させ、貴重なデータを取得し極限状態での材料挙動の解
明に役立てていきたい。
経歴
1989 年名古屋大学工学部原子核工学科卒業.91 年同大学大学院工学 研究科
博 士課程前期課程修了、同年(株)神戸製鋼所入社。94 年名古屋大学工学部
助手.97年博士(工学)
.2000 年名古屋大学工学部助教授.01 年名古屋大
学環境量子リサイクル研究センター助教授.04 年名古屋大学エコトピア科学
研究機構助教授.博士(工学)
.
所属学会
日本原子力学会、日本熱電学会、日本熱測定学会、資源・エネルギー学会、
応用物理学会、日本放射光学会、日本熱物性学会
主要論文・著書
(1)
「Thermoelectric properties of the doped Ru2Si3 prepared by SPS method」
J.Thermal Analysis and Calorimetry, Vol. 69, pp. 821-830, 2002.
(2)
「EXAFS study of reduced ceria doped with lanthanide oxides」Solid State Ionics, Vol. 154-155, pp. 113-118, 2002.
(3)
「Isotope effects on thermal conductivity of boron carbide」J.Nucl.Sci.Technol., Vol.
39, pp. 391-394, 2002.
(4)
「Thermoelectric properties of Rh-doped Ru2Si3 prepared by FZ melting method」
J. Nucl. Mater., Vol. 294, pp. 202-205, 2001.
(5)
「Boron isotope effect on the thermoelectric property of UB4 at low temperature」
J. Nucl. Mater., Vol. 294, pp. 209-211, 2001
(6)
「Thermoelectrical study of URu2Si2 and U2Ru3Si5」J. Nucl. Mater., Vol. 294, pp. 206-208, 2001
38
●環境システム・リサイクル科学研究部門
環境汚染物質の分解,除去技術
−新規環境材料の創製と超音波
利用技術−
主な研究と特徴
今日の材料合成は原料,製造法,製品のそれぞれにおいて
ローエミッションを考慮することが求められている。近年,
我々は身近に存在し,環境に負荷を与えない CaO,Al2O3,SiO2
を出発原料として合成するナノ細孔アルミノシリケート
{Ca12Al14-XSiXO33+0.5X(0 ≦ X ≦ 4)} が, 大 気 中 の 酸 素 を 構
造中に捕捉し,さらにその酸素が活性化することを見出し
た。ナノ細孔アルミノシリケートは,ハイドログロシュラー
{Ca3Al2(SiO4)3-y(OH)4y}を大気中で加熱(800℃)することによ
_
り簡便に合成することができる。結晶構造(空間群:I43d,
格子定数:11.975(2) ∼ 11.992(1) Å)はガーネットに類似し,
(Al,Si)O4 四面体がフレームワーク状につながっている。四面体
席の歪みと結合距離との考察より,Si は 2 つの四面体席のうち
T(2) 席を占めると考えられる。フレームワークは大きな空隙を
有し,そこに陰イオンが部分的に占有する。フレームワークと
空隙中の酸素を区別して組成式を表すと,Ca12Al14-XSiXO3 2(O 1+0.5X)
となり,Si による置換が進むほど空隙中に多くの酸素が捕捉さ
れることになる(図1)。ラマン分光による結果では,Si 置換
に伴う活性酸素種の増加が認められた。さらに,Si を含まない
Ca12Al14O33 では,観測される活性酸素種は O 2− のみであるの
に対し,Si が Al を置換したものでは O22-,O2- それぞれのピー
クが存在し,2種類の活性酸素が確認された。粉末 X 線リート
ベルト法による解析結果では,酸素 O(3) は 24d の位置に存在し,
その席占有率は Ca12Al14O33 ∼ Ca12Al10Si4O35 において 0.13(5)
∼ 0.40(4) であり,組成式から期待される値より多い。
構造中に存在する活性酸素は,400℃以上に加熱されると構
造中を移動し,有機物等の酸化反応(例えば燃焼)に使われる
ことにより喪失するが,大気中の酸素を捕捉して再生する。し
たがって,ナノ細孔アルミノシリケートは酸化反応を連続して
行うことができるメタルレス酸化触媒として使用できる。ナノ
細孔アルミノシリケートの触媒活性は 400℃程度から認められ
るが,酸化コバルトを担持すると 200℃程度で触媒活性を示す
ことから,実用化への期待がもたれる(図2)。
液体中に超音波照射するとキャビテーション気泡の発生を
介して局所的な高温・高圧場(ホットスポット:数千度,千数
気圧)が形成される。この高温・高圧局所場では化学種が熱分
解したり,衝撃波の発生に伴う秒速 100m を超える微小ジェ
ット流によって気泡近辺に力学場を生成することが知られてい
る。このような超音波による局所反応場は,特別な薬品を添加
することなく有機化合物含有廃液の処理,化学物質の創製,反
応制御・促進などを可能とすることから,環境低負荷型の物質
創製・廃液処理技術の一つとして大いに期待されている。これ
まで,超音波局所反応場を用いた高分子の重合・高分子分子量
の制御,反応容器内溶液の混合促進に関する研究を遂行してき
39
教授
すずき けんじ
鈴木憲司
助教授
こじま よしひろ
小 島義弘
た。また,現在,有機塩素系除草剤の超音波処理,溶液中有機
化合物の活性炭吸着に及ぼす超音波の前処理および同時処理の
影響,および環境に優しく・蓄熱密度の高い潜熱蓄熱材として
期待されている糖化合物(エリスリトールなど)の過冷却緩和
に及ぼす超音波照射の影響について検討中である。
今後の展望
2006 ∼ 2007 年以降に販売されるオートバイの排ガス規制
が大幅に強化され,安価な触媒が求められることからオートバ
イの排ガス浄化用触媒,産業廃棄物炉などの小型∼中型炉から
の排ガス(酸性ガス,ダイオキシン類,炭化水素,未燃炭素など)
浄化に使用する排ガス浄化用触媒,燃料を有効に使用するため
に希薄燃焼を実現する省エネルギー炉や温度制御によりサーマ
ル NOx を発生しないローエミッション炉を実現するための希
薄燃料燃焼用触媒等,ナノ細孔アルミノシリケートの用途は広
い。
超音波キャビテーションによる作用には,
化学(ケミカルな)
作用と物理(メカニカルな)作用があり,対象反応・期待した
い効果に応じてこれらの作用を適用する必要がある。一方,現
在,洗浄剤であるトリクロロエチレン(TCE)や有機農薬・除
草等による土壌汚染,それにともなう地下水汚染が深刻な社会
的問題になっている。これら土壌・地下水汚染は汚染源である
有機塩素化合物自身が高い毒性を有し,なおかつ化学的に非常
に安定であること,さらにこの有機物が土壌(固体粒子)に物
理的,または化学的に強く吸着しているために,それらが大気
中または溶液中に存在している時と比較して処理する上で難処
理性が高い状態を有しているものと推測される。したがって,
処理する過程で (1) 汚染物を土壌から脱着後,溶媒(水)中に
溶出させ,さらに (2) 対象物を自然浄化が容易な状態(塩素の
無機化)まで分解することがこれらの難処理物を効率的に処理
する上で重要なポイントになる。そこで超音波キャビテーショ
ン(物理・化学)作用が,不均一系における固体粒子(土壌)
からの汚染有機塩素化合物の脱着,分解同時処理を効率的に行
う上で有効に作用するものと考え,本処理法の有効性について
現在検討中である。また,長年にわたって活性炭や高分子樹脂
などの吸着剤による水環境汚染物質の吸着処理が行われてきた
が,これら吸着剤に吸着した汚染物質を除去し,吸着剤の再利
用を図る上でも,超音波の物理または化学作用が有効に活用で
きるものと考える。
経歴
(鈴木)
1972 年名古屋工業大学Ⅱ部工業化学科卒業,工学博士,1966 年工業技術院
名古屋工業技術試験所技官,1986 年主任研究官,1995 年工業技術院名古屋
工業技術研究所主任研究官,1996 年研究室長,1997 年名古屋工業大学連携
大学院工学研究科都市循環システム工学専攻助教授,2001 年独立行政法人
Relaxation Behavior of PCM(SC), J. Chem. Eng., Japan, Vol.36, No.7,
産業技術総合研究所セラミックス研究部門グループリーダー,同年名古屋工
pp.799-805, 2003.
業大学連携大学院工学研究科都市循環システム工学専攻教授,2004 年名古
屋大学エコトピア科学研究機構教授
(小島)
2000 年名古屋大学大学院工学研究科物質制御工学専攻,博士(工学)
,2000
年山形大学大学院ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー非常勤研究員,2001
年名古屋大学難処理人工物研究センター非常勤研究員,2002 年助手,2004
年名古屋大学エコトピア科学研究機構助手
所属学会
(13) Experimental Study of a New Liquid Mixing Method Using Acoustic
Streaming, J. Chem. Eng., Japan, Vol. 35, No.6, pp.497-502, 2002.
(14) Effect of Sonication on Nitroxide-Controlled Free Radical Polymerization
of Styrene, Ultrasonics Sonochemistry, Vol. 8, pp.81-83, 2001.
(15) 「有機廃液の超音波処理」
,化学工学の進歩 35「廃棄物の処理 - 循環
型社会に向けて -」, pp.230-242, 2001.
(鈴木)化学工学会,
日本化学会,
触媒学会,
廃棄物学会,
日本セラミックス協会,
石油学会,日本粘土学会,日本建築学会
(小島)化学工学会,高分子学会,ソノケミストリー研究会
主要論文・著書
(1)
A New Sorbent, Hydrogarnet, with Purging HCl Gas at High
Temperature, Chem. Eng. J., Vol.102, pp.99-104, 2004.
(2)
Controlling the Quantity of Radical Oxygen Occluded in a New
Aluminum Silicate with Nanopores, Chem. Mater., Vol.15, No.26,
pp.4879-4881, 2003.
(3)
Preparation of High-performance Co3O4 Catalyst for Hydrocarbon
Combustion from Co-containing Hydrogarnet, Cat. Lett., Vol.86, No.1-3,
pp.139-144, 2003.
(4)
図1 ナノ細孔アルミノシリケートの結晶構造
A New Technique to Remove Hydrogen Chloride Gas at High
Temperature Using Hydrogrossular, Ind. Eng. Chem. Res., Vol.42, No.5,
pp.1023-1027, 2003.
(5)
Oxidative Destruction of Hydrocarbons on a New Zeolite-like Crystal of
Ca12Al10Si4O35 Including O2- and O22- Radicals, Chem. Mater., Vol.15, No.1,
pp.255-263, 2003.
(6)
Vapor Phase Hydrogenation of Phenol over Palladium Supported on
Mesoporous CeO2 and ZrO2, Appl. Catal. A: General, Vol.245, pp.317-331,
2003.
(7)
Selective Production of Hydrogen for Fuel Cells via Oxidative Steam
Reforming of Methanol over CuZnAl Oxide Catalysts: Effect of
Substitution of Zirconium and Cerium on the Catalytic Performance,
図2 ナノ細孔アルミノシリケートの触媒活性
プロピレン (1,000ppm) の酸化反応、SV=10,000 h-1
Topics Cat., Vol.22, No.3-4, pp.243-252, 2003.
(8)
Pore Size Control of Pillared Clay by Template Method and CEC Control
Technique, Recent Res. Devel. Non-Crystalline Solids, Vol.3, pp.1-17,
2003.
(9) 「酸性ガスの高温除去」
,化学工学の進歩 35「廃棄物の処理 - 循環型
社会に向けて -」, pp.178-187, 2001.
(10) 「アルカリ岩鉱物による塩化水素ガスの高温除去」
,工業技術会「ダ
イオキシン対策と技術開発」, pp.282-295, 1998.
(11) Ultrasonic Decomposition of (4-Chloro-2-Methyl Phenoxy) Acetic Acid
(MCPA) in Aqueous Solution, J. Chem. Eng., Japan, Vol.36, No.7, pp.806
-811, 2003.
(12) Effect of Ultrasonic Irradiation Parameters on the Supercooling
40
●環境システム・リサイクル科学研究部門
固体表面分析・計測手法と
新奇機能性薄膜材料の開発
助教授
いのうえ やすし
井上泰志
主な研究と特徴
(1) 核燃料元素の高感度・非接触・その場検出システムの構築
国際規制物資であるウラン等の核燃料物質で汚染された物品
は,通常の廃棄物と異なり,半永久的に保管しなければならな
いが,このような汚染物品は国内外で年々増加しており,焼却
等による減量化を行っても,既に処理・保管能力は限界に達し
つつある.この状況を解決するためには,二次的汚染をほとん
ど引き起こさずに,汚染物品から核燃料物質を回収・リサイク
ルするシステムを構築する必要がある.ここで,核燃料物資の
回収・リサイクルを行うためには,まず対象となる核燃料物質
が,汚染物品の「どこに」「どれだけ」存在するかを高感度で
検出する必要がある.同時に,二次的汚染を防ぐためには,検
出プロセスが非接触で行われなければならない.また,廃棄物
の排出場所,保管場所等によらず適用できるようにするため,
その場計測手法であることも重要である.本研究は,このよう
な新しい物質検出システムを構築することを目的としている.
(2) 反応性プラズマプロセスによる金属窒化物薄膜の作製
窒素は酸素に比べてはるかに低い化学反応性を有することか
ら,一般に純粋な金属窒化物は自然界に存在しない.しかし最
近発見された InGaN の青色発光に代表されるオプトエレクトロ
ニクス特性,金とほぼ同じ色特性を示しながら耐摩耗特性に優
れる TiN 等の機械的保護特性,また Si3N4 のような高温でも反
応を起こしにくい化学安定性など,従来の材料には見られない
優れた特性を発現することが明らかになってきており,ここ数
年,金属窒化物に関する研究がさかんに行われている.にもか
かわらず,未だに諸特性が明らかにされていない,あるいは作
製の試みすらなされていない金属窒化物も多く存在する.本研
究では,エレクトロクロミックというユニークな光特性を示す
窒化インジウム,物理特性が明らかでない窒化スズや希土類金
属窒化物などを対象に,反応性イオンプレーティング,反応性
スパッタリングといった反応性プラズマプロセスを用いて薄膜
いるのか,堆積メカニズムを明らかにすることを目的とする.
今後の展望
全く新しいエネルギー源が開発されない限り,核燃料を用い
る原子力発電は,多くの問題を抱えながらも利用されつづける
であろうし,放射性廃棄物量も決して減ることはない.また,
極めて近い将来に,現在稼動中の原子力発電施設の多くが耐用
年数に達し,施設の廃止措置に伴う膨大な量の放射性廃棄物を
処理しなければならず,またそのために必要な期間は数十年に
わたる.従って,本研究センターで開発目標としている核燃料
物質の回収・リサイクルシステムは,今後の社会において極め
て重要かつ必要不可欠な技術となるだろう.当然,その基盤と
なる核燃料元素検出システムも,早急な開発が求められている.
このような社会的要請にこたえるべく,真摯に研究を進めてい
きたい.
経歴
1991 年東京大学工学部金属材料学科卒業.93 年同大学大学院工学系研究科
修士課程金属工学専攻修了.93 年名古屋大学工学部助手.02 年同大学環境
量子リサイクル研究センター助教授.04 年同大学エコトピア科学研究機構
助教授.博士 ( 工学 ).
所属学会
日本金属学会,応用物理学会,表面技術協会
主要論文・著書
(1) In situ surface analysis by infrared reflection absorption spectroscopy in
PECVD of silicon-oxide films, Thin Solid Films, Vol.386, Issue 2, pp.252-255,
2001
(2) プラズマ CVD における薄膜堆積過程 , プラズマ・核融合学会誌,
vol.76, No.10, pp.1068-1073, 2000
試料を作製し,それらの諸特性を評価する.
(3) プラズマ薄膜形成プロセスにおける堆積メカニズム解析
高周波グロー放電,直流アーク放電などの放電プラズマ中に
は,広いエネルギー分布を持つ電子と,正負イオン,ラジカル,
励起ガス種等の化学的に活性なガス種が存在し,化学反応性の
高い場となっている.それゆえ,熱力学的平衡状態では進み得
ないような化学反応も低温で起こすことが可能であり,薄膜材
料堆積の重要なプロセスのひとつとなっている.しかしその一
方で,プラズマ中で進行するプロセスは非常に複雑であり,堆
(3) Electrochromic Reaction of InN Thin Films, J. Electrochem.Soc., 146,
積する薄膜の構造・特性を支配するプロセス要因がどこに存在
するのか,明らかにするのは難しく,各プロセスパラメータを
さまざまに振って,最適な堆積条件を探るという,現象論的な
手段に頼らざるを得ないのが現状である.そこで本研究では,
プラズマ発光分光法,ガス質量分析法,赤外吸収分光法などの
分光学的手法を用いてプラズマプロセスにおいて何が起こって
(7) Spectroscopic Studies on Preparation of Silicon Oxide Films by PECVD
41
pp.2365-2369, 1999
(4) In situ Observation of Behavior of Organosilicon Molecules in
Low-temperature Plasma Enhanced CVD, Thin Solid Films, 345, pp.90-93,
1999
(5) Physical Prooperties of Reactive Sputtered Tin-Nitride Thin Films, Vacuum,
51, pp.673-676, 1998
(6) Synthesis of Sn-doped a-C:H Films by RF Plasma-enhanced CVD and Their
Characterization, Thin Solid Films, 322, pp.41-45, 1998
Using Organosilicon Compounds, Plasma Sources Sci. Technol., 5, pp.339-343,
1996
●環境システム・リサイクル科学研究部門
社会基盤と環境・エネルギー
助教授
主な研究と特徴
環境配慮への国際的・社会的要求が高まり,多くの産業・
社会・経済分野において省エネルギー化と環境負荷低減への積
極的な取り組みが必要とされている.環境負荷が少ないエネル
ギーとしては,風力や太陽光に代表される自然エネルギーの活
用が一般的であり,多くの研究開発が行われている.一方,人
体の運動にともなう変動や機械の運転にともなう振動など,何
らかの人間・社会の活動によって人工的に生じるエネルギー
を利用する試みや技術シーズがあり,一部に応用され始めてい
る.この動向は必ずしも大規模な電力を対象としてはいないも
のの,自らの動きが生むエネルギーを回収して自らが必要とす
る電力に循環・再活用するというユニークな観点を含んでいる.
本研究の全体構想はこのような人間・社会の動きが潜在的に
持つエネルギーの回収と循環利用へのアプローチを切り口とし
て,社会を構成するインフラストラクチャーのエネルギー負荷
の低減,ならびに環境負荷の低減に貢献することが狙いである.
陸上輸送・流通ネットワークの中心である高速道路交通に
着目すると,自動車本体の低燃費・低排出ガス性能は目覚しく
向上しつつある.これに対して,自動車の高速走行ならびにド
ライバーの安全を支える照明,トンネル内換気ファン,サービ
スエリア,管制情報システム,ロードヒーティング,電光情報
表示盤,ITV を含む各種センサーなどの多くの基盤設備は膨大
な受電力を昼夜を問わず必要とする.これらの設備が恒常的に
消費する“ランニングエネルギー”の省エネ化・環境負荷低減
への対策は大きく遅れており,これに対応するための技術ニー
ズがある.そこで本研究においては,高速道路交通環境が生む
エネルギーを回収して高速道路設備の電力へ還元するという着
想の下,環境に負荷をかけることなく,高速道路設備のランニ
ングエネルギーを軽減するためのユニットと運用手法を考案す
る.具体的には,高速走行する自動車が周囲の空間に発生させ
る気流変動(ガスト)に着目し,このエネルギーを回収する.
無風の気象下でも道路中央分離帯の植生がバタバタと揺れるの
は,この自動車励起ガストによるものである.開発している
ユニットの構造は自動車励起ガストを受けるパネルとそれを支
持するバネによる一自由度バネ―マス系であり,パネルのガス
ト応答を経由して永久磁石がコイル中を往復運動し,電磁誘導
により出力電圧を生む.風洞実験および屋外実車通過実験,数
値シミュレーションを通じて本ユニットの性能評価を行ってい
る.一般の風車型発電機が平均風速をエネルギー源とするのに
対し,本手法は気流の変動エネルギーを回収するものである.
この点で,本手法は高速道路上のように気流が常時乱れている
場所に適しており,変動する気流中においては効率が低下する
風車型発電機とは守備範囲が異なる.また,本手法は気象とし
ての風は必要なく,自動車走行により人工的に発生する気流変
動を利用するため,通常に自動車が走行してさえいれば常時稼
動する点が特徴であり,自然の風が吹かないトンネル内などに
きたがわ
てつや
北川徹哉
おいても利用可能である.
今後の展望
本研究においては,高速道路の交通流環境が生むエネル
ギーを回収して高速道路交通のために利用するという,エネル
ギーの自己循環および省エネ・環境負荷低減のための一つの仕
組みの構築が狙いであり,研究開発としての新しさである.本
ユニットを既存の高速道路に設置した場合に得られる電力量の
高速道路設備電力への寄与度と環境負荷低減効果との評価を行
い,実用化を目指す.また,太陽光発電とのハイブリッド化も
可能であり,これは高速道路が広い土地面積を有しているとい
う,一つの空間的ポテンシャルの積極的な活用である.
経歴
1995 年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了,1996 年同大学院工学系
研究科博士課程中退,同年日本大学理工学部助手,1998 年博士(工学)
(東
京大学)
,2001 年名古屋大学工学研究科助手,2003 年同大学理工科学総合研
究センター助教授,2004 年同大学エコトピア科学研究機構助教授
所属学会
土木学会,日本風工学会,日本流体力学会,日本機械学会,日本ロボット学
会
主要論文・著書
(1) 北川:ウェーブレット逆変換のアナロジーによるガスト応答波形の
推定,土木学会論文集,No.759/I-67,pp.171-180,2004.(2)Kitagawa
and Nomura : A wavelet-based method to generate artificial wind
fluctuation data, J. Wind Eng. and Indust. Aero., Vol. 91, pp. 943-964, 2003.
(3)Kitagawa, et. al. : Wind pressures measurement on end-cell-induced
vibration of a cantilevered circular cylinder, J. Wind Eng. and Indust.
Aero., Vol. 90, pp. 395-405, 2002. (4) Kitagawa et. al. : Wind pressures on
end-cell-induced vibration of a circular tower, J. Eng. Mech., ASCE, Vol. 127,
No. 11, pp. 1135-1143, 2001. (5) 北川,水野,木村,藤野:風圧測定に
基づく塔状円柱構造物のエンドセル励振の発生機構,土木学会論文
集,No.647/I-51,pp.191-204,2000.(6) 北川,野村:ウェーブレッ
トを用いた間欠性を含む人工風速波形の生成の試み,日本風工学会論
文集,第 81 号,pp.71-86,1999.(7)Kitagawa et. al. : Effects of free-end
condition on end-cell-induced vibration, J. Fluids and Struct., Vol. 13, No. 4,
pp. 499-518, 1999. (8) 北川,藤野,木村:自由端渦の形成特性に着目
した高風速渦励振の発現メカニズムに関する研究,土木学会論文集,
No.612/I-46,pp.229-238,1999.(9) 北川,藤野,木村:塔状弾性模型
を用いた風洞実験による高風速渦励振の発現特性に関する研究,土木
学会論文集,No.591/I-43,pp.163-173,1998.
42
●環境システム・リサイクル科学研究部門
微小機械システムの研究
助教授
しきだ みつひろ
式田光宏
主な研究と特徴
半導体微細加工技術を応用展開したマイクロマシニング技術
を用いて従来には無い知的で微小な機械システムを実現する研
究を行っている.主な研究内容を以下に示す.
(1) 微小3次元構造体の実現に向けた加工プロセスの開発
半導体基板である単結晶シリコンウエハ上に大きさ数百ミクロ
ン以下の微小な構造体を製作する加工技術を研究・開発してい
る.具体的にはアルカリ性水溶液による結晶異方性エッチング
技術を利用して構造体を製作する.これまでに単結晶シリコン
の全方位に渡るエッチング加工特性(例えば,エッチング速度
及び表面性状の結晶方位依存性)を明らかにし得られた特性値
をデータベース化してきた.また,各種エッチング現象のメカ
ニズム(アンダーカット現象,エッチピット発生)を解明する
とともにそのモデルを構築してきた.本テーマについては産学
両面においての貢献を目指し研究している.
(2) 微小機械デバイスの産業応用
マイクロマシニング技術を用いればシリコンウエハ上に電気回
路以外に微小な機械構造体も実現できる.本テーマではシリコ
ンウエハ上に各種マイクロ素子 ( センサ・アクチュエータ ) を
実現する技術を確立し,各種マイクロ素子が集積化された知的
微小電気機械システムを構築することを目的としている.これ
までに研究・開発した主なデバイスを以下に示す.
① ドラッグデリバリー ( 経皮剤 ) 用マイクロニードルの開発
経皮剤用マイクロニードル構造を実現することを目的として
機械加工と結晶異方性エッチングとを用いた複合微細加工技
術を提案するとともに各種マイクロニードルアレイを作製し
ている.本プロセスは微小3次元構造体を低コストで製作で
きるという特徴がある.
② マイクロ化学分析デバイスの開発
新規概念のマイクロ化学分析システムを提案し開発してい
る.本デバイスでは磁気微粒子を含んだ液滴を操作すること
でバルブ及びポンプなどといった流体機械を用いることなく
一連の化学分析ができるという特徴があり,システム全体の
小型化・携帯化が可能である.
③ 能動型マイクロセンサの開発
センサに能動素子であるアクチュエータを付加し「センサ=
受動素子+能動素子」という新しい捉え方をすることで一つ
のセンサ構造で複数の物理量を検出することが可能になる.
本テーマではこの考えを触覚センサに適用し,単一構造で接
触圧と硬さの両方を認識できる能動型接触センサを提案・開
発している.
④ 静電駆動型マイクロアクチュエータの開発
金属フィルムの弾性変形を利用した新規な静電駆動型マイク
ロアクチュエータ構造を提案している.本アクチュエータで
は変位を数ミクロンから数ミリメートルの間で任意に設定す
ることができるという特徴がある.大きさ数ミリメートルの
43
静電駆動マイクロアクチュエータを製作しその動作特性を明
らかにするとともに,マイクロ流体機械デバイスへの応用展
開を検討している.
今後の展望
これまで微小機械システムに関する研究はいかにデバイスを
造るかという生産者の立場で押し進められてきた.この結果各
種デバイスが実現されるとともに,開発されたデバイスが徐々
に市場に参入してきている.一方で地球環境が人類共通の大き
な社会問題になってきており,今後はデバイス生産の発展のみ
ならず,いかにしてマイクロデバイスが環境負荷低減に貢献で
きるかもあわせて検討していきたいと考えている.
経歴
1988 年成蹊大学工学部電気工学科卒業.90 年同大学大学院工学研究科博士
前期課程修了.同年 ( 株 ) 日立製作所中央研究所入所.92 年同社機械研究所
勤務.95 年名古屋大学工学部助手.98 年工学博士.2001 年名古屋大学難処
理人工物研究センター講師.2004 年名古屋大学エコトピア科学研究機構助
教授
所属学会
日本機械学会,電気学会
主要論文・著書
(1) M. Shikida, et al.,“Differences in anisotropic etching properties of KOH and
TMAH”, Sensors & Actuators: A80, no.2, pp.179-188, (2000).
(2) M. Shikida, et al.,“Nano-mechanical method for seeding circular-shaped
etch pits on (100) silicon”, Sensors & Materials, vol.15, No.1, pp.21-35, (2003).
(3) M. Shikida, et al.,“Fabrication of an S-shaped microactuator, Journal of
Microelectromechanical Systems, vol.6, no.1, pp.18-24, (1997).
(4) M. Shikida, et al.,“Active tactile sensor for detecting contact force and
hardness of an object”, Sensors & Actuators: A103, pp. 213-218, (2003).
(5) M. Shikida, et al.,“Magnetic handling of droplet in micro chemical analysis
system utilizing surface tension and wettability”, Tech. Dig. IEEE Micro
Electro Mechanical Systems Conference, Maastricht, The Netherlands, Jan.,
pp.359-362, (2004).
(6) M. Shikida, et al.,“Non-photolithographic pattern transfer for fabricating
pen-shaped microneedle structures”, Journal of Micromechnics and
Microengineering, vol.14, pp.1462-1467, (2004).
●環境システム・リサイクル科学研究部門
微生物の表面夾膜多糖を解明し、
環境に存在する細菌の評価に
利用する
主な研究と特徴
助教授
みやけ
かつひで
三 宅克英
今後の展望
連鎖球菌夾膜多糖の利用
1
はじめに
糖転移酵素に関しては虫歯菌 S.intermedius や S. anginosus
から cps 遺伝子群を単離し、新規糖転移酵素の取得を目指して
B 群連鎖球菌 Streptococcus agalactiae の夾膜多糖は宿主の免疫
機構からの回避のために宿主細胞が有する表面糖鎖と非常に良く
似た構造をとっている。このためこの細菌は糖鎖医薬や糖鎖工学
のための糖転移酵素の供給源として有望である。またこれらの夾
膜多糖は菌株ごとに特異性が高く、排水中の病原菌を検出するた
めの手がかりとしても重要である。
2.酵素供給源としての利用
本研究ではシアリルラクトサミンを側鎖として持つ S. agalactiae
type Ia と Ib の夾膜多糖生合成系遺伝子群(cps 遺伝子群)の構造
と機能の解明を試みた。これらの遺伝子群を取得し全塩基配列の
決定を行った結果、その中にはシアル酸転移酵素、ガラクトース
転移酵素、グルコース転移酵素、N- アセチルグルコサミン転移酵
素など5つの糖転移酵素が存在することが判明した。これらの糖
転移酵素は糖鎖の人工合成への応用が期待できる。
3.多糖の利用
いる。また多糖の生産性については制御因子の分子挙動がだい
ぶわかってきたので、遺伝子操作で生産性向上が可能かどうか
を見極める必要がある。またどのような外部シグナルを受けて
CpsR がリン酸化されるのかが全く不明であるのでその解明も
急務である。
また糖転移酵素だけでなく微生物の夾膜多糖それ自体を利用す
ることも研究している。応用の方向性としては医薬品の原材料と
してのものが考えられる。我々はすでに S. agalactiae の夾膜多糖が
数種類のガン細胞と血管内皮細胞の間の接着を効果的に阻害する
ことを明らかにしている。ガン細胞と血管内皮細胞の接着はガン
転移に深く関わっていることが知られているので、この夾膜多糖
はガン転移阻害剤の原料として期待できる。現在のところこの多
糖は生産量が低く、転移阻害実験などに十分な量を確保するのが
容易ではない。従って医薬品原材料の確保という観点から、生産
量の向上をめざした研究も必要となっている。この点に関しては
経歴
1988 年東京大学農学部農芸化学科卒業、1990 年同大学大学院農学系研究科
修士課程修了、1992 年日本学術振興会奨励研究員、1993 年名古屋大学工学
部助手、2001 年名古屋大学難処理人工物研究センター助教授、2004 年名古
屋大学エコトピア科学研究機構助教授、工学博士
所属学会
日本生物工学会、日本農芸化学会、日本分子生物学会、日本生化学会、化学
工学会、動物細胞工学会
主要論文・著書
(1)Transcriptional coactivators CBP and p300 cooperatively enhances HNF-1 α
-mediated expression of albumin gene in hepatocytes. J. Biochem. in press
(2)Simple assay method for endocrine disrupters by in vitro quail culture: nonylphenol
acts as a weak estrogen in quail embryos, Journal of Bioscience and Bioengineering, 95
(2003)
(3)Molecular characterization of a novel β 1, 3-galactosyltransferases for capsular
polysaccharide synthesis by Streptococcus agalactiae type Ib, J. Biochem., 131, 183-191
(2002).
多糖生合成遺伝子群の発現制御メカニズムの解析を行っている。
4.微生物検出のプローブとしての利用
(4)Expression of chromatin remodeling factors during neural differentiation, J.
最後のテーマとしては微生物の検出法にこの夾膜多糖を使うと
いうことである。夾膜多糖は細菌の種類ごとに異なり、また同じ
種類の細菌であっても菌株ごとに異なっていることが多い。した
がって、環境中にどのような病原菌や土壌細菌が存在するのかを
明らかにするためには、この夾膜多糖を効率よく簡便に検出する
ことが重要になる。本研究ではこれらの多糖に対する抗血清をウ
サギを用いて作製し、ELISA 法によって解析することを試みてい
(5)Structure and function of a novel coliphage-associated sialidase, FEMS Microbiology
る。使用している菌株は B 群溶血性連鎖球菌 S. agalactiae と虫歯菌
S. intermedius 及び S. anginosus である。それぞれの菌株を培養し
たものをホルマリン固定した後ウサギに免役して、それぞれの抗
血清を得た。ELISA 法の結果それらの血清は特異的に対象となる
菌株のみを認識していることが証明された。この方法は細菌の検
出法として有効かもしれない。実際に環境中の様々な菌が混在し
た状態に対してどの程度の感度を示すのかは現在のところ不明で
あるが、今後は土壌細菌などにも対象を広げて応用範囲の拡大を
図る予定である。
Biochem., 129, 43-49 (2001).
Lett., 182, 333-337 (2000).
(6)Transcriptional regulation of nir and nor operons of Paracoccusdenitrificans, J. Biosci.
Bioeng., 89, 384-387 (2000).
(7)Molecular characterization of type-specific capsular polysaccharide biosynthesis
genes of Streptococcus agalactiae type Ia, J. Bacteriol., 181, 5176-5184 (1999).
(8)A gene cluster involved in aerial mycelium formation in Streptomyces griseus
encodes proteins similar to the response regulators of two-c omponent regulatory
systems and membrane translocators, J. Bacteriol. 175, 2006-2016 (1993).
(9)The A-factor-binding protein of Streptomyces griseus negatively cont rols
streptomycin production and sporulation, J. Bacteriol., 172, 30 03-3008 (1990).
(10)Detection and properties of A-factor-binding protein from Streptomyc es griseus,
J. Bacteriol., 171, 4298-4302 (1989).
44
●環境システム・リサイクル科学研究部門
環境にやさしい
新規光触媒反応系の開発
助教授
よしだ ひさお 吉 田寿雄
主な研究と特徴
今後の展望
光触媒は光エネルギーを得ることによって化学反応を促進す
光触媒による有効な化学反応系はまだまだ多様に存在する
はずである。現在,光触媒や反応系の組み方を工夫して新たな
することや,光エネルギー(太陽エネルギー)を化学エネルギ
ーに変換することも可能である。本研究グループでは,これら
の光触媒の特長を十分に活かした環境にやさしい新規光触媒反
応系の開発を行っている。また,触媒の局所構造の定量的解析
に有効なX線吸収端近傍構造(XANES)の解析法の検討も
行っている。
(1)光触媒による高選択的な部分酸化反応
現在最も有名な光触媒である酸化チタンは半導体光触媒であ
り,分子状酸素を用いた酸化反応では完全酸化を促進してしま
う。これは光励起した電子や正孔とこれに付随する活性酸素種
などが触媒表面に多数存在するからであろう。一方,表面にま
ばらに存在する活性点において光触媒反応が進行する「量子光
触媒」(文献1)を用いると,励起した電子と正孔が局所的に
存在するので,制御された部分酸化反応を進行させることが可
能となる。例えば,分子状酸素を用いたプロピレンのエポキシ
選択的酸化反応系や,次世代エネルギーである水素製造のため
の光触媒反応系などを開発中である。今後も新規な反応系と高
活性な光触媒の開発を展開する。
化はプロセス簡略化と副産物軽減のために切望される高難度酸
化反応であるが,我々はシリカに高分散されたチタン種が光照
射下で本反応を高選択的に促進することを見出した。光励起し
た高分散チタン種は酸素分子に作用し親電子的表面酸素種を形
成し,プロピレンの二重結合部位をエポキシ化することを明ら
かにした。
(2)非酸化的光触媒反応
メタンは天然ガスやメタンハイドレートとして存在するだけ
日本化学会・触媒学会・石油学会・ゼオライト学会・放射光学会・光化学協会・
る触媒である。したがって,通常の触媒では困難な反応を実現
でなくバイオマスからの生成も可能であり,炭素・水素資源と
して非常に注目されているが、化学的に安定な分子であり、他
の分子に直接変換することは容易ではない。しかし我々はシリ
カアルミナ光触媒により常温常圧でメタンが直接エタンと水素
に変換されることを見出した。この場合は高分散アルミ種が量
子光触媒サイトとなる。この反応では生成系のポテンシャルの
方が高く,光エネルギーを化学的ポテンシャルとして蓄積して
いることになり、この観点からも意義深い反応である。その後,
さらに高活性な光触媒の開発にも成功している。
また,シリカ光触媒によるアルケンのメタセシス反応などユ
ニークな反応系についても取り組んでいる。
(3)環境浄化のための光触媒の開発
酸化チタン光触媒は酸化力が強く,完全酸化による有機化合
物の無害化処理に有効である。環境中に低濃度に拡散してしま
った有機化合物などの処理を念頭に,疎水性光触媒や共存物質
の影響を緩和するための設計指針などを検討してきた。
(4)XANESスペクトル解析法の開発
X線吸収端近傍構造(XANES)は吸収原子の配位対象性,
電子状態などを反映する。このスペクトルにより局所構造を定
量的に分析する簡便な方法を適宜検討し,提唱してきた。
45
経歴
1991 年京都大学工学部石油化学科卒業,93 年同修士課程修了,同博士課程
進学,日本学術振興会特別研究員,95 年同中退,名古屋大学工学部助手,97
年同大学院工学研究科助手,98 年学位取得(京都大学博士 ( 工学 ))
,03 年名
古屋大学難処理人工物研究センター助教授,04 年名古屋大学 エコトピア科
学研究機構助教授(現職)
。
01-03 年名古屋市工業研究所客員研究員,98 年文部省在外研究員 ( イタリア・
トリノ大学,7 ヶ月 ),04 年北海道大学客員助教授 (1 年 )
00 年国際触媒評議会国際触媒会議賞,03 年触媒学会奨励賞,
所属学会
日本 XAFS 研究会
主要論文・著書
(1) Silica-based quantum photocatalysts for selective reactions, Curr. Opinion. Solid
Mater. Sci., 7, 435-442 (2003).
(2) Active sites and active oxygen species for photocatalytic epoxidation of propene
by molecular oxygen over TiO2-SiO2 binary oxides, J. Phys. Chem. B, 107, 4364-4373
(2003).
(3) Highly dispersed zinc oxide species on silica as active sites for photoepoxidation
of propene by molecular oxygen J. Catal., 220, 226-232 (2003).
(4) Active sites on silica-supported zirconium oxide for photoinduced direct
methane conversion and photoluminescence, J. Photochem. Photobio. A, 160,
47-53 (2003).
(5) Synergistic active sites on SiO2-Al2O3-TiO2 photocatalysts for direct methane
coupling, J. Phys. Chem. B, 107, 8355-8362 (2003).
(6) Active sites on mesoporous and amorphous silica and their photocatalytic
activity: Investigations by FTIR, ESR, VUV-UV-vis and photoluminescence
spectroscopies, J. Phys. Chem. B, 106, 9098-9106 (2002).
(7) Hydrogen peroxide improving crystallinity of TiO2 nano-particle in layer
compound, Catal. Commun., 5,49-54 (2004).
(8) Highly hydrophobic TiO2 pillared clay for photocatalytic degradation of organic
compounds in water, Micropor. Mesopor. Mater., 67, 143-150 (2004).
(9) Effects of support and additive on oxidation state and activity of Pt catalyst in
propane combustion, Catal. Today, 87, 19-28 (2003).
(10) Quantification of Aluminium Coordinations in Alumina and Silica-alumina by
Al K-edge XANES, Phys. Chem. Chem. Phys., 3, 1925-1929 (2001).
●環境システム・リサイクル科学研究部門
電子構造制御による
環境調和型機能性電子材料の開発
講師
たけうち つねひろ
竹 内恒博
主な研究と特徴
従来行われてきた機能性材料の開発では,材料の機能性を重
要視するあまり,機能性材料作成過程における2次的な有害物
の生成を防ぐことや,廃棄物となった際の処理方法などが軽視
されてきた.次世代機能性材料には,作成プロセスにおいて廃
棄物を生み出さないことや,使用後に廃棄物と成らないことが
望まれている.
上記に述べた社会的要求に対応するために,環境調和型の熱
電変換材料,低抵抗微小領域配線材料,蓄冷材,磁性材料など
の機能性材料を創成する研究を行っている.特に,高分解能光
電子分光と,結晶構造解析により得られた結晶構造データを用
いたバンド計算を手法として,フェルミレベル近傍の熱揺らぎ
(kBT)程度のエネルギー範囲にある電子構造を詳細に解析し
ている.この研究手法により,様々な材料の特異な電子物性の
起源を解明し,得られた結果を機能材料の開発に応用している.
今後の展望
T. Takeuchi, T. Otagiri, T. Kondo, H. Sakagami, U. Mizutani,
H. Sato and R. Asahi
2. Electronic structure and its contribution to large
thermoelectric power in layered cobalt oxides
Physical Review B 69 125410 (2004) .
T. Takeuchi, T.Kondo, T. Takami, H. Takahashi, H.Ikuta,
U.Mizutani, K. Soda, R. Funahashi, M. Shikano, M. Mikami,
S. Tsuda, T. Yokoya, S. Shin, T. Muro
3. Orbital hybridizations versus the Fermi surface-Brillouin zone
interaction in strongly hybridizing Al52.5Li32.5Cu15 1/1-1/1-1/1
approximant
Physical Review B 70 024210 (2004).
H. Sato, T. Takeuchi, and U.Mizutani
4. Contribution of local atomic arrangements and electronic
structure to high electrical resistivity in Al82.6-xRe17.4Six
(7 <x < 12) 1/1-1/1-1/1 approximant,
Physical Review B 62 184203 (2003).
T. Takeuchi, T. Onogi, H. Sato, T. Otagiri, U. Mizutani,
目的としている機能材料を幾つか列挙したが,その中で熱電
材料に関しては,上記に記した研究手法を用いて環境材料の設
計指針をすでに構築した.この材料設計指針に基づき,実用化
材料を開発し,それを用いたモジュールを試作し実用化の目処
を立てる.その他の機能性材料(低抵抗微小領域配線材料,蓄
冷材,磁性材料等)については,引き続き材料設計指針を構築
する為の基礎研究を推進する.
K. Kato, T. Kamiyama
5. High-resolution photoemission spectroscopy for the layered
antiferromagnetic (La1-zNdz)0.46 Sr0.54MnO3
Journal of Synchrotron Radiation., 9, pp. 237-241, (2002).
T. Takeuchi, H. Nozaki, T. Kondo, K. Soda, U. Mizutani, T. Yokoya,
T. Sato, T. Takahashi, S. Shin, T. Muro, Y. Saitoh, and Y. Moritomo.
6. Direct Evidence of the Hume-Rothery Stabilization Mechanism in
Al-Mn-Fe-Si Mackay-Type 1/1-Cubic Approximants
経歴
1996 年 3 月 名古屋大学大学院工学研究科博士課程
後期課程 修了 博士(工学)取得
1996 年 4 月∼ 1997 年 3 月 日本学術振興会 特別研究員 DC2 1996 年 5 月∼ 1997 年 2 月 アルゴンヌ国立研究所 客員客員研究員
1996 年 5 月∼ 1997 年 2 月 イリノイ大学シカゴ校 客員客員研究員
1997 年 4 月∼ 2002 年 10 月 名古屋大学大学院工学研究科
結晶材料工学専攻 助手
2002 年 11 月∼ 2004 年 3 月 名古屋大学難処理人工物研究センター
Physical Review B 70 (2004) in press.
Materials Transactions, Vol. 42, pp. 933-938, (2001).
T. Takeuchi, T. Onogi, E. Banno, and U. Mizutani
7. opology of the Fermi surface and Band Structure near the Fermi
level in the Pb-doped Bi2Sr2CuO6+d superconductor
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena,
Vol. 114-116, pp 629-632, (2001) .
T. Takeuchi, T. Yokoya, S. Shin, K. Jinno, M. Matsuura,
T. Kondo, H. Ikuta, and U. Mizutani
講師
2004 年 4 月∼ 名古屋大学 エコトピア科学研究機構
講師(在職中)
所属学会
日本物理学会,日本金属学会,日本放射光学会,米国 MRS,
DVX α研究会
主要論文・著書
1. Thermoelectric properties of Al82.6-xRe17.4Six (7<x <12)
1/1-cubic approximants
46
●環境システム・リサイクル科学研究部門
地盤汚染浄化と物質輸送の評価
助手
いのうえ やすし
井 上 康
主な研究と特徴
人間生活の基盤である地盤環境は、大量生産・大量消費の
社会構造の中において、廃棄物の環境放出により種々の化学物
質で汚染されている。これらの物質は低濃度かつ広範囲に亘っ
て存在することが特徴であり、たとえ低濃度であっても長期間
の暴露により発がんなどの悪影響を及ぼす可能性がある。現に
工場跡地など数多くのサイトで石油系化合物や有機塩素系化合
物、硝酸性窒素などによる汚染が顕在化している。このような
背景から人間の生活環境と自然環境の保全および元来環境が有
している物質循環システムの回復、人類社会の持続的発展を目
指して、環境汚染を効率よく浄化する手法、特に従来の物理的
な汚染除去・浄化システムに微生物修復(バイオレメディエー
ション)プロセスを組み込んだ浄化技術の開発を研究目的とし
ている。そのため様々な物質の地盤中における分布状況を把握
することは非常に重要な課題である。汚染物質や浄化に関わる
様々な化学物質、汚染物質の分解微生物および物質循環に寄与
する微生物は、大気や水などを移動媒体として環境中を輸送さ
れ、時空間的に分布を形成する。特に地盤中では、地層や地質
の複雑性やそれらの構成物質である微粒子の存在によって、対
象となる物質の挙動や運命を精度良く再現することは難しい。
そこで、環境中での溶存物質(汚染物質)や非溶存粒子(微生物、
微粒子)の移動性や消長について、新しい予測モデルの開発に
よる挙動予測と浄化システム構築に関する研究を進めている。
イズが大きく、土壌水・地下水中でコロイドを形成する。これ
らの粒子は汚染物質を吸着し、移動距離を増大させる。従来の
予測手法では考慮されていない環境コロイド粒子による輸送プ
ロセスの解明を目指している。微粒子は様々な物質のキャリア
として機能する可能性があり、これを利用した新しいタイプの
汚染浄化技術の開発も視野に入れている。
3. 技術評価システムの構築:様々な地盤汚染浄化技術をリスク
低減、コストおよび排出される環境負荷の三つの側面から定量
的な評価を行い、トレードオフの関係にあるこれらの評価項目
を包括的に取り扱った技術選択手法の構築を目指している。
今後の展望
膨大な数の汚染サイトに対しそのリスクを評価し、浄化優先
順位を付け、数ある選択肢から浄化工法を選ぶための評価基準
の設定を行うためには、様々な情報が不十分である。複雑で不
確実な現象である地盤環境中での微生物や微粒子の挙動を精度
良く表現する方法の確立は、環境浄化技術の発展に大きく貢献
できる。また、生態系の基盤とも言える微生物環境とその動態
の理解は、環境の質の評価や曖昧な概念として捉えられてきた
環境の自己修復性の定量化を可能とし、廃棄物や汚染物質の排
出問題のような社会経済活動を含めた自然−人間環境システム
の管理に有用な情報を与えていくものと考えている。
経歴
1995 年 3 月 名古屋大学工学部土木工学科卒業、1997 年 3 月 名古屋大学
工学研究科博士課程前期課程地圏環境工学専攻修了、1997 年 4 月 名古屋
大学助手(大学院工学研究科)
所属学会
土木学会、水環境学会、日本地下水学会、廃棄物学会、環境科学会
主要論文・著書
Inoue, Y. and Katayama, A., Application of the rescue number to the
evaluation of remediation technologies for contaminated ground, J. Material
Cycles & Waste Management, 6, pp.48-57, 2004
ANWAR, A.H.M.F., Tien, T.H., Inoue, Y. and Takagi, F., Mass Transfer Correlation
for Non-Aqueous Phase Liquid Volatilization in Porous Media, Environmental
1. 地盤環境修復に用いる微生物の輸送性・定着性:微視的な
観点から微生物の挙動と環境条件の相関性について研究を展開
し、それを基礎とした原位置での輸送定着性を表現するモデル
を構築する。また、原位置での現象と実験室内での現象との相
Science & Technology, 37(7), pp1277-1283, 2003
違点を埋めるための中規模スケールでの研究解析を進めること
により、実環境中での微生物の動態解析を基礎とする数理モデ
ルの構築を目指している。
2. 環境微粒子の輸送特性と化学物質輸送促進現象の解明:地盤
を構成する粘土粒子や植物由来の有機物質などは比較的粒子サ
pp.49-50, 2000
47
Inoue, Y., Tien, T.H., Kumagai, S. and Bettahar, M., Experimental investigation
on soil and groundwater remediation by surfactant flushing, Proceedings of
International Symposium on Advanced Waste and Emission Management,
井上康、目黒亨、大型浸透層を用いた縦分散計数のスケール依存性に関
する研究、水工学論文集、第 44 巻、pp199-204、2000
●環境システム・リサイクル科学研究部門
層状粘土鉱物の可能性:
廃棄物有効利用への応用と
光機能性材料の創生
主な研究と特徴
天然に存在し,古くから利用されてきた層状粘土鉱物は,イオ
ン交換性,熱可塑性,膨潤性などの有益な特性を示すだけでなく,
環境にやさしい物質であり,近年では,セラミックスの原材料とし
ての利用だけではなく,放射性同位体の濃縮・遮蔽材料や有機/無
機ハイブリッド機能性材料用のホスト化合物としての利用が検討さ
れている。私はこの層状粘土鉱物のさらなる可能性を追求するため
に,現在以下の研究を進めている。
(1) 固体産業廃棄物からの多孔性材料の作製
層状粘土鉱物の膨潤性と熱可塑性を利用して,最終処分場枯渇問
題の一因である飛灰と,焼却処理に伴う排出ガス問題を抱える木質
系廃材の両方を同時に原料とした環境浄化用炭素−セラミックス複
合多孔性バルク材料の作製と高機能化に関して研究している。粘土
鉱物の利用により,無機系と有機系廃棄物とを均質なスラリーとし
多様な形状への成形を可能とした。これを炭化処理後,アルカリ水
熱処理することにより活性炭/ゼオライト複合バルク体とすること
ができる。この材料は,
疎水性吸着能とイオン交換能を併せもつため,
多様な環境汚染の除去を同時に実現できる。本手法により廃棄物を
安価な環境浄化用材料に変換・再利用することが可能となる。
(2) 光機能性有機/粘土ハイブリッド材料の創生
層状粘土鉱物のイオン交換性と層電荷密度の高さを利用して,二
次元層間にイオン性/極性をもつ光機能性有機分子を導入すること
により,集積化と自己組織化を誘発し,面外に異方性を有する光機
能性有機/粘土ハイブリッド固体材料の創生とその機能と構造の相
関について研究している。層間に挿入する光機能性有機分子として
は,これまでに (1) 光学非線形色素,(2) フォトクロミック分子,(3)
レーザー色素などを用いている。(1) では,光学非線形色素のカチオ
ン部位の置換位置により,層間での自己組織化構造が影響を受ける
ことを明らかにした。また,これは粘土の層電荷密度にも影響を受
ける。この検討により,この材料が構造の面から二次の非線形性は
発現しないことを解明した。(2) では,熱不可逆型フォトクロミック
分子であるジアリールエテン誘導体カチオンを用い,粘土層間に
フォトクロミック分子が高密度に集積化した透明固体薄膜の作製に
成功した。この膜は,溶液系と同等のフォトクロミック応答を示し,
固体記録素子への利用の可能性を秘めている。さらに,膜内で粘土
平面が基板に平行に配向していることを利用するとより多くの情報
の書込みが可能となる。(3) では,固体色素レーザー用素子の実現を
目的に,粘土層間へのレーザー色素の集積化を行い,光不活性な界
面活性剤を共存させることにより,従来会合により無発光化してい
た固体レーザー色素材料に発光性を付加することに成功した。本手
法は,会合を抑制しつつ色素を固体中に集積・複合化するための有
効な手段の一つである。
助手
ささい りょう
笹 井 亮
界面活性剤が層間で形成する疎水場を,光分解場には,二酸化チタ
ンピラーを採用し,挿入・複合化させることにより,逐次的に吸着
と分解が繰り返される光環境浄化固体材料の作製できた。
今後の展望
今後も粘土鉱物を利用した機能性材料創生の検討を進め,粘土表
面の物性と得られる機能との相関を解明することで,層状粘土鉱物
のさらなる可能性を追求し,様々な方面への粘土鉱物の利用促進に
寄与していきたい。また,今後は粘土に限らず他の層状無機化合物
の基礎物性とその応用について研究を進める。
経歴
1992 年広島大学理学部物性学科卒業,94 年広島大学大学院理学研究科博士
課程前期物性学専攻修了,97 年同博士課程後期物性学専攻修了,同年博士 (
理学 ) 取得,同年平成 9 年度日本学術振興会特別研究員 (PD),99 年名古屋大
学難処理人工物研究センター助手,04 年名古屋大学エコトピア科学研究機
構環境システム・リサイクル科学研究部門助手
99 年∼ 物質・材料研究機構物質研究所客員研究官,03 年∼ 静岡県静岡工業
技術センター客員研究員
所属学会
日本化学会,日本化学会コロイドおよび界面化学部会,日本セラミックス協
主要論文・著書
会,日本粘土学会,廃棄物学会,粉体粉末冶金協会
(1) SASAI, R.; SHIN’YA, N.; SHICHI, T.; TAKAGI, K.; GEKKO, K. Langmuir, 1999, 15, 413.
(2) SASAI, R.; SHICHI, T.; GEKKO, K.; TAKAGI, K. Bull. Chem. Soc. Jpn., 2000, 73, 1925.
(3) SASAI, R.; OGISO, H.; SHINDACHI, I.; SHICHI, T.; TAKAGI, K. Tetrahedron, 2000, 56,
6979.
(4) SASAI, R.; ITOH, H.; SHINDACHI, I.; SHICHI, T.; TAKAGI, K. Chem. Mater., 2001, 13,
2012.
(5) SASAI, R.; FUJITA, T.; IYI, N.; ITOH, H.; TAKAGI, K. Langmuir, 2002, 18, 6578.
(6) SASAI, R.; UKAI, K.; HIROSE, T.; KOJIMA, T.; ITOH, H. J. Jpn. Soc. Waste Manage.
Experts, 2002, 13, 209. (Japanese)
(7) SASAI, R.; SUGIYAMA, D.; TAKAHASHI, S.; TONG, Z.; SHICHI, T.; ITOH, H.; TAKAGI, K. J.
Photochem. Photoboilo., 2003, 155, 223.
(8) SASAI, R.; IYI, N.; FUJITA, T.; TAKAGI, K.; ITOH, H. Chem. Lett., 2003, 32, 550.
(9) SASAI, R.; TORAZAWA, M.; SHIBAGUCHI, K.; ITOH, H. J. Ceram. Soc. Jpn., 2003, 111,
826.
(10) SASAI, R.; IYI, N.; FUJITA, T.; LOPEZ ARBELOA, F.; MARTINEZ MARTINEZ, V.; TAKAGI,
K.; ITOH, H. Langmuir, 2004, 20, 4715.
(3) 光環境浄化材料の創生
層状粘土鉱物の層間に,環境中に拡散した有機汚染化合物を吸着・
濃縮するための場と,その吸着した物質を光分解する場を併せもっ
た材料の創生と高性能化について研究している。吸着場としては,
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