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数学Aに関して - GRAPES
GRAPESを「幾何」で使うための初歩の初歩 ∼「数学A」の平面図形での活用に向けて∼ 1 はじめに 前ページまで,ひたすら,関数を表示し,生 徒たちに動的シミュレーションを味わってもら ってきました。しかしさらに,友田先生のたい へんな御努力により,以前よりも幾何の分野に おいても使用することが可能となっております ことを御存知でしょうか。幾何のソフトといえ ばフリーソフトの Geometric Constructor(愛知 (図1)お馴染みのGRAPESの初期画面 教育大学 飯島康之先生作)や,フリーソフト 図1は,お馴染みの GRAPES の初期画面です。 ではないものとして,Cabri Geometry Ⅱ plus や,ジオメターズスケッチパッドなどが有名で この画面の上部の座標マークのところにマウス す。しかし今回は,あくまで,使い慣れた を持っていくと,図2のように「目盛/軸表示」 GRAPES を使用して「数学 A」での実践につな と表示されるところがあります。 げるための「幾何の分野で使うための初歩の初 歩」を書いてみたいと思います。「初歩の初歩」 というタイトルをつけたように,初めて幾何で 使ってみようと思う方を対象に書いています。 この文章をお読みいただくだけで,あたかも操 作しているように感じていただければ幸いです。 なお,本原稿も文英堂の数学教科書『高等学校 新編数学 A』 (教科書番号 014)を参考に書いて (図2) 「目盛/軸表示」と表示されたところ います。文中に「教科書 p.○○」と出てきた場 ここをクリックしてみてください。座標が 合は,そのページの内容を扱っております。 様々に変化して,4回目には,キレイになくな 2 具体的な操作について ってしまいます。さらにクリックすると,また 現れますので御安心を。 (1)座標軸の消し方 まず初めに初期画面から座標軸を消しましょ う。これが幾何で使うための第一歩となります。 (2)点の打ち方 次に,点を打たないことには,始まりません。 使用する GRAPES のバージョンは 6.37 としてい ます。関数を扱うのと違うところ,それは,座 画面上で右クリックして,点を打ってみましょ 標軸の有無ですね。あくまで点の移動そのもの う。とにかく,点 A,点 B,点 C の3点を順に としては,もちろん座標が大きな役割をはたす 打ってみましょう。もちろん,ドラッグアンド のですが,「見せる」場合には,座標は不要と ドロップでどこへでも,好きなところに移動す なります。そこで座標軸を消してみましょう。 ることができますから,御安心を。 19 (図5) (図3) ここで図3のように右クリックしてマウスを そしてマウスをクリックしますと,図6のよ 「点を打つ」にもっていってみましょう。打ち うに画面の右側に「連結図形」 , 「点を結ぶ」が 出てきます。 たい点の名前が表示されます。 (図6) (図4) そして,例えば点 A のところにマウスをもっ そして適当に点 A,点 B,点 C を打ってみま ていくと,いかにもこれから線をひくように, しょう。 マウスの形が鉛筆の形に変わります。 (3)点の結び方(長さの表示) 次に,点と点を結んで三角形を作ってみまし ょう。さきほどの右クリックをして,図5のよ うに「点を結ぶ」にマウスをもっていってみて ください。 (図7)マウスが鉛筆の形に変化 20 そして,ここからマウスをクリックしたまま ドラッグして,線をひいてみます(図8) 。 (図8)ドラッグしての線びき (図10) 「連結図形のプロパティ」の拡大図 この「連結図形のプロパティ」は,今後, 点 B に到着し,マウスのクリックをやめてみ 様々なことを表示させることができる重要なプ ると,「連結図形のプロパティ」が出現します ロパティです。 (図9) 。 この「連結図形のプロパティ」を見てもわか るように,2点を結ぶ線を「線分」とするか, 「半直線」とするか, 「直線」とするかなどを決 めることができます。 そして,マウスを「ラベル」というところに もっていき, 「▼」マークをクリックする(図11)と, (図9)線をひいた直後に現れた 「連結図形のプロパティ」 (図11)線分の長さの表示も可能 21 「!{len(A,B)|3}//長さ」という不思議な文字が出 てきます。ここは本来,線分「AB」というよ うな,名前をつけることが可能な「ラベル」と いう機能です。しかし,ここにさきほどの不思 議な文字(命令)をそのままクリックすると,線 分の長さが表示されるという仕組みなのです。 これは,すでに友田先生が「ここの長さを表示 するための命令」を我々が書かなくてもすむよ (図13)画面上部の「オプション」 うに,事前に書いていてくださっているもので す。ラベルをさきほどの「命令」にして, 「OK」 を押してみると,ここの線分の長さが表示され ます(図 12) 。 (図12)表示された「線分の長さ」 (4)3点を結んだ角度の表示 さて次に,角度の表示です。ここで角度の表 示というと,高等学校で扱う場合には,「度数 法」と「弧度法」が問題になると思います。 (図14)オプションの中の「関数」タブをクリ GRAPES では,どちらでも表示できるように設 ック 計されています。画面上部の「オプション」 (図 13)をクリックし,その中の「関数」のタ ブをクリックしてみます(図 14) 。 22 (図16)点Bから点Cに結んでいるところ (図15) 「関数」タブの中身。 (図17)再度点Aから点Bに向かって結んで ここでは,角の単位は「度数法」に,また, 角の範囲は, 「−180°から+180°まで」を意味す いるところ このあと,点 B に到着してマウスのドラッグ を離すと,また「連結図形のプロパティ」が表 る「−π→π」にそれぞれ変更してみます。そ 示されます。ここで,次のようにしてみてくだ してOKとします(図 15) 。 さい。 画面上では,何も変化がないようですが,こ 1.頂点のところには,AB としか記入されて こから実際に角度を表示させてみると,その変 いないので,自分で C を追加記入する。 化がはっきり分かります。まず初めに,さきほ 2.図形は「角」を選んでクリック どの続きとして,図 16 のように点 B から点 C に 3.ラベルには,友田先生が,すでに角度を表 線分を結んで∠ABC を作ります。そして,これ 示できるよう準備してくださっているので, から,∠ABC の角度を表示させるために図 17 それを選択。 のように再度,点 A から点 B に向かって線を結 これで「OK」としてみてください(図 18)。 んでみます。 角度が度数法で表示されます。 23 この状態でマウスを点 A にもっていってみて ください。点 A をつまんで動かせるようにマウ スポインタが手の形に変化します(図 22) 。 そして点 A を動かしてみましょう。 AB の長さや∠ABC の値が変化しているのを 実感することができます(図 23) 。 (図20)有効になっている「点を結ぶ」 (図18)角度を表示させるための設定 (図21)無効になった「点を結ぶ」 (図22)つまめるモード (図19) すると,この場合の角度 52.6°が表示されまし た(図 19) 。 ではこの後,1つの点(例えば点 A)をつま んで動かしてみましょう。当然ながら,AB の 長さも変わるでしょうし,∠ABC の角度も変わ ります。 ここで,いきなり点 A をつまもうとしても, まだ,このままでは「点を結ぶ」が生きてしま っています(図 20)。画面右側の「点を結ぶ」 (図23)点Aをつまんで移動 をクリックして,解除します(図 21) 。 24 (5)中点連結定理 さて,ここまでのことを使って「中点連結定 理」を実際に試してみましょう。この定理を学 ぶのは中学ですが,教科書 p.14 でも取り上げて います。 まずは,図 24のように点 A と点 C を結び AB の長さの表示をはずしました。 (図27) (図24) ここで,図 27 のように「ベクトル表記」をク そして,次に点 A と点 B の中点を打ってみまし リックし,x,y の表記を「一本化」します。 ょう。この点は P としてみましょう(図 25,26) 。 (図25)点Pをクリック (図28) (図26)今回は単純に「点」 そして,関数電卓の「関数3」のタブに入っ 25 ている「分点」を使って点Pの入力をします。 (図32)点Pと点Qを「点を結ぶ」モードで結 んでいるところ (図29)ラベル位置を一工夫 (図33)長さ,そして∠APQも表示 (図30)これで点Aと点Bの中点Pが打てる (図34) 「つまめるモード」でいろいろ動かし (図31)同様に中点Qを打ったところ てみましょう 26 (6)円の表示 さて,直線や角度が表示できるようになりま したら,次は何と言っても,円ということにな ります。しかし,円を表示するだけでしたら, 「基本図形」を使って,それほど,難しくなく できてしまいます。この基本図形に使用できる 文字は P,Q,R,S,T,A,B,C,D,E,F, G,H,I,J,K,L,M,N と 19 種類も用意さ れ, 「曲線」の共通使用となっています。 (図37)中心と半径を決めるだけ ここで,半径は,必ずしも「数値」にするこ (図35)基本図形のPを選択 とはありません。そこがなんといっても そして基本図形を選んだ場合,「点」,「円」, 「水平線」,「垂直線」の4つが選択できるよう GRAPES の最大の魅力です。そう,「パラメー タ」が使えるのです。x = a,y = b,r = c と決め になっています。今回は,その中の「円」を選 てあげれば,これで,(x−a)2+(y−b)2= c2 が表示 択してみます(図 36) 。 されることになります。図 38 は,半径を「残像 あり」にして増やしたものです。 (図36)その中の「円」を選択 すると,ここで突然,画面が下に伸びて,図 37 のように,各パラメータを決められるように なります。この突然現れる方式も,「生徒にと ってやさしい」友田先生のすばらしいアイデア (図38) だと感心しております。 27 (7)円周上の点の表示 (円に内接する四角形 教科書 p.20) さて,円を描くことは,容易にできましたが, やはり授業で使うことを考えますと,様々なア イデアが必要となります。円を描き,円周上の 点を動かし,そして,角度を表示していく。角 度は,「弧度法」でもよいものの,やはりわか (図40) 「媒介変数グラフ」を選択 りやすいのは,「度数法」だろうということに そして,以下の様にパラメータを指定を行っ なります。そこで,いろいろと思考錯誤をして てみてください(図 41) 。 みました。私がここで発表するよりも,もっと よい表示の仕方があるのかもしれません。また, GRAPES は,友田先生の不断の御努力によって, 日々進化しているソフトですので,もっと簡単 に表せる方法が出てくるかもしれません。とり あえず,ひとつの「石谷のやり方」ということ で,お読みいただければ幸いです。 まず,座標を消し, 「度数法」 ,そして, 「−π →π」にしておきます。 (p.23 の図 15 参照)次に, 円周上の点を4つ指定してみましょう(図 39)。 いずれ,円周上の点は「動かすこと」が前提と なっています。ここで「基本図形」を使っても 良いのですが,すでにパラメータを使用するこ とを前提としている「曲線」の中の「媒介変数 グラフ」を使用するのがポイントです(図 40) 。 (図41) 「媒介変数グラフ」の各パラメータの 指定 (図39)まず「曲線」のAを指定 まず a ですが,これで「半径」としています。 そして x,y の p,q は平行移動分です。これら を指定することで,任意の位置に円をもってい けることを考えています。次に「変域」の右側 28 は,当初 2πとなっていたところですが,度数 法なので 360 としています。さらにここのとこ ろの「増減幅」ですが,当初 0.1 となっていま したが,これを5としました。一周360°ですの で, 「1°ずつ」の変化では,進み方がかなり遅 く感じました。ので「5°ずつ」の変化としまし たが,みなさんお使いのコンピュータでは,そ れぞれ微妙に違うかもしれません。各自,お試 しください。パラメータは,ここでは t を使い ました(図 42) 。 (図43)図形Bの指定 (図42)使用できる多くのパラメータ また, 「点」のところでは,「ドラッグ」にチ ェックを入れ,「手でつまめる感覚」を大切に しています。そして最後に「ラベル」ですが, 通常ですと A のみとするところですが,ここを A(t) としてみました。すなわち,「この点 A は, パラメータ t で動いていますよ。 」と表示してい るのです。これにより,どのパラメータを動か したら,どの点が動くのかが,はっきりします。 ラベルの「表示位置」は,一応「左上」としま した。表示が円周と重なってしまうことがある かもれませんが,まあ,これは適宜変更しても いいかと思われます。 以上で点 A の指定が終わりましたら,点 B(図 43) ,点 C(図 44),点 D(図 45)と4つほど,指 定しましょう。パラメータは,皆さんのお好き なものを適宜,選んでください。 (図44)図形Cの指定 29 さて,では,「円に内接する四角形の向かい合 う内角の和は 180°である。 」 (教科書 p.20)をや ってみましょう。 四角形ができる位置関係にな るように点を移動させてください。図 47 の様に なりましたでしょうか。 (図47)円に内接する四角形にする位置 そして,それぞれの点を結んでみてください。 (p.21 の図8,9参照) ここで,CDは,線分とするのではなく,「半 直線」の形にしてみてください。ちょうど,図 48のような感じになったでしょうか。 (図45)図形Dの指定 (8)応用例としての円に内接する四角形 さて,ここまでを設定しますと,点 A,点 B, 点 C,点 D がすべて同一点となってしまい,重 なってしまっています(図 46) 。 (図48)それぞれを結んだところ さてここで,CD の延長上に1つ点が欲しいと ころです。そこで,今回は,単純に「基本図形」 の点 E で設定しようと思います(図 49) 。 (図46)4つの点の重なり 「これでは,ドラッグもできない!!」と, 思いきや,なんと点 A から順に,ドラッグがで きました。不思議な感じがしました。 (図49)基本図形の点Eを使用 30 式の形を見れば,一目瞭然ですね。そう,CD CD の延長上の点ということで,あまり「凝っ を2:1に「外分する点」としています(図 51) 。 た」形は使いませんでした。「分点」を使った のです。 (図52)点Eが表示された そして次に,∠BAC,∠BDC,∠BDE の数値 を表示させてみましょう(図 53) 。 (やり方は,p.23 の図 17,p.24 の図 18,19 を参 照) (図50) マウスをもっていくと下のほうに「分点」の 説明が表示される。とても丁寧です(図 50) 。 (図53)角度を見やすくするのもコツ そして,点 A,点 B,点 C,点 D,および,各 パラメータを変化させてみてください(図 54) 。 (図51)点Eを「分点」を用いて表現 31 ■ 音が出せるようになった GRAPES 本原稿執筆中に,友田先生の御努力により, GRAPES が,Ver.6.40 へとアップされました。 今回のアップにより,GRAPES は,PLAY コマ ンドが使えるようになったので,音が出せるよ うになりました。この応用分野は,非常に広く 考えられます。とくに,理科の分野においても GRAPES をおおいに活用していくことが可能と なるのではと期待されます。 ここで実際に紙面から音は出ませんが,友田 先生が作られたサンプルの中から紹介したいと (図54)点Dを動かしてみた 思います。 3 おわりに 友田先生作のソフト GRAPES のすばらしさは, ここに挙げただけに留まりません。図形の分野 においても,p.25 の図 28 を見てもわかるように, 多くのパラメータやコマンドが用意されていま す。 「数学 A」では,「三角形の性質」として, 「三角形の辺と角の大小」,「角の二等分線と辺 の比」 , 「三角形の重心・外心・内心」を扱いま ▲ サイン波(正弦波)のきれいな音 すし,また「円の性質」として「円に内接する 四角形」 , 「円と直線」 , 「2円の位置関係」も扱 います。生徒たちにとって,実際に触って動か してみるという機会を得ることはとても有意義 なことだと考えられます。 ぜひ,この紙面で私が操作した以外のコマン ドにも多く触れていただき,GRAPES のすばら しさを体感していただければと思います。 今後ともよろしくお願いします。 ▲ 様々な「波」の音を楽しむ ぜひとも,皆さんも同僚の理科の先生方にも ご紹介いただければと思います(もちろんこれ 以外のサンプルも多く入っています) 。 32