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企画提案書 - 次世代天然物化学技術研究組合
(様式2) 受付番号 ※記載不要 「平成 26 年度次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発 (天然化合物及びITを活用した革新的医薬品創出技術) 「次世代型有用天然化合物の生産技術開発-天然化合物の生理活性評価技術の開発」 」 企画提案書 1. 事業名 平成26年度次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発(天然化合物及び IT を活用し た革新的医薬品創出技術) 「次世代型有用天然化合物の生産技術開発-天然化合物の生理活性評価技術の開発」 2.事業の概要 天然化合物は人智の及ばない構造を有し、また強力な生物活性を示すことから、医薬品開発 の優れたソースとして用いられてきた。しかしながら、誘導体展開などが困難である上に、こ れまでの手法では新たな骨格を持った化合物の発見は極めて困難になってきている。一方で、 ゲノム解析技術の進歩により、これまでヒトが利用出来なかった有用化合物生合成遺伝子を利 用した化合物生産が可能になってきている。 我々は現在、 「次世代型天然化合物の生産技術開発(平成 25~29 年度)」において、産業応用 を見据えた異種発現ホストによる生合成遺伝子を応用した化合物生産技術の開発を進めてい る。そのうちの一つの目的である、未利用生合成遺伝子を応用した新規化合物生産技術の開発 において、生理活性が期待される生合成遺伝子について異種発現生産を検討した結果、新奇な 天然化合物生産に成功している。この生産技術を用いて生産した新規化合物は活性を指標とし て取得したものではないため、生理活性の有無を検証する必要がある。そこで本事業では、細 胞レベルでの生理活性として、培養細胞の形態変化や蛍光でラベルした蛋白の細胞内局在を指 標とする化合物評価系技術の開発を行う。本技術の開発により、生理活性が明らかでない新規 天然化合物の生理活性を明らかにすることが期待されると共に、既存の化合物の新規生理活性 を効率的に探索するツールが開発され、産業的にも応用可能になる。 1 3. 事業目的 欧米の多くの製薬企業や研究機関に追随して、我が国でもコンビナトリアルケミストリー による化合物合成と、それらライブラリーを用いたハイスループットスクリーニングが盛ん に行われたが、必ずしも期待された成果は得られなかった。また、近年コンピューターシミ ュレーションによる、in silico スクリーニングが急速な進歩を遂げ、分子標的薬などの創 製に大きく貢献しているが、高い活性を持った母骨格無しには、未だ強い活性を持った化合 物の創製は困難であるのが現状である。 そのような中、豊富な生物活性と大きなケミカルスペースを持った天然化合物が再注目さ れている。天然化合物の最大の魅力は、人智の及ばない構造を有すること、さらには強力か つ多様な生物活性を示すことである。天然化合物のリソースとして現在でも微生物代謝産物 は最も有望なリソースの一つであるが、従来の培養抽出物をそのまま用いる方法では、スク リーニングの効率化の問題等から、現行のスクリーニングシステムには適合しにくくなって きている。また、微生物由来の天然化合物に関しては、これまで長きに亘り産業応用および 基礎研究の両面から多くの研究が行われた結果、既に多くの天然化合物が見出されており、 新奇な骨格を持った化合物のさらなる発見は困難になってきている。 一方で、微生物の中でも多種多様な化合物を生産する放線菌、 Pseudomonas あるいは Bacillus 属などには、多くの二次代謝産物生合成遺伝子が存在することが、近年のゲノム解 析により明らかになってきている。にも拘わらず、従来の培養技術ではそれらのほんの一部 の化合物しか生産させることが出来ておらず、大多数の生合成遺伝子が未利用な状態で存在 している。また、海洋生物由来の生理活性物質は、高い生物活性を有するにも拘わらず、リ ソース収集の限界から十分なサンプル供給が不可能なため、産業面での応用が困難あるいは 不可能なケースが多い。これら海洋生物由来の天然化合物は内在する共生微生物が生産する と考えられているが、それらの微生物は単独では培養困難であることが多く、従来の発酵技 術で化合物生産を行うことは不可能であるのが現実である。 これに対し、近年ゲノム解析技術が急速に進歩しており、メタゲノム的アプローチによる 生合成遺伝子の取得なども行われ、未利用生合成遺伝子や培養困難な微生物の生合成遺伝子 を活用した、異種発現系による化合物生産が徐々にではあるが可能になってきている。こう した状況の中、欧米では、今後予想される安価かつ大量ゲノムシークエンスに対応した、効 率的な天然化合物生産システムの開発が進められており、我が国が世界をリードして来た天 然物化学の優位性が脅かされつつある。 「次世代型天然化合物の生産技術開発(平成 25~29 年度)」(以下「天然物 PJ」 )においては、 天然化合物を生産する生合成遺伝子の解析・取得を行い、取得した生合成遺伝子クラスターを異 種発現用のホストに導入するという基盤技術の開発を行っている。その中で、ゲノムからのアプ ローチにより判明した、未利用生合成遺伝子を用いた新規化合物の生産を試み、想定よりも早く 新規天然化合物の取得に成功した。異種発現の標的とする未利用生合成遺伝子に関しては、産業 応用を見据えた技術開発を目的とすることから、強い生物活性を発現することが期待される骨格 2 を生合成すると考えられるクラスターを選抜し、異種発現システムに供した。しかしながら、こ れらの化合物は生物活性を指標に取得したものではない。そのため、このような戦略により創出 した化合物が、今後創薬スクリーニングなどで有効であるかどうかを検証することが望まれ、ど のような生理活性を持つかを新たに試験する系の開発が必要である。 そこで本技術開発では、近年急速に進歩しつつあるハイコンテンツスクリーニングの手法 を用いて、 「天然物 PJ」において取得した生理活性が明らかでない天然化合物の生理活性を効 率的に明らかにする手法を開発する。「天然物 PJ」と本技術開発の成果を組み合わせること により、製薬企業が望んでいながらこれまでなかなか得られなかった新規骨格を持った生理 活性のある天然化合物を効率的に取得する道が開拓されると期待できる。それに加えて、本 技術開発の成果を用いることで、既存の天然化合物の新規生理活性を見出すことも期待され る。 本技術開発では、我が国の強みとする微生物ライブラリーや、天然物化学に対する知識ノ ウハウ等を最大限に活用し、創薬などに応用可能な優れたリード化合物候補となりうる広い ケミカルスペースを持った天然化合物の取得を効率的に行えるための技術開発を行う。これ により、医薬をはじめ、動物薬、農薬、機能性材料などの幅広い分野に活用できる化合物候 補の創出を加速させることができる。さらに、バイオテクノロジーの産業化において有用な 知見が蓄積しバイオ産業の情報基盤を強化することができる。また、画期的な新薬等の創出 の期待ができるとともに、我が国バイオ産業の競争力強化・新産業の創出を図り、国際的優 位性を確保することができる。これらが本事業の目的である。 4.事業の背景・必要性 安倍政権の成長戦略においても製薬業界はこれから成長が期待される産業として位置づけ られている。しかし、世界の製薬業界においてこの 10 年の傾向を見ると、研究開発費を大量 に投下しているにもかかわらず上市される新薬の数は減っているのが現状である。これは、 より難しい領域の薬を開発しているためでもあるが、優れたシード化合物が枯渇してきてお り、製薬企業のニーズとして、これまでにない新しい骨格を持った分子が求められている。 高分子の抗体に活路を求める企業もあるが、取り組みやすいターゲットの抗体はすでに特許 が押さえられており、いいターゲットはあまり残されていないのが実情である。 新規骨格を持った分子の創出のため、その対応策の一つとして進歩が著しい IT 技術を用い て化合物をデザインする手法も研究されているが、その前提となる標的タンパク質の立体構 造の多くはまだ明らかになっておらず、生体内におけるタンパク質複合体の状態を正確に立 体構造として明らかにするには技術的にハードルが高い。その現状においては、ランダムス クリーニングを行って薬理活性を持った新しい化合物を見出すことが必要であるが、低分子 化合物と呼ばれる合成化合物ではやり尽くされた感がある。 一方、天然化合物の場合は合成化合物よりも大きな分子が多く、複雑な構造を持った化合 3 物が多いため、今後も工夫により新しい骨格を持った化合物を見出すことが期待できる。実 際、微生物のゲノム配列を明らかにすることにより、生合成遺伝子は存在するものの対応す る化合物が生産されていない、いわゆる未利用遺伝子が多く存在していることがわかってき ており、それらの遺伝子を用いることにより、新規化合物の創出が期待される。放線菌の場 合には半分以上が未利用遺伝子と考えられている。そのため、この未利用遺伝子を発現させ てこれまで知られていない新規化合物を生産させれば、製薬業界が求めている新規骨格を持 った化合物を提供できる可能性がある。 平成 25 年度から実施している「天然物 PJ」においては、この未利用遺伝子を発現させて、 これまでになかった化合物の生産に成功している。しかしながら、このような未利用遺伝子 の生産によって得られた新規骨格を持った化合物は生物活性を指標にしたスクリーニングに より取得した化合物ではないため、どのような生物活性を有しているかは不明である。そこ で、生理活性の判明している既存の化合物をツールに用い、培養細胞の形態変化を指標に用 いて新規化合物の生理活性を効率的に見出すことが一つの解決策として有用である。 培養細胞の形態変化を用いた生物活性の判別法は古くから天然物のスクリーニングにおい ては利用されている。このようなスクリーニングの最も大きな長所は細胞レベルで活性が担 保されていることであり、in vitro スクリーニングにおいて多大な労力を費やして見出した 化合物が細胞レベルで全く活性が観察されないと言う事態を予め回避することが出来る。こ のようなスクリーニングでは、以前は人の目で判断していたため高い目利きが要求されたが、 近年になって IT 技術及び光学系技術の急速な進歩により、この形態変化を機械に判別させる いわゆるハイコンテンツスクリーニングが可能となってきている。この技術を用いることで、 単純な細胞毒性のような活性評価ではない、複雑な生理活性評価が可能になる。また、新規 化合物の生理活性の判定のみならず、新たなスクリーニング系においても同様の形態変化を 指標としたスクリーニング系を構築することが可能となり、新たなリード化合物候補の創出 につながる。さらに、生理活性を示す新規化合物に関しては、物質特許となり得ることから、 いち早く生理活性の有無の検証が必要になってくる。本事業により、細胞レベルで何らかの 生理活性を見出すことで、いち早く新規物質の権利化を進めることが期待される。 現在実施中の「天然物 PJ」と本技術開発を合わせて実施することにより、新規化合物を多 数天然化合物ライブラリーに追加供給してランダムスクリーニングに供することができるだ けでなく、見出した化合物の生理活性を予測する技術も開発することができる。現在の日本 の製薬企業では天然化合物を用いたハイコンテンツスクリーニングを行っている会社はほと んどないため、国の事業としてこのようなスクリーニングを実施していくことにより、生理 活性の判明した新規シード化合物候補を製薬企業に提供することは、日本における天然物か らの創薬を再度活性化することにつながるはずである。 4 5.新規性・先進性等 日本では古くから、天然化合物からのランダムスクリーニングに際し培養細胞の形態変化 が経験的に用いられてきた。この手法は微生物の培養抽出物のような混合物からでも求める 活性物質を効率的に拾い上げる手法として有効であり、多くの新規化合物といくつかの製品 を生み出している。この手法は日本のお家芸の一つともいえるものであるが、以前は顕微鏡 を用いて人の目で見ながらスクリーニングを行っていたため、HTS が流行した際には 10 万検 体を超える多検体のスクリーニングに対応することが困難であった。 いわゆるハイコンテンツスクリーニングの技術は、コンピューター処理技術や光学系の技 術の進歩により、年々進歩してきており、近年になってやっと実用的なレベルのスループッ トを出せるほどにまで改良されてきた。また、GFP に始まった蛍光タンパク質の改良により、 これまでは簡単にはわからなかった特定のタンパク質の局在の変化や発現量の変動までも細 胞を固定しなくても生細胞で観察することができるようになった。 そのため、本提案で使用する予定の最新のハイコンテンツスクリーニングの装置(Opera) を用いることで、これまで人の目でしかチェックすることができなかった培養細胞の形態変 化といった指標を効率よく多検体のスクリーニングに用いることが可能となる。 現在では創薬標的分子を特定してから創薬を行う手法が一般的である。しかしこの手法で は、新たにニーズが出てきた再生医療の分野においてはまだ生物学的に未解明の現象が多い ため、例えば iPS 細胞の軟骨への分化を促進する薬剤をスクリーニングする場合は、現象は とらえることができても具体的なターゲットが特定できていないために対応できない。しか しこのような新しい創薬分野においても、培養細胞の形態変化という指標を生物現象として つかんでおけば形態変化によるスクリーニングは可能である。 これまでの多くの実績から、天然物を用いた形態変化を指標としたスクリーニングは有用 な新規化合物を見いだせる可能性が高い。同時に、既知の天然化合物に関しても、これまで 見逃されていた生理活性が見出される可能性が有り、創薬に応用されることも期待される。 この手法に最新の技術を組み合わせてハイコンテンツスクリーニングを実施する事により、 これまで見いだせなかったリード化合物候補を見いだせる可能性が高いと考えられる。欧米 においてもすでにハイコンテンツスクリーニングは行われているが、日本には古くからの知 見の蓄積があるため、この知見と経験をハイコンテンツスクリーニングで蘇らせれば創薬分 野における競争力を取り戻すことができることが可能となる。 本技術開発によって、次世代天然物化学技術研究組合が保有する生理活性が判明した多く の天然化合物をツールに用いて、未利用遺伝子から取得した新規化合物の生理活性を検証し、 既存の天然化合物の新規生理活性を見出すことが可能になるとともに、将来的には天然化合 物を用いたハイコンテンツスクリーニングの手法を再生医療のような新しい医療分野に応用 する事が可能となり、画期的な新薬創出につながる可能性がある。 5 6.事業の目標 本年度終了時: がん幹細胞の特徴を維持しているグリオーマ細胞をスフェア培養と呼ばれる細胞塊を形成 した状態での培養を行い、次世代天然物化学技術研究組合(組合員の所有含む)が所有する 約 2000 の単離天然化合物について、スフェア培養時のグリオーマ細胞に対してどういう形態 変化を引き起こすのか観察する。単離天然化合物の中で生理活性の判明している化合物を中 心として、イメージアナライザー(Opera)を用いて、それらの化合物がどういう形態変化を 引き起こすのかデータを取得し、データベース化を行う。 一方で、 「天然物 PJ」において取得した新規化合物数個について、これらの単離天然化合 物と同じパターンの形態変化を起こすかどうかを検証し、得られた新規化合物の生理活性に ついて探索する。 7.実施体制 次世代天然物化学技術研究組合からの「次世代型有用天然化合物の生産技術開発-天然化合 物の生理活性評価技術の開発」への参加企業・機関は以下の通り。 エーザイ株式会社、オーピーバイオファクトリー株式会社、クミアイ化学工業株式会社、合 同酒精株式会社、塩野義製薬株式会社、第一三共 RD ノバーレ、日本マイクロバイオファーマ 株式会社 (MBJ)、Meiji Seika ファルマ株式会社、独立行政法人産業技術総合研究所、一般 社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム 詳細な実施体制を別紙1に示す。 次世代天然物化学技術研究組合 研究開発責任者(プロジェクトリーダー): 所属 独立行政法人産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門次世代ゲノム機能研究 グループ 氏名 新家 一男(研究グループ長) 電話 03-3599-8305 FAX 03-3599-8494 業務管理責任者: 所属 次世代天然物化学技術研究組合 氏名 佐藤 文治(研究開発部長) 電話 03-5531-8554 FAX 03-5531-1560 6 経理責任者: 所属 次世代天然物化学技術研究組合 氏名 国田 電話 03-5531-8555 FAX 治彦(管理部長) 03-5531-1560 研究実施場所 集中研究所 独立行政法人産業技術総合研究所 研究所名称:バイオメディカル研究部門次世代ゲノム機能研究グループ 住所:東京都江東区青海 2-4-7 選定理由: 天然物および菌株ライブラリーを保有し、ハイコンテンツスクリーニングのための既知物 質を用いたプロファイリングを効率良く行える。また、異種発現システムによる化合物生産、 および単離・構造決定が行える。in silico 解析、データベース構築に長けている。生合成 遺伝子クラスター取得、異種発現、データベース構築、ハイコンテンツスクリーニングを実 施。 8.事業の詳細内容 天然化合物は、極めて豊富な生物活性を示すことが知られている。抗菌活性や細胞毒性と 言った単純なアッセイ系で取得された化合物も多いが、同時に「観察眼の優れた研究者の目 利き」により見出された化合物も数多く存在する。有名なヒストンデアセチラーゼ (HDAC) 阻 害剤であるトリコスタチン A (TSA) は、フレンド白血病の分化誘導を引き起こすことで再発 見された化合物であり、現在ではその構造を模して合成された SAHA (suberoylanilide hydroxamic acid) は、vorinostat という薬剤名で臨床薬として用いられているのと同時に、TSA はエピジェネティクス研究のブレークスルーと言っても過言では無い発展に極めて大きく貢献し た。 このように、細胞の形態変化を指標としたスクリーニングにより、特異的な活性を示す化合物 の取得が期待されるが、先に記述したように「観察眼の優れた研究者の目利き」が必要で有り、 万人に適用出来るアッセイ系では無かったのが現状である。このような問題を解決する機器 として、イメージアナライザーが開発されてきたが、中でも Opera は多機能性を有しており ハイスループットスクリーニングが可能になっている。本事業では、細胞形態変化を指標に、 新たな化合物の「何らかの生物活性を見出す」ことを第一の目的に行い、これまで人類が応 用することが出来なかった未利用生合成遺伝子を用いた、異種発現生産で取得した新規化合 物の早い権利化を進める。さらに、これまでの「観察眼の優れた研究者の目利き」で見出さ れて来た化合物を用いて、種々の細胞に対する形態変化データを取得し、データベース化を 行う事により、作用メカニズムが未知の化合物の活性発現機序を推定するシステムの確立を 7 目指す。 これまでにも、種々の細胞を用いた形態変化を指標にした化合物活性分類法の構築は行わ れて来たが、次世代天然物化学技術研究組合は一般では購入することが出来ない、多くの天 然化合物を保有しており、より一層高いレベルでハイコンテンツスクリーニングの実施が期 待される。本事業では、具体的な例として、ヒト臨床分離癌である数種類のグリオーマ細胞 を用いて、その形態変化を指標にした生物活性評価を行う。臨床分離グリオーマ細胞は、主 として、proneural タイプと mesenchymal タイプに分類され、我々はそれぞれの細胞につい て放射線耐性を示す細胞などを保有している。現在の癌治療における、最大の問題の一つは、 「がん幹細胞」の存在である。がん幹細胞は、様々な性質を持ったがん細胞に分化する特徴 を有するが、定常期では増殖性の極めて遅い細胞であり、従来の抗がん剤に対して抵抗性を 示す。癌化学療法では、一旦縮退した癌組織が、治療耐性を持ち再び増殖してくるのが問題 になっているが、このメカニズムの一つとして、再発の際に抗がん剤治療で生き残ったがん 幹細胞から、薬剤耐性を獲得した癌細胞が生み出されると考えられている。通常のがん細胞 では、フローサイトメトリーにより side population と呼ばれる領域に分離された細胞群が がん幹細胞様の性質を持つが、分離後直ちにヘテロな性質を持った細胞群に分化してしまう ため、がん幹細胞の性質を持った細胞を濃縮して維持することが出来ない。それに対し、我々 の保有する臨床分離グリオーマ細胞は、スフェア培養と呼ばれる細胞塊を形成した培養法に より、安定してがん幹細胞の性質を維持することが可能である。しかしながら、スフェア培 養においては、細胞の生死等を判定する単純な簡易試薬では化合物の作用を検定することが 困難である。Opera のようなイメージアナライザーを用いた生物活性検定には最も適した細 胞である (逆に、イメージアナライザーを用いなければ特徴的なアッセイが出来ないと言う のが本質である)。 前述の HDAC 阻害剤は、ヒストンのアセチル化を促進することにより様々な遺伝子の発現調節 を人工的に変化させることが出来るが、その作用の一つとして、アクチンを介したストレスファ イバー形成が誘導されることが知られている。我々のこれまでのグリオーマ細胞を用いたパイロ ット的なスクリーニングで、幾つかの HDAC 阻害剤が有効であることを見出しているが、スフェア 培養における細胞塊状態でストレスファイバーの形成が起こるのか、また起きた場合どのような 形態変化が観察されるかの詳細な検討は出来ていない。このように、グリオーマスフェア細胞塊 のような特異的な細胞について、これまで検証することが出来なかった様々な形態変化のデータ を取得することにより、新たな薬剤標的を見出すことも期待される。また、既存の薬剤に関して も、種々の形態変化を観察することにより、新しい作用を持った化合物が再発見できることが期 待される。そこで本事業では、次世代天然物化学技術研究組合の保有する様々な天然化合物を用 いて、グリオーマスフェア細胞塊での形態変化データを取得し、データベース化を行う。 これらを通じて、これまで簡単な活性試験しか確認していなかった新規化合物および「天然物 PJ」での未利用遺伝子の異種発現により生産された新規化合物の生理活性の有無を検討し、組合 員企業にも協力を仰いで予想された生物活性について確認を行う。その結果、特許取得が可能な 8 ものについては特許を取得した上で産業利用を推進する。また、これらの新規化合物については 次世代天然物化学技術研究組合が保有する天然物ライブラリーに追加して、ライブラリーの相互 利用に利用する。 これらにより開発した技術、システム、ツールを各企業での天然化合物生産、あるいは天 然化合物のスクリーニングに応用し、創薬あるいは農薬などの物質生産を加速させる。 9.事業遂行能力 研究開発テーマ:天然化合物の生理活性評価技術の開発 1)次世代天然物化学技術研究組合 次世代天然物化学技術研究組合は、平成 23 年度から 24 年度に(独)新エネルギー・産業 技術総合開発機構(NEDO)から委託されて「ゲノム創薬加速化支援バイオ産業基盤技術開発」、 研究開発項目② 「有用天然化合物の安定的な生産技術開発」を実施した経験を持ち、天然化 合物のスクリーニングにおいては実績を持つ。本技術開発において、放線菌を対象にした生 合成遺伝子クラスター同定・取得、および異種発現生産を産業レベルで達成できるかの大規 模な検証を行った。その結果、世界でも限られた研究室でしか確立されていない、高精度な BAC ライブラリー調製技術の開発に成功した。 この成果を元に平成 25 年度から 29 年度にかけて経済産業省から「次世代型天然化合物の 生産技術開発」を実施中である。 以下に次世代天然物化学技術研究組合におけるプロジェクトリーダー及び参加予定組合員 (または組合員研究者)の事業遂行能力を示す。 a) 独立行政法人産業技術総合研究所 新家一男(プロジェクトリーダー) 当分野を担当する新家は、二十年以上に亘り疾患治療薬のリード化合物を見出すために、 天然物より生物活性物質の探索を行ってきた。この約 4 年間の間に、120 個以上の新規化合 物を単離している。また、NEDO プロジェクトを通じて、世界最大の天然物ライブラリーの確 立、および薬剤スクリーニングのハイスループットシステムを確立している。この過程で、 様々な新規菌株分離法の開発、またそれら菌株による物質生産に関わる菌株、および培養の 改良を行ってきた。 天然物化学の構造決定に関しては、NMR などの機器解析情報に加え、生合成経路情報を応 用することにより、より論理的に構造決定を行う。そのため、天然物化学は、合成などの有 機化学的知識と、生合成経路の解析などの分子生物学・生物化学的知識の両面が要求される 特殊な学問分野である。天然物スクリーニングの分野にまで範囲を広げると、これらの知識 9 に加え、アッセイ系構築のために医学・薬学的知識も要求されるため、製薬企業内で行って いる研究全般にわたる知識が要求される。新家は、この分野で 25 年にわたりトップクラスの レベルで研究を継続してきており、天然物化学分野をリードしてきた。 特に、本技術開発と密接に関わる研究として、NEDO プロジェクトの「有用物質の安定生産」 プロジェクトでは、これまで基礎研究として行われて来ていた、放線菌二次代謝産物の産業 レベルでの、異種発現生産システムによる安定生産技術の開発に取り組み、二年間で 60 個以 上の化合物について、生合成遺伝子クラスターの取得、および異種発現生産に関する開発研 究を行った。特に、BAC ライブラリー調製技術では、世界でも限られた研究室でしか確立さ れていない、高精度な BAC ライブラリー調製技術の開発に成功し、今ではトレーニングコー スを習得すれば、誰でもが適用出来るレベルにまで汎用性を高めている。したがって、本技 術開発の巨大生合成遺伝子クラスターの取得に関しては、世界でも最も適した研究室である と言える。 また、天然物化学に関する研究としては、以下のような実績を持つ。 天然物からのランダムスクリーニングは、新しい化合物が取れなくなってきていること、 あるいは効率が悪いということで敬遠されがちではあるが、現在でも医薬はもとより、生命 現象を解明するツールとして汎用されている。特に、がん特異的に作用する抗腫瘍剤の開発 を目的に、最新のがん分子標的に基づいたスクリーニングを行った結果、極めて特異的な構 造および生物活性を有する 3 つの新規化合物を単離し、現在臨床応用に向け開発中であると 共に、それらの作用機作解析の研究を通じて、哺乳類細胞における新たな生命現象メカニズ ムの解明に大きく貢献してきた。このうち、テロメラーゼと呼ばれる酵素に対する阻害剤に ついては、世界中の製薬会社をはじめ多くの研究機関で開発が行われたが、我々の発見した telomestatin は合成化合物を含めた全てのテロメラーゼ阻害の中で、最も強力かつ特異性の 高い化合物であった。その後の作用機作解析の結果、本物質はテロメラーゼではなく、テロ メアの特異的な配列に作用することを明らかにし、その特異性を生かして世界中で作用解析 研究が行われ、がん細胞と正常細胞ではテロメアの安定性が全く異なるなど、従来考えられ てきたがん生物学の考えを変える新しい発見をもたらしている。この化合物の単離、構造決 定の論文は、純然たる化学論文でありながら、化学分野とは異分野の生物学の分野で多数引 用され、我が国のトップ 1,500 論文に選抜されている。この他にも、神経細胞保護物質につ いては、その化合物を用いて新たな神経細胞死メカニズムを見出すことに成功し、また抗腫 瘍剤として見出した化合物が、循環器薬や生活習慣病治療薬としても有望であることを見出 している。 以上、我々が単離した化合物のうち幾つかは、臨床開発が進められており、また世界でそ の分野の目標あるいはスタンダードとなっている。また、確立した世界最大級の天然物ライ 10 ブラリーは、今後我が国において、大学等公共機関をはじめ、企業間の相互利用をも視野に 入れた、広い領域で利用可能なライブラリーとしてシステムを確立中である。 以下のプロジェクトに関してプロジェクトリーダーの役割を担当 国又は国所管の独立行政法人からの委託若しくは助成による類似の技術開発実績 助成元:新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 事業名: (健康安心イノベーションプログラム) 「ゲノム創薬加速化支援バイオ産業基盤 技術開発」 、研究開発項目② 「有用天然化合物の安定的な生産技術開発」 事業概要: 放線菌を対象にした、生合成遺伝子クラスター同定・取得、および異種発現生 産を産業レベルで達成できるかの大規模な検証を行った。 実施年度:平成 23~24 年度 助成元:経済産業省 事業名: 「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発 (天然化合物及びITを活用した革新的医薬品創出技術) 「次世代型有用天然化合物の生産技術開発」 事業概要: 上記の NEDO プロジェクトをさらに発展させ、難培養微生物や土壌メタゲノム、 未利用生合成遺伝子から生合成遺伝子クラスターを同定・取得し異種発現生産 できるように技術開発を行う。 実施年度:平成 25~29 年度 b) エーザイ株式会社 昨今の HALAVEN の上市に代表されるように、現在臨床開発中の物質群は天然化合物を起源 としたものが多く、天然物創薬を積極的に推進しており、高度な天然物合成技術、微生物代 謝産物解析インフォマティクス技術を有している。当社の保有する菌株について、「天然物 PJ」の生合成遺伝子クラスター解析の結果、当社で興味のある生合成遺伝子に関して生合成 遺伝子クラスター改変などを行い、力価向上が達成されれば創薬に繋げる。また修飾酵素を 用いた化合物変換技術に関しては、合成技術を補完あるいは REPLACE する技術として創薬開 発に応用する。 c) オーピーバイオファクトリー株式会社 当社は、日本国内で最も生物多様性に富んだ沖縄県をメインフィールドとして生物資源ラ イブラリーを構築している。ライブラリーは、海洋生物,海洋微生物 (放線菌、糸状菌、細 11 菌、酵母、乳酸菌)、および微細藻類で構成されている。当社の母体となっている海洋調査会 社で培った技術を駆使して、特に海洋生物資源は一般的には入手し難い新鮮なサンプルを採 集、スクリーニングを実施している。沖縄県より海洋における特別採捕許可を取得している 為、合法的に調査研究素材を特殊技術をもって収集が可能な数少ない研究機関であり、同社 を共同機関とすることで新鮮で特異性の高いサンプルが入手可能である。また、当社におい ても、保有するサンプルを用い、熟練した創薬経験者の技術を基盤としたスクリーニングを 実現しており、従来の陸上サンプルを使用した天然物スクリーニングに比較して新規な活性、 構造を有した化合物が数多く得られている。 d) クミアイ化学工業株式会社 クミアイ化学工業株式会社は、従来の薬剤に比較して低薬量で高い作物保護効果を有し、 同時に安全性の高い農薬の有効成分を数多く開発しており、農産物の安定供給に資する新農 薬の創製研究に取り組む研究開発型の農薬専業メーカーで、微生物農薬のリーディングメー カーでもある。農薬開発は生化学、分子生物学、有機化学、物理化学等のさまざまな学術領 域の知識の融合によって行なわれている。農薬開発を通じて培われた高い総合科学力は本事 業を推進する上で十分に活かされると考えている。また、微生物農薬の開発によって確立し た、培養技術や微生物の性能評価における知見およびノウハウは本技術開発の基盤技術とし て活用できる。生合成遺伝子クラスター改変による力価向上、および生合成遺伝子クラスタ ーを利用した物質生産技術の開発と応用を行う。また、本プロジェクトで農薬としての可能 性がある生物活性の判明した新規化合物が創出されたら、社内で生物活性を評価する予定で ある。 e) 合同酒精株式会社 醗酵分野の企業であり、異種発現および工業生産に興味を持っている。 「天然物 PJ」の生 合成遺伝子クラスター解析の結果、「天然物 PJ」で興味有る遺伝子クラスターがプロジェク トで保有しておらず当社の保有する菌の中にあれば、菌株または遺伝子を提供することが可 能である。また、当社の興味のある生合成遺伝子に関して研究を行う。 f) 塩野義製薬株式会社 天然物創薬探索活動は中断したが、現在保有の菌株、ライブラリーを他社に活用してもら い相互ビジネスの貢献を目指す。当社の保有する菌株について、生合成遺伝子クラスター改 12 変などにより、力価向上が達成されれば自社開発に繋げる。また、修飾酵素を用いた、化合 物変換技術を、創薬開発に応用する。 g) 第一三共 RD ノバーレ株式会社 メバロチンの発見など、多くの微生物二次代謝産物を用いた医薬品開発を行ってきた第一三 共から、天然物機能やスクリーニング部門が機能分社化することにより設立した企業である。 有用天然産物の工業生産性向上には興味がある。当社の興味のある生合成遺伝子に関して研 究を行う。 h) 日本マイクロバイオファーマ株式会社 (MBJ) ライブラリー提供企業として多くの実績を有する。また、微生物二次代謝産物の工業生産 では、国内有数の能力を有する。本事業では、スクリーニングライブラリー調製のための、 新技術開発、および力価向上を主な目的に開発研究を行う。また、微生物による化合物変換 に関して、医薬、農薬、食品、機能性素材など多くの有用物質の変換を行う技術の開発、応 用を行う。 i) Meiji Seika ファルマ株式会社 有用天然産物の工業生産性向上には興味がある。 「天然物 PJ」の生合成遺伝子クラスター解 析の結果、「天然物 PJ」で興味有る遺伝子クラスターがプロジェクトで保有しておらず当社 の保有する菌の中にあれば、当該菌株の当社での培養が可能である。当社の興味のある生合 成遺伝子に関して研究を行う。 j) 一般社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム NEDO プロジェクトである「化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発 (平成 18~22 年度)」を受託し、研究テーマ「化合物等の探索技術の開発」において産業技術総合研究所と 共同で微生物二次代謝産物を主とした微生物収集を行い、本プロジェクトに参画している製 薬企業等から提供を受けた微生物ライブラリーも含めて世界最大級の微生物ライブラリーを 構築した。また、微生物ライブラリーを用いて、タンパク質相互作用を指標としたスクリー ニングを展開した。 13 10. 当該事業に使用する予定の現有設備、装置等の保有状況 1)独立行政法人産業技術総合研究所 設 備 名 内容 称 (使用目的・仕様等を記入して下さい。) サンプルおよびクローンのマルチプレートへ 分注システム の分注 (BioTec) 超低温フリ-ザ- DNAクローン等の保存 (SANYO) 安全キャビネット 組換え体菌株の操作用 (SANYO) 化合物倉庫 化合物の保存・管理 (Micronix) 菌株保存倉庫 菌株の保存・管理 (Micronix) 化合物の構造同定 (Agilent、500 MHzおよび6 NMR 00 MHz各1台) 化合物の検出、構造同定 (Waters、LCT Premi UPLC-TOF-MS erおよびXevo G2各1台) 化合物の精密部分構造解析、マスイメージン UPLC-SYNAPT G2 MS system グ解析 (Waters) マストリガーHPLC自動分取装置 化合物単離 (Waters) クリーンベンチ 菌株のクリーン操作 (SANYO) DNAシークエンサー クローン等の塩基配列の決定 Applied Biosy stems) 塩基配列確認、ベクター構築、クローン確認 (Applied Biosystems、Gene Amp PCR system PCR 9700 x 2台、Bio-Rad, C1000およびS1000各1 台) 遺伝子発現解析 Real Time PCR (Applied Biosystems 、 StepOnePlus) x 2台 パルスフィールド電気泳動 高分子DNAの分離等 (Bio-Rad、3台) コロニーピッカー 大腸菌クローンの取得 (Microtec) クラスター計算機 遺伝子配列解析、立体構造予測、化合物情報解 析等 (hp社製Xeon 3GHz, 148CPU) タンパク質および化合物情報解析ソフ 化合物構造構築、情報解析、ケミカルスペース トウェアシステム 解析等 (CCG社製MOE) 14 11.実施計画・スケジュール 別紙2と同じ内容を示す。 平成 26 年度次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発(天然化合物及び IT を活用し た革新的医薬品創出技術) 「次世代型有用天然化合物の生産技術開発-天然化合物の生理活性評価技術の開発」 天然化合物の生理活性評価技術の開発 事業内容 12 月 1月 2月 3月 a) 既存化合物を用いたグリオ ーマ細胞の形態変化のライ ブラリー化 b) イメージアナライザーを用 いた生理活性評価系の構築 及び天然化合物への適用の 検証 12.事業終了後の事業化の計画・スケジュール ■ 次世代天然物化学技術研究組合 本技術開発で得られた成果は、現在実施中の「天然物 PJ」 (平成 29 年度まで)と組み合わ せて、本技術開発が終了後も順次「天然物 PJ」の委託事業期間内でも産業活用できる部分か ら積極的に活用していく。事業の内容は表の①、②、③である。 15 事業内容 ① 生理活性の判明し た新規化合物の天 然物ライブラリー への追加と相互利 用による普及 ② 生理活性の判明し た新規化合物の創 薬、農薬などへの産 業応用 ③ イメージアナライ ザーを用いた創薬 スクリーニングへ の応用 27 年度 28 年度 29 年度 30 年度 31 年度 組合員企業や創薬支援ネットワークでの活用 知的財産化 興味を持った企業での産業利用 組合員企業への技術普及と利用促進 組合が受託する各種スクリーニングへの応用 各参画企業 本技術開発によって見出された生理活性を示す新規化合物の中で、自社が興味を示す分野の 生理活性を示すものがあればそれを社内で評価し、創薬あるいは農薬への応用を図る。 13.事業化の効果 これまでの「天然物 PJ」のプロジェクトでは、未利用生合成遺伝子あるいは難培養微生物 由来の生合成遺伝子を応用した、異種発現システムによる新規化合物生産を主な研究開発対 象として行ってきたが、それで得られる成果は、そのまま企業あるいは様々な研究機関で、 薬剤開発におけるリード化合物の候補として用いることを想定していた。このような戦略で は、創製した新規化合物をスクリーニングライブラリー中に組み込み、種々のスクリーニン グを介して生物活性を見出すという受動的な方法で、生物活性を見出さなければならなかっ た。 それに対し、明確な分子標的は不明なままでも、細胞レベルで何らかの生理活性が観察さ れれば、能動的に新規化合物のライセンス化が可能になると同時に、種々のアッセイ系にお いて生物活性を発現する可能性が高いライブラリーを構築することが可能となり、iPS 細胞 を用いたスクリーニングなど、多数の検体を評価することが困難なアッセイ系に対して有用 16 なライブラリーを提供することが期待される。 言い換えれば、「天然物 PJ」において異種発現により新たに生産された未利用遺伝子産物 からの新規化合物は、本提案において予想される生理活性が情報として付与される。予想さ れる生理活性が不明な場合でもそのままライブラリーへ加えられ、本提案を行う次世代天然 物化学技術開発組合において、今後の事業展開に大きく貢献すると考えられる。 14. 委託事業に要する経費 別紙3に示す。 17 別紙1) 委託事業に係る実施体制等 (1)事業の実施体制 経済産業省 委託 次世代天然物化学技術研究組合 実施項目: 天然化合物の生理活性評価技術の開発 組合員 ・独立行政法人産業技術総合研究所 ・一般社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム ・エーザイ株式会社 ・オーピーバイオファクトリー株式会社 ・クミアイ化学工業株式会社 ・合同酒精株式会社 ・塩野義製薬株式会社 ・第一三共 RD ノバーレ株式会社 ・日本マイクロバイオファーマ株式会社 ・Meiji Seika ファルマ株式会社 共同実施 18