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見る/開く - 茨城大学

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見る/開く - 茨城大学
ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ)
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レーザーフラッシュ法によるジルコニア/ニクラリー複合
体溶射皮膜の熱拡散率の測定
西林, 景仁 / 太田, 弘道 / 友田, 陽
茨城大学工学部研究集報(38): 49-53
1990-12
http://hdl.handle.net/10109/7505
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お問合せ先
茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係
http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html
レーザーフラッシュ法によるジルコニア/ニクラリー
複合体溶射皮膜の熱拡散率の測定*
西林景仁**,太田弘道***,友田 陽***
(平成2年8月31日受理)
Measurement of Thermai Diffusivity of Zirconia/NiCrAIY Composite Sprayed Coatings
by Laser Flash Method“
Akihito NisHiBAyAsHi**, Hiromichi OHTA***, and Yo ToMoTA***
ABSTRACT−A flash method of determining the thermal diffusivity of one layer of two−layer
composites with the thermal coRtact resistance at the interface of the layers is described. A flash pulse is
absorbed in the front surface of a thermally insulated specimen, and the resulting temperature history of the
rear surface is measured by an IR detector and recorded with micro−computer. The time required for the
temperature to rise 50 percent of the maximum temperature increase is read from the temperature versus
time curve. These results are used for the numerical computation based on the theoretical equation of the
normalized temperature increase on the rear surface, and the thermal contact resistance can be obtained as
well as the thermal diffusivity. We developed the procedure to separate thermai diffusivity of coating layer
a aBd therrnai contact resistance R from temperature history when thermal diffusivity of the substrate is
given. We determined the thermal diffusivity of zircoRia/NiCrAIY coinposite sprayed on SUS3e4 and
therfnal contact resistance between SUS304 and the coating substance. At first, the temperature history of
the two layered sample consists of SUS304 of O.611mm in thickness and ceating layer of O.344mm is
measured. The sets of a and R to reproduce the value of tG.s of this temperature history are numerically
caiculated. Secondly the SUS304 layer of this sample was polished to O.344mm in thickness and from the
temperature history for this sample another sets of cr and R are evaluated. Since a and R of the both
samples are ldentical, an intersecting point of these two sets of cr and R corresponds to the thermal
diffusivity and thermal contact resistance of this sample. The thermal diffusivity of the splayed coating
layer is found to be 8.60×10−7(m2/s) and the thermal contact resistance of this sample is negligible.
*日本金属学会平成元年度秋期講演大会にて発表
**茨城大学大学院工学研究科金属工学専攻(〒316 茨城県H立市中成沢町)
Graduate Student,. Department of Metallurgy, Faculty of EngineeriBg, lbaraki UBiverslty, Hitachi 316,
Japan
***茨城大学工学部金属工学科(〒316 茨城県日立市中成沢町)
Department of Metajlurgy, Faculty of Engineering, lbaraki University, Hitachi 316, Japan
茨城大学工学部研究集書 第38巻 (1990)
50
ても支配される。従って,この様な材料については層
1.緒 言
問熱抵抗と熱拡散率の2種類の物性値を測定すること
近年,せラミックスと金属の接合といった新素材の
が必要となる。
接合技術や,溶射,コーティングなどの表面処理技術
二層からなる積層材の熱物性値の非定常による測定
の発展には著しいものがある。それに伴って,接合度
の評価,二層積層材と伝熱特性などの定量的評価が重
は,すでにフラッシェ法やステップ加熱法など(Pに
よって試みられており,最近は井上ら(2)がSUS304,
要な課題となってきている。
S45C, SK5からなる二層金属材料の層闘熱抵抗の測定
この様な材料の伝熱特性を知る測定法の一つにレー
を行っている。熱拡散率のよい金属のみからなる二層
ザーフラッシュ法がある。レーザーフラッシュ法は最
材料を対象にする場合は,層間熱抵抗が存在するとそ
近,熱拡散率測定に多く用いられている方法で,試料
の影響が温度応答曲線の形状の変化として顕著に現れ
表面をレーザービームで瞬間的に加熱し,試料裏面の
るため,井上らはこの変化を利用して層間熱抵抗の導
温度の時間変化を測定することにより,熱拡散率を求
出を行っている。本研究ではセラミックスと金属から
める測定法である。Fig.1は試料表面にレーザービー
なる二層材料を対象としたが,セラミックスの熱拡散
ムを照射した後の単層の試料裏面の温度変化を示した
率が低いため,層間熱抵抗による温度応答曲線の形状
図である。
変化が小さく,井上らの方法では熱拡散率を測定する
ことができなかった。
そこで本研究ではセラミックスと金属からなる二層
材の一方の熱拡散率が既知のときに,もう一方の熱拡
嗣ぞコごσ﹂=OL<、.α∈Φト
散率と二層間の層間熱抵抗をレーザーフラッシュ法を
用いて測定する方法について検討する。
△丁m。、
2,試 料
0,5△Tm。、
1.aser inudinim
実験に用いた試験片は表面をブラスト処理した,厚
さ1.29㎜のSUS304上に部分安定化ジルコニア(ZrO、一
tO,5
O 1 2 3 4 sxlo’3
τime/S
Fig,1 An example of recorded temperature history
at the rear surface of a specimen.
一 8wt%Y203)とニクラリー(NiCrAIY)の粉末を同じ
体積比で同時にプラズマ溶射して厚さ0.39㎜の皮膜を
成形した二層試料である。使用したニクラリーは昭和
電工製の溶射粉末で,その化学組成はTable 1の通り
である。
この温度応答より試料の熱拡散率を導出することが出
来る。最高温度△Tmaxの半分に達するのに要する時
Table 1 Chemical compositioRs of NiCrAIY.
間t、.,は試料の三熱特性を導出するための値としてよ
く使用される。
Chemicat composition (wte/.)
セラミックス系の材料の伝導特性をレーザーフラッ
シュ法を用いて測定する場合,レーザーフラッシュ法
ではレーザービームが試料表面で吸収されることを前
提としているが,セラミックスは光をやや透過すもの
Ni
Cr
A1
y
76.52
16.88
6D4
O.56
が多く,試料内部にレーザーが浸透し正しい測定がで
きないという問題が起きる。本研究で扱った試料は金
作製した二層試料の断面の顕微鏡写真をFig。2に示す。
属とセラミックスの複合材料であるため,金属面に
レーザーを照射することでレーザービームの試料内部
への浸透を防いだ。このような二層積層材料の伝熱特
性を知る場合,その伝熱特性はセラミックス層と金属
層の熱拡散率だけでなく,二層間の層間熱抵抗によっ
下の部分がSUS304,上の部分がニクラリーとジルコ
ニアの混合層である。混合層で白の部分がニクラ
リー,灰色の部分がジルコニア,黒い部分はボイドで
ある。この二層材を直径約10iiiii!の円盤状に加工して測
定試料とした。
西林,太田,友田
51
レーザーフラッシュ法によるジルコ=ア/ニクラリー
複合体溶射被膜の熱拡散率の測定*
のリークを少なくするために,熱伝導率の低い石英管
を取り付けた。
Qllartz tube
Laser beam shield
Sample holder
V oid
ZrO2・一 Y203
捻
漁→
g
Si lens
Sampie
一〇〇こヨ
rR detector
g・y一一 NicrAly
Fig.4 Sampie holder and optics system for measure−
ment of temperature.
昌噸苓一SUS304
Fig,2 Micrograph of plasma sprayed coating.
温度応答は液体窒素で冷却したInSb赤外線検出器に
より非接触で測定した。試料裏面から放射される赤外
線は無反射コートしたSiレンズにより検出器に集光
した。また赤外線検出器ヘレーザー光が直接入射する
ことを防ぐために,検出器と試料の間には遮光板およ
3,測定方法
び遮光筒を設けた(Fig.4)。大気中への熱のリークを
測定に用いた熱拡散率測定装置のブロックダイアグ
防ぐため試料ホルダーは真空ベルジャーの中に入れ
ロータリーポンプで10−3Torr以下の真空にした。すべ
ラムをFig.3に示す。
ての測定は室温で行った。
CR丁display
Triggcr signal
金属/セラミックス複合材である溶射皮膜面に直接
レーザービームを照射すると,ビームは試料表面のみ
Anpllfier
Disital data
acquisition srsteva
Micfo−cempvter
(PC−S80i)
で吸収されず内部に浸透し解析が困難であるため,本
Si photo−deteeter
測定ではレーザービームを金属製(SUS304)に照射
R”br laser
Ataplifier
Kev−board
Prifiter
IR detecter
S己鳳pie
』a
Z,93智e「
Si lens
Half m{rrer
Fig.3 Schematic diagram of thermal diffusivity
measvring apparatus.
試料裏面の温度応答は625μsごとにサンプリングし,
レーザービーム照射後約1sの測定を行った。得られ
たデータはA/D変換し,マイクロコンピューターに
読み込み解析を行った。レーザーの発射時はレーザー
光の一部をハーフミラーで分け,Si検出器で検出す
し,溶射皮膜面(ZrO、一8%Y203/NiCrAIY)の温度上
昇を測定した。試料に入射するレーザービームの吸収
率を上げるためSUS304の表面にはカーボンスプレー
(dgf123 MIRACLE POWER PRODUCTS CORP.)
を塗布した。また試料内部から放射される赤外線が検
出器に入ることを防ぎ,赤外線の放射量を増大させ検
出感度を上げることを目的として,試料裏面にもカー
ボンスプレーを施した。以上の測定方法により各測定
条件について10回の測定を行った。それぞれの温度応
答曲線から最高温度△Tmaxの半分に達するのに要す
る時間t。.5を求め,その平均値を用いて計算を行った。
ることにより決定した。
試料をパルス的に加熱する熱源として,パルス幅約
lms,出力6J,ビーム直径10㎜のルビーレーザー
(日本高周波製・SLG−2006B)を使用した。
4.解析方法
一般に金属の熱伝導率はよく知られており,また非
試料ホルダーはFig.4に示すように,三点で試料を
晶質材や密度の低い焼結材を除くと製造法や熱履歴に
保持するようになっており,試料との接触部分には熱
あまり依存しない。これに対しセラミックスや複合材
茨城大学工学部研究集報 第38巻 (1990)
52
料では組織や熱履歴などによる伝熱特性の変化が大き
各相はそれぞれ均質であり,界面に存在する層間熱抵
く,個々の試料に対する測定が必要である。この点を
抗も面内で一様であるとする。第二層の表面を一様に
踏まえて,二層材のセラミックス/金属複合層の熱拡
瞬間的に加熱したとき,最大温度上昇Tmaxで正規化
散率が未知で金属層の熱拡散率が既知のとき,セラ
ミックス/金属複合層の熱拡散率αと層間熱抵抗Rを
した裏面の温度上昇は次式で表せる(2)。
求める方法について検討を行った。
T=1+4(α*d*+72・)×
レーザーフラッシュ法でセラミックス/金属複合層
Σexp(一fr n 2γ2t*)/A
と金属の二層材を測定した場合,Fig.5の温度応答曲
n鞘1
(1)
線Cについて考えるとセラミックスの熱拡散率αが大
きくなると曲線Cは曲線A,Bのように短時間側にシ
A== (A*+ r) (d’ + r)cos B. (d* + r)
フトする。
+ (A’一 r) (d*一 r) cos B, (d’一 r)
また層問熱抵抗Rが大きくなると曲線D,Eのよう
一rA*R* {B.[(d*+r)sin3,(d“+r)
に長時間側にシフトする。
一 (d*一 r) sin B. (d*一 r)]
一 [cos B.(d* + r)一cos B, (d“ 一 r)]}
1
ここで,
A{ct=sxlcrS,R.o)
O.8
B(α翻3X灯5、R=0
O.6
C(ct=2XIO−6.R.o)
F
D(a =2xlcr6, R=gxlo−6)
O.4
E(ct=2XIO”S,R.2Xlcr5)
x* =一 4, .,*= 一gmL,
Z, R
R* =
22 ’
d2 ’
d2 ’
t*一a ャ表・r・V i.EII
O.2
また,β,は
O O.3 O.6 O.9 1.2 1.5
t鳳
Fig.5 Normaiized temperature rise versus dimension−
(A*+r)sin(d“+r)B.+(A*一r)silt(d’一r)/3,
Iess time curves at the rear surface.
+rA*R*Bn[COS(d*+T)Bn−COS(A*”r)Bn]==O
実際の温度応答曲線はこのαとRの2つ値:の大小に
よって変化するため,様々なαとRについての理論温
度応答曲線を求め,実際の試料の温度応答曲線との比
率,熱伝導率,および層問熱抵抗であり,添字の1,
較によりαとRの導出を行った。理論温度応答曲線は
井上らの式(2)により計算した。二層積層材のモデル
のn番目の正栂である。a,λ,Rはそれぞれ熱拡散
2はその物性値が各層のものであることを表す。
実験で得られる試料裏面の温度上昇曲線よりt。.,を
求め,このt。.,が(1)式で得られるt。.,’と同じくなるよう
として,Fig.6に示すような平行な二層無限平板を考
なαとRの組合せを数値計算で求めることにより,実
えた。
際のαとRを求めた。この手法では一連のαとRの組
が一つの試料に対して求められるのみであり,このα
とRの組合せのうちのどれが実際の試料の熱拡散率お
L;aser beam
よび層間熱抵抗であるかを知ることが出来ない。そこ
で,同一のαとRをもつ異なった試料に対してt。.、の
Layer 2
a2. A2
」
Mtayerl ai Ai
Fig.6 Diagram of two−layer coraposite.
測定を行い,この2つの試料に対してαとRの値をプ
ロットし,2本の曲線の交点から試料の層間熱抵抗と
熱拡散率を測定することを試みた。
西林,太田,友田:レー一…ザーフラッシュ法によるジルコ=ア/ニクラリー
53
複合体溶射被膜の熱拡散率の測定*
また,皮膜層の熱拡散率は8.60×10−7(㎡/s)であった。
5.結 果
層間熱抵抗がなかったことについては,この試料は
以下の手順により,ジルコニア/ニクラリー複合体
皮膜の約50%が金属であるため,溶射した時にお互い
溶射皮膜の熱拡散率および皮膜層とSUS304層の間と
層間熱抵抗を導出した。計算に使用するSUS304層の
は,Fig.2の界面がよく密着していることからも推測
熱拡散率の値は文献値(3)3.6×エ0−6(㎡/s)を用い
できる。
の層が溶け合い密着したためと考えられる。このこと
た。また,本装置によりParkerらの手法(4)を用いて
溶射を行う前のSUS304単層材について熱拡散率測定
を行った結果3.55 × 10−6(㎡/s)が得られ,文献値
6.結 言
二層積層材料の伝熱特性を支配する熱拡散率と層間
とよい一致を示した。
最初にSUS304画面厚さ0.611㎜,皮膜層の厚さ0.394
熱抵抗をレーザーフラッシュ法により求める方法を開
㎜の試料のto.5を測定しこの測定値tq5=8.09×10…2(s)
発した。この方法を用いてSUS304にジルコニァ/ニ
クラリー混合皮膜を溶射した二層材料について測定を
に対するαとRの値を求めた。このαとRの組を
Fig.7のAに示した。次に同一の試料に対し,
SUS304層を研磨して厚さ0.344㎜にまで薄くし測定
を行った。得られた測定値t、.,=5.91×IO−2(s)に対す
行った。その結果層間熱抵抗はないことが明かとな
り,混合皮膜層の熱拡散率は8.60×10 ?(㎡/s)と
測定された。
るαとRの組をFig.7のBに示した。
謝 辞
一s
XIO
8
二層積層材の試料作製をしていただいた豊橋技術科
学大学の岡根研究室に深く感謝の意を表します。
A(d,=O,394,d2=O.611,tQs=8.09XIO一?)
6
曾
B(di= O.394,d,=O.344, t,,=5.91XIO−2
参 考 文 献
乙4
(1)太田弘道,友田 陽:日本金属学会会報,29(19
90), 155
2
(2)井上勝…敬,大村悦二:溶接学会論文集, 6(198
8), 442
o
2 4 6 8
IO xlo−S
R(m嵐ノW)
Fig.7 cr 一R curves.
(3) Touioukiafi Y S, Powell R W, Ho C Y, Nicolau
M C, 1973 Therrnal Diffusivity TPRC Data Series
Eds Y S Touloukian, C Y Ho (New York:Plen−
この2つの測定で用いた試料は同一でSUS304の厚さ
um)
を変えただけなので溶射皮膜層の熱拡散率および二層
(4) Parker, W.J., Jenkins, R.J., Butler, C.P. and
間の層間熱抵抗は同一であるため,2つの曲線の交わ
Abbott, G.L.:Flash Method of Determining
る点が皮膜層の熱拡散率αと層間熱抵抗Rとなる。2
つの曲線は層間熱抵抗が0のところで交わった。
Thermal Diffusivity, Heat Capacity, and Thermal
Conductivity, J. AppL Phys., 32−9(1961),1679−1684
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