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有限会社共和堂(PDF形式:899KB)

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有限会社共和堂(PDF形式:899KB)
【卸・小売】
事例紹介 > 九州圏外
有限会社共和堂
高付加価値化
INFORMATION
人材育成
有限会社共和堂
■ 所 在 地 長野県上伊那郡辰野町中央 58
■U R L
-
■ 代 表 者 米澤 晋也
■ 設 立 年 1927 年
■ 事業内容 新聞販売業
■ 従業員数 49 名
■ 資 本 金 367,000 千円
『共和堂』は、長野県上伊那郡辰野町を拠点にした老舗の新聞販売店である。同社は、個性を輝かせる管理のない「自
立型組織」を採用しており、一切のルールや管理もない。さらに、労働条件や事業計画についても従業員全員で決めて
いる。事業内容も既存の新聞販売店の枠には収まらない、
リゾートホテルのルームサービスをイメージした朝食宅配サー
ビス「Kotori cafe」等、従業員の個性を発揮した提案により様々な事業を展開している。同社の事業は、サービスを
通してお客様の目的の実現を支援する「人生創造業」と捉えており、
この考えをもとに新規市場の創出に取り組んでいる。
従業員の個性を発揮する自立型組織へ
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「セールスは足で稼げ」という言葉があるように、新聞業界にも一件でも多く勧誘すると客数が増えた時
代があった。このような時代には、活動量を最大にする合理化した“管理型組織”が適していた。しかし、
今日では新聞の需要は飽和状態にあり、一人のお客様が 2、3 紙を購入することも少ないため、活動量で
顧客を獲得することは難しくなっている。新聞を購入するお客様の目的が多様化している中、事業継続す
るには米澤社長自身だけでなく、
従業員の個性を活かしたアイデアも必要不可欠だと考えている。また、
「従
業員が個性を発揮した人生を送ってほしい」という絶対に譲れない理念があり、
“自立型組織”に移行す
ることを決意したという。同社が考える自立型組織とは、以下の条件を満たしている組織のことをいう。
» 組織の目標を全員知っている
» 従業員もその目標に魅力を感じている
» 目標を創り上げる方法を全員知っている
» その創り上げる方法を全員で決めている
» 従業員主導で運営されている
自立型組織を採用した同社にはルールや管理もないが、従業員には“自由と好き勝手は違う”ことを伝え、
「自由に行動することが会社全体の利益や幸福に繋がり、それが個人にも反映される」と理解させている。
こうした考え方のもとで、従業員が全員で労働時間、休暇や事業計画まで全て決めている。事業計画にお
いては、それに対応した役割分担を従業員自身が選び、目標達成までの行動計画を作成している。また、
決算書も公開し全員が会社の情報を共有している。米澤社長は、将来的には給料まで従業員自身で決める
ようにしたいと考えている。
上司が決めたことを実行する“管理型組織”とは違い、
全てを従業員自身で決める“自立型組織”の中で日々
の業務をこなすためには、従業員にも大きな負荷が掛かるという。これを支えているのは、従業員自身の
アイデアや行動がお客様に喜ばれた時の「あなたがいてくれて、よかった」という声である。これを聞い
た従業員は「私っていけてるじゃん」という充実感を感じ、仕事を続けるモチベーションを高めている。
“個性を認め、ねぎらう”方針の人材育成により自発的行動を促す
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サービス業を“人生創造業”と捉え新規市場の創出を目指す
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採用にこだわり少数精鋭化を図る
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正社員は、パート・アルバイト従業員に対して圧倒的に少なく、自立の見本となる存在であるため組織へ
の影響力も大きい。正社員には自立性、思考力、創造性等に優れた人材を求めているが、例えば、自立性
が低い人材を採用すると、自立を促す教育に合わずに辞めてしまう。こうした事態は従業員、会社の双方
にとって避けるべきであるため、正社員の採用には特に細心の注意を払っている。
同社の正社員数は 4 人と少なく募集は不定期だが、前回、実施した正社員の採用試験では、1 名の募集に
対して約 100 名から問い合わせがあったという。この高倍率の背景には、同社の知名度と募集要項が関
係している。募集要項に明記した同社で身に付くスキル、実現できる働き方や生き方に共感を得たのはも
ちろん、同社の様々な取組やコンセプトが地元で徐々に浸透してきた証だと思われる。
採用試験の最初の段階は、全従業員が共に働きたいと感じることも重要であるため、こうした要素も考慮
し選抜している。最終段階では、応募者に課題を与えて、同社が求める人材像に合致しているかを専門の
コンサルタント会社に分析依頼している。その結果をもとに、社長を含めた全従業員の投票によって採用
を決定している。コンサルタント料金が発生するものの、求める人材を採用するには必要であると考えて
いる。また、会社に合わずに辞めるリスクが大幅に低減するため、この採用コストは回収可能だという。
採用した正社員に自立の考え方を理解させることを目的に、PMB(プラス・マイナス・バランス)制度
を導入している。この制度は業務改善等の提案をする場合に、専用シートに実行する上でのプラス面、マ
イナス面、その両方を勘案しバランスを取る方法をそれぞれ記入するものである。一般的な提案はプラス
面ばかりに注目し、マイナス面、バランスを取る方法の考慮が欠けることが多いため、PMB 制度でバラ
ンス良く考える力を身につけさせている。専用シートという見本があることで、スムーズに自立の考え方
の浸透が図れている。
12 | Service Innovation from Kyushu
従業員の自立を促すための同社の教育スタイルは、
“教え育む”ではなく、
「わからないことは自分から聞
く」という“教わり育つ”ものとしている。
米澤社長は、従業員の自発的行動を促すには「一人ひとりを無条件に認め、ねぎらう」ことが必要である
と考えている。こうした考えから、自発的行動を従業員同士で認め合う“ツイテルシート”を導入した。
従業員の自発的行動を発見した人がその行動を“ツイテルシート”に記入し、自発的行動をした本人に渡
たしている。本人は認められたことを嬉しく感じ、本人のモチベーション向上に繋がっている。また、プ
ロ野球選手名鑑風にスタッフ一人一人を紹介する『日本一のスタッフガイド』や社内報で従業員の自発的
行動を記載する等、各種イベントを通してこれを促している。
年末の忘年会時に『日本一のスタッフ大賞』を開催し、特に素晴らしい行動をした従業員を表彰している。
その際、米澤社長は従業員の行動を紹介するプロモーションビデオを作成し、上映することで“会社から
のありがとう”を伝えることも忘れない。
こうした取り組みの効果が徐々に表れており、例えば、新聞配達とは違う部署の従業員が新聞社の積み降
ろし過程から調査し“新聞の雨濡れ対策”を考える等、会社全体で自発的行動が増えてきたという。
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米澤社長は、サービス業をお客様の目的の実現を支援する「人生創造業」だと考えている。従来のサービ
ス業では、単にモノを売るだけで終わっていたが、これからはお客様がモノを買う理由を考える必要があ
る。お客様は、何らかの目的を実現させるためにモノを買うのであって、人生創造業はそれを把握し実現
を支援するサービスを提供しなければならない。
実際にこうした考え方によって、生まれたサービスがある。朝、新聞を読む時間を楽しみにしている人が
多いことから、こうした時間を演出するために “リゾートホテルで過ごす優雅な朝”を実感する朝食宅
配サービス『Kotori cafe』を提供している。このサービスでは、リゾートホテルと同等の品質を誇る焼
き立てパンや野菜スープ等を宅配するのはもちろん、リゾートホテルを感じるような商品のデザイン等の
演出にもこだわっている。こうしたサービスはお客様から好評を得ており、利用者が増加しているという。
人生創造業という観点では、お客様の目的を把握することが重要となるが、こうした情報は、アンケートな
どの一方的な問いかけでは簡単に把握できるものではない。米澤社長は、このようなニーズは何気ない会話
から引き出すものであり、こうして抽出したニーズに徹底的に応えることで新規市場の創出を図っている。
従業員の自発的な行動を記入するツイテルシート(左)/『kotori cafe』では、メニューや保温箱の鍵、宅配車のデザインにもこだわり、“優雅”な
朝を実感できるようにしている(中・右)
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