...

第2回 今後の神戸市の人口動態に関する有識者会議 日時:平成 26 年

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

第2回 今後の神戸市の人口動態に関する有識者会議 日時:平成 26 年
第 2回 今 後 の神 戸 市 の人 口 動 態 に関 する有 識 者 会 議
日 時 :平 成 26 年 10 月 22 日 16 時 30 分 ~18 時 30 分
場 所 :神 戸 芸 術 センター2階 芸 術 劇 場
市長
みなさんこんにちは、神戸市長の久元喜造です。第2回の神戸市の今後における人
口動態に関する有識者会議を開催させていただきましたところ、平日の夕方という時
間帯、また雨模様の天気にも関わらず、こんなにたくさんの皆様にご出席をいただき
まして本当にありがとうございます。心より御礼を申し上げます。私から、なぜこの
有識者会議を設置したのか、そして今日どうしてこういう会議を開催することにした
のかということについて、少しお話をさせていただきたいと思います。
神戸はいまある意味で転換期にたっていると思います。神戸は全国で5番目の大都
市です。人口で5番目ということなのですが、この5番目というポジションはおそら
く極めて近いうちに福岡市に明け渡すことになると思われます。直近の神戸市の人口
は約153万8千人、福岡市は151万6千人、その差は2万2千人です。ここ数年
のトレンドを見ておりますと、福岡市はだいたい1万数千人程度人口が増加しており
ます。これに対しまして、神戸市は3千人前後人口が減少しております。従いまして
この傾向が続きますと、早ければ来年の秋ぐらい、遅くとも再来年中には福岡と神戸
の人口が逆転することになります。人口はある意味で都市の力のバロメーターですか
ら、神戸市民にとりましては少し残念なことです。
「福岡が上でも神戸が上でもどっちでもええやないか」というふうに思われるかも
しれませんが、しかしこのことはある意味で神戸がひょっとしたら本格的な人口減少
時代を迎えたということを意味するのかもわかりません。阪神淡路大震災で大変大き
な被害を受けた神戸は、人口が相当落ち込みました。しかしながら神戸はその後急速
に人口が回復しました。震災前の人口水準に戻りました。その後も若干、人口は微増
しましたけれども、その後停滞が続き、ここ2、3年は人口減少が続いているという
ことです。従いまして私たちは、本格的な人口減少時代を神戸も迎えることになった
と、そういう現状に真正面から向き合うという姿勢を持つべきではないかと私は思い
ます。
今後、神戸はどういう街づくりをしていくのかということを本格的に考えなければ
いけません。一つの方向性は、やはり人口は都市のバロメーターだから、人口の増加
を目指すことに知恵を結集して考えるべきだという立場もあるかもしれません。その
一方で、人口減少という現実を受け止めて、その前提に立って、規模よりも、より都
市のグレード、あるいはブランド力、そういうものに力を注いでいくべきだという見
方もあるかもしれません。それは私たちの選択の問題です。
そ の よ う な 私 た ち の 選 択 を 考 え て い く 上 で 、大 変 重 要 な 提 言 が 最 近 発 表 さ れ ま し た 。
それは今年5月に日本創成会議から発表された分析と提言です。日本創成会議が着目
をしたのは、女性の人口動向です。その提言によりますと、日本の896の自治体が
2040年には消滅する可能性がある。20歳から39歳までの若い世代の女性がそ
れぞれの自治体ごとにどういうふうな推移をたどるのかを分析して将来を予想したわ
けです。
そこで示された日本の社会の姿、それは極点社会と名付けられておりますが、多く
の 地 域 で 自 治 体 が 消 滅 す る 一 方 、東 京 に ブ ラ ッ ク ホ ー ル の よ う に 人 口 が 吸 い 寄 せ ら れ 、
その東京では出生率が大変低い状態にありますから、東京もやがて人口減少になり、
日本全体が人口減少になっていく、こういう日本の社会の姿であります。
日本創成会議はこういう日本の未来の姿というものは日本の社会にとって決して好
1
ましいことではない、これをどう回避したらいいのかという提言をまとめています。
この分析提言はほとんどの新聞の一面に掲載されました。大変大きな反響を呼びまし
た。自治体関係者もこの提言に着目して、自らの自治体の将来像を考えるようになっ
ています。
この分析提言の中心的役割を果たされましたのが、今日、ご講演をいただき、後ほ
どディスカッションにも参画をいただきます増田寛也先生です。私事で恐縮でござい
ますが、私は増田先生には25年近くお世話いただきご指導いただいてきました。増
田先生は3期12年、岩手県知事を務められたあと、第一次安倍内閣、福田康夫内閣
で総務大臣を務められていたおり、私は総務省自治行政局長としてお仕えをさせてい
ただきました。増田先生は大変お忙しいところでありますが、こういうご縁で今日、
神戸にお越しいただきご講演をいただくことになりました。
現在、安倍内閣は地方創生を大変重要な政策テーマに掲げております。このいわば
頭 脳 と も 言 う べ き 、「 ま ち ・ ひ と ・ し ご と 創 生 会 議 」 の 重 要 メ ン バ ー を 増 田 先 生 は 務 め
ておられます。これから安倍内閣が打ち出すであろう地方創生の政策にはわたくしど
もも着目し、その政策が打ち出される支援策というものを大いに活用して、神戸の地
域活性化を図っていかなくてはなりません。
しかし同時に、神戸の未来、神戸の都市像をどう描くのかというのは、私たち神戸
市民の選択です。どういう都市像を描くか、これは私たちの主体的な、そして主観的
な選択ではありますが、単なる願望に留まっていていいはずはありませんし、社会の
トレンドに背を向けた科学的根拠が無い独りよがりのものであってはなりません。や
はり客観的、実証的な分析に基づいて、我々の神戸の都市像を描いていくことが必要
です。
その際、やはりキーワードになりますのが人口動態であり、神戸がこれまでどのよ
うな人口の推移をたどってきたのか、経年的に自然増減、社会増減、それを地域別に
できるだけ詳しくみていく。男女別、年齢別にできるだけ詳しくみていく。過去のト
レンドを分析し、それがどのような要因でこのような経過をたどってきたのかという
ことの分析が不可欠です。
そのような過去の分析の上にたって、客観的に見た将来の同じようなアプローチで
の人口の将来推計を行っていく。そのことは神戸の都市像を考えていく上で不可欠だ
と思います。
そのような趣旨でこの人口動態に関する有識者会議を設置させていただいたわけで
す。客観的分析に基づいて、神戸のこれからの都市というものはどのような姿になっ
ていくのかということをくもりのない目で描いていく。仮にそれが好ましくないもの
であるとするならば、より好ましい姿に、理想的な姿に近づけるためには、どのよう
な政策を立案し、組み合わせて実施していくのかということが問われます。これはま
さに、日本創成会議がとられたアプローチと重なります。
私たちは、試行錯誤もあるかもしれませんが、分析をしっかり行ってその結果を市
民の皆さんにお示しをし、市民の皆さんの中でもどのような神戸をこれからつくって
いくかということを考える材料を提供したいと思っています。
客観的なデータを基に、私たちは庁内でも神戸の将来像を考え、ビジョンを作成す
る作業に取り掛かっていきたいと思っています。今日はそういう意味で必ず有意義な
会議を提供させていただくものと信じます。お忙しいと思いますが、どうか最後まで
お聴きいただき、それぞれまた神戸の姿を考える機会にしていただければありがたい
と思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
2
○増 田 寛 也 氏 の講 演 /テーマ「極 点 社 会 回 避 のための処 方 箋 」
ただいまご紹介いただきました増田でございます。どうぞよろしくお願いいたしま
す。今、久元市長さんから縷々お話しいただいたのですが、私自身も久元市長さんと
は二十数年間、仕事の関係でご一緒させていただきました。今回は人口問題というこ
とで神戸市の顧問を市長さんから仰せつかっているところでございます。何かしら地
域のためにお役に立てることがあればと思っております。今日はせっかくの機会を与
えていただきましたので、人口減少について日本全体で見ると今、こういう現象が起
こっているということをまずお話しをして、そして神戸でもこれからどうしていくべ
きなのかということなど、この後、3人の先生方とパネルディスカッションの時間も
ございますので、そこでまたこの地域のことについて考えていきたいと思っておりま
す。
私が人口減少問題について深く考えるようになりましたのは、当然のことながら岩
手県知事をしておりました時であります。3期12年、岩手県知事をしておりました
が、その間に驚くほど小中学校の統廃合を進めなければならなかった。実際に進める
のは市町村長さん方ですが、6、7つあった小学校を最後は2つ、それも1つにしな
ければならない地域も多くありました。県庁所在地の盛岡市でも当然、小中学校を統
廃合しますし、これは今どこでも行われていることですから全国どこでもこの問題に
直面している。
それが進行していきますと、来年からは全国で高校生の数が少なくなって、さらに
は2018年から大学生の数が一挙に減ります。このあいだの代々木ゼミナールが多
くの校舎を閉校するといったニュースもそういった傾向を裏づけるものですが、驚く
ほど子どもたちの数が少なくなっていることを目の当たりにしました。
この12年間の子どもたちの減少に、本当にがく然としました。また市町村で行わ
れる成人式に来賓で招かれて行きますと、私のような年寄りが回りを囲み、成人は少
ないのですが、成人式に出ている彼らの中の2割、3割はその日のために東京から戻
って来ているんですね。実際には地域でそのまま働いて暮らしているのはもっと少な
くなっている。これはしばらくすれば、学校の廃校どころか、本当に廃町、廃村を心
配しなければいけない。こういうふうに思ったのがきっかけと言いますか、この問題
に深く関心を寄せるようになったきっかけであります。
まずおさえておかなくてはいけないのは、人口減少というのは本当に悪いことなの
か、人口減少が起きる原因の一つとして挙げられるのが、出生率が大変低下している
ということです。もう一つは、東京一極集中の問題、しかもその9割以上が15歳か
ら29歳の層ですから、出産に関係する若い層の人たちが東京にどんどん集まる。そ
の東京が結婚、出産、子育て、そして教育のコンディションが悪い場所であるという
点。人口が減るということが悪いことなのか、東京一極集中が国にとって悪いことな
のか、こういうことをきちんとおさええておく必要がある。
あまりにも過密ななかでもう少しゆったりと生活をする、そして環境にも悪い影響
を及ぼさないためにはもう少し日本の人口は減らしたほうがいいのではないかという、
そういうことを仰る方も確かにおります。
先週の土曜日に内閣府の、将来の日本の姿に関する世論調査が発表されましたが、
人口減少について肯定的な意見はわずか2%ぐらいですから、多くの方はやはり人口
が減るということについて危機意識を持っているわけですが、人口減少自身は実はも
う避けられなくて、今出生率をグッとあげても人口が減ることは間違いありませんの
で、実はもうその議論は少し手遅れ感があって、減るんだけれども下げ止まらない、
ずっと減りっ放しということが深刻な問題、そしてそこを止めないといけない、下げ
3
止まらないということは若い人たちの数がいつまでも少なくて、高齢層だけが多い。
それを続けていけば、いくら高齢層の負担を大きくしてもどこかで、かなり早い段階
で社会保障がパンクしてしまう。そういう構造が続くということですから、その点で
年 齢 構 成 の バ ラ ン ス が 悪 い と い う こ と で 、人 口 減 少 を ど こ か で 止 め な く て は い け な い 。
もう一つは、経済学的には一人当りの所得が維持されれば人口減少は怖くないと言
う方がおられますが、実は経済の規模の縮小と人口減少がパラレルで縮小されるので
あればいいのですが、必ずどこかで歪みがあって、必ずしもパラレルではなく、今日
本で起きているのは、生産年齢人口、すなわち15歳から64歳、労働力人口が少な
くなって、先ほど言いましたように高齢層が非常多くなるという下がり方ですから若
い人の負担がすごく増えている。
基本をおさえるという意味ではやはり、今日本が直面している、そして既に起きつ
つある人口減少は日本の経済や社会を傷める。減ることは受け止めていかなくてはい
けませんですが、どこかで止めていく努力をしていかなくてはいけない。できるだけ
減りを少なくして止めていかなくてはならないということ、これが一つ。
東京一極集中についてですが、確かに東京に全部、関経連もどんどん東京に本社機
能を移しましたが、集まっているということは効率性、サービス産業にとっては効率
性や利便性、あるいはいろんなことをそこで選択できる選択性、可能性をそこで広が
る と い う 確 か に メ リ ッ ト も あ る の で す が 、一 人 ひ と り の 生 活 に と っ て み ま す と 、家 賃 、
住居が高い、狭い、コストが高い、保育所の数も少ない、そして通勤にものすごく時
間がかかる、今平均で69分、若い人にとって90分以上の通勤が当たり前になって
いる、生活をそこまで犠牲にして長時間勤務、長時間労働に耐えていかなくてはなら
ない状況ですし、そして首都直下型地震の恐れもある。というようなこともあるので
東京一極集中も歯止めをかけなくてはいけないと思います。
パワーポイントを用意してきましたので、これ以降はそれを使い、そして神戸市の
ことについて最後に少し触れていきたいと思います。
人口が少なくなった、出産が行なわれなくなったというときに一番よく使われる資
料ですが、赤い折れ線が合計特殊出生率、今の直近、昨年の値が1.43、ここまで
下がった。一人の女性が一生の間に出産される子どもの数の平均値を指数化したもの
という定義ですが、平たく言うと、お父さんお母さん2人の大人から生まれる子ども
さんの数の平均値と思っていただいたらいいと思います。2人の大人から2人の子ど
もが生まれる、それをずっと繰り返していけば人口が維持されるわけで、正確に言う
と少し亡くなる子どもさんもいますので、日本の場合は2.07が人口維持する水準
と言われていますが、今、1.43、実は2005年には1.26まで下がったこと
があり、1.26ショックと言われました。
ショックは何回かあって、これはもう昔のことで、1966年に1.58、丙午と
いう迷信で1年間だけここまで下がったことがありますが、その年よりもさらに下が
ったという1.57ショックというのが1990年にあったのがほとんどショックに
ならずに1.26まで下がったのが、何とか1.43まで戻った。だけど出生率が上
がったんですが一番大事なのは子どもさんたちの数の話です。子どもさんたちの数は
ずっと一貫して下がっている。出生率は上がっているのに子どもさんの出生数は減っ
て、わずか102万まで今減ってしまった。何故かと言えば、それは母親たるべき女
性、20から39歳までの一番出産可能性を持った女性たちが年々、激減しているの
です。
この程度の出生率の上がり方では子どもたちの出生数を増やすにはあたらない。で
す か ら こ こ で 大 事 な こ と は 、出 生 率 と い う 率 を 見 る の で は な く て 、数 そ の も の を 見 て 、
危機感を感じ取らなくてはいけないということだと思います。昨年生まれた子どもの
4
数、史上最低です。102万9800人、これは日本人の数ですが、今年上半期の速
報値はもう50万切っています。それは外国人も含めてです。いつも下半期のほうが
少 し 多 い の で 、何 と か 1 0 0 万 を 維 持 す る か も 知 れ ま せ ん が 、ギ リ ギ リ だ と 思 い ま す 。
あまり言うと身もふたもない話になりますが、1.43は来年どうも下がる、1.3
台 に ま た 戻 り そ う と 、だ い た い 前 の 年 に 予 測 が つ く の で す が 、1 .3 台 か せ い ぜ い 1 .
40ぐらいではないかというふうに見られています。すなわちここで第二次ベビーブ
ーム世代、いわゆる団塊ジュニアといわれている人たち、1971年から1974年
の、一番最後の74年生まれの人たちが今年40歳になっているのですね。ほぼ出産
可能年齢から外れるようになったのですね。
その数を見ていかなくてはいけないんですが、私は戦後、第一次ベビーブームあた
りで生まれているのですが、団塊世代の子どもたちが第二次ベビーブーム、本当は第
三次ベビーブームがあってしかるべきだったんですね。ところが日本の場合は何もな
くて逆にえぐれるくらい出産が減ってしまっているということで、これ以降はもう山
はありません。ですから彼らがまだ30歳ちょうど、要するに10年前にいろんなこ
とが行なわれていればもっと事態は変わったと思いますが、今大変厳しい状況になっ
ている。全国47都道府県で今年生まれた方に集まっていただくとして、女性の方だ
け に 着 目 し て も 、約 1 0 0 万 人 の 出 生 数 の 半 分 が 女 性 と 考 え れ ば ほ ぼ 5 0 万 で す か ら 、
20年~30年後にはわずか50万の方からしか出産されない。そこまで日本は子ど
もの数が少なくなってきているということを改めて認識する必要があると思います。
出産が非常に少なくなった原因には、晩婚化、晩産化の傾向があります。ヨーロッ
パの国々は社会的価値観が違って、出産があってそれから結婚ですね。日本の場合は
伝 統 的 に 家 庭 を 大 事 に す る と い う 価 値 観 が ず っ と 支 配 し て い ま す の で 、結 婚 が あ っ て 、
そして出産。婚外子は2%ぐらいです。日本の場合は結婚があって出産ですから、結
婚がおくれているから出産もおくれている。これは晩産化のほうですが、102万9
800人の母親の年齢を見ると、3割が35歳以上ということで、第一子として生ま
れるのは48万人ですが、その母親の5人に1人が35歳以上ですから、いかに晩婚
化が加速しているかがお分かりになると思います。
全体的には出産がおそくなって、従って数が減っているということを都道府県別に
見 た の が こ の 表 で す 。兵 庫 県 は 1 .4 2 で 、全 国 平 均 よ り ち ょ っ と 低 い ぐ ら い で す が 、
このくらいの水準です。非常に高いのが沖縄で1.94、これは非常に高いですね。
地域で子育てを支援するということが仕組みとして出来上がっている。沖縄の統計を
見 る と 、第 一 子 、第 二 子 は そ れ ほ ど 変 わ ら な い の で す が 、第 三 子 以 降 の 率 が 高 い で す 。
ですから若い夫婦で出産されるとき、一人、二人というより、三人とかですね非常に
数多く出産される。その子どもたちを地域で子育てを支援するという仕組みがきちん
と出来上がっているからだと思います。
九州が比較的高くて、二番目が宮崎で1.72。実は北海道、東北が全体的に低い
んですね。都道府県ごとにみると、先ほどの兵庫県の1.42を含めて全体的に低い
のですが、それにしても都道府県ごとにどういう要因で、どういう原因で、こういう
違いが出てきているのかという点をきちんと分析していくことが必要だと思うのです
が、都道府県ごとの違いを理解するのは難しい。人口学会の会長さんと先般も議論し
た際、もともと北海道、東北は出生率は低いのですが、北海道などは日本の縮図のよ
うな形で大都市である札幌市にとにかく若い人たちが集まるのですけれど、男性は道
外に働きに出るので男女間の比率、バランスが悪く、札幌市には若い女性が多い。で
すから出会いのチャンスがなかなか無くて晩婚になり、晩産になる。東北はちょうど
逆で、私も知事をしていたのでまさに実感するのですが、若い男性はけっこういるの
で す が 、女 性 が み ん な 東 京 へ 行 っ て し ま い ま す 。で す の で 、や は り バ ラ ン ス が 悪 く て 、
5
結局、晩婚になります。九州はそのあたりの男女比が比較的整っているので結婚年齢
が早く、出産に早くつながって、出生率は少し高くなっている。
ここでご覧いただきたいのが、この赤い棒、東京です。周囲の他府県と比べると極
端に少ない、1.13ですから。これはそれでも改善されたほうで、前の年は1.0
9です。ここまで低くなっている。恐らくこれは複合的な要因であって、冒頭で東京
一極集中についてのマイナス面を言いましたが、住宅が狭い、出産、子育て、教育に
ものすごくコストがかかる、若い夫婦にとっても通勤時間がものすごく長くて、90
分以上の人がごろごろいます。往復180分、企業は競争が激しいので相当長時間労
働、夜も残業が多くて、それで90分以上かけて通勤しているのでへとへとで、土日
はもう生活に余裕が持てないですね。コストも高いですから先輩方の苦労を見て、住
宅も狭い、保育所の数も少ないから、結婚して一人出産してもなかなか二人目、三人
目と勇気が持てない。
様々な要因で東京の場合はこの1.13がなかなか上がらない。むしろこれがマッ
クスぐらいの感じです。ただ、東京都がさぼっているわけではなく、べらぼうな少子
化対策予算を投じているのですが、効果という意味ではなかなか改善されない。これ
は世界の大都市に特有な状況でありまして、シンガポール、ソウル、上海、ほとんど
の大都市で合計特殊出生率は低い傾向にあります。
こういう状況がある中で実は、我が国はその東京にずっと一貫して人が集まってい
る。これが地方から出て行った人の数、こちらが三大都市圏に入って行った人の数で
すが、これが高度成長期、前の東京オリンピックの前後ですね、そしてこれが198
0年代のいわゆるバブル期、そして今現在ということですが、この高度成長期はこの
大阪圏や名古屋圏にも地方から人が移っているのですが、バブル期や2000年以降
の最近は、地方から出て行った人が確かに大阪、名古屋に行くのでしょうけど、そこ
からまた玉突きで東京へ行っているので結果として増えているのは東京圏だけという
形になっている。
東日本大震災があったので東京へ人がどんどん集まっていくという傾向が変わった
んではないかということを言う方がいらっしゃるので、私も実は東京一極集中という
のはいろいろな脆弱構造につながりますので、そのあたりを期待したところもあった
のですが、少し細かく見ますと、これが東京圏ですが、2010年の住民票の東京圏
への転入超過数、9万人ちょっとです。2011年の震災があった年、一挙に3万人
減って6万人になっています。2012年もあまり増えなかったので、この2年間の
様子を見て、生き方とか価値観が少し変わったのではないかと思って見ていたのです
が、昨年は震災の影響は全くなかったかのような感じで、2010年よりももっと多
く、9万7千人くらいが東京に転入超過。実はこれはもっと多いのではないかと思い
ますが、住民票の移動ということであればこれくらいで、せっかく2011年、20
12年は名古屋圏、大阪圏が一時期増えたのですが、具体的には昨年の10月から、
どっと東京に集まり始めている。昨年の9月にオリンピックの誘致に成功して、東京
で一斉に事業が動き出したので、2020年に向けてこの傾向がますます加速化して
いく、今、東京は本当に人手不足で、時給を高くして人を集めていますのでこの傾向
が続くのだろうと思います。
東京に集まっている人の年齢層を見ますと、20歳から24歳、一番多いのがこの
層で5万7千人ぐらい、次が15歳から19歳、そして25歳から29歳。これは明
らかに22歳の就職の時に東京に移る、この15歳から19歳は、18歳の大学進学
の時に東京に移るということだと思います。
25歳から29歳も含め、東京に移っている人の9割以上は一番、出産可能性を持
った若い人たちですね。もっと年配者が東京に移るということではなくて、若い人た
6
ち、実は住民票を移している人たちですので、私も今、東大で教えているのですが、
学生に聞くと、住民票を移さずに東京で学生生活を送っているのも結構いるので、実
質はもっと多いと思います。間違いなく10万を超えるのですが、この人たちが実は
先ほど言いましたように、出産や子育てにとって状況が厳しく、コンディションが悪
い東京に毎年、次から次へと移っている。
し た が っ て 、我 が 国 で は 地 方 部 も 含 め て 、出 生 率 の 向 上 や 出 産 に つ な が ら な い 。今 、
文明国家はどこもそうですが、そういう状況である中でなおさら日本は東京圏に若い
人たちが集まっている。出生率が1.09、昨年は少し改善されたといえマックスだ
と思いますが出生率が1.13のような場所に人口が集積する構造をこれからずっと
続けていいのかということであります。
ヨーロッパ、アメリカが全部のお手本になるわけではないのですが、パリ、ロンド
ン、ローマ、ベルリン、ヨーロッパの首都、そしてニューヨークは首都ではありませ
んが一番経済が活発なアメリカの中心地、これらの都市では第二次世界大戦後、その
国のなかで都市人口の比重を低下させているか、せいぜい横ばいです。ところが、日
本だけが東京に人が集まる、しかも若い人を中心に、いまだにずっと集め続けている
というのは非常に特異な構造だということがお分かりになるかと思います。
いろいろ調べてみると、ソウルやマニラのような都市も若年層を集積する傾向はあ
るのですが、その中で東京の一極集中は際立っている点です。ここが全国で今起きて
いる総論的なことです。この構造を是非ご理解いただきたいと思うのです。
6ページの表をご覧いただきたいと思います。ここでは2040年までにどれだけ
高齢化が大都市で進んでいくのかということで、東京都をご覧いただきますと204
0年の75歳以上後期高齢者の数が、千葉、埼玉、神奈川は2倍以上、東京都も1.
7~1.8倍になるのですが、生産年齢人口は40%減る。20代、40代は44%
くらい減ります。これが将来、2040年の人口の推移ですが、今後、高齢者がもの
すごく増える、2倍くらい高齢者の数が増えて若い人たちが減るということで、医療
や介護は本当に持続可能なのかと疑問に思えてきます。それが一昨日、日経新聞の一
面のトップのところに数字が出ていました。
東京都は今現在、待機介護老人、待機介護高齢者といっていますが、だいたい4万
3千人、実際にはもう少し多いのではないかと思います。今現在でも4万3千人の待
機介護老人が東京都内にいらっしゃるというこうことで、実は私は岩手で知事をして
いましたが生まれ育ちはずっと東京で高校も東京なのですが、新宿区にある都立高校
に通っていました。そのわきに、戸山団地という大団地があって、その団地に同級生
もいっぱいいたのですが、今この団地では、老々介護の問題や独居老人、さらには1
か月半から2か月も経って発見されるような孤独死など数多くの問題が生じています。
新宿区のど真ん中でそういう状況になっています。
高度成長期にできた大団地というのは、だいたいそういう状況になっている、一方
で空き家がものすごく増えている。神戸の中でも、例えば須磨ニュータウンという非
常に大きな大団地がありますが、そこもかなり高齢化をしているとお聞きしています
けれど、今そういった状況が大都市の足元あちこちで起きているということです。
高度成長期から一貫して若い人を東京都はいっぱい集めてきたのですが、その企業
戦士のような方々がリタイアし、2025年頃から団塊世代が後期高齢者になってい
くわけですね。2020年に東京オリンピックという宴があり、その後、2025年
頃から高齢化問題が非常に厳しくなってきて、東京の場合には2030年から40年
に際立ってくる。これまでは岩手のような農村部で非常に出生率が高くて3人、4人
と出産される。長男が基本的に農業を継いで、二男以下は東京に出て行って労働を賄
ってきたという構造が、地方でも出生率がうんと低下してきて、一人っ子あるいは、
7
せいぜい2人くらいが多くなってきているということなのですが、東京に若い人をど
んどん送るという機能がほぼ限界になっている。こういう高齢化の状況が出てきてい
る、これをストップさせる。
神戸のデータを見ていても、せっかくここで大学を卒業しても東京にやはり出てい
く と い う 人 た ち が い ら っ し ゃ る わ け で す 。神 戸 自 身 も 求 心 力 が あ る 部 分 も あ り ま す が 、
東京との関係では転出超過になっている。日本全体でそれを繰り返していくと、まさ
に久元市長さんが冒頭のご挨拶で仰っていたように、東京がブラックホール化して日
本全体を滅ぼしていくことにつながっていく。これに警鐘を鳴らしていくことが、私
が主宰するシンクタンクである日本創成会議の5月8日の提言につながるのです。
人口減少の状況を「20歳から39歳の若年女性の減少」と、今まで人口減少とあ
まりむすびつけられていなかった「東京一極集中」というこの2つを是非見てくださ
いということで提案をしています。20歳から39歳に限っているのは、その年齢層
の女性から95~96%のお子さんが出産される。
そして国立社会保障人口問題研究所という非常に精度の高い人口推計を出している
機関があります。私は本当にデータを活用させていただいています。あれだけ少ない
人数でよくあれだけきちんと分析されているなということで感心しています。この研
究所の人口推計に関しては、多分ご自分の市町村のデータをご覧になっていると思い
ますが、これからさらにいろんなところで活用されてほしいなと思っています。
国全体の将来人口推計というのはもちろんずっと昔から出ているんですね。そして
兵庫県の将来人口がどうなるかということも昔から出ていますが、市町村ごとの将来
人口推計というのはなかなか難しくて、私も知事のときにそれが欲しいと思っていま
したが、推計が出たのはごく最近です。2000年の国勢調査からその推計が出まし
たが、第一回目なので少し精度が粗いので使い方に注意してほしいと言われていたの
で、市町村にそれを持って入ることはありませんでした。一番最近では2010年の
国勢調査を用いて市町村ごとの推計が昨年3月に出たので取り寄せて、我々のほうで
も推計をいたしました。
少し社人研の推計に手を加えたのは、東京一極集中がこのまま続いていくのか、収
束していくのか評価のところを、私共は東京オリンピックも決まって、東京一極集中
がむしろこれから加速される。その数というのは少なくとも従来から変わらないとい
うふうに思って、そのデータを少し加味しました。社人研はそこがだんだん少なくな
って収束していくと前提を立てているので、そこだけを一部変えました。
それで将来人口が市町村ごとに出ている2040年、分母は1,799のうちちょ
うどほぼ半分、49.8%、896自治体が消滅可能性自治体に該当するのではない
か 。そ し て 人 口 規 模 は 1 万 人 未 満 の い わ ゆ る 小 規 模 自 治 体 は 3 割 く ら い あ る ん で す が 、
523が該当しましたがさらに消滅可能性が高い、これはどういうことかと言います
と、4ページに書いています、人口がゼロになると言っているわけではありません。
一番正確に言うと、2010年から人口将来推計が出ている2040年にかけて、2
0から39歳の若年女性人口が半分以下まで減ってしまうという自治体です。
なお、社人研の推計では多様な分析が可能となるように推計されており、市町村の
30年先の年齢の刻みを5歳ごとに、20から24歳の女性の人口が2010年には
何人と、それが2040年には何人まで減少するとか増えるということをきちんと推
計で出しておられます。
例えば、高齢化率が日本で一番高くて、人口の減り方が一番激しいのではないかと
我々の推計で想定されている群馬県南牧村というのがあって、2010年の国勢調査
では20代、30代の女性の数が99人です。もう少し減っているかもしれません。
2040年には10人まで、89.9%まで減ると推計されています。
8
人口の再生産力を持っている年齢層である若年女性人口が半分に減ってしまう、そ
こまで減少してしまうという消滅可能性都市、持続可能性の反対の言葉ですが、若年
女性人口が半分以下になる自治体が人口を維持しようとすると、現時点で直ちに合計
特殊出生率が3くらいまで上げなければ維持できないという計算になります。合計特
殊出生率が3というのはあり得ない数字です。出生率向上のため様々な対策を打って
いるフランスが2.01、北欧スウェーデンが1.91、フィンランドが1.92と
か、先進国家ではどこもだんだん出生率が下がってくるのですが、3というのはどう
やっても届かない数字です。ただ、2までは必ず実現しなくてはならない数字だと思
っています。ただ、2でも大変ハードルが高く、合計特殊出生率が2ということは、
日本の今の平均的な姿、例えば女性を10人抽出するとその中にも生涯結婚されない
方も十数パーセントかいらっしゃいます。残りの方は結婚されるわけですが、結婚さ
れても出産されない方もいれば、1人のお子さん、2人のお子さんの方もいる。6人
以上、7人近くの女性がお子さんを3人出産するというのが合計特殊出産率2という
数字です。
私も3人兄弟で、全員が60歳を超えましたが、時計の針を50年、60年近く戻
すと、私の頃は学校に行っても3人兄弟、4人とかいました。そのくらいまで戻すと
やっと2くらいまで戻るということですが、どうみても3には届かないと思います。
フランスは出生率が1.66まで下がって、あらゆることをやって今、2.01まで
回復した。ですから少子化問題を克服したと言われていますが、膨大な少子化対策予
算 を 投 じ ま し た 。G D P 比 3 % 、日 本 は 1 % 強 、ち ょ っ と 最 近 増 え た の で 今 1 .3 5 %
ですが、投資額の桁が全然違う。しかし、それだけでは出生率が上がらず、フランス
では今2つやっています。一つはアフリカからの大規模移民、かつての植民地、アル
ジェリアやモロッコ、セネガルなどいろんなところから連れてきて、それでも人口の
回 復 が 思 う よ う に い か ず 、い ろ ん な 議 論 が あ っ た と 思 う の で す が 、い わ ゆ る 婚 姻 制 度 、
家族観というのをガラッと変えて、子どもの数が多ければ相続税がどんどん安くなる
ということで、ベトナムの子どもなどを資産家が養子にしているのはそういう理由が
あるのだと思います。事実婚を中心にして出産されるということにどんどんインセン
ティブを与えている。事実婚が社会的に許容されている。
フランスの女性を見ますと、出産が早くて、平均出産が28.5歳くらい、初婚の
年齢が32.5歳くらい。男女が出会うと出産を先にし、4,5年の間よく考えてか
ら結婚する。そのような社会にまで切り替えて数を確保することに成功している。
合計特殊出生率が3というのは実現困難で、ここまで女性の数が減る自治体はこれ
から人口が増えることはないだろうということで消滅可能性という言い方になりまし
た。
人口減少は止めなくてはいけないと冒頭でも言いましたが、ここ当分は人口減少は
避けられません。今直ちに出生率を上げても減るんですが、一番問題は人口が減り続
け て い る こ と 。こ れ は 社 会 保 障 を 困 難 に す る ほ ど 年 齢 構 成 の バ ラ ン ス が 崩 れ る こ と と 、
地方が消滅して東京だけに人が集まるという極点社会、そしてブラックホールのよう
な現象が起きるということだと思います。
神戸市のデータですが、全体と区ごとに分けています。地方部へ行ってお話をする
ときは、人口は減少傾向にあるのですが、神戸市はさすがに求心力がありますね。社
会 増 と い う 形 で 、他 所 か ら 入 っ て く る と い う 形 で 増 え る と い う こ と も あ り ま す け ど も 、
今154万人近くいらっしゃる人口ですが、データを少し見ますと、どこから入って
来るかということですが、社人研、創成会議の推計では他の県、市とそれほど違わな
いんですが、見て欲しいのは合計特殊出生率です。中央区が1.05で非常に低いの
ですが、垂水区は1.45ですが、それ以外1.2とか1.3、いずれにしても低い
9
ですね。大都市ですから出生率を上げることに関して大変難しいことは重々承知して
いますが、それでもこれから地域全体で結婚、出産、子育て、そしてその子たちがこ
の 神 戸 で 教 育 を 受 け る と い う 目 標 に 向 か っ て も っ と 努 力 を す れ ば 、結 果 と し て 上 が る 。
私も、出生率を国家や行政の目標にして、出産しろと上からいろいろやるということ
ではなく、本当の若い人たちの気持ちに沿った形で結婚、出産、子育て環境を変えて
いくという自治体であって欲しいと思います。
ちょっと説明が必要ですが、赤字で書いているところが兵庫県全体の市町村のなか
の神戸市各区ですが、自然増減の影響度でいえば、中央区、灘区あたりは出生率が低
いですが少子化対策をきちんとやれば劇的に改善効果がある。要するに自然増減と社
会増減で人口は決まってくるのですが、神戸は都会型なので社会増減のことはあまり
考える必要はない。僅かに須磨区が社会増、出ていくのを止めれば効果が出てくると
いうことです。どこにおいても出生率対策を優先してやることで劇的に改善効果がで
る。これは東京都と非常に似ている。ですから合計特殊出生率を改善するということ
が必要だと思います。
ただしこれはすぐにはできないことだと思います。やるべきなのですが実は出生率
を上げるということはものすごく大変なことであり時間がかかります。少しずつ住環
境を良くしていくとか、子育て環境を良くしていくことなど全部積み重ねなければい
けないのですが、当面、社会増という形で他所から入ってくる、東京都との関係だけ
は負けているのですが、その他からは求心力ある区が多いわけですのでそれぞれの区
の魅力をもっと高めて周辺から人がうんと移ってきて神戸で住みたい、神戸で働きた
い、神戸でずっと生活をしたいという魅力を高めていくということが、この人口問題
に対処していく非常に重要なポイント。やはり地域の魅力というのは文化であったり
娯楽であったり、教育であったり、そこが持っている過去からの歴史が醸し出す雰囲
気というものがある。その点を高める、都市の魅力を高めるようなことが大事だと思
います。
そしてどうしても、東京ほどではないですが、人が外から入ってきた時に、やはり
都市ですので家賃の問題とか住む場所をどうするかという問題がありますよね。私は
まだ最近の須磨ニュータウンなどには行っていませんが、一方で大都市の足元で、東
京でも相当な空き家が出てきているわけで、古くて老朽化して危なっかしい空き家は
もちろん取り壊しいくべきでしょうが、まだまだいろんな人が入って行って十分に使
えるような空き家を外から入ってくる人たちが使いやすいように開放して、これから
は既に都市に溜まっているストックを生かす方向でどれだけのことができるかという
ことを考えていくべきだと思います。
出生動向調査を見ると、日本の若い人たちは非常に健全ですね。結婚された方は皆
さん、2人以上の子どもさんを持ちたいと思っておられる。未婚の方で9割の方が結
婚願望を持っておられます。皆さん、理想の子ども像は2人以上、ですから若い彼女
ら、彼らの希望をきちんと叶える国家であってほしいと思います。彼らの希望をきち
んと叶えると、それだけでも1.8になります。それは20歳代後半の結婚割合を6
0%、今40%なんですが、それをもう少し早い結婚ができるようにするとその割合
に達しますので、これをぜひやってほしい。きちんと対策を取ると、1.8を10年
間で実現する、そして2.1までするのはなかなか大変ですが、本当に努力して20
35年までの次の10年間で2.1まですると確かに人口は減るんですが、9500
万人くらいで日本の人口は安定します。
2090年、80年後ですからかなり先ですがその時に高齢化率が二十何%まで下
がっている、今の現状まで高齢化率が下がっている。一時期これから人口減少で高齢
化も進みますので35から40%ぐらいまで高齢化率は上がりますが、それがもう一
10
回若返る。国家で若返った国は今までありません。1億を超えていた日本が一番最初
に国家として若返りを図れるかどうか、まさにそのスタート地点に立っているのでは
ないか。これは地方創生のために、地方へ新しい人の流れを作るという国土政策を議
論していくということですので、過去に行われた国土政策をもう一回議論することだ
と思います。
神戸は都市としての魅力は十分兼ね備えているからこそ、人が集まっているのだと
思いますけれど、それをさらに磨き抜いて、過去の経験やカンに頼るのではなくて科
学的にデータを分析する、住民の移動は住基ネットを見れば、どこにどういった人が
どういう理由で出ていっているのか分かりますのでその原因を突き止めて、それで対
処策をきちんと講じるというスタートの年にしていけないかと思っています。地方消
滅という本にこの辺りは詳しく書いていますので、ご興味のある方はお読みいただき
たいと思います。
11
○ディスカッション/テーマ「神 戸 市 の人 口 動 態 の変 化 と要 因 等 」
足立委員
ご紹介にあずかりました甲南大学経済学部の足立と申します。私のほうからは、神
戸市の若年女性の就労支援施策の検証についてお話しさせていただきます。まず本会
議のテーマであります人口減少にともない、新たな労働力としての女性就労促進が有
効な施策ではないか、そういう視点から少子化対策が現在求められています。その中
で、神戸市におきましては、人口移動、地域の特性などを踏まえ、その上で財政の制
約、そういったものも考慮した中での神戸市が持つ潜在能力を最大限に生かしつつ、
女性の就労、出産、保育ならびに子育て支援への給付金はどのようなやり方が適切な
のか、もしくは望ましいのか、それについて神戸市というマクロの視点、さらに小さ
な区単位で現在検討しております。
で は 人 口 減 少 、一 つ の キ ー ワ ー ド と し ま し て 少 子 化 の 要 因 と い う も の が あ り ま す が 、
その要因として女性のライフサイクルの選択と出生率の低下、これが大きな要因とし
て挙げられます。具体的には就労、制度、社会動向、そういったものが絡み、結果と
して女性の未婚化、晩婚化、晩産化につながり、さらに少子化による人口減少問題を
招いている可能性です。対策として適正な給付が必要ですが、財源の確保が重要な課
題になります。
まずその財源の確保としまして、神戸市に税収がどのように推移しているかといい
ますと、近隣の大阪市、京都市、名古屋市と比較しましても、神戸市に税収というの
は3割以上が個人市民税で賄っています。この個人市民税、経年的にみますと税制改
正の影響を除けばやや軽減傾向にある。では神戸市の人口移動ですが、税収に寄与す
るであろう生産年齢人口は横ばいです。さらに神戸市全体、マクロでみますと若年女
性は就学期に流入し、就職期に流出、子育て期にはやや流入している、そういった実
態がある中で、区別に見ますと若干様子は異なります。例えば東灘区、灘区、中央区
につきましては、就学期、就職期、子育て期全てにわたって流入傾向にある中で、垂
水区、北区、西区につきましては、流出傾向にあります。さらに就職期につきまして
は区間格差が生じている、そういう意味で区別で物事を考えて行く必要があるのでは
ないかといった視点が出てきております。
さらに調査のターゲットであります若年女性に絞って、就労、結婚ならびに出産も
みましたところ、全国レベルよりも神戸市は労働参加率が低いです。未婚率につきま
しても全国レベルより高い、さらに合計特殊出生率につきましては、全国1.38に
対して、神戸市は1.28と低いのが実態です。
その中でも区の単位で見た場合どうなるのか、若年女性についてはどうなのか、中
央区、兵庫区、長田区の労働参加率は高いのですけど、西区は低い、また年齢階層別
に見ますと年齢階層が高いほど変動係数が高くなっています。0.010から0.0
3 0 。こ の 変 動 係 数 が 高 い こ と に よ っ て 区 間 格 差 が や や 拡 大 傾 向 に あ る の で は な い か 。
それが数字から読み取れます。さらに若年女子に未婚率につきまして、1990年、
2000年、2010年、経年変化で見ますと全ての区にわたって上昇傾向にありま
す。一方で東灘区、灘区、中央区の未婚率は確かに高いですが、もうひとつ気になる
点、それが須磨区、北区、垂水区、西区の未婚率の上昇幅が高い。ワンスポットで見
るのも重要ですが、経年変化で見ることも一つ指標として重要なのではないかとも思
われます。
さらに子どもの数、一つに指標としまして給付対象者、給付を実際に使っている人
を見ましたところ、乳幼児医療対象者数と児童手当受給者数が西区、北区が相対的に
多く、長田区、兵庫区が少ない、子どもの数が西区、北区に多いのではないか、また
12
女性が働きながら子育てをする中で、保育園の存在が特に重要です。保育園を見まし
たところ、子どもの数が多いということに関しては保育園の設置数にも反映されてい
ます。総数を見ますと西区が圧倒的に多いです。もう一つ特徴としまして、保育所は
公営ではなく民営がフォローしている点、他の区についても共通していえます。ただ
程度が違います。程度が違うということは区間格差が生じている可能性があります。
それをさらに年齢階層別に見ましたら、0歳児が特に区間格差がある。さらに経営形
態を含めて考えますと、0歳児に公営保育園に区間格差があり、民営につきましては
5歳児に生じている可能性がある。
区単位で見ていただきました。区単位につきましては他にも平均初婚年齢、また母
平 均 年 齢 と い う も の が ご ざ い ま す 。そ こ か ら 言 え ま す こ と 、女 性 の 就 労 、出 産 、保 育 、
子育てに関しては神戸市については区ごとに異なる点が明らかになっています。
最後まとめますと、制約された財政状況ならびに神戸の人口移動の特徴、また神戸
のそれぞれの地域での特徴を踏まえますと、給付に関しましては女性の就労、結婚、
出産、子育て支援につきましてはエリアマネジメントが求められているのではないか
というのが、現時点で分かっております。
伊藤委員
では続きまして、伊藤が報告させていただきます。住環境とか持続可能な地域づく
りという観点から考察を進めたいと思います。視点なんですが、先ほどもお話があり
ましたように人口減少は避けられない、その変化を踏まえた上でどうすれば暮らしや
すい、産み育てやすい社会をつくっていけるかということです。そうしますと成長を
前提としたこれまでの都市開発とか都市学とは違う考え方を持っていかなくてはなら
ない。とうことでそれぞれの地域で人口バランスに配慮したり、街づくりというのは
すぐ目に見える成果が出るわけではないのですが、やはり地道に続けていかないとい
けないのではないか。もう一つは、住環境、雇用、コミュニティということですね。
子育ての観点から考えてみた場合、地域の特徴を生かしていこうということです。も
ちろんどの地域でも、防災に強いですとか、福祉のサービス、教育のサービスが受け
られるというのは大事ですが、その上で神戸の街は地域によっていろんなバラエティ
がありますので、そこに住んでいる人、働いている人、生き方、子育ての仕方という
のはそれぞれ違いがあるのではないかと思います。地域に必要とされているニーズと
いうものも、地域によって違ってくるのではないかというところも視点として持って
いきたいと思います。
最近の人口移動の傾向といたしまして、神戸市の社会増減はほぼ横ばいという状況
です。やはり東京への流出傾向は続いているのですが、さらに増加傾向にある。近隣
自治体では大阪市、西宮市、明石市への転出の超過が目立つ。もう一つは就職世代の
転出が超過している。大学生は多いのですが、就職のタイミングで転出してしまうも
のが目立つのというのが特徴となっています。先ほど申しました大阪市との関係です
が 、2 0 0 0 年 の 時 点 で は 大 阪 市 か ら の 転 入 の ほ う が 5 9 9 人 の 超 過 だ っ た の で す が 、
その後だんだん減少して2003年から転出超過に転じています。
それを区別に見ますと、東灘への転入が以前は多かったのがストップしてしまって
いる。それから北区、垂水区、西区からの流出が目立っているという特徴がみられる
かと思われます。
続きまして西宮との関係で見ると、転入転出は年によって増えたり減ったりするの
で一概に言えないところもあるのですが、区別にみると東灘区の増減が市の増減に影
響していると考えられます。年によって違いますが、この3年を見てみると東灘区へ
の転入超過
13
から転出超過になっている。次に明石市との関係ですが、2000年の時点では明
石市からの転入超過が589人でした。それが大きく見ると2006年から7年ころ
から減少傾向が見られています。明石といえば隣接する西区との増減が大きく影響し
ているようで、2000年には西区への明石からの転入が506人だったのに対し、
2005年ぐらいから減少が見られて、昨年、遂に転出超過に転じているというとこ
ろがあります。今後も詳しく見ていきたいなと思っています。
神戸市内でのどの区からどの区への移動があるという転入超過数、昨年度のものを
見てみましたところ、主な特徴としては流入が東灘区、中央区、垂水区で目立ってい
て、流出が北区、西区が多いというものと、全体的に見て西から東への流れがあり、
中央区というのは北区や西区から流入していて、灘区と東灘区には流出しているとい
う流れが見えます。郊外から市街地へということで、北区は全ての区に転出超過、特
に中央区、兵庫区、須磨区への流出超過が出ています。
ここまで神戸市の人口移動についてお話しましたけれど、これだけですと把握しき
れないところもありますので、この後、移動があった、転入或いは転出された若年女
性をピックアップし、その方たちを対象にアンケート調査をして、移動の理由はどう
だったのか、傾向を探っていき、今後の若い世代の人たちにとって魅力ある都市づく
りの提言に繋げていけたらいいなと思っております。
ただ近隣の自治体からの転入を増やすだけでは、縮小社会というものの根本的な解
決にはなりませんので、それプラス、本当はマクロな視点で関西圏とか西日本のエリ
アで東京への流出をどう歯止めをかけていくか、あるいは区別に見ましたけれど、区
の中でもいろいろ多様な動きがありますので、もうちょっとコミュニティレベルの街
づくりという視点も持っていかなければというふうに考えています。
続きまして神戸市の住宅とか住環境の動向、ざっくりとまとめますとこのようなこ
とが言えるかと思います。一つ目のニュータウンのオールド化ということ、少子化、
高齢化が進んでいます。神戸市の住宅関係の部所でも住み替え、リノベーションの取
り組みが始められておりまして、空き家ストックを流通させるようにしたプロジェク
トですとか、リノベーションして市営住宅に若い人が住みやすいような改修をすると
かいうようなことはされ始めています。まだ数的には大きな動きにはなっていません
ので、これから本気で取り組まれていくのではないかと思います。
二つ目の都心回帰ということで、中央区などに大きなマンションがたくさんできて
いるということで、市街地でも特に東部のほうは最近少し落ち着きがありますが、震
災後、新築のマンションや住宅が増加している部分があります。大きなマンションを
ランダムに建てるのが景観とかコミュニティにとっていいのかという問題はあるかと
思うのですが、今の時点では建てれば人が住むというニーズがあるということが言え
るかと思います。
三つ目の将来的な縮小というのは動向というよりも、今後のことを考えてという私
の見解なんですが、どこか縮小していく部分を踏まえていかないといけないと考えた
ときに、これまで開発してきたニュータウンの一部を自然にかえしていくような選択
肢もあるのではないかと考えられます。
消滅可能性があると言われた須磨区のニュータウンの簡単な概要ですが、確かに入
居が早かった北須磨とか高倉台では高齢化率が高いという状況が見られます。神戸市
の中でも50戸以上のニュータウンでも全体的に早く入居したところが高齢化率が高
いという状況があるようななんですが、一概に言えないようなところもあるようで、
一つを見ていってそのニュータウンの歴史や特徴を踏まえて対応を考えていく必要が
あるかと思います。一口にニュータウンと言いましても、交通の便がいい、保育所が
充実しているところへは若い人のニーズがあって今でもいい値段がついているという
14
特徴があるそうです。
これからニュータウンをどうするかということを考えたときに、なるべく早く手入
れをしていくことが大事なんではないかということです。リフォームするにしても新
し い 仕 様 の 住 宅 の ほ う が 手 が 加 え や す い で す と か 、不 動 産 の 方 に お 聞 き し た の で す が 、
あまり高齢化が進んでしまうと若い人が入りにくくなってしまう。そういう意味でも
少しずつ補修していって若い人に入ってもらいやすい工夫をしていく必要があるかと
思われます。
高齢化が進んでいると言われた高倉台なんですが、小学校の児童数でみると500
人以上いて、自治会や管理組合がしっかり活動している。交通の便も、非常に便利と
いうほどではないですが、あるという地域になっています。この地域のアンケート結
果を市の方に見せていただいたんですが、住んでいる人たち自身はここは子育てがし
やすくて満足しているという状況が出ています。高齢者といいましても、まだ60代
とか70代ぐらいの方々なので、今の時点では確かにいい街なんだと思いますが、今
後のことを考えていくのが課題なんだろうなと思われます。
最後に、子育て、生活、就労など色々考えたときに、よく言われる言葉に専門サー
ビス、自助、共助といわれるものに分けるとしますと、いろんな選択肢があってその
人たちの生活がされているわけですが、ニュータウンによっては近所に親族がいてお
じいちゃん、おばあちゃんに見てもらいやすいことが特徴の地域だとか、いろいろあ
るようなので、それぞれ細かい地域レベルで今後見ていきたいと思います。
中川座長
ご紹介にあずかりました中川です。私は3人の中では地域人口、人口の移動を専門
にしていますので、会議の中では全体的な人の動きの話であったり、人口のデータを
市役所の方に提供するような役割をしております。
最初に見ていただくのは、既に増田先生がご説明いただいたかと思いますが、神戸
市のこれまでの人口の推移でポイントになるのはたまたまなのかも知れないのですが、
95年の阪神淡路大震災と今ということになります。と言いますのは、戦後、神戸市
の人口は阪神淡路大震災の頃まで増加を続けてきました。中身ですが、戦後の前半、
高度成長期のころは、郊外ということで垂水、北区、西区、市街地の中の中部、東部
で 東 灘 区 、灘 区 、中 央 区 、そ し て 兵 庫 区 、須 磨 区 、長 田 区 で す 。戦 後 の 前 半 は 市 街 地 、
東部、西部で人が増えた。高度成長期以降は郊外で増えた。震災後はどういうふうに
変わったかを見ていただきますと、市街地の中でも中央区よりも大阪に近いほうがさ
らに増え始めたんです。だけれども兵庫区より西の方はそれ以降、ずっと人口減少し
ている。一方、それまで神戸の人口増加をけん引していた郊外が停滞しているという
ことが分かると思います。
将来推計になるのですが、ちょうど今が、推計どおりにいけばですが、一番人口が
多い時期ということになります。
人口の変化というのは転入・転出、出生・死亡という2つで成り立っているのです
が、現在は転入と転出の差もほとんどゼロになっている、一方の死亡と出生の差は、
死亡が着実に増えていて、出生がそれに比べて停滞していて今後もそういうことが続
くだろうということです。
将来推計の話で一つだけ、増田先生もさっきご指摘された、ブルー、社人研が推計
しているもので、赤がもし神戸で人口の移動が全然ないとしたらどうなるか、つまり
出生と死亡だけで人口が決まるとしたらどうなるかというもので、つまり神戸の場合
では転入・転出の差でこれまでちょっとずつでも人口が増えていたのですが、転入・
転出が無くなったらこんなふうに減っていく。多少操作を加えようとしたのがこの3
15
つですが、例えば合計特殊出生率が2030年に1.5あるいは1.8になるという
ふうな前提に変えてみたらどうなるかというと、150万は切るのですが、少し多く
なる。あるいは人口移動を少し、これは例えば現状では神戸の場合には出入りはたく
さんあるのですが、結果としては1年間に100人のうち2、3人が入ってきたり出
て行ったりするという状況ですね。どの年齢も1人ずつ多く入ってくるほうに上げる
とどうなるかというのをやったらこういうふうになる。少しの差で結構将来の神戸の
姿は変わってくるのだということが一応確認できるということです。
小学校区別に見たものですが、どうしてこういうのをやろうと思ったかといいます
と、ここまで聞かれた話だと直接自分には関係ないと考えられている方もいたかも知
れませんが、100人中1人新たに入ってくるとか、少し出生率が上がると神戸市の
人口は変わってくるということをどういうふうにやればいいかということを、まず身
近な、自分の住んでる小学校区の現状をよく見て、そこから考えるのを始めるのがい
いのかなと考えて、データの整理をまだ始めたばかりなので、ちょっと怪しいところ
も あ る か も 知 れ ま せ ん け れ ど も 、神 戸 市 の 中 で も ま だ 人 口 が 増 え て い る の が 井 吹 台 と 、
アウトレットがある北区の北神地区ですね。今話題になっている、女性が今どこにい
るのかという話ですが、20から39歳、学生も入ってきたりするので、確実に子ど
もを産みそうな30から39歳にしたら分布は似ているのですが、神戸の場合は市街
地の東半分と一部の郊外で多いということが分かります。高齢者の分布はこんな感じ
になって、あと合計特殊出生率は推定したものですが、中央区がすごく低い、東灘区
については一部高いところもある、これは最近新しく住宅ができたようなところは、
そうした家族の方が入って来ているので高くなるということだろうと思います。
今後、こういった地図を多くの人で共有して、それぞれの小学校区がどんなふうな
状況になっているかを皆さんと議論できればいいかと思います。
市長
せっかく増田先生においでいただきましたので、3先生からさきほどのご講演をお
聞きになりまして、専門的な立場からもう少しこのへんを聞いたみたいとかお願いい
たします。
増田氏
最後の中川先生が小学校区ごとに今ちょうど作業を始められたということについて、
期 待 感 を 持 っ て お り ま し て 、私 の 経 験 で は 最 低 で も 市 町 村 ご と 、で き れ ば 集 落 単 位 で 、
つまり小さな単位で議論しないと、私たちはいままさに何をやっていったらいいのか
というのが、大きな単位ではなかなかその解決策につながっていかない。具体的な議
論につながっていくという意味では小学校区単位というのはものすごく期待感がある
というのが一つです。
それから、コメントになってしまうのですが、どなたか先生方に少しお話しいただ
きたいのですが、やはり女性の社会進出とか社会参画とかいうのは、働き方を見直さ
ないと、若い人たちが長時間労働でなかなか生活に余裕が持てない、先輩方の苦労を
見て、なかなか出産までいかないという点を変えていくためには、働き方を相当切り
替えていかなくてはいけないのですが、例えば女性の社会進出ということが、今の日
本の仕組みですと逆に人口を増やすということを妨げていると言う人もいます。北欧
などを見ると、働き方をきちんと変えて両立できるようにすることによって、むしろ
出生率を高めていく関係になっていますが、日本の大都市では、北欧のようなサイク
ルがうまく回っていくのかどうかというあたりについて何かサジェスチョンがあれば
と思います。
16
足立委員
私のほうが若年女性について調べさせていただきまして、サジェスチョンにはまだ
及ばないのですが、一点、気になっておりますのが、若年女性、確かに市全体で見ま
したら、就学期、就職期、子育て期を見ていると、一旦就職の段階で減っています。
それはマクロの視点で減っています。理由としましては、なにぶん神戸市の中で就職
先として考えられる企業がもしかしたら少ないのではないか、逆に就職期、どこに行
っているか、もしくは現時点で神戸市の方の20歳から25歳の方々の中には通勤先
には大阪市に行っている可能性がすごく高い。そのデータの一つとしまして、主に東
灘 区 、中 央 区 の 若 年 女 性 が 主 に 大 阪 市 に 通 勤 し て い る 。そ う い っ た 視 点 を 踏 ま え る と 、
神戸市の中で就職の機会を確保するというのも一つのやり方だと思います。もう一つ
は、住む場所として神戸市を選んでいただき、大阪市、大阪府内に通勤してもらう、
そういった視点もあると思います。この視点では、いかに生活しやすい場所としてい
くのか、9時に会社が始まるとしましょう、終わるのが5時だとしましょう。帰宅す
れば、夕食の用意や保育園、そういったものがあると思います。そういった生活しや
すい場所としてのサービス提供を充実していくのも一つの魅力として、神戸市が今後
考えていくポイントではないかと考えています。
市長
先生方から増田先生に質問などございますか。もしなければ、先ほど増田先生のご
講演のなかで、希望出生率が1.8にできるだけ近づけるような方策が必要だと、現
状では東京が回復して1.13、本市の中央区もすごく低いわけですね、相当低い。
こういう出生率の低いところに人が、特に若者が集まっている、先ほどの分析では若
年女性の割合が高い中央区とか東灘区、灘区ですね。この辺りは一部出生率が高いと
ころがありますけれども、全体的に見たら低い。出生率が低い地域に若年女性が集ま
っている。東京ほどではないけれど、神戸もそういう傾向が一部みられると言えるの
かどうか、中川先生は地域の問題を分析されていると思いますので、中央区の出生率
が低い要因とか、先ほど申し上げましたことなど何かコメントとかありましたら。
中川座長
大都市圏の中で出生率が違うということに関しては、私自身は多少そういうもので
はないかなと考えています。実際暮らす側から見たら、今は子どもを産んで育てるよ
りも仕事なり違うことに集中したいということを考えてそこに住んでいる。その人が
もし結婚する気になったら、神奈川県や千葉県に引っ越して、そっちの出生率が高く
なるわけです。ですので、東京に居続けてしまって子どもを産んでいないというわけ
ではなく、移動というものがあることを考える必要がある。私は小学校区別の出生率
を計算してしまったのですが、むしろ議論する場合は都市圏単位で、京都などは低か
ったですね、ああいうのを考えますと、東京圏と京都大都市圏、東京圏と神戸大都市
圏でもしはっきりした差があったら、それはなんでなんだろうと考えたらいいのかな
というふうに思います。
市長
ここのところの神戸の人口の伸びの鈍化、減少傾向というのがあり、社会移動も問
題 に な り ま し た が 、今 ま で は 大 阪 か ら 、あ る い は 西 宮 か ら 東 灘 、明 石 か ら 西 区 と か 、
(市
内への)転入傾向から(市外への)転出傾向に逆転してきている。この要因につきま
して何か、中川先生、足立先生、もしありましたらお話しいただけませんか。
17
中川座長
これまでの神戸というのは転入と転出の差によって成長してきた側面があるのです
が、このグラフを見ていただくと、高度成長期からこの人たちが来たことから神戸市
の郊外ができたという地域では、その他の西日本というところからたくさんの人が来
て、当時は他の兵庫県よりむしろ、これは明石市とか住宅を求めて出て行ったのです
ね、その後は住宅地として人気が出てきたらむしろ大阪から住宅求めて神戸に来る人
が増えてきたということで、これがただ無くなったのではないかと思います。これま
ではこの西日本からの多くの人口が神戸に来ていたのがなくなったあと、一時期大阪
からの人の集積というのが神戸の人口の大きな源だったのですが、それが今無くなっ
ている状況というのがこれを見ていただくと分かると思います。そこで、東京への流
出割合が大きくなってしまっている。その理由に関して、現時点での推察ですが、大
阪でやはり最近都心の中で住宅の供給が大きくなってわざわざ神戸まで来ない人が出
てきたということがあるのかと思います。それでも神戸に住んだほうが居住環境や教
育環境がいいということをアピールして、もう一度大阪の人を神戸に呼び戻す努力が
必要ではないかと思います。
市長
ありがとうございました。確かに大阪の今までの商業地がかなり高層マンションに
変わっているという面も大きいと思います。結局、大阪にしましても神戸にしまして
も、東京にしましても、都心居住をどういうふうに考えるのか、都心居住が進んだと
いうのが、ある意味で、これは価値判断が入るかもしれませんが、極点社会の一つの
要因にもなっているかと考えるのか、そのへんは価値判断になるのではないかなと思
います。いずれにいたしましても神戸が居住都市として選ばれにくくなっているとい
うことは我々としてはかなり正面から受け止めなければいけないのかなと感じます。
増田氏
大阪と神戸の関係、あるいは兵庫県の中での神戸市のポジションというか、このあ
たりについては随分いろいろ皆さんお考えになっているところがあるのではないかと
思います。先週、島根県松江に行って、選択する未来という委員会、新日鉄の三村さ
んが委員長をやっている委員会のメンバーとして、人口1億人規模の維持だとか、今
年の春に政府が閣議で決定した問題を議論するシンポジウムに参加してきました。そ
こで私は鳥取や島根をいろいろ調べて、随分社会増を、小さな市町村ですけども例え
ば 島 根 県 海 士 町 と か 、邑 南 町 だ と か 町 単 位 で 随 分 努 力 し て い る と こ ろ が あ る の で す が 、
しかし大きな島根県全体の経済の流れの中でどうしても飲み込まれて、島根から全体
としては県外に流出しているわけですね。その時に行き先をいろいろ調べて、関西が
行き先として選ばれているかと思っていましたが、関西はスキップされて東京のほう
へ随分行ってしまっている。かつては、大阪と神戸と鳥取、島根ですとか広島あたり
とつながりがあったのではないかと思うのですが、今は日本全体として、転出先は東
京になっています。これは人口移動の分析から推察されるのですが、例えば経済的な
つながりが切れているとか、進学先としてもダイレクトに東京のほうの大学を選んで
いるということによると思います。中国地方と神戸も含む近畿圏とのパイプをこれか
らどう強くしていくのかという視点ですね。私は色々な意味で東京一極集中は日本国
全体の脆弱性につながるし、首都は30年内に70%の確率で起きる首都直下型地震
の危険性も言われています。昨年、選択する未来の中の地域の未来という委員会で私
が委員長として取りまとめた提言の中でも述べたことですが、西日本の地域とのつな
がりをどうしていくのか、確かに福岡は比較的求心力あるのですが、九州の中で言う
18
と、宮崎だけが福岡とのつながりがすごく薄くて、ダイレクトに東京です。宮崎は全
国で合計特殊出生率が第二番目に高くて、普通であれば、消滅可能性都市に該当しな
いはずですが、高校卒業時の18歳か大学卒業時の22歳ぐらいで宮崎から東京に転
出してしまうので一気に社会減で人を減らしてしまっている。福岡は色々な意味で求
心力がある、これは交通体系の問題もあり、宮崎と福岡の関係に大きく影響している
ようです。こちらはもっと色々な要素があると思うので、そこを分析して関西を浮上
させる対策をぜひ考えてもらいたいと思います。複眼構造、二眼レフ構造にしないと
国 が 強 く な ら な い と 思 う の で 、国 に と っ て も 非 常 に 重 要 な こ と で は な い か と 思 い ま す 。
市長
ありがとうございました。伊藤先生、何か付け加えることがありましたら。
伊藤委員
先ほども申し上げましたが、転出した女性に転出理由や転出先の状況をアンケート
で聞いてみてもう少し理由を調べてみようと思っているところです。子育て世代とい
うとご主人のほうが引っ越して単身赴任にせずついて行くという方も多いと思います
ので、なかなかその年代の女性というのは自分だけの選択で住む場所を決められない
というのがあるかと思います。大阪に行く場合であればなるべく神戸に住みたいとい
う気持ちを持っていただくとか、たまたまご主人の仕事で神戸に来た人がいるとした
ら、そこでもう一度、こちらで就職ができる、起業してみたいとか支援できるような
選択肢があればいいなと思っています。
市長
これからこの有識者会議でさらに分析を進めていきたいと思うのですが、中川先生
からご説明がありました小学校区単位での人口移動というもの、増田先生からも非常
に意義があるというお話もありましたので、これをさらに進めていただくようお願い
します。また、やはり女性というのがキーワードです。女性一人ひとりの生き方とい
うのはお一人お一人の人生設計にかかわりますから、社会がそれに対して口は出せな
い。しかし全体としてやはり、希望出生率のほうを向いて国として何ができるのか、
自治体として何ができるのか、といった点は考えていかなくてはいけない。というこ
とを今日、改めて痛感いたしました。
先ほど増田先生からご指摘がありました、どうしても我々は東京のほうを向いてし
まうのですが、実は西の方が大事だということも改めて気づかされました。細やかな
試みですけれど、神戸空港と米子空港が就航していることから、これを是非大事にし
て、米子を通じて鳥取との交流を深めていく。宮崎とのフェリーも久しぶりに神戸港
に就航いたしました。そういう意味で、中国地方、そして九州、さらに、この前も客
船クルーズのオーナーが神戸に来られたとき瀬戸内海の客船クルーズに相当関心を持
っておられましたが、神戸は瀬戸内海地域の一部でもあり、瀬戸内海圏地域とのつな
がり、例えば瀬戸内国際芸術祭などは相当全国的にも注目されていますから、そうい
ったこととの連携など、西側地域との連携も考えていく必要があるのではないか、こ
れから交流人口を増やす、あるいは居住人口を増やす、両方の面でより大事な課題か
なと思いました。
いずれにしても、この人口の動態をしっかり分析し、神戸の都市というものをどう
いうふうに作っていくのか、その中でもやはり、女性が子どもを産みやすい、育てや
すい、教育という面が大変重要ですから、そういう面での施策展開をどうしていくの
か、そういった点も踏まえ、次のビジョン作成に向けて議論を進めていかなくてはい
19
け な い と 思 い ま す 。本 日 は 大 変 有 意 義 な 機 会 で し た 。増 田 先 生 、中 川 先 生 、足 立 先 生 、
伊藤先生、本当にありがとうございました。そして遅くまでお聞きいただきました皆
様に心より御礼申し上げ、今日の有識者会議を閉じさせていただきます。ありがとう
ございました。
20
Fly UP