...

平成16年度標準技術集 有機高分子多孔質体

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

平成16年度標準技術集 有機高分子多孔質体
【技術分類】3−6−4
【
FI
有機高分子多孔質体の用途/発泡樹脂材料/吸音材/制振材
】C08G18/00*
【技術名称】3−6−4−1
電子電機
【技術内容】
音響フォーム材は箱やキャビネットに収納されている機械装置類から発生する空中ノイズを減らす
ための容易で最も効果的かつ安価な方法を提供するものである。フォームは音波を自身のセル中に吸
収してエネルギーを熱に変換するが、粘性及び熱機構が関係する。二通りの異なった方法で作られた
フォーム材の吸収挙動を比較検討した。
フォームの製法は、シートキャスト法(TSC: thin-sheet casting)とバンストック法(BS: bun-stock
sheet foam)で前者は液状ウレタンをキャスト後熟成し所望厚さの連続シートとするが、後者は大き
なフォーム塊をシート状に切断して用いる。従って、TSC では対象物(面)上で直接製造できる点で
経済効果がありフォーム・機材間の接着にも優れている。
粘性的機構による音波エネルギーの低減は空気の流動抵抗に関係し、従ってフォームのセル構造の
開放性に関係する。完全な開放系のゼロ抵抗から非開放系(独立セル)での無限抵抗まであり、この
何れも音響吸収材としては好ましくない。TSC フォームは部分開放系の構造を有していて、通常用い
られている BS 法によるカットフォームの 10 倍の流動抵抗を持ち、かつ変動も少ないので消音には効
果的と考えられる。
図 1 は TSC ウレタンフォームの音の吸収性が BS フォームに比べ広い波長領域に渡って優れているこ
とを示している。特に低周波数領域で顕著である。
【図】
図1
TSC フォームと BS フォームの音波吸収挙動比較
出典:「Sheet-cast acoustical foams outperform bun stock.」、「Noise & Vibration Worldwide.
Vol.32 No.7」、2001 年 7 月、Castillo M S 著、Multi-Science Publication 発行、15 頁
Figure 3
Average normal incidence sound absorption performance, bun average versus TSC foam average.
Reprinted with permission from Multi-Science Publication.
図 1 の説明:TSC 法によるフォームと BS 法(Bun1∼Bun4 までの 4 種類)によるフォームの音波吸収
挙動を比較したもので、全周波数で係数(Sound Absorption Coefficient)が高い方が好ましい。TSC
フォームは人間の音声領域である低周波数領域(500-2000 Hz)で高い吸収を示した。一方で、Bun4
− 459 −
は全周波数領域で係数が低かった。
【出典/参考資料】
「Sheet-cast acoustical foams outperform bun stock.」、「Noise & Vibration Worldwide. July
Vol.32 No.7」、2001 年 7 月、Castillo M S 著、Multi-Science Publication 発行、13−15 頁
− 460 −
【技術分類】3−6−4
【
FI
有機高分子多孔質体の用途/発泡樹脂材料/吸音材/制振材
】C08J9/04
【技術名称】3−6−4−2
土木・建築
【技術内容】
押出法ポリスチレンフォーム板はポリスチレンに発泡剤、添加剤を溶融混合し連続的に押出発泡成
形したもの、或いは押出成形ブロックから切り出した板状の保温材をいう(図 1)。優れた断熱性能の
他、軽量且つ低吸水性で耐圧縮性があるので広く土木・建築分野でも活用されている。土木分野を中
心とした用途の例を挙げる。
加工性、軽量性に伴う施工の簡便さが特徴であり、材料特性としての本来の断熱性の他、耐圧縮性、
低吸水性、軽量性、自立性、緩衝性などが適応分野の拡大に繋がっており、どちらかと言えば断熱を
中心とした一般建材、戸建住宅などへの展開から他の機能への期待を込めた土木建材まで応用幅が広
い。表 1 は土木分野を中心とした規模が大きく外部露出の少ない適応例を中心に示しており、軽量化、
自立性(特殊な補強不要)が要求される分野での期待が大きい。
また、図 2 に示すように交通振動軽減対策用(道路・鉄道・地下鉄)に用いられる。道路交通振動
や工場の機械振動を起源とする振動が、EPS 土木工法用ブロックによる防振壁を構築することにより
軽減される。
【図】
図1
押出発泡ポリスチレンの製造工程
出典:
「押出発泡ポリスチレン工業会ホームページ」、
「on line」、押出発泡ポリスチレン工業会、
(検
索日:平成 17 年 2 月 14 日) 表 4-28 押出法発泡ポリスチレンの製造工程
http://www.epfa.jp/epf/index.html(製品について)
図 1 の説明:押出発泡ポリスチレンの製造工程を示す。ポリスチレンと添加剤を押出機の中で溶融
混合し、次いで発泡剤を圧入混合の後、先端ノズルより常温・常圧環境に連続して押出し瞬時に発泡
させる。発泡体は冷却、裁断された後、寸法安定化のため熟成され、出荷される。
表1
押出法ポリスチレンフォーム板の具体的施工例
適用分野
用途
模式図
Application
Illustration
− 461 −
軽量化
Light
Weight
自立
性
Selfstand
施工性
Easiness in
conssuction
盛土
Embankment
◎
○
◎
○
拡幅盛土(土羽土)
盛土
Widening embankment
Embankment
(soil blanket on
embankment slope)
拡幅盛土(保護壁)
Widening embankment
○
◎
○
○
◎
○
○
◎
○
○
◎
○
○
○
○
(Protective wall)
橋台裏込め
Back-fill for abutment
構造物
背面盛土
自立壁
Fillingbehind
Self-standing wall
construction
擁壁・護岸裏込め
Back-fill for
retaining
wall and revetment
基
礎
Foundation
構
造 物 保
護
Construction protection
中詰・埋戻し
Fill and back-fill
拡幅・嵩上げ
◎
○
◎
○
◎
Widening and raising
− 462 −
○
○
仮設・復旧
○
Temporary works and restoration
○
○
出典:
「押出発泡ポリスチレン工業会ホームページ」、
「on line」、押出発泡ポリスチレン工業会、
(検
索日:平成 17 年 2 月 14 日) 表 押出法ポリスチレンフォーム板の具体的施工例
http://www.epfa.jp/dannetu/doboku1.html(断熱材として>土木建材)
表 1 の説明:押出法ポリスチレンフォーム板の具体的施工例を示す。加工性、軽量性に伴う施工の
容易さが特徴である。
図2
EPS による交通振動軽減対策例
出典:積水化成品工業株式会社より提供されたカタログ図
EPS による交通振動軽減対策例
図 2 の説明:EPS ブロックを道路縦断方向に埋設するもので、EPS ブロックには振動吸収(減衰)効
果がある
【出典/参考資料】
「押出発泡ポリスチレン工業会ホームページ」
、押出発泡ポリスチレン工業会、http://www.epfa.jp/
積水化成品工業株式会社より提供されたカタログ
− 463 −
【技術分類】3−6−4
【
FI
有機高分子多孔質体の用途/発泡樹脂材料/吸音材/制振材
】C08G18/00*
【技術名称】3−6−4−3
自動車・車両
【技術内容】
連続気孔の多孔質体は吸音機能、毛細管凝着、液体吸収などの機能が期待される。自動車に於ける
吸音材への応用を考える。
連続気孔による吸音効果は細孔に於ける伝達空気の粘性損失や伝達位相差による打消しにより、音
エネルギーが熱エネルギーに変換される結果で、中高周波音に有効と考えられる。低周波音には背後
に空気層を設けた板・膜材料が効果的で建築分野でよく見られる。一般に防振・制振現象に関しては
高分子の粘弾性特性が直接性能に影響するのに対し、吸・遮音に関しては細孔などの形状が大きく影
響することから“形を自由に作れる”高分子の特性を生かしたものと言える。自動車に於ける多孔質
吸音材としてはウレタンが素材として多く使われている。その理由は性能と応用性(表 1)の他、コ
ストも考慮される。エンジンルーム内のフードインシュレータやアンダーカバー吸音材(図 2)
、車室
内の内装、防音カバー内張り、二重壁内部充填材などに用いられている。
【図】
図1
ウレタン発泡体断面
出典:「自動車分野」、「Q&A 自動車・建築と高分子」、2000 年 12 月、松岡潤一郎著、財団法人科学
技術戦略推進機構発行、32 頁 図 1
ウレタン発泡体断面
図 1 の説明:ウレタン発泡体断面の写真を示す。
表1
各素材の性能
出典:「自動車分野」、「Q&A 自動車・建築と高分子」、2000 年 12 月、松岡潤一郎著、財団法人科学
技術戦略推進機構発行、32 頁 表 1
各素材の性能
− 464 −
表 1 の説明:各素材の性能の比較を示す。
図2
採用されている遮蔽カバー用吸音材の吸音性能
出典:「自動車分野」、「Q&A 自動車・建築と高分子」、2000 年 12 月、松岡潤一郎著、財団法人科学
技術戦略推進機構発行、33 頁 図 2
採用されている遮蔽カバー用吸音材の吸音性能
図 2 の説明:採用されている遮蔽カバー用吸音材の吸音性能を示す。車外騒音規制対応の遮蔽カバ
ーの裏面に各種吸音材が採用されている。
【出典/参考資料】
「自動車分野」、
「Q&A 自動車・建築と高分子」
、2000 年 12 月、松岡潤一郎著、財団法人科学技術戦
略推進機構発行、32−33 頁
「自動車分野」、
「Q&A 自動車・建築と高分子」
、2000 年 12 月、菅原浩著、財団法人科学技術戦略推
進機構発行、138−141 頁
− 465 −
Fly UP