Comments
Transcript
ゲーム理論入門 第 5 回宿題 提出日:2012 年 7 月 18 日(水)午前 10 時
ゲーム理論入門 第 5 回宿題 提出日:2012 年 7 月 18 日(水)午前 10 時 30 分 提出場所:4 号館 5 階小西研究室前に設置した宿題提出ボックス 問題 1 1 キロメートル離れた 2 つの地点 A,B に,同じ商品を販売する企業 A 社と B 社がそれぞ れ立地している.それぞれの企業は,この商品を 1 単位生産するのに c 円の費用を要する.各社が 設定する商品の価格を pA ,pB としよう. 地点 A,B の間には全人口が 1 に等しい個人が,均一に居住している(あえて単位はつけてい ないが,たとえば 1 万人と考えてよい.ただし,その場合,人口は整数ではなく,実数で数えてよ いものと仮定する).すなわち,地点 A から x キロメートル(0 ≤ x ≤ 1)離れた地点(以下では, 地点 x と呼ぶ)までに住む人口は x である.各居住者はこの商品を 1 単位だけ,必ずどちらかの企 業から購入するが,購入にあたっては,商品の値段だけでなく,購入の際にかかる配達料も考慮す る.商品の配達料は 1 キロメートルあたり t 円と決まっているため,たとえば地点 x に住む人は,A 社から購入するなら tx 円,B 社から購入するなら t(1 − x) 円の配達料を追加的に負担しなければ ならない.c および t は所与の定数として,以下の設問に答えよ. (1) 2 社の設定した価格 pA ,pB を所与としたとき,地点 x の居住者が A 社からこの商品を購入 するための条件を求めよ. (2) 2 社の設定した価格を所与としたとき,A 社の商品に対する需要量を xA とする.xA を pA お よび pB の関数として表せ. (3) (2) と同様にして,B 社の商品に対する需要量を xB としたとき,それを pA および pB の関数 として表せ. (4) A 社の利潤関数 πA ,B 社の利潤を πB とする.上で求めた需要関数を利用して,それぞれを pA および pB の関数として表せ. (5) 2 社は同時手番で,非協力的に価格を設定するとしよう. (a) A 社の反応関数 rA (pB ) を求めなさい. (b) B 社の反応関数 rB (pA ) を求めなさい. (c) 2 社の反応曲線を,横軸に pA ,縦軸に pB を測ったグラフに描きなさい. (d) ナッシュ均衡で 2 社が設定する価格を明らかにしなさい. (6) A 社が先に価格を設定し,それを見た後で B 社が価格を決める,逐次手番のゲームを考えよ う(このような場合,A 社をプライスリーダーと呼ぶ). (a) 部分ゲーム完全なナッシュ均衡において各社が設定する価格を求めよ. (b) (5)(c) で描いた反応曲線のグラフに,この均衡で実現する価格の組合せの位置を示せ. 1 問題 2 ある財の需要関数は D = 100 − p(D は需要量,p は価格(単位:万円))で与えられてお り,これを 2 社 A と B が供給している.それぞれの供給量を yA ,yB とする.どちらの企業も,こ の財を 1 単位生産するには 10 万円を必要とする. (1) 2 社が生産量を同時手番で選んで競争しているとき,ナッシュ均衡で実現する生産量の組合せ を求めなさい(この均衡をクールノー均衡と呼ぶ). (2) 2 社が逐次手番で生産量を選んで競争しているとしよう.具体的には,まず企業 A が生産量 yA を選んだ後,それを観察した企業 B が生産量 yB を選択するものとする.このとき,部分 ゲーム完全なナッシュ均衡では,各企業はどのような戦略をとることになるか.また,その 結果,どのような生産量が実現することになるか,明らかにせよ(この均衡をシュタッケル ベルグ均衡と呼ぶ). (3) 横軸に yA ,縦軸に yB を測ったグラフに,各企業が同時手番ときの反応曲線を描いた上で, クールノー均衡およびシュタッケルベルグ均衡で実現する生産量がどのように違っているか, 明らかにせよ. (4) 社会的余剰の観点から見たとき,クールノー均衡とシュタッケルベルグ均衡では,どちらの 方が望ましい生産量の組合せを実現しているといえるか,明らかにせよ. 問題 3 ある同質的な製品を生産している 2 社,A と B が価格で競争している.消費者の直面する 価格を p としたとき,この製品に対する需要量 D は D = A − p と決まってくる.ただし A は正の 定数である.一方,この財を 1 単位生産するための費用は両者とも c で一定である(ただし,c も 正の定数で c < A とする).A 社の設定する価格を pA ,B 社の設定する価格を pB としたとき,必 ず安い価格を設定した企業が消費者の需要を独占し,どちらも同じ価格なら,各社は需要の半分ず つを顧客に持つこととする.以下の設問に答えなさい(ただし,需要量や価格の単位は整数である 必要はなく,実数まで許されるものとする). 各社は競争相手の価格設定を知らないうちに,自社製品の価格を決めなければならないとしよう. (1) このとき,このゲームが 1 回限りで行われるならば,どのような価格の組合せがナッシュ均 衡において実現するか,明らかにせよ. (2) このゲームが段階ゲームとして無限回繰り返され,毎回の段階ゲームの結果は次の段階ゲー ムが始まる前にどちらの企業にも観察されるとしよう.A 社と B 社は価格を暗黙の内に pM = (A − c)/2 の水準に維持する結託を行おうとしている.どのようなトリガー戦略を使えば,そ して割引因子がどのような条件を満たすとき,この結託は部分ゲーム完全なナッシュ均衡の 均衡経路上において実現可能になるか,明らかにせよ. 問題 4 次のゲームについて,以下の設問に答えなさい. プレイヤー 2 プレイヤー 1 L R T 3, 3 0, 4 D 4, 0 2, 2 2 (1) このゲームが 1 回だけプレイされるとき,ナッシュ均衡で実現する戦略の組はどれか. このゲームを段階ゲームとして,2 回繰り返すゲームを考えよう.各プレイヤーの戦略は,ゲームの 歴史(この場合,ゲームの出発点および第 1 回目の段階ゲームの結果)を表す O,T L,T R,DL, DR それぞれに対応する行動として,たとえばプレイヤー 1 の場合ならば, σ1 = (v, w, x, y, z) のように書くことができる.ただし,v, w, x, y, z はそれぞれ T か D のどちらかを表し,たとえば σ1 = (C, C, C, C, C) は,プレイヤー 1 がいかなる状況でも C を選択するという戦略を意味してい る.なお,簡単化のため割引因子は 1 と仮定してよい. (2) 部分ゲーム完全なナッシュ均衡では,各プレイヤーはどのような戦略をとるか,答えなさい. (3) このゲームを段階ゲームとして 2 回繰り返すゲームのナッシュ均衡のうち,1 回目の段階ゲー ムで T L が実現するような戦略の組をすべて答えなさい. このゲームを段階ゲームとして無限回繰り返すゲームを考えよう.プレイヤーの割引因子 δ (ただ し,0 < δ < 1)は共通である.また t 回目のゲームが始まるまでのゲームの歴史を ht で表し,ゲー ムの歴史の集合を H で表すものとする. (4) プレイヤー 1 と 2 がゲームの歴史にかかわらず,それぞれ D および R を選択する戦略の組, すなわち, σ1 (ht ) = D for all ht ∈ H および σ2 (ht ) = R for all ht ∈ H ,はナッシュ均衡であ ることを論証しなさい. (5) (4) で述べた戦略の組合せが部分ゲーム完全なナッシュ均衡であることを論証しなさい(ヒン ト:部分ゲームの構造と全体ゲームの構造とはどのような関係を保っているか考えればよい) ゲームの出発点および過去の段階ゲームの結果が常に T L であるようなゲームの歴史の集合を H C , C これら以外のゲームの歴史の集合を H とする.このとき,次のようなトリガー戦略をそれぞれの プレイヤーが選択したとしよう. T if ht ∈ H C σ1 (ht ) = D if h ∈ H C , t σ2 (ht ) = L if ht ∈ H C R if h ∈ H C t (6) これらの戦略がとられたときに実現する段階ゲームの結果を明らかにしなさい. (7) これらの戦略の組がナッシュ均衡であるためには,各プレイヤーは (6) で述べたゲームの歴史 にしたがって到達するいかなる段階ゲームにおいても,指定された行動から逸脱するインセ ンティブがないことを示せばよい.そのために δ が満たすべき必要十分条件を求めなさい. (8) これらの戦略の組が部分ゲーム完全なナッシュ均衡であるためには,(7) で示したように,実 現するゲームの歴史上にある段階ゲームだけでなく,実現しないゲームの歴史上にある段階 ゲームでも,指定された行動から逸脱するインセンティブがないことが必要かつ十分である. しかしながら,そういうインセンティブがないことの論証は,以上の設問を解くプロセスで はすでに完了している.どの設問の答えによって論証できているか,明らかにせよ. 3