Comments
Description
Transcript
「関係付けて考えよう『ものの燃え方』」の実践紹介をいたします。 授業の
「関係付けて考えよう『ものの燃え方』 」の実践紹介をいたします。 授業の流れについては、以下に示したとおりです。表中の「授業①」などについては、その 後の実践紹介に対応しています。 第1次 ものを燃やす体験を行い、学習の計画を立てる(2時間) (1) 割り箸と空き缶を用い、燃焼の体験をする(1時間) (2) 出し合った気付きや疑問をもとに、学習の計画を立てる(1時間) 第2次 燃焼の仕組みと空気の性質との関係を調べる(6時間) (1) ろうそくの火が燃え続ける方法を考える(1時間)・・・・・・・・・・・・・・授業① (2)空気の入れ替わりについて調べるⅠ(1時間)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・授業② (3)空気の入れ替わりについて調べるⅡ(1時間)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・授業③ (4)燃焼による空気中の成分の変化について調べる(1時間) (5)燃焼後の空気の成分について調べる(1時間) (6)酸素、二酸化炭素、窒素の中での燃焼について調べる(1時間)・・・授業④ 第3次 本単元で学んだことをまとめ、振り返る(2時間) (1) 再度、割り箸と空き缶を用い、燃焼の体験をする(1時間)・・・・・・授業⑤ (2)単元全体における自分の学びを振り返る(1時間) ○ 単元の導入について・・・・・・【第1次】 多くの子どもたちにとって「物を燃やす」という体験は、宿泊学習に おける野外炊飯ぐらいなものです。物を燃やす経験の少ない子どもたち が「ものの燃え方」を追究していく上で、まず、どの子どもも「物を燃 やす」共通体験をすることが大切であると考えました。 子どもたちは、たくさん燃やそうと、空き缶に穴をあけ、中にめいっ ぱい割り箸を詰め込みます。燃やそうとするのですがなかなか火がつき ません。穴の場所を変えたり、割り箸の本数を調整したりしながらチャ レンジしますが、結局、子どもたちが思うように点火することができま せんでした。その様子を捉えて、「どのようにしたらたくさん燃やすこ とができるのだろう。」と問うてみると、 「穴の位置を変えるとたくさん 燃えるのではないか」という考えが生まれ、「ものの燃え方」の追究の きっかけとなりました。 ○ 追究の場面では・・・・・・【第2次】 ~授業①について~ 第1次で「ものの燃え方には穴の位置に関係があるのではないか」と考えた子どもたちは、自由に 穴の位置を変えながら調べることができる道具としてペットボトルの提案があり 、実験に用いまし た。授業①での問題は以下のとおりです。 ペットボトルにあける穴の位置を変えると、ろうそくの火の燃え方はどのように変わるのだろう 子どもたちは以下のような予想を立てていました。 Y児 S児 F児 N児 ろうそくの炎より下の位置がよく燃えると思う。理由は、温かい空気が上にあがることを4 年生で学習したから。 僕も下の方がよく燃えると思う。空き缶を使って割り箸を燃やす体験をした時、上の方より も下の方が火がついたから。 祖父母の家のお風呂がまきをくべるものである。そのかまは下から空気が入るように穴があ いているから。 Fさんととても似ていて、ろうそくの炎より下に穴をあけるとよく燃えると思う。キャンプ の料理で使う火の薪を組んだとき、下に穴が開いているから、下だと思 う。 多くの子どもが、既習事項や宿泊学習の経験、第1次での体験をもとに、下の方に穴をあけないと 燃えないと考えていました。そのため、「ペットボトルのどの位置に穴をあけても火が燃え続ける」 ことを実験結果として得た子どもたちには、驚きというよりも戸惑いの表情が伺えました。また、結 果をもとに、次のように言えることを見出そうとしていました。 H児 どこに穴を開けても燃え続ける、が言えると思う。 K児 N児 空気の出入り口が2カ所以上あると、燃え続けると思う。 炎と同じ高さに穴をあけたときと、それよりも上に穴をあけたときには、燃 え続けたけれど火は時々小さくなったよ。 炎より下に穴をあけたときはずっと燃え続けた。上にあけた場合には、火が 弱くなったと思ったら強くなって、また弱く・・・・・・となったから、下に穴を 開けた方が燃えやすいのだと思う。 下に穴を開けた方が安定している。そして、上と中では火が大きくなったり、 小さくなったりしたから不安定。 絶対に言えることは、どこに穴をあけても燃え続けるということだと思う。 私の班は上の方では実験してないけれど、やった班は全て燃え続けている。 だから、どこに穴をあけても燃え続ける、は確実だと思う。 F児 I児 N児 このような考察のもと、予想(炎より下の位置に穴をあけると、火は燃え続ける)と結果を比較し たM児が「穴が2カ所にあるし、温められた空気は上に行くから、中の空気が動いているのではない か」という考えをもつようになりました。それが、授業②につながっていったのです。 ~授業②について~ ペットボトルの穴の位置を変えると、空気の流れはどのように変わるのだろう 子どもたちの考えの根拠となったのは、授業①と同様、 既習事項でした。第4学年「もののあたたまり方」で学 習した、「温められた空気は上方に移動する」です。そ のことを手がかりとして、多くの子どもが「穴をどこに あけても、その穴から上に向かっていく」と考えていま した。なお、この実験では、空気の流れを視覚的に捉え ることができるように、線香の煙を用いていました。 この実験では、 “炎よりも下の位置に穴をあける”と、 または、“炎と同じ高さに穴をかえる”と、煙は炎の近 くをとおり、上に上昇していくことが分かりました。し かし、“炎よりも上に穴をあける”と、あけた穴から入ったあと「すぐに上にあがってもう一方の穴 から出ていく」 「炎の位置までおりてきて、ぐるぐるとまわっている」 「炎の位置までおりてきた後に 、 上にあがっていく」と、多様な見方が表出されました。そこで、炎の位置よりも上の方に穴をあけた ときに、煙はどのような動きになるのかを観察するために、再実験することとなりました 。 なお、この日の学習では、多様な見方が出たためか、振り返りは様々でした。具体的には以下のと おりです。 T児 今日はどこに穴をあけても、線香の煙は上に上がっていくということが分かった。 K児 最初、全て(上・中・下)で煙は上へあがると思っていました。しかし、上に穴をあけたと きが、上にも下にも動いたのでビックリです。みんなで話し合って、どうしてかを調べたい です。 Y児 下・中に穴をあけると、上に煙がいった。上に穴をあけると、上・下に煙がいった。みんな も同じような結果になったかが知りたい。 ~授業③について~ 授業③では、授業②の再実験を行いました。ただ、授業③では、授業②と比べ、“穴の位置が炎の 高さよりも上である”と限定されていたこと、あけた穴から入っていく煙の流れに着目すること、な ど、視点がずいぶん絞られていたので、結果と結果から言えることが明確になっていました 。授業③ については、結果や考察が明確だったので、振り返り について、自信をもって記述できたようです。 特に、前述のH児からは、そのような様子がうかがえました。以下はH児以外の振り返りの一例です。 M児 O児 再実験をして、はじめに実験をしたときはよく分からなかったけど、今日はしっかり観察で きた。上に穴をあけると、炎のところまで煙がおりていって、またあがって上から出ていた のでビックリした。 前の時間とは違う結果が出ました。再実験することは、確認としてやっていくのも新しい発 見ができていいと思いました。言えることが見いだせてよかったです。 授業①②③で使用した実験道具 【ペットボトル】 1.5L のものの底に穴をあけたもの。 粘土で簡単に密閉できるようにしました。 【半田ごて】 100V55W を使用。 先を六角ボルトに付け替えて使用しました。 あけた穴についてはセロハンテープでふさぎ、繰り返し実験できるようにしました。 ~授業④~ 空気の成分に着目した子どもたちが、その変化について追究していく授業です。 ものを燃やした後、集気瓶内の二酸化炭素は増えているのか。 集気瓶内で、ものを燃やす前後での、二酸化炭素の増減について、石灰水を用いて調べました。 問 題の文末表現が「増えているのか」となったのは、 子どもの「空気中に約 0.03%の二酸化炭素と比 べて」という発言から、「『発生するのか』よりもふさわしい」となったからです。なお、この授業に ついては、結果をもとに推論する場面で、考えの交流が活発に行われました 。 A児 O児 実験前よりも二酸化炭素が増えたことが言える。 二酸化炭素が増えても、集気瓶のふたがもちあがらなかったよね。何かが減ったのではない S児 かな。 そのことから考えると、酸素と二酸化炭素が入れかわったのではないかな。 酸素 21%と二酸化炭素 0.03%が入れかわったということ?酸素が 700 倍に増えて、二酸 化炭素が 700 分の 1 になったということ?そこまで変化しないのではないかな。 僕は、二酸化炭素がいっぱいになって、酸素がなくなったから消えたのだと思うよ。 K児 気体検知管で、実験前と実験後で、酸素や二酸化炭素の数値を計ればいいんだ。 T児 O児 目には見えない酸素や二酸化炭素の変化について考えを交わし合う中 で、実験中に観察したことや 既習事項、具体的な数値を用いて推論する中で、新たな疑問が見つかり、次への追究活動へつながっ ていきました。 ○ 終末の場面では・・・・・・【第3次】 ~授業⑤について~ 空き缶の中の割り箸をたくさん燃やすには、どのようにするとよいのだろう。 第1 次で はや みくも に穴 をあ けた り割り 箸 を空き 缶にめいっぱいにつめたりして、燃やそうとしていま した。しかし、授業⑤では、空気の通り道を作ること が燃やすために大きな手がかりとなったため、穴を大 きくし たり 割り 箸の本 数を 減ら した りして い る姿が 見られました。 この学習では、結果を図と言葉で説明する姿が多く の子どもから見られました。右は、それが表れた、授 業⑤での板書です。 また、ノートにも、「割り箸が燃えること」と「空気の流れ」とを関係付けた表現が見られました。 M児は割り箸の入れすぎにより、空気の通り道 が確保できないことに気付いた。それを確保す K児は、空気の通り道を確保するために、空き 缶の中に、割り箸によるやぐらを組んだ。しか るために、割り箸の数を減らし、下にあける穴 の位置を大きくして取り組んだ。 も、やぐらの足下には大きな穴をあけ、空気が 入れかわるには十分な大きさを作った。 このようにして、第2次で学んだことをいかしながら、 燃焼実験を行う姿が見られました。 実践の紹介は以上です。おたずね等ございましたら、 下記のメールアドレスまでお願いします。 [email protected]