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平成25年度環境活動レポート - ニュークリア・デベロップメント株式会社

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平成25年度環境活動レポート - ニュークリア・デベロップメント株式会社
平成25年度環境活動レポート
平成26年10月21日
ニュークリア・デベロップメント株式会社
ニュークリア・デベロップメント株式会社
目次
ページ
目次 ······························································· 1
トップマネジメントエッセイ ········································· 2
1.環境方針 ······················································· 4
2.組織の概要 ····················································· 5
3.EA21活動対象範囲(認証・登録範囲) ························· 7
4.環境活動の沿革と中長期活動目標 ································· 9
5.平成25年度環境活動計画 ····································· 10
6.環境活動実績 ················································· 15
7.環境活動の取組み結果の評価と平成26年度計画 ················· 26
8.環境関連法規等の遵守状況 ····································· 29
9.全体評価と見直し ············································· 30
10.環境余話 ··················································· 30
豊かな自然の残る構内風景
手前の木はサンゴジュ
フデリンドウ、コマツヨイグサ、等の植物が自生し、キジ、野うさぎ等の姿も見られます
1
ニュークリア・デベロップメント株式会社
トップマネジメントエッセイ
私たちニュークリア・デベロップメント(株)は、原子燃料や原子炉機器材料等
の安全性、信頼性および性能の向上を目指した研究・試験・評価を行う会社で、
学生時代に原子力関連分野を専攻した技術者や、就職活動の際に原子力を選択
した人が大勢働いており、私自身も40年近く前に原子力を選択した一人です。
当時は未だ、地球規模の環境問題を身近に論じるということのない世の中で
したが、今思い返しますと、「案外早くから環境問題の近くにいたんだな。」
ということに気付きます。と言いますのは、私たちには多かれ少なかれ「一生
の仕事として原子力を選択する。」ことへの自問自答と覚悟が必要だったから
です。
原子力への賛成・反対の対立は昔から存在しましたし、もし自分の中で原子
力への疑問を感じるのであれば、その仕事をずっと続けるのは難しいであろう
と思いました。そして未熟な学生なりに、原子力の必要性、将来性、魅力を解
説した書籍或いは原子力の危険性を訴える書籍を読んだり考えたりしながら原
子力に携わる決断をしたことを思い出します。尤も私の入社当時は、オイルシ
ョックの直後で、環境貢献の視点よりもエネルギーセキュリティの視点や化石
燃料枯渇への代替の視点の方が勝ってはいましたが。
この点については、より若い世代の社員ほど、原子力と環境問題の結び付き
を強く意識しつつ原子力への道を選択してくれたのではないかと思いますが、
私たちの世代も、大気汚染、地球温暖化問題等が年々クローズアップされ、ま
た現実に異常気象災害の多発を目の当たりにするにつれ、二酸化炭素発生量が
格段に少なく安定的大容量電源である原子力発電が地球環境保全に果たすべき
役割の大きさと使命感をより一層意識するようになっていきました。太陽光、
風力等の再生可能エネルギーの普及へは大きな期待をしていますが、二酸化炭
素発生抑制の鍵は依然原子力が握っていると確信しています。
・・・・・・という風に、私たちニュークリア・デベロップメント(株)では、我国
のエネルギーの在り方や環境問題と長年に亘り真剣に向き合っている社員が数
多く働いていると自負していますが、一方で、原子力を巡って、様々な視点・
角度から多様な意見が交わされているという現実があることも直視しなければ
なりません。
「環境」の視点だけを捉えても、我々を含め「環境保護のために賛成!」と
2
ニュークリア・デベロップメント株式会社
言う方と「環境保護のために反対!」と言う方に分かれます。更には、原子力
推進から反対に転じた首相経験者や、逆に反原発活動家から賛成に転じた映画
監督が居たりするのは、この問題の複雑さの象徴と言えるのではないでしょう
か。
私たちニュークリア・デベロップメント(株)は、このような様々な見方・考
え方が交錯している中で日常業務を遂行している訳ですが、引き続き微力なが
ら原子力への理解と安心感を広めるための事業運営に努め、「社業を通じてよ
り良い地球環境と豊かな社会の実現を目指すこと」、「日々の環境負荷の削減
活動に積極的・継続的に取組むこと」、そして「事業運営や活動について、共
存させて頂いている地元の皆様や自治体の方々とのコミュニケーションを大事
にすること」を約束します。
そうした思いも込め、環境分野においては、平成12年度より関連認証取得
の準備を開始し、平成16年まで当社独自の環境保全活動を進め、その実績を
もとに、平成17年に環境省のエコアクション21(以下、EA21)認証を
取得し活動を継続しています(平成25年に第4回目の認証更新)。
以下、本環境レポートでは、平成25年4月から平成26年3月までの当社
環境活動の実績をまとめています。ご一読願えれば幸いです。
取締役社長
白鳥義夫
3
ニュークリア・デベロップメント株式会社
1.環境方針
以下に平成 25 年 6 月に改定した当社の環境方針を示します。
ニュークリア・デベロップメント(株)環境方針
私たちは、社業である原子力研究・開発活動を通じて原子力エネルギーの安全利用を促
進し、地球温暖化問題解決に寄与すると共に、環境活動を最重要課題の一つとして位置づ
け、全社を挙げて環境活動を推進し、継続的な環境負荷の削減に取組みます。そして以下
の環境活動を行ない、より良き地域環境と豊かな社会の実現を目指します。
1.原子力安全・環境に関する法規制及び近隣自治体との協定等を遵守します。
2.環境への影響を防止するため、安全確保を最優先に、当社施設の適切な使用及び維
持・管理に努めます。
3.原子力研究・開発活動の全ての領域で、CO2削減、省エネルギー、省資源、放射性
廃棄物及びその他の廃棄物の発生抑制に努めることにより、環境汚染を防止します。
4.原子力研究・開発活動に当たっては、環境目標を設定し、定期的に、及び必要の都
度、見直しを行い、環境活動の継続的改善に努めます。
5.環境教育や社内広報活動を通じて、全社員の環境方針に対する理解と環境に関する
意識の向上に努めると共に、周辺地域との協調を図ります。
平成25年6月21日
ニュークリア・デベロップメント(株)
取締役社長
4
ニュークリア・デベロップメント株式会社
2.組織の概要
(1) 事業所名および代表者名
事業所:ニュークリア・デベロップメント株式会社 本社
代表者:取締役社長
同
大宮管理室
同
東京事務所
白鳥
義夫
(2) 所在地
本社:茨城県那珂郡東海村舟石川622番地12
大宮管理室:埼玉県さいたま市大宮区北袋町1丁目297番地
東京事務所:東京都千 代 田 区 有 楽 町 1 - 1 2 - 1 新 有 楽 町 ビ ル 1 1 階
(3) 環境関係の責任者および担当者連絡先
社環境管理責任者:
伊藤
邦博
社外連絡窓口:
広瀬
直人
連絡先:
電話
029-282-9111
FAX
029-282-0035
(4) 事業の規模
資本金:
4億円(全株主:三菱重工業株式会社)
売上高:
約19億円(平成25年度)
従業員数:
約100名(平成25年4月1日現在、協力会社員含む)
事業所面積:
約23千㎡
事業所延床面積: 約13千㎡
(5) 事業の概要
当社は三菱重工業(株)のグループ会社として、核燃料物質及び放射性同位元素の使用
の許可を受けて、事業を行っています。主要業務は以下の通りです。
・原子燃料及び関連機器の研究、開発、試験
・原子燃料の検査、試験技術の開発
・原子炉で使用された材料などの研究、試験
・原子燃料サイクル及び放射性廃棄物の処理・処分関連の研究、開発
・原子炉 1 次系水質に関する研究、開発、試験
・核燃料物質、放射性同位元素並びに放射線利用、計測評価に関する研究、開発、試験
・核燃料物質、放射性物質等の輸送に関する業務
当社業務は、上に述べているように研究、開発或いは試験を主体としており、業務で
得た成果は、主として報告書の形で顧客(三菱重工業、三菱原子燃料、国内電力会社、
原子力関連機関、等)に提出されています。 当社の研究開発の主要対象の一つでありま
す加圧水型軽水炉(PWR)及び同燃料集合体を当社の業務と関連付けて、図2.1と
図
2.2に示します。
5
ニュークリア・デベロップメント株式会社
・原子炉で使用された材料など
の研究、試験
・原子燃料サイクル及び放射性
廃棄物の処理・処分関連の研
究、開発
・原子炉 1 次系冷却水の水質に
関する研究、開発、試験
図2.1
加圧水型軽水炉(PWR)
・原子燃料及び関連機器の研
究、開発、試験
・原子燃料の検査、試験技術の
開発
・核燃料物質、放射性同位元素
並びに放射線の利用、計測評
価に関する研究、開発、試験
・核燃料物質、放射性物質等の
輸送に関する業務
図2.2
PWR燃料集合体
6
ニュークリア・デベロップメント株式会社
3. EA21活動対象範囲(認証・登録範囲)
・登録事業者名;ニュークリア・デベロップメント株式会社
・対象事業活動;原子燃料・材料及び炉内機器、核燃料サイクル及び廃棄物処理関連、原
子炉一次冷却系水質、核燃料・RI・放射線利用等に関連する試験、検
査、研究、開発
・適用対象外組織;なし
・対象期間;2013年7月31日~2015年7月30日
図3.1に当社の環境活動実施体制を示します。ただし、下記(1)に記しますように原
子力保安活動についてはEA21環境活動とは別の扱いとします。また、本レポートは平成
25年4月1日から平成26年3月31日までの1年間の活動を対象としています。
(1)原子力保安活動の取扱い
原子力保安活動は「原子炉等規制法」、「放射線障害防止法」、「原子力災害対策特別
措置法」、「茨城県原子力安全協定」、「労働安全衛生法」等、およびそれらに付属する
省令・告示等に基づいて「保安規定」、「放射線障害予防規程」等の社内規定を制定し、
それらにより厳密に管理されています。またそれら規定類の遵守状況は、保安品質保証活
動等を通してチェックが行われるとともに、社内部保安品証監査ならびに監督官庁の保安
検査および運転管理等により厳重にチェックされています。このため、原子力安全関連の
法規制遵守状況フォロー等については、重複管理を避けるため、環境活動の対象とはしな
いものとします。
ただし、放射性廃棄物(固体、液体、気体)の管理状況については環境保全との関連が
強いため環境活動としてもフォローし、また放射性物質の異常放出、異常漏洩も同様の理
由で環境上の緊急事態としても取扱うこととします。
(2)本社地区外の施設
本社地区外の施設として、図3.1に示しますように、管理部の下部組織である大宮
管理室を埼玉県さいたま市大宮区北袋町に、東京事務所を東京都千代田区有楽町に設置
し、運営しています。
大宮管理室は、さいたま市に所在した当社の旧施設を解体撤去した際の放射性廃棄物
ならびに核燃料物質の保管管理を行っています。放射性廃棄物、核燃料物質とも、専用
容器に封入され専用保管庫に収納された状態で厳重に管理されており、また保管庫への
新規搬入はなく、搬出も当分は予定されないことから、維持管理のみを行っている施設
であり、保管管理業務によって生ずる環境負荷はわずかです。
東京事務所は、東京地区での連絡拠点として一室のみを不定期に使用している状況に
あるため、同じく環境負荷はわずかです。
両施設とも電力、上下水、ゴミ処理はテナント共益費として処理され、文具等の管理
業務用の什器備品については管理部の購入物量として取り扱っています。このように環
境負荷が小さい状況にある両施設ですが、平成22年度より、EA21ガイドライン2
009年版に即して、環境活動の対象施設として活動を進めています。
7
ニュークリア・デベロップメント株式会社
環境活動実施体制
図3.1
環境管理総括者
環境活動推進連絡会
社廃棄物管理者
(実施部門)
長)
(社
環境管理委員会
環境活動全般
廃棄物管理
社環境管理責任者
(事務局)
内部環境監査員
(部
門
長)
東京事務所
大宮管理室
ニュークリア・デベロップメント株式会社
環境技術研究部長(推進責任者)・推進委員
試験部長(推 進責 任者)・推進 委員
燃料・炉心研究部長(推進責任者)・推進委員
技術開発推進室長(推進責任者)・推進委員
安全管理室長(推進責任者)・推進委員
管理部長(推 進責 任者)・推進 委員
8
4.環境活動の沿革と中長期環境目標
4.1
環境活動の沿革
当社の環境活動に関連した沿革を表4.1に示します。
表4.1
当社の環境活動の沿革
西暦年度
1990
2000
2001
平成年度
2
12
13
2002
14
2003-
2004
2004
2005
2005-
2007
2008-
2012
15-16
事項
社設立
環境活動の外部認証取得の検討を開始
大宮環境技術研究部の東海移転(全事業を東海に集結)、環境マ
ネジメントマニュアル・実施要領書原案作成
社独自の環境保全活動開始(環境目標設定、マネジメントプログ
ラム運用)
社独自の環境保全活動実施
16
17
17-19
EA21取得方針決定、EA21取得準備活動開始
EA211 認証取得、EA21活動開始
社独自の環境目標設定(2002-2004のデータを活用)
20-24
2013-
2014
2015
25-26
・EA21ガイドラインおよび三菱重工グループの第一次中長期
環境目標に即した環境目標設定(2012年までの5年間活動
を継続)
・原単位活動目標値導入開始
三菱重工グループの第二次環境目標を取り込んだ活動実施
27
三菱重工グループの第三次環境目標を取り込んだ活動実施予定
なお、これまでの更新審査及び中間審査において不適合(C)の評価を受けた事例はありませ
ん。
4. 2
中長期環境目標
中長期環境目標を以下に示します。但し、新たな数値目標が設定された三菱重工グルー
プの第三次環境目標が平成27年度より適用される予定であり、ここでは第二次環境目標
(平成26年度まで適用)に即した目標となっています。
(1)CO2削減(省エネルギー)
三菱重工グループの第二次環境目標に即して、中長期目標としてCO2排出量を平
成26年度まで、平成24年度の排出量以下に抑制することを目標にします。
(2)物質使用量(コピー紙使用量、水使用量)
三菱重工グループの第二次環境目標(廃棄物削減)に従い、コピー紙使用量及び水
使用量の削減を継続します。三菱重工グループの第二次環境目標に従い、中長期目標
として使用量を平成26年度まで、平成24年度の使用量以下に抑制することを目標
にします。
(3)核物質等使用量、化学物質使用量、VOC排出量
核燃料物質/放射性同位元素、化学物質排出把握管理促進法(以下PRTR法)指
9
ニュークリア・デベロップメント株式会社
定化学物質を法規制等に基づいて厳正に管理するとともに、保管中の廃棄物(核燃料
/放射性同位元素、ポリ塩化ビフェニル(PCB)等)を確実に保管・管理します。
化学物質使用量についてはEA21ガイドライン2009年版に則して、使用量を削
減することを目標にします。また、三菱重工グループの第二次環境目標に従いVOC
排出量も削減することとし、化学物質使用量及びVOC排出量を平成26年度まで、
平成24年度の使用量以下に抑制することを目標にします。
(4)社事業によるCO2削減への貢献
グローバルなCO2削減に多大な貢献をもたらす国内原子炉の再稼働に向けて貢献
するとともに、海外向け軽水炉(ATMEA1等)の型式認証取得などの三菱重工の
海外業務を支援し、建設実現に貢献することを目指します。また、CO2削減等に寄
与できるグリーン製品購入について、EA21ガイドライン2009年版に則して活
動します。
(5)廃棄物排出量
非放射性廃棄物排出量について、三菱重工グループの第二次環境目標に従い、平成
26年度まで、平成24年度の排出量以下に抑制することを目標にします。長期的に
は埋立て廃棄物の実質ゼロ(ゼロエミッション)を目指します。
放射性廃棄物は現状において当社施設に長期保管する必要があるので、放射性廃棄
物の新規発生量の抑制に継続して取り組むこととします。
(6)自社製品、サービスに関する環境配慮
自らが生産・販売・提供する製品及びサービスに関する環境配慮について、EA2
1ガイドライン2009年版に則して目標を定めて活動します。
5.平成25年度環境活動計画
当社環境方針及び4.2の中長期目標に沿って、平成25年度の環境活動方針を定めまし
た(表5.1に示します)。平成25年度の環境活動計画について、その設定の考え方を含
めて以下に示します。
当社環境方針1が示す「法規制・協定等の遵守」については、現状の法規制等に基づいた
厳正な管理を継続することとし、当社にとって最重要事項である安全と環境の維持のため、
核燃料/放射性同位元素、PRTR法指定化学物質、その他廃棄物に関して、原子力安全並
びに環境に関する法規制・協定等を厳格に遵守することを継続します。
なお、原子力安全関連法規制については、3.(1)項に記載したとおり原子力保安
活動として環境活動とは別に管理しています。
また、当社環境方針2が示す「設備の適切な使用及び維持・管理による安全確保と環境の
維持」については法規制・協定等に即して制定している保安規定をはじめとする社規則、社
標準を遵守し、危険予知活動および内部保安品質保証監査等を通して設備の適切な使用及び
10
ニュークリア・デベロップメント株式会社
維持・管理に取り組みます。核燃料/放射性同位元素、PRTR法指定化学物質の漏洩を防
止し、保管中の廃棄物(核燃料/放射性同位元素、PCB等)の確実な保管・管理に努め、
またPCBの廃棄を計画に沿って着実に実行します。また異常発生時の危機管理対応を含む
教育・訓練を実施して安全を確保し、環境を維持します。
なお、危険予知、社内部保安品証監査等の活動は原子力安全と環境の両面を維持するため
に実施していますが、3.(1)項に記載したとおり原子力保安活動は環境活動とは別に管
理しています。
また、環境省の環境マネジメントシステム認証制度であるEA21については平成26年
度も、認証維持が認められるように活動します。
当社環境方針3に規定している「CO2削減、省エネルギー、省資源、放射性廃棄物及び
その他の廃棄物の発生抑制による環境汚染防止」のため、これらに係わる平成25年度の環
境活動計画を以下とします。
CO2削減(省エネルギー)
三菱重工グループのCO2削減目標を満たすため、平成25年度のCO2排出量の目標
値を定めます。更に、当社におけるCO2排出量の大半(99%以上)が電力であり、ま
た当社の使用電力量が事業所規模に比して多く、CO2排出という形で環境への影響に直
接つながることを踏まえて、電力数値目標を以下とします。当社の電力は、多くが試験棟
の送風等のために定常的に消費されるものですが、これは施設の安全を維持するために必
須のもので削減余地が少ないことから、削減目標値を設定するのは本館並びに試験棟内の
事務室・研究室に限定するとともに、目標値を従業員数で規格化した原単位量で設定して
います。
数値目標: ・CO2排出量
1707ton(平成24年度実績値)以下
・本館の年間一人当たり電力を3.80MWh(平成24年度実績値)
以下
・全社居室の年間一人当たり電力を5.48MWh(平成24年度実績
値)以下
なお、電力使用量についてはCO2排出目標のみならず、夏季ピーク電力を自主的に削
減するために社計画を作成して実行することとします。また、設備・機器のリプレース
の際に省エネタイプ機器・部品の導入を目指します。
社員のCO2削減意識の定着化を狙って、月に一回実施するノーマイカーデー(通勤時
に私有車ではなく、電車、自転車、徒歩等を使用)への参加率を34%(平成24年度実
績)以上に設定して活動します。
また、当社環境方針の前文にも謳っています社事業によるCO2削減への貢献について
は、グローバルなCO2削減に多大な貢献をもたらすと考えられる国内PWR型原子炉の
安全性の維持向上を支援し、海外向け軽水炉(ATMEA1等)プロジェクトなどの三菱
11
ニュークリア・デベロップメント株式会社
重工の海外業務を支援します。
省資源(コピー紙使用量、上水使用量削減)
コピー紙使用量について、両面印刷、電子メールの活用、文書の電子化、公式文書の
電子化配布、プロジェクター活用、等により、一層の削減に取り組みます。上述の三菱
重工グループの廃棄物削減目標を満たすため、平成25年度のコピー紙使用量について、
以下の数値目標を設定します。
数値目標:年間一人当たりコピー紙使用量24.6kg(平成24年度実績)以下
また、上水使用量について、節水型設備の導入などにより削減に取組みます。平成25
年度の数値目標を以下とします。但し、下水道経由の排水量の計測が困難であるため、使
用量と排水量を同じ値としています。
数値目標:年間一人当たり本館上水使用量を6.7m3(平成24年度実績)以下
試験棟(R*,F*,U*)合計390m3(平成24年度実績)以下
なお、当社にはこの他にも水流動試験等を行う試験棟(A*,L*棟)もありますが、水
流動試験は年度により業務量の変動が大きく水使用量も業務量に依存して変動するため、
A,L棟については目標数値を定めることはせず、使用量の実績をフォローすることと
します。
コピー紙、水、いずれの使用量も、従業員数との相関が強いことから、従業員数で規格
化した原単位量を目標値としています。
*
R:材料ホットラボ施設
F:燃料ホットラボ施設
U:ウラン実験施設
A:燃料・化学実験施設 L:構造・材料実験施設
廃棄物(化学物質、VOC含む)削減、リサイクル・グリーン製品購入促進
非放射性廃棄物については、分別処理を継続して廃棄物量を削減するとともに、従来焼
却処理していた紙片類もリサイクルするなど、リサイクル対象を拡大します。
全社廃棄物量(有価物を除く)及びリサイクル率は三菱重工グループの第二次環境目標
に沿って、下記の数値目標を設定します。
廃棄物量:
非放射性廃棄物総量
11.3ton(平成24年度実績)以下
リサイクル率:全廃棄物および古紙単独のリサイクル率を、それぞれ95.5%以上、
81.9%以上(数値はいずれも平成24年度実績)
最終処分量:
1.86ton(平成24年度実績)以下
PRTR法指定化学物質の厳正管理を継続します。化学物質の使用量について、EA2
1ガイドライン2009年版に則して、昨年度に引き続き使用量の削減に取組み、三菱重
工の活動に即してVOC排出量削減にも取組み、以下の数値目標を定めます。
化学物質使用量:
254kg(平成24年度実績)以下
VOC排出量:
68kg(平成24年度実績)以下
12
ニュークリア・デベロップメント株式会社
また、グリーン製品購入について、事務用品、再生紙などのグリーン製品の購入を引き
続き促進するとともに下記目標を設定して活動します。
目標:グリーン商品優先購入、再生紙優先使用、グリーン購入(文具以外)拡大
放射性廃棄物
放射性廃棄物(核燃料廃棄物、RI廃棄物)については、発生量そのものの削減が環
境経営に寄与するところが大きいので、引き続き以下の目標値を設定して発生抑制に取
り組みます。
放射性廃棄物:
発生量を年間50本(200ℓドラム)以下
自社製品、サービスに関する環境配慮
自らが生産・販売・提供する製品及びサービスに関する環境配慮について、EA21ガ
イドライン2009年版に則して、昨年度に引き続き以下の目標を定めて活動します。
目標:無事故、無災害記録の継続、保安・環境に係わる不適合ゼロ。
上記の各種の環境目標を達成する活動に加えて、当社環境方針4の「環境活動の継続
的改善」を進めるため、 活動状況の中間フォローと内部監査を着実に実施します。
また、当社環境方針5の「環境意識の向上、周辺地域との協調」について、環境読本
の作成・配布の実績を総括し、今後の扱いを決定するものとし、また、社外連絡窓口を
設けて、環境に係わる地元自治体行事等への参加、当社ホームページでの環境レポート
の公開、地元住民との懇談会、当社見学会開催等により周辺地域社会との協調を図りま
す。
13
ニュークリア・デベロップメント株式会社
表5.1
平成 25 年度社環境活動方針
環
境
の
維
持
・
管
理
環
境
目
標
1.法規制・協定等の遵守
当社にとって最重要事項である安全と環境の維持のため、核燃料/RI、PRTR 法指定化
学物質、その他廃棄物に関して、原子力安全並びに環境に関する法規制・協定等を遵守す
る。
2.施設維持管理等による安全確保と環境の維持、EA-21 継続
2-1 設備の適切な使用及び維持・管理による安全確保と環境の維持
法規制・協定等に即して制定した保安規定、規則、標準を遵守し、KYK 活動を通して
設備の適切な使用及び維持・管理に取り組む。核燃料/RI、PRTR 指定化学物質の漏洩を
防止し、保管中の廃棄物(核燃料/RI、PCB、等)の確実な保管・管理に努める。また異
常発生時の危機管理対応を含む教育・訓練を実施して安全を確保し、環境を維持する。
2-2 EA21 継続
EA21 活動に取組み、認証継続を期す。
3.CO2 削減、省エネルギー、省資源、放射性廃棄物・その他の廃棄物の発生抑制・リサイク
ルによる環境汚染防止
3-1 CO2 削減
社排出 CO2 を削減して三菱重工グループの目標を達成するため、各部門にて原単位目標
に対し、創意工夫による CO2 削減活動を行う。また、社業を通して CO2 の削減に寄与する
という中長期的取組方針に沿って、国内 PWR の稼動および三菱重工の海外展開を積極支
援する。
3-2 省エネルギー
当社はエネルギーの大部分を電気に依存しており、使用電力の削減が CO2 低減に直結す
ることから、従来通り原単位電力量の削減に取組む。
3-3 省資源、廃棄物削減、リサイクルの促進
省資源は活動の定着で総量の削減が困難となってきているが、コピー紙、上水について
原単位量を使用目標値として設定し活動を継続する。また、化学物質使用量、グリーン製
品の購入について目標を定めて活動を継続する。更に、一般および産業廃棄物削減、リサ
イクル率向上に向け、目標を設定して活動を行うこととする。
なお、目標値設定に当たっては三菱重工グループの第二次環境目標が定める「国内グル
ープ会社の平成26年度目標は平成24年度実績値以下」を考慮。
3-4 放射性廃棄物削減及びその他廃棄物の低減
放射性廃棄物(核燃料廃棄物、RI 廃棄物)の発生量そのものを削減することは環境経営
に寄与するところが大きいので、放射性廃棄物の発生量の抑制を継続する。
3-5 自社製品、サービスに関する環境配慮
自らが生産・販売・提供する製品及びサービスに関する環境配慮について目標を定めて
活動し、自然共生社会形成活動に繋げるものとする。
4.環境活動の継続的改善
環境活動の継続的改善を進めるため、 実績の中間フォローと内部監査を着実に実施す
る。
5.環境意識の向上、周辺地域との協調
環境読本作成・配布の実績を総括し、今後の扱いを決めるものとする。村行事等への参加、
当社ホームページによる環境活動の紹介、等により周辺地域社会との協調を図る。
14
ニュークリア・デベロップメント株式会社
6.環境活動実績
6.1
平成25年度環境活動実績
(1)数値目標に対する実績
平成25年度環境活動の数値目標に対する実績値を表6.1に示します(平成23年度と
平成24年度の値も比較のために記載)。
表6.1
削減対象項目
電力;
MWh/人
平成23~25年度数値目標値と実績値の比較(
対象
平成 23 年度
実績値
(目標値)
平成 24 年度
実績値
(目標値)
平成 25 年度
実績値
(目標値)
備考
全社
3.52(4.31)
5.10(5.99)
3.80(4.31)
5.48(5.99)
3.64(3.80)
5.68(5.48)
本館
全社居室
同
1278.3(1,578)
1387.5(1,578)
1775.1(1,707)
24.6(26.0)
23.7(24.6)
99%
(95%)
99%
(95%)
6.8(7.1)
384(437)
6.7(7.1)
340(437)
6.3(6.7)
238(390)
本館
R,F,U 棟
38
(50)
42
(50)
33
(50)
200L ドラム缶
本数
94.4
(86.9)
95.5
(95.4)
88.6
(95.5)
重量%
(含有価物)
33.5
(18.8)
11.3
(14.6)
11.3
(14.6)
ton(除有価物)
(注1)
CO2 排出量;ton(注
2)
コピー紙;
kg/人(注1)
同
再生紙利用率;%
同
上水;m3(注 3)
)内は目標値
対象
施設
核燃料汚染廃棄物
発生量;ドラム缶 全社
本数
リサイクル率;
重量%(含有価物) 同
(注4)
廃棄物発生量;ton
同
(除有価物)
24.7
(26.0)
99%
(95%)
(注 1)平成25年度従業員数は101人。
(注 2)電力(MWh)とCO2排出量(ton)の換算係数は0.379ton/MWh(平成23年
度、平成24年度)、0.464 ton/MWh(平成25年度)。
当社のCO2排出はほとんどが電力使用によるものであるが、排出量には非常用発電機の
点検時に使用する化石燃料、試験用のドライアイスから排出されるCO2も含めた。
(注 3)本館は従業員数で除した原単位(m3/人)、試験棟(R,F,U棟)は人員数との相関
が強くないため総量(m3)が単位。
(注 4)平成25年度はリサイクルができないPCB廃棄物を処分したためリサイクル率が低下。
(注 5)アンダーラインは目標未達。
全社CO2排出量、本館電力・全社コピー紙・本館上水の使用量
平成25年度の全社CO2排出量・本館電力・全社コピー紙・本館上水の使用量の年間推移は
図6.1のグラフに示す通りです。
15
ニュークリア・デベロップメント株式会社
全社 CO2排出量
本館電力
全社コピー紙
本館上水
図6.1
全社CO2排出量、本館電力・全社コピー紙・本館上水累積使用量の年間推移
16
ニュークリア・デベロップメント株式会社
廃棄物排出量
平成25年度の廃棄物量及びリサイクル率は表6.2に示すとおりです化学物質の使
用量は297kg、VOC排出量は20kg でした。また社内における最終処分を行いませ
んでしたので、最終処分量はゼロとなりました。
自社製品、サービスに関する環境配慮
無事故・無災害記録は年度末(平成26年3月31日)で1,104日を達成しました。
また、保安、環境に関わる不適合の発生はありませんでした。
(2)環境にかかわる維持・管理の実績
放射性物質の異常放出、化学物質とPCBの漏洩はありませんでした。また法規制なら
びに社内規定等の遵守状況が問題ないことを認しました。なお監督官庁、自治体の検査も
例年通り平行して行われ、指摘を受けた事項はありませんでした。
(3)環境への負荷の低減・管理の実績
核燃料廃棄物のドラム缶発生量は33本でした。
平成25年度の廃棄物管理状況の概要を表6.2に示します。
(4)その他の取組み実績
EA21認証継続が認められました。
「環境読本」の総括を行い、今後も発行を継続することとしました。また、周辺自治体
等の環境活動のフォロー、周辺地域とのコミュニケーションの活性化の一環として、東海
村船場区さくらまつり(平成25年4月29日、写真6.1)、東海まつり(平成25年
3月10日)、第19回東海I~MOのまつり(平成25年11月23日、写真6.2)
へ参加しました。また、東海村と東海ライオンズクラブ共催による年2回のクリーン作戦
への参加(平成25年5月14日と10月25日、写真6.3)、東海村舟石川・船場地
区自治会・三菱協議会(平成25年7月10日、写真6.4)、住民見学会(平成25年
10月19日)を開催する等、多種多様な機会において地域との交流を図りました。
17
ニュークリア・デベロップメント株式会社
平成25年度廃棄物管理状況
表6.2
1.事業系一般廃棄物
品名
生ゴミ
紙類
木くず
繊維くず
重量(ton)
0.58
0.92
0.10
0.12
処分方法
焼却
焼却
リサイクル
焼却
2. 産業廃棄物
産業廃棄物について、平成25年度マニフェスト管理状況を自治体に報告しました。全件
で問題はありませんでした。
品名
廃プラスチック
活性炭
薬品
ガラス・陶磁器
廃石綿
コンクリート
木くず
蛍光灯、水銀灯、
乾電池
処分
焼却・埋立て
埋立て
化特管物(PCB)
焼却
管理型埋立て
埋立て
管理型埋立て
重量
リサイクル
(ton)
0.36 サーマルリサイクル
0.00
重量
(ton)
0.44
0.73
0.01
- ガラス破砕後、路盤材
-
再利用(砂利)
パルプ原料化
破砕後材料別再利用
0.08
-
-
0.15
3. 古紙リサイクル・有価物
古紙・有価物
品名
古紙
金属・電気部品
廃プラ・廃油
備考
搬出量
(ton)
4.76 平成 17 年度から集計実施
7.43 平成 22 年度から金属 11 種類に分類
0.46 平成 18 年度から第 4 類油もリサイクル開始
4.廃棄物排出量
有価物を除き、産廃リサイクルを含む
8.25ton
5. リサイクル率
(1)古紙(事業系一般廃棄物)
83.8%(焼却 0.92ton、有価物 4.76ton)
(2)廃棄物(古紙・有価物を含む)
88.6%(一般焼却 1.63ton、埋立て処分 1.10ton、産廃リサイクル 0.67ton、
有価物 7.88ton)
18
ニュークリア・デベロップメント株式会社
写真6.1
東海村船場区さくらまつりに参加
平成25年4月29日、東海村船場区さくらまつりが開催され、当社は三菱原子燃料㈱と共に
抽選会向け景品の協賛を行うとともに、サイコロじゃんけんゲームコーナーを支援しました。
会場は好天のもと満開の八重桜に囲まれ、多数の親子連れや小学生等で賑わいました。
自治会長ハッピ姿でご挨拶
写真6.2
サイコロでじゃんけんぽん
東海 I~MO のまつりに参加
平成25年11月23日、「第19回東海I~MOのまつり」が開催され、当社は(社)茨城原
子力協議会の一員として参加しました。
このお祭りは村の特産物である「さつまいも」を主役にしたお祭りで、東海村三大祭りの一つ
です。やや雲の多い天気でしたが、朝から大勢の方がお越しになりました。
当社は第1回から参加協力をしており、今回も「焼きいもコーナー」を担当し社員2名が悪戦
苦闘しながら約400kgのさつまいもを焼き上げました。
マスコットの登場
焼きいもできたよ!
19
ニュークリア・デベロップメント株式会社
東海村一斉クリーン作戦
写真6.3
当社は継続的に東海村・東海ライオンズクラブ共催による春と秋の「東海村一斉クリーン作戦」
に参加しています。平成25年度は5月14日と10月25日に参加しました。7~8名が2班
に分かれて、当社敷地沿いの道路を「可燃物ゴミ」と「不燃物ゴミ」とに分別をしながらゴミを
収集しました。村内の美化推進のため、引き続きクリーン作戦に参加してまいります。
春のクリーン作戦の様子(5月14日)
写真6.4
秋のクリーン作戦の様子(10月25日)
舟石川・船場地区自治会・三菱協議会
平成25年 7 月10日、舟石川・船場地区自治会・三菱協議会の平成25年度第1回会合が舟
石川コミュニティセンターで開催され、地元自治会の役員が13名、三菱原子燃料より4名、当
社より3名が出席しました。
三菱原子燃料及び当社からそれぞれの事業計画とトピックスをご説明し、自治会役員の皆様か
ら熱心なご質問を頂きました。
今後とも、本協議会を通じて地元の皆様への情報提供に努めていく所存です。
協議会の風景
20
ニュークリア・デベロップメント株式会社
6.2
環境活動の実績の履歴
当社の環境活動の沿革(4.1)に示しましたように、活動の準備を平成12年頃より開始
しましたので、平成13年度以降のデータが蓄積されております。そこで、それらをもとにし
て、環境活動の実績の履歴をご紹介します。
(1) CO2排出量の推移
当社の場合、CO2排出量は購入電力によるものが大部分(99%以上)ですので購入電力
量の削減が温室効果ガス排出量の低減に結びつきます。図6.2に統計データのある平成13
年度からのCO 2排出量の推移を示します。平成17年度までCO 2排出量が1,700ton
を上回っていましたが、平成18年度から平成22年度まで1,600ton 前後で推移しまし
た。平成21年度は1,300ton 台に低減しましたが、平成22年は一転して増加となりま
した(平成21年度末から平成22年度全般に工事量が増加し、また、工事の内容も電気を多
く必要とするタイプであったためと推定)。平成23年度は東日本大震災の影響で操業スター
トが7月からとなったため操業度が低下し、排出量が大幅に減少しました。平成24年度、平
成25年度は操業度が従来並みに復帰したため、やや増加しましたが、全体としては低減傾向
にあります。変動についての分析内容は下記(2)に述べる電気使用量の分析と同等となりま
す。なお、平成25年度は東京電力のCO2排出係数が約24%増加しました(0.375→
0.464kg-CO2/kWh)が、ここでは従来との比較を行うことを狙いとして、従来
の排出係数を使用しています。
(2)電力使用量の推移
(i)全社電力使用量
図6.3に統計データのある平成13年度からの全社電力使用量の推移を示します。エネル
ギー投入量の大部分(99%以上)を占める電力使用量は、多少の変動はありますが全体とし
ては低減する傾向にあり、少しずつではありますが環境活動により電力の効率的利用が進んで
います。施設内の負圧維持のための空調等24時間運転を継続すべきベースロードが電気使用
量の多くを占める当社において、ベースロード自体を減少させる運動(設備・機器類更新時の
省エネ機器への切り替え、連続休暇時の省エネモード運転等の採用)の効果が現れていると考
えられます。平成23年度は震災の影響で大きく減少しました。平成24年度に操業は元に復
帰しましたが、2012、平成25年度と低いレベルを維持しています。
図6.2
CO2排出量の推移
図6.3
全社電力使用量の推移
21
ニュークリア・デベロップメント株式会社
(ii)本館電力使用量推移
本館の電力使用量の推移を図6.4に示します。本館電力使用量もほぼ低減する傾向にあり
ます。平成23年度は大震災により大きく減少し、平成24年度には操業は通常状態に復帰し
ましたが、平成23年度を除き平成24年度、平成25年度とこれまでの最小値を更新してお
ります。
電気使用量について平成20年度より原単位を環境目標に設定し活動に取り組んできまし
た。本館については本館電力使用量を従業員数で規格化、全社事務・研究室については全電力
使用量からベースロード分(全電力使用量の85%)を差し引いた値を全社事務・研究室の電
力使用量とし、従業員数で規格化しています。
データが存在する平成19年度以降の原単位電力使用量の推移を図6.5に示します。平成
21年度は、本館、全社事務・研究室とも年内は順調に目標値を下回っていましたが、年度末
業務量が急増したことにより、本館は目標を上回り、全社事務・研究室もかろうじて目標を下
回るレベルまで使用量が増加しました。その後もこの傾向が継続し、平成22年度は、本館及
び全社事務・研究室の原単位使用量が平成21年よりも上回る結果となりました。しかしなが
ら平成23年度は大震災の影響で原単位の使用量も大きく減少しました。平成24年、平成2
5年度は操業の回復により、平成23年度を上回りましたが、平成19年度からの低減傾向の
延長上にあるといえます。なお、図6.4に示しますように本館の電力使用量の絶対値は大き
く低減する傾向にありますが、従業員数が減少していることが、原単位表示での減少傾向を弱
めております(従業員数で規格化した原単位を目標とする活動の実効性が現れています)。
図6.4
本館電力使用量の推移
図6.5
本館、全社事務・研究室
原単位電力使用量の推移
(3)コピー紙使用量の推移
図6.6にコピー紙使用量の推移を示します。コピー紙総使用量について活動の成果が現れ、
平成13年から平成17年度まで着実に減少してきましたが、平成18年、平成19年、平成
20年度は連続して前年を上回る結果となりました。この推移に関しては業務量が強く影響し
ていると分析しています。すなわち、平成17年度が業務量の底であり、平成18年度以降受
注工数の増加(作成報告書数増加)、官公庁等向けの公式文書の増加がありました。そこで管
理部を中心として公式文書作成実績の定量把握を行い、抑制に努めたことが効果を発揮し、そ
の他の方策(IT活用、縮小・両面印刷、裏紙利用、等)と相俟って、平成21年度以降、総
22
ニュークリア・デベロップメント株式会社
量の抑制が継続できたと考えています。
平成20年度より原単位(コピー紙使用量/従業員数)を環境目標に設定し活動に取り組ん
できました。データのある平成19年度からの原単位コピー紙使用量の推移を図6.7に示し
ます。原単位使用量も着実に低下しており、一人一人の使用量の削減が確実に進展しています。
図6.6
コピー紙使用量の推移
図6.7
原単位コピー紙使用量の推移
(4) 上水使用量の推移
当社の水資源は上水のみで工業用水利用はありません。全社上水使用量の推移を図6.8に
示します。図から明らかなように全社上水使用量は着実に減少してきています。
本館上水使用量の推移を図6.9に示します。本館の上水使用量も業務量の影響を受けてお
りますが、全体として低減する傾向にあります。
本館について平成20年度より従業員数で規格化した原単位を環境目標に設定し活動に取
り組みました。図6.10にデータのある平成19年度からの原単位本館上水使用量の推移を
示します。図が示しますように、業務量の影響を受けて平成21年度にピークを生じましたが、
その後一貫して減少しています。
図6.8
全社上水使用量の推移
図6.9
本館上水使用量の推移
全試験棟の上水使用量の推移を図6.11に示します。ここで全試験棟とはA,L,R,F,
U棟を指します。全体として大きく低減する傾向にあります。
23
ニュークリア・デベロップメント株式会社
図6.10
原単位本館上水使用量の推移
図6.11
全試験棟の上水使用量の推移
A,L棟の上水使用量の推移を図6.12に示します。A,L棟について、平成13年、平成
14年の両年度は流水試験装置関連の工事量の増加で使用量が3,000 m3 内外と例外的に
高い値を示し、工事量及び工事内容による変動が激しいことが判明したことから、A,L棟に
ついては環境活動目標に設定することに適さないとして環境目標対象から除外することとし
ました。その後、平成15年度、平成16年度は1,000 m3 程度で、平成12年度以前並
みに落ち着きました。平成21年度において海外プラント関連工事が開始され水使用量の増加
が予想されましたが、平成20年度の70%に収まりました。平成22年度以降は更に使用量
が減少しており、節水装置導入、水の再利用等の対策が有効に機能していると考えています。
R,F,U棟の上水使用量の推移を図6.13に示します。R,F,U棟の平成11年度までの
水の使用量は2,000 m3 内外で推移していましたが、平成12年度から冷房設備をクーリ
ングタワー方式から電気式に変更したことにより平成13年度、平成14年度では大幅な使用
量の低減が図れました。しかし平成15年度、平成16年度の使用量が突如倍増しました。こ
の増加要因を種々調査した結果、漏水が3箇所あることを突き止め、漏水個所の改良工事を実
施し、平成17年度半ばから低減に転じました。平成21年度に再び増加しましたが、節水対
策を施した他、工事の内容も影響して平成22年度以降は再び低減傾向にあります。
図6.9および図6.13が示しますように本館および試験棟(R,F,U)の水使用量は平
成16年度から減少を続けましたが、業務量の影響を受けて平成21年度に一旦ピークを生じ、
その後再び減少傾向となりました。平成23年度の使用量は東日本大震災の影響を受け減少し
ましたが、平成24年度、平成25年度は操業が回復したにも拘らず平成23年度を下回りま
した。これは、本館では節水対策の徹底(蛇口を絞る、等)、試験棟では節水対策の他、工事
の内容も影響して使用量が低減したと考えられます。また、現在、管理の対象としていないA,
L棟の水使用量も大きく低減しています(水使用量の定量的把握及び水の再利用対策、等が効
果を挙げています)。
24
ニュークリア・デベロップメント株式会社
図6.12
A,L棟の上水使用量の推移
図6.13
R,F,U棟の上水使用量の推移
(5) 化学物質使用量の推移
EA21のガイドライン2009年版にて、本項目の環境目標を定めて活動することが義務
付けられたことを受け、平成21年度から化学薬品使用量の目標を定めて活動を行ってきまし
た。図6.14に平成13年度以降の化学物質使用量(kg)を示します。
ここで化学物質として、薬品を4グループ(酸/アルカリ/有機溶剤/その他)に分類して
整理し、その和を表したものです。年度により化学物質使用量の変動が大きく(年度毎の業務
量、業務内容の変動の影響を受けています)、平成22年度は仕事量の増加も影響し、平成2
1年度を上回っていますが、平成23年度は震災の影響を受け、使用量が減少しました。化学
物質使用量は業務量の影響を受けておりますが、全体的には減少傾向にあると考えられます。
図6.14
化学薬品使用量の推移
(6)廃棄物量、リサイクル率の推移
図6.15に廃棄物量、リサイクル率の推移を示します。リサイクル率を向上することを意
識し、平成16年度より紙のリサイクルを開始したことを手始めに、紙、金属、 木屑類は極
力再利用可能となるような廃棄物処分を実施しています。
廃棄物量、リサイクル率は年度によって多寡の変動がありますが、平成19年度以降の実績
は平成19年度実績よりも廃棄物量について下回り、リサイクル率は上回っています。平成1
9年度は廃棄物量、リサイクル率ともにそれ以前の平均的な値を示した年であり、その後の良
好な推移は活動の成果によるものと考えられます。
25
ニュークリア・デベロップメント株式会社
図6.15
廃棄物量、リサイクル率の推移
(7) 放射性廃棄物発生量
放射性廃棄物の最終処分が実施される時期は平成20年度時点で15年程度先となる見通
しであったことから、当時の保管庫容量残から、保管庫が満杯となるまでの年数として15年
以上を確保するためには、今後、年間の発生量を100本程度に抑制する必要があると推定さ
れました。そこで平成20年度において年間発生量としてドラム缶100本を目標値と設定し
て活動しましたが、実績は36本となりました。それを受け、保管容量に余裕をもたらすべく、
平成21年度以降は目標値を50本に設定して活動しておりますが、平成21年度のみ関連す
る業務量が多く発生したためドラム缶52本が発生した他は、目標を下回って推移しておりま
す。
7.環境活動の取組み結果の評価と平成26年度計画
(1)取組み結果の評価
① 環境にかかわる維持・管理
当社施設からの放射性物質の排出は、茨城県原子力安全協定で設定されている排気、 排
水放射能排出量協定値以下の値で推移しており、正常に管理されています。また放射能排出
量は定期的に茨城県、東海村に報告しているとともに、自治体のクロスチェック分析により
確認が行われています。また、化学物質の管理に関しても、正常に管理されています。
当社の安全管理の基本システムとしている危険予知活動、リスクアセスメント、保安品質
保証監査及び保安監査を確実に実施しており、監督官庁・自治体の諸検査も予定どおり実施
され、原子力保安、環境ともに特に問題はありませんでした。
社内のパトロールにより建屋脇の雨水側溝に油膜上のものが発見されたことから、専門業
者に依頼して処分しましたが、その後の検討で、鉄バクテリアによる光沢状の酸化鉄の被膜
であり、仮に排出しても問題がないことが判明しました。
外部からの環境に関わる苦情・要望に関しましては、道路にはみ出している樹木枝の伐採
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ニュークリア・デベロップメント株式会社
に関する要望が2件寄せられ、直ちに伐採を行いました。
② 環境への負荷の低減・管理
・CO2排出量(電力使用量)
CO2排出量は目標を若干上回りましたが、これは試験業務量が増加し、使用電力量が平
成24年度よりも増加したためです。但し、本館の電力使用量は着実に低減しており、環境
活動とりわけ平成23年3月11日の東日本大震災後の節電活動が定着したことによるも
のと考えられます。
CO 2排出量削減に向けた社員の意識啓発を目指して月に一日設定するノーマイカーデ
ーへの参加比率34%を設定して活動し、39%と目標を上回って達成しました。ここにも、
社員の着実な環境意識の向上が現われています。
・上水使用量
平成25年度目標(本館上水の一人当たり使用量:6.7m3/人)に対して実績が6.3
m3/人と下回り、目標を達成しました。試験棟については平成24年度使用量(390m3)
維持を目標としましたが、結果は238m3 と大きく下回りました。節水活動が着実に根付い
ていると判断されます。
・コピー紙使用量
コピー紙使用量は目標の24.6kg/人に対して23.7kg/人となり、目標を達成しま
した。順調に推移した理由として、会議でのプロジェクター使用等の各部門独自の活動が寄
与したと考えられます。
・放射性廃棄物の削減
平成25年度の発生量はドラム缶33本であり、目標の50本を下回りました。今後とも
目標値達成に向けての活動を継続します。
・廃棄物リサイクルの拡大・廃棄物量の削減
全体リサイクル率は88.6%と目標値(95.5%)を下回りましたが、これは平成2
5年度に多くの高濃度のPCB汚染物(安定器等)728kg を搬出*したことに起因してい
ます(PCBは法律により無害化処理が義務づけられており、リサイクルが不可能)。今後
目標を設定する段階でPCB搬出予定を考慮するものとします。古紙リサイクル率は83.
8%で目標の81.9%を上回り、目標を達成しました。これは積極的に不要紙をリサイク
ルに回しながら排出する努力を行ったことが結実したものと分析しています。廃棄物排出量
は目標の11.3ton に対して8.3ton であり、目標を達成しました。これは、廃棄物の
有価物化を継続した成果が現れたものと考えています。化学物質使用量は目標254kg に
対して297kg で目標をやや超過しましたが、最終処分量は目標1.86ton に対してゼロ
であり、目標を達成しました。これは最終処分の定義が「当社内における処分」であり、そ
れを適正に適用した結果処分量がゼロとなったものです。VOC排出量は目標68kg に対
して実績が20kg となり、目標を達成しました。これはキシレンを液体状態で回収する等
の工夫により、排出量を低減したためです。
*「PCB廃棄物の適正な処理に関する特別措置法」において、PCB汚染機器の安全
27
ニュークリア・デベロップメント株式会社
な保管と処理が義務付けられていることを踏まえて、平成24年10月4日に当社保
有のPCB汚染機器の処理方針」を定め、第一弾として高圧コンデンサ3台を平成2
5年3月26日に、第二弾として安定器等を平成26年1月23日にJESCO社(室
蘭)に搬出しました。
③
その他の取組み
平成25年度はEA21認証取得後、第5回中間審査を受審するため、
・EA21更新審査(平成25年)の指摘事項および改善への助言事項に対する対応処置
を確実に行うこと。
・EA21ガイドライン2009年版に即した環境経営システムの構築(ガイドライン指
定項目の活動目標への取込み継続)。
を目標として活動しました。EA21登録審査人による第4回更新審査を平成25年6月
に受審した結果、不適合は発見されず認証登録が更新されました。審査において、「内部監
査も含め、是正処置について完了だけでなく、その内容も検討して、是正処置の有効性を確
認しておくように改善が必要」との指摘を受け、標準の改定に際して是正報告書の書式に有
効性評価の欄を設けて確認することとしました。また、審査人から、活動を改善するに当た
ってのいくつかの助言を受けており、すべての助言に対して対応処置を実施しました。
一方、社内活動として環境経営マニュアル遵守状況、平成24年度内部環境監査対応状況、
EA21更新審査指摘事項対応状況、平成25年度活動計画の進捗状況の把握を主眼とした
内部環境監査を実施し、各部門の活動が概ね良好であることを確認するとともに、各部門へ
の指摘、要望事項を提示し、是正処置を完了しました。
また環境に関する啓発活動として、環境推進委員にて「環境読本シリーズ」第25号を作
成し、社内配布しました。環境読本は主として環境委員による持ち回りで身近で気付いた環
境情報を纏めていますが、徐々に発行回数が減少しており、平成25年度において一旦総括
を行いましたが、社員および家族等の啓発、話題提供に一定の役割を果たしていることが確
認されたため、発行を継続することにしました。
地域との交流活動としては、地域のさくらまつり、東海まつり、東海I~MOのまつりへ
の参加、年2回の当社周辺環境の整備作業として東海村クリーン作戦に参加すると共に、地
域自治会・三菱協議会及び住民見学会を開催しました。こうした活動を通して地域との交流
が図れたものと考えます。
以上、全体的に見ると、概ね平成25年度の環境活動は順調に行われたと総括します。
(2)平成26年度計画
CO2排出量削減(電力削減)、物質使用量削減(コピー紙削減)、水使用量削減、放射
性廃棄物発生量削減について、平成26年度も環境目標項目として目標値を設定し、活動を
継続します。再生紙利用活動は平成17年度から、また事務用品のグリーン対象品購入は平
成18年度から、高率を維持すべき管理項目に移管して行なっている活動を継続します。
非放射性廃棄物のリサイクル拡大活動・廃棄物排出量削減活動については、平成19年度
28
ニュークリア・デベロップメント株式会社
から実施している具体的な数値目標を設定した活動を続けます。
社業を通じたCO2削減への貢献については、原子力利用の海外展開、再稼動に繋がる当
社分担事業の確実な完遂を目標にして平成26年度も活動を継続します。
なお具体的な数値目標は、三菱重工グループの第二次環境目標が「国内グループ会社の平
成26年度目標は平成24年度実績値以下」と定めていることを踏まえて、平成26年度の
目標値を平成24年度の当社の実績値とします(但し、ノーマイカー推進デー参加率につい
ては平成25年度の実績値39%以上とします)。また、三菱重工グループの第二次環境目
標が原単位採用となったことから、平成20年度から当社が採用している原単位による設定
方法を継続します(但しCO2排出量は当社電気設備に変動が殆どないことから、総量を単
位とします)。
三菱重工グループの環境方針にVOC排出量、最終処分率、自然共生社会形成に繋がる活
動が取り込まれているので、これらの環境目標の設定を継続します。
平成24年度から、PCBの処分が実施に移されたことを受け、PCB汚染機器調査を継
続し、社の処分方針に即した処分を実行します。
平成25年度の環境読本作成・配布の実績総括を受け、環境読本の発行を継続します。ま
た、三菱重工環境活動(環境月間活動、環境懇談会、等)と連携します。
8.環境関連法規等の遵守状況
(1) 主な適用法規等
当社の事業活動を規制する主要な環境関連の法規制・協定は次の通りです。
① 放射性物質関係
茨城県原子力安全協定、核燃料物質使用規則、障害防止法施行規則
② 一般化学物質関係
労働安全衛生法、消防法、東海村火災予防条例、PCB 廃棄物特別措置法(改正施行平
成24年12月7日)、フロン回収破壊法、水質汚濁防止法(改正施行平成24年6
月1日)、高圧ガス保安法、毒物・劇物取締法
③ 廃棄物処理・排水処理関係
廃棄物処理法(改正施行平成23年4月)、東海村廃棄物処理条例、東海村下水道条
例、水質汚濁防止法(改正施行平成24年6月1日)
④ その他
電気事業法、振動規制法、騒音規制法、茨城県公害防止条例
なお、下記の法令は当社事業活動を直接規制するものではありませんが、これらの法令
の趣旨に準拠して環境活動を展開しています。
PRTR法、家電リサイクル法、水道法、グリーン購入法、資源有効利用促進法、
省エネ法、容器包装リサイクル法、循環型社会形成推進法
29
ニュークリア・デベロップメント株式会社
また、下記の法令は当社の原子力保安活動を規制する主要な法規制です。
原子炉等規制法、放射線障害防止法、原子力災害対策特別措置法
(2) 法規制等の遵守
当社は、平成17年からEA21の認証にもとづく環境活動の一環として、当社事業
を規制する環境保全関連の法規制等を特定しました。そして定期的に、法規制等の改廃
状況を調査・反映し、平成22年5月に改正された廃棄物処理法(施行平成23年4月)
について、平成24年度の環境関連法規制一覧表に取り込んでいます。
また、平成24年6月1日に改正水質汚濁防止法が施行されたことを受け、茨城県及
び東海村から聞取り調査を受けましたが、問題無しとの評価を受けております。ただし、
その後の調査により、特定施設の廃止届(2件)、設置届(1件)が未了であることが
判明し、直ちに届出を完了しました。ほう素を使用する特定の試験においては、計画的
排水又は減容処理を行うことで基準を遵守することとしています。
平成25年度の法令等の遵守状況について、社環境管理責任者にてフォローを行い、
各部門から報告された順守状況について法令が適切に守られていることを確認し、環境
管理統括者(社長)の承認を得ました(平成26年5月28日)。
環境活動の開始以来、同法規制等に関する違反はなく、また関係当局から違反等の指
摘を受けた事例はありません。
9.全体評価と見直し
環境管理総括者(社長)の主催する環境管理委員会(平成26年6月16日)において、
平成25年度活動の総括と平成26年度計画等を審議し、概ね目標が達成できたとする総
括が承認され、また次の方針が確認されました。
① 現行の中長期環境活動目標の平成26年度までの継続(三菱重工グループの第二次環
境目標の取り込みと設定方法の踏襲の継続)。
② EA21ガイドライン2009年版に則した環境経営システムの継続。
③ 平成27年度からの活動計画を三菱重工グループの第三次環境目標(平成26年度中
に策定)に則して立案。
10.環境余話
当社の環境に関連した情報を、お届けします。これは社員の環境意識を高めることを目的
として発行を続けている環境読本27号「エネルギー問題と原子力研究開発」及び環境読本
28号「会社及びその周辺の昆虫について」として社員向けに配信したものを再編集したも
のです。
10.1
エネルギー問題と原子力研究開発
(1)はじめに
最近の朝礼で、社の中堅社員から次のような挨拶がありました。
30
ニュークリア・デベロップメント株式会社
「職場の高齢化が進んでおり、退職する人から話を聞く機会が多いが、そこで良く聞くの
は、昔は仕事には夢と余裕があったという話。それに引き替え、自分の仕事は厳しさが増し
ており、前途が見通せない。よくよく考えたが、ここは焦らず、一歩一歩健康を維持して着
実に歩んでいくことがベストであると思う。」
素直な告白に感心し、まとめの言葉に安心すると共に、今一度エネルギー問題について整
理を行い、その中で私たちが取り組んでいる原子力研究開発の意義について考えてみたいと
思いました。
確かに私たちの前途には人類社会の持続性を危うくしかねない「食料」、「水」、「エネ
ルギー」という地球規模の三大課題が大きく横たわっており、先々が見通せない不安な時代
であることは論を待ちません。ここでは「食料」、「水」の問題はひとまずおいて、私たち
の仕事に関わりが深い「エネルギー問題」について考えてみたいと思います。
最初に検討の結論を述べますと、「人類社会の長期的持続のために、原子力研究開発を絶
やしてはならない」ということです。以下に論を進めます。
(2)地球上で利用できるエネルギー
地球上で利用できるエネルギーを表10-1に纏めてみました。地球上で利用できるエネ
ルギーは、太陽から到達するエネルギー(太陽エネルギー)と地球が自ら有するエネルギー
に大別されます(宇宙線等はごく微量ですので無視します)。太陽エネルギーは、過去に地
球に降り注いだエネルギーである化石エネルギーと現在地球に降り注いでいる太陽光エネ
ルギーに分けられます。
図10.1に平成24年の日本の電源構成と比率を示します 2。
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により生じた東京電力福島第一
原子力発電所(以降、東電福一発電所)事故後、国内の原子力発電所は殆どが稼働を停止し
たため、原子力の比率が1.7%(平成24年当時の稼働プラントは大飯発電所のみ)とな
っており、電力の大半(88.4%)を化石エネルギーに依存しています。再生可能エネル
ギーの占める割合は水力を含めて10%程度です。
それでは、個々のエネルギーの特徴と課題、将来見通しを具体的に見てみます。
31
ニュークリア・デベロップメント株式会社
表10.1
地球上で利用できるエネルギー
太陽エネルギー
地球が自ら有するエネルギー
太陽から地球表面に到達するエネルギー:~1.7×1017W(340W/m2)1
[人類が消費するエネルギー1.5×1013W(平成22年)の約1万倍]
化石エネルギー
(過去の太陽エネルギーが姿を
変えたもの)
・石炭(~150年)
・石油(~40年)
[~100年]
・天然ガス(~60年)
[250年以上]
(
[
)内は可採年数
]内はシェールオイル、シェ
ールガスを考慮する場合
の可採年数
(数100年先には枯渇し利用
不可となる。)
・現在降り注いでいる太陽エネル
ギー
太陽光(発熱密度が低く、コス
ト高)
・太陽エネルギー由来のエネルギ
ー
水力(利用場所が限定され、新
規設置困難)
風力(利用場所が限定され、環
境問題有り)
バイオマス(食料生産を阻
害する等)
・重力エネルギー
地球生成時に地球に取り込ま
れたエネルギー:核エネルギー
の 10 倍
(地球、月、太陽の引力によって
生み出される潮汐エネルギー
も含まれる)
・自然核エネルギー(地球生成期
の1/3に減少)
238
U:半減期
約 45 億年
≈ 地球年齢
Th:半減期 約 141 億年
≈ 宇宙年齢
現在地球内部から地表面に到
達するエネルギーとしては
重力エネルギー≒自然核エネル
ギー
→地球は徐々に冷えている
232
いずれも開発できる設備容量
に限界がある。
・人類利用核エネルギー
核分裂
235
U
陸上可採年数 ~100年
海水中 ~6千年以上
233
U ←232Th+n
利用年数 ~数千年
239
Pu←238U+n
陸上 238U ~数千年
海水中 238U ~百万年
核融合 3H
利用年数 無期限
(2H は無尽蔵。Be、Nb、V 材料供
給に制約の可能性。但し、代替
手段有り。)
32
ニュークリア・デベロップメント株式会社
図10.1 平成24年の日本の電源構成比率 2
(3)化石エネルギー
現在、化石エネルギーの利用比率が非常に高くなっておりますが、埋蔵量が多いとされる
石炭でも可採年数が150年程度3ですので、現状の消費水準が続けば、数100年後には
確実に枯渇し、途絶えてしまいます。但し、近年、シェールガス革命と称せられる技術革新
により、従来利用が不可能とされていたシェールガスの掘削が極端なまでの過密さで進めら
れております。シェールガスは泥岩の一種である頁岩(シェール)中に含まれます。シェー
ルガスの掘削のイメージを図10.24に、世界の埋蔵量を表10.24に示します。国際
エネルギー機関(IEA)は平成23年のレポートで、在来型、非在来型を含めて天然ガス
の可採量を250年程度と見積もっており5、従来の石油・天然ガスの可採量と比べるとか
なり伸びております。また、シェールオイルの可採量も通常型の石油の10%程度あるとさ
れ、さらに、粘土が低く、現状では採算にのらないタイトガスが大量に存在することが判っ
てきています。但し、利用されるようになった場合の環境破壊の懸念が指摘されています(な
お、日本近海等にも多く埋蔵されるメタンハイドレートも潜在的エネルギー源と言われてお
り、将来の技術革新により利用の目途が立てば1000年レベルの可採量6があるとされま
す)。化石エネルギーの利用は今後も継続されるでしょうが、過去の太陽エネルギーが蓄積
された分を消費し続けるわけで、いずれは枯渇することになります。
33
ニュークリア・デベロップメント株式会社
シェールガスの賦存(黒色部分)。
シェールガスを含む頁岩層
(Gas-rich shale) に水平にパイプ
を入れ、高水圧で人工的に割れ目を
つくり、ガスを採取します。
図10.2 シェールガス掘削のイメージ4
表10.2 シェールガス埋蔵量4
多い順
国
推定埋蔵量(兆 m3)
シェールガスの埋蔵量を見ますと、中国
1位
中国
36.1
2位
アメリカ
24.4
3位
アルゼンチン
21.9
4位
メキシコ
19.3
5位
南アフリカ
13.7
6位
オーストラリア
11.2
合わせると可採年数は 160 年から 250 年
7位
カナダ
11.0
と言われています。
8位
リビア
8.2
が一番で、次いでアメリカ、アルゼンチ
ン、メキシコと続きます(比較的世界に
万遍無く分布)。
このシェールガスと在来型の天然ガスと
(4)太陽エネルギー
現在降り注いでいる太陽エネルギーの利用(太陽光発電等)及び太陽エネルギーの姿を変
えた形での利用(水力、風力、バイオマス、等)は、地球古来の地熱エネルギーを含めて再
生可能エネルギーと呼ばれています。しかしながら、発電密度が極度に低いこと(太陽光)、
利用場所が遍在すること(水力、風力)、食料生産の阻害となる懸念があること(バイオマ
ス)、等から、21世紀末には100億人を超すと予想される地球人口を太陽エネルギーの
みで賄うことは現実的には困難で、また環境を損ねる懸念もあり、現在よりも比率を高める
としても、適度に利用することになると考えられます。
1)太陽光発電
太陽エネルギーを直接利用するものですが、発電密度が極度に低く、国内1000万戸
の屋根に設置したとしても発電量は100万kW 級の原子力発電所5基分程度に留まる
と評価されています(表10.37)。鹿児島七ツ島メガソーラー発電所(年間発電量:
7,900万kWh)が平成25年11月に稼働を開始しました(写真10.18)。こ
れは一般家庭の2万2000世帯分の電力使用量に相当しますが、日本の世帯数は5,4
00万ですので、全ての世帯を賄うには、あと2,500の同規模太陽光発電所が必要と
いうことになります)。また、サハラ砂漠等の広大な土地に設置すれば世界の需要が賄え
るという説もありますが、国家・民族・宗教的対立の問題、コスト(設置費、維持費、電
力送電費、等)を考えれば非現実的と考えます。但し、資源的には太陽が活動を続ける限
34
ニュークリア・デベロップメント株式会社
り無尽蔵といえます。
写真10.1
鹿児島七ツ島メガソーラー発電所8
国内太陽光発電量は、利用の拡大が進めば、年間約2,200億kWhとなるという試
算があります9。これは日本の年間総発電量(平成19年)の約21%に相当しますが、
1次エネルギー供給量と比較すると約9%です。これだけの太陽光パネルを国土の 7 割を
占める森林を除いた場所に敷き詰めると平地の1.5%がパネルで蓋われることになりま
す。また、発電コストが高い上に寿命も20年程度と短く、現在は電力会社の買い取り制
度で維持されていますが、これがいつまで継続できるかは不透明です。
太陽光発電を適度に利用するのが現実的と考えられます。
表10.3
100 万 kW 原子力発電所 1 基の年間発電電力量を生み出すのに必要な基数・敷地面積7
発電種類
原子力発電
太陽光発電(住宅用)
風力発電
1 基あたりの設備容量
100 万 kW
3.5kW(1 軒分)
1,000kW
設備利用率
80%
12%
20%
必要な基数
1基
約 190 万基(軒)
約 4,000 基
必要な敷地面積
浜岡原子力発電所
約 67km2
約 246km2
約 1.6km2(注)
(注)浜岡原子力発電所の約 1.6km2 は原子力設備 1 基分の面積ではなく、発電所敷地全体の広さを表します。
2)風力発電
風力発電は利用可能場所が局在し、利用エネルギー量に制約があります。我が国の風力
発電設備の導入量は、平成25年度末に総設備容量約271万kW、総設置基数1,934基、
総発電量の5.4%となっています(図10.310)。しかしながら国内では風況、環境問題、
利用場所、コストの点で開発の限界があるとされます。但し、資源的には太陽エネルギー由
来であるため枯渇することはありません。
35
ニュークリア・デベロップメント株式会社
図10.3 日本における風力発電導入量の推移 10
3)水力発電
水力発電に適する場所が限定されます。水力発電は総発電量の8.4%(図10.1)
を占めますが、大型ダムの建設はすでに限界に達しています。
4)バイオエネルギー
CO 2を排出しないエネルギーとしてガソリンに代わって利用が進むバイオエネルギ
ーですが、米国等における大規模農法に基づくサトウキビ、トウモロコシ等を利用したバ
イオエネルギー利用は世界的な食料危機をもたらすことが懸念されます。米国では毎年1
億2000万 ton ものトウモロコシがエタノール生産に使われています 11。これは米国の
トウモロコシ生産量の30%超にのぼります。近年トウモロコシの価格が高騰しています
が、もし、エタノールの原料となるトウモロコシを食糧として供給すれば、価格高騰は収
まるとされます。にもかかわらずトウモロコシをエタノール原料にする動きが止まらない
のには「E10」という規制(米国では自動車用燃料のガソリンに10%の比率でバイオ
エタノールを混ぜることが義務付けられています)によります。他の国にも同様な規制が
あります。一方で、緑藻類を利用したバイオエネルギー研究が進んでいますが、現状はコ
ストが高く実用化には至っておりません。原理的には無尽蔵ですが、生産量に制約が伴う
ことも考えられます。
5)水素エネルギー
現状考えられる水素エネルギーは海外にて石炭等から抽出し、国内に運ぶというもので、
利用量は限られたものになります。将来的には技術革新により、太陽光による水分解によ
り水素を製造することが可能となることも考えられますが、無尽蔵ではあっても経済性に
課題が残ると考えられます(原理的に太陽光発電と同じく生成密度が小さい)。
36
ニュークリア・デベロップメント株式会社
(5)地球が自ら有するエネルギー
地球が自ら有するエネルギーの大部分は、地球生成時に地球に蓄えられた重力エネルギー、
自発的に核分裂を生じて発生する自然核エネルギー、人類が利用を可能とした核エネルギー
の 3 種類です。
1)重力エネルギーと自然核エネルギー
重力エネルギーは現在も地球中心部を6,000℃に保っています(自然核エネルギー
も高温状態維持に寄与)。自然核エネルギーである 238Uの半減期は奇しくもほぼ地球年
齢と同等の45億年、232Thの半減期はこれまた奇しくも宇宙年齢とほぼ同等の141億
年ということで、何か運命的なものを感じます。現在の自然核エネルギーは、地球生成時
の1/3まで減少しました。
地球内部から地表面に到達している地熱等は重力エネルギーと自然核エネルギーがほ
ぼ等価に寄与していると評価されています 12。地熱が利用可能である場所は火山地帯等に
局在し、利用エネルギー量に制約があります。資源的には地球保有エネルギーであるため
無尽蔵ですが、2030年代に200万kW程度の導入が見込まれています 13。
地球は、重力エネルギー、自然核エネルギーいずれも徐々に失い、極めてゆっくりでは
ありますが、冷えていく過程にあります。
2)人類利用核エネルギー
人類が利用を可能とした人工核エネルギーには、235U、233U、239Pu等の核分裂エネル
ギーと核融合エネルギー(3H:トリチウムと 2H:重水素の反応)があります。235Uは天
然ウラン中に0.7%含まれます。現在の利用形態(主として軽水炉利用:PWRの例、
写真10.214)を世界中が続けると陸上の 235Uは100年程度で尽きるとされます 15。
しかしながら、運転実績が豊富であること、発電コストの優位性から、東電福一発電所の
重大事故発生以降も開発途上国を中心に世界的に新設計画が進められております。
わが国においても東電福一発電所の事故を招いた深刻な反省から規制体制を刷新し、新
たに発足した原子力規制委員会の新規制基準に基づく安全審査が行われているところで
す。当社におきましても、東電福一発電所の着実な廃炉に向けた技術支援、再稼働を目指
す原子炉が新基準に適合することへの支援に加え、海外にて着工される軽水炉を含めて、
更なる安全性の向上を目指す研究開発に取り組んでいるところです。
このように世界中が軽水炉利用を進める場合、235Uの枯渇が心配されるところですが、
海水中のウラン利用が可能となると1000倍以上(10万年以上)に利用期間が増加し
ます(海水からのウラン抽出はJAEA高崎研究所等において工学的検討が進み 16、実用
化に向けコスト低減等の課題に取り組んでいるところです。)。
233
Uは 232Thと中性子nの反応で生成されます。232Thはほぼ陸上に存在し、陸上の
238
Uの3倍以上に及ぶ埋蔵量があるとされます 17 ので、233Uに変換すれば数千年規模の利
用が見込まれます(変換する方法としてはTh増殖炉*利用、高速増殖炉利用、加速器利
用等が考えられます)。世界初のPWR発電所である米国シッピングポート炉(1957
37
ニュークリア・デベロップメント株式会社
年運転開始)の改造炉心 II で、トリウムの増殖に成功したとされます 14。現在トリウム
資源が豊富なインドにおいてトリウムの商業用利用(圧力管型重水炉:PHWR)が行わ
れています。
*軽水炉、重水炉、溶融塩炉等が候補
239
Puは 238Uと中性子nの反応で生成されます。ウラン燃料の核分裂利用の本命は高
速増殖炉サイクル(図10.418)による 238Uの 239Puへの変換利用です。原子炉第1号
が1942年に臨界に達した米国の高速炉シカゴ・パイル1号であり、世界初の原子力発
電が同じく米国のEBR-I高速炉であったことからも判るように、高速炉技術は古い歴
史を有しています 19。米国ではその後本格的実験炉EBR-II に続いて高速実験炉FF
TFを運転し、原型炉CRBRPの建設を進めましたが、カーター大統領の核不拡散とい
う政治的判断により1977年建設を中断し、高速炉開発は大きく後退しました。
一方、ロシアでは実験炉BR-5が1958年に臨界となり、その後本格的実験炉
B
OR-60炉が運転を開始し、現在も世界各国からの求めに応じて各種の照射実験に
活
用されています。
欧州の英国では実験炉DFRが1959年、原型炉PFRが1974年に臨界、フラン
スでは1967年に実験炉ラプソディ、1973年原型炉PHENIXが臨界、ドイツで
は1977年実験炉KNK-II、1986年原型炉SNR-300が完成しています。
その後英国、ドイツは開発を中断。フランスも実証炉SUPER-PHENIX炉(1
985年臨界)の炉外燃料貯蔵槽(EVST)におけるNa漏洩事故により1時期開発を
中断しましたが、現在は2030年頃までにASTRID炉を完成するとして開発を続け
ています。
ロシアは一貫して高速炉開発を継続しており、原型炉BN-350、実証炉BN-60
0の運転継続、BN-800の臨界、BN-1200を建設中というように、高速炉開発
を進めています。ロシア、フランスと並んでインド、中国も高速炉の開発を進めています。
わが国でも高速実験炉常陽が1978年に臨界に達し、今日にいたるまで数々の照射実
験に供されてきました。原型炉もんじゅ(写真10.319)も1994年に臨界、発電を
開始しましたが、直後のNa漏洩事故により運転を休止。平成22年に運転を再開しまし
たが、炉内中継装置落下事故により再び稼働ができなくなり、今日に至っています。
国内では高速実証炉の開発が進められ、我が国の高速炉の技術は世界を主導する一翼
を担っています。
以上述べましたように、高速炉の技術開発の歴史は古く、世界の平成23年現在までの
高速炉の累積運転年数は、約400炉・年 20 と言われます。また、239Puや 233Uは準国
産エネルギーとして有用ですので、高速炉やTh増殖炉が採用されるうえでの課題は、経
済的競争力の確保と東電福一発電所の事故も踏まえての安全性の実証にあると考えられ
ます。
次にサイクル技術の現状を見てみます 21。核燃料再処理とは、原子炉で一度燃焼させて
取り出した核燃料から使用可能なウラン、プルトニウムを取り出す(抽出する)処理を言
38
ニュークリア・デベロップメント株式会社
います。抽出されたウラン、プルトニウムは再び核燃料に加工されます。規模が大きい商
用再処理工場としてフランスのラアーグ再処理工場(1976年操業開始、稼働中、処理
能力1700ton/年)、イギリスのソープ再処理工場(1994から平成17年まで操業、
5,000ton を処理)が国外からの核燃料の受け入れを含めて運転されてきました。い
ずれも硝酸で核燃料を溶かした後、リン酸トリブチル(TBP)にウラン、プルトニウム
を抽出する湿式法が採用されております。この他、水を用いず高温冶金技術をベースとし
た乾式再処理法という技術も開発されています。
放射性廃棄物の処理方法としては、超ウラン元素(TRU)及び超長寿命核分裂生成物
(LLFP)等、最長で数万年に及ぶ長期毒性を有する放射性廃棄物をガラス固化体とし
て深い地中に埋設することが考えられておりますが、TRU、LLFPに中性子を照射し
て短寿命あるいは無害の核種に変換する技術開発も進められています。そのひとつが高速
炉を利用するものであり、また加速器を使って発生させた中性子を使用する方法も研究開
発が進められています。こうした技術が実用化されれば後世の負担が大幅に軽減します。
米国はこうした技術が実証されるまで、保管しておく(ユッカマウンティン計画)という
立場(ワンススルー方式)ですが、この考え方も一時的にプルトニウム鉱山を作って将来
の技術の確立に期待するということであり、将来的資源として位置づけていることは変わ
りありません。
以上概観しましたように核エネルギーは現状において人知が想定しうる唯一の持続性
を担保するエネルギーであり、技術のレベルとしては既に確認がなされ、実証、実用化の
段階に入っています。
但し、高速増殖サイクルが実現したとしても陸上の 238Uのみの利用では利用期間は数
千年規模に留まります。一方、海水中の 238Uの利用が可能となると、百万年レベルの利
用が可能ということになり、半ば無尽蔵のエネルギーが確保できることになります。
さらに、核融合エネルギーの利用が可能となれば、反応に与る核物質(重水素 2Hは海
水に含まれ、トリチウム 3Hは海水にも含まれるLiから中性子との反応で生成)は無尽
蔵といわれますので、人類は資源的制約から解放されることになります。しかしながら、
上記核分裂反応も同様ですが、炉を構成する金属材料の地球上の資源的限界が利用期間の
一定的制約要因となる可能性もあると考えられています(但し、代替手段も用意されてい
ます)。
39
ニュークリア・デベロップメント株式会社
図10.4 高速炉サイクル 18
写真10.2
シッピングポート原子力発電所 14
写真10.3
高速原型炉もんじゅ 19
(6)まとめ
以上のことより、現状見通すことが可能な技術としては、核エネルギーの利用のみが、数
万年先まで人類社会が持続していく展望を与えていることが判ります(勿論、将来の画期的
な科学技術の進展で、新しいエネルギー利用技術を発見し利用することになる可能性もあり
ます)。また、原子力利用を進める過程で発生する長寿命の毒物(TRU、 LLFP)を
減容、無害化する技術、東電福一発電所等の廃炉を進める技術、放射線の医療・農業分野等
で利活用する技術、更には深宇宙(太陽光が届かず太陽光発電ができない宇宙)探査等のた
めの宇宙用原子炉、深海探査のための潜水艇用原子炉、等々の研究開発は人類が生存を維持
していく上で、絶やしてはならず、発展させるべきものと考えられます。もし今のように化
石燃料を使い続けて地球温暖化を許してしまうと、海水面が上昇して写真10.422 が示す
ように、人類の政治・経済・文化が栄える地域の大半が水没してしまうことになります(写
真は地表面の氷が全て溶けた場合の海水面)。写真10.523 が示しますような別の惑星を
求めて何万年もの間宇宙空間をさまようノアの箱船(宇宙船)に乗るような時代を迎えるこ
40
ニュークリア・デベロップメント株式会社
とが無いように研究開発に取り組むことが重要と思います(宇宙船の動力も原子力エネルギ
ーが有力です)。
写真10.4
海水面上昇により水没する
アジア域 22
写真10.5
新惑星を求めて彷徨する
宇宙船 23
文中の図表のうち外部資料を参考としたものあるいは引用したものを次表に示す。
番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
参考文献あるいは出典
「太陽エネルギー」
「平成24年度の電源別発電電力量構成比」データをもとに円グラ
ウィキペディア
電気事業連合会
フ作成
BP 統計 2006、OECD/NEA・IAEA「URANIUM2003」
ウィキペディア 「シェールガス」
IEA World Energy Outlook 2011 Special Report
山田高明 シリーズ「石油文明からメタン文明へ」8 週刊アゴラ
http://agora-web.jp/archives/1429982.html
中部電力ホームページ
http://www.chuden.co.jp/energy/ene_energy/newene/ene_data/dat_hikaku/
news-postseven.com 2013.08.26
佐藤しんり 太陽光エネルギーの利用とその限界
NEDO 日本における風力発電設備・導入実績
http://www.nedo.go.jp/library/fuuryoku/state/1-01.html
日経産業新聞「バイオ燃料頼みの危うさ 穀物高騰や生産効率が課題 2012/10/22
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD190M4_Z11C12A0000000/
東北大学ニュートリノ科学研究センター報道発表「地球半ニュートリノ観測で判明、
「地球形成時の熱は残存している!」」平成 23 年 7 月 19 日
http://www.awa.tohoku.ac.jp/rcns/wp-content/uploads/2011/07/b25972d0893851ff
ccb32fcaa
a2eb6d2.pdf
NEDO 再生可能エネルギー技術白書(第 2 版)第 7 章 地熱発電
ウィキペディア 「シッピングポート原子力発電所」
BP 統計 2011、OECD/NEA&IAEA「URANIUM2009」
JAEA Topics
http://www.jaea.go.jp/jaeri/jpn/publish/01/ff/ff43/topics.html
ウィキペディア 「トリウム燃料サイクル」
JAEA「もんじゅが開く未来」
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/mext-monju/yakuwari/fbr_ncycl_01.htm
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ニュークリア・デベロップメント株式会社
番号
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23
参考文献あるいは出典
ウィキペディア:「高速増殖炉」、ATOMICA:世界の高速増殖炉実験炉/原型炉/実証炉
ATOMICA:高速増殖炉の核燃料サイクル
原子力委員会 新大綱策定会議(第 9 回)資料第2-4号
National Geographic 2013.9
National Geographic 2013.1
(伊藤邦博 記)
10.2
会社及びその周辺の昆虫について
東海村は、東側は太平洋を望む海岸線より、西側に向かって海から最も遠い所でも約 6km
の距離であり、最高標高地は海岸より僅か1kmの距離にあります茨城一の宮「大神宮」の裏
山の35mです。即ち、殆どが平地の地勢ですが、農地、住宅地の周辺には、平地林、斜面林、
湿地、谷津等豊かな自然が残されています。当社は、東海村の中でも那珂市との境界線に接す
る北西部に位置しています。当社の周辺にも広範に雑木林が残されており、このため当社敷地
内においても、多様な生物相に触れることができます。ここでは、東海村と当社周辺における
昆虫類、特に蝶を中心とした観察を通じて、当地の自然の豊かさについて紹介いたします。
まず、当社敷地内ですが、自然の植生は残されておらず、敷地境界及び建屋周辺や道路脇に
は樹木の植栽があります。また、構内には、広い空き地があり、ここは草むらとなっています
が、景観及び治安維持のため年に数回草刈りが行われています。
この草むらでは、7月~8月にかけ多数のジャノメチョウを見かけます。発生の前半は翅の
黒いオスが主体ですが、8 月に入るとオスよりひと回り大きく翅が茶褐色のメスが発生します。
草むらのアカツメクサの花で蜜を吸う姿が頻繁に見かけられます。
ジャノメチョウ♂。黒っぽい。
ジャノメチョウ♀(羽の裏面)。
北端のグランド脇の林の縁では、日本特産種のアサマイチモンジを観察することができまし
た。小柄なタテハチョウの仲間で、黒字の翅に縦に白い筋が入っています。アサマイチモンジ
の食草であるスイカズラはグランド脇の草むらに生えていて、6月頃には白い小さな花を咲か
せ、クチナシに似た甘い良い香りを漂わせます。
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ニュークリア・デベロップメント株式会社
ハルジョオンの花に吸蜜するアサマイチモンジ
当社の正面玄関の周りは、シラカシ、マテバシイ、クスノキ等の常緑広葉樹の植栽があり、
木の梢に沿って飛ぶ蝶を見かけることができます。ナガサキアゲハ等のアゲハ類の他、雑木林
を代表するゴマダラチョウ、アカシジミ、ウラギンシジミ等の蝶が観察できました。この他、
雑木林に生息する甲虫であるヤマトタマムシも、緑と赤の美しい鞘翅を輝かせながら構内を飛
翔する姿を8月頃に観察できました。当社敷地内に雑木林はありませんが、周辺の雑木林を生
息地としている生物の活動圏内に当社があるため、雑木林特有の昆虫類が見かけられるという
ことです。昆虫の他にも、構内ではノウサギ、キジ、コゲラといった鳥獣の姿を見かけたこと
があります。
ゴマダラチョウ
ヤマトタマムシ
会社より、村内の雑木林に目を移します。
平地の雑木林の自然度の一つのバロメータとして、日本の国蝶であるオオムラサキの生息状
況が挙げられると思います。オオムラサキは戦前には東京近郊でも見かけられたそうですが、
現在雑木林の減少により平野部では殆ど絶滅し、山地でも急速にその姿が減っており、環境省
発行のレッドデータ・ブックでは準絶滅危惧種に指定されている貴重な蝶です。東海村にオオ
ムラサキが生息しているらしいことは、ウエブサイト上の情報で知りましたが、多分幼虫飼育
による放蝶等による人為的なものであり、宅地開発が進んだ村内で生きたオオムラサキを観察
することは困難であろうと考えておりました。
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ニュークリア・デベロップメント株式会社
昨年 7 月、村内の雑木林を広く歩き回り、オオムラサキの姿を探索しました。畑の中に平地
林が残る地域で、クヌギの老木がたくさん生えた好環境の雑木林を発見しました。林内に立ち
入るとクヌギの樹液の甘酸っぱい匂いが漂っており、樹液にはスズメバチやカナブンに交じっ
て、オオムラサキが樹液を吸う姿が確認できました。この他にも、民家の前のクヌギの大木の
梢の上を複数の個体が飛翔したり、樹液を吸っている姿を確認しました。
オオムラサキ♂。後翅が相当痛んだ飛び古しの個体。
中央左にルリタテハ、スズメバチとカナブン
オオムラサキ♂の裏面。
寮に飛んできたオオムラサキ♂
この年は、単身赴任先の東海駅前の会社の寮でも信じられない光景に出合いました。8月下
旬の朝、自分の部屋のある寮3階の廊下の窓の網戸にオオムラサキのオスが止まっていたので
す。相当な飛び古しの個体でしたが、恐らく、灯火に誘われてどこからか飛んできたものと思
われました。寮からは最も近いクヌギ林まででも500mは離れていますが、オオムラサキの
活動範囲の広さに驚くとともに、我々の生活圏内にオオムラサキが生息していることに東海村
の自然のポテンシャルの高さを改めて実感させられた出来事でした。
東海村では平成26年3月に生物多様性地域戦略が策定され、東海村の豊かな自然の50年
後の未来の姿を定めるとともに、自然の保全・再生を効率的に進める仕組みづくりと様々な自
然の恵みを持続的に得ることができるまちづくりについて提案されています。この中で、東海
村の自然の健全性を示す主な昆虫として、雑木林におけるオオムラサキ、ヤマトタマムシ、カ
ブトムシ等があげられています。
村内には多数の原子力関連事業者があり、それらの広大な敷地内には、様々な形で自然が残
されています。これらも地域の自然の潜在力を保つ大きな要因となっていると考えられ、事業
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ニュークリア・デベロップメント株式会社
者としても東海村の豊かな自然の価値を認識し、敷地内の貴重な生物に対し注意を払い環境維
持に配慮することが必要であると考えます。
東海駅前の会社の寮にもオオムラサキが飛来する東海村の自然の豊かさを思えば、周辺に雑
木林を初めとする豊かな自然が残されている会社の構内において、オオムラサキの姿を目にす
ることも、決して夢では無いと考えます。
今後とも、会社及び村内の自然について、観察を続けていきたいと思います。
(広瀬直人
記)
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