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仕様書「二相ステンレス鋼の腐食試験」 - 日立GEニュークリア・エナジー
仕様書「二相ステンレス鋼の腐食試験」 2014年3月4日 日立GEニュークリア・エナジー(株) 1.件名 二相ステンレス鋼の腐食試験 2.目的 高性能多核種除去装置に適用する二相ステンレス鋼は、40℃以下で平均塩化物イオン濃度が約 6,000 ppm の塩化物水溶液に接液する。一般的にステンレス鋼は、塩化物イオンに対する耐性が小さいため 局部腐食の発生が危惧されるが、二相ステンレス鋼は優れた耐食性を示すことが知られている。ただ しこれは母材の耐食性を述べたもので、母材よりも耐食性が劣るとされる溶接部に関しては、耐食性 データがほとんど得られていないのが実情である。 本試験では高性能多核種除去装置の実機模擬試験体を使用するが、これは実機配管を溶接施工する サイトにおいて、実機で使用する配管を実機条件で溶接して製作したものである。これらの実機模擬 試験体の溶接部より試験片を採取して試験に供する。 二相ステンレス鋼の使用可能期間(腐食発生寿命)を評価する場合に、実機条件で腐食試験する と、評価結果を得るまでに数年から数十年を要すると考えられる。このため多くの場合は加速試験が 用いられる。本試験では試験水温度を上げることによって腐食発生を加速する計画であるが、このた めには予め試験水温度と加速率の関係を評価しておくことが不可欠である。本試験では、二相ステン レス鋼および参照材であるSUS304を対象に、すきま腐食発生時間と試験水温度の関係を試験データに 基づいて評価する。 3.実施内容 (1)定常腐食電位測定 1) 試験マトリックスおよび試験条件 二相ステンレス鋼であるS32750の溶接金属および母材を対象に定常腐食電位を測定する。表1 に試験マトリックスを示す。また表2に試験条件をまとめる。試験液は、pH7の場合が純水で、pH2 の場合が塩酸溶液とする。 2) 試験片加工 試験に供する試験片は、支給する二相ステンレス鋼配管の溶接継手(3インチ、スケジュール 10)の溶接部および母材より切り出したものとし、試験片の両面を#600エメリー紙で研磨したも のとする。なお試験片形状の詳細は打合せ議事録に従うこととする。 1 表1 定常腐食試験のマトリックス pH 7 pH 2 母材 3 3 溶金 3 3 試験材 S32750 脚注) 表中の数値は繰返し数(試験片数)を示す 表2 定常腐食試験の試験条件まとめ 項目 条件 試験液 純水または塩酸溶液 試験温度 40 ℃ pH 7(純水)、2(塩酸溶液) 溶存酸素濃度 大気飽和条件 試験期間 40日以上 (2)浸漬試験 1) 試験マトリックス 二相ステンレス鋼であるS32750の溶接金属および母材、オーステナイト系ステンレス鋼である SUS316Lの溶接金属、および参照データを取得するためのSUS304の母材を対象に浸漬試験を行 う。 試験マトリックスを表3-1および表3-2に示す。表3-1は二相ステンレス鋼およびSUS316Lの溶接 金属を対象としたものである。二相ステンレス鋼であるS32750は、中性条件およびアルカリ性条 件(pH 9)の2条件で測定する。表中の数字は所定の浸漬時間経過後に取り出す試験片数を示す。 表3-2はSUS304の母材を対象としたもので、2枚の試験片を重ね合わせたすきま腐食試験片を使用 するものである。なお表中の数字は、表3-1と同様に所定の浸漬時間経過後に取り出す試験片数を 示す。 2) 試験片加工 試験に供する試験片のうち、 a) 二相ステンレス鋼(S32750, S31803):支給する二相ステンレス鋼配管の溶接継手(3イ ンチ、スケジュール10)の溶接部および母材より切り出したものとし、試験片表面は研磨 せず、受け入れままとする。 b) オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316L):支給する板状のSUS316Lビード試験体か ら切り出したものとする。切断面は#600エメリー紙で研磨し、その反対面である溶接部表 面(アズビード面)は研磨をせず、受け入れままとする。 c) オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304):支給する板状のSUS304の板から切り出した 2 ものとし、試験片の両面を#600エメリー紙で研磨する。2枚を一組とするすきま腐食試験片 を製作する。 なお試験片形状の詳細は打合せ議事録に従うこととする。 3) 試験条件 表4に浸漬試験の試験条件をまとめる。試験液には人工海水を使用し、塩化物イオン濃度([Cl-]) が6,000 ppmとなるように純水で調整する。また試験水温度は腐食発生を加速するため80℃とし、 溶存酸素濃度は大気飽和条件とすため、試験中は空気バブリングを行う。 試験水は人工海水の希釈液であるため中性であるが、試験の進捗とともにpHが変化する可能性 がある。このため、試験開始前および500 時間ごとにpHを測定して記録する。pHが中性域(pH6 ~pH8)を外れた場合には試験液を交換する。またS32750の溶接部については、pH 9の条件でも、 2,000時間および3,000時間の試験を実施する。 なお本試験では人工海水を80℃に加熱するため、ガラスのような溶液中に溶出することがない 容器(たとえばテフロンコーティングされたガラス容器)を使用して試験することとする。また 使用する容器の容量は、試験気液率[注]を考慮して5ℓ以上とし、容器の使用にあたっては容器を純 水で2回以上洗浄することとする。 [注] 試験片表面積と溶液体積の割合.腐食によって溶液中の酸素が消費されるため,本試験のよ うに静水中で行う場合には,溶液中に酸素を補給しないと腐食が停止する。このため試験中 に大気バブリングするとともに,試験片表面積(腐食面積)に対して十分に大きな溶液体積 を確保するようにする場合の指標として気液率が用いられる。 4) 試験片の評価 a) 重量測定 浸漬試験開始前に、全試験片の重量を測定する。また浸漬試験が終了した試験片を乾燥処理 後に重量測定する。さらにスケール除去後にも重量測定して、腐食量の時間依存性および鋼種 間の違いを評価する。 b) 外観観察 浸漬試験開始前に、全試験片の外観を記録する。また浸漬試験が終了した試験片の外観を記 録する。さらにスケール除去後の外観を記録する。 なお外観観察において、S32750は両面を対象とし、SUS316Lはアズビード面を、SUS304は すきま面を主に外観観察を行い、表面性状を比較するとともに、局部腐食の有無を確認する。 3 表3-1 500 hr 1000 hr 2000 hr 3000 hr 溶金 1 2 2 2 中性 溶金 1 2 3 3 アルカリ性 溶金 2 2 中性 溶金 1 2 2 5 9 9 SUS316L S32750 S31803 浸漬試験のマトリックス(Ⅰ) 2 小計 脚注) 表中の数値は繰返し数(試験片数)を示す 表3-2 鋼種 浸漬試験のマトリックス(Ⅱ) 試験片形状 500 hr 1000 hr 2000 hr 3000 hr 1 1 2 2 SUS304(母材) すきま腐食試験片 脚注) 表中の数値は繰返し数(試験片数)を示す 表4 浸漬試験の試験条件まとめ 項目 試験液 条件 6,000 ppm[Cl-]に調整した 人工海水 80 ℃ 試験温度 pH 中性条件 pH 6~pH 8 pH 9 pH 9 溶存酸素濃度 大気飽和条件 試験期間 500時間~3,000時間 4.実施期間 発注後 6 ヶ月間とする。 5.納入物 試験結果を整理するとともに、試験方法、試験結果および検討結果をまとめた報告書を 2 部、およ び報告書を収めた CD-ROM を 1 枚提出する。 6.その他 支給する実機模擬試験体の残材は返却すること。 4 7.納入場所 日立 GE ニュークリア・エナジー株式会社 (茨城県日立市内) 以上 5