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ステンレス鋼の材料評価(しゅう酸エッチング試験方法)
Technical News 株式会社 住化分析センター TN269 ● ステンレス鋼の材料評価(しゅう酸エッチング試験方法) Material evaluation [概 of stainless steel 要] オーステナイトステンレス鋼は耐食性、機械的強さ、表面光沢などに優れており、機械部品(ボルト、ネ ジなど)や配管、家庭用品(なべ、シンクなど)など様々な製品に広く用いられています。オーステナイト ステンレス鋼は 600℃∼800℃に加熱されると、粒界にクロム炭化物を析出しやすくなります。この現象を鋭 敏化と呼んでいます。鋭敏化すると、炭化物の近傍はクロム濃度が少なくなるため、局部的に耐食性が著し く悪くなり、粒界腐食を生じやすくなります。粒界腐食を起こした場合、機械的性質は劣化し、粒間割れな ども生じやすくなります。ステンレス鋼の鋭敏化度合はしゅう酸エッチング試験方法(JIS G0571)で判別で きます。以下に結果を示します。 [実験] ステンレス鋼に鋭敏化処理(700℃にて 30 分保持後、水冷)を施し、鏡面研磨後、10%しゅう酸水溶液にて 定電流電解エッチング(1A/cm2)し、その鋭敏化状態を金属顕微鏡観察しました。 [実験試料] 使用した鋼の成分表を以下に示しました。 成分表 検出元素(wt%) C Si Mn P S Ni Cr Mo SUS304 0.06 0.53 0.92 0.033 0.001 8.08 18.20 − SUS316 0.04 0.64 0.92 0.030 0.002 10.14 16.77 2.07 SUS316L 0.012 0.58 1.24 0.031 0.002 12.11 17.37 2.05 [実験結果] 実験結果を図 1∼4 に示しました。 図 1、図 2 はしゅう酸電解エッチング有無の SUS304 を観察したものです。鋭敏化を観察するためには、し ゅう酸電解エッチングが必要であり、エッチング無しでは鋭敏化の程度が分かりませんが、エッチング後の 金属顕微鏡写真では全面に溝状組織が観察され、非常に鋭敏化が進んでいることが確認されました。又、 SUS316 では所々の粒界において、鋭敏化されており、SUS316L は通常の組織であり、全く鋭敏化されていま せんでした。 1 図 1:SUS304 の金属顕微鏡写真(エッチング前) 図 2:SUS304 の金属顕微鏡写真(エッチング後) 図 3:SUS316 の金属顕微鏡写真(エッチング後) 図 4:SUS316L の金属顕微鏡写真(エッチング後) [考察] 今回の結果では、鋭敏化の感受性(粒界腐食の感受性)は SUS304>SUS316>SUS316L の順になると考えら れます。SUS316 は粒界腐食の感受性を弱める元素と考えられているモリブデン(Mo)を含むため、SUS304 よ り鋭敏化されていないと考えられます。又、SUS316L は炭素が少ない鋼(0.01%)であるため、粒界にクロム 炭化物が析出できないと考えられます。 以上のように、この試験法は鋭敏化の度合いを簡単に判別できるので、溶接によりこの温度域に加熱され 劣化した部位の観察(溶接熱影響部の劣化観察)などに有効です。 作成:千葉(RO0604) 4-SO-(40) 2