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青山博一はマシンを失い

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青山博一はマシンを失い
昨シーズンの終わり、KTMが250ccクラスから手を引いたとき、青山博一はマシンを失い、
そして250ccクラスに別れを告げなければならないところだった。しかし驚くべきこと
に、ホンダが自らを裏切った青山を迎え入れ、そして最高の性能を持つワークスマシン
を与えたのである。今、青山はランキングのトップにいる。
なんと皮肉なことであろう。もしホンダもまた昨シーズンで手を引いていたのなら、こ
んなことはあり得なかったのに。
GPweek(以下GW):今ランキングトップにいて驚いてませんか?
青山:ええ、ちょっと。去年のヴァレンシアGPの時点では、今年どこに行くのかも決ま
ってませんでしたから。KTMが手を引くことを決めたのが、結構ぎりぎりになって
からだったので、どのチームもライダーが決まっていて、僕が入る余地はなかった
んですよ。
12月になって、やっと今のチーム(チーム・スコット)が僕のためにチームを作
ってくれることになったんですけど、もう何もかもが手遅れって感じでした。冬場
のテストも満足に出来なかったし、マシンは1台しかなかったし、とにかく何もか
もが最小限の状態で始まったんです。優勝争いをするのに理想的な状態ではないで
すよね、特にアプリリアワークスと比べたら。だから、その時点では誰もこんなと
ころにいられるとは思ってなかったでしょう。
シーズン初めには5位以内なら十分だと僕自身思ってましたし。
GW:まだマシンは1台だけです?
青山:1台だけですよ。
GW:ということは予選で転倒するわけにはいかないんですね。
青山:(笑って)ですね。
GW:弟の周平さんもGPを走っていたわけですが、なんか一家総出でって感じなんで
すか?
青山:姉(妹?誰か情報ください)と弟がいるんですけど、姉はプロのレーサーじゃな
いですよ。バイクに乗るのは好きですけど。もうレースはやってないですし。
GW:東京の北にある千葉県生まれとのことですけど、なんで千葉からそんなに良いラ
イダーがたくさん出てくるんでしょうか?
青山:田舎で、バイクに乗るくらいしか他にすることがないからじゃないでしょうか。
ミニバイクやポケバイ用のコースがたくさんあって、僕の家からも20 30分で行け
たのも良かったんだと思います。
父がバイク好きだったんで5歳の時にレースを始めたんです。父はプロのレーサー
じゃないんですけど、モトクロスでは結構速かったんです。
GW:弟さんとレースをするというのはどんな感じなんですか?
青山:楽しいですよ。小さいころから競争してたんですけど、それをGPの場でできる
んですから。
GW:何時になったら弟さんが勝つと思います?
青山:ふつうは弟には負けませんよ(笑)。
GW:250ccクラスではホンダのワークスマシンは望むべくもないのですが、あなたが
乗っていた04年とか05年のモデルと比べて、どう進化してるんですか?
青山:少しは良くなってますよ。大きな違いはないですが。基本的なキャラクターは変
わってないですね。でも、KTMに3年乗っていて、KTMとホンダでは大違いな
ので、あまりはっきりしたことはわからないんです。
タイヤは前後ともダンロップなのに、KTMとホンダではなぜかシャーシのフィー
リングが全然違うんですよ。パワーの出方は似てるんですけどね。でも特にフロン
トのフィーリングが違うんです。僕にしてみればホンダの方がコーナーのアプロー
チで接地感があるんで、KTMより攻められる感じなんです。これが一番大きな違
いですかね。
GW:ホンダの方がスムーズで許容量があるように見えますが。
青山:そうですね、そのスムーズなキャラクターと僕のライディングがうまくマッチし
てるんだと思います。KTMのときのデータはないんですが、感じからするとホン
ダに乗ってるときの方がコーナリングスピードが速いんじゃないんでしょうか。そ
れでコーナーはもちろん、脱出速度が高いんでストレートでも速くなってるように
感じます。
トップスピードだけならアプリリアの方が少し速いと思います。加速もハンドリン
グもホンダより良く見えますね。エンジンレイアウトが違うからだと思います。ホ
ンダの方が幅があって、アプリリアの方が狭いんですよ。(クランクケースリード
バルブとロータリーディスクバルブの違いなのか、1軸と2軸の違いなのか、その
あたりわかる方よろしく!)
GW:アプリリアは限界付近でのコントロールが難しいように見えますけど?
青山:そうですね。アプリリアの方がナーバスで、ホンダの方が緩いんじゃないでしょ
うか。ホンダの方が過渡特性が穏やかですけど、それですごく違いがでるわけじゃ
ないですよ。アプリリアもいいときはほんとに速いですからね。たしかに乗りにく
そうなときもありますけど。
GW:250ccクラスが無くなることについてはどう思いますか?
青山:すごく残念ですね。僕は2ストで育ってきましたから。23年間ほとんど2ストで
レースをしていて、もう大好きなんです。軽いし、エンジンは小さいし、パワフル
だし。
GW:これでホンダが最後の250ccタイトルをとったら面白いですね。
青山:(笑って)、そうですよね、F1みたいですね。
GW:10年前は日本人がたくさんGPにいましたけれど、今はもうあなたと2 3人に
なってしまいましたね。何がおこったんでしょうか。
青山:原田さん、宇川さん、岡田さん、上田さん、坂田さん、ほんとにたくさんいまし
たよね。なんでかは、はっきりしたことは言えませんが景気の問題もあるでしょう
ね。10年前はもっと景気もよかったんんで、テストやレースもたくさんできて、そ
れで実力をつけてきたってのもあるんじゃないでしょうか。今、日本の景気はいい
とは言えないし、レースをするのもたいへんになってますから。スポンサーがいな
ければとても無理ですね。
GW:子どもたちのレベルではどうなんですか?
青山:子どものレース人口は増えてきましたよ。良くなってると思います。こんどは子
どもたちを育てるためのスポンサーが必要なんです。日本人のレベルは決して低く
はないんで、新たに参戦してくるのを待ってるんですが。
GW:日本のホンダからオーストリーのKTMに移籍するのは、どんな感じでしたか?
青山:日本人ライダーが日本のメーカーから他のメーカーに移るのは、あまりないと思
います。でも思ったほどたいへんじゃなかったですね。KTMの人もすごくよくし
てくれたし、あまりストレスは感じませんでした。
最初からいい結果を残せましたしね。でも2年目と3年目はツキがなかったですね。
まあ、おもしろかったし、いい経験になったと思います。
GW:ホンダが戻してくれて驚きましたか?
青山:ホンダから出たライダーは、普通は絶対戻れないんですよ。少なくとも日本人で
はいなかったと思います。だからホンダには本当に感謝してますし、幸運だったと
思ってます。
GW:今はどちらにお住まいですか?
青山:GPに参戦し始めてからずっとバルセロナです。日本に帰れるときは帰ってます
けど。例えば休みのときとかに。
GW:日本の何が恋しいですか?
青山:日本のお米ですね。
GW:チームが日本食を出してくれることはないんですか?
青山:時々、僕のためにリゾットを作ってくれるんですが、違うんですよねえ。お米は
お米なんですけど。
GW:音楽はどうです?サーキットでは何を聴いてるんですか?
青山:日本のポップミュージックが好きですね。あと名前はあんまりわからないでんす
がブラックミュージックも。あと、コールドプレイとか・・・、いろいろ聴いてま
すね。いちばん最近聴いたのはJポップですが。
GW:好きな国はどこですか?
青山:オーストラリアですね。フィリップアイランドの周りしか判らないですけど、気
に入ってます。
GW:いちばん幸せだったのはいつのことですか。
青山:(しばし沈黙)これからだと思います。
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