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地域 SNS「あみっぴぃ」の研究 A Study of the Regional Social
No.ICP-2007-008 近隣型商店街における ICT 利用 地域 SNS「あみっぴぃ」の研究† ―現実社会と仮想社会の近接効果― An Information Communication Technology Use in a Neighboring shopping area A Study of the Regional Social Networking Service 「Amippy」 -Adjacency Effects between Reality Society and Virtual Society山田 裕子* Yuko Yamada 本稿では地域情報化の流れにおいて地域 SNS が誕生するプロセスを考察するための一つのモデル・ケ ースとして、地域 SNS「あみっぴぃ」を取り上げた。現在この地域 SNS は「ゆりの木商店街」における地域活 性化の有効なツールとなりつつある。 地域 SNS「あみっぴぃ」の沿革、特徴、成長のメカニズムを明らかにするために参与観察、インタビューな どを実施した。そしてその結果を踏まえてトータルな関係性に注目し、数量分析だけでは捉えられないよう なより複雑なロジックがあることを証明した。最後に社会的ネットワーク分析を試みた。結論としてこの地域 SNS が地域活動へ及ぼしている影響を明らかにした。 This paper took up the regional SNS 「Amippy」as a model case to consider a process when the regional SNS is born. Now this SNS is becoming an effective tool for the local revitalization in the neighboring shopping area「Yurinoki」. First we executed participant observation and interview to clarify the history , the feature and the growth mechanism of this SNS. Second, we paid attention to the overall relation and proved that there was a more complex logic which could not be caught just by quantitative analysis. Third, this paper tried the social network analysis. As a result, the paper uncovered the effect which the regional SNS could give to the regional activities. March 14, 2008 情報通信政策研究プログラム †本研究は「情報通信政策研究プログラム」(ICP)の研究助成を得て行いました。林敏彦先生始め皆様のご厚意に感謝します。 本研究は峰滝和典チームメンバーらと共に行った ICP 地域 SNS 研究会で得た知見が基盤となりました。 また坂井素思放送大学准教授から貴重 な助言を受けました。本調査研究に関する誤りはすべて著者の責任です。 * Merchandise and Life [email protected] 報告書提出にあたって 地域情報化の新しい潮流としてここ数年、地域 SNS(Social Networking Service)が多くの地域で誕生した。まだ 学術的に取り扱うテーマとしては困難とはわかりつつも、われわれプロジェクト・メンバーは会合を重ね、国内外 の地域 SNS について実地調査を行い、また海外での学会報告も行った。 そのなかで山田論文の役割は、西千葉という一つの地域に焦点を絞ることで、地域 SNS の誕生と発展につい ての一つのモデルを提示することである。西千葉は、これまでにも、地域通貨を全国に先駆けて根付かせた経 験を持つ。どのような土壌で地域通貨が実際に利用されたのか、地域通貨の発展の経緯と SNS がどのような関 係があるのかについて着目したのが山田論文である。 2008 年 3 月 14 日 情報通信政策研究プログラム地域 SNS 研究会 代表 峰滝和典 1. はじめに 近年、情報通信技術は日々進歩しているが、その技術をよりよく使いこなすための研究は少ない。そこで 本稿では地域社会、特に近隣型商店街において地域 SNS「あみっぴぃ」の利用実態をみながらその可能性と限 界を考えてみよう。 「あみっぴぃ」は西千葉地域を中心に近年急速に利用され始めている地域 SNS であり、地域通貨「ピーナッ ツ」と「アミーゴ(友人)」を合成した造語である。 2006 年 1 月、千葉大学生が起業した NPO トライワープにより設 計運営されている。このトライワープは 2003 年に立ち上がっていたが、その時はすでに地域通貨ピーナッツが 導入されていた。地域通貨の活用は経済状態が困難な学生が事業を立ち上げる上で大きな助けとなった。また NPO トライワープにより初心者向け IT 講習会が開催され、地元商店街における年配者の情報リテラシーが飛躍 的に向上することとなった。地元商店街を拠点に大学で取得した IT 技術を持つ若者と経営ノウハウを有する地 元自営業者や IT 講習会を受講した地域住民の交流が進み、地域 SNS を産む土壌をつくられていった。 2008 年 2 月現在、「あみっぴぃ」の参加者は約 2000 人、ネット上には約 1250 のコミュニティがある。あみっぴ ぃはゆりの木商店街を中心にした地域コミュニティや地域経済活性化の有効なツールになりつつある。 本稿では西千葉情報化の沿革、「あみっぴぃ」の特徴、成長メカニズム、トータルな関係性などに注目した。ま たインターネット上のコミュニティと現実社会のコミュニティの双方に注目し、地域 SNS を導入したことによる効果 を推定した。最終的に「あみっぴぃ」の仲間にみる人間関係をみながら、オンライン・コミュニティとオフライン・コミ ュニティの社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の形成過程と、社会ネットワークがもたらす効果について考え てみたい。 全国展開をしている大規模な SNS はネット上の情報交換に終始する傾向があるが、このあみっぴぃは、ネット 上の情報交換が現実社会の活動に結びついている。参加者は近隣地域に暮らしていることが多いことから実際 の出会いが容易になり、あるいは出会いがあることから信頼性が成り立ちやすく、地域の活動に結びついていく と考えられる。この仮想世界と現実世界の連動する働きを本稿では近接効果と呼んだ。 以下 1 では問題、仮説、検証方法を記し、2では西千葉の情報化の歴史をみながら「あみっぴぃ」の誕生と発 展の背後にある要因について考察した。次に3では「あみっぴぃ」の概要をさらに詳しく分析し、「あみっぴぃ」が 地域コミュニティ、地域経済活動、市民政治の関心などに与える影響について、4では「あみっぴぃ」の社会ネッ トワーク分析を試みた。最後に結論と今後の課題及び展望について述べた。 1 1.1 問題と目的 1.1.1 地域コミュニティと商店街の衰退 現在日本は少子高齢社会である。地域の中で生活する人々、特に子どもや高齢者にとって徒歩や自転 車でいくことのできる一番身近に位置する近隣型商店街1の再生は緊要である。また商店街は多種多様な 人々が集まる地域コミュニティの中心であり地域経済の中心である。 地域商店街の衰退の大きな原因の一つは自動車の発達であった。自動車産業をはじめ各産業分野の大 量生産技術の発達は飛躍的に消費経済発展させ、流通小売業に変化をもたらした。自動車の発達による 輸送費の大幅な低減により、生産物は国内外各地からどこからでも流通するようになった。また経済成 長による市場が拡大し、多くの大型小売業店舗やチェーンストアが誕生し、商店街は衰退していった。 1.1.2 自動車と IT にみる新技術のリスク 新技術の導入期において、新たな効用とともに新たなリスクが生まれる。自動車の出現による商店街 の衰退は予想できただろうか。まちの中心部は車道により切り刻まれ分断され、多くの商店街路は人間 が歩く道から、人間のとっては危険で広すぎる車道にとって変わってしまった。自動車の発展はまちの 境界を弱め、集積する要素を自動車による運搬とともに拡大してしまった。また自動車の発達はまち周 辺の宅地開発や自然環境破壊に拍車をかけた。 近年、IT の発達の場合はどうだとうか。いつでもどこからでも買えるインターネット販売が急増し、購買スタイル も若者を中心に急速に変化している。インターネットの利用により効率的に処理しきれないほどの莫大な情報が 容易に獲得できるようになった。パソコンの活用はビジネス現場から地域に確実に広がり、携帯電話は若い人々 から急激に普及している。これらのツールにより地域社会のコミュニケーションはどのように変化するのか。 1.1.3 あみっぴぃの仲間にみる豊かな人間関係 私たちの生活を真に豊かにする ICT 利用とはどのようなものか。地域に生活する人々にとって豊かな 生活とは、経済的生活が安定していることと精神的豊かさである。精神的豊かさとは心が通じあう適度 の仲間とのコミュニケーションが重要であることはみなが認めるところだろう。また現在は安心、信頼、 互助性という精神的側面がより強く求められるようになっている。これは社会関係資本(ソーシャル・ キャピタル)と呼ばれるもので地域に生活する人々の精神的絆を強めるような、見えざる資本である。 社会関係資本の形成は経済発展や社会的効果を最大限に発揮する条件であるかと思う。 本稿ではあみっぴぃのインタビューや新聞掲載記事、ウェブサイト掲載内容をみながら、この社会関 係資本に関連すると思われる感想や意見を紹介する。そして社会関係資本の形成にはどのような要因が 関連しているかを考える。 1.1.4 地域 SNS が成功する複数の条件 地域 SNS による地域コミュニティの活発化や地域経済活性化が進展する条件を総合的、複合的関連 性の中で考え、問題点を抽出し、地域 SNS の地域及び近隣型商店街における役割について示唆を得たい と思う。 1 近隣型商店街 都市計画法第 8 条に定める「用途区域」のうち、商業地域及び近隣商業地域であって、商店街を形成している地区をいう。一 つの商店街とは、小売店、飲食店及びサービス業が近接して30店舗以上あるものをいう。日本においては都市計画で使用されて いる商店街の4分類のうちでもっとも住宅地に接近した商店街として「最寄品中心で地元主婦が日用品などを徒歩または自転車な どにより日常性の買い物をする商店街」と定義されている。ここでいう4分類とは近隣型、地域型、広域型、超広域型である。商店 街とは不特定多数の人々に開かれた街路、多数の小売店舗で構成され、人々に来街の理由を与え、人々の欲望を開放する街路、 それが商店街である。 近隣型商店街は周辺住民の消費活動の場としてだけでなく、近隣地域の人々との交流の場として地域の コミュニティ形成の中心を担っていた。ところが近年の近隣型商店街の衰退の結果、地域住民の商店街の利用は低下し、住民同 士の交流の場が失われ、地域コミュニティの衰退を招いた一要因となっている。 カリフォルニア大学バークレー校環境デザイン学部建築学科教授(1987 年当時)C・アレグザンダーによれば 7000 人のコミュニ ティ規模が人々にとって自分の帰属すべき空間単位として必要であり、見分けやすい近隣として機能し、生命を与える活力や特質 を生み出すような小人間集団であるとして定義している。(パタン・ランゲージ pp43~pp48) また近隣にとって、境界の力はきわめて重要であり、弱すぎると、近隣の存在を明らかにする個性が維持できないとしている。近 隣住民は、自らの組織で市役所や地区政府に圧力を加え、自分たちの利益を守らなければならない。つまり公益事業や共有地な どの基本的な決定事項について、近隣内の各家庭に合意が可能でなければならないため適正人口は 500 内外とみなしている。ま た他の学者によってもコミュニティ集会の運営結果によれば最も現実的な数字は 500 人になるという。 2 1.2 仮説 あみっぴぃの参加者は現実社会の多様性を反映している。参加者の多くは近隣地域のという現実社会のある 一定の領域(地域)に属している各年代の多種多様な人々で構成されている。その地域に点在する参加者は商 店街を中心に集い、交流し、活動する。多様性が地域 SNS というネット上のコミュニティに反映し、参加者同士は ICT を利用しコミュニケーションを活発にし、そして現実社会の活動を活発にしている。 西千葉地域における情報化は隣接している大学の教師や生徒により推進されている。新しい技術や知の資 源が地域にある経験と知恵を融合され、さらに新しい知恵、アイディア、パワーを産みだしている。このような新た な複合的効果は信頼性が形成されている土壌において最大に発揮すると思われる。 ネット上に参加している外部地域の参加者がこの SNS を利用しながら効率的にネット上のコミュニケーションを 活発にし、繋がりを広げている。外部のコミュニティの異質な人々と繋がることにより、異質な知恵がさらに影響し 合い、効果を増大している。 ここでは次のような仮説を設定し検証を試みる。 ・ 接近効果:仮想社会である地域 SNS 内のコミュニティは現実社会であるゆりの木商店街のコミュニティを反映 している。また仮想社会と現実社会の接近は実際の活動にとって効果的である。 ・ 多様性:ゆりの木商店街を中心に地域の人々、大学生、他の地域から視察、訪問、研究など多様な人々が集 っている。この多様性は仮想世界のコミュニティに対応し、コミュニケーションを活発化する一因である。 ・ 複合的効果:多様な要因、例えば大学の人材・知識・技術、地域に点在する様々に人、インターネットで 繋がる地域外の人、マスメディア、行政の支援などが関係し、複合的効果を産み出した。 ・ ネットワークの拡大:社会ネットワークの視点では、オフラインの場によって強い紐帯がもたらされ、異質性の ある人は、弱い紐帯をもち、ネット上のコミュニティケーションにおいてより効率的に広がりを伴い別のネット ワークと結びつける。 ・ 信頼性が形成されている環境において、最も効果的に効率よく地域活性化が推進する。地域 SNS は信頼の 形成においても有効なツールとなる。 1.2.1 あみっぴぃの成長メカニズム ゆりの木には事業創造の条件、つまり信頼関係の土壌の上に地域内外からの多様な人材、大学の人・知・技、 社会の注目、地域通貨や助成金などによる資金などの条件があったと思われる。 地域 SNS「あみっぴぃ」2は現実社会と仮想社会が重なりあった実態として存在している。仮想世界あみっぴぃ 内のコミュニケーションは商店街における活動に影響し、地域の人々を中心に各種の活動を促している。IT 利 用の経験のない地域住民、高齢者、主婦、商店主などを対象にして超初心者用パソコン教室、地域通貨の利 用、各種イベント、オフ会に参加しながら住民との交流は深まり、信頼関係が育っていった。このような人間関係 の基盤にして「あみっぴぃ」は立ち上がった。 また「あみっぴぃ」の設計・運営者(NPO トライワープ)の立ち上げ時に、招待したのは意識的に高齢者を優先 的した効果も大きいと思われる。あみっぴぃの理念は現実社会の活動を重視し、その補完約役割に留めたとこ ろに特徴がある。その実現のために具体的ルールやデザインにおいても数々の工夫されている。その結果、 人々の間に信頼という土壌が形成され、その土壌に芽生えた多彩な知恵が、年代を超え、地域を超え結集し 数々の現実社会の活動になっている。地域に点在する多様な住民、大学生、大学の専門家などによる複合的 効果が出現したようである。またこれは現実社会と仮想社会が接近していたために現れた近接効果3と呼ばれる と思われる。 2 「あみっぴぃ」の最初のページ http://amippy.jp/?m=pc&a=page_h_home 近接効果(Adjacency Effects)あるいは隣接効果(Neighborhood Effects)と呼ばれる。 例えば隣接効果は水田における米の生産に見られるように地理的に隣接した地域で用いられる。あるいは言語などにも用いられ る、隣接効果により語彙的・文法的・音韻的な特徴を共有していく傾向があること。隣接効果によって、言語連合が形成される。 本稿ではネット上のコミュニティが現実社会に反映されている様子を「現実社会と仮想社会の近接効果」と表現した。 3 3 ●公的支援、助成金 西千葉地域 外部の地域 A ゆりの木商店街 外部の地域 ●地域通貨「ピーナッツ」 あみっぴぃ ●NPOトライワープ「超初心者IT講習会」 B 地域密着型SNS ●地域通貨支援事業「花」化粧品 ●NPO千葉まちづくりサポートセンター 千葉大学(人・知・技) ●地域連携・産官学連携活動・異業種交流 ●千葉大学OBらによる起業講座開講 情報の流れ ●地域活動家による千葉大学での講義 ●外部からの視察・訪問・観光 人の流れ ●マスメディアによる情報発信 図 1-1 あみっぴぃの成長メカニズム 1.3 検証方法 地域の活性化に影響を与えたキーパーソンを選定し、キーパーソンを中心にした人間関係に注目した。西千 葉ゆりの木商店街での活動ととなりまちの著者の地元での地域活動を共にしながら参与観察を実施した。また 地域活性化のキーマンといえるあみっぴぃの参加者へのインタビュー、新聞や雑誌に掲載された記事、地域 SNS 運営者提供のログデータグラフなど、可視化したサイトより情報収集、関連サイトの観察等の活動記録を整 理しながら、地域 SNS が誕生するプロセス、成功する条件、地域への影響などのトータルな関係性を考察した。 最後にあみっぴぃのキーパーソンを中心にした社会的ネットワーク分析を試みた。 2. 西千葉情報化の歴史 写真 2-1 ゆりの木商店街 2007 年 9 月撮影 写真 2-2 ゆりの木夏祭り ゆりの商店会写真提供 4 2.1 ゆりの木商店街の概要 まずあみっぴぃが誕生した西千葉情報化の沿革とゆりの木商店街の概要を辿った。以前はゆりの木商店街も 日本各地にみられるように衰退の危機に直面していた近隣型商店街のひとつであったようだが、現在は多くの 人々の協業により地域活性化が行われている最中である。 この地域活性化の有効なツールとして地域 SNS が利用されている。数々のオフ会や活動が効率よく情報を交 換し成り立っている。 ゆりの木商店街には千葉大学の人・知・技の影響や地域通貨による人間関係、多様な人々を受け入れる商 店街リーダーの存在、地域通貨の導入、コミュニティービジネスともいえる地域通貨支援事業がすでに始まって いた。 2.1.1 千葉市商店街連合会4への登録 1997 年 11 月、ゆりの木商店会が海保眞氏らにより設立され千葉市商店連合会へ登録された。千葉市におい ても商店街を衰退しており、商店街連合会は縮小傾向にあり、退会する商店会は相次いでいた時の新規登録 であった。ゆりの木商店会は会員数 30 店舗、所在地は JR 西千葉駅、北口ふくろう広場から千葉地連前交差点 にいたる 300 メートルの片側商店街である。近隣施設には千葉大学、千葉大学付属幼稚園、千葉経済大学、東 京大学生産技術研究所などがある。 2.1.2 店舗構成 一般住宅地にある商店街と異なり近隣に学生を多いことから、学生のニーズに対応した店舗構成になってい る。また周辺には高齢者が多い住宅地域となっている。店舗構成はレストラン、食堂、喫茶店、不動産屋、美容 室、自転車屋、楽器専門店、IT 講習会場と IT 起業の事務所、歯医者、ケアサービス、皮細工専門店、衣料品 店などである。IT 起業は学生が運営している IT 講習会の利用者は地域住民であることが多い。 店舗構成の特徴は学生に対応した安価でボリュームのあるメニュを用意したレストラン、食堂、喫茶店などで あり、コミュニティの場としてもよく使われている、あみっぴぃのオフ会などもよく開かれている。徒歩 5 分ほどのと ころに日常的な最寄品店であるスーパーマーケット、八百屋、薬屋、などがある。この商店街の特徴は現在の一 般の商店街の要素に付け加える必要があるコミュニティが存在する。 ゆりの木商店街にあるふくろう広場では第三土曜日に青空市が開かれている。千葉県産無農薬野菜、漬物、 地元手打ちうどん、近所の主婦が作ったパン、クッキー、惣菜、学生たちの手による焼き鳥、ドリンクの販売、わら 細工など生産者や主婦などが自由に参加し出店しにぎわっている。また大学生サークルによる絵の展覧会、写 真展、絵葉書販売、落語寄席、音楽ライブなどのイベントも行われ単なる市場ではなくイベント会場としても人々 が集まり、あみっぴぃ参加者の顔合わせの機会でもあり、地域通貨ピーナッツが利用せれる現場である。 2.1.3 ゆりの木商店街と地域通貨ピーナッツ ゆりの木商店街の地域通貨導入についてはピーナッツ起案者が千葉大学都市工学教授に相談をしたことか ら始まる。その橋渡しをしたのが現財団法人、千葉市産業振興財団鈴木副理事長であった。初代代表の遠藤 安弘千葉大学教授(当時)は NPO 千葉まちづくりサポートセンター5を立ち上げ、地域のまちづくりを推進するシ ンクタンクとして活動を開始した。当時の様子がピーナッツ通信第44号 2008 年 1 月 1 日発行の会報―運営委 員コラム“ピーナッツ通信”にみることができた。 2.1.4 2008 年 1 月 1 日 NPO 千葉まちづくりサポートセンター会報「ピーナッツ通信」掲載記事 この回想において二点が重要である。「アミーゴ!アミーゴ!」と言って握手をして笑顔になる。人間との繋が 4 千葉市商店街連合会 http://www.chiba-shopstreet.com/member/thuou_ku.html NPO 千葉まちづくりサポートセンター(通称:ボーンセンター) まちづくりのシンクタンクとして千葉市を中心に数々のプロジェクトで成果を上げている。初代代表は都市計画の専門家 である遠藤安弘千葉大学教授(当時)、現在代表は千葉大学都市工学科福川裕一教授である。著者は 2006 年度よりこの 会のメンバーである。 5 5 りにおいて直接出会うことにより、五感を通して得られる情報は膨大であり、皮膚と皮膚とが触れ合うことにより新 密度は文字を通して得られるものとは次元が異なる意味を持つ。 また役職を超えて 1 人の人間として対等な立場で交流することが重要である。ここに地域通貨ピーナッツが持 つ見えざる絆を強める仕掛けと水平的ネットワークの構造をみることができる。この要素は社会的関係資本の重 要な構成要素である。地域通貨ピーナッツはこのように社会関係資本を生み出す仕掛けを持っている。以下地 域通貨導入時の回想を具体的に紹介する。 『2000 年 6 月ボーンセンターの設立総会があった。まず中心人物である千葉大学教授がまちづくりについて 説明し、続いてゆりの木商店会長(当時)が地域通貨ピーナッツについて話した。当時ピーナッツはスタートした ばかりでどのように話したら言いか戸惑ったという。覚えていることは「アミーゴをする(握手と目を見て、笑顔で)」 を全員で立ち、みんなにやってもらった。「アミーゴ!・・・アミーゴ!」と大きな声で笑いながら握手。初めての人 たちとは思えないほど、和やかになったそうだ。当時の出席者は専門家、政治家、市民運動家、みちづくり人、 公務員、農業、大学教授など多様な人たちの集まりだった。』 2.1.5 2008 年 2 月 8 日のブログ掲載記事 多様な人の集まりを西千葉ゆりの木商店街のリーダーである海保氏は次のように回顧している。 地域通貨ピーナッツが誕生したころの会合に集まってきた人々は類型的にみると地元商店街の店主、他地域の 商業者、各種 NPO 法人、地域活動家、政治化・行政の方々ト、西千葉外部から来た異質性を持ち新たな可能 性を運んでくる専門家、最先端の人・知・技を持ち地域活性化に取り組む大学関係者・大学生のサークル、地 元住民・地域に住む主婦などであり、そのまま地域のメンバーが参加しているような会であったようだ。 以下では具体的に 2008 年 2 月 8 日の海保さんのブログ6から抜粋したものを紹介する。 『1999年に村山さん。「株」みんなのまち」地域通貨ピーナツクラブの設計、運営者でピーナツクラブ西千葉 の尊敬するリーダー、そのご縁で専修大学准教授「泉さん」 村山さんを紹介してくれた「現財団法人、千葉市産業振興財団の副理事長鈴木さん」財団の社員の皆さま。ピ ーナツクラブ西千葉「代表、木村さんとメンバー1500名」 NPO 法人、千葉まちづくりサポートセンター初代代表「延藤教授」サポートセンターのメンバーの皆さま、・ゆり の木商店街の事業者の方がたと西千葉ネットワーク・壁の穴、ぎやまん亭、JIRO、蛸銭、セオサイクル、元宮本 靴店のおばちゃん、生香園、センヨーホーム、ゴットマザー、藤光土地、サカイ土地、榎本畳店、鈴鹿園、ふさ元、 原田クリーニング、篠原旅館、花時 計、花手毬代表鈴木さん。いこいホテル、ワークホームキッチン円と運営委 員会、福祉法人でいさくさべ、イデズカ生活デザイン事務所、理容イシマツ、アミー ゴジャパングループ「美容 室 MADOKA とまどか歯科医院、デイサービスアミーゴ、ケアマネージャー事務所アミーゴ、アミーゴジャパン販 売」レストラン陽 菜、茂原ジャンゴ、ギャラリーエルガティート、花の小道、沙羅の会、自衛隊千葉地連事務所、 アミーゴを教えてくれた「田畑さん」・市民ネットワークの皆さま、キッチン虹、市会議員、県会議員、国会議 員・・・6名、第3土曜市関係・・・わら細工店、讃岐うどん「うーどん」、熱田農園、九十九里フアーム、パン教室 「あながわ」、てづくりシフォンケーキ店、コスモスグループ、白井さん、 西千葉のアイドル「松尾貴臣」、シンガーソングライター白川和也、オフイスちあ「木戸さん」、オールツギャザー、 八木新聞グループ、田村さん、高崎さん、柳沢さん、環境ネット、サロン花園グループ、松尾圭さん、きんたさん、 北村さん、ローラ英会話教室、IT 企業「かっぺ」、スタジオこころ「岡野さん」、まちいろぐみ「大隅さんと仲間達」 協働連携「千葉大学、千葉経済大学、千葉市経済振興課、緑成課、千葉県産業振興センター、千葉県商工労 働部、」WAC、・千葉大学絵画同好会、NPO 法人企業教育研究会「ACE」、ユナイテッドスポーツチバ、デザイン 科「MOF」、落語研究会、モダンジャズ研究会、再転車活用委員会、大学祭実行委員会、西千葉名人会、漫才 グループ、るつぼ計画、 千葉大学教授「福川、清水、徳山、落合、藤川、広井、斎藤、他」千葉経済大学准教授「粟澤」・・・NPO 法人 「トライワープ」、トライワープソリューション「虎岩代表とメンバーの皆さま」、あみっぴぃ「メンバーの皆さま」みほり ん、くにさん、せきさん、うるいさん、くうさん、のむさん、すいーとぽてとさん、ひまわりさん、ついきさん、164さん、 メンバー1970人のみなさま」 地域交流・・・高知「ゆうさん、さえ子さん」、名古屋雁道「吉川さん」、まちの縁側はぐくみ隊、戸塚善了寺、宮城 登目ポートン、大牟田「中村さん」、茅ヶ崎、三島、秋田大仙市余目、新潟十日町小林さん、軽井沢 淵上さん、 6 海保氏のブログ http://blog.goo.ne.jp/amigo-kaiho/e/3bf0504bb70d4e0bc5e9dd987e053a98 6 より抜粋 一宮 望月さん、夷隅 渡部さん、鹿児島、国武さん。長崎 松尾さん。五十崎町、壁の穴 斎藤さん、本間さん。 千葉大学卒業生メンバー一同・・・ ここに書ききれない、大勢の支援をして頂いている皆様・・・村山さんからスタートした人のつながりは、未来の福 祉コミュニティを育んでいきます。 新しい時代の夢づくりメンバーの紹介です。 アミーゴ』 海保さんのブログや村山さんのブログから読みとれるように、ゆりの木商店街の活性化が本格的になった一因 は外部から来た地域通貨ピーナッツの起案者と初代商店会長との出会いに始まる「異の融合」であった。また海 保さんの地域活性化における貢献は数々あるが、特に優れていることは人間関係作りだと思う。海保さんの「来 る者を拒まないで、仲間に取り込んでしまう」ことにより多様性と近接性から生まれる人間活動の集積と想像力を 産み出す宝を手にしている。海保さんに繋がっている人々は西千葉を中心に実に多くまた異質な人々である。 完全にオープンであり、異質の人々も同質の人々も公平に受けいれ多様化をもたらしている。この姿勢がゆりの 木の多様性を可能にしたのではないかと考える。 2.1.6 2007 年朝日新聞掲載記事7 『千葉市 サイバーの中のリアル・・西千葉の街おこしイベントに集まった、「あみっぴぃ」のメンバーたち= 2006 年 12 月 16 日撮影」という見出しで始まっている。その時の取材であみっぴぃについて「知り合いの人同士 を、より深く結びつける。あくまでリアルと結びついている関係を目指す」と語った。美容室「MADOKA」は、ぎ やまん亭から約50メートル。オーナーの海保真さん(65)=同・あみーご=は、ぎやまん亭が開店した18年前か らの常連だ。店に入れば「チャンポン」「ギョーザ」と声をかけ、新聞かマンガを取って席に着く。そして「ごちそう さま」。そんなつきあいが、最近少し変わった。 「前から気になってた」と海保さんが言い出し、2人で店のコンクリートの床を、ユリノキの葉の模様に塗り替え た。「あみっぴぃで、互いの隠れた部分を知ったから、おせっかいもできた」と海保さん。石川さんも「‘客’から‘仲 間’になった」と話す。』 この記事はあみっぴぃを利用したころにより、人との繋がりに変化がでてきたことを表している。あみっぴぃを利 用した客が仲間に変化し、信頼関係が深まる様子が伺える。さらに地域通貨に関して記事を紹介する。 『西千葉の地域通貨「ピーナッツ」。これを使う時、利用者は店の人と握手をし、「アミーゴ」と合言葉を言う。こ れにちなんで、名前は「あ みっぴぃ」。立ち上げと同時に海保さんも会員に。直接知っている会員数は130人を 超す。街を歩けば「昨日のブログ、読みましたよ」と声がかかる。昨秋に は、「まちあるき隊」が2カ月がかりで西 千葉周辺の約750店を取材、あみっぴぃで公開した。これを含めた西千葉の街 おこしの取り組みが、あみっぴ ぃ上の情報交換で広がる。その活動の成果を発表するイベントも、年末に開かれた。 移り変わる街を見ながら、 しかし今ほど、新たなつながりの予感を覚えたことはなかった。ブログは5月で丸3年。でも、その先も、やめそう もない気がしている。』 現在でも海保さんのブログにはゆりの木商店街のできごとや地域活動に関する意見、事業に対する思いなど がほとんど毎日書かれている。 このサイトを訪れる人々に与える影響は測ることはできないが、訪問者の何人 かはサイトを見るとほっとしたり、元気をもらったりすると感想を述べている。実際の海保さんを思い浮かべること ができ、海保さんの活動を知っていることがその安心感に繋がっているように思う。また海保さんの友人ならば直 接知らなくても安心であるということもあり、人間性の品質基準ともいえるものが存在しているように思う。 このことはあみっぴぃ全体にも言えることである。友人アミーゴは原則として面識があり、登録には実名を使用 し、地域で会うこともできる。あみっぴぃに参加している人の信頼性は高くなっている。このことは日記からも伺い しることができた。 7 朝日新聞掲載記事 http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000330701020001 より抜粋 7 表 2-1 西千葉情報化の沿革 1997 年 11 月 1998 年 4 月 1999 年 2008 年 2 月 現在 2007 年 4 月 26 日 2007 年 11 月 23 日 千葉市商店連合会65番目登録、当時及び 2008 年現在最新登録商店会 ゆりの木通り、花と緑のプロムナードづくりスタート 7 月ゆりの木夏祭りスタート 地域通貨「ピーナッツ」構想 地域通貨起案者(隣の市津田沼在住)からゆりの木商店会長(当時)に提案 地域通貨ピーナッツが小切手型で開始 9 月に通帳型導入 地域通貨ピーナッツ利用開始、第一号利用店はゆりの木商店会の美容室 NPO 法人・千葉まちづくりサポートセンター(ボーンセンター)設立総会 IT 起業家と商店会長の会談 千葉大生 6 人による NPO トライワープ IT 起業 地域通貨による地域内循環経済の実施 地域通貨をファンドとして利用。家賃を地域通貨 5 万ピーで商店街に事務所設置 商店街の各種イベント活動に協力し労働力で地域通貨を獲得し家賃費用を返却 朝日新聞掲載:トライワープ「千葉大生がパソコン教室」 地域通貨支援事業「花」化粧品発売開始 SNS 大手ミクシィが新聞に掲載、地域 SNS 構想 地域 SNS「あみっぴぃ」プレオープン、NPO トライワープにより運営開始 地域住民や講習会の生徒を優先的に登録 「あみっぴぃ」オープン 一般ユーザ受け入れ 日本経済新聞掲載: 「交流ネット 大学地域限定 商店街活性化に一役 千葉大生 NPO が開設」 日経産業新聞掲載:「千葉大生が運営の NPO 地域 SNS 開設 商店街活性化にも活用」 朝日新聞掲載:「『西千葉』 サイトで交流・千葉大生ら開設、商店・住民も活用」 イベント:西千葉アイドル祭り 日本経済新聞掲載:「ユニーク企画で街おこし・NPO や商店街連携」 朝日新聞掲載:「音楽で世代を超えた交流を・西千葉のアイドル祭り」 あみっぴぃデザインリニューアル (財)千葉県産業振興センター地域生活創造ビジネスソーイング事業「アイラブ西千葉」観光 事業プロジェクトを受託 アイラブ西千葉キックオフパーティ開催 朝日新聞掲載:「観光地・西千葉に来て」 イベント:アイラブ西千葉タッチダウンとして第一部報告会、第二部ダンスパーティーを実施、 日本経済新聞掲載:「変わる街のきずな・心伝えて客が仲間に」 朝日新聞掲載:「変わる街のきずな 共感から愛着へ 千葉市 サイバーの中のリアル 西千葉」 日経流通新聞掲載: 「人や商店に連帯感、現金が消える日、変わるマネー 奉仕活動で商業活性化」 千葉日報掲載:「起業講座スタート 千葉大生に OB が講義」 読売新聞全国版掲載:「つながる SNS 地域交流を後押し」 2008 年 1 月 ピーナッツクラブ西千葉(代表:木村保蔵)会員 1500 名 1999 年 2 月 2000 年 4 月 2000 年 6 月 2003 年 2004 年 12 月 2005 年 2005 年 2006 年 1 月 2006 年 2 月 2006 年 2 月 8 日 2006 年 2 月 14 日 2006 年 5 月 30 日 2006 年 6 月 2006 年 6 月 10 日 2006 年 6 月 25 日 2006 年 8 月 2006 年 9 月 2006 年 9 月 28 日 2006 年 12 月 9 日 2007 年 1 月1日 2007 年 1 月1日 2007 年 1 月 5 日 2008 年 1 月 26 日 2008 年 2 月 2008 年 2 月 29 日 西千葉・ゆりの木商店街を中心としながら、活動範囲拡張、他地域との連携 サンケイリビング千葉掲載:「挨拶ができる町を目指して千葉大生がスタート」 「あみっぴぃ」の参加者は 2000 人を突破し、コミュニティの数は約 1250. 業界誌ふれあいねっと掲載:「地域で生きる、地域を拓く、ピーナッツクラブ西千葉」 地域SNS全国フォーラム「地域 SNS と地域通貨の未来」において西千葉ピーナッツの紹介 ・この沿革は新聞記事、ゆりの木商店街が作成したパンフレット、NPO トライワープ提供の資料、インタビュー、 関連サイトの記事などを参考に作成した。 8 2.2.1 千葉大学の概要 訪問場所:千葉大学学長室 訪問日時:2008 年1月 18 日(金)13 時~13 時 40 分 訪問者:山田裕子 対応者:古在豊樹千葉大学学長 ヒヤリング内容:地域連携及び産学共同事業政策について 千葉大学の存在はあみっぴぃの誕生と発展に大きくかかわっている。ここでは千葉大学についてその影響を 与えた要因についてあるいや地域連携について千葉大学学長にインタビューをした。 このインタビューでいままでの地域連携に経緯と古在学長の行動の背景にある理念をお伺いした。 2.2.2 千葉大学キャンパス 西千葉、亥鼻及び松戸・柏の葉の 3 地区に分かれているが、西千葉地区は総武線西千葉駅前の千葉市稲毛 区弥生町に 39 万 m²に及ぶメインキャンパスが置かれ、ここに大部分の学部その他の施設が集中されている。ゆ りの木商店街はこの西千葉地区のキャンパスに隣接している。 2.2.3 大学の地域連携政策 千葉大学では, 地域貢献型センターや産学連携統括推進部を設置しイノベーションフォーラム、イベント、 研究発表会、説明会などを進めている。 学長自ら地域との交流、地域連携を実行している。千葉大学では大学出身起業家による「起業論入門」講座、 千葉大 OB 社長からのメッセージ」を企画し開講した。 地域との連携を推進するため,平成18年4月「地域連携推進企画室」を設けている。 地域と大学との連携・協力についての相談窓口を通し、相談の内容に応じて,関連する組織や教職員との連絡 調整を行っている。ウェブサイトに大学との連携や地域への協力要請のお問い合わせ先を明記している。8 2,2,4 古在学長の理念と行動 地域連携を進めるため古在学長は自ら地域の集会に参加し、地域の方々との交流を進めている。この古在 学長の行動の指針となる理念についてみてみよう。 千葉大学古在学長が唱えるグローナカル(glonacal)な視点とは古在豊樹学長自身の記載よると 『21世紀に おいては、人々が「グローナカル」な視点を重層的かつ双方向的にもつことが、持続的な福祉社会の実現に効 果的であると考えられます。 「グローナカル」は、グローバル(地球的)、ナショナル(国・国民的)、ローカル(地 域的)からなる合成語です。「グローカル(グローバル+ローカル)」でなく、「ナショナル」を加えたのは、第一に、 法律や制度などの社会システムの大半が現実には国単位で定められているので、グローバルな視点から一足 飛びにローカルで活動するのは困難なことが多いからです。第二に、国境のある国々を繋ぐインターナショナル (international, 国際)を意識してもらうためです。 他方、グローバルは、インターネットの世界のように、ボーダレ ス(borderless)な概念であり、国境を意識させません。したがって、national, international, global の視点はおの ずから異なってきます。また、「重層的かつ双方向的」とあるのは、地域で行動する際に、地域を基点として国と 地球を貫いている共通性と多様性に注意し、同時に、地球を基点として国と地域を貫いている共通性と多様性 に注意しつつ活動すること、さらには、国および国際(国境を隔てた国々)を基点として域と地球の共通性と多様 性を配慮する必要性を示しています。 21世紀には、心身の健康および幸福感と生きがいを増すことにより人々 の生活の質を向上させ、持続的福祉社会を実現する仕組みを構築し、大学のキャンパスおよび周辺の地域社 会において、これをまず実現することが重要になります。この仕組みの構築と実現にはグローナカルな視点が必 須となると考えられます。』 古在学長はゆりの木商店街で開かれるオフ会に時々顔を出している。10人足らずの集まり出かけて行ったと いう。また地域のリーダーは千葉大学学長室をたびたび訪問し、学長と懇談する機会を得て親交を深めていた。 また学長は地域で活動家が大学構内で地域について学生に話しをする機会を設定した。学長は地域連携を自 ら実践している。 千葉大学 http://www.chiba-u.ac.jp/index.html 8 9 2.3.1 地域通貨「ピーナッツ」9 問場所:ゆりの木商店街イタリアンレストラン壁の穴 訪問日時:2007 年 8 月 28 日(火)15 時~16 時 訪問者:峰滝和典、山田裕子 対応者:地域通貨ピーナッツ考案者村山和彦 ヒヤリング内容: 地域通貨ピーナッツの導入・仕組・効果 写真 2-3 地域通貨のマーク 2.3.2 写真 2-4 地域通貨扱い店 地域通貨の誕生10 地域通貨ピーナッツはどのような経緯で誕生したのだろうか。起案者である村山和彦のブログに次のように書 かれている。 『芋虫の時から蝶々になる展望を持つ事、減価させる事、会費ゼロであること、コミュニティービジネスとして再 出発することを書きました。それにも増して大事なのが、アミーゴ!です。多分アミーゴ!握手!ハグ!が無けれ ばピーナッツは 1000 人まで大きくならなかったでしょう。海保さんもやる気にならなかったと思います。・・・・・人と の関わりを密にする為にスキンシップが必要と考えたのは、両親の介護をしている経験からです。』 このような 発案者の体験によりアミーゴという握手やハグは日本にない習慣であったがユニークなルールとして地域通貨ピ ーナッツに組み込まれていった。他の地域通貨と異なり人と人との繋がりとくにぬくもりを大切に考えているところ が使う人にとって一番の特徴である。 地域通貨「ピーナッツ」の利用実態をヒヤリングと観察、各種の記事によりみてみよう。私が数年前にこのゆり の木商店街を訪問したときはピーナッツがどこでどのように使われているかわからなかった。一昨年ゆりの木のリ ーダーと出会い、地域活性化に熱心に取り組んでいる姿を見、地域活性化に利用するというピーナッツを知る 機会を得た。一手間かかるので忙しいときは使用せずパスしていまこともある。その後ピーナッツ会員になり、何 回か訪問して顔見知りになるとピーナッツを利用するのが楽しみになった。まず地域通貨を知るにはある程度の コミュニケーションが必要不可欠であった。店頭の地域通貨のチラシ見てコミュニケーションにきっかけを作る場 合もあるようだ。地域通貨を利用するときに握手をするリールがるが、スキンシップと笑顔により雰囲気がよくなり、 ますます人が集まるようになっていく。 2.3.3 地域通貨ピーナッツの定義 さてここで地域通貨「ピーナッツ」の定義についてピーナッツの起案者よる定義をみていく。 ・ 地域通貨は、自ら閉空間を造る境界があることを前提である。 千葉県での使用に限定。 ・ 地域経済の活性化に役に立たないといけない 。 ・ 自らよりも弱い地域、弱い国家に対して救援のシステムを内在させていなければならない。 ・ 需要があって始めて供給が起こり、次いで地域通貨が機能し、交換が終わった時、 資産とならないものを地域通貨と言う。 ・ 他人よりも利益を上げようとするのではなくて、共に助け合って生きるシステムが地域通貨である。 この地域通貨ピーナッツを利用することにより地域の互酬性が発生し、信頼関係を築きあげる上で有効である。 ゆりの木商店街活性化における重要な要素となった地域通貨ピーナッツは外部のまちづくりの専門家によって 提案された。その提案を受け入れた体質は異質性を柔軟に吸収する蓄積する大学の知の獲得にも影響された ように考える。 2.3.4 利用実態 地域通貨ピーナッツの利用実態を村山氏の資料から紹介する。 ・通帳(大福帳)かIT決済で取引を記録する。 ・地域通貨ピーナツは目に見えないもの、お札やコインがあるわけではない。ピーナッツクラブカード有 ・地域通貨ピーナッツ自体には価値がない。どんどん使う、借金が増えるというわけではない。 9 地域通貨ピーナッツ http://www1.seaple.ne.jp/murayama/definition.html 10 地域通貨ピーナッツに関するブログ http://blog.goo.ne.jp/lets-peanuts/m/200504 10 ・使った時に「アミーゴ」と言って握手する。ちょっと照れくさいけど、ほとんどの人が笑顔になる。 ・わからなくても、まずつかってみる。(あみっぴぃも同じ) ・ピーナッツ会員になると利用できる。入会費無料。 ・運営資金は「花」化粧品の売り上げの一部(一個につき 300 円)を当てる。 2.3.5 地域通貨の使用例1 消費者の利用 訪問場所:ゆりの木商店街ぎやまん亭 訪問日時:2007 年 8 月 28 日 13 時~15 時 訪問者:峰滝和典、山田裕子 対応者:ぎやまん亭店主と奥さん ヒヤリング内容:来店するお客様の地域通貨ピーナッツ利用について ゆりの木商店街の中心にある中華料理店主と共同経営している奥さんは地域通貨の導入を理解し、最もよく 協力している。この店主や奥さんに地域通貨を使い始めて変化したことについて尋ねたところ、笑顔が増えたこ とを挙げている。また来店客の一割は地域通貨を利用している。地域通貨を利用し「アミーゴ」言いながら握手 する。 地域通貨を使うお客から笑顔がこぼれる。この効果は通常の通貨の利用では得られない。現在は地域 通貨の決済に電子決済と通帳の双方を使用している。(写真下)はピーナッツ会員の M さんがお店の奥さんに 教わりながらパソコンでIDとパスワードを入力しているところである。このように店にカウンターに置かれ、始めて のお客にも簡単に利用できる。 お客様のピーナッツ利用について ・ 店に来るお客の約1割にあたる人がピーナッツクラブの会員 ・ 一日のお客は50人~100人、多い時で12,3人のお客がピーナッツを利用 ・ 食事代金650円以上からピーナッツを利用可能。2000円以上は100ピー、3000円以上は150ピー ・ グループでくればピーナッツを利用しやすく、誘い合わせて来てくれる。 ・ 千葉大学の先生や学生がいっしょに来て利用してくれることも多い。 ・ ピーナッツ利用後は「アミーゴ」と言って握手する。時にはハグもする。その時はお店の人もお客もいっし ょに笑顔になる。 写真 2-5 ピーナッツ扱店 写真 2-6 店頭でピーナッツの説明 写真 2-7 ピーナッツ IT 決済 2.3.6 地域通貨「ピーナッツ」使用例2 事業者間の利用 訪問場所:ゆりの木商店街ぎやまん亭 訪問日時:2007 年8月27日 13時~15時 訪問者:峰滝和典、山田裕子 対応者:ぎやまん亭店主と奥さん ヒヤリング内容:食材の仕入に使用する地域通貨ピーナッツについて ゆりの木商店街にある中華料理店の有機野菜の仕入にピーナッツが利用されている。 八日市場にある野菜農家から直接有機野菜を仕入れている。仕入れる頻度は季節にもよるが毎週である。産地 直送の有機野菜仕入額は、全野菜仕入額4,5万円の半分弱、先月7月は約26,300円である。 仕入時のピーナッツ利用についてピーナッツの支払いは1,315ピー、支払額の5%を上乗せして支払う。 11 有機農家も地域 SNS「あみっぴぃ」のユーザであるが、農作業で忙しくパソコンの前にいる時間がなく電話での 注文になっている。有機農家は貯まった「ピーナッツ」で農作業を手伝ってくれた人に支払っている。 図 2-4 有機野菜仕入先 八日市場と西千葉(著者作成) 2.4、1 地域通貨支援事業「花」 訪問場所 千葉市幕張自然化粧品会社「レイビスパーク」社長室 訪問日時:2007 年 5 月 31 日(木)16 時~18 時 訪問者:山田裕子、松尾圭(千葉大学大学院生、さろん花園運営委員) 対応者:レイビスパーク沼辺操社長、篠崎久美子専務 写真 2-8 花化粧品扱い店看板 写真 2-9 花化粧品 ヒヤリング内容: 地域通貨ピーナッツ支援事業「花」化粧品を製造するまでにいたった経緯及び現状について 2.4.2 花化粧品の誕生 花化粧品の製造元である千葉市幕張に本社がある自然化粧品の通信販売会社「レイビスパーク」11を訪問し た。自社製品は自然化粧品、安全で自然素材を活用したかだわり化粧品を製造しニ十数年が経過した。通信 販売を含めて順調に業績を伸ばしている。その会社がなぜ利益にならない「花」を製造しているのか。地域通貨 を導入した K さんとの強い信頼関係があったからである。社長はビジネス上での戦友が初代会長を務めたゆりの 木商店街を応援し続けてきた。地域通貨の運営資金を捻出したいとの必要から開発した。また地域特産品の必 要性も訴え続けている事業家でもある。豊富なアイディアの持ち主、熱いハート、行動力も兼ね備えている。化 粧品以外の特産品やみやげもの開発の必要性や地域をにぎやかす鉄の風鈴アイディを披露してくれた。 花化粧品の販売元は西千葉 ゆりの木商店街「(有)アミーゴジャパン」である。製造元社長と販売元代表は お互いビジネス上「戦友」という仲、強い絆がある。レイビスパーク 1985 年設立、設立時より自然化粧品を製造販 売、設立当時より美容室を経営していたアミーゴジャパンの代表が販売に貢献していた。いわば会社の恩人とも いえる。地域再生のためにビジネス戦友同士が立ち上がり、千葉大学生や地域の人々と共に花化粧品構想が 出来上がっていく。 花化粧品についての説明は以下のようになっている。 11 花化粧品製造元 「レイビスパーク」 http://www1.seaple.ne.jp/murayama/hana.html 12 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 開発:千葉大学生とピーナッツクラブメンバー ネーミング:地元タウン誌編集者花デザイン: 千葉大学工学部デザイン科 mofu メンバー 花テーマソング:西千葉のアイドル千葉大学生の作詞・作曲「ゆりのき」 特徴:洗顔クリーム、化粧水、クリームの 3 種類 全品:無添加、無香料、無着色、ノンアルコール 化粧水:開封後は冷蔵庫で保管、使用方法:経絡美顔術というマッサージをしながら美肌をつくる。 価格:一般価格 2800 円+消費税=2940 円、全品同一価格 会員価格:2730 円+200P 売り上げの一部(一個につき 300 円)を地域通貨運営費に計上 2006年度売上推定数約1000個、運営費計上額約30万円 地 域 SN S「あ み ぃ ぴ ぃ 」 地 域 通 貨 「ピ ー ナ ッ ツ 」 西千葉 千葉県千葉市 地域通貨支事業 「花」 2.4 地域通貨と地域通貨支援事業と地域 SNS の相乗効果イメージ図 2.5 地域SNSを利用した流通小売例 訪問場所:ゆりの木商店街 ふくろう広場 青空市 訪問日時:2007 年 6 月 16 日(土)13 時~14 時 訪問者:山田裕子 対応者:青空市運営者海保眞、産地直送野菜有機野菜販売者 ホタテ販売責任者 地元消費者他 訪問内容:近隣型商店街青空市での商品とサービス及び人々の交流の様子 写真 2-10 学生による産直有機野菜販売 写真 2-11 有機野菜生産者と地元商店主と 消費者のコミュニケーション 13 写真 2-12 地元ミュージシャンのライブ 写真 2-13 青空市の看板ふくろう 地域 SNS などを利用した流通システムはどのようなものか。商店街の直接的活性化である商品とサービスの 提供に利用できるであろうか。この問題の緊要性に答えるべく試作がここゆりの木商店街でも行われていた。毎 月第三土曜日、ゆりの木商店街ふくろう広場で実施される青空市では周辺住民や千葉大生の出店などもありに ぎわっている。2007 年 6 月には青森からの産地直送ホタテ販売、2007 年 9 月には千葉県富津産二本足のカカ シブランド米販売がありネット上「あみっぴぃ」で注文を受け付ける試みがなされた。 地域SNS「あみっぴぃ」内のコミュニティで需要と供給を調整し生産者へ発注し、生産現地から直接ホタテを搬 送、あみっぴぃで注文した消費者にゆりの木商店街ふくろう広場で手渡した。ホタテはその場で販売したものも あった。この場合の情報伝達と流通経路は「消費者→あみっぴぃで内での販売元→生産者→販売元(商店街) →消費者」という経路であった。消費者はあみっぴぃ内で販売情報を得て、購入を判断し、再度注文をあみっぴ ぃにアップし、商品をゆりの木商店街で受け取る。 地域SNSを利用した流通小売例 情報伝達と流通経路 消費者→ネット上の販売元→生産者→販売元( 消費者→ネット上の販売元→生産者→販売元(商店街)→消費者 商店街)→消費者 青 地域SNS・・需要と供給を調整 森 商店街に産地直送で個人で配送を依頼するよりは流通 コストを軽減 「あみぃぴぃ」コミュ内で調整者B さんによる6月の商品 (ホタテ)販売のおらせ ユーザからの注文→調整者Mさんか ら生産者への発注 地域SNS内のコミュで購入希望者に予約をとり販売。 一枚50kgのほたてが約210枚の 3/4は予約で、 1/4が青空市で1時間で完売。この取引には 地域SNSあみぃぴぃが大活躍、 青森までの電話代が高いので、 安いインターネット上の地域 SNSを 西 仕入れの相談などに利用したようです。 千 葉 地元商店街 ゆりの木商店街 6月青空市ふくろう広場で ホタテ販売 地域SNS・・消費者の満足度を確認 消費者の商品への評価 感想など 生産者と販売元と消費者の コミュニケーション 図 2-5 地域 SNS を利用した流通小売例 2.6.1 千葉大生らによる「トライワープ」誕生 NPO トライワープは千葉大学生による IT 関連事業の起業である。主な事業は千葉大学生が地元西千葉の 人々にパソコンを教えるスクールとパソコンサポートである。トライワープの代表である虎岩氏は単なる保守、点 検にとどまらない地元の大学生ならではの長時間サポートを実現し、業務による利益と大学生を商店街に繋げ るコミュニケーションの両立に成功した。 虎岩氏がなぜ IT 起業をしたかについてはこうコメントしている。高校生の時に NHK の特集でマイクロソフトのビ ルゲイツの姿をみたからだそうだ。自分の好きなことで起業したいと思っていたと語っている。 2.6.2 トライワープ産学連携 2006 年 9 月、有限会社アミーゴジャパン(所在地:千葉県千葉市、代表取締役:海保眞)は、(財) 千葉県産業振興センターが主催する「地域生活創造ビジネスソーイング事業」12を受託した(助成金 2,700 千円)。2006 年 9 月 27 日のキックオフパーティを皮切りに、産学連携のプロジェクトとして、特定非営 利活動法人 TRAWARP (所在地:千葉県千葉市、代表理事:虎岩雅明) 、千葉大学工学部デザイン工学科 清水研究室、千葉大学教育学部藤川研究室、千葉タウン情報紙「ちあ」 (代表:木戸満智子) 、ピーナッ ツクラブ西千葉(世話役代表:木村保蔵)と協業して事業を行った。「アイラブ西千葉」事業プロジェ 12 (財)千葉県産業振興センター http://www.ccjc-net.or.jp/~pdd/index6.html 14 クト開始された。これはトライワープ提供のグラフでみるあみっぴぃでも明らかであるが最大級のイベ ントになりアクセス数もトップを記録した。 プロジェクト内容は以下である。 ・ 「まちあるき隊」 まちいろぐみ ・ 「あみっぴぃと商店データベースの連携」 NPO 法人 TRAYWARP ・ 「シャッターアート研究」千葉大学工学部清水研究室 ・ 「修学旅行体験プログラム研究」千葉大学教育学部藤川研究室 ・ 「地域情報紙の広報」千葉タウン情報紙「ちあ」 2006 年 12 月 16 日(土)、イベント「アイラブ西千葉タッチダウン」実施、この事業の成果発表会を行った。この ビジネスソーイング事業は、地域生活創造ビジネス分野にて、産学連携をベースとした先進性のある事業の導 入や新しいビジネスモデルの構築等を行う、千葉県内のプロジェクトを募集したものである。あみっぴぃでは、地 図情報を含むデータベースとあみっぴぃを連携させた新しい地域SNSの方向性を研究し実施した。13 このイベント実施の時にあみっぴぃ内の書き込みは最高の盛り上がりをみせた。以下書き込みから抜粋 『「西千葉に住んでいる人が西千葉を好きになる」、「外部の人が西千葉を好きになる」ことをテーマにこの事業 は行われます。 西千葉に住んでいる皆さんの手で暮らしやすいまちづくりをしてみませんか? まちの「こんにちは」を目指して…。 ※キックオフパーティを開催いたします。どなたでもお気軽にご参加ください。 9 月 27 日 15 時からパスタ専門店「壁の穴」にて。詳細はこちら↓ http://amippy.jp/?m=pc&a=page_c_event_detail&target_c_commu_topic_id=777』 このように NPO 法人 TRAYWARPIT 事業をパソコン教室から事業を始めたが、その後 HP 作成や電子マネ ーを使った地域通貨、そして地域 SNS の運営へと広がっていった。 2008 年 1 月 23 日で TRAYWARP 創業 5 周年を迎えた。2 月 1 日に{あみっぴぃ}は公式オープン 3 年目を迎 える。まだまだ会員数を増やし続けている。 13 産学連携のコミュニティ http://amippy.jp/?m=pc&a=page_c_home&target_c_commu_id=140 15 2.7 地域 SNS あみっぴぃの概要 2.7.1 地域 SNS の動向 全国の地域 SNS においてあみっぴぃはどのような位置にあるのか。2007 年度総務省の「地域 SNS 動向調査報 告書」を参考にした。2005 年からの統計結果であるが、2005 年以前から地域 SNS の導入が始まった。 全国的 にはあみっぴぃは比較的早い時期に導入した。地域 SNS は現在も増加傾向にあり、その動向が注視されている。 あみっぴぃは 2006 年 1 月にプレオープンし、一般ユーザの参加は 2006 年 2 月であった。 西千葉「あみっぴぃ」開設年 図 2-6 地域 SNS 開設年 (出所)総務省(2007) 「地域 SNS 動向調査報告書」 現在の「あみっぴぃ」の登録会員数は約 2000 人(2008 年2月現在)である。全国的にはかなり大きな規模の地 域 SNS となっている。また「あみっぴぃ」の会員は実際に出会った人でないと友人を招待できないルールになっ ていることから、現実社会においてもこの 2000 人が間接的であるにせよ繋がっているということは仮想世界として は特異である。参加人数については地域という領域においてコミュニケーションを取りやすい人数は 1000 人程 度であるということである。参加者の中には登録をしたがコミュニティに参加せず、実際あまりアクセスしない人も いる。稼動人数は参加者をかなり下回る人数だと推測できる。このことは最後にネットワーク図からも読み取れ る。 西千葉「あみっぴぃ」の参加人数 図 2-7 地域 SNS 登録会員数 (出所)総務省(2007) 「地域 SNS 動向調査報告書」 16 2.7.2 あみっぴぃ運営団体 NPO トライワープ訪問調査 訪問場所:西千葉ゆりの木商店街トライワープ事務所 訪問日時:2007 年 9 月 11 日((火)13 時~14 時 訪問者:山田裕子 対応者:NPO トライワープ虎岩雅明代表 ヒヤリング内容:地域 SNS 運営者へのアンケート実施「あみっぴぃ」運営について 地域 SNS「あみっぴぃ」運営者代表へのインタビューを実施した。質問は16項目であったがこのアンケートは 全国の他の地域 SNS 運営者にも回答を依頼し比較検討する趣旨で実施され、以下のような回答が得られた。 この調査票は巻末に掲載した。 回答1. a.男性 b.女性 回答2. a.20 歳以下 b.21~30 歳 c.31 歳~40 歳 d.41~50 歳 e.51~60 歳 f.60 歳以上 回答3. a.学生 b.自営業 回答4 a.企業 b.自治体 c.会社員 d.役所等公的機関 c.NPO e.その他 会社代表取締役 d.その他 回答 5.パソコン教室を卒業した生徒さんに引き続きパソコンを使っていただくため。また地域の情報 交換、商店の情報、地域住民と学生との交流に役立てばと思い「あみっぴぃ」を始めた。 回答6. a. 招待制 b.自由登録 c.その他 回答7.①本名で登録、 ②ニックネーム、③可能であれば自分の顔写真、④インターネットで使う用 語はできるだけ使わない。⑤実際に一度会ってから登録する。⑥不特定多数の方へのメール送信は禁止 (メッセージ送信)⑦まちの「こんにちは」が広がりますように ⑧西千葉でのコミュニケーション、 西千葉とのコミュニケーションを図りたい方なら西千葉にお住まいでなくても参加可能 回答8.運営開始時は地域の方々を優先的に招待し、学生はその後に参加するように計画した。その後 この SNS に関心を持った人に限り招待をするので、こちらから特に働きかけていない。 回答9.運営者という仲間が多く、その招待数は多いと思う。 回答 10.大規模なイベントはオープンした 2006 年1月から 2006 年 12 月まで 7 回。 (トライワープ資 料より) その他のイベント、オフ会は多数。 回答 11. 回(開始時期 3 ヶ月間)ユーザの企画するイベントに回数は把握できないが一日に 数回のこともあり、かなり多い回数開かれている。数えきれない、 回(最近の 3 ヶ月間) 回答 12.ゆりの木商店街の方々、主婦40代、50代、60代、千葉大学生、域通貨ピーナッツ運営者、 トライワープパソコン塾終了者、トライワープ関係者など 。登録会員の半数は学生と地域の人が半々。 約 3 割以上が 40 代以上 回答 13.いつも集まる場所が商店街の中に 2,3 箇所あり、そこに行けばユーザに会える。なかでも中華 料理店「ぎやまん亭」はご主人も奥さんも「あみっぴぃ」を見ている。「ぎやまん亭」やイタリアンレ ソトランを使用してオフ会が活発に行われている。 回答 14.非公開 広告主であったモスバーガーは満足している。 17 回答 15.よくなってきている。オフ会と地域 SNS あみっぴぃ上で情報交換をしている。ユーザ同士が 日記を読むことにより、互いの隠れた部分を知る機会を得、おせっかいもできているようだ。 回答 16 地域通貨ピーナッツを使用、商品取引、労働力の提供使う。ピーナッツを使用後「アミーゴ」 と言って握手をし、笑みがこぼれる。ほのぼのとして気持ちにもなれる。リピータが増えていく。 このアンケートの回答結果をもう少し詳細にみてみよう。 回答 1.運営者の属性・・男性:運営者代表は男性であるが何人か女性や女子代生がトライワープの運営 を支えている。特に IT 講習会の講師には女性のきめ細かい感性が役立っているようだ。 回答 2.運営者の年代・・20 代:運営者はほとんど 20 代である、この若者たちに出会い話をしてみると 年長者の意見を聞き尊重している態度に気がつく。日ごろ高年齢者に対応しているので年代の異なっ た中年や高齢者への理解があると思われる。また年代が異なった近隣地域住民に対応する態度が自然 であり、丁寧である。 回答 3.職業・・会社経営:導入時は NPO 代表であったら、2007 度より株式会社を経営している。経営 陣はすべて千葉大学生であり、学友とともに立ち上げたベンチャー起業である。 回答 4.運営母体・・NPO:利益優先ではなく地域のために役立ちたいとの理念をもつ。 回答 5.地域 SNS を始めたきっかけ、目的について・・パソコン教室の生徒さんが使いなれてもらうため、 商店情報や商店街、住民、学生間の交流のため:この目的を商店街の有志、地域住民の有志と共有し、無理 なく、日常生活において実行している様子が可視化した SNS により確認することができる。 回答 6.会員になるためのルール・・招待制:いくつかのあみっぴぃのルールは参加者が安心して利用できるよう に工夫されている。その一つが招待制である。一定の見識を得た人のみが参加できるということであり、ネット 上での匿名性に歯止めをかけた。 回答7.登録時の情報・・本名で登録、ニックネームを自由に決める、写真をできるだけ掲載する、世代を超えた コミュニケーションを活発にするために IT 用語は控えめに、一度も会ったことのない人はマイアミーゴ(友人登 録)にしない:このルールは IT 弱者への配慮である。参加者の多様性を確保する上で重要になっている。特 に IT のなじみが少ない年齢が高い参加者、地域住民などにとって利用しやすい ICT ツールとなっている。 回答 8. 会員に登録してもらう情報は・・興味を持った人だけが登録:意識的に参加する敷居を高くすることでコ ミュニティの安定性や信頼性を高めている。またうそをつく場合も考えられるが、招待した人が顔見知りというこ とである程度の信用は確保できると考えられる。 回答 9.運営者代表による招待数、運営者代表のマイアミーゴは現在 530 人ほど、すべて個人として招待した。こ の数は圧倒的に多いが他の運営者も 200 人から 300 人のマイアミーゴを持つ。またその他の大学生、地域住 民、商店街の自営業を中心に 100 人~200 人と比較的多いマイアミーゴを持つ参加者もいる。 回答 10.運営者が企画したイベント・・多数、一日 2~3か?スタッフは 100 人程度、お客は 2000 人~3000 人と いうイベントもあった。 回答 11.ユーザが企画したイベント・・非常に多い:それぞれのコミュニティでイベントを実施しているので把握が できない。2007 年秋より 2008 年 3 月のこの SNS の観察によれば参加者によるイベント企画は数えられないほ どある。 回答 12.活発なユーザについて・・パソコン教室の生徒、定年退職者やシニア、地元主婦など。 回答 13.ユーザが集まる場所は・・ゆりの木商店街の中華料理店、レストラン、近くの商店街のレストランなどが中 心:集まる場所は店主とは顔なじみの場合が多く、地域通貨ピーナッツの利用店が多い。長話もいやな顔を せずピーナッツによるコーヒーのサービスや美味しい水の無料サービスもある。 安心して滞在できる場所が 確保されている。 回答 14.バナー広告について・・何社かの広告主があったが満足度はまずまず。広告費用については非公開: 広告収入で運営を維持していないようである。 回答 15.周辺店舗のコミュニティの活性度は・・よくなっている。マスメディアの影響が大きい。各種イベントも効果 的だ。実際数々の新聞社や雑誌から取材を受けている。この記事をみてまた地域活動に活気がでている。外 部地域からの訪問もあり、注目度はやる気を出す一要因である。 回答 16.地域の経済活動を促すような仕組みを持っているか・・地域通貨、パソコン教室、毎月実施されているゆ りの木商店街ふくろう広場の第三土曜市 以上がアンケート結果である。地域活性化と地域経済活動を促す地域コミュニティ作りやイベントをするため の情報交換に地域 SNS は特に役立つように設計された。NPO トライワープの計画はまちの「こんにちは」が広が 18 るようにデザイン・ルールなどを工夫している。虎岩代表を始めとしてトライワープの運営者らの意識はパソコン 上だけで完結してしまわないように実在の社会においての人との結びつきを大切にしている。 2.7.3 行政の支援活動 千葉県産業技術研究所情報技術セミナー 参加場所:千葉市 ホテルグリーンタワー幕張 参加日時: 2007 年 7 月 27 日(金) 13 時~16 時 30 分 参加者:山田裕子 主催者:千葉県産業技術研究所 セミナー内容: SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とは何か ~“つながり” がもたらす新たな情報発見の世界~ トライワープ虎岩代表の講演他 2007 年 7 月 27 日(金) ホテルグリーンタワー幕張において「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)戸 は何か ~“つながり” がもたらす新たな情報発見の世界~」というテーマでセミナーが実施された。参加は自 由、聴衆は約 60 人、地元の自営業者も参加し、SNS 利用の可能性を模索していた。実際に SNS を使った事例と してトライワープ代虎岩代表よりあみっぴぃが紹介された。 SNS 事業化に関心のある中小企業の方々も参加、初心者にとってわかりやすい話であった。運営者自身のあみ っぴぃについての紹介内容をみてみよう。 ・ SNS に関しては一般的説明。国内では 8 つの SNS、ミクシィ内での人との繋がりについてmixiGraphを利用 して説明、海外からは「orkut」が紹介された。この「orkut」は広告が無く、登録項目は嗜好などを含め詳細記 入、この登録データが集積されれば、価値が見いだせる。 ・ミクシィのクローンである OpenPNE についての説明、特にミクシィとの関係、インストールの仕方や技術的なこと も交えて、個人でも簡単に構築できる小規模 SNS の可能性についての説明であった。 ・「あみっぴぃ」について、地域 SNS「あみっぴぃ」の経緯、特徴、成功の秘訣、戦略など。「あみっぴぃ」を構築し たトライワープの IT 初心者に対する SNS 構築作戦は地域における世代を超えた活性化に繋がっていく。この 講演会においても、一般聴衆は年代がさまざまであったが、年配の聴衆にとって関心が高かった。 ・千葉県庁組織内職員 SNS 実験「CHIPS」(自主研究)について、昨年 12 月より稼動、特徴、規約、構築の経緯 など現在 218 人参加。SNS の使い方コミュは強制加入、暗黙知を共有することを目的とする、プロフィールは 実名、職歴を中心に連絡先電話番号も記入する。コミュは業務上の話題、子育て、趣味など 45 コミュニティが 存在する。 2.7.4 地域 SNS 「あみっぴぃ」の特徴 仮想世界である地域 SNS「あみっぴぃ」が現実社会にどのような影響を与えるか。あるいは逆に現実地域社会 が仮想世界である地域 SNS にどのように反映されるか。「あみっぴぃ」の仮想世界が現実社会の人々を取り込み 成長していくメカニズムについて諸要因を抽出し総合的関係性に注目し、P5 の図 1-1「 あみっぴぃのメカニズ ム」 によって明らかにした。その他のいくつかの特徴をみてみよう。 1.運営者らが地元に密着している。 地域通貨を利用しながたまた千葉大生で組織されたトライワープは起業当時から現在に至るまで千葉大学 周辺で IT 講習会を実施している。この IT 講習会には千葉大学側の「ゆりの木」商店街の店主、商店会長、近隣 住民が多く参加する初心者向け IT 講習会を重視した。またトライワープはたびたび地元商店街の人々と共に青 空市、イベント、オフ会などを実施している。地元ゆりの木商店街に事務所を置くトライワープのメンバーは商店 街で昼食をとりながら会談をする機会も多い。商店街の食堂やレストランが交流の場であり、情報基地だ。 2. 年代を超えて利用されている。情報弱者を対する工夫があった。 「あみっぴぃ」のウェブサイトのデザインは IT 初心者、商店街の方々、高齢者、主婦にもわかりやすいように工 夫されている。いままで IT を利用していなかった人にも親しみやすいデザインを採用した。画面はボタンの数を 最小限にし、利用してほしいボタンを優先的に配列している。IT 業界でよく使用された言葉は高齢者にもわかり やすく言葉に直して使用。このように IT 弱者ともいえるユーザに対するはきめ細かい配慮がされている。 3. 安心できる、顔が見える仮想空間を創設できた。 この理由として「あみっぴぃ」の基本方針であるルールに具体的な取り組みがみられる。 19 下記はその理念と具体的ルールである。 『「本名」の欄には必ずご自分の本名を記載しましょう・・・安心感のある健全なコミュニケーションを楽しんでも らいたいという願いから、招待なしの新規登録は行っていません。「あみっぴぃ」に参加しているあなたの親しい お友達から招待してもらって下さい。お友達から招待メールが届いたら、本文中のリンクをクリックすることで登録 できます。』あみっぴぃのルールより抜粋。14 このように「あみっぴぃ」は実際に出会ったユーザが招待するという登録ルールを設定し、顔を知っている人が 実名で登録することで安心できる仮想のコミュニティ作りを心がけている。 実際最初の段階として主催者が自らの知り合いをネットワーク上に招待する。その新しいメンバーも同じことを 繰り返し、メンバーの総数的にもネットワークの規模としても成長していく。サイト側では、自動更新機能を持った アドレス帳、プロフィール表示機能、新たなつながりを形成する能力である紹介機能、その他オンライン上での 社会的つながりを支援する機能を提供している。 4. 「あみっぴぃ」はゆりの木商店街の多様性を反映することができた。 第一の理由は起業とその後の運営の基盤が地元に密着していることである。「あみっぴぃ」を設計・運営して いる NPO 法人「トライワープ」は地元ゆりの木商店街の人々との交流を通し、ゆりの木商店街で使われていた 地域通貨「ピーナッツ」をファンドとして起業した。ファンドとしての効用と共に地域通貨「ピーナッツ」の利用に より信頼関係が形成されていた。ゆりの木商店街ではすでに大学との連携を進め、多様でしかも異質な人材 をとの協業を開始していた。トライワープはこの地域と商店街の多様性を数々の工夫により仮想空間に反映さ せることができた。このことが仮想社会と現実社会を近接する結果になり安心感や主体的な地域活動として有 効なツールとして利用できる大きな要因であったと思う。 2.7.5 トライワープ資料による紹介 下記図は NPO トライワープが作成した分かりやすい図「あみっぴぃ」についての資料で再確認してみたい。 ・ 図 2-8 は NPO 法人トライワープがパソコンを教える事を通して大学生と地域住民の世代を超えた交流を目 的としたあみっぴぃのできるまでの紹介である。IT 講習会後にも生活の中 IT が使われるようにと地域 SNS が 考えられた。 図 2-8 NPO 法人トライワープとあみっぴぃ 図 2-9 を見ると言葉を IT の専門語から初心者にもわかりやすい表現に変えてデザインされている。例えば「ホ 14 あみっぴぃのルール http://amippy.jp/?m=pc&a=page_o_amippy_rule 20 ーム」は「最初のページ」などのように IT 用語を日常会話に変換して、IT に慣れていない人にも使いやすくし ている。 図 2-9 シニア向けカスタマイズした最初の画面 ・ 図 2-10 Open PNE をアレンジし初心者にもわかりやすいデザインに修正している画面 ボタンの配列を変えている。 21 図 2-11 ユーザの使いやすさを第一に考えたデザイン 図 2-12 コミュニケーションツールとして日常使用しやすいデザイン 22 図 2-13 周辺地図や天気予報などがある画面デザイン 2.7.3 ユーザの多様性 「あみっぴぃ」の沿革と特徴から推察できるが、実際登録している 1900 人(2007 年 11 月現在)のうち特によく利 用していると思われるユーザはアクセス NO1の記録から推察した。15この記録によると(2007 年 9 月より 1 月まで 集計)トップ 10 ユーザは「あみっぴぃ」運営関係者、千葉大学生、地域の中高年の主婦、地元商店街の自営業 者、地域の活動家などであった。 1 人のユーザのアミーゴ(友人)数は、トップは運営者らがもっとも多い。彼らの性別はほとんど男性、20 代であ る。職業は千葉大学大学院生と修了生、中でも一番多いのは代表者の約 500 人、次は約 200 人~300 人であ った。運営者以外にも約 200 人のアミーゴを持つ千葉大学大学院生もいる。西千葉のアイドルであるシンガーソ ングライターM 君も約 230 人のアミーゴを持っている。時々ライブを実施し、アミーゴ=ファンであるようだ。CD の 発売やライブなどの宣伝にもアミーゴたちの協力を得ている。M 君の CD 発売時やイベント、ライブには「あみっ ぴぃ」内のコミュや日記に応援コメントが多くよせられている。 次に活躍するユーザは地元の 40 代、50 代、60 代主婦たちである。毎日のアクセス数は多い時で 70,80 回、 少ない時でも 20,30 回を記録している。トップ 10 入りしている人が一番多い層である。コミュニケーションを楽しい でいる達人たち。仕事を持ち、母でもあり、地域での活動も活発でしかもネット上で一日数回の日記を書くことも 珍しくない。どうしてそんなに日記が書けるのか尋ねたことがあるが「好きだから書ける」という答えであった。この 主婦層はかなりの人数になっている。IT 講習会を受けたばかりの人もいれば、かなりの IT を使いこなしている主 婦も多い。このうちの何人かは著者と実際にボランティア活動で協業したことがある。彼女たちは家庭を持ち、子 育てをし、地域に積極的にかかわり、社会や政治活動に関心を持ち、しかもフルタイムではないが仕事を持って いる人が多い。あみっぴぃでのこの層の活躍はまた現実社会の反映の証でもある。 四国高松からこのサイトを利用しているユーザがいる。彼女は時々アクセスランキング入りしている。50,60 代 の自営業者であり、西千葉を訪問し顔見知りも何人かいる。地域通貨ピーナッツに関心をもっている。高松のま ちの様子を撮影した写真を掲載し、遠いまちの情報や意見を発信している。また彼女の友人も四国からたびた びアクセスし、シンガーソングライターのファンであるようだ。実際四国でのライブも行われた。 15 あみっぴぃのアクセス数 No1 http://amippy.jp/?m=pc&a=page_h_ranking 23 またこのトップクラスのユーザを持つ地元の食堂やレストランなどを営む自営業者もいる。 活発なユーザは「あみっぴぃ」内にコミュを立て、アミーゴ(友人)とコミュニケーションを楽しみながら友人ネット ワークを広げている。これらのユーザは現実社会においても、「あみっぴぃ」内で情報交換をし、意見のやり取り をしながら、親しくなっている。実際に出会い、交流し、時には食事をし、イベントを企画し、他のアミーゴのイベ ントに参加し、生活や社会に積極的に取り組んでいる。ゆりの木商店街には「あみっぴぃ」ユーザのたまり場、交 流の場、つまり食堂や喫茶店、しゃれたレストラン、隠れ家がある。 次に多くのアミーゴを持つユーザには地元商店街で活躍する 50 代、60 代 70 代の自営業者だ。人生経験の ある彼らの助言は若い学生にとって親以上にありがたい。また地元に住む子育てのベテラン主婦は学生や若者 にとって温かみのあるお母さんやお姉さんのような存在である場合もあったようだ。 ほとんどが地元で生活をするユーザであるようだが、中には遠く四国高知県で市民活動をしているという子育 てが一段落している女性もいる。この女性は自営業者であり生涯学習で、大学で学び、息子のいる東京へ地方 から時々上京しているという。地域通貨ピーナッツに関心を持ち、地域でまちづくり参画している活動家だ。「あ みっぴぃ」に 10 数人のアミーゴ(友人)を持ち、西千葉はこのアミーゴにとっては「楽しい仲間のいるまち」だという。 西千葉と高知を繋いでいるパワフルなお母さんだ。 このように西千葉にはいろいろな世代の構成、多様な職業の人々が時には県外からネット上と実社会におい ても交流している。異世代間の暖かな眼差しが感じられ、豊かな SC が存在しているようだ。 2.7.4 コミュニティの種類と数16(2008 年 1 月 6 日現在) コミュニティはカテゴリ別ではお店情報・・987、千葉大学・・47、市民団体・・9、市民サークル・・1、仲間うち・・ 55、会社・・2、NPO 法人・・4、イベント情報・・12、プロジェクト管理用・・42、趣味・・36、その他・・25 という内訳に なっている。参加人数のランキング 10 については 1 位・・「TRYWARP & あみっぴぃ 」お知らせ掲示板 : 184 人、2 位・・千葉のアイドル松尾貴臣 : 159 人、3位・・千葉大学 : 120 人、4位・・千葉大パソコンサポーターズ 受講生 : 85 人、5位・・「アイラブ西千葉」プロジェクトに興味がある人 : 84 人 、6位・・和民 : 64 人、7位・・ 07PASIO~d コース~ : 63 人(「千葉大学のためのパソコン基本マスター講座」のコミュニティ)、8位・・長崎チ ャンポン ぎやまんてい : 63 人、9位・・ピーナッツクラブ 西千葉 : 62 人、10 位・・PASIOTEAM2008staff : 61 人(千葉大学新入生パソコンライフ応援計画実行委員会)などが多くの参加者を集めている。1 位の TRYWARP & あみっぴぃ はトライワープ運営関係者を中心にしたコミュニティである。2位の「千葉大パソコンサ ポーターズ受講生」コミュニティは、地元地域と千葉大学において初心者むけ IT 講習会をしているトライワープ の実績でもある。 盛り上がり度については日々変化しているが、2008 年 1 月 6 日は 1 位・・やましんファンド :市民団体、日本 酒の価値向上をめざすファンド。 2 位・・「TRYWARP 講師&アシスタント:千葉大パソコンサポーターズの講師とアシスタントの連絡用コミュニテ ィ。」3 位・・「千葉大学マジックサークル:マジックが好きな人の集まりです(?)前期は月・水・金に D 号館にて活 動中!」となっている。 この種類と数からもわかるように地域の商店街や千葉大学、千葉市を中心に活動している環境ネットやまちづ くりサポートセンター、各種プロジェクト、イベントなど多彩なコミュニティがあり、ネット上で終結せず、実際の地 域活動を繋がっている。 1日のアクセス数は多い人で一人約 80 アクセスから 10 数アクセスになっている。日によっては 20、30 アクセス の場合もありかなり差がある。このアクセス量についてはトライワープ提供のグラフでみるあみっぴぃで明瞭であ る。 コミュニティはほとんどが一般公開されているが一部のコミュニティは閉ざされている。それらはビジネス関係 であるか企画運営者だけが参加するコミュニティであるようだ。実際利害関係が生じる場であり、機動性や機密 性を要求される意思決定の場であり、あるいは社外秘といった情報交換の場として利用されていると思われる。 16 あみっぴぃのコミュニティ http://amippy.jp/?m=pc&a=page_h_happy_amippy 24 2.7.5 2006 年 1 月~2006 年 12 月までの1年間のアクセスロググラフ(トラーワープ資料より)にみる オフライン活動の影響 2007 年 7 月 27 日千葉市幕張で千葉県産業振興センター主催の SNS 講演会「第一回次世代インターネット 分科会・情報技術セミナー・・つながりがもたらす新たな情報発見の世界」と題するセミナーが実施された。その 時トライワープの虎岩代表は「あみっぴぃ」のアクセスログデータを使用し仮想の情報と現実の活動に関する分 析を紹介した。 まず 2006 年 1 月~2006 年 12 月までの一年間のアクセスログをみる。1 月 17 日にプレオープン、2 月 1 日に オープンをいう二段階でユーザを取り込んでいたところにまず注目した。「あみっぴぃ」が現実社会の地域を反 映させるために開始時期の工夫であった。「あみっぴぃ」のプレオープンの 2007 年 1 月 17 日は一般住民を優先 的に招待し、その後 2 月 1 日がオープン日とし、千葉大学生や若者を招待した。オープン招待時期をずらし IT 弱者を優先させた。このように「あみっぴぃ」開始時の最初のユーザは、IT を使いこなす若者や大学生をではな く、地元地域の人々が参加であった。 またオープン後は段階に応じた活性化プランを策定し実施してきた。ユーザが 900 人に達成したときは 1000 人ロード日記大作戦の強行軍を実施した。また各種イベント、デザインのリニューアル、オフ会などの多様な工 夫をしながら、時には運営メンバーに呼びかけて順調に会員数を伸ばしている。 図 2-14 2006 年 1 月~2006 年 12 月までの1年間のアクセスロググラフ(トライワープ作成) このグラフはグリーン線が参加数、黄色の棒グラフがアクセス数合計を表している。また矢印は主なイベントを 指し、各イベントがアクセスを誘発して いる様子が伺える。アクセス数が減少傾向にある 8 月は大学生が夏休み であったが、8 月 30 日にデザインリニューアルをし、アクセス数を伸ばしている。 2.7.6 2006 年 11 月~2007 年 1 月までの3ヶ月のアクセスロググラフ(トラーワープ資料より)にみ るオフライン活動 短期間のアクセスと実際のイベントの関係をみると、アクセス数が多くなるのはイベント直前までが多い。イベント 中はアクセス数が激減している場合が多い、というより実際活動している時は画面にアクセスはしない。いくつか のイベントの実施状況とアクセスの関係をみると内容によっても異なるようであるが、特に打ち合わせとして「あみ っぴぃ」を使用している場合は顕著である。イベント終了後はイベント参加の感想やお疲れ様の挨拶などの内容 がみられる。 2006 年度の最高のアクセスを記録したのが「2006 年 12 月 16 日アイラブ西千葉タッチダウン」イベント発表会 25 の 12 月 9 日に決定した直後であった。これはゆりの木商店街で営業する有限会社アミーゴジャパンが千葉県産 業振興センタービジネスソーイング事業として受託した「アイラブ西千葉」観光事業研究プロジェクトの成果発表 会である。この直後にアクセスが。 この事業の受託は有限会社アミーゴジャパンが受託した産学連携プロジェクトである。特定非営利活動法人 TRAYWARP、千葉大学工学部デザイン工学科清水研究室、千葉大学教育学部藤川研究室、千葉タウン情報 紙「ちあ」、ピーナッツクラブ西千葉と協業して事業を行った。 図 2-15 2006 年 11 月~2007 年 1 月までの3ヶ月間のアクセスロググラフ(トライワープ作成) 2.8 マスメディアの取材17 「あみっぴぃ」が各新聞に掲載され、そのたびに話題となりまちの勢いが増す。取材に来る記者や視察に来る 人々をも巻き込んでいる。マスメディアの関係者も「あみっぴぃ」のユーザになり日記で情報を発信している。この ように多くの人々を柔軟に受け入れながら、ゆりの木商店街であみっぴぃ関係者が集う。マスメディアによって地 域にあるいは全国に注目に注目されながら元気を増し、西千葉の活気と誇りに繋がっていくようだ。 2007 年 11 月 23 日の新聞掲載について、あみっぴぃ 内のコミュニティである「TRYWARP & あみっぴぃ 」お知 らせ掲示板に書き込んだところ 46 人のユーザが参加し、93 の書き込みがあった。楽しみながら、好きな時に書き 込む。このコミュニティには応援するコメント、喜びを分かち合うユーザたち、例えば「すごいね。これからにます ます期待。西千葉には期待の若者が多くいて、その人たちと一時期でも一緒に活動できたことを、これからも誇 りに思うよ。」「全国に知れ渡り、来年は講演依頼がどっさり来たりなんかするといいねえ~」など共感と喜び、期 待を表現したコメントが書き込まれていた。ウェブサイトに最初にコミュニィティを立てたのが 11 月 21 日 11:30 分、 21 日に 41 の書き込みがあり、12 月 18 日までに合計 93 の書き込みがあった。以下新聞掲載に関するコミュニテ ィの内容である。 「2007 年 11 月 21 日 11:30 タイトル 読売新聞掲載!(11/23 祝) 作成者 とら 開催日時 2007-11-23 開催場所 全国版 関連コミュニティ 「TRYWARP & あみっぴぃ 」お知らせ掲示板 詳細 ついに読売新聞の全国版デビューです。「あみっぴぃ」が取り上げられます! 見る予定の方は、「見ます!」とコメントを書いて、参加表明をお願いします! ―掲載日:11/23(祝)勤労感謝の日― 真ん中くらいの「くらし」ページで取り上げられます。お楽しみに!全国版なので親戚中にアピールしちゃって下 17 「あみっぴぃ」新聞掲載ページ http://amippy.jp/?m=pc&a=page_h_happy_amippy 26 さい。では、「見ます!」宣言お願いします~↓↓ 募集期限 指定なし 参加者 46 人」 ・2007.01.05 ・2007.01.01 ・2006.09.28 ・2006.05.30 ・2006.02.14 ・2006.02.08 日経流通新聞 「現金が消える日、人や商店に連帯感、千葉 SNS と連携」 朝日新聞 「変わる街のきずな・心伝えて客が仲間に」 日本経済新聞 「観光地・西千葉に来て」 朝日新聞 「『西千葉』サイトで交流・千葉大生ら開設、商店・住民も活用」 日経産業新聞 「千葉大生が運営のNPO 地域限定SNS開設 商店街活性化にも活用」 日本経済新聞 「交流ネット地域限定・千葉大生NPOが開設・商店街活性化に一役」 3.「あみっぴぃ」にみる社会関係資本と社会的ネットワーク効果 3.1 地域 SNS「あみっぴぃ」内の社会的ネットワーク分析の意味 「宝は人脈です」18ゆりの木商店街のリーダー海保眞さんの言葉である。 本章の社会的ネットワーク研究の目的として根底に流れる考え方である。 地域 SNS「あみっぴぃ」はゆりの木商店街を中心とする地域で、IT 講習会に参加した人々を対象にした仮 想世界が作られた。このことは地域社会を地盤として運営される地域 SNS の理想を実現しつつありともいえる。 地域社会という枠組みのなかで「あみっぴぃ」は現実社会と乖離しない仮想社会をつくりあげる。この点は 4(次 章)で行う地域 SNS 内ネットワーク分析の重要性を示すものである。可視化した SNS 内の社会的ネットワークを分 析することは、現実社会で目に見えない社会的ネットワークを再現することにもなるのではないか。また地域 SNS 内のネットワーク分析が現実社会のネットワーク分析に対応する可能性があるとした理由である。 3.2 キーパーソンの類型化 聞き取り調査やウェブサイト観察の結果 9 人のキーマンを選定した。この 9 人は「あみっぴぃ」の誕生と成長に 重要な役割を果たしてきた人たちである。 ・ ・ ・ ・ 表3-1のキーマンの類型化を試みた。以下 4 分類である。 地元商店主:商店街に活動拠点を置く店主・・・A、F、G 専門家:西千葉外から来た専門家、異質性をもち新たな可能性を持つ・・・B、C 大学関係者:大学の人・知・技を持ち地域活性化取り組む大学関係者・・・D、E 地元主婦:コミュニケーションを推進し、大学生の母親代わりとなることもある・・・H、I 上記から地域活性化を実現するには多様な人材が必要であることが示唆される。地域で信頼性を形成して いる地盤をしっかりと作っている商店街のキーパーソン、そして外部から異質な知識、技術、新たな可能性を持 って地域の活動に参加する各分野の専門家、大学の新技術、知識、人材、そしてその潤滑油として、調整役と して、コミュニケーションの推進約としての存在が不可欠であると思う。 このコミュニケーケーションの推進役はときには単身生活を送っている若者の母親代わりとなりコメントを書 き込み、切り刻まれやすいデジタル社会において安らぎをもたらしているようにみえた。社交技術や生活経験が 豊かな主婦の存在は現実社会にいる人材がそのまま仮想社会に登場したということであり、これこそが近接効果 と呼ぶにふさわしい行為であるのではないか。どんな時代においても、ICT がなかった時代にも、主婦あるいは 主夫は日常生活のできごとや日ごろ感じていることを話しながら、他者との関係を形成するための自己表現をお こなっている。そしてまたウエブ日記を書き、他の人の日記にコメントをしながら自己と向かい会い、他者との対 人関係を形成している。これらの人々は ICT 利用を最も必要とする人々かもしれないと思う。このような人々に ICT はまさにコミュニケーションツールとして活用されるのである。 この「あみっぴぃ」での地元主婦の活躍は町内会での井戸端会議等で思い出されるが、現実社会が反映され ている証ではないかと思う。 2007 年 9 月より 2008 年 3 月までほとんど毎日のアクセスの様子を観察しているが比較的年齢の高い主婦が 活発に意見を発表している。トップ 10 に入るのは地元主婦であり、人生経験が豊かで、母親のような温かみのあ る、時にはユーモアがあるコミュニケーションが多い。 18 海保氏のブログ http://blog.goo.ne.jp/amigo-kaiho/e/3bf0504bb70d4e0bc5e9dd987e053a98 27 インターネットはオタク組みが利用していた時代、またビジネス上では仕事としての有効なツールとして活用さ れている時代、次は若者や市民が自由に利用し、ネットワークを広げ、世の中に意見を発信する時代が到来し ようといている。今や「あみっぴぃ」にみるコミュニティは地域の実情を色濃く反映し、主婦や高齢者、情報弱者、 そして従来のように若者も加わり、現実社会のコミュニティに近接して存在している。IT 教室でパソコンは初めて 教わった主婦もアクセストップ 10 入りしている。ネットに違和感なく入りこめるようなあみぃぴぃの工夫が効果を発 揮しているとも思われる。 次に特に地域活動の推進となったキーパーソンをみてみよう。 A19はゆりの木商店会の初代会長であり、この活動の中心人物である。西千葉に地域通貨「ピーナッツ」の導入 を始めてやった人である。広い心と柔軟性に優れ、「あみっぴぃ」での評判は「いつも明るくて色々なことにチャレ ンジするスーパーマン?きっとわくわくどきどきな毎日を送っていらっしゃるんでしょうね。あみーご乾杯!」「みん なに愛される西千葉のリーダー!!いつもパワーをもらっています。」「あみーごさんはオーラがありますね♪西 千葉への情熱が伝わり“西千葉を選んでよかった♪”と思ってきました♪いつも笑顔の絶えない方ですね 第一 印象“人柄がにじみ出てる大らかな方だな~♪”...」などの書き込みがあるように西千葉の太陽のような存在だ。 自分に自信を持ち、人からも信用されている人格者である。ゆりの木商店街で長い時間をすごし、千葉大学生 の成長を見守っている父のような存在でもある。 B20はちょっと離れている習志野市から地域通貨「ピーナッツ」を持って西千葉にやって来た。このような異質の 専門技術を持っている人ほど革新的活動ができる。それにはいくつかの条件が必要ではある。一つには目的を 共有できること、信頼関係が築けること、異なった技術を有することがあげられる。 地域 SNS について B 氏のブログ21には次のような感想を書いている。 『Local SNS あみっぴーによって、人のつながりが劇的に変化しました。面白い事に十数年前 nifty serve で都市 計画フォーラムをパソコン通信で楽しんでいた環境に、極似のネットワーク空間が出来上がっています。都市計 画フォーラムでは、off 会に出ることが正会員として認める儀式になっていました。Local SNS あみっぴーも顔をあ わせてない人の入会は出来ません。FCITY シスオペとしては非常に懐かしい空間です。』 『千葉大学を本拠地として活動している NPO 千葉まちづくりサポートセンターは延藤安弘教授が千葉大に赴任 になって、教授主導で CO 住創なるいわばコーポラティブ住宅の勉強会が始まりました。その勉強会が回を重ね、 都市計画、建築の 専門家を含めて 100 人ぐらいの常連が集まりました。そして NPO 法の施行のタイミングと重 なったこともあって、東京経由全国区で働いている専門家も地 元で何もしていないのは格好が悪いではないか となりました。集まったメンバーは NPO 活動またはそれに類する市民活動をなさっている人、都市計画、まちづ くり、建築の専門家、主婦を中心とする社会人の三種類が混ざっていました。必然的に活動目的が二つになりま した。一つは千葉県下の NPO 活動を支援しよう と言う NPO 専門家の活動、他はまちづくりのコミュニティービジ ネスを自ら行い市民活動を支援しようと言うものです。』 19 20 21 http://amippy.jp/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=18 http://amippy.jp/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=25 http://blog.goo.ne.jp/lets-peanuts/m/200802 28 表 3-1「あみっぴぃ」のキーパーソン(2008 年 1 月 6 日現在 ) 性 別 年 代 地域での役割など A 男 性 60 代 西千葉ゆりの木商店街リーダー 地域通貨ピーナツを最初に利用 B 男 性 70 代 地域通貨「ピーナッツ」起案者 C 男 性 50 代 D E 男 性 男 性 60 代 20 代 自己紹介、友人からの紹介文など(あみっぴぃより) 友 人 数 ゆっくりゆっくり 、いつも明るく、おおらかでいろんな ことにチャレンジするスーパーマン、西千葉の父 205 人 まずいっしょにやってみる 96 人 人間性、考え方 都市計画、まちづくりの専門家 地域通貨支援事業「花」化粧品製造元 徹底的にやる 化粧品会社社長 A さんのビジネス上の戦友 千葉大学学長 3 年目 園芸学部出身、地域貢献型センターや産学連携統括 推進部を設置しイノベーションフォーラム、イベント、研 究発表会、説明会などを進めている。 学長自ら地域との交流、地域連携を実行。大学出身起 業家による「起業論入門」講座、千葉大 OB 社長からの メッセージ」を企画。 2007 年秋より「千葉大学 SEEDS 基金」の募集活動開 始。 学長自身の理念 多重目的計画.何か 1 つは達成する. 多重目的行動.途中を楽しむ. 赤子の目でものを見る. 恥をかくことを楽しむ. 組み合わせの妙をいかす. よい指導者,よい仲間をつくる. 命をいつくしみ,空気,水,光の流れを気持ちよく感 じる. NPO トライワープ代表、 千葉大学の仲間と共に起業 創業 5 年目 地域 SNS「あみっぴぃ」管理運営団体代表 高齢者など超初心者むけ IT 講習会を実施している 地域通貨 IT 決済管理運営 地域 SNS「あみっぴぃ」の最適規模は 小学校区~中学校区 11 人 36 人 531 人 F 男 性 60 代 夫婦でゆりの木商店街で中華料理店経営 地域通貨を 仕入、販売に活用しているお店 だれでも受け入れるコミュニティ基地、食材の仕入れ に地域通貨を活用、 夫婦でゆりの木商店街縁の下の力もち G 男 性 60 代 ゆりの木商店街でレストラン経営、「花」化粧品を在庫し ている所 ゆりの木商店街にあるレストランのオーナーシェ フ、地域通貨ピーナツクラブ西千葉代表 あみっぴぃを紹介してくれたり色々なことを教え てくれた西千葉の母(いや姉か?)。太陽のよう なエネルギッシュな方でむしろこっちが若さをも らってるような感じすら。温かい中にもきっちり 言うことは言ってくれる所が一番嬉しい。 121 人 106 人 H 女 性 40 代 主婦、「あみっぴぃ」の女王とはこの人のこと。 どんな奇抜な日記を書いてもランキングでは絶対に勝 てない。 I 女 性 50 代 主婦、ボランティア活動、市民活動を積極的に取り組 み、市民参加の政治を実践している。 お互いに信頼があるから書けるし、書くことで信 頼が高まる 50 代 隣まちの住民、地域交流・学習会さろん花園主宰、 M&L 代表、M&L では大規模小売業の商品政策を手が けていたが 2006 年から近隣型商店街の商品とサービス についての調査・研究を実施している。 2007 年度 ICP メンバー、著者自身 USA とカナダ流通小売業の視察でショッピングモー ルよりもカリファオルニア「カーメルプラザ」のような近 隣型商店街が人間味や生活感あふれる場として関心 を持つ。 J 女 性 29 124 人 98 人 48 人 3.4 地域 SNS「あみっぴぃ」にみる繋がり 2007 年 11 月 23 日読売新聞22に「つながる SNS 、地域交流 後押し」というタイトルで「あみっぴぃ」について の記事が掲載された。サブタイトルはつながる・・信頼の作り方。その記事によると西千葉のまちづくりにかかわっ てきた元商店会長は「SNS よって、自分の知らないところでいろいろな出会いが起きていることがわかる。そうした 場を逃さず、自分もかかわりたいという思いが、またつながりを作る」と話す。この元商店会長は A である。また記 事のなかで I は「お互いに信頼があるから書けるし、書くことで信頼がまた高まる」と話している。 「あみっぴぃ」 運営者の E は「人と人とのつながりが強い地域では、ますます強くすることができる。ネット上に別の世界を作る のではなく、現実の世界をもっと良くするものだと考えている」と話す。 ここではこの目に見えにくい人との繋がりを SNS という可視化したサイトにより分析する。どのようにこのサイトで は人と人とはどのように繋がっているのだろうか。キーパーソンの友人に関するネットワーク図を描いた。 以下表1とこのネットワーク図のノード番号を対応させて、社会的ネットワークについて分析する。 このネットワーク図の上部は強力な一つノードが他の 500 あまりのノードとの繋がりが見られる。これはインターネ ット上に可能であり、サイバー空間の特有な繋がりを示すものである。 図の下部に関しては複数のノードが複雑に繋がっている。この複雑な繋がりは現実社会の反映と考えられる。 図 3-1 あみっぴぃのキーパーソン・ネットワーク全体図(峰滝和典作成) 22 売新聞掲載(11/23 祝) http://amippy.jp/?m=pc&a=page_c_event_detail&target_c_commu_topic_id=2246&all=1 30 下記図 3-2 は図 3-1 のネットワーク図の現実社会にもっとも対応していると思われる箇所を拡大した。 図 3-2 二本足のカカシ23(172)を中心としたあみっぴぃのキーパーソン・ネットワーク拡大図 ネットワークの下部は特に現実社会を反映した複雑な繋がりである。最も強力なキーパーソンはノード33、ノー ド 171、ノード 172 は弱い紐帯である二本足のカカシである。二本足のカカシのネットワークは入り組んでいるが、 ゆりの木商店街には比較的新しく連携した隣まちの住人である。現在マオアミーゴは 49 人(2008 年 1 月現在) であり、アミーゴ数ではトップクラスではない。西千葉ゆりの木のキーパーソンは 100 人以上のアミーゴを持つ。 運営関係者は 300 人から 500 人程度のアミーゴを持っている。二本足のカカシは西千葉との関連がない友人も 招待している。その友人はオフ会を通じて「あみっぴぃ」内で別の友人ができていく。「あみっぴぃ」内で意見交 換をしながら実際に出会うこともある。 キーパーソンを中心として小規模なグループ同士がさらに他のキーパーソンを中心とする小規模なグループ と繋がっている。複数のグループと繋がり、ノードが重なりあっている。図からでは判断しにくいが一つのノードが 巨大なネットワークを形成するのではないところが整然とした組織的ネットワークと異なっているのではないかと 想像する。地域社会の繋がりは複数のノードが複雑に繋がりあっている様子であり興味深い。異質な性質を持っ た人が繋がるとさらにネットワークを広げていくといわれているがこの図からは判断しにくい。 23 二本足のカカシ ネット上で使用している著者のニックネーム 31 4 535 536 537 538 539 540 541 542 543 152 173 148 175 95 105 5 77 213 200 196 187 184 183 195 18 178 17 193 185 181 126 207 48 40 56 26 46 39 15 86 534 31 32 107 159 47 138 149 125 104 27 34 8 528 531 112 19 146 143 527 524 523 522 521 164 115 102 127 132 74 158 533 123 153 13 169 21 136 16 25 42 119 1 12 111 44 93 43 100 167 121 122 10 71 165 61 135 97 529 73 20 118 11 530 55 103 80 67 168 532 99 90 62 23 133 51 98 59 38 92 210 30 88 3 170 37 28 198 114 201 72 60 50 202 6 76 91 82 52 166 70 57 68 157 147 140 89 53 33 180 186 142 79 63 151 87 96 171 192 141 54 203 189 108 64 182 176 134 106 85 22 199 129 160 211 174 156 161 120 83 35 24 41 208 205 94 36 144 188 7 69 194 179 78 172 137 65 212 204 177 124 81 58 206 190 163 101 214 197 191 75 14 145 84 209 2 154 130 110 128 162 9 49 520 519 45 139 150 526131 66 518 525 113 図 3-3 仮想世界で特別なネットワークを持っていた人物を取り除いたネットワーク図((峰滝和典作成) この図は 109 番のキーパーソンを取り除いたネットワーク図である。109 番は IT 起業家であり、 「あ みっぴぃ」の運営者である。なぜこのキーパーソンのいないネットワーク図を描いたかというと、この 109 番がもっともインターネット上での影響力があり、強力なネットワークを持っている。この 109 番 を取り除くということは「あみっぴぃ」導入以前の状態に近づく。最も強くデジタル化を反映したネッ トワークを取り除き現実社会のネットワークに近づくということも考えられる。また現実社会にはこの ような繋がりはないであろうが、図 3-1 に見られるネットワーク図よりは図 3-3 は現実社会のネットワ ークに近い自然なネットワーク図ではないかと考える。 3.5 あみっぴぃ導入前と導入後キーパーソンの活動値の変化 「あみっぴぃ」導入前と導入後のキーパーソンの活動値を推定して比較した表 3-2 である。この表は以下のよう に設定して作成した。推定値は新聞記事、インタビュー結果、ネット上での活動などを総合的に著者が判断した。 この数値の客観性や活動度の算定についてはさらに詳しく検討が必要であり課題としたい。活動値の推定方法 についてはネットワーク図の作成に協力を頂いた峰滝和典チーフとの話し合いで算定した。キーパーソンのゆり の木商店街からの住居・仕事場までの距離及び活動地域、ゆりの木商店街での滞在時間、ゆりの木商店街を 中心とする地域社会での活動度を推定した。 ・ キーパーソンのゆりの木商店街からの住居・仕事場までの距離、ゆりの木商店街での滞在時間、活動度を5 段回5,4,3,2,1に設定して数値化した。 ・ 地域社会での活動度が高い順に5段回5,4,3,2,1に設定して数値化した。 ・ 住居・仕事場に関しては西千葉ゆりの木商店街に近い順に5,4,3,2,1、ゆりの木商店街に住んでいる場 合を5とし、離れると数値が下がるように設定した。 ・ 合計数値が高いほど地域で活動しているように設定した。 ・ 現実(緑斜体)と仮想(ブルー)で文字の色書と体に違いを出し表示した。 ・ 導入前の繋がりについては著者が推定した数値である。現時点で新聞記事やネット上の書き込み、インタビ ューなどを辿り推測した。 32 結果 ・ 導入前の活動値トップ10は A、E、F,G,B,D,H,IJ、C の順であった。 ・ 導入後の活動値トップ10は E,A,H,I,F,B,G,D,J,C の順であった。 ・ 導入前と後で変化したことは IT に強い 20 代運営者の活動値が高くなっている。 ・ また二人の活動的な主婦も活動値が導入後にアップしている。 地域 SNS の導入によって若者や主婦、IT を使いこなす高齢者の活動値が高くなることを意味する。 表 3-2 西千葉のキーパーソン(A~J)の活動値・・ あみっぴぃ導入前と導入後の比較 導入前 A B C D E F G H I J 導入後 1 2 3 4 5 6 7 8 5 4 1 5 5 5 5 3 3 2 5 1 1 1 4 2 2 3 3 2 4 3 1 3 4 4 4 3 3 0 140 80 30 90 130 110 110 90 90 40 5 4 1 5 5 5 5 3 3 2 5 1 1 1 4 2 2 3 3 2 5 5 2 4 5 5 5 5 5 3 150 100 40 100 140 120 120 110 110 70 ネット上友人数 9 10 4 3 4 4 1 1 2 2 5 5 4 3 4 2 5 5 5 5 3 3 11 220 180 60 140 240 190 180 210 210 130 12 205 96 11 36 531 124 98 121 106 48 総和(11+12) 13 425 276 71 176 771 314 278 331 316 178 この活動値の算定については試験的に算定されたものであり、再度算定しなければならない。導入前は1~4 での数値で表した。導入後は 5~11 の数値で表した。そしてネット上の友人数 12(アミーゴの数)を加えるとキー パーソンの総合的活動値 13 が算定できる。 1 はゆりの木商店街での滞在時間は就業時間を含んだ想定数字である。2はゆりの木商店街からの住居地域 までの距離である。3は導入前の活動推測値、4は活動値総和(1+2+3)×10(アミーゴ数と桁数を同レベルに 調整)である。 5~11 は導入後の推定値である。は1と同じでゆりの木商店街での滞在時間は就業時間を含んだ想定数字 である。6 は2と同じでゆりの木商店街からの住居地域までの距離である。 7は導入後の活動推測値、8 は導入後の活動総和(5+6+7)×10(アミーゴ数と桁数を同レベルに調整)であ る。9 は「あみっぴぃ」での活動値、10 は「あみっぴぃ」でのアクセス数を 5 段階評価した数値、11 は現実社会と 仮想社会での活動値の総和である。12 はネット上での友人数(アミーゴ数)である。13 は 11+12 の活動値にアミ ーゴ数を加算した。 この表では地域社会に影響を強く及ぼすと思われるキーパーソンの活動を「あみっぴぃ」導入前と導入後で比 較した。活動的な人はより活動的になることがなるのではないかと思う。これはキーパーソンの日記からも推察で きることと一致する。しかしながらこの推定方法については活動値の算出の仕方など未開発な点があまりにも多 く、今後の課題としたい。 3.6 あみっぴぃ導入前と導入後キーパーソン・ネットワークの変化の分析(峰滝和典) 本節では、先述の図 3-1 と図 3-3 のネットワークに関して、代表的な中心性(Centrality)指標を計測することで、 地域 SNS 導入以前と以後のネットワーク構造に関して、定量的な分析を加える。 地域 SNS 導入以前とは、便宜上、「あみっぴぃの運営者」である、キ-・パ-ソンを取り除くという方法で近似し た。正確には、この取り除かれたネットワークのなかにも、地域 SNS 導入以前からつながりのあった人も含まれて いる可能性は否定できないが、今回便宜上このような操作を行い、地域 SNS 導入以前と以降の比較を行った。 中心性指標として、次数、近接性、媒介性、固有ベクトルを計測してものが、表 3-3-1 と表 3-3-2 である。 次数は、それぞれのノードがネットワークのなかで直接つながっているノードの数を計測し指標化したものであ る。次数の数が多いほど中心性が高いという、もっとも単純な中心性指標である。 近接性はノードとノードを結ぶ最短距離で測る。ネットワークが広がってくると近接性の平均値は大きくなる傾 向にある。 33 媒介性は、そのノードを媒介しないとつながらないノード数で計測する。行為者間の連結の関係上の重要性 に着目した指標である。 固有ベクトルは、行為者の中心性をその行為者が連結する他者の中心性の関数と捉えた指標である。人々か ら関係の対象とされ関わりを求められている人と連結するほどこの指標は高くなる。 以上の観点で地域 SNS 導入以前と以後の、キーパーソン・ネットワークを比較すると、いずれの指標も地域 SNS 導入後の方が大きくなっていることがわかる。これを解釈するとネットワーク自体が大きくなると同時にネット ワーク内部の人々の結びつきが密になっていると思われる。 媒介性が高まっているということは単にネットワークが広がりをもってきているだけでなく、ネットワーク同士をつ なぐ「ゲート・キーパ」が増加してきていることを示唆し、異なるタイプのネットワークが連結され、ネットワーク参加 者の多様性がもたらされていることも推察される。 表 3-3-1 中心性指標(地域 SNS 導入以前) ((峰滝和典作成) 次数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 近接性 0.35 2.02 0.00 34.14 媒介性 0.33 0.00 0.33 0.33 0.04 0.57 0.00 11.82 固有ベクトル 2.76 5.43 0.00 64.98 表 3-3-2 中心性指標(地域 SNS 導入以後) (峰滝和典作成) 次数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 近接性 0.66 4.11 0.19 83.89 媒介性 45.73 4.46 34.03 86.12 0.22 3.78 0.00 85.46 固有ベクトル 4.07 4.52 0.57 75.22 4. おわりに 4.1 結論 地域 SNS の成長には図 1-1「あみっぴぃの成長メカニズム」でみたように複数の要素が関連する。これらの要 素が地域 SNS の成功の条件になりえる。 ゆりの木商店街での地域 SNS「あみっぴぃ」の導入、運営により社会関係資本の形成と社会的ネットワーク効 果においての地域活性化が進行している。地域 SNS の活用に関しては一定の条件も必要となる。条件とは信頼 性、安全性、情報弱者への対応、多様性・異質性の受容などである。地域 SNS は地域に密着した現実社会に寄 り添うような補完的ツールにとどめるように設計・運営されていることが重要である。 地域 SNS「あみっぴぃ」導入前に比較し導入後は地域活動を推進するキーパーソンの活動推定値は増大した。 地域 SNS は現実社会に散在するさまざまな要因例えば、情報、地域に点在する人々、を繋ぎネットワーク効果を 生み出す。 地域 SNS は地域コミュニティや地域経済活性化を促す有効なツールとして地域のさまざまな年代 の住民に利用される可能性がある。 西千葉地域では千葉大学との連携による人的協力、大学の知識や知見などによる影響、最新技術の提供な どが地域コミュニティや地域経済活性化の最も大きな要因として抽出された。このように大学生や地元の人々、 全国から視察に集う人々との協業を通して、商店街を中心に豊かな社会関係資本が形成されていく。 図 3 のネットワーク図からも明らかなように現実社会から多様な人々を取り込み小さなネットワークが繋がり、水 平的に拡大している。 ネットワークの拡大により、有効な人的資源、市民参加、アイディア、知恵、各種の情報 を共有することにより地域活動を推進する実行力などがもたらされる。 34 4.2 今後の課題・・地域活性化のための新しい ICT サービスとしての地域 SNS ここ数年商店街再生について考えてきたがなかなかその手がかりは得られなかった。本調査を実施し地域活 性化や商店街再生の新たな視点を得た思いである。 地域や商店街においては長い間築かれていた人間関係が存在していた。このような地域に形成されていた 社会関係資本の活用こそ商店街再生の糸口になるのではないかと思う。 今後社会関係資本の形成のためのツールとしてあるいは社会的ネットワーク構築のための地域 SNS 利用が 考えられる。同時に地域 SNS などの ICT 導入とともに発生する問題やリスクの検討することが必要である。現在 ICT を利用する者と利用しない者の格差が広がっている。ICT を地域住民全員が使用することは不可能である が、家族としての単位での利用も考えることができる。高齢者や若者を中心に単身世帯が増加しているが、若者 は ICT 利用が活発であり、高齢者には直接訪問するなどの別の対策が必要となることだろう。負の側面に配慮し ながら、正の側面に焦点を合わせて、志を共有できる方々とネットワークを結び ICT 利用などによる地域活性化 活動の連携を進める時である。 本事例を参考に商店街の活性化のための新 ICT サービスとして地域 SNS の導入、運営が考えられる。しかし ながら地域 SNS が有効なツールとなるためには、長い間培っている社会関係資本が存在することが不可欠であ り、大学が提供したような人材、知識や知恵、技術も必要である。また他の条件として起業を手助けする仕掛け や社会関係資本の形成を促す地域通貨の導入なども合わせて考えることが重要である。 今後ある一定の条件のある地域において新しい ICT サービスである地域 SNS の導入と運営により地域活性化 の可能性を見出すとともに全国に普及されることを期待する。 謝辞 本調査はその対象となった西千葉地域及び地域 SNS に関係する実に多くの方々の協力をいただいた。 ゆりの木商店街のリーダー海保眞氏、地域通貨ピーナッツを起案し運営している村山和彦代表、あみっぴぃ のアクセスデータなどの資料提供に協力していただいた NPO トライワープ虎岩雅明代表、豊富な資料を準備し ていただきインタビューに対応していただいた千葉大学の古在豊樹学長、NPO 千葉まちづくりセンター代表で あり都市計画に基本を教えていただいた千葉大学福川裕一教授(都市計画)、フィールドワークの重要性を示 唆した元千葉大学工学部工業意匠学科大給近達教授(文化人類学)、方法論を中心に助言を得た元千葉大 学工学部工業意匠学科森典彦教授(デザイン工学、デザイン方法論)、1980 年「千葉の時代」活動を通し地域 と世界に視点を持つことの重要性を示唆した元千葉大学教授の村山元英教授(国際経営文化学会会長)、ICP において地域 SNS プロジェクトを立ち上げた峰滝和典チーフと異なった領域で活躍するメンバーなどさまざまな 人々との出会いと繋がりがあり本研究ができた。 ご指導いただいた諸先生方、協力いただいた地域の方々、友人、家族に感謝すると共に私たち ICP 地域 SNS プロジェクトに協力を惜しまなかったすべての方々にお礼を申し上げたい。 追記:本研究までの経緯 2006 年より著者は地域と近隣型商店街に調査対象を変更した。以前は流通小売業における大型店の商品 政策を手がけていた。2002 年放送大学大学院第一期生で林教室坂井ゼミに入学した。4 年間にわたる林敏彦 教授、坂井素思准教授らの指導により公共性の強い、商店街に関心を持つに至った。林敏彦教授による 2005 年 7 月「放送大学比較地域研究センター(放大比較地研)(Open Institute for Comparative Regional Studies:OICRS) 」に参加し、地域への関心がより強くなっていった。 2007 年度情報通信政策研究プログラム(ICP 助成プログラム)の助成により地域 SNS 研究チームがネット上の iSpring(SNS) での出会いがきっかけになり峰滝和典チーフにより結成された。このメンバーの 1 人として研究に 参加できたことは幸運であった。本稿の作成は同 ICP 地域 SNS 研究会で得た知見が基盤となった。特に社会ネ ットワークに関しては ICP 理事である坂井素思放送大学准教授らから貴重な助言を受け、峰滝和典チーフの協 力を得て行った。 最後に今後この調査研究がさらに進み、ICT を利用した地域再生や商店街の活性化に役立つよう、ご鞭撻と ご支援を賜りますようお願い申し上げます。 参考資料・参考文献・参考 URL・参考論文 C・アレグザンダー、平田翰那訳(1984)「パタン・ランゲージ・・環境設計の手引」鹿島出版会 延藤安弘(2001)「何をめざして生きるんや・・人が変わればまちが変わる」プレジデント社 福川裕一他、日本建築学会編(2005)「中心市街地域活性化とまちづくり会社」丸善株式会社 福川裕一(1999)「ぼくたちのまちづくり」岩波書店 35 J・ジェコブス、黒川紀章訳(1961)「アメリカ大都市の死と生」鹿島出版会 Jane Jacobs(1961)「The Death and Life of Great American Cities」 石原武政(2006)「小売業の外部性とまちづくり」有斐閣 矢作弘(2005)「大型店とまちづくり」岩波新書 宇沢弘文(1974)「自動車の社会的費用」岩波新書 丸田一、國領二郎、公文俊平 (2006)「地域情報化 認識と設計」NTT 出版 庄司昌彦他 (2007)「地域 SNS 最前線」アスキー 宮田加久子(2005)「インターネットの社会心理学」風間書房 パトリシア・ウォレス(2001)「インターネットの心理学」NTT 出版 総務省(2007) 「地域 SNS 動向調査報告書」 林敏彦、大村英昭(1994)「文明としてのネットワーク」NTT 出版 林敏彦(2004)「都市のガバナンス:領域、人民、権力に関する考察」財団法人阪神・淡路大震災記念協会 調 査報告書 Vol.8 林敏彦委員研究会 調査報告書 最新版 坂井利之、東倉洋一、林敏彦編著(2003)「高度情報化社会のガバナンス」NTT 出版 依田高典(2006)「ブロードバンド・エコノミクス、第 3 章 ネットワーク経済学」 http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ida/4Hoka/BB/BB3netecon.pdf 高崎経済大学付属産業研究所(2006)「事業創造論の構築」日本経済評論社 内閣府国民生活局(2003)「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」国立印刷 局 http://www.npo-homepage.go.jp/data/report9_1.html グラノヴェタ 「弱い紐帯の強さ」 http://www.stanford.edu/dept/soc/people/mgranovetter/documents/granstrengthweakties.pdf グラノヴェタ 渡辺深訳(1974)「転職」ミネルヴァ書房 野沢慎司 (2006)「リーディングス ネットワーク論」勁草書房 日本経済新聞(2004.8)山内直人「ソーシャルキャピタル考」 BBL セミナー(2007.12.7)John ZYSMAN 「"Building on the Past, Imagining the Future: Competency-Based Growth Strategies in an Era of the Modular Production and the Services Transformation"」 参考記事 朝日新聞(2004.12.7)「千葉大生がパソコン教室」 日本経済新聞(2006.2.8)「交流ネット 大学地域限定 商店街活性化に一役 千葉大生 NPO が開設」 朝日新聞(2007.1.1)「変わる街のきずな」 日経流通新聞(2007.1.5)「人や商店に連帯感、現金が消える日、変わるマネー奉仕活動で商業活性化」 千葉日報(2007.4.26)「起業講座スタート 千葉大生に OB が講義」 読売新聞(2007.11.23 )全国版「つながる SNS 地域交流を後押し」 サンケイリビング千葉(2008.1.26)「挨拶ができる町を目指して千葉大学生がスタート、 パソコンが学生と地元西千葉をつないでいく」トライワープ代表虎岩さんへのインタビュー記事 千葉まちづくりサポートセンター会報(2008.1)「ピーナッツ通信・・ピーナッツとボーンと西千葉と・・」運営委員コラ ム(海保眞) 業界紙「ふれあいねっと」(2008.2.1)「地域で生きる、地域を拓く、ピーナッツクラブ西千葉」・・海保氏へのインタ ビュー記事 参考 URL あみっぴぃ http://amippy.jp/ 千葉大学 http://www.chiba-u.ac.jp/ ゆりの木商店会 http://www.chiba-shopstreet.com/list/062.html 千葉市商店街連合会 http://www.chiba-shopstreet.com/member/thuou_ku.html NPO 法人・千葉まちづくりサポートセンター http://www.jca.apc.org/born/ ピーナッツクラブ:地域通貨ピーナッツ起案者村山和彦氏のサイト http://www.seaple.ne.jp/~murayama/ ピーナッツクラブ西千葉 http://nishichiba.jp/ ピーナッツ 電子決済サイト http://daihuku.net/ アミーゴ海保のブログ http://blog.goo.ne.jp/amigo-kaiho 株式会社レイビスパーク http://www.reibispark.co.jp/company.html 36 巻末資料 調査票 地域 SNS 運営に関する調査 平成 19 年 8 月 27 日 ・・・調査の趣旨とお願い・・・ 情報通信政策研究プログラム「地域 SNS 研究会」では 2007 年度 4 月より地域 SNS の調査研究をしてい ます。地域 SNS は近年急速に利用されはじめました。しかしながら地域 SNS が、地域社会や地域経済にど のような影響を及ぼしているか、具体的にあきらかになっておりません。 そこで、いくつかの代表的地域 SNS の運営に従事しておられる方々に実態をおうかがいし、地域 SNS の 特質、課題、可能性等を浮き彫りにすべく、本調査を企画しました。 この調査票は情報通信政策研究プログラム「地域 SNS 研究会」に所属する担当ものもが直接お伺いし 記入させていただく予定です。また調査結果についてご希望の場合は報告いたします。なお個人情報の 扱いとご回答内容に関しては留意し、調査研究以外の用途には使用いたしませんので、ご迷惑がかかるよ うなことはございません。 お忙しい中を恐縮でございますが、調査の趣旨をご理解の上、ぜひともご協力賜りますようお願い申し 上げます。 なお、本調査に関する質問・お問い合わせは直接お伺いしたメンバーにお願いいたします。 情報通信政策研究プログラム URL http://www.officepolaris.co.jp/icp/ 情報通信政策研究プログラム地域 SNS 研究会代表 峰滝和典 メンバー 庄司昌彦 吉田倫子 立野伸治 山田裕子 37 質問1.運営者の属性について、性別について 回答1. a.男性 b.女性 質問2.運営者の年代をお聞かせください。 回答2. a.20 歳以下 b.21~30 歳 d.41~50 歳 e.51~60 歳 c.31 歳~40 歳 f.60 歳以上 質問3.職業はなんですか。 回答3. a.学生 b.自営業 c.会社員 質問4.運営母体について 回答4 a.企業 b.自治体 c.NPO d.その他 d.役所等公的機関 e.その他 質問5.地域SNSを始めたきっかけ、目的について 回答 5. 質問6.会員になるためのルールについて 回答6. a. 招待制 b.自由登録 c.その他 質問7.会員に登録してもらう情報はどのようなものがありますか。 (いくつでも) 回答7. 質問8.運営者はどのような人を招待していますか。 回答8. 質問9.運営者による招待数(人数、割合等) 回答9. 質問 10.運営者が企画したイベント数(回数、頻度、参加者数、内容) 回答 10. 回(開始時期 3 ヶ月間) 質問 11.ユーザが企画したイベント数(回数、頻度、参加者数、内容) 回答 11. 回(開始時期 3 ヶ月間) 回(最近の 3 ヶ月間) 回(最近の 3 ヶ月間) 質問 12 活発なユーザはどのような人たちですか。 回答 12. 質問 13.地域SNSのユーザが自由に集まれる場所がありますか。どんな場所ですか。 回答 13. 質問 14.バナー広告の効果について、広告出稿者の満足度は高いですか。 回答 14. 質問 15.周辺店舗のコミュニティの活性度について 回答 15. 質問 16.地域の経済活動を促すような仕組みを持っていますか。(地域通貨、ポイント制等) 回答 16. ありがとうございました。 38