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ファン活動としての二次的著作物における権利処理

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ファン活動としての二次的著作物における権利処理
日本知財学会第12回学術研究発表会要旨概要
日本大学大学院 知的財産研究科 第5期生
松本翼
平成26年11月30日、東京理科大学 葛飾キャンパスにて
1. 研究の目的
ファン活動としての二次的著作物における権利処理方法の考察
2. 問題意識
昨今、Web や SNS の発達により個人による創作物の発信がカンタンになってきた。そ
れにより、既存の著作物に依拠した二次的著作物を目にすることが増えてきている。そ
れらの多くは、権利者の許諾を得ていないものである。権利者の許諾なく著作物を複製・
翻案して発信することは、本来であれば違法行為であるが、現在では権利者の黙認によ
ってその文化が成り立っている。このようなファンアートを俗に「二次創作」と呼ぶ。
二次創作を行うユーザーの間には、暗黙の了解が存在し、それによって権利者の黙認
も行われてきていた。しかし、近年イラスト投稿型 SNS 等で二次創作物に簡単に触れる
ことができるようになったことにより、暗黙の了解や風習を知らないユーザーが創作者
として活動を行い、権利者とトラブルになる事案などが発生してしまうようになってき
ている。二次創作は権利者とユーザー間の複雑な利害関係のバランスの元に成り立って
いる独特な文化形態であり、このままではその文化圏が崩壊する恐れもある。そこで、
権利者とユーザー双方に利益がある形で、権利処理を行う方法がないかという考察を行
った。
3. 考察
現在の権利者の黙認により、二次創作が作られている環境は維持できるのであれば、
手を加えないことが望ましい。しかしながら、今後どのような事態が発生するかは誰に
も分からない。
そこで、様々なケースを考えた結果、JASRAC のように各種権利の窓口を一本化した団
体を設立し、ユーザーに対し、自宅からでも Web ベースで簡易にライセンス申請を行え
る集中管理窓口を設定できれば、適切な権利処理がなされ、二次創作文化における不安
定さが解消されるようになるのではないかという結論に至った。
使用料の徴収により二次創作意欲を萎縮させるユーザーが現れることは想定できるが、
一定以下の発行部数や無償頒布での創作に対しては控除制度を設け、その範囲までは無
償もしくは低廉でのライセンス発行を行うことなどで、ユーザー離れを防げるのではな
いかと考えている。
なお、この制度の目的は、二次創作を行うユーザーに対して、他の権利者から素材と
なる創作物を借りているという意識を継続的に持たせることである。
4. 学会発表を終えて
学会発表という場に初めて参加したことで、研究科外の方々から様々な刺激を受け、
修了に向けて研究を行う活力を得ることができた。当初は見切り発車ではあったが、無
事発表を終えることができ、ただ聴きに行くだけではなく、学生発表という形で学会に
参加することができて良い経験となった。
次年度の発表では、修論のベースとなる話ができればと思っている。
以上
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