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1 社会的孤立に陥りやすい高齢者の特徴

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1 社会的孤立に陥りやすい高齢者の特徴
第3節
高齢者の社会的孤立と地域社会
∼「孤立」から「つながり」
、そして「支え合い」へ∼
前節までで見たように、我が国は世界に冠た
「近所や友人との付き合いの程度」を家族や地
る長寿国であると同時に、健康寿命も世界一で
域社会との交流の指標として用い、どれくらい
あり、多くの高齢者が健康で就労意欲も高く、
の高齢者が孤立状態にあるのか、また、孤立し
家族や地域とのつながりを持ちながら生活して
ている高齢者の特徴は何かを考察する。以下、
いる。しかし、その一方で、高齢者の中には、
①から④は、すべて60歳以上の男女を対象とし
一人で暮らし、家族はいないか、いても行き来
た調査の結果である。
がまれで、隣人や友人との付き合いも乏しく、
日常的な人との交流のない社会的に孤立した生
活を送る人もいる。
人との交流のない生活では生きがいや張り合
いを感じることがむずかしい。また、孤立死や
①「日頃の会話が少ない」(2∼3日に1回以
9%である一方、
下(注1))者は、全体では7.
単身世帯では3割以上
日頃の会話の頻度 (電話や E メールも含む)
高齢者による犯罪の増加、高齢者を対象とした
についてみてみると、全体の9割以上は「毎日
悪質商法の蔓延といった問題も高齢者の社会的
会話をしている」と回答し、「2∼3日に1回
孤立と深く関係している。
9%に留まっている。
以下」と回答した人は7.
本節では、社会的孤立に陥りやすい高齢者の
しかし世帯構成別や健康状態別等の属性別にみ
特徴とその背景、社会的孤立から生ずる問題に
ると、一人暮らしや健康状態が良くない者、未
ついて概観し、あわせて社会的孤立を解消する
婚者や離別者、暮らし向きが苦しい者では、日
ための取組の方向性について考察する。
頃の会話が少ない人が多く、「2∼3日に1回
なお、ここでは、「社会的孤立」を「家族や
以下」と回答した人が、男性の一人暮らしでは
地域社会との交流が、客観的にみて著しく乏し
41.
2%、女性の一人暮らしで32.
4%、未婚者で
い状態」という意味で用いる。単身世帯でも、
33.
0%、離別者で27.
0%、暮らし向きが苦しい
家族や近隣・友人との交流がある状態は「社会
3%であった(図1−3−1)
。
人では19.
的孤立」ではなく、一方、家族と同居していて
も、家族との日常的な交流がないうえに外部の
(注1)
「2∼3日 に1回 以 下」は「2∼3日 に1回」
、
「1
週間に1回」
、
「1週間に1回以下、ほとんど話をしな
い」と回答した者の合計
近隣・友人とも接触が乏しければ、「社会的孤
立」に陥る場合もありうる。
1
社会的孤立に陥りやすい高齢者の特徴
②「困ったときに頼れる人がいない」者は、全
3%である一方、男性単身世帯では
体では3.
24.
4%
∼単身世帯、未婚者・離別者、暮らし向きが苦
「困ったときに頼れる人がいるか」について
しい者、健康状態がよくない者が社会的に孤
7%が「いる」と回
聞いたところ、全体では96.
立しやすい∼
3%であった。
答し、「いない」
と回答した者は3.
まず、内閣府が実施した調査をもとにして、
一方、属性別にみると、男性の一人暮らしでは
「会話の頻度」「困ったときに頼れる人の有無」
24.
4%、女性の一人暮らしでは9.
3%が「困っ
たときに頼れる人がいない」と回答、また、未
1%、未婚者では28.
7%、暮らし向きが苦
は27.
2%、離別者では11.
3%、暮らし向
婚者では20.
8%であった(図1−3−3)
。
しい人では28.
7%であった(図1−3−
きが苦しい人では10.
(注2)
「友人との付き合いが少ない」は友人との付き合い
を「していない」
、
「あまりしていない」と回答した者
の合計
2)
。
③「友人との付き合いが少ない(注2)」者は、全
④「近所とほとんど付き合いがない」者は、全
5%で あ る 一 方、未 婚 者 で は
体 で は13.
9%である一方、男性単身世帯では
体では5.
28.
7%、暮らし向きが苦しい人では28.
8%
21.
6%
「友人との付き合い方」について聞いたとこ
「近所との付き合い方」について聞いたとこ
ろ、「友人との付き合いが少ない」と回答した
ろ、「ほとんど付き合いがない」と回答した人
5%であった。一方、属性別にみ
人は全体で13.
9%であった。一方、属性別にみる
は全体の5.
3%、女性の一
ると、男性の一人暮らしでは19.
6%、未婚者では
と、男性の一人暮らしでは21.
5%、健康状態がよくない人で
人暮らしでは18.
21.
2%、健康状態がよくない人では13.
9%で
図1−3−1
(%)
45
〈会話頻度〉あなたは普段どの程度、人(同居の家族を含む)と話しますか?
(電話や E メールも含む)
41.2
1週間に1回以下、
ほとんど話をしない
40
11.8
35
30
6.6
3.9
16.5
15
5.3
7.9
1.9
1.1
4.9
5
0
22.0
22.7
4.4
1.0
0.1
3.3
4.0
1.0
0.8
2.2
5.1
1.0
1.3
2.8
4.4
1.5
0.4
2.4
4.5
0.6
0.8
3.2
6.6
1.5
0.7
4.4
2.3
8.9
0.0
3.5
0.8
0.6
2.1
15.7
2∼3日に1回
12.8
7.8
9.8
20
10
27.0
25.5
6.7
25
1週間に1回
33.0
32.4
2.1
15.7
3.0
1.7
6.4
10.9
12.8
19.3
7.4
18.1
1.2
10.7
11.0
2.0
2.0
7.0
6.4
1.6
1.0
3.8
5.6
2.8
2.8
5.6
全体
一人暮らし 夫婦のみ その他世帯 一人暮らし 夫婦のみ その他
よい・
ふつう
離別
未婚 大変苦しい やや苦しい 普通
やや
大変
あまり 配偶者あり 配偶者あり 死別
(N=3,398) 世帯
世帯 (N=779) 世帯
世帯
世帯
まあよい (N=996) よくない・ (同居) (別居) (N=631) (N=141) (N=94) (N=243) (N=653)(N=2,214)ゆとりがある ゆとりがある
(N=259) (N=596) (N=942)(N=1,612)
(N=119) (N=703)
(N=252) (N=36)
よくない (N=2,481)(N=51)
(N=790)
男性
女性
性・世帯構成別
健康状態別
婚姻状況別
暮らし向き別
資料:内閣府「高齢者の生活実態に関する調査」
(平成20年)
図1−3−2
困ったときに頼れる人がいない人の割合
(%)
30
困ったときに頼れる人が
いない人の割合
24.4
25
20.2
20
15
11.3
9.3
10
5
0
5.9
5.2
3.3
2.8
1.5
3.0
1.1
2.7
2.9
10.7
3.8
2.1
4.1
2.5
2.0
0.0
全体
一人暮らし 夫婦のみ その他世帯 一人暮らし 夫婦のみ その他
よい・
ふつう
あまり 配偶者あり 配偶者あり 死別
離別
未婚
大変苦しい やや苦しい 普通
やや
大変
(N=3,398) 世帯
世帯 (N=779) 世帯
世帯
世帯
まあよい (N=996) よくない・ (同居) (別居) (N=631) (N=141) (N=94) (N=243)(N=653)(N=2,214)ゆとりがある ゆとりがある
(N=119) (N=703)
(N=259)(N=596) (N=942)(N=1,612)
よくない (N=2,481)(N=51)
(N=252) (N=36)
(N=790)
男性
女性
性・世帯構成別
資料:内閣府「高齢者の生活実態に関する調査」
(平成20年)
健康状態別
婚姻状況別
暮らし向き別
第
1
章
高
齢
化
の
状
況
第
3
節
高
齢
者
の
社
会
的
孤
立
と
地
域
社
会
あった(図1−3−4)
。
一人暮らしほどではないが、他の世帯と比較す
ると孤立している者が多く、特に「日頃の会話
以上、4つの項目から60歳以上の者の実態を
が少ない者」は約3人に1人となっている。
見ると、全体としては、「毎日会話がある者」
、
婚姻状態別では、未婚者は孤立している者が
「困ったときに頼れる人がいる者」
、「友人・近
多い。未婚者では「日頃の会話が少ない者」
・
隣との付き合いがある者」がそれぞれ9割前後
「友人の付き合いがない者」は約3割、「困っ
であり、総体的には家族や友人・近隣との交流
たときに頼れる人がいない者」
・「近隣との付き
が図られている。
合いがほとんどない者」は約2割であった。ま
しかし、属性別に分析すると男性の一人暮ら
た、離別者も孤立している者が多く、死別者と
しでは、「日頃の会話が少ない者」が5人に2
比較すると、「日頃の会話が少ない者」の比率
人以上、「困ったときに頼れる人がいない者」
7倍、「困ったときに頼れる人がいない
は約1.
が約4人に1人、「近隣との付き合いがほとん
者」の比率は約3倍、「近隣との付き合いがな
どない者」が5人に1人以上と社会から孤立し
6倍であった。
い者」の比率は約1.
また、健康状態がよくない者や暮らし向きが
ている者が多い。女性の一人暮らしでは男性の
図1−3−3
友人との付き合いについて
(%)
35
30
28.7
27.1
あまりしない
28.8
していない
25
19.3
20
15
10
13.5
6.7
7.2
12.6
5
6.3
0
11.3
18.5
7.7
12.5
8.0
10.8
6.4
4.6
13.4
9.6
8.5
19.6
19.9
3.9
5.7
13.8
14.0
18.1
14.9
6.0
6.1
6.0
7.3
3.5
11.9
7.8
7.0
11.2
15.8
7.0
17.3
13.9
7.4
15.7
14.2
14.9
10.6
5.2
4.9
2.5
11.7
10.0
6.1
14.8
7.4
4.3
5.6
11.1
4.8
2.4
2.4
2.8
全体
一人暮らし 夫婦のみ その他世帯 一人暮らし 夫婦のみ その他
よい・
ふつう
あまり 配偶者あり 配偶者あり 死別
離別
未婚 大変苦しい やや苦しい 普通
やや
大変
(N=3,398) 世帯
世帯 (N=779) 世帯
世帯
世帯
まあよい (N=996) よくない・ (同居) (別居) (N=631) (N=141) (N=94) (N=243) (N=653)(N=2,214)ゆとりがある ゆとりがある
(N=119) (N=703)
(N=259)(N=596) (N=942)(N=1,612)
よくない (N=2,481)(N=51)
(N=252) (N=36)
(N=790)
男性
女性
性・世帯構成別
健康状態別
婚姻状況別
暮らし向き別
資料:内閣府「高齢者の生活実態に関する調査」
(平成20年)
図1−3−4
ふだん、近所の人との付き合いがほとんどない人の割合
(%)
30
近所付き合いがほとんど
ない人の割合
25
21.6
21.2
20
13.9
15
11.8
10
8.3
5.9
6.5
5
0
5.3
5.0
3.2
5.4
3.4
7.4
4.6
全体
一人暮らし 夫婦のみ その他世帯 一人暮らし 夫婦のみ その他
よい・
ふつう
あまり 配偶者あり 死別
離別
未婚
(N=3,484) 世帯
世帯 (N=843) 世帯
世帯
世帯
まあよい (N=971) よくない・ (同居) (N=649) (N=119) (N=118)
(N=116) (N=661)
(N=303)(N=561)(N=1,000)
(N=1,857)
よくない (N=2,598)
(N=656)
男性
女性
性・世帯構成別
健康状態別
資料:内閣府「高齢者の地域におけるライフスタイルに関する調査」
(平成21年)
婚姻状況別
苦しい者についても孤立している人は多く、特
(2)雇用労働者化の進行
に「友人との付き合いがない者」が3割弱に達
就業者に占める雇用者の比率は長期的に上昇
しており、全体と比べて非常に高くなってい
を続けているが、自営業者や農業従事者に比べ
る。
ると、企業に雇用されて働く労働者は、職住が
2
高齢者の社会的孤立の背景
高齢者が、家族や地域とのつながりを持た
分離し地域との結び付きが浅い傾向にあること
から、雇用労働者化の進行が一因となって地域
の人間関係が希薄化し、高齢者の社会的孤立の
ず、社会的に孤立する背景について考察する。
要因となっている可能性がある。
(1)世帯構成の変化
(3)生活の利便性の向上
∼高齢者単身世帯の増加∼
①高齢者単身世帯・高齢夫婦世帯の増加
として、家族や地域の人たちと交流をしなくて
も、生活が成り立つようになったことがあげら
地域の人との付き合いがなければ孤立しやす
れる。心身ともに健康なうちは、市販の商品や
い。また、高齢夫婦世帯は、夫婦がそろって健
サービスを利用すれば、衣食住について物質的
康でいる間はよいが、どちらかが亡くなったあ
に困ることなく暮らすことができる。このた
と、子どもと同居しなければ単身世帯となる可
め、高齢になり、健康上の理由などから生活に
能性が高い。
不便が生じ、市場で購入できる財・サービスだ
65歳以上の高齢者のいる世帯の世帯構成をみ
けでは暮らしが難しくなったときに、頼れる人
ると、三世代世帯が減少し、単独世帯・夫婦の
がいないという事態が生じやすくなっている。
み世帯が増えており、世帯構成の観点からみた
(図1−2−1−1を参照)
。
(4)暮らし向きと社会経済的境遇
世帯の暮らし向きと社会参加の度合いには、
一定程度の相関関係が見られ、暮らし向きが苦
②婚姻率と離婚率の変化
婚姻率と離婚率も変化している。婚姻率は昭
0(人口千対)をピークに長期的に
和22年の12.
しい人については、会話が少ない、友人づきあ
いをしていない、頼れる人がいない者の比率が
高い(図1−3−1∼3)
。
は低下しており、一方、離婚率は平成14年を
また、高齢者の現時点の経済状態だけではな
ピークに低下しているものの長期的には上昇傾
く、その経済状態に至るまでの社会経済的境遇
向にある。未婚者・離婚者は、既婚者に比べて
も孤立状態を生む要因になっている可能性があ
単身世帯になりやすいことから、社会的孤立の
り、安定した就労、居住や家庭生活を通じた人
リスクが高い。現時点での高齢者に占める未婚
間関係が長期にわたって阻害された結果が、高
者・離婚者の比率はそれほど高くないが、近年
齢期の社会的孤立と低い経済状態として表面化
の婚姻率の低下、離婚率の上昇が、今後の高齢
したケースもあるものと考えられる。
者の孤立を深刻化させる可能性がある(図1−
3−5、1−3−6)
。
高
齢
化
の
状
況
家族関係や近隣関係が希薄化した要因の一つ
単身世帯は、同居家族がいないので、友人や
社会的孤立のリスクは高まっているといえる
第
1
章
第
3
節
高
齢
者
の
社
会
的
孤
立
と
地
域
社
会
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