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花き(PDF:1842KB)
新品種・新技術の開発・保護・普及の方針 花き 1 現状と課題 ① 花きの市場規模とニーズ ○ 食生活の範囲の中で選択される野菜・果物と異なり、花きは冠婚葬祭、贈答用、装飾等、様々な 使われ方。 ○ 使われる用途、場面によって、種類、品種、色等が細かく異なる等、花きは、極めて嗜好性が高い品目。 ○ このため、花きの振興対策を行うにあたっては、他の野菜、果物等の品目以上に、細かいニーズをもとにした 消費側(川下側)からみた対策を講じていく必要。 キ ク お葬式 産出額1位 627億円 仏花 洋ラン 産出額2位 310億円 ユ 産出額3位 211億円 リ 装飾用 お祝い 供花 コチョウラン (白、ピンク) オリエンタルユリ (ピンク、白等) 輪ギク(白) バ ラ ブライダル 産出額4位 181億円 記念日 庭園用苗木 花木類(鉢) 産出額5・6位 176・156 億円 カーネーション 母の日 まちづくり 鉄砲ユリ (白) 産出額7位 126億円 ホームユース パンジー、 ペチュニア等 (黄、赤等) (ピンク等) (赤等) (赤) (ピンク 、黄) 1 1 現状と課題 ➁ 花きの新品種開発における課題 ○ 種苗法に基づく出願全体の6割を草花類が占め、その9割が個人・種苗会社によるものであるなど、花きの 品種開発は民間や個人育種家を中心に活発に行われている。 ○ 品種登録した農作物で更新手続きが行われず取り消された品種のうち7割が草花類であり、花きの花色や 草姿などは流行に左右されやすい。 ○ 球根類においては、ウイルスフリー化した球根の大量生産が課題。 ○ 品種開発に20年もの期間を要した品種もあり、育成年限の短縮化、効率化が課題。 民間会社・個人育種家 品種開発期間と目標とする品種の出現率 ・既存品種との交配等により オリジナル品種の開発を行い ブランド化や差別化を図る。 絶滅した八重咲きのパンジーを復活 (差別化の一例) ・チューリップの育種・品種開発 が盛んな富山県で誕生した 「ありさ」は開発までに約20年 を要した。 出願品種に占める草花類の割合等 全品目① うち 草花類② 28,278件 17,528件 ありさ うち個人・種苗会社 からの出願③ ②/① ③/② 15,786件 62% 90% 品種登録後更新等されず取り消された品種 全品目① 12,675件 資料:農林水産省品種登録統計資料 うち草花類② ②/① 8,759件 69% ・また、ほぼ同時期に誕生した 「ウェディングベール」は約400 の交配、約3万の種子のうちの 1つでまさに3万分の1の確率 ウェディングベール 2 2 「強み」となる品種と技術 ① 国産花きの需要拡大に役立つ品種 ○ 近縁種との交雑・形質転換花きはこれまでにない価値を新たに付与し、「違い」「新規性」が「強み」。 ○ オリジナル性・バリエーションを求める消費者のニーズが強く、品種の多様性が「強み」。 近縁種が持つ形質を交雑により導入 自然老化時のエチレン生成量が少 なく長持ちするカーネーション 「ミラクルルージュ」 「ミラクルシンフォニー」 (農研機構花き研) 世界初の萎凋細菌病抵抗性 カーネーション「花恋ルージュ」(農研機構花き研) 新たな形質を形質転換技術で付与 遺伝子導入技術により新たな 色彩を示すバラ「アプローズ」 (サントリーホールディングス株式会社) 独創性・バリエーションの豊かさで市場を席巻 ヨーロッパの切り花市場を支えるオランダ市場でも 取扱量の90%以上を占める切り花ヒマワリ 「サンリッチシリーズ」(タキイ種苗(株)) 3 2 「強み」となる品種と技術 ○ ➁ 海外輸出や低コスト生産が可能な品種 花きにおける品種開発のニーズは多様であり、特に最近では、①海外で好まれる色や形質、②長時 間輸送に耐えうる品質、③植物検疫に対応した防虫成分を有する品種、④生産コストの低減に資す る品種等のニーズが高まる。 海外で好まれる色・形質を持つ品種の開発 植物検疫に対応した品種の開発 香港やシンガポールでは、赤や黄色が非常に縁起 が良いとされ、旧正月の時期を中心に深紅の花弁 を縁取る黄色の覆輪が印象的な「ミサトレッド」を中 心にグロリオサの輸出が伸びている。今後さらに 輸出を拡大していくため、大輪でかつ赤と黄色のコ ントラストがより鮮やかなグロリオサ の新品種を開発。 米国向けに輸出の多いスカビオサについては、輸 入検疫で害虫であるアザミウマが発見され燻蒸処 理を受けることが多い。このため、輸出拡大に向け アザミウマを寄せ付けない防虫作用を持つ成分を 含むスカビオサについて、 新品種を開発。 長距離輸送に耐えうる品種の開発 低コスト生産が可能な品種の開発 米国や香港で人気の日本産スイートピーは、気温・ 湿度の上昇とともに灰色かび病が発生しやすくなり、 春先の輸出が困難になっていることから、長距離 輸送に耐えうる灰色かび病に対する耐病性が極強 レベルのスイートピーの新品種を 開発。 肥料原料の高騰が懸念される中、国産シェア奪還 に向けた生産コストの低減のため、多量な施肥を 必要とするバラについて、養分吸収効率が向上し、 施肥量を従来品種に比べ5割削減できる新品種を 開発。 4 3 取組方針 ① 研究機関と民間・個人育種家の連携の推進 ○ 海外で好まれる色・形質を持つ品種、日持ち性の優れた品種のほか、国内シェア奪還のための低コスト生産が可能な品種 開発など輸出や国内実需のニーズをとらえた品種の開発を推進。 ○ DNAマーカー育種の民間活用を支援し、育種期間の短縮を可能とするほか、耐病性や日持ち性などの形質を持つ育種素 材を提供するなど、研究機関による民間・個人育種家に対する支援を強化。 ○ 国産花きの強みを活かす生産供給体制の強化に向け、育種された品種を大量に増殖、安定供給が可能となる体制を整備 し、日持ち性を向上させる管理技術等の導入を推進。次世代施設園芸導入加速化支援事業とも連携し、種苗供給センター の設置等を支援。 研究者 民間会社・個人育種家等 ・ブランド化、 差別化を目的として 開発されたオリジナル品種 ・DNAマーカー育種など 新たな育種技術等 により 開発された品種 萎凋細菌病抵抗性 を持つカーネーション 市場ニーズに対応しながらも耐病性や 日持ち性に優れた品種を効率的に開発し 種苗の増殖と安定供給体制を構築 種苗供給センター 生産・出荷センター 種苗の増植及び供給体制の強化 集約化された産地から安定供給 5 3 取組方針 ➁ 国産花きのグローバル展開に向けた戦略的な知的財産管理 ○ 輸出拡大や海外における生産体制の確立など、国産花きのグローバル展開に向けて、輸出相手国や生産 国の制度に基づき知的財産管理を推進。 ○ 知的財産活用マニュアルや先行事例を参考としつつ、海外の生産・流通・販売の実態に応じて育成者権や商 標権等を併せて取得するなどして、ブランド力を強化。 あ しろ 知財保護とナショナルブランドを両立し、グローバル農業を実践(安代りんどう)(岩手県八幡平市) 知財保護とナショナルブランドの両立 【海外展開も視野に入れたグローバル農業】 八幡平市花き 研究開発センター 安代リンドウ開発 ・商標管理 ・研究開発 ・交配、採種 ・専用利用許諾契約他 契 約 八幡平市 リンドウ 生産者 JA新いわて西部地域 花き生産部会 ・品種保護 ・品種開発 ・親株増植 ・海外品種登録 他 八幡平市 NZ・チリ生産者 ・育種研究 ・鉢物研究 ・輸出事業 他 八幡平市農業 改良普及センター リンドウ育苗センター ・苗生産、供給、販売 ・栄養系親株管理 ・種苗増植 ・オリジナル品種試作 JA新いわて西部 営農経済センター NZとの合同育種 により開発された 「赤色りんどう」 種苗供給 出荷 花き市場 輸出 ○ 生産者(一般社団法人安代リンドウ開発)と市が一体となって育種事業を展開。また、県の普及組織と連携しつつ、「安代リンドウ」を国内のみなら ず、ナショナルブランドとしてグローバル展開を推進。 ○ 世界的な販売・輸出戦略を策定し、海外の会社と合同で育種会社を設立。ニュージーランド、チリでも契約栽培をし、国内外の市場に周年供給体制 を整備。 ○ 品種育成のための研究組織を市が設立、知的財産を適切に管理するため、EUと北米で商標権を取得。現在、アジア圏での知的財産権 6 の取得を検討中。 参考(1) 生産者・研究機関・種苗会社の連携による知財輸出体制の強化 オリジナルカーネーションの開発と海外種苗会社との契約による世界展開の実践(香川県) 香川オリジナルカーネーションの開発と海外種苗会社との契約による世界展開の取組み 香川県 県農業試験場 海外の種苗会社 種苗会社の試験場に おいて試験栽培を行う 契約を締結 種苗供給 世界展開に向け 検討中 試作・選抜等への協力 県農業試験場で開発された ミニカーネーションの一つ 「ミニティアラピンク」 県内生産者 国内市場・実需者 ○ 香川県農業試験場が開発したカーネーション「ミニティアラシリーズ」は、これまでにない花形と花色を持つ新品種。 ○ 平成24年に、オランダにある種苗会社の社長が、県内生産者のハウスを訪問した際、偶然目にしたミニティアラに注目、世界展開の可能性を 県に打診した。 ○ まずは、同社の試験場において、試験栽培を行う契約を締結。 ○ 世界展開に向け検討中。 7 参考(2) 生産者・研究機関・種苗会社の連携による開発・増殖体制の強化 オリジナルカーネーションの育成と普及を一体的に実践(長崎県花き振興協議会カーネーション部会) 長崎オリジナルカーネーションの育成と普及の取組み 【農業革新支援専門員を中心とした一体的な活動】 育種クラブ (生産者) 開発連携 研究センター 試作・選抜等への協力 民間種苗業者 種苗 生産 委託 農業革新支援専門員(県) 生産者による「育種クラブ」の 選抜協力で開発された カーネーション「だいすき」 消費動向等の情報共有 種苗供給 種苗供給 提携産地 生産者 生産協定 実需者 (市場・小売店) ○ 生産者で構成される「育種クラブ」と県が一体となって育種事業を展開。そこで開発された品種の種苗は、県内生産者へ供給され、高品質の カーネーションを生産・出荷。 ○ 育種・開発については、県の農業革新支援専門員が中心となり、生産者・研究センター・民間の種苗業者等との連携を図り、効率的な試作や 選抜を実践。 ○ 実需者への安定供給を図るため、北海道の産地と生産協定を締結し、完全リレー出荷を実現。 ○ 今後、品種数の増加と開発期間の短縮、需要拡大に伴う増植体制の強化が課題。 8 参考(3) 参考 切り花の輸出拡大 切り花輸出額の国別内訳 切り花輸出の現状と目標額 (億円) (億円) 12 H24 10.0 H32 香港 0.1 3.0 シンガポール 0.0 2.0 米国 0.4 1.0 6 カナダ 0.0 1.0 4 EU 0.0 1.0 ロシア 0.0 1.0 その他 0.5 1.0 合計 1.2 10.0 10 8 1.2 2 0 H20 H22 H24 H32 【切り花輸出拡大に必要な取組】 ● 海外市場実態調査の実施、輸出戦略の策定 ● 見本市の開催や海外からのバイヤーの招聘、パン フレットの作成等によるプロモーション ● 植物検疫に関する講習会の開催 ● コールドチェーンの整備による日持ち性の向上 ● 長時間輸送に耐えうる鮮度保持技術の開発 ● 輸出向け新品種の開発加速化 ● 生け花やフラワーアレンジメントのデモンストレーショ ンによる、日本産切り花の使い方の発信 ● 産地間連携により、年間を通して安定的に供給でき るオールジャパン体制の整備 等 ● 平成32年輸出目標額10億円については、 輸出実績のある国内産地や輸出事業者から の聞き取りにより試算。 ● 輸出重点国は、香港、シンガポール、米国、 カナダ、EU、ロシア。 ● 我が国の切り花輸出の歴史は浅いが、多 様で高品質な日本産切り花は国際的に極めて 高い評価を得ている。 ● コールドチェーンの整備や輸出向け新品種 の開発加速化により、平成32年輸出額10億 円の実現を図る。 【切り花輸出先進国ケニアの事例】 ケニアは国策としてバラを中心とした切り花生産及 び輸出を振興。切り花輸出量はオランダ、コロンビア に次いで世界第3位。 ● ケニア統一ブランドを立ち上げ、EUにおいてオー ルケニアでの共通プロモーション ● 産地から空港までコールドチェーンを完備 ● 産地で生産から加工、海外マーケティングまで完 結した取組 ケニア共通ブランド コールドチェーンを完備 産地で輸出先国のニーズ 9 に合わせた加工 参考 参考(4) 国内産及びコロンビア産カーネーションについて① ○ 年間平均気温は日本とコロンビアでほとんど差はないが、月別で見ると、コロンビアは年間を通じ てほぼ一定であり、加温施設等が不要。⇒設備費、光熱費(特に燃油)等が不要。 ○ コロンビアは四季がないため、生産地が季節で移動することなく、周年で安定供給が可能。 また、1日の寒暖の差が大きく、カーネーションの発色や生育には最適。 ○ コロンビアの花き生産は、一部の富裕層による農地及び付随する福利厚生施設等の整備、アメリ カによる転作指導、コロンビア政府の国内治安改善策がうまく合致したことからスタート。 カーネーションの生産概況の対比 平均気温の比較 単位:℃ 日本 378ha 126億円 コロンビア 約1,000ha 面 積 産出額 135億円 (対日輸出額49億円) -------------------- -------------------- 最高17℃ 最低7.4℃ 年間 平均気温※ 1,500m前後 標高※ 最高16℃ 最低6℃ 2,600m 20 15 10 5 平均最高気温 (℃) 0 平均最低気温 (℃) 単位:℃ 40 30 20 10 0 -10 ※年間平均気温、標高は長野及びボゴタの生産地近辺のもの コロンビア 年平均 最高 16℃ 最低 6℃ 長野 年平均 最高 17℃ 最低 7.4℃ 10 参考(5) 国内産及びコロンビア産カーネーションについて② ○ コロンビアの1本あたりの原価は日本の半分以下(流通経費含まず)。 ○ 日本では、灰色カビ病は一般的な病害であるが、コロンビアでは気象条件や栽培環境の面から発 症リスクが少ない。 ○ コロンビアは、採花後の温度管理や抗菌剤等の鮮度管理も徹底している。日本では採花後の処理 や温度管理等がまだ不十分であり、生産・流通・小売への一体的な対策が必要。 カーネーションのコスト比較 日本(長野) コロンビア 264千円/年 燃 油 パイプハウス 施設費※1 3,711千円 (10aあたり) 130千円/月 雇用労賃 -------------- 28.7円 10.4円 (産地→市場) 0 1人あたり※2 木造ポリフィルム 240千円 260㌦/月 (約25千円) -------------1本あたりの 生産コスト 1本あたりの 輸送コスト 14セント (約13円) 12~15セント (ボゴタ→成田) ※1:コロンビアは台風がなく、簡易な施設で充分である。 ※2:長野県は最低時間賃金(713円)より計算 ボトリチス菌について ○ ボトリチス菌は、花きにとって大敵となるカビ の一種で、灰色カビ病の要因となる。 ○ 日本では一般的な病害であるため、温湿度 管理の徹底や農薬の散布が必要。そのためのコ ストが上乗せされる。 カーネーションの鮮度管理について ○ 採花後の選別は、日本では常温で行われる が、コロンビアでは2~3℃の室内で行われ、以後 空港までは低温で輸送される。 ○ また、輸入品は長期輸送が前提のため、抗 菌剤や栄養剤等の薬剤の使用等、鮮度管理が 徹底している。 ○ 輸入品は、日本の空港に到着後は、温度管 理が寸断されるため、市場、小売店への流通は 国産と同じ温度条件となる。 11 参考(6) 国産シェアの奪還!-日持ちの良さなど国産花きの強みを活かせる流通体制の確立- 第1回花き振興法案(仮称)検討作業チーム 資料1より抜粋 ○ 輸入花きからシェアを奪還するには、国産花きの鮮度、日持ちの良さ等の強みを活かすことが重要。 ○ 消費者が品質として重視する「日持ち」を良くするために、①温度管理(コールドチェーンの確立)、 ②衛生管理、③鮮度保持剤の使用等を生産・流通・小売各段階で徹底。 ○国産花と輸入花の採花から小売店までの期間 日数 0 1 輸入花き 採 花 梱 包 (コロンビアの カーネーション) 国産花き 採 花 調 整 2 3 空 港 4 5 空港 6 7 8 成 田 空 港 分 荷 9 10 市 場 セ リ 小 売 店 温度管理が徹底 市 場 セ リ 小 売 店 資料:市場関係者からの聞き取り 温度管理が不徹底 ○花の鮮度・日持ち性をより向上する流通体制の確立 産 地 市 場 小売店 ・採花後の前処理(抗菌剤 等で水揚げ)の実施 ・出荷前の温度管理(低温 保管)等の徹底 ・配送施設、卸売場の低温 化 ・輸送時の温度管理(積載 前のトラック庫内の冷却 等)の徹底 ・市場から店舗まで搬送時の 温度上昇の防止 ・入荷時の適切な水揚げの 実施、定温ショーケースの 利用等。 国保産 産証地 の販表 強売示 みに、 をよ日 強り持 調 ち 12