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日本はオーガニック市場の後進国? 国内・海外の有機農産物の現状

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日本はオーガニック市場の後進国? 国内・海外の有機農産物の現状
2016 年 6 月
日本はオーガニック市場の後進国?
国内・海外の有機農産物の現状
5 月 16 日、イオン株式会社が、フランスを中心に有機農産物専門の小型スーパー90 店舗
を展開するビオセボン社と合弁会社設立に合意したことを発表した。国内のオーガニック市
場の拡大を図る狙いだ。産地は、今後5年で有機農地を 1,000ha 確保する。イオンの既存
店舗における販売拡大だけでなく、年内には「ビオセボン」ブランドの店舗出店を目標に置
いている。
店舗イメージ(プレスリリースより)
今後、農薬への懸念や遺伝子組み換え食品に対する抵抗感の高まりなどにより、市場拡大
の可能性があるオーガニック市場。現状のトレンドを取り上げ、市場拡大を牽引する海外企
業やその取り組みを見てみたい。
|まだまだニッチな国内マーケット
有機農産物とは「『化学的肥料や農薬の使用を避けること』『遺伝子組換え技術を利用しな
いこと』を基本として、環境への負荷をできる限り低減した栽培方法で生産された農産物(*1)」
のこと。
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有機農業市場の現状を見てみよう。全国の有機農家数は 12,000 戸おり、全農家数の 0.5%
を占めている。面積としては 0.2%で、イタリアの 8.6%やドイツの 6.1%、アメリカの 0.6%
と比較すると、割合・規模ともに日本は小さいことが明白だ(*2)。
国内で農産物に「有機」「オーガニック」等と表示する際、化学肥料・農薬を 3 年以上使
っていないことが一つの取得条件となる、有機 JAS 認証がある。現状として、認証を取れば
特定の販売先確保や、販売単価アップが期待できる反面、肥料制限や病害虫発生による収量
低下、工数増といったリスクがある。そのため農業経営においては、大規模化するほど有機
栽培に固執せず、減農薬、減化学肥料という取り組みが多い。
また、特に日本では他農家と圃場が隣接していることが多く、厳密に「無農薬」を考える
場合には、他の農家による農薬のドリフトの可能性も十分検討する必要がある。
*1:「有機農業の推進に関する法律」より引用・一部編集
*2:「有機農業の推進に関する現状と課題(農林水産省)」
|米ホールフーズのローカライズ戦略
次に、各国で市場拡大を牽引する企業を見ていこう。まずはオーガニック食品を幅広く取
り扱う高級スーパー、ホールフーズ。アメリカを中心に世界 270 店舗を展開している。
高品質な食材、農産物に対するニーズ創出の取り組みについて、同社のこれまでの躍進に
は様々な取組みが鍵となっているといえる。例えば、「ローカル」「地産地消」であることを
全面に打ち出していること。店舗内を歩いて目につくのは「LOCAL」の文字。床や商品 POP
など、様々なところに記載されている。地元で取れた食材を積極的に扱うことに加えて、
Youtube 等では生産者の想いや仕事ぶりを伝えるなど、「地元を応援する」という姿勢で消
費者の共感を生んでいる。
また、店舗近くに来た消費者にアクションを起こし来店率を高めるなどの IT 活用や、売り
場ごとにチームを設置して、担当エリアに足を運んでくれた消費者を最大限満足させること
でのホスピタリティ向上など、様々な施策で成長している。
2
最近ではお手頃価格のオーガニック食品トレンドも形成されつつあるようだ。ウォルマー
トやクローガーなどの大手スーパーマーケットが低価格のオーガニック食品販売を拡大して
きており、追随する形でホールフーズも低価格志向の店舗展開を開始している。
Krouger の PB「シンプル・トゥルース」。2013 年秋に発売され始めた同ブランドは、わずか 18 ヶ月で売上が 12 億ドルに達している
|ブームの兆しは各地のスーパーマーケットからも窺える
オーガニックブームの起点になり得るスーパーマーケットはアメリカだけでなく、世界各
地にある。例えば、オーストラリア南西部の都市パースにある高級食品スーパー「boatshed」。
ここでは、地元のオーガニック食品を中心に取り扱っており、周囲の高級住宅地の住人に日
常的に利用されているようだ。日本では見かけることのないオーガニックの精肉も種類豊富
にあるようで、利用者のオーガニックへの意識の高さも窺える。
MargaretRiverCorrespondent より引用
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アジアでは、ベトナムにおいてもオーガニックへの動きが進みつつある。オーガニック農
産物・加工食品を販売する HOASUAFOODS では、多くの商品についてアメリカ農務省の
オーガニック認証を取得し、販売している。また、ハノイエリアで食品宅配サービスを運営
する㈲しゅんでは、日本の技術指導者が栽培・加工を指導し、定期的に残留農薬検査を行っ
ていることを一つの売りにしている。
他にも、野菜・果物の加工販売を行う nafoods グループの主力製品であるジュースは、
消費者のオーガニック志向にあわせた販売を行っており、通常の 2 倍以上の価格でも売れて
いるようだ。
今後も拡大が予想される有機農産物マーケット。現状を把握した上で、有機ビジネスを考え
ていきたい。
【発行元】
アグリコネクト株式会社(メディア事業部 AgriFood 編集チーム)
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