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資源活用型多機能性タンパク質フィルムの開発

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資源活用型多機能性タンパク質フィルムの開発
資源活用型多機能性タンパク質フィルムの開発
東北大学大学院生命科学研究科・教授 村本 光二
■ 目 的
低利用タンパク質資源である米糠タンパク質を用いて、食品の品質や安全性を保持し、かつ環境に
も優しい多機能性タンパク質フィルムの開発を目的とした。すなわち、脱脂米糠から単離したタンパ
ク質を使用してフィルムを作成するとともに、多機能化のための添加剤として、米糠から抗菌・抗カ
ビ・抗昆虫活性が期待できるレクチン・タンパク質、および抗酸化活性をもった米糠タンパク質の酵
素分解物を調製した。
■ 方 法
脱脂米糠を 2%NaCl、0.02M NaOH、および 70%エタノール水溶液で抽出し、アルブミン、グロブ
リン、グルテリン、プロラミンに分画した。また、脱脂米糠からレクチンを 0.15M NaCl で抽出し、
硫酸アンモニウム沈殿、キチンカラムによるアフィニティークロマトグラフィー、およびイオン交換
クロマトグラフィーでレクチンを分離・精製した。米糠レクチン RBL1、RBL2 の生化学的性状を調べ
た。
米糠タンパク質水溶液に可塑剤としてグリセロールを加え、30 〜 60℃で 30 分間加熱後、60℃で 6
時間放置してプロテインフィルムを作成し、フィルム特性を調べた。
米糠タンパク質をプロテアーゼ M、N、S、P およびペプシンで消化、経時毎に酵素分解率と抗酸化
活性を、それぞれ OPA 法および ABTS 法を用いて測定した。
■ 結果および考察
脱脂米糠 100g からの分別抽出によるタンパク質の収量は、アルブミン 3.9g、グロブリン 3.9g、グ
ルテリン 6.1g、プロラミン 0.6g であった。また、脱脂米糠 150g から 90mg のレクチン画分を得た。
レクチン RBL1 は 20kDa と 12kDa のヘテロダイマー、RBL2 は 11kDa のホモダイマーで構成されてい
た。それぞれのウサギ赤血球凝集活性に必要な最小濃度は、13μg /mL と 10μg /mL であった。RBL1 の
N 末端アミノ酸配列は、Ⓞⓡⓨⓩⓐ ⓢⓐⓣⓘⓥⓐ レクチンと一致した。一方、RBL2 はα⊖アミラーゼインヒビター
に対して 84%の相同性がみられた。RBL1 と RBL2 は類似の糖結合特異性を示し、キトオリゴ糖に対
して強い親和性がみられた。これらはいずれも、加熱や酸・アルカリ処理後でも高い活性を保持して
いた。これらの特性は、機能性素材や食品機能因子としての応用に適した特性であり、抗昆虫活性や
抗カビ活性を発揮することが期待できる。
主要タンパク質で作成したプロテインフィルムは、グリセロール濃度が 3%のときに最大のフィル
ム強度を示し、pH を中性よりも低下させると強度は低下した。一方、弱アルカリ領域では強度の増
加が観察された。米糠タンパク質は、水に対する溶解性が低く、プロテインフィルムとして使用する
場合には有利であると考えられる。米糠タンパク質の酵素分解物は、抗酸化活性を示した。また、酵
素消化物は、抗酸化活性だけでなく、カルシウム結晶化阻害活性やアンジオテンシン変換酵素阻害活
性ももっており、多様な応用が期待できる。
■ 結 語
脱脂米糠からの主要タンパク質の分画法とレクチンの単離方法を検討した。主要タンパク質からプ
ロテインフィルムを作成し、その機能的特性を明らかにした。米糠タンパク質の酵素分解によって抗
酸化活性などの機能性が向上した。キチンに対して結合活性を示す複数のレクチンを高純度で単離す
ることが可能となり、これらのレクチンが多様な機能性をもつことを明らかにした。
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