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妊娠中の体力づくりが出産に及ぼす心身の効果
○プロジェクト研究 0730-2 研究課題 「妊娠中の体力づくりが出産に及ぼす心身の効果に関する研究」 ○研究代表者 看護学科教授 加納尚美 ○研究分担者 人間科学センター教授 岩井浩一 (3名) 看護学科 教授 吉川三枝子、准教授 島田智織 ○研究協力者(8名) 茨城県立医療大学 嘱託助手 加藤隆子 同大研究科学生 土居悦子 大山めぐ美 上田市産院:田口陽子・猪俣理恵・田中かずみ(助産師) 学外研究員: 百成香帆 ○研究年度 平成20年度 (研究期間) 平成19年度~平成21年度(3年間) 1.研究目的 本研究においては、妊産婦が安心かつ快適な妊娠・出産のプロセスをたどれるように妊娠中の体づ くりが出産に及ぼす心身の効果を検討することを目的とする。妊娠中からの体づくりによる出産への 効果を実証することにより、効果的な継続ケアの内容の評価、そしてより正常な出産経過をたどるた めの準備を明らかにすることは、医療者間の本来の役割分担を明確化することができる。また、こう した実績は、多職種がどのように役割分担をして妊産婦をよりよい妊娠出産体験にもっていけるよう に支援するかをデザインする基礎データとして生かすことができる。 以上の観点から、4つの側面からアプローチを行う。 A 妊産婦継続ケアの有用性に関する文献研究:医療者間の協働と役割分担について明らかにする B 妊産婦を支える医療機関、関係者の状況および改善点に関する調査 C 妊婦の体力と運動の実態調査 1)成人女性が妊婦体験服を装着した際の体力と妊婦の体力測定の比較 2)産褥期女性への後ろ向き調査 3)妊婦の体力に関する縦断調査 D 妊娠中に継続的に体力つくりを進めた場合の効果について(次年度計画実施予定) 2.各研究方法および結果・考察 A 文献研究(昨年度報告、現在投稿中) B 妊産婦を支える医療機関、関係者の状況および改善点に関する調査 方法: 2008年度現在、産科を標榜する茨城県内の59の医療施設に勤務する産科医、助産師の責任者に郵送 にて、医療者間の協働と役割分担および妊婦の健康管理についてアンケート調査を実施。 結果および考察: 調査は、2009年2月に実施し、医師11名(19%)、助産師9名(15%)の回答があった。役割分担に関し ては、医師・助産師ともに考え方に幅がみられた。また、妊婦の健康管理の捉え方には、助産師の 方が肯定的にみているようであった。 C 1) 成人女性が妊婦体験服を装着した際の体力と妊婦の体力測定の比較 方法: ①対象:茨城県立医療大学看護学科に在学する女子学生で周産期看護学の授業を履修中または履修終 了した女子学生、および研究協力の了解を得られた施設に通院する正常経過をたどる(妊娠中期か ら妊娠末期)妊婦に研究参加の募集をし、主旨に賛同して応募した者。 1 ②方法:女子学生には、妊婦体験服装着前後の体力測定(6分間歩行の距離・心拍変動、握力、骨盤 筋群の硬度)を実施。妊婦には、健診終了時に同様の体力測定および3日間万歩計を保持し歩数を測 定し自己申告する。分析は、SPSS16.0を使用。調査期間は、2008年2月~5月。 結果および考察: ①研究参加者は、学生10名(平均年齢21.8歳)、妊婦15名(平均年齢31.7歳、平均妊娠週数25.8週)。 ②体力測定: ・参加者全体としては、6分間歩行前後の心拍数が有意に増加していた(前76.4、後96.7 、p< 0.01)。 ・学生と妊婦の測定結果の比較では、6分間歩行の距離・心拍変動、握力における平均値の差の検定 では相違はなかった。6分間歩行前の筋硬度腰部(学生19.2、妊婦12.5、p< 0.01)、筋硬度足部(学 生26.6、妊婦23.5、p<0.05)であり、歩行前後の筋硬度腰部の差(学生2.2、妊婦-4.3、p< 0.01) であり、妊婦の方に筋肉の柔軟性がある結果であった。 ・妊婦全体の測定結果においては、6分間歩行前後の筋硬度腰部(前12.5、後16.8、p< 0.05、6分間 歩行前後の心拍数が有意に増加していた(前76.4、後95.5 、p< 0.01)であった。3日間の全体の 平均歩数は、7615歩であった。体力測定結果では、年齢、妊娠中の運動の有無、妊娠週数別で有意 差は認められず、3日の歩行数により6分間歩行距離(5000歩未満318m、5000歩以上416m、p< 0.05) に有意差が認められた。 2)産褥期女性への後ろ向き調査 方法: 研究協力の得られた病院、診療所、助産所で出産した褥婦にアンケート配布を依頼し、郵送にて 返送。調査は2009年2-3月。 結果: 現在22名から回答。平均年齢30.7歳。出産後平均2.1日。妊娠中に定期的運動継続者の割合68%、妊 婦健診に欠かさず通院していない者の割合34.8%。健診の際に、もっとじっくりみてほしかった等。 3)妊娠時期別の妊婦の体力に関する縦断調査 方法: 研究協力の得られた診療所、助産所計2施設の外来で、正常経過をたどる妊娠6ヶ月以上の妊婦に 研究参加募集を行う。参加者に研究者による定期的な体力測定および日々の運動・歩行数(万歩計 を用いる)の記録を依頼し、分娩終了まで縦断的にフォローする。各施設20名を目標とする。調査 は2009年1月開始。 結果: 現在10名フォローアップ中で、募集も継続中。 *B,Cについては、茨城県立医療大学倫理委員会にて研究計画書を申請し、承認を得ている。 3.全体のまとめ 1)同職種間のみならず多職種間でも協働意識や妊婦の健康管理について様々な意見があるため、方向性を 共有し、その上で具体的な協働作業をつくりあげる必要がある。 2)成人女性と妊婦の体力測定結果から、体力つくりの基礎データとして一般女子のデータと妊婦を比較できる 可能性がある。 3)褥婦への調査結果から、妊婦健診時の体力つくりへの動機つけやケアや保健指導の必要性が示唆された。 4.成果の発表(学会・論文等,予定を含む) ・「助産師主導の妊産婦継続ケアの有効性に関する文献検討」日本助産学会誌に投稿予定 ・「医師と助産師との協働に関する調査」「妊娠中の体力つくり」茨城県母性衛生学会発表予定 ・「成人女性と妊婦の体力測定の比較」茨城県母性衛生学会投稿予定 5.参考文献 有井良江、名取初美:正常妊婦と外来通院切迫妊婦の生活活動内容と活動強度の比較、母性衛生、 48(1)74-81、2007 他 2