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超音波診断装置を用いた肩関節疾患の 関節病態ならびに組織変性の
○平成23年度奨励研究 「超音波診断装置を用いた肩関節疾患の 関節病態ならびに組織変性の評価」 理学療法学科 助教 岩本 浩二 1.研究背景と目的 肩関節の痛みは,肩関節周囲炎や肩板損傷などの整形疾患のみならず脊髄損傷,脳卒中においてもADL 阻害因子として問題視され,局所に起こる浮腫は痛みや不快感を伴い,組織の硬さも含め組織が変性し,関節 可動域の制限にも発展していく可能性がある.肩関節疾患では肩周囲の痛みとともに,その周囲に浮腫を生じ ているケースが見られ,MRIなどの画像診断により明らかになる.理学療法の治療対象となるこれらの病態の評 価には,MRI撮像にて所見として確認できるが,軽症例ではMRIを撮像しないことも少なくなく,特に関節内部や 深層の病態評価は,困難である. 超音波検査は,真皮および皮下組織を可視化することができ,無侵襲ならび に操作が簡便な検査技術である.超音波検査で得られた画像は近年運動器の評価として用いられ,肩関節に おいても多く使用されるようになった.しかし,肩関節における炎症および浮腫などの組織変性についての報告 は少なく,そのための最適な検査技術の開発・策定,ならびにそれに基づいた理学療法理論の構築が求められ る.肩関節の組織変性における客観的な評価は,MRI画像診断などが多く用いられ,MRI以外の機器を用いた 評価は確立されていない.本研究では,超音波を用い肩関節における炎症および浮腫などの組織変性の評価 を試みた.本研究の目的は,MRI画像と超音波画像とを比較し①肩関節の組織変性における超音波検査の信 頼性を確立すること ②病態の特徴を観察し、肩関節における組織変性病変に対する理学療法の介入方法に ついて考察し,理学療法のあり方についての再考することである 2.研究方法 研究協力者は本学付属病院ならびに研究協力医療機関に入院および外来患者を対象に募集し.研究に 同意が得られた肩関節周囲炎患者の男性2名,肩関節周囲炎を合併した脳卒中患者の女性1名,合計3名 とした.研究協力者の年齢は41~63歳,身長は153~171cm,体重62~78㎏であった.MRI装置は,東芝 社製EXCELART VantageTM MRT‐2003(1.5T),超音波装置はESATOE社製MyLab25を使用し,12MHzの筋専 用リニアプローベを用いた.まず主治医と共に各被験者のMRI画像を読影し,画像所見を記録した.超音波検 査は被験者は座位,上肢は体側に下垂した姿勢にて実施した(Fig.1).撮像は主治医が直接安全確認 を行い,研究協力実施者として参加した.超音波の信頼性は肩関節MRI画像所見との比較にておこなっ た. 3.研究結果 被験者のMRI所見の記録はFig.1.各被験者のMRIおよび超音波検査画像はFig.2に示した.被験者のMRI画 像では,三角筋下滑液包部,棘下筋腱,棘下筋の筋腹,棘上筋の関節方面に水腫,腫脹,炎症所見が確認で きた.超音波画像においても同部位に水腫と推察される低エコー領域および水腫所見を認めた.これらの画像 所見より,3症例とも共通してMRI画像と超音波検査画像の所見が一致したことが確認できた. 4.考察(結論) 今回,肩関節周囲炎3症例に対し超音波検査とMRI 検査画像とが一致した所見について検討し,肩関節の 組織変性に対する超音波検査の可能性について確認できた.肩関節は比較的浅い位置にあり,超音波検査に 適した領域であると考える.これらの評価は,これまで触診ならびに周径などを用いて行ってきた.しかし,肩関 節深部等の病変では,その病変の深さなどから従来の評価できない場合もある.また簡便に可視化し病変部位 を特定するのは困難であった.超音波検査を用いることにより,評価の簡便性と信頼性が向上し,客観的な効果 判定が可能になることが考えられ,効率良い理学療法の実施において今後重要視されると推察される.一般的 に運動器領域における画像診断は,X線,CT,MRIなど用いられ,MRIにおいては医療機関が必ず所有してい るとは限らない.また,MRIなどは静止状態での評価であるのに対し,超音波検査は動的な評価も可能であり, 関節運動時の観察も行える.今後検討を重ね,運動器の理学療法分野にも超音波検査を応用していきたい. 5.成果の発表(学会・論文等,予定を含む) 日本理学療法学術大会(予定)