...

スマートホーム分野での海外通信事業者連携による 標準化活動

by user

on
Category: Documents
52

views

Report

Comments

Transcript

スマートホーム分野での海外通信事業者連携による 標準化活動
グローバルスタンダード最前線
スマートホーム分野での海外通信事業者連携による
標準化活動─HGI/ZigBee Allianceでの取り組み
やまざき
たけふみ † 1
山崎 毅文
あかざわ
のぶゆき † 2
/赤澤 伸亨
おおたか
あ き ひ ろ† 2 ※ 1 た か ぎ
/大高 明浩
の ぶ ひ ろ† 2 ※ 2 む と う
/高木 暢大
け ん じ†2
/武藤 健司
なかがわ
たけなお † 2
/中川 剛直
†1
て ら お
かずゆき † 3
/寺尾 和幸
†2
†3
NTTサービスエボリューション研究所 /NTT東日本 /NTT西日本
スマートホームビジネス展開に必要
な技術課題について,私たちは国際標
線通信方式の改善に向けた取り組み
し,ホームゲートウェイのビジネス応
を行っています.
用面,技術面からの共通要求仕様のと
準化という場にて海外通信事業者と
りまとめを行っています.
HGIでの活動
連携し,通信事業者間で共通する課
HGIの組織構成と役割について図 1
題解決を図る活動を進めています.こ
こでは本活動の一環として進めている
に示します.要求仕様は,Technical
■HGI概要
Working Groupを中心に作業を進め
HGI(Home Gateway Initiative)での
HGIは,欧州通信事業者が中心とな
通信事業者共通の要件規定の活動状
り,ホームゲートウェイの要求条件を
ホームネットワーク関連やM2M関連
況,およびその要件文書を活用した
アプリケーション面と技術面から仕様
の他標準化団体とのリエゾンを通じて
ZigBee Allianceでの標準化活動の状
化することを目的とし,2004年に設
関連標準化団体に提示し,フィード
況について報告します.
立されました.
通信事業者,
システム ・
バックをもらうことで,新たな仕様策
チップ ・ ソフトウェア ・ ハードベンダ
定につなげる活動を進めています.
から構成され,日本からはNTT,日
■Smart Home Task Forceの活動紹介
本電気,沖電気,住友電工,日立製作
HGIでは,スマートホームサービスを
所,三菱電機などが参画しています.
実現するうえで必要な技 術要件を,
ターネットに接続し,生活を便利にする
活動方針としては,新たな仕様を作成
Smart Home Task Force(SHTF)と
サービスのことであり,AT&TのDigital
するのではなく,既存技術を有効利用
いう技術検討ワーキングの場で議論し,
はじめに
スマートホームとは宅内機器をイン
(1)
ており,
策定した要求仕様については,
(2)
Life ,ドイツテレコムのQIVICON な
ど,海外通信事業者もサービス展開に
注力している分野です.スマートホー
Board
・戦略策定
・経営,財務,法務
・他団体とのリエゾン関係構築
ムビジネス展開においては,ホーム
ゲートウェイなどの宅内終端装置と機
器類(家電 ・ センサ ・ アクタなど)を
つなぐための宅内無線通信方式が重要
となります.
CTO/CBO
・Board, MC, MKTGの運営
・BG, TWG, 各TFの取りまとめ
Management Committee(MC)
・新規プロジェクト立ち上げ
・ドキュメントリリース管理
Business Working Group(BG)
・新規プロジェクト検討
・MCへの新規プロジェクト提案
Technical Working Group(TWG)
・HGW, Media Gateway, QoS,
IPv6, IP-PBX, 保守機能等に
関する要求仕様策定
Marketing Group(MKTG)
・広報
・市場調査
そこでNTTは海外通信事業者と連
携し,スマートホームビジネスが展
開しやすい環境構築,ならびに市場
拡大を目指し,業界への影響力を持
(3)
つHGI(Home Gateway Initiative)
を通して,ZigBee等の主要な宅内無
※1 現
,NTTアクセスサービスシステム研究所
※2 現
,NTTブロードバンド ・ プラットフォーム
74
NTT技術ジャーナル 2014.9
Smart Home Task Force(SHTF)
・Local service APIs,Device modelling,
Remote(cloud)service API,宅内無線通信,
スマートメータ等に関する要求仕様策定
Test Task Force
・TWG,SHTFで策定した要求仕様に基づく
テスト仕様の策定
・テストイベントの開催
図 1 HGI組織構成と各役割
要求仕様を策定しています(表)
.扱っ
スされました.HGIではスマートホー
沖電気,日本電気,東芝などが参加し
ている主な技術分野 ・ トピックは,ユー
ム分野における他標準化団体である
ています.日本ではZigBee SIGジャ
(5)
スケース,アーキテクチャおよびシス
BBF(Broad Band Forum) との協
パンがZigBee Allianceおよびその他
テム要件,ホームゲートウェイにおけ
業 を2013年 5 月 か ら 開 始 し て お り,
地域の関係団体と連携をとりながら,
る実行環境,宅内無線通信方式に対す
本 協 業 を 通 じ て, 本 文 書RD039は,
日本国内での啓蒙活動と,加盟企業の
る要件,デバイスモデルなどです.
BBFメンバからも参照可能な要求仕
共同による市場調査,普及活動を展開
様となっています.
しています.
ホームゲートウェイにおける実行環
境については,ドイツテレコムやオレ
ンジ(旧フランステレコム)が中心と
なって,Java/OSGiといったソフト
ウェア環境下で必要となるソフトウェ
ZigBee Alliance
での活動
■ZigBee Allianceとは
ZigBee Allianceの組織構成と役割
を図 2 に,技術仕様策定の流れを図
3 に示します. ZigBee Marketing
Steering Committee(ZMSC)
,およ
(6)
アモジュール群や性能要件を規定して
ZigBee Alliance は,無線センサ
びMarket Working Groupにて市場の
おり,またHGIではここで規定した性
ネットワークの標準規格の策定と相互
要 求 事 項 や ユ ー ス ケ ー ス をMarket
能要件を検証するためのテストイベン
接続性の保証を目的として2002年10
Requirements Document(MRD)と
トも併せて定期的に企画しています.
月に設立されました.IEEE802.15.4
し て 取 り ま と め,MRDがZigBee
本イベントは,要件に対する技術の到
を物理層,MAC層として,その上位
Architecture Review Committee
達点の確認やメンバ間での関係構築に
のネットワーク層とアプリケーション
(ZARC)に送付されます.ZARCは
役立っています.
インタフェースの標準化を推進してい
受領したMRDを適したWorking Group
■宅内無線通信方式に対する要求仕
ます.メンバは,通信事業者,システ
(WG)に 送 付 し,WGに てTechnical
様(RD039)策定の取り組み
ム ・ チップ ・ ソフトウェア ・ ハードベ
Requirements Document(TRD)が策
我々は,SHTFにおいて,ドイツテ
ンダから構成され,日本からはNTT,
定されます.TRDでは,
技術的なスコー
レコム,オレンジ,日本電気などと連
携し,スマートホームサービス提供の
観点から既存の宅内無線通信方式に対
(4)
する要求仕様(RD039) を策定する
取り組みを進めました.
RD039では,ユーザビリティ(簡易
設定,設定サポート等)
,通信信頼性
(干渉回避,カバレッジ等)
,保守機能
(テスト機能,遠隔サポート等)
,セキュ
リティ(認証機能,暗号化機能等)な
どの分野において,宅内無線通信方式
が満たすべき要求仕様を規定してお
表 HGIリリースドキュメント一覧
ドキュメント番号
ドキュメント名
HGI-RD001-R2.01
Home Gateway Technical Requirements: Residential Profile V1.01
HGI-GD002-R2.01
Remote Access Guidelines
HGI-GD003-R2
Parental Control in the Home
HGI-GD004-R2
Performance Metrics
HGI-GD006-R2
IMS Enabled HG
HGI-RD007-R2
Requirements for HG Interworking with an External NT
HGI-RD008-R3
HG Requirements for Software Execution Environment
HGI-RD009-R3
Requirements for an energy efficient home gateway
HGI-RD010-R3
Home Gateway Requirements for Multiple Session Support
HGI-GD013-R2
QoS Whitepaper
HGI-RD015-R3
Requirements for Common Power Supply for Home Networking Equipment
れるZigBee IP等の改善を想定し,ペ
HGI-RWD016-R3
HG and Home Network Diagnostics Module Requirements
アリングの簡易化,消費電力の適正化,
HGI-GD017-R3
Use Cases and Architecture for a Home Energy Management Service
HGI-RD024
Requirements for an NGA(Active Line Access)Capable NT
HGI-RD026
IP-PBX Module Requirements
HGI-RD027-R3
Home Gateway QoS Module requirements
HGI-RD039
Requirements for wireless home area networks(WHANS)supporting
smart home services
HGI-RD048
HG Requirements for HGI Open Platform 2
り,NTTからは日本での利用が期待さ
再起動時の適切なアドレスの付与,
ネッ
トワークトラブル時の切り分け機能な
どについて要求仕様を提案しました.
本要求仕様は,2014年 5 月に完成
し,RD039文書として正式にリリー
NTT技術ジャーナル 2014.9
75
グローバルスタンダード最前線
プを定義し,それを基に技術仕様が作
成されます.
Board of Directors
・戦略策定
・経営,財務,法務
・他業界団体への協力推進
■技術WGでの活動
Outsourced Management
・外部のコンサルティング会社
NTTは,HGIのRD039で の 規 定 内
容を基に,ZigBee Allianceに対して
宅内無線通信要求仕様を説明し,その
ZigBee Architecture Review Committee
・各テクニカルWGのとりまとめ
必要性について賛同を得ました.
また,
ZigBeeの技術WGメンバとしてHGI
Technical WG
・ZigBeeの普及に向けた技術的活動を行うWG
の宅内無線通信要求仕様とZigBeeの
ZigBee Marketing Steering Committee
・各テクニカルWGのとりまとめ
Market WG
・各国の市場におけるZigBeeの普及を目的としたWG
図 2 ZigBee Allianceの組織構成と役割
技術仕様と照らし合わせ,該当する技
術仕様有無を明確化し,技術仕様とし
て規定されていなかった簡単接続機能
を新規機能として提案し,その検討を
MRD
進めています.2014年 6 月現在では,
図 3 におけるTRDの策定まで完了し
・ユースケースや市場の要求条件を記載
TRD
ています
展示会での広報活動
・MRDがZigBee Marketing Steering Committeeで承認
後,ZigBee Architecture Review CommitteeでTRDを
作成
・定義すべき技術的なスコープを記載
・TRDのスコープを基に技術仕様0.7
0.7
版を策定
・0.7版を基に相互接続試験を実施
H G IのR D 0 3 9を活用し,Z i g B e e
0.9
Allianceなどの無線標準化団体とのリ
エゾン関係の構築のほか,海外での展
・最終的な文言の
修正
・認証の準備待ち
1.0
示イベントでの講演等を通じて,宅内
図 3 ZigBee Allianceにおける技術仕様策定の流れ
無線通信方式改善の働きかけを行って
います.これまでに2013年10月にオラ
ンダで開催されたBBWF(Broad Band
World Forum)や2014年 5 月に日本で
開催された「Wireless Japan2014」に
て講演をしています(図 ₄ )
.
今後の展望
ここではスマートホームビジネス展
図 4 「Wireless Japan2014」でのプレゼンの模様
開に向けて,国際標準化の場を活用し
た海外通信事業者との連携活動とし
て,HGI/ZigBee Allianceでの活動内
容を紹介しました.今後も,本分野に
おける課題解決,およびサービス普及
に向け,海外通信事業者と協調の下,
該当する技術分野に応じた国際標準化
活動を進めていきます.
76
NTT技術ジャーナル 2014.9
■参考文献
(1)
(2)
(3)
(4)
http://www.att.com/shop/digital-life.html
https://www.qivicon.com/
http://www.homegateway.org/
http://www.homegateway.org/publis/RD039Req-for-Wireless-home-area-networks.pdf
(5) http://www.broadband-forum.org/
(6) http://www.zigbee.org/
・最終版
Fly UP