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インターネットを利用した遠隔・巡回医療システム 体位測定端末について
IT ヘルスケア 第 2 巻 1 号,May 27, 2007: 82-84 B-10 インターネットを インターネットを利用した 利用した遠隔 した遠隔・ 遠隔・巡回医療システム 巡回医療システム ━ 体位測定端末について 体位測定端末について Care for elderly people using internet - development of position monitoring device 秦野 直1),大堀 理1),吉岡 邦彦1),堀口 裕1),大野 芳正1),米納 浩幸1), 橘 政昭1),都筑 明2),福田 典夫2) 1)東京医科大学泌尿器科,2)株式会社CSKシステムズ 【はじめに】 はじめに】 高齢者の介護で特に問題になるのは,褥瘡と尿路管理である。この 2 つの問題で自宅での介護が困難とな ることが多い。褥瘡は寝返りが起こらなくなると生じ,褥瘡を防ぐために介護人による体位交換が必要となる。 インターネットを利用した遠隔・巡回医療システムを構築し,第三者が介護に介在することにより,体位交換が 必要となった老人でも自宅での介護が可能となり,医療・介護の質を向上させことができる。今回,病院・介護 会社などの遠隔地で高齢者の体動を監視するための端末を作成したので報告する。この目的に合致する装置 はできるだけ小型・軽量であること,無線でデータが送られ,かつ長時間駆動すること,データがほぼリアルタイ ムで送られることなどの条件が必要である。今回ほぼ実用的な端末が完成したので報告する。本装置により, 褥瘡の予防や,転倒,転落などの事故をいち早く知ることができる。 【目的】 目的】 の体位を知る。装置自体は 3 軸方向の回転を知るこ 褥瘡防止のための,寝返り測定装置を開発するこ とができるが,現在は寝返りのみを検知するため体 とを目的とした。本装置を腹部にバンドで装着すると の長軸方向の回転のみを取り出している。重力セン により遠隔地の寝たきり老人の体位を継続してリア サーからの信号は増幅され 10 bit A/D converter に ルタイムにモニタすることができる。体の向きが変わ よりデジタル化され,無線(Zigbee)でパソコン側に転 ると,端末の向きが変わり,それを端末内のセンサ 送した(アーズ社製 Apis シリーズ Mellifera を使用)。 ーが検知し,老人の体位変化を知る。この信号を無 パソコン側に送られた 3 方向の重力加速度データよ 線でパソコンに転送し,分析のうえハードディスクに り,長軸方向の回転角度を計算した。サンプリング回 蓄える。このファイルを外部からアクセスすることに 数は可変とした。端末のスイッチをいれると,データ より,遠隔地で体位をモニタすることが可能である。 の収集が開始され,測定終了時に端末のスイッチを 切るとデータの収集が終了するようにした。 【方法】 方法】 開発した装置は 18×57×95 mm の大きさで,装 置内には 3 方向の重力加速度を感知するセンサー が取り付けてある。患者の体位変換にともない装置 が回転するとセンサーの出力が変動し,それぞれの センサーのベクトル方向を合成することにより,患者 IT ヘルスケア 第 2 巻 1 号,May 27, 2007: 82-84 B-10 【結果】 結果】 する。家人により上記処置が行われれば,巡回車は 条件によって異なると思われるが 10 m 程度離れて いても患者体位を連続してモニタが可能であった。 装置は腹部にベルトで固定するのが適当と考えられ た。長軸方向の回転は重力加速度センサーを用い 測定することが可能であったが,回転方向を検知す るためには,一秒間に 10 回のサンプリングが必要で あった。体位が固定していても呼吸で数度の変動が 観察されるため,寝返りの開始は 15 度程度の変動 があったときを寝返りの開始とするのが適当と思わ れた。一回の寝返りは数十秒から数分を要したため, 寝返りの終了は 3 分程度変動がなかったときを寝返 りの終了と判定した。寝返り回数。寝返り角度,寝返 り方向などのパラメータを計算した。これらのパラメ ータはリアルタイムで計算されるため,ハードディス クに蓄えると,サーバーからの参照が可能となり,ほ ぼリアルタイムで老人の体位を遠隔地で把握するこ 訪問しない。このようにして本システムは無駄を省い た質の高い医療・介護を可能とする。つまりいいかえ れば,本システムは第三者による必要なときに必要 なだけの介護を提供する。本研究により介護コストを 大幅に引き下げることが可能となる。 今回の端末を使用すると,遠隔地で寝返りを監視 することができる。測定の理論は,重力方向を検知 して体位を測定しようとするもので,センサには重力 加速度計を用いた。2 個の加速度計を用いれば,回 転軸を中心に回転する角度の算出が可能であるが (図 1),今回の端末には,もともと 3 個のセンサが搭 載されているので,ソフトウェアを改良し残りの軸の 回転を検知すれば,起座位や立位になった場合の 体動検知も可能で転落や骨折の防止に使用できる と考えられる(図 2)。 とが可能となった。 図1 図2 【考察】 考察】 本システムは実用段階では,次のように運用され る。ある地域を受け持つ数台の巡回診療車には各 家庭の寝たきり老人の体動(寝返り)が本装置により 常に監視されている。寝返りが一定時間以上ない場 合には巡回車に連絡がはいり直ちに訪問の上対処 また一定時間寝返りのない場合にアラームを発する こともでき,褥瘡の予防に役立つと考えられる。無線 規格としては Zigbee*を採用した。Zigbee は転送速 度は遅いものの消費電力が少なく,本端末に適して い る と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で の Zigbee は IT ヘルスケア 第 2 巻 1 号,May 27, 2007: 82-84 B-10 IEEE802.15.4 に準拠しているもので,エンドデバイ えられる。 スであり,中継機能は持って折らず,親機と子機の 1 対 1 の通信を行うことができる。転送速度は 【まとめ】 まとめ】 250kbps である。接続可能数については Zigbee の 本装置は小型で軽量であり,十分実用が可能な装 規定では理論上最大 65533 台まで接続できることに 置である。本装置は実際の臨床の場での褥瘡の防 なっている。 止や褥瘡防止の研究に有用であると考えられる。今 本装置の大きさは 18×57×95 mm であるが,あき 後実際に使用しながらさらに改良してゆきたい。 スペースがあり,専用ケースを用いればさらなる小 型かも可能である。またサンプリング回数,ソフトウェ アを工夫すれば,さらなる低消費電力化も可能と考 *参考 ZigBee 短距離無線通信規格である。消費電力が少なく乾電池で駆動可能である。 データ転送速度は 250kbps。 端末には中継機能がありメッシュ型のネットワークを構築できる。このため直接電波の届かない端末間 でも通信が可能である。一部の端末が停止した場合にも,迂回して通信できる(低消費電力で広範囲)。 (コーディネータ,ルーター,エンドデバイス)