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Title 比較試論 Aen. VIII と Od. III : エウアンデルとパラス像を 中心として

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比較試論 Aen. VIII と Od. III : エウアンデルとパラス像を
中心として
根本, 英世
西洋古典論集 (1986), 2: 45-62
1986-03-20
http://hdl.handle.net/2433/68549
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
比較試論 Ae
n.
VI
I
Iと Od
.
I
I
I
-
エ ウアンデル とパ ラス像 を中心 として-
根 本
英 世
は じめ に
ラテン文学 におけるギ リシア的要素 ・影響 については,今更 あ らためて述べ る
必要 もないほ どに論 じられて きた。た とえばジャンルに関 して も,叙事詩 ,拝情
請,悲 ・喜劇 をは じめ として,ギ リシアの影響が見 られぬ分野 は稀 である。弁論
家教育 の理想 を述べ るにあたって同時 に, ローマに対す る愛 国心 を吐露 している
クウインティ リアヌスに して も, "
s
a
t
i
r
aq
ui
d
e
mt
o
t
ano
s
t
r
ae
s
t
"と言わね ばな
らなか った 1
)
。これが個々の作品 に見 られ るギ リシア的要素 となる と,枚挙 にい と
まもない。
しか しラテ ン作家 の本質 をギ リシアの模倣 のみに見 出す ことに終始 している限
り,彼 らに近づ く道 は閉 ざされ ることにな ろう。古典期 まで に既 に数百年 の伝統
を有 していた ローマに も,独 自の歴史展開の中で育 まれて きた固有 の倫理 ・価値
観が存在 していたのだか ら2
)
,模倣 を専 らとした作 品が,その社会 に受 け容 れ られ
l
o
gaはテオ ク
た とは考 えられないか らである。ウェルギ リウスを例 に とれ ば,Ec
o
y
gi
c
aは- シオ ドスの, Ae
ne
i
s(
以下 Ae
n.
)はホメロスの`
模̀倣"3)
リ トスの, Ge
とみた ところで, それはあ くまで "
表現形式"の問題, さらには "
超 えるべ きも
の と定 め られた模範"の謂 と解すべ きであろう。実際 Z
l
i
a
s(
以下 Z
l
.
)・Od
y
s
s
e
i
a
(
以下 Od.
)に流れ る精神 と Ae
n.のそれ とは,異質である. ホメロス以来のギ リ
シア文学 の伝統 か ら, d
ac
t
yl
i
che
xa
me
t
e
rを用 いて 「英雄 の勲」を歌 うとい う形
式 を借用 した ウェルギ リウスが, ホメロスの詩 とは全 く異 な った意図 を持 ってい
たのは明 らかであるし, またその作品は公表前か ら "イ リアスをしの ぐもの" と
期待 され もした 4
)
0
Ae
n.を詩作 するウェルギ リウスの念頭 に絶 えずホメロスがあった ことは,その
素材 ・
構成 ・
叙述等 に関す る研究 か ら明 らかである 5
)
。 しか し,上述の ようにホメ
ロス とは目的 を異 にす るウェルギ リウスなれば, その素材の消化,人物描写 には,
ギ リシア文学 の伝統か らの独立,換言すれ ば "ローマ化"が, さらには "ローマ
y
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J
L
Or'
AxL
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vTも 方
0人'
v
J
L
WL
T'
06v
:q6evT
的な もの"の描 出が予想 され る。 pe
もp
i
u
sAe
ne
a
sも同 じ く トロイア伝説圏の英雄 であ りなが ら,前二者 の世界 と後
-4
5
-
者 のそれ とは全 く異 なる。 Ae
n.のアユネアスはホメロスに登場 す るその人 で は
な く, ローマ建 国 とい う偉業 を課せ られたため, ときにはその行動 に明快 さの欠 、
ける,一種 のあ と味の悪 ささえ示 さね ばな らぬ英雄- しか しそれゆえ一層,心 冒
f
理の複雑 な嚢 を読者 に感 じさせ る人物 として描かれているが, これはウェルギ リ;
ウスの "
創造" によるもの と言 えよう 6)0
Ae
n.に登場 す る人物 は数多いが,本稿では これ まで意の払われ ることの少 なか
ったエ ウア ンデル を中心 に考察 してみたい。彼 はいわゆる mi
norc
har
ac
t
e
r
sの一
人 にす ぎないが,その登場 シー ンには,ホメロス との比較上 の興味 と同時 に,Ae
n.
全篇-
ことに ⅩI
I巻-
と深 く関連 す る問題 が含 まれてい る と思われ るか ら
である。 またその際詩人が既存 の伝承 を どの ように物語 に織 り込 んだのか, につ
いて も考 えてみたい。
I
Ae
n.
VI
I
I巻 (以下 ローマ数字 のみの場合 は Aen.の巻数 を,算用数字 のみの場
合 は ⅤⅠ
Ⅰ
Ⅰの行数 を示す)で, ラテ ィウムの戦況 に胸 を痛 める
(
1
8
f
.
)主人公 の夢
36
枕 に立 った河神 テ ィベ リメスは,エ ウア ンデル と盟約 を結ぶ よう,忠告す る (
-6
5)
。この言葉 に従 って英雄 はバ ランテウムの地 に赴 き,トウルメスに対抗すべ
1
2
7
-1
51
):その際彼 の拠 りどころは,聖 なる予
くエウア ンデル に信義 を求 める (
言,世 に隠れな きエ ウア ンデルの名 声, そして互 いに "
祖先 を共有" している こ
1
3
2c
o
gnat
i
q
u
epat
7
1
e
S
)7)。エ ウアンデルはただちにアエネアスを受
とであった (
1
5
4f
.
)
0
け入れ る (
I
I巻 に語 られ るテ レマ コスの どュロス訪問 と関連 づ
この箇所 は しば しば Od.I
けて解釈 され る 8
)
。 この解釈 はウェルギ リウスにお けるホメロスの影響 を重視 し
た もので,或 る意味では伝統的 と言 えよう。 た とえばアユネアスを目に した折 の
エ ウア ンデルの言業が, テレマ コスを眼前 に したネス トルの科 白 (
Od.I
I
I
1
2
3
f
.
)
に由来 す る,と考 えるのである 9)。このエ ウア ンデルの言葉 はおそ ら くホメロスの
もの を踏 まえた ものであろう。 エ ウア ンデルはアユネアスが その父 アンキセスに
似 てい る と驚 くが,1
5
7
f
.のエ ピソー ドでは彼 自らが若 き日のア ンキセスを目にし
た ことが語 られ る。すなわち, かつてラオメ ドンの息子たちがその妹へ シオネ を
サ ラ ミスに訪れた折 に 10),エ ウアンデルはア ンキセスの勇姿 にJ
L
、
うたれ,互 いに
友誼 を結 んだ。 そ してア ンキセスは帰 り際 にエ ウアンデルに "
矢筒","
矢"
,"
轡"
を贈 ったのである。友誼 を結ぶ際 の贈物 とい うモチー フは,一見
〟ⅤⅠ巻の"デ ィ
オメデス とグラウコス"の シー ンを想起 させ るが,異国の地 で援助 を求 める英雄
-4
6
-
が受 け入れ られ る とい う, よ り大 きな枠で考 えれば,詩人 の念頭 にあったのはや
I
I巻 と考 えるべ きであろう。
は り Od.I
事実 アユネアスが この地 に受 け入れ られ る過程 と Od.I
I
I巻 には共通点 と見 ら
れ るものが多い。 それは以下 の ように整理 され よう :
(
i
) a)テレマ コス一行が ピュロスに到着 した折,
人々はポセイ ドンに犠牲 を捧
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
5
f
.
)
, b)
エウア ンデルたち もヘルクレスに
げてい る最中であったが (
Od.
1
0
2
f
.
)
0
犠牲 を捧 げている ところである (
(
i
i
) 外来 の一行 にまず声 をか けるのはその地 の王子 a)ペ イ シス トラ トスで あ
I
I
I
4
3
f
.
)
, b)
パ ラスである (
1
1
2f
.
)
。
り (
Od.
(
i
i
i
) その地 の王,ネス トル もエウア ンデル も共 に老人 として描かれてお り,
(
i
v
) その訪問者 に対 す る言葉 に も共通す る ものがあるが,
(
Ⅴ) それ には,両人 とも各々訪問者の父親 と親 しい関係 にあ った ことが前提 と
されている。
しか しこれ らの点 も詳細 に検討すれば,VI
I
Iの シー ンがホメロスの影響 のみ に
-(
Ⅴ)
を吟味 しつつ, ウェルギ リウス
よる ものではない ことが明 らかになろう。(
i
)
と既存 の伝承 の関係, またそれ を如何 にして物語 に取 り入れたのか をみてみ よう。
Ⅰ
Ⅰ
上 の(
i
)
の場合, ピュロス人がポセイ ドンに犠牲 を捧 げていたのは, ポセイ ドン
-ネ レウス- ネス トル とい う家系以上 に,メ ン トル姿の女神 アテネの祈 りの言葉
を引 き出すための もの と理解で きる 11)。オデ ュッセ ウスの帰国 については Od.前
半で繰 り返 し語 られ, それ は叙事詩の聴衆 に筋の展開 を知 らせ る とい う機能 を も
I
Iで もそれ以上 の意味 は見 出 し勇往い。ではバ ランテ
ったのであろうが,この Od.I
ウムにおけるヘル クレスへの犠牲 は,物語 の以後 の構成 とどの ような関係 を もっ
ているので あろうか。 この神のための祭儀 の宴 は,主人公一行 の到着 ・受 け入れ
によって中断 され るが, エ ウアンデルの勧 めによって英雄 たち も加 わ り,再 び続
けられ る (
1
72f
.
)
。そして王 は この祭がヘルクレスのための ものであ り 12),何故 こ
の神が祭礼 を受 けるに至 ったか を-
いわゆる "カクス"ェ ピソー ドを,語 り始
0
行 にわた るこのエ ピソー ド導入 は,"ヘル クレスの祭儀"によ
める。すなわち約 9
って準備 されているのである。
では この "カクス"ェ ピソー ドはいかなる機能 を もってい るのだ ろうか。 これ
にはた とえば,エ ピソ丁 ドの主人公へル クレスのア リステイアを通 してアウグス
トウス帝が讃 えられている とみる解釈, あるいは,-ルクレスにはアエネアスが,
-4
7
-
カクスには トウルメスが反映 されている とする見解が,ある 13)。 しか し前者の解
釈 に従 うと …ヵクス"の役割 が明瞭 に説明で きぬ憾 みがあるし, また物語全篇 と
このエ ピソー ドとの関連 も暖昧 とな りかねないOでは後者 は どうだ ろうか。 ⅤⅠ
Ⅰ
Ⅰ
の "ヘル クレスによるカクス退治'
'と ⅩⅠ
Ⅰの "アユネアス と トウルメスの決闘"
を, テクス トに拠 って比較 してみ よう。 カクスはヘルクレスに, トウルメスはア
エネアスに敵 わぬ とみて,共 に退散 しようとす る,その姿の描写 には相似 た もの
が瞥見 され る 1
4
)
。 またそれは,彼 らが相手 に対 して恐怖 を抱 いているが ゆえであ
る 15)。そ してへルクレス,アエネアスの怒 りも凄 まじい 16)。他 に もカクス と トウ
ルメスの描写 には共通点が見 られ る 17)。これ らの点 を考慮すれ ば,この"カクス"
Iと関連 させ て理解 すべ きで はなか ろ うか。 カ クスの手強 さが,
エ ピソー ドは ⅩI
トゥルメス との決闘がアエネアスに とって容易 な らざるもの とな る ことを示 して
いる と思われ るのである。
この ように考 えれば,"ヘル クレスへの祭儀"がカクス ・エ ピソー ドを通 して細
い糸 によって ⅩⅠ
Ⅰと結 ばれている と看倣 す ことがで きよう。
(
i
v
)
,(
V)
について。主人公 は王エ ウアンデルに対 し,王が トロイアの攻 めの総師
アガメムノン兄弟 と血縁 にあた ることを一応認 めなが らも(
1
2
9
f
.
)
,彼 の もとに援
助 を求 めに来 たのは,祖先 を共有す るため,と語 りかける。しか し,"
血縁 の誼 み"
Ⅰ
21
9f
.で,イ リオネ ウスが ラティメスに盟約 を求 める際
とい うモチー フは既 に ⅤⅠ
に用 い られてお り,何の新 しさもない。か りにエウア ンデルが主人公の言葉 をそ
の まま受 け入れて,ただちに援軍 を与 えて しまうと, この シー ンは VI
Iの "イ リ
オネウスニ ラティメス" シー ンの繰 り返 しに近 い もの になるであ ろう。 ここで詩
人 は,おそ ら くは "
叙事詩 の伝統" に属 していた と思われ る "
来訪 の客が,優 れ
たその父采
削こ似 ていることに主人側が気づ く", また "
祖父 (
あ るいは父)の代 の
友誼 とその際 の贈物" とい う二つのモチーフを用いた もの と思われ る。 その際前
述 のへ シオネに関す る伝説が詩人 によって巧 みに利用 された ことは想像 に難 くな
い。
主人公がア トラスを始祖 とす る遠 い血縁 について語 っているの に, それ を受 け
る王が漠 としたその家系 には一切触れていないのは,一見奇妙 と考 えられ よう。
英雄 の言葉 を無視 さえしてい るようで もある。 しか し王 は形 の上 では,親 しみを
求 めるアエネアスの言葉 を無視 しなが らも,英雄 も読者 もまった く期待 していな
か った ことが ら-
ア ンキセス との相似, また王 自身 とア ンキセス との出合 い ・
交わ ヮ, について語 る。 その結果,主人公 は予期 した以上 の好意 を示 さカ
1ること
になる。表面上 はギ ャップを感 じさせ る両者 の この言葉の交換 には,却 って意外
)
。一般 に,伝統 を無視 した"
刺
性,劇 的要素 とい う効果が含 まれているのであ る 18
ー4
8
-
追"が存在 しうるのかは,甚だ疑問であるが,以上の ように考 えれば,詩人が こ
こで,"
叙事詩の伝統"に従いつつ も,既存 の伝承 を用いつつ,彼一流の創造 を行
なって,一応の成果 をあげていると見 ることがで きよう。
ウェルギ リウスが, しか し, ここでエウアンデル-アンキセスの友誼 をそらくは新たに-
浴
導入 したのは,ただ王 と主人公の出会い を劇的な もの とす る
ためだ けであったのだろうか。
再びテクス トに戻 る と,王が英雄 に援軍 を約束 したのは(
1
69
f
.
),アンキセス と
1
6
9er
go)であった。 しか し e
r
goの直前で,友誼 を結 んだ折
の友誼 によるため (
にもらい受 けた武具 を現在 は王の息子パ ラスが身につけてい る, と語 られている
ことに注 目したい。詩人 は この箇所で,既 に一度登場 してい る王子 に読者の注意
を促 しているように思われ るのである。
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
ホメロス とウェルギ リウスを比較する場合,アキレウスにはアエネアスが,パ
トロクロスにはパ ラスが対比 され る 19)。しか し,〟.ではアキレウス とパ トロクロ
スは トロイア攻 め以前か ら,子供 の ときか らの親友 として措かれてお り 20),本来
な らこの比定 は不可能か と思われ よう。だが詩人 はまず,アエネアス とパ ラスの
父親同志の友情 とい う設定 を通 して,両人 を同 じ世代 に属す もの と描出 しようと
している。
〟 ⅩⅤⅠ
, ⅩⅤⅠ
Ⅰでパ トロクロスはアキレウスの武具 を身に纏 ってヘ ク トル と闘
うが,敗れ, トロイアの英雄 はその武具 を奪い去 る。 しか しこの トロイア人 もア
キレウスに打たれ,身につけていたその武具 を元の持主 に取 り返 されて しまう。
この親友の復健 とい うモチーフの中の "
武具 をめ ぐる争い" とい う一筋の糸 を看
)
0
過す ことはで きない 21
さて,Ae
n.で もパ ラスを覆 した トゥJ
t
,メスは,アエネアスの手 にかかって契れ
る。一騎打 ちの最後で,前者が和解の申し出 とも,命乞い ともとれる言葉 を口に
すると,英雄 は降 しかけた手 を一瞬止 める 22)。 しか し主人公 に トウルメス殺我 を
決意 させたのは, この仇敵の肩 に懸かるパ ラスの "
剣帯"であった。物語 のクラ
イマ ックスをなす このシー ンにも,"
武具の絡 んだ復健"が見 られ るのである.但
l
.の決闘 シー ンではアキレウスがヘ ク トルの身体 を被 う鎧 の間隙 を狙 って槍
しI
を投 げた時点で, この復健 は既 に完遂 され ることが予想 されるし, またそれ に続
くアキ レウスの科 白で決定的な もの となる。 これに較べ る と Ae
n.の場合 は間際
まで `剣̀帯"への言及が ないため,ペ リペ ティア的要素は強い もの となっている。
-4
9
-
パ ラスが 112f
.で,バ ランテウムの もの として は最初 に,アユネアス一行 に言葉
をか けるのは,先 にみた ように Od.
I
I
Iのペ イ シス トラ トス を想 わせ る。 しか し
Od.の場合 は平和 な どュロスの,の どかな祭儀 にふ さわ しい歓待 の言葉 であった
n.では事情 は異 なる。既 に "イ リアス的"色調 を帯 びている VI
I
Iの, ラ
が, Ae
テ ィウムの緊張が,パ ラスの尋 問 には窺われ よう。 これは同時 に "
戦士"パ ラス
を導入す るシー ンで もある 23)。またエ ウア ンデルが息子 をアエネアスに託す シー
ン (
51
4
f
.
) ち,テ レマ コスの どュロス出発 (
Od.
I
I
I
47
5
f
.
)を連想 させ る。 しか し
Od.の シー ンが類型的であるの に対 して, ここには王子 を主人公 の魔下 に属 させ
る とい う王の決断が明瞭 に表わ されている 24)。また ここでは公子の活躍 も暗示 さ
れている (
51
5
f
.
)
.ペ イシス トラ トスが Od で演 じる役割 はさして重要 な ものでは
ないが,パ ラスが物語の展開の上 で もつ意味 は大 きい。
c
i
f
e
rに癒 え られ
出陣の折 の彼 は,女神 ウェヌスが とりわ け愛で る"暁の星"Lu
ているが (
5
89
f
.
)
,これはただ彼 の きらびやかな勇姿が軍勢 の中で際立 っているの
を示すだけで はな く,女神 の加護 を も示唆 している もの と見 られ る 。 "
他 の星々
に もまLで '(
5
90
) とは,女神がパ ラスに対 して, その幕下 の どの戦士 よ りも,
Ⅹ3
7
9
好意 を示 している もの と考 えるべ きであろう。の ちの彼のア リステイア (
Ⅰで現われ るだ け
43
6)が予想 され るのである。"暁の星"は, この箇所以外 では Ⅰ
であるが, そ こで も トロイア落 ちのアエネアス一行がイダ山に逃れ るの を見守 っ
ていることを掛酌すれば,上 の解釈 は首肯 され よう 25)。 このパ ラス も結局 は トウ
ルメスに打 ち とられ るが, しか し彼 の死後 アエネアスの トウルメスに対 す る行動
の直接 的動機 のひ とつは,パ ラスの仇討であった ことを忘れてはな らない 26)。本
来 は "ローマ建 国"のための トウルメス との決闘が,パ ラスによってモチー フの
二重化がお こなわれているので ある。 そ して今, このパ ラスをエ ウアンデルが,
主人公 の要請 によって戦地 に赴 かせたのは, 自分 とア ンキセス との友誼記念 の品は武具であった-
その
ゆえであった ことを,再 び銘記 してお きたい。
Ae
n.に登場 す る人物像 は,その多 くがギ リシアの伝説 に由来す るか,或 はロー
マの伝承 に基 いている。 では "パ ラス" は どうで あろうか。古典資料 には多 くの
"
Pal
l
as
"が見 られ るが, Ae
n.に関係 す る と思われ る ものは少 ない 27)。 しか しそ
れ ら、
の資料お よび引用 された伝承か ら得 られ るパ ラス像 は,"父エ ウア ンデルがア
ルカデ ィアか らイタ リアへ と移住 して きて,息子 を埋葬 した丘が その名 にちなん
で Pa
l
l
at
i
um と名付 けられだ '或 は "父の死後パ ラスは暴動の際 に落命 した" と
い う,模糊 た る ものにす ぎない 28)。すなわちパ ラスは,父のアルカデ ィアか らの
移住 との関連 か ら, ローマではある程度古 くか ら信仰 を受 けていた もの と推測 さ
れ る ものの, その明確 な像 はウェルギ リウス以前 にはおそ ら く確立 していなか っ
-5
0
-
た と思われ る。
"
Pa
l
l
a
s
"の語源解釈 については さまざ まな試 みがな され て きたが,末 だ定説 と
され るべ きものはない。今敢 えて, その うちの一 つ,"若者"と関連 づ ける説 を採
若 さ" の象徴 を託 そ う としたのか も知 れ ない。
れ ば 29),詩人 はパ ラスの うち に "
Ⅰ
Ⅹ4
31f
.
,c
f
.43
7f
.
),
事実,パ ラスの死以外 に も,ニースス-エ ウ リュアルスの死 (
Ⅹ81
5
f
.
,c
f
.8
21f
.
,8
43
f
.
) を描写す る際 の詩人 には格別 の思 い入れ
ラウススの死 (
癖
同情,憐偶 を上 回 る感情 が窺 われ るの で あ る。 これ は伝 え られ る詩人 の性
30)
と結 びつけて解釈す る ことも可能 ではあろうが,む しろ戦 場 で失 なわれ ゆ く
盛 りの若 さに対 する詩人 の衷心か らの,哀惜 の情 と,鎮魂 の意 との,発露 であ る
)
0
と考 えたい 31
ウェルギ リウス以前 のパ ラスは,現存資料 に拠 る限 り明確 な像 を もっていなか
ったが,上 に見 て きた通 り,詩人 によって物語展開の上 で重要 な機能 を与 え られ,
f
.でバ ランテウ
読者の前 にその姿 を明瞭 に現わす ことになった。さらに,詩人 が 51
ムの名 の由来 を語 るのを勘案す る とき,我々 は ここに伝統 的素材 に息吹 きを与 え,
再生以上 の成果-
これはすで に "
創造" と称 しうるであろ う-
を達成 してい
る詩人 の技量 を看過 す るわ けにはいかない。 そ してパ ラスの "
若 さ"が,読者 に
一層強い印象 を与 えるのは, その老父エ ウア ンデル との対照 を通 しての ことであ
る。
Ⅰ
Ⅴ
ここで Ⅰ
Ⅰ章(
i
i
i
)
で言及 したネス トル-エ ウア ンデル について考 えてみたい。テ レ
マ コスが故 国イタケをあ とに して ピュロスへ向 ったのは,異邦人姿 のアテネの忠
Od.I
2
7
9f
.
),それ はネス トルか ら,さ らにはスパル タ
告 に従 ったためであったが (
のメネラオスの もとで,父 の風声 を求 めるた めである。一方 アエネアス も河神 テ
ィベ リメスの言葉 に従い,援軍 を求 めてバ ラ ンテウム に向 う。前者 の場合 は,父
の不在 に乗 じて館で無法 を振舞 う母 の求婚者 た ちに対抗 す るための, また後者 の
場合 は戦局 を打開す るための,手段 を求 める使命 を帯 びてい る。 また後者 は目的
地で援軍 を得 ることがで きた し,前者 は父の消息 を尋 ね るにはメネ ラオスの許 に
Od.I
I
I
31
6
f
.
,
3
7
5
f
.
)
。外来者 である主人公 (
あ
赴 くよう忠告 を受 け,激励 され る (
るいはその息子) に親切 を尽 し,迎 え入れ, さ らにその好意が以後 の彼 らの行動
に大 きな影響 を与 えるとい う点で は, ネス トル とエ ウア ンデルの機能 には共通 す
る ものがある。 これは "老人" として語 られてい る両者 にはふ さわ しい役割 で も
あろう 32)0
-5
1
-
しか しこの二つのシー ンを描出す る際,ホメロス とウェルギ リウスは明 らかに
差異 を示 している。テレマ コスが父の消息 を尋ねたのに対 し,ネス トルが一見無
雑作 に答 える内容 は以下の ように整理 され る。
A
トロイアでのギ リシア軍 (
Od.
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
1
0
3
-20
0)
・英雄 たちの戦い
・アガメムノン-メネラオスの争 い
・ギ リシア軍の船出
・英雄 たちの帰国-
アイギス トスの運命 とオレステス ー
(
テレマ コス失意 をか こつ)
B テレマコスを励 ます (
0∂.
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
2
1
1
-2
2
4)
(
アイギス トスについてテレマ コス問 う)
C アイギス トスの受勇臣,オレステスによる復健,テレマ コスを励 ます, ラ
Od.
I
I
I
2
5
4
-3
2
8)
ケダイモ ン行の勧 め (
すなわちネス トルの語 り,答 えは,"オレステスによる父の仇討 ち"をめ ぐる求
心的な もの となっている。 しか しこれでは "オデュッセウスの消息" に関する問
I巻の神々の会議以来 の
いは無視 されているとの批判 も出かねない。 しか し Od.
シー ンを考慮すれば 33),テレマ コスの旅 は彼 を鼓舞 させ るのが 目的である ことが
わかるし,ネス トルが彼 にスパルタ行 を勧 めるの も物語 当初で定 め られているこ
とである。 として上のAに先行す るテレマコスの問い と, Cのあ とに続 くスパル
タ行の勧 めの対応 に気づ くとき, このシー ンが,オ レステス物語 とテレマ コス激
励の繰 り返 しを核 とする,一種の リングコンポジションか ら成 っていると見 るこ
とがで きよう。既 に語 られた ことを,繰 り返 し聴衆 に印象づ けてゆ くこの方法 は,
口承叙事詩 に特有 な ものである。
一方ティベ リメスの忠告 に従 ってエウアンデルの もとを訪れたアエネアスには,
-
そして読者 にも-
予期 しなかった ことが頻々 と続 く。到着直後 のパ ラスに
よる誰何 に始 まり,援軍嘆願 に続 いて父アンキセス とエウア ンデル との意外な誼
みが明 らかにされ, さらに型通 りの饗応の宴ののちには "カクス" について語 ら
れ,"カルメンテイスの門'
'をはじめ とするエウアンデルによる案内各々物語の展開に絡 んでいるか,"
予言"となっている-
これ らは
と, シー ンはめまぐる
し く変化 してゆ く。 この緊迫感 に溢れたスピー ドは,平和 などュロスの王宮 とは
n.
VI
I巻以後 の情況 にこそ適 った もの といえよう。い
無縁 な もので,戦雲澱 る Ae
わゆる "
低才
回"の要素 を極度 に省 いた,読 まれ るための作品が もつ構成が ここに
は見 られ るのである。
その結果 ここに見 られるネス トル像 とエウア ンデル像 も当然異なる。訪問客の
-
5 2
-
父 と主人側が知己である とい うモチー フも, Ae
n.では劇 的要素 を もっていたの
に対 し, Od.では確認 を補助す る程度の意味 しかない。エウア ンデルによるアユ
ネアス再認 は "
援軍派遣" とい う以後 の物語 の発端 ともなっているが,ネス トル
の場合 は再認 と呼べ るほ どの ものではな く, それ も昔 日懐古談で僅 かに言及 され
るにす ぎず, また物語の発 展 その もの と関係す る ところはほ とん どない。 そして
両者 の著 しい相違が見 られ るのは, この "
過去への言及" においてである。 ネス
トルが トロイア戦争 について語 る とき, それはテレマ コスの知 りたいオデ ュッセ
ウスの消息 をはるかに越 えた,老人 の旧 日講 としての色彩が強い ものになってい
る-
〟.で もや は りその傾 向 を示 している 3
4
)
。これは,人 の世 を三代 にわた って
生 き抜 いて,治 めて きたネス トル にこそふ さわ しい "
語 り" ではあるが, そ こに
見 られ るのは,過去の 自己に対 す る自負であ り,失なわれた若 さへ の
(ことに 〟)
限 りない憧債であ り,現実 に対す る盆潜 と失望 にはかな らない。へ シオ ドスの五
時代説話 にも見 られ る,ギ リシア文化 を特徴づ ける r
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Pe
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eな態度 に通 じる
もの と言 えよう。
しか しエウア ンデルが過去 を語 る場合 には,上の ことはあてはまらない。息子
パ ラスを戦地 に送 り出す際,彼 は,過 ぎし年月 をエ ビテルが取 り戻 して くれるな
5
6
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.
)
。 しか し, そのあ とで語 られ る "
過 ぎし日の勲" は,単 に
ら, と嘆 じる (
昔 を懐 しむための ものではな く,往時の若 さ と力が失なわれて しまった ことに対
す る遺憾 の念, 口惜 しさを強調す るための ものである と思われ る-
この ことは
5
6
8
f
.の彼 の科 白 …され ば汝 の甘 き抱擁 か ら我 身 をふ りほ ど くこともあるまい に,
息子 よ" との関係か ら理解 され る。昔 日の 自分であるな らば,パ ラスを連 れて出
陣で きようものを, と嘆 いているのである 35)。 ここには息子 の身を気づか う父性
愛が美 し く描かれている と言 えよう。 ネス トルの "
若 き日への想 い" はそれ 自体
で普遍性 を もつが,エウア ンデルの場合 には, さらに "
父子 の別れ" とい う個別
の出来事-
しか しこれ もあ らゆる時代 に通 じるものである-
を通 して描かれ
ているため,読者 にはよ り大 きな感銘 と共感 を与 えるもの となっている。 この よ
うに見れ ば,エウア ンデルの直接の原型 としてネス トルを想定す ることが無理で
あることが理解 され よう 36)0
"息子への愛"とい う関連か らは, Ⅰ
Ⅹ巻 のエウ リュアルスの母 が比較 され よう
(
Ⅰ
Ⅹ4
8
1
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9
7
)
。息子の戦死 に気づいた母 は砦か ら飛び出 し,我が子の首が敵 の槍
にかか っているのを目にす るが, その嘆巽 は凄 まじい までに狂 お しい。 その悲 し
みの耐 え難 さゆえに,ユ ピテルが我身 を電撃で殺 され るよう, とまで嘆願 す る母
である (
Ⅰ
Ⅹ4
9
5
f
.
)
。 しか しエウア ンデルは (
XI
1
5
2
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81
)
,息子同様 自分 も死 んで
ⅩⅠ161f
.
)
,す ぐに自己を取 り戻 し,息
しまった方が よか った と嘆 きはす るものの (
-5
3
-
子の死が誉 れ あるものであった ことを喜 び (
XI
1
6
6f
.
)
,悲 しみのみ に沈 む ことを反
省 さえす る-
そ して この態度 が, アエ ネ アス に よる仇 討 ちへ の期待 に繋 が る
(
Ⅹ1
1
7
6)
。 すなわち彼 の この言葉 は ⅩⅠ
Ⅰ巻 のアエ ネアスニ トウル メス決闘 シー ン
)
。詩人 は息子 の死 を嘆 く親 を描 くにあた って,父
を準備 す るもの と考 えられ る 37
親 と母親 の コン トラス トを示 しつつ,前者 エ ウア ンデルの 自制的人柄 と全篇 のプ
ロッ トとを巧 みに関わ らせてい るのである。
Ⅴ
さて ウェルギ リウス以前 のエ ウア ンデル像 は どの ような もので あ ったのだ ろ う
か。 ほぼ確実 にこの詩人以前の もの と看倣 す こ とので きる資料 は,極 めて僅 か し
か残 存 しない。 それ に よれ ば,彼 は アル カ デ ィア人 た ち とイ タ リアへ移 住 し
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aと呼 ばれてい
て 38),居 をバ ランテイオ ンに定 めたが 39),その地 は以前 は Va
た 40)-
また入植 のお りアイオ リス方言 を もた らし,さ らに文字 を初 めてイタ リ
)
。 この地 で彼 はパ ンへ の犠 牲 祭 をお こな った
アへ紹 介 した とも伝 え られ る 41
が 42), これ は フ アウメス を最初 に神 として崇 めたのが彼 で あ る と伝 え られ る こ
と4
3
)に関連 しよう。 そ してアルカデ ィアの人 〔あるいはアル ゴスの若者 とも〕カ
テ イルスがエ ウア ンデルの艦隊 の司令官 を務 めた と伝 え られ る ところか ら 44),彼
は この地で或 る程度 の勢力 を誇 っていた とも推定 され る。 また詩人 と時代 を前後
す る資料 か ら窺われ るエ ウア ンデル像 も,以上 の枠 を大 き く出 る こ とはない 45)。
た とえば, トロイアの英雄 アユネアス との関係 も, また彼 をラテ ィウムの地 に援
軍 を もって迎 え入れたのか も,詳 らかで はない。 この ことは必ず しも, エ ウア ン
デル とアユネアスの同盟 に関す る伝承 が 当時存在 しなか った ことに, ただ ちには
結 びつかないが, その可能性が稀 薄である ことも否 め まい 4
6
)
。
ところでエ ウア ンデルがアユ ネアスにローマの古蹟 を示 し, その縁起 を語 り始
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"と呼 んでいる (
3
1
3
)
。
Ae
n.
全篇 を通 して この
める とき,詩人 は彼 を "
語が現われ るのは, この箇所 のみである ことは,注 目に値 しよう。 またその動詞
o
nd
oは,"都市,民族 を創始す る"とい う意味 で は, Ae
n.で 1
2回使用 されて
形c
いる。 しか しデ ィオメデスの一例 を除 いて, これ らはすべ て "ローマ建 国" との
関連 で用 い られてお り, アエネアス (
お よびその郎党 た る トロイア人), サ トウル
)
。叙事詩 Ae
n.が新生 ロ
メス,ロムルス,アウグス トウスの行為 を表 わ してい る 47
ーマの父 アウグス トウス帝 に捧 げ られ,帝 を讃 えるための もので あ った ことは既
に多 くの者 の指摘す る ところで ある。 また ロムル ス, サ トウルメス, アユネアス
によるローマ建 国欝が詩人 の時代 を潮 る ことは確 実で ある。 これ らを考慮 して,
-5
4
-
さらに前述 のエウア ンデル に関す る伝承 に鑑 みれば, ウェルギ リウスは ここで彼
をローマ建 国者たちの列座 に加 えようと試 みている もの と思われ る。 この "
c
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n-
di
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or"とい う語が,バ ランテウムの故事来歴 を語 る彼 に冠 されているのは,偶 然
とは考 えられない 48)0
Ae
n.
後半のテーマは,英雄がいかに して ローマ建 国の緒 に就 くか,である。そ
の際, この異邦人 には当然 なが らさまざ まな障害が予想 され る。 その最大 の もの
は トウルメスに代表 され る土着人 の抵抗である。外来者であ る彼 には友軍 と称 し
うる もの もな く,四面楚歌 の窮境 にある。 しか しローマ建 国の使命 を帯 びた彼 は
この難局 を打破 しなければな らない。詩人 はその対処策のひ とつ として,土着 の
女王 ラウ イニアを英雄 に妻 わせ る とい う定 めを採 り入れ 4
9
)
-
それ ゆえ土着人
の反抗 は ます ます募 るが, 同時 に英雄 の戦 いの正 当性 も強化 され る-
, また さ
らに,同 じく移住者 ではあるが既 にこの地で着実 に地歩 を占めつつあったエウア
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"た
ンデル との同盟 をモチー フ とした もの と思われ る. そ してローマの "
るエ ウア ンデルがアユネアスに援軍 を約束 した ときに, この英雄 の築 く第二の ト
ロイア も正統性 を認 め られ ることになるので ある。
以上 の考察か ら,詩人が既存 の伝承素材 を用いて,巧 みに織 りあげたのが,Ae
n.
のエウア ンデル像である とみる ことがで きよう 50)。
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び
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I
Iのエ ウア ンデル ・シー ンには Od.
I
I
Iの影響 が確 か に認 め られ る。 しか し,
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" とい うモチー フを見 て も, それ はホメ
た とえば この二つのシー ンに "
Ⅰ
Ⅰの意味 を説明 し
ロス とウェルギ リウス との形式上 の類似 の指摘 に とどま り,ⅤⅠ
た ことにはな らない。 このモチー フが, ことに- レこズム期以降好 まれた ことは
事実であって も, ウェルギ リウスはそれ を物語 に漫然 と組 み込 む ことはなか った。
詩人 には,モチーフ と筋の展開 との密接 な関係づ けが要求 されているか らである。
同 じことが,
人物像 を取 り入れ る際 に も言 える。
但 し,ここで も,
既存 の伝承 との調
和が,さらにその 自然 な発展が,求 め られ る。詩人 は この課題 を,エ ウア ンデル と
その息子パ ラスを導入す る ことによって,物語 によ り大 きなふ くらみをもたせ,
またその緊密化 をはか りつつ,み ごとに解決 している もの と思われ る。
注
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語 源 的 に は確 定 され て い な いが, Fr
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6) ホメロスの英雄 たち と較べ る とアエネアスがあ ま りに強 く 「運命」 に束縛 さ
れている とは夙 に指摘 されている ところであ る。 しか しそのために,彼 を "マ
リオネ ッ トの よう"とか,"ウェルギ リウス自身が行動的男性 を理解で きる人 で
はなか った" (
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ものた ち との葛藤 を歌 ってい る ことを,絶 えず念頭 に置 きたい。
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もの と推定 され る。 c
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対応 す るので,読者 には了解 され よう。
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て られた とされていたのか どうかは,不明。 なおラウイニア-ギ リシア人説,
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~;:: -:.)1,.,) L
kt d. Diony. HaL 159.
50) d. Perret, Virgile, nouvelle edition, revue et augmentee, 1965, Paris, 122.
Aen.VIII and Od.III
- - - Euander and the Roman poet's invention - Hideyo
NEMOTO
A knowledge of Greek literature has rightly been regarded to be vital to the
understanding of Latin authors, who are greatly influenced by the Greeks not only
in respect to style and diction, but also in their treatment of literary subjects and
sometimes even in their way of thinking; so is it with Vergil's Aeneid, which is often
interpreted from the viewpoint of its debt to the Iliad and the Odyssey, especially as
to those episodes, motifs and structures which are peculiar to the epic tradition. But
Vergil, who had in mind, in composing the poem, a different intention to Homer,
shows his originality even when he seems at first glance to have borrowed these
motifs from his Greek predecessor. The present author has tried to demonstrate
Vergil's "creativeness" in Book VIII by examining the poet's interpretation and
handling of tradional themes as well as by a comparison with Od. III.
Aen: VIII permits a ready comparison with Od. III, with which the main affinities
are as follows;
i) the sacrifice to a god (Hercules,Poseidon) at the moment of the hero's
(Aeneas,Telemachus) arrival,
ii)
the initial address to the foreigners by a prince (Pallas,Peisistratos) of the
land,
iii)
the old kings (Euander, Nestor),
iv) their words to the guests (VIII 155f., OdJII 123f.) and
v) the friendship between the kings and the guests' fathers (Anchises,
Odysseus).
-60-
While the sacrifice to Poseidon seems only to refer to the genealogy of the royal
family (Poseidon-Neleus-Nestor) and to prepare for Athena's invocation to the god,
that to Hercules has much to do with the development of the story; first it prepares
for the explanation of the Roman sites by Euander, then for the Cacus-episode where
the "aristeia" of the god is related--in which one can see, through the similarities
in representation, a finely woven foreshadowing of the single combat between
Aeneas and Turnus in Book XII.
Aeneas, entreating Euander for an alliance, relies upon their ancient bloodrelationship, an entreaty to which the old king nevertheless does not immediately
respond, but suddenly alludes to the hero's close resemblance to his father, Anchises,
whom the king (we now learn) had met in his youth and contracted friendship with.
Thus the recognition takes place in a more dramatic form than in Od. III, i.e.,
making use of the favoured traditional motif "recognition by a host because of the
resemblance between a father and a son", revealing Vergil's creativity. In order to
make the episode plausible, the poet introduces into the story the Hesione legend
which may have been popular at that time. It is also remarkable that arms-presents
received long ago from Anchises lead to the king's promise of sending reinforcements to the Trojans as well as to the second mention of Pallas.
Aeneas and Pallas are often compared to Achilleus and Patroclus in respect to the
theme of revenge for a friend. In both cases arms play an important role; in the one,
because Patroclus wore Achilleus' armour, in the other, because of Pallas' baldric.
But the baldric is not mentioned until the hero, hesitating to give Turnus a coup de
gr~ce,
sees it on the enemy's shoulder, which results in a kind of "peripeteia-effect".
In the scene where Pallas is introduced, he is already depicted as a competent
warrior, and later as one favoured by Venus (the Lucifer-simile); after his death the
killing of Turnus becomes Aeneas' main purpose, though it originally had been to
"found Rome". This double significance of the motif "Turnus' death"--·revenge
for a friend, and overcoming an obstacle to the founding of Rome--should also be
appreciated. There ·are almost no clear references to Pallas before Vergil, who
-61-
seems to be the first to make the prince an important character in the story, using
existing materials (e.g. the etymology of "Pallanteum"), and created him as a living
personality.
A comparative analysis of the Euander and Nestor scenes brings some conspicuous
differences to light; the speech of the latter, with the Orestes-story and the
encouragement of Telemachus at its core, is formed in the so-called "ring-composition", which is typical of oral poetry. On the contrary, Book VIII is characterized by its speedy change of topics-the challenge by Pallas, the unexpected
recognition by Euander, the Cacus-episode etc.; this method is characteristic of
poetry designed to be read and contributes to produce an atmosphere threatened
with war, i.e., to enhance the "Iliadic tone". Also, in their portrayal ofthe two kings,
Homer and Vergil show wide differences; e.g., though both long for their vanished
youth, Nestor does so simply as an old man with regret for his lost strength(Il.), but
Euander as a father with overflowing paternal love who wishes he could go to the
front with his son.
The former's attitude toward the past may be called "ret-
rospective", typically Greek, and the latter's "prospective", Roman.
The pre-Vergilian picture of Euander is known only vaguely to us from some
historical fragments (Cato, Ateius, Pictor, Tuber etc.), in which no relation to Aeneas
is traceable. Considering that the word "conditor"--hapax legomenon in Vergil-is applied to him, and that its verb "condo" is used to refer only to the foundation
of Rome (except in the case of Diomedes) in the poem, the poet seems to give him a
seat among the founders of the city. His alliance with Aeneas may be an elaborate
invention of the poet, who permits his hero to take his place among the city founders
only after he has received reinforcements from another of them, Euander. Thus the
poet succeeds in weaving Euander and Pallas dexterously into the development of
the story, while remaining true to traditional epic motifs at the same time.
-62-
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