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日消外会議 20(3):733∼
738,1987年
肝細胞癌手術 における術中超音波検査 の問題点 と対策
千葉大学第 2外 科 (現 !千葉県がんセンター消化器科4)
崇 正・ 向 井 稔
長島 通
高
在 完
古川 敬 芳 丸 山 尚 嗣
竜
EVALUAT10N OF INTRAOPERATIVコ
有 我 隆 光
天 野 穂 高
磯 野 可 一
ULTRASONOGRAPHY
FOR HEPATOCELLULAR CARCINOMA
CURRENT PROBLEMS AND COUNTERM□
ASURES
Munemasa RYUⅢ
,Minoru MUKAI,Takamitu ARIGA,
Toru NAGASIMA,Zakan KOH,Hodaka AMANO,
Hiroyoshi FURUKAWA,Takasi MARUYAMA and KatthiISONO
Chiba Cancer Center,Division of Gastroenterologyや
The Department of Surgery 2,Chiba University,Shhool of Mediche
肝細胞癌 手術 にお け る術 中超音波検査 の問題 点お よびその対策 につ いて検討 した,術 中超音波検査
に よ り肝細胞癌95例中92例が存在診 断で きたが, 3例 が false negativeと
な った。切 除標本 で 肉眼的
に認 め られた門脈腫 瘍 塞栓 は全例診 断可能 で あ ったが,肝 内転移巣 の診 断 は特 に5Hlm以 下 で不 良で
あ った.術 中超音波像で肝 内転移巣 と再生結節 の鑑男Uをす るのは困難 で あ り,6例 の false positive例
を経 験 した 。以上 の問題点 に対 して,1)介 在物質 として レス トンを用 い る,2)鑑 ,U困難 な低 エ コー
部 には,マ イク ロ波 メス もし くは エ タノール注入 に よる凝固療法 を行 う,な どの対策 を とってお り,
そ の有用性 が期待 され る。
索引用語 :術 中超音波検査,肝 細胞癌,肝 切除術
おけ る問題 点 お よびその対策 につ いて検討 したので報
は じめ に
術 中超音波検査は肝手術 において必要不可欠な検査
として広 く定着 した感 が ある。視診,触 診で も同定で
きない深在性の肝癌 も,術 中超音波検査を用いれば容
易 に同定す ることがで きる。 また肝癌 と血管 の関係を
立体的に把握す ることがで き,安 全確実な肝切除が可
ゆ。また幕内 らめによ り術中超音波検査を
能 となったll―
応用 した系統的亜区域切除 も工夫 されている。今や術
告
2.対
超
を行 った(表 1).こ の うちの肝細胞癌手術95711,切
91例を対象 として検討 した。
2)術
中超音波検査方法 :リ アル タイム超音波診断
除
除
装
波検査 を肝 切 除 に応 用 しそ の 有 用 性 を報 告 して き
た11し か しなが ら術中超 音波検査 に もまだ多 くの問
面
<1986年 6月 16日受理>別 刷請求先 :竜
崇 正
〒280 千葉市仁戸名町666-2 千 葉県がんセンター
消化器科
1)術
用
策 お よび方法
象 11980年以来 1985年10月までに360例に術中
音波検査を行 い,この うち174911に
超音波 ガイ ド肝切
1)対
中超音波検査な くしては肝切除 はお こないえない時代
になった といえよ う。われわれ も1980年以来術中超音
題点 がある ことも事実 である。そ こで肝細胞癌手術 に
す る。
は
あ
て
置 Toshiba SAL50A,77Aを 用 い,7.5MHzも しく
5MHzの 術中用小型探触子を用 いた。最近 では肝表
近辺 の診断能向上 のために,パ ラフィン共重合体で
る レス トンを1∼2cmの 厚 さに切 って介在物質 とし
用 いてい る (図 1).レ ス トンは3M社 製 で犀創防止
に市販 されてい る。
3.結
果
中超音波検査診断成績
肝細胞癌手術 にお ける術中超音波検査 の問題点 と対策
64(734)
表 1 術 中 エ ヨー施行例
3号
門脈腫瘍塞栓 の診断
6
2293
0 H4
0的6738
2
0 ,
8 223
7
7
”
打
血管E
日消 外会議 20巻
表 3 肝 内転移 の診断 (21例55結節)
大きさ
口 ま
百不出"t(斉 )
け
表 4 主 腫瘍診断不能例
1 49γ な 加 上区増 17X09
+ TAEに
2 47y な
″
(10)2
熊 こ松 辞
+ TAEに
よ│とヽ一
3 30γ な
″
(10)?
+ TAcに
よヽ=■―
よ│ェョ…
・
研 + ・
図 1 パ ラフィン共重合体であるレス トンを介在物質
として術中エコーに用 いる。
たが,6∼ 10mmの 30結節 中 4結 節 (13%),5mm以
下
の19結節 中 8結 節 (42%)が 診断で きなか った (表 3).
2)主 腫瘍診 断不能例 の検討
主腫瘍 が診断で きなか った のはいず れ も肝硬変合併
例 で あ り,ICG R15も 30か ら48%と 高 度 肝 硬 変 例 で
あ った。そ して術前 に肝動脈塞栓術 を施行 したため に,
エ コーパ タ ー ンが 変化 し術前捉 え られ ていた 腫瘍 が 同
定不能 とな った ものであ る。 それ らの 内 の 2例 は深在
性 の腫瘍 で,術 直前 には縮小 してlcm程 度 とな ってい
( 1 ) 主 腫瘍診 断成績 : 肝 細胞癌9 5 例中9 2 例 ( 9 7 % )
に主腫瘍 の描 出がで きた。大 きさF l l に
み る と2 c m 以 内
たが術 中 には超音波検査 で 同定 で きず,肝 機能 上 の制
約 か ら亜 区域切除 は無理 と判 断 し,切 除を断念 した も
は22例中19例 (86%)の 描出であったが,2.lcm以 上
では全例描出可能 であ った。
ので あ る。他 の 1例 は術 中起音波検査 では 同定 で きな
(2)門 脈腫瘍塞栓診断成績 i切 除91例の うち切除標
に切 除 した ところ肝癌 組織 が含 まれていた もので あ る
本で 肉眼的 に12例に腫瘍塞栓 の存在 が確認 された。 こ
の うち 8例 (67%)は 術前 の画像診断 で診断で きたが,
術中超音波検査 では12例全例 に存在診断が可能 であ っ
た (表2).
(3)肝 内転移 の診断成績 :切 除91例中32例に肝内転
移 が認め られた。23例は術前 の画像診断で診断可能 で
あったが,術 中超音波検査 では29例 (90%)に おいて
か ったが,術 前検査 で確認 した部位 の あた りを盲 目的
(表 4).
3)False Positive例の検討
術 中超音波検査 で低 エ コー部位 が認 め られ,癌 病巣
と判 断 して切 除 した症例 の うち 6例 は癌 ではな く再生
結節 (regenerative nodule)で
あ つた,症 例 1・ 2は
主腫瘍存在部位 の反対側 に小低 エ ヨー部位 がみ られ,
同部 を肝内転移 と診断 し根治切除 を断念 し,同 部 の試
肝内転移 の存在診断 は診断可能 であった。術中超音波
験 切 除 の み を施 行 した ところ組 織 学 的 に は 再 生 結 節
検査 の診断成績を転移巣の大 きさFllに
検討す ると,切
除標本で数を確定す るの も困難な多発例を除 いた21例
だ った もので あ る。症例 3・ 4・ 5は 主腫瘍 とともに
他 の低 エ コー部位 も切 除 したが,低 エ コー部位 は再生
結節 だ った。症例 6は 外側 区域 に数個 の低 エ コー部位
55結節では,大 きさ10mln以上の 6結 節全例診断で き
1987年3月
65(735)
が あ り,そ の うちの 1つ は術前血管造影 で濃染 され (図
2),吸 引細胞診 で も class IIIbと
肝癌 を強 く疑 う所見
で あ った 。 しか し術 中超音波検査 で は さらに多数 の低
エ コー部位 がみ られ (図 3), ど の部 が術前 血 管造影 で
も再生結節 で あ った ( 表 5 ) 。
4 . 考
察
術 中超音波検査 の応 用 に よ り,肝 癌 の存在診断,血
管 との位置 関係 が立 体的 に把握 で きる よ うにな り,肝
濃染 した部分 に相 当す るかを判 断す るの も困難 で あ っ
内脈 管構築 を考慮 した肝切 除 が可能 とな った。特 に肝
た。外側 区域切除 を施行 したが,組 織学的 にはいず れ
硬変合併肝癌 にお いては肝機能上 の制約 か ら肝切 除量
に限界 が有 り,大 きな問題 点で あ ったが,幕 内 らはり,
図 2 血 管造影(左肝動脈超選択的造影).左 外側区域
に濃染像がみ られる (矢印).
術 中 超 音 波 検 査 に よ り腫 瘍 支 配 門脈 枝 を 同定 し,
表5
False Positive症例
諄 位
i3Sy 6(ラ
六 せ書〔
cm) 組
募
房 田
織
肝 細由 に対 す る治療
再生活輛
lXl ″
271yむ
酌注療法
″
6カ
i路
‖
‖
H;撚樹
t縁
ユ的 む鋳 m″
帥 側
6範
yむ
CP織 , ″ /
。席荷 。 再生活続
図 3 術 中超 音 波 像 :術 前 に は 見 られ な か った 多 数 の 低 エ コー部 位 が 内側 区 域
(medial segment)および外側区域 (Lateral s軽
コent)に み られ る。ど の部分 が癌
で あ るのか, どの部分 が血管造影 の濃染部 になるのかの診断 は困難である.
Medial Segment
Lateral Segmentヽ
66(736)
肝細胞癌手術における術中超音波検査の問題点 と対策
couinaudのsegment単位 に門脈構築 にそって切 除す
"を
“
工夫 して報告 し,少 ない切
る 系統的亜区域切除
つ
除量 でなおか 根治的切除 となるよ う努 めている。 し
日
消外会誌 20巻
3号
図 4 a)肝 表在腫瘍 の 同定 は困難であ る。b)レ ス ト
ン使 用 に よ り15×10■
lmの 低 エ コーの 腫瘍 が 明瞭
となっている。
か し中 には亜区域切除す らも困難 な肝機能例 も多 い。
高崎 ら。はかか る症例 には核 出術を行 い,そ の遠隔成
績 も良好である ことを報告 している。われわれ も肝機
能 に制 約 のある例 には亜区域切除 にはこだわ らず に,
腫瘍 の回 りの肝実 質 をlcm前 後付着 させ る肝部 分切
除術を行 っている。 このよ うな小範囲の切除において
は,術 中超音波検査 で主腫瘍のみな らず門脈腫瘍塞栓
や肝内転移の有無を確認す る必要がある。 しか し今回
のわれわれの検討 のごとく術中超音波検査にもまだま
だ診断上の問題点 がある.超 音波検査を施行 して もな
お主腫瘍 が同定で きない原因 としては,1)腫 瘍 が肝 の
表面にあ り術中用超音波探触子 の焦点 か らはずれる,
2)周 囲再生結節 とエ コーパ ターンが同 じ,3)腫 瘍 が
小 さい,4)主 腫瘍 が術前療法 などにより著明 に変性す
る,な どが考 えられ る。 自験例では主腫瘍 が同定 で き
に シ リコン樹脂 とパ ラフィン共重合体 を使用 して比 較
検討 し,パ ラフ ィン共重合体 の方 が多重 エ コーが無 く
なかったのは95例中 3例 (3%)の みであったが, こ
れは術前肝動脈 塞栓術 を施行 したために腫瘍 が縮 小
し,エ コーパ ターンが変化 し同定不能 となって しまっ
有用 で あ る こ とを報告 してい る。 レス トンの安全性 に
た ものである。術前療法を した患者 に関 しては頻回に
超音波検査を施行 しエ コーパ ター ンの変化,存 在部位
をよ く把握 してか ら手術に臨むべ きであろ う,そ の う
ちの 1例 は肝表面直下 にあった もので,肝 表面 は術中
た場合 は生食水で腹腔 内を洗浄す るな どの配慮 も必要
用探触子 の焦点か らも,また現在 の7.5MHz,5MHzで
は近距離分解能 に限界 があ り死角 ともい うべ き部位 と
の うち,術 前 には 9例 (67%)の 症例 に しか診 断 出来
なっている。 このため 目的部位を探触子 の焦点 に移動
させ るために, コン ドームに水を入れた水袋を介在物
瘍塞栓 の有無 は患者 の予後 を左右す る最 も重要 な因子
質 として用いるな どの工夫が されている.水 は超音波
の減衰 がな く有用 ではあ るが,水 袋 は把持 しに くく検
査 が しに くい し,臓 器 との接触性が悪 いため特 に肝硬
で よいかな どの術式 を決定す る上 に も,術 中超音波検
関す る報告 はないが術 中検査 は10分程度 で あ り,検 査
に伴 う合併症 は経験 していない。検査時間 が長 くな っ
で あ ろ う。
術 中超音波検査 は門脈腫瘍 塞栓 の診断 に も有用で あ
る。切除標 本で 肉眼的 に認め られた門脈腫瘍塞栓 12例
なか った のに対 し,術 中 には全例診 断 で きた。 門脈腫
で あ り,門 脈構築 を重視 した切除 を行 うか,部 分切 除
査 は極 めて有意義 で あ る。
肝 内転移 は切除91例中32例 にみ られた。 この うち23
変 の よ うな表面に凹凸がある場合 には間 に空気が入 り
安定 した像が得 られないな どの難点があった。 この点
を解決す るためわれわれはパ ラフィン共重合体である
例 (72%)は 術前 診断 されて いたが,術 中 には29例 に
レス トンを介在物質 としてもちいている。レ ス トンは
難 な程 の多発例 もあ り,多 発例 を除 いた21例55結節 の
大 きさ別 の検討 で は,1lmm以 上 はす べ て診 断で きた
犀創防止用 として市販 されているものを1∼2cm厚 に
切 って用いた。 レス トンは超音波 の減衰 が少な く,適
度 の硬度 と柔軟性 があ り,臓 器 との接触性 もよく,把
持 しやす く操作 もしやす い,な どの利点がある。図 4
ともか くも肝 内転移 の存在診 断が可能 で あ った 。肝 内
転移巣 は単発 の ものか ら切除標 本 で 数 を数 えるの も困
の に対 し,6∼ 10mmで
は30結節 中 13%51111n以下で は
19結節 中42%が 診 断で きず,現状 で は5mm以
下 の転移
巣 を診 断す るの は 限界 が あ り今後 の検 討課 題 で あ ろ
う。幕 内 も。術 中超音波検査 に よ り44例 中単 発腫 瘍 26
にしめす ごとく肝表面直下 の小腫瘍 が レス トン使用 に
よ り明瞭に描出され るよ うになった。表面凹凸の強 い
例 はす べ て診 断で きたが 多発腫瘍 18例中 4 allは
診 断で
肝硬変例 では肝表面近辺 のみな らず深在性 の病変 の診
断に も有用 と思われ る。吉 口61は
粛心術 の術中 エ ヨー
きず,術 中起 音波検査 は特 に肝 内転移 の診断 に限界 が
あ るこ とを述 べ てい る。
1987年3月
67(737)
図 5 肝 左業か ら右美前区域 にお よが肝癌 と,後 区域
に低 吸収域 (失印)が み られ る.
図 7 肝 切除 (左三区域切除) 1年 3カ 月後 の CT.後
区域に腫瘍はみ られない.
図 6 a ) 後 区域 の低 エ コー部 に エ タ ノール を注 入.
b ) 腫 瘍部 は高 エ コー となった.
a)
b)
エ タ ノール注入 にて凝固す る方 法 を施行 してい る。 わ
れわれ の経験 では マ イ ク ロ波 メスで ,80w30秒 で径 10
mm,80w60秒 で径 15mmの 範 囲 の肝 が凝 固 され る。切
除不能肝癌 に対す る術 中 マ イク ロ波 メス凝 固療法 の有
効 性 に つ いては報告 した がり,癌 との鑑 別 困難 な病変
に対 して も有用性 が期待 され る.マ イク ロ波 メスに よ
る術 中凝 固療法 の利点 は効果 が確実 で あ る とい う点 で
あ るが,深 部 の病変 に対 しては凝固範 囲が広 くな り過
また この よ うに診 断出来 ない病変 ばか りでな く,術
中超音波検査 で癌 との鑑別 が 困難 な低 エ コー部位 の病
変 が 多 くみ つ か る よ うに な り,こ れ も大 きな問題 と
な ってい る。 これ らの低 エ コー部位 は術 中 に肝転移 と
ぎるのが難 点であ り,特 に肝表 面近辺 の病変 に対 して
行 うのが よい と思われ る。杉浦 は経皮経肝的 な小肝細
胞癌 に対す るエ タ ノール 注入療法 の有用性 を報 告 して
い る。。そ して,実 験 的 には ユ タ ノール lml注 入 に よ り
して,同 部 もあわせ て切除す るか, も し くは根 治切除
を断念す る要 因 とな って いた。し か し癌 ではな く再生
結節 で あ る4/11も
多 く経験 され,現 在 の ところ超音波 画
10∼15nlmの 範 囲 が,2mlで は15∼20mmの 範 囲 の肝
が 凝固 され る と述 べ てい る。 エ タ ノール の注入 された
範 囲 は超音波像 でみ る と低 エ コーか ら高 エ コーに変化
像 のみ で両 者 を鑑 別 す るの は 困難 で あ り,ま た 低 エ
コー部位 をす べ て切除す るわ けに もいかず,な ん らか
の対策 が望 まれ る。そ の ひ とつ として術 中生検 が考 え
られ,超 音波下 に低 エ コー部位 を穿刺すれ ば確実 に組
織 が得 られ る。 しか し切 除標本 で も癌 と鑑別 困難 な病
変 もあ る こ とよ りの,生 検 に よる鑑別 に も限界 が あ る
もの と思われ る.
このため われわれ は術 中 エ コーでみ られ る低 エ コー
す る。し か しその範 囲 がす べ て凝固 されているかは,
部位 に対 し,同 部 を穿刺 して マ イク ロ波 メス もし くは
術 中超音波像 で注入 と同時 に肝 静脈 に流 出す るのが観
察 で きる こ とか らも,今 後 なお検討 を要 す る と思われ
る。術 中 エ タ ノール注入 の利点 は深部 の病変 に対 して
も的確 に注入 で きかつ,他 の領域 は凝 固 され ない点で
あ るが,術 中 1回 の注入 では凝 固効果 が確実で な いの
が難点 で あ る。 よ り確実 な効果 を得 るには,注 入 され
た エ タ ノールが す ぐに washoutさ れ な い よ う血 流遮
断 を してか ら行 うな どの工夫 も必要 となろ う。本法 に
肝細胞癌手術 における術中超音波検査の問題点 と対策
68(738)
よ り肝 の犠牲 を少 な くし 目的部位 のみ を凝 固 させ る こ
とがで き,肝 転移巣 か再生結節 かの鑑別 に迷 う場合,
臨床上非常 に有用 と思われ る。
エ タ ノールと入 が有効 だ った症例 を しめす 。肝左棄
日
消外会誌 20巻
3号
た 。5)こ れ ら問題 点 に 対 す る対 策 と して ,鑑 別 困難 な
低 エ コ ー部 位 に 対 して は マ イ ク ロ波 メス, も し くは エ
タ ノ ー ル 注 入 に よ る凝 固療 法 を施 行 した .ま た 術 中超
音波 検 査 の死 角 ともい うべ き肝 表 面 近 辺 の 検 索 や ,凹
か ら右前 区域 にお よぶ 肝細胞癌 であ る。 CTで 後 区域
凸 の 強 い 肝 臓 に は 介在 物 質 と して レス トン を用 いた 。
に も小低 吸収域 をみ とめ る(図 5)。 左三 区域切 除を施
行 し,術 中超音波 で確認 した後 区域 の低 エ コー部位 に
(図 6)エ タノール を注入 した。 同部 は高 エ コーに変化
これ らの有 用 性 が 期 待 され る。
し(図 7), 1年 3カ 月を経た現在 CTで も異常 な く再
転移 と思われ る病変
発 の兆候 を認 めて い な い.本 4/11は
が エ タ ノール注入 に よ り消失 した もので あ り,臨 床 上
再生結 節 との鑑別 困難 な小癌病 巣 に対す る術 中凝 固療
法 の有用性 を示唆す る もの と思われ る。
結
語
肝細胞手術 におけ る術 中超音波検査 の問題点 とそ の
対策 につ いて検討 した 。1)術 中超音波検査 に よ り,肝
細胞癌95例中924/11(97%)力`
同定 で きた 。 同定 で きな
か ったのは術前療法 に よ り腫瘍 が縮小 しエ コーパ タ ー
ンが 変化 した ものや ,肝 表面近辺 の もので あ った。 2)
門脈腫瘍 塞栓 は切除91例中12例に切除標本で 肉眼的 に
認 め られ, こ の うち 8例 は術前 に診 断 されていたが,
術 中超音波検査 では全911診
断可能 で あ った。3)肝 内転
移 は切除91例中32例 にみ られ ,こ の うち23例 (72%)
は術前 に診断 され ていたが,術 中 には29例 (90%)が
診 断 で きた。多 発 例 を除 く21例55結 節 の 検 討 で は11
mm以
上 の 6結 節 は全例診 断で きた が,6∼ 10mmの 30
結節 中 13%,5mm以
下 の19結節中42%が 診断で きず,
5nlln以下 の診断 が特 に困難 で あ った 。 4)術 中超音波
検査 に よ り肝内転移 と診断 し切 除 した うち の 6例 が再
生結節であ り,超 音波像で は両者 の鑑別 は 困難 であ っ
文 献
1)竜 崇 正,渡辺義二,古川隆男 ほか :肝 硬変合併肝
癌 に対 す る術 中超音波 ガ イ ドに よる肝 部 分切 除
術.手 術 34:1527-1532,1980
2)秋 本 伸 ,由里樹生,長 田芳子 ほか t術 中超音波検
査.肝硬変合併肝癌 にお ける有用性 について,外科
421 189--194, 1980
3)幕 内雅敏,山崎 晋 ,長谷川博 ほか :肝 手術 のため
の術中超音波検査.超 音波医 7:45-49,1980
4)幕 内雅敏,長谷川博,山崎 晋 ほか :術 中超音波検
査.日 外会誌 82:1094-1098,1981
5)高 崎 健 ,武藤晴臣,原 田瑞也 ほか :切 除 し得た原
発性肝癌60例の予後.肝 臓 23:159-164,1982
6)古 田直樹,柳生邦 良,中 田 恵 ほか :術 中超音波検
査で用 いるプ ロー プの contact surfaceに
関す る
研 究. 日 超 音 波 医 会4 4 回研 発 表 会 講 論 集,
197--198, 1984
7)山 本義 一,磯野可一,小野田昌一 ほか :肝 癌 に並存
した adenOmatous■oduleの 1例 と異型 を有す る
■odural hyperplasiaの
1例 .中 島敏郎,大田五六 ,
奥平雅彦,荒川正博編,肝細胞癌 と類似病変 ,東京,
中外医学社,1984,p160-166
8)竜 崇 正,渡辺義二 ,尾崎正彦 ほか :マ イク ロ波 メ
ス の 肝 手 術 へ の 応 用. 日 消 外 会 誌 1 6 i
2074--2080, 1983
9)杉 浦信行,高 良健司,大藤正雄 ほか :超 音波映像下
径皮的腫瘍 内 ユ タノール注入 に よる小肝細胞癌 の
筆
キ
塀黒. 庁
子研究 24:920, 1983
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