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観光と産業のまちづくり - 激動する世界と中国 -現代中国学の構築に
愛知大学経営総合科学研究所叢書 背厚:5 ミリ ISBN 978―4―9903681―4―2 総愛 合 科知 学大 研 究学 所経 叢 書営 35 観 光 と 産 業 の ま ち づ く り 愛知大学経営総合科学研究所叢書 35 観光と産業のまちづくり ―主に諏訪・岡谷を対象にして― 神頭広好・麻生憲一・井出 明・廣田政一 著 ▲ ▲ 神 頭 広 好 他 総愛 合知 科大 学 研学 究経 所営 ★ ★ ★ C A ★ ★★ B ▲ ▲ 愛知大学経営総合科学研究所 i はしがき 今年度の視察は,前々回の長野県に戻り,同県のほぼ中央に位置し,中信と呼 ばれている諏訪・岡谷地域である。この地域は多種多様な観光資源に恵まれ,従 来から生糸,精密機械などの産業が盛んなところである。しかし,観光において は,交通や消費者の価値観とともに旅行者が減少している傾向にある。 今回の研究プロジェクトのメンバーは 5 名(神頭,麻生,井出,廣田,藤井) であり,8 月 17 日に JR 下諏訪駅に近いホテルに集合して,その近くのクラッシッ ク音楽が流されている昔からの居酒屋でまちの様相などをお聞きした。翌日は少 しハードであったが午前中は諏訪市役所を訪れ,その後諏訪大社上社を見学した。 午後は諏訪大社下社に向かい,その近くで古い建物を活用したお店で,信州そば を頂き,その周辺のまちづくりについて NPO の方からお話を伺ってから,街並 みを散策した。夕暮れ近くになってしまったが,平出精機の社長さんから岡谷市 の歴史や企業のあり方などについてレクチャーを受けた。夜は諏訪市の職員の 方々や NPO の方々と比較的山間にあるジビエ料理を堪能した。 翌日の 18 日は,午前中に岡谷市役所を訪れ,同市のまちづくりの計画をお聞 きして,市役所の方の案内で,観光資源となっているお屋敷(旧林家)を見学し た。お昼は名物のうなぎを食べてから,塩尻市にあるセイコー・エプソンの精密 機器製造工場へ向かった。そこではたいへん興味ある機械式時計のお話をお聞き した。夕暮れには,それぞれ帰路に着いた。 今回の視察地域は,共通して観光旅行者が減少している傾向にある。これをく い止めるためにこれらの地域では,多くの努力のもとでまちづくりを試みてい る。ちなみに諏訪市では,諏訪湖の花火大会を長期的に実施しており,御柱祭な どがアピールされている。諏訪市と岡谷市において近接しているところで諏訪神 社下社に近い町の一角では,地味ではあるものの,独自の酒蔵,家具細工,皮製 品小物店など見学できるようになっている。しかし,一般に地方都市に言えるこ とであるが,夕方には店が閉じられ,閑散とした風景は否めない感が漂っている。 ii はしがき この場を借りて,長野県庁の観光課の方,町を案内してくれた NPO の方,諏 訪市および岡谷市の市役所の方々をはじめ平出精機の社長さん,セイコー・エプ ソンの方々には,温かく迎えてくれたことにたいへん感謝する次第である。 2010 年 1 月 21 日 愛知大学 神頭広好 諏訪大社上社の鳥居 諏訪大社上社の御柱 まちづくりを担う下諏訪の酒店 諏訪大社下社通りの一風景 まちづくりを担う下諏訪の木材工房 平出精機社長による岡谷市史の講義風景 諏訪大社下社 諏訪大社下社の御柱祭の広告 岡谷市の旧林家の家屋建造物 岡谷市の旧林家の家屋内の一部 上り諏訪湖 SA から諏訪湖を望む 下り諏訪湖 SA から諏訪湖を望む 観光と産業のまちづくり 目 次 はしがき 第 1 章 諏訪・岡谷地域の観光,交通および産業 …………………… 1 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 ―観光地利用者と観光消費弾性値― …………………… 15 第 3 章 情報教育における産業観光の役割 …………………………… 31 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 …………… 47 あとがき 1 第 1 章 諏訪・岡谷地域の観光,交通および産業 Ⅰ はじめに 長野県の中信と呼ばれている松本市や塩尻市をはじめ,諏訪・岡谷地域は,昔 から工業が盛んなところであり,産業観光も含め多種多様な観光資源が存在して おり,観光地域としてもそれに相応しい地域でもある。このことは図 1 (筆者作成) に示されているように,諏訪湖周辺にはホテル,旅館が集積していて,美術館な どは比較的均等に分散していることなどからも伺える。ここでは,相対的に多く の観光資源を有している諏訪地域に照準をあて,まず「平成 20 年度の諏訪市の 観光動態要覧」 (諏訪市観光課)および「工業統計表」 (経済産業省)にもとづい て観光,交通および産業等についてそれぞれ考察を行う。ついで,それらの時系 列データから観光構造特性が年次によって異なることを調べるために因子分析手 法を応用する。最後に図 1 にもとづき国際都市を見据えたコンパクトシティの構 想について考察する。 Ⅱ 観光,産業および交通 1 諏訪市の観光客数(1) 図 2(上記データにもとづいて筆者作成,以下の図同様)から,諏訪市におけ る観光は,宿泊者数は比較的少なく横ばいであるため,ほとんど日帰り客が総数 に影響している。これについては,諏訪 IC 利用者(自動車入台数)は宿泊者が 比較的多く,他の IC から入ってきた観光客の多くは,周辺地域の観光資源を楽 しみながら諏訪市を訪れていることなどによるものと考えられる。 ⑴ ここでの観光客数の計算方法については, 「平成 20 年度の諏訪市の観光動態要覧」(諏 訪市観光課)の序説で説明されている。(以下同様) 2 第 1 章 諏訪・岡谷地域の観光,交通および産業 図 1 諏訪湖周辺マップ 注)ホテルおよび旅館の立地については,電話帳の住所を利用しているために,GIS のジェオコー ドとのマッチングがうまくいかないものがあり,実際よりも少なくプロットされている。 入利用台数 数 図 2 諏訪市観光客の推移 3 2 上諏訪温泉・諏訪湖の観光客数 図 3 から,ここでの観光客数は諏訪湖のレジャーも含まれた数であり,宿泊者 数が毎年それほど変わらず低迷している割には,湖畔で遊ぶ観光客が 2006 年ま では逓増している。その後,大河ドラマなどのブーム,イベントなどによって訪 問した観光客がこれら観光資源間のアクセスによる集積効果で 2007 年に急に増 加して,その反動もあって翌 2008 年に急に減少している。これについては一般 にイベント後のリピータは減少するものであり,またガソリン価格を含めた景気 などの状況が反映されているように見える。 観 光 客 数 図 3 上諏訪温泉・諏訪湖観光客の推移 3 霧ケ峰の観光客数 図 4 から,ここへの観光客は,圧倒的に日帰り観光客が多く,2002 年には霧 ケ峰有料道路(ビーナスライン)が無料になったこともあり,急に増加して,そ の後も平行線を辿っているが,2008 年にはやや減少している。この観光地の性 格として季節や気候などにも依存しているために,今後はリピータによる訪問数 を増やす方策が必要となろう。 4 第 1 章 諏訪・岡谷地域の観光,交通および産業 観 光 客 数 図 4 霧ケ峰観光客の推移 4 諏訪大社の観光客数 図 5 から,諏訪大社の 7 年に 1 回の御柱祭が行われた 1992 年,1998 年,2004 年には,1 つの山ができるくらい観光客が増えているが,御柱祭を除くと全体を 通じてピークは 1994 年くらいで,そこから徐々に減少しているように見える。 これらの傾向を考察する上で,2010 年の御柱祭が注目されるところである。 5 諏訪市の 3 大観光地の観光客数 図 6 から,諏訪市の観光客数は 2001 年までは諏訪湖のレジャーおよび温泉, 御柱祭などに依存傾向がみられるが,2002 年からは霧ケ峰観光旅行者の大きさ がそのまま影響されている。これは,霧ケ峰有料道路の無料化が大きく作用して いるように見える。 6 その他(教育・文化)の観光資源 図 7 から,美術館や博物館などの教育・文化施設への観光客は年々減ってきて 5 観 光 客 数 図 5 諏訪大社観光客の推移 観 光 客 数 図 6 諏訪市の 3 大観光地観光客の推移 注)ここでの諏訪温泉観光客は,諏訪湖でのレジャー客を含んでいること に注意を要する。 6 第 1 章 諏訪・岡谷地域の観光,交通および産業 いるが,高島城などは小説や大河ドラマの影響からか 2007 年に比較的多くの観 光客が訪れている。 観 光 客 数 図 7 諏訪市文化施設観光客の推移 7 観光産業からの視点 図 8 から,中信地域を対象にした製品出荷額を 1996 年から 2008 年の間につい て見てみると,長野県全体の趨勢から塩尻市の製品出荷額が大きく影響している ように見える。一方,松本,岡谷および諏訪の各市の製品出荷額は横ばいである。 8 交通と観光 (1)図 9 から,諏訪 IC の入利用台数は,2002 年の 6 月および 7 月が激増して 8 月の利用台数が激減している。1998 年から 2008 年にかけての 8 月の IC 入利 用台数の傾向は図 8 における長野県の製品出荷額とも似た傾向を示しているこ とは興味深い。また 2004 年の 6 月は御柱祭で急増しているように見える。そ れ以外は年度による月別の差は,お盆を含めた夏休み中である 8 月の IC 利用 7 製 品 出 荷 額 ︵ 百 万 円 ︶ 図 8 長野県中信地域における製品出荷額の推移 月 別 台 数 図 9 諏訪 IC 入利用台数の月別の年別推移 8 第 1 章 諏訪・岡谷地域の観光,交通および産業 者が多く,2 月の寒い時期は少ないと言える。 (2)図 10 から,諏訪 IC の入利用台数は最近年では 2000 年から 2004 年まで激減 して,そこから 2007 年まで増加して,2008 年に減少している。これらのこと から,2004 年に特殊な事情があったにせよ,ある期間(3∼4 年の周期で)の 増減を繰り返しながら徐々に減少傾向にあるのではないかと考えられる。 諏 訪 IC の 入 利 用 台 数 図 10 諏訪 IC 入利用台数の推移 9 年別の観光構造特性 ここでは,諏訪市の観光,諏訪市および岡谷市の産業との関わりから観光構造 特性を調べるために,諏訪市の観光客,観光資源別観光客および製造品出荷額の 各時系列データを用いて因子分析(2)を行った。その結果,累積寄与率から全体 の変動のうち 2 つの因子で約 70%が説明されている。 ⑵ この分析手法は,多くの変数をいくつかの因子(または主成分)に簡略化して,それ らの因子を解釈することによって,分析対象となる構造特性を明らかにするために用 いられている。主として心理学やマーケティングの分野で応用されているが,一般に 社会科学においては主成分分析手法が社会・経済指標の導出に用いられている。なお 9 第 1 因子:産業依存型観光 第 1 因子の寄与率は最も高く,この因子で全体の約 52%が説明されている。 表 1 から第 1 因子負荷量について見ると,北沢美術館本館および新館,諏訪市製 造品出荷額,原田泰治美術館などがプラスに極めて強く作用しており,諏訪大社 観光客,岡谷市製品出荷額,諏訪市宿泊客数,諏訪 IC 入利用台数が比較的強く 作用している。反面,霧ケ峰観光客数がマイナスに極めて強く作用しており,諏 訪市日帰り観光客および諏訪湖・諏訪温泉観光客数がマイナスに比較的作用して いる。したがって,第 1 因子は産業と観光が関わっていて,文化を重視した年次 を示していると言えよう。 表 2 から,因子得点について見ると,この因子のプラスに強く関わっている年 は,1998 年,1999 年および 2000 年である。翻ってマイナスに強く関わってい る年はないが,強いてあげれば 2006 年から 2008 年である。 第 2 因子:映像ブーム滞在型 第 2 因子は,各因子(表省略)の中で,寄与率が 2 番目に高く,この因子で全 体の約 21%が説明されている。表 1 から第 2 因子負荷量について見ると,高島 城およびサンリツ服部美術館が極めてプラスに強く作用しており,諏訪市宿泊客 数および諏訪湖・諏訪温泉観光客数が比較的強く作用している。反面,マイナス に強く作用している変数は見当たらない。したがって,第 2 因子は映像ブーム滞 在型の特性を説明している因子のように見える。 表 2 から,因子得点について見ると,この因子のプラスに強く関わっている年 は,2007 年である。この因子のマイナスに関わっている年を強いていうならば, 2004 年および 2006 年である。 総合的考察 (1)第 1 因子が強い時期は,製造業も活発で,ビジネスそのものが観光に繋がっ SPSS などの統計ソフトでは因子分析手法と主成分分析手法においてほとんど区別され ていない。最近この分析手法を長野県に応用したものに拙論(2008,第 1 章)がある。 10 第 1 章 諏訪・岡谷地域の観光,交通および産業 ていたのではないかと考察される。また時も同じくして美術館なども建てら れ,諏訪・岡谷地域もそれなりに潤った時期であったと考えられる。 (2)第 2 因子が強い時期は,歴史的映像ブームがあり,それによって短期的でも 宿泊客が増えたと考えられる。最近,小説やシネマの舞台地域を利用して 「ま ちづくり」が行われているが,周辺地域との連携によってドラマ化できるよ うな,またはされるような観光資源の集積を生み出すための手段を考える必 要があろう。 10 コンパクトシティ(3)の構想に向けて ここでは,道州制を見据え諏訪市と岡谷市が合併して,コンパクトな都市を 目指しながら観光の活性化を図ることを考えよう。まず図 11(筆者作成)から, 諏訪湖を楕円形として考えると,ホテルおよび旅館の集積地が中心 A に対して 対象となっていることから,交通の均等性から A に観光センターまたはそれに 関連するショッピングセンターを設けることができる。また,B および C は楕 円の離心を示しており,住民のアクセスから岡谷市は役所を B に,諏訪市は役 所を C に立地して,共有可能な公共サービスはそれぞれ分担して立地させるこ とによって,公共施設の負担が少なくなるばかりではなく,各住民の交通費が均 等になる(4)。さらに,諏訪湖の周囲(楕円の円周)を LRT(Light Rail Transit; 低床式路面電車)で結ぶことによって,それ自体が観光資源(5)となり,交通渋 滞も避けられ,車の CO2 を減らすことによって環境にもよく,スムーズに美術 ⑶ ここでのコンパクトシティは,生活環境に関わるエネルギーを節約して,居住者の交 通費を均等にするような都市を指す。なおコンパクトシティについては,Dantzig and. Saaty(1973),海道清信(2001,2007) ,山本恭逸(2006),角本伸晃(2007,第 3 章) 等で論じられている。 ⑷ 楕円の公式から,当該居住地から B までの距離+当該居住地から C までの距離=一 定であることが示される。この考え方をニュータウンに応用したものに拙著(2007b, 2009)がある。なお,楕円の性質については参考文献に掲げられている幾何学の文献 を参照せよ。 ⑸ この代表例が,富山市の LRT である。 11 表 1 因子負荷量表 変数 第 1 因子 第 2 因子 諏訪市日帰り客数 諏訪市宿泊客数 諏訪 IC 入利用台数 諏訪湖・諏訪温泉観光客数 霧ケ峰観光客数 諏訪大社観光客数 岡谷市製造品出荷額 諏訪市製造品出荷額 原田泰治美術館 北澤美術館 本館 北澤美術館 新館 サンリツ服部美術館 高島城 −.797 .647 .593 −.707 −.928 .698 .622 .824 .818 .914 .843 .410 −.140 .225 .590 .352 .584 .042 .078 −.171 .170 −.063 −.027 −.211 .842 .978 寄与率(%) 累積寄与率(%) 51.708 51.708 20.733 72.041 注)ゴシック体の数値は,絶対値 0.5 以上のものを指す。また, 各美術館および城については,入場者数を示している。 表 2 因子得点表 年 第 1 因子 第 2 因子 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 1.653 1.328 1.269 0.608 −0.466 −0.680 −0.480 −0.738 −0.815 −0.829 −0.850 0.423 −0.035 0.070 −0.474 −0.187 −0.349 −0.777 −0.452 −0.874 2.800 −0.145 注)ゴシック体の数値は, 1 以上のものを指す。 12 第 1 章 諏訪・岡谷地域の観光,交通および産業 図 11 コンパクトシティの構想図 館巡りが可能になる。駅名はもちろん美術館の名前である。 ちなみに,A,B,C 間に橋を架けても構わないが,湖上に立地する目的地へ 船で行くことでロマンスがある。郷愁も分かるがかつて琵琶湖の湖上に飛行場を 立地する話もあった。現実に目をむけると,コスト‐ベネフィット分析や住民調 査などを通じて将来計画を練る必要があるのは言うまでもない。 Ⅲ おわりに 観光データを通じて,多種多様な観光資源を有している地域であっても滞在観 光が活性化されず,全体的には観光客が減少しているかのようである。ここでは 産業が活発な時は日本全体も景気がよく,企業間交流も活発でビジネスが観光に 結びついた時期もあったこと,また小説やシネマに登場する高島城,御柱祭など によって短期的には観光客が急増していることなどが分かった。ちなみに今日の ように不景気になると,どこの都市でも見られるように映画のロケ地,大祭,花 火大会,ブランド物ショッピングセンターなどによって観光客を誘致すことで活 13 性化を図ろうとする。これらの策は短期的な地域活性化策であり,どの都市も同 じことを繰り返していくと,観光需要が分散されて長期的にはリピータが減少す る。国内ばかりでなく国外からの観光客を増やすために国際観光都市を目指すな らば,コンパクトシティを目指すことと同時に世界的にアピールできるような都 市を計画する必要があるのではないか。東洋のスイスと言われたころの都市を思 い出してほしい。 参考文献 Dantzig, G. B. and T. L. Saaty (1973) Compact City, W. H. Freeman and Company(監訳―森口繁 一『コンパクトシティ』日科技連出版社,1974) Howard, E. (1902) Garden Cities of Tomorrow, Orion Press, 1902(邦訳―長 素連『明日の田園 都市』鹿島出版会,1968) 海道清信『コンパクトシティ』学芸出版社,2001 海道清信『コンパクトシティの計画とデザイン』学芸出版社,2007 角本伸晃「第 3 章 富山市のコンパクトシティへの取り組み―人口減少下の都市政策に向 けて―」 (神頭広好・角本伸晃・麻生憲一・長橋 透・藤井孝宗『北陸地域のまちづく り研究―富山市を対象にして―』愛知大学総合科学研究所叢書 30,2007 所収) 神頭広好「第 7 章 平面幾何学からみた都市の立地システムと交通」(神頭広好・角本伸晃・ 麻生憲一・長橋 透・藤井孝宗『北陸地域のまちづくり研究―富山市を対象にして―』 愛知大学総合科学研究所叢書 30,2007a 所収) 神頭広好『都市,交通およびニュータウンの立地』愛知大学経営総合科学研究所叢書 31, 2007b 神頭広好「第 1 章 長野県における都市の居住特性」(神頭広好・成沢広幸・藤井孝宗・廣 田政一・麻生憲一・井出 明『中部地域のまちづくり―主に長野県東信地域を対象に して―』愛知大学経営総合科学研究所叢書 32,2008 所収) 神頭広好『都市の空間経済立地論―立地モデルの理論と応用―』古今書院,2009 小平邦彦『幾何への誘い』岩波書店,2000 難波 誠『平面図形の幾何学』現代数学社,2008 野崎昭弘・何森 仁・伊藤潤一・小澤健一『図形・空間の意味がわかる』ベレ出版,2003 矢野健太郎『幾何の有名な定理』共立出版,1981 山本恭逸編『コンパクトシティ―青森市の挑戦―』ぎょうせい,2006 15 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 ―観光地利用者と観光消費弾性値― Ⅰ はじめに 今年度,愛知大学経営総合科学研究所の共同研究の視察先として,長野県の諏 訪市,岡谷市を選定して,各地域の観光実態についてヒアリング調査を行った。 本稿では,長野県の観光動向,観光地振興策,ならびに諏訪市の観光動向につい て,観光統計データに基づき概要を整理・分析した。 Ⅱ 長野県の観光 1 概要 長野県は,周囲を日本アルプスの 3,000 メートル級の山々に囲まれ,自然的観 光資源が豊富であり,中部地方の観光の中心地である。高峻な山脈で隣接県に接 し,それらの山脈の多くは国立公園や国定公園になっている。国立公園は日本の 山岳観光を代表する中部山岳国立公園,南アルプス,上信越高原,秩父多摩甲斐 などがあり,国定公園では八ヶ岳中信高原,妙義荒船佐久,天竜奥三河が隣接県 にまたがって分布する。また,中央アルプスや御嶽山などは県立自然公園に含ま れている。多くの高原や湖沼,渓流や温泉が点在し,四季折々の変化は,観光客 を魅了し,長野県の最大の観光資源となっている。 長野県の中央部には日本列島を分断するフォッサ・マグナが走り,日本におけ る東西文化圏の接点に当たる。山河が作る複雑な地形は,地域を細分化し,多彩 で特色のある地域文化を育んできた。この複雑な地形を反映し,古くからの祭り や民俗芸能が,伝統的な形で,各地に数多く伝承されてきた。善光寺,諏訪神社 などの寺社や松本城などの歴史的建造物,木曽十一宿の妻籠,馬籠の旧宿場町な 16 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 ど伝統的な町並みが各地で大切に保存されている。山地や高原が多く,首都圏に 隣接して交通の便もよく,夏は軽井沢に代表される避暑,冬や志賀高原に代表さ れるスキーに多くの県外客を集めている。 2 観光動向 昭和 40 年からの長野県内の観光地利用者数の推移をみると(図 1 参照) ,昭 和 48 年の善光寺御開帳までの 9 年間で急激に増加し,この間の平均伸び率は 10.7%で高い伸び率を示した。この傾向は宿泊客数についても同様で(図 2 参 照) ,昭和 48 年までの平均伸び率は 12.8%に上っている。その後,観光地利用者 数,宿泊客数とも漸増を繰り返し,平成 3 年にピークを迎え,延観光地利用者数 1 億 7 千万人,延宿泊客数 4777 万人を記録する。しかし,それ以降,善光寺御 開帳や諏訪御柱祭といった集客力の高いイベントが開催された年を除けば,基調 として減少傾向をたどっている。 観光消費額の推移についてみると(図 2 参照) ,昭和 40 年の観光地利用者の 消費総額は 286.5 億円であったが,その後急激に増加し,平成 3 年には 4,293 億 円,平成 10 年の長野オリンピック開催,諏訪大社御柱祭の年には,過去最高の 4,565 億円を記録した。しかし,これは観光地利用者数の傾向と同様に,その後, 大きな落ち込みを示した。この結果,観光関連事業者の業況は悪化し,スキー場 運営会社等の経営破綻が相次ぎ,観光の不振が長野県経済にマイナスの影響を及 ぼしている。このような観光地利用者数,観光消費額の減少傾向の原因として, 冬季の観光地利用者数(特にスキー場利用者数)の落ち込みが,その大きな要因 と考えられている。図 3 は長野県内のスキー場利用者数の推移を示した。推移の 傾向としては,観光地利用者数や宿泊客数と同様であるが,平成 4 年のピーク時 (2,119 万人)以降,急激な落ち込みを示している。年平均でみると 6%の減少率 で,これが観光地利用者数や観光消費額の落ち込みに大きく影響している。図 4 は延宿泊客数と延県内スキー場利用者数の相関散布図をとったものである。両者 の間には非常に強い相関関係(相関係数:0.88)がみられる。スキー場利用者数 がこのまま減少を続けるならば,宿泊客もかなりの減少が予想され,長野県内の 宿泊業者に大きなダメージを与えることになるであろう。 17 図 1 長野県の観光地利用者数と観光消費額の推移 出所:長野県観光企画課資料より作成 図 2 長野県内の延宿泊客数と観光消費額の推移 出所:長野県観光企画課資料より作成 平成 19 年は,NHK 大河ドラマ「風林火山」の影響で諏訪・長野地域への観光 客が増え,長野県内の観光地利用者数も対前年比 3.6%増の延べ 9,073 万人に上っ たが,平成 20 年は,観光地利用者数は 8,676 万人(対前年比 95.6%),観光消費 額は 3,217 億年(対前年比 97.2%)に減少した。前年の「風林火山」効果の反動 のほか,ガソリン価格の高騰や国内景気の後退の影響もあり,観光地利用者数, 18 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 図 3 長野県内のスキー場利用者数の推移 出所:長野県観光企画課資料より作成 図 4 宿泊客数とスキー場利用者数の相関散布図 観光消費額とも減少したと考えられる。 一人当たり観光消費額の推移をみると(表 1 参照) ,昭和 50 年代の 2,000 円台 から徐々に増加し,平成に入ると 4,000 円台になり,平成 10 年の長野オリンピッ ク開催年には,過去最高の 4,553 円を記録した。しかし,その後,景気の低迷な どにより消費額は 3,000 円台に減少し,平成 20 年は利用者平均 3,709 円(対前 年 60 円増) ,日帰り客 2,648 円(対前年 38 円増) ,延宿泊客 5,868 円(対前年 30 19 表 1 長野県の観光客一人当たりの消費額(円) 利用者平均 日帰り客 延宿泊客 消費額 対前年増減 消費額 対前年増減 消費額 対前年増減 利用者平均 日帰り客 延宿泊客 消費額 対前年増減 消費額 対前年増減 消費額 対前年増減 50 年 2,082 166 1,348 132 2,879 238 4 年 4,109 4,109 2,725 2,725 5,877 5,877 51 年 2,204 121 1,399 51 3,104 225 5 年 4,142 34 2,840 115 5,889 13 52 年 2,436 233 1,605 206 3,356 252 6 年 4,189 46 2,872 32 5,926 37 53 年 2,600 163 1,607 2 3,666 310 7 年 4,185 −4 2,865 −7 6,029 103 54 年 2,717 118 1,791 184 3,798 133 8 年 4,187 2 2,852 − 13 6,011 − 19 55 年 2,885 168 1,826 35 4,127 329 9 年 4,055 − 132 2,852 0 5,959 − 52 56 年 3,073 188 1,928 102 4,314 187 10 年 4,553 498 2,777 − 75 5,929 − 30 57 年 3,159 86 1,974 46 4,471 156 11 年 3,942 − 611 2,771 −6 5,876 − 53 58 年 3,251 92 2,023 49 4,589 118 12 年 3,883 − 59 2,763 −8 5,839 − 36 59 年 3,389 138 2,117 94 4,772 184 13 年 3,912 29 2,811 48 5,869 30 60 年 3,434 44 2,171 54 4,875 103 14 年 3,822 − 91 2,737 − 74 5,870 1 61 年 3,574 140 2,231 60 5,155 280 15 年 3,778 − 44 2,710 − 27 5,913 42 − 53 62 年 3,670 97 2,321 90 5,254 99 16 年 3,694 − 84 2,624 − 86 5,860 63 年 3,739 69 2,378 57 5,350 97 17 年 3,730 36 2,640 16 5,885 25 平成元年 3,928 189 2,484 106 5,611 260 18 年 3,702 − 29 2,662 22 5,814 − 71 2 年 3,998 70 2,607 123 5,624 13 19 年 3,649 − 53 2,610 − 52 5,838 24 3 年 4,090 92 2,768 161 5,748 125 20 年 3,709 60 2,648 38 5,868 30 出所:長野県観光企画課「平成 20 年観光地利用者統計調査結果」 円増)となっている。 3 長野県の観光地振興策 長野県は,上記でみたように,延観光地利用者数や延宿泊客数が平成に入り, 基調として減少傾向をたどってきた。長野県では,これを打開すべく,平成 13 年度を初年度とし,17 年度を目標達成時期として, 『長野県観光ビジョン―長野 県観光振興基本計画―』を策定した。その展開方策として,Ⓐ競争力のあるホス ピタリティ産業の育成,Ⓑ情報受発信の充実,Ⓒ国際観光の推進,Ⓓ広域観光の 推進,Ⓔ豊かな環境との共生,Ⓕ受け入れ体制の基盤整備,Ⓖうるおいのある地 域づくり,を掲げ取り組んできた。また,平成 17 年 8 月には,このビジョンの 理念を踏襲しつつ,「市町村等の目標値の集約を県の目標値として定め,市町村 や観光地等の主体的な取り組みを,県が部局横断的に誘客活動等を支援するため 20 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 の行動指針」として『信州わくわく・ゆったり観光アクションプラン』 (アクショ ンプラン)を策定。「市町村や観光地等との連携強化」と「観光ブランド日本一 “信州”の構築」を主軸として観光振興への取り組み強化を図ってきた。それに 続き平成 20 年には『「観光立県長野」再興計画』を策定した。同計画では, ①ニー ズ変化への対応,②顧客満足度の向上,③地域特性を生かした観光魅力づくり, ④スキー場や温泉地の活性化,⑤周遊の広域化,日帰り観光の増加への対応,⑥ 国際観光市場の開拓,⑦効果的な誘客宣伝を「長野県観光の課題」として挙げる とともに,長野県観光の将来像の実現に向けての基本姿勢として, (1)観光旅行 者の視点に立って,顧客満足度を向上させる, (2)住んでいる地域への愛着と誇 りを大切にする, (3)豊かな自然,元気で長生きなどの長野県の地域特性を磨き, 継承していく,(4)ユニバーサルデザイン,バリアフリー化を促進する,を掲げ ている。また,達成目標の設定として,2012 年までにⒶ県内の観光サービスに 対する満足度を 50%以上,Ⓑ観光消費額を 4,000 億円以上,Ⓒ観光地利用者数を 1 億人以上,Ⓓ外国人宿泊者数を 37 万人以上としている。 こうした状況下,最近の長野県内の観光地振興策としては,広域観光ルートの 開発,滞在型観光プログラムの開発などが提案されている。既存の観光資源(自 然環境,歴史的史跡,文化施設など)を見直し,新たな魅力を再発見し,新しい 観光資源として活用するとともに,さまざまな観光体験を有機的に融合させ魅力 ある滞在型観光地を目指している。これらの方策は,従来のスキー観光依存体質 からの脱却に道筋を付けるものである。 近年,観光振興の成功事例として小布施町が有名であるが,そこでは,1990 年に制定した「うるおいのある美しいまちづくり条例」を核として,店舗の外観 を和風デザインに統一し,趣きのある街並みを醸成するとともに, 「小布施ッショ ン」と呼ばれるセミナーも含めてイベントの開催に工夫を凝らし,街のハードと ソフトをうまくコーディネートすることによって,誘客力を着実に高めている。 21 Ⅲ 諏訪市の観光 1 概要 諏訪市は,長野県のほぼ中央に位置し,面積 109.91㎞2,人口 52,313 人(平成 20 年)の湖畔都市である。上諏訪ともよばれ,湖岸の東から南にかけて広がる 温泉と諏訪大社のある城下町で,戦国時代に武田信玄が城下町としての基礎を築 いたといわれている。江戸時代には甲州街道の宿場町でもあり,城下町当時から 湖岸に温泉が開発され,交通便利な温泉地としても有名で,数多くの入浴客を集 めている。 明治期におこった製糸業は盆地一帯を日本一の製糸工業地帯に変貌させたが, 第 2 次世界大戦後は従来からの醸造業のほかカメラや時計,OA 機器などの部品 を製造する精密機械工業に転換し,「東洋のスイス」と称されている。寒冷な気 候を利用した寒天,凍豆腐などの生産ほか,味噌や清酒の醸造などの伝統産業も 現在につたわる。諏訪湖,上諏訪温泉,諏訪大社の上社,霧ヶ峰高原などを抱え る観光都市であり,上諏訪温泉・諏訪湖への延利用者数は 420 万人(平成 20 年) を数え,長野県内では軽井沢,善光寺に次ぐ,主要な観光地である。 2 諏訪市の観光動向 諏訪市への観光客数は,昭和 50 年以降 57 年の落ち込みを除けば毎年漸増し, 平成 4 年の諏訪大社御柱祭に 738 万人でピークを迎える。その後,平成 13 年ま で 10 年間は 600 万人台で推移し,平成 14 年には霧ヶ峰有料道路の無料化の影響 で 747 万人に急増し,平成 19 年には NHK 大河ドラマ「風林火山」の効果で 805 万人を記録し,過去最高となった(図 5 参照)。諏訪市の日帰客と宿泊客の入り 込み数の推移をみると(表 2 参照),昭和 50 年には 15%台あった宿泊客比率は, 平成 14 年以降,一桁台にまで落ち込んでいる。これは霧ヶ峰有料道路の無料化 で,高速道路を利用した日帰り観光客が増加した影響と考えられる。観光消費額 についてみると,観光客数の増加と共に着実に増加し,宿泊客比率が落ち込む平 成 14 年には対前年比 17.7%増の 229 億円となり,プラスの効果をもたらしている。 22 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 図 5 諏訪市観光客数と観光消費額の推移 出所:諏訪市観光課「平成 20 年観光動態要覧」より作成 表 2 諏訪市の日帰り・宿泊別の観光客の推移 日帰客 宿泊客 総計 (人) (人) (人) 観光消費額 宿泊客比率 (万円) (%) 日帰客 (人) 宿泊客 (人) 総計 (人) 観光消費額 宿泊客比率 (万円) (%) 昭和 50 年 3,273,114 581,009 3,854,123 593,318 15.07 4 年 7,102,360 731,771 7,834,131 2,280,385 9.34 51 年 3,313,754 594,299 3,908,053 659,661 15.21 5 年 5,519,634 708,830 6,228,464 1,924,657 11.38 52 年 3,550,368 608,004 4,158,372 758,604 14.62 6 年 6,266,173 688,767 6,954,940 2,058,328 9.90 53 年 3,710,016 600,438 4,310,454 818,270 13.93 7 年 6,056,849 711,926 6,468,805 2,038,932 11.01 54 年 3,918,895 611,229 4,530,124 887,128 13.49 8 年 5,815,695 761,546 6,577,241 2,043,913 11.58 55 年 3,948,100 612,667 4,560,767 957,158 13.43 9 年 5,625,705 766,764 6,392,469 2,031,218 11.99 56 年 4,043,080 631,466 4,674,546 1,044,653 13.51 10 年 6,053,364 714,945 6,768,309 2,180,363 10.56 57 年 3,850,092 625,112 4,475,204 1,075,230 13.97 11 年 5,256,335 685,723 5,942,058 1,968,306 11.54 58 年 3,899,244 628,598 4,527,842 1,118,889 13.88 12 年 5,315,300 700,904 6,016,204 1,998,596 11.65 59 年 4,372,274 637,431 4,979,270 1,228,829 12.80 13 年 5,356,995 645,910 6,002,905 1,946,654 10.76 60 年 4,574,867 623,205 5,198,072 1,297,232 11.99 14 年 6,808,647 658,407 7,467,054 2,292,049 8.82 61 年 5,553,366 647,905 6,201,271 1,679,108 10.45 15 年 6,947,247 664,471 7,611,718 2,329,359 8.73 62 年 5,347,664 677,254 6,024,918 1,755,157 11.24 16 年 7,243,442 663,849 7,907,291 2,395,460 8.40 63 年 5,639,609 748,078 6,387,687 1,915,012 11.71 17 年 6,832,824 654,094 7,486,918 2,292,138 8.74 平成元年 5,686,021 726,693 6,412,714 1,977,093 11.33 18 年 6,563,814 622,045 7,185,859 2,196,058 8.66 2 年 5,972,237 716,386 6,688,623 2,029,714 10.71 19 年 7,352,459 698,747 8,051,206 2,462,795 8.68 3 年 6,360,574 718,062 7,078,636 2,109,243 10.14 20 年 6,235,671 629,254 6,864,925 2,131,793 9.17 出所:諏訪市観光課「平成 20 年観光動態要覧」 23 㧔ੱ㧕 図 6 上諏訪温泉・諏訪湖の観光客数・観光消費額の推移 出所:諏訪市観光課「平成 20 年観光動態要覧」より作成 表 3 上諏訪温泉・諏訪湖の日帰り・宿泊別の観光客の推移 日帰客 (人) 宿泊客 (人) 総計 (人) 観光消費額 宿泊客比率 (万円) (%) 日帰客 (人) 宿泊客 (人) 総計 (人) 観光消費額 宿泊客比率 (万円) (%) 昭和 50 年 1,631,561 440,757 2,072,318 353,881 21.27 4 年 3,111,094 622,065 3,733,159 1,336,359 16.66 51 年 1,650,760 471,211 2,121,971 402,320 22.21 5 年 2,911,092 623,668 3,534,760 1,295,909 17.64 52 年 1,706,196 479,565 2,185,761 450,745 21.94 6 年 3,074,302 587,494 3,661,796 1,290,807 16.04 53 年 1,770,686 475,637 2,246,323 500,317 21.17 7 年 3,053,959 610,448 3,664,407 1,331,606 16.66 54 年 1,718,710 486,822 2,205,532 520,604 22.07 8 年 2,897,390 668,165 3,565,555 1,341,654 18.74 55 年 1,656,908 489,456 2,146,364 546,236 22.80 9 年 2,837,933 677,576 3,515,509 1,360,204 19.27 56 年 1,730,669 508,879 2,239,548 601,108 22.72 10 年 2,818,204 634,597 3,452,801 1,373,402 18.38 57 年 1,684,881 514,122 2,199,003 637,968 23.38 11 年 2,816,639 610,528 3,427,167 1,345,008 17.81 58 年 1,803,568 521,474 2,325,042 683,430 22.43 12 年 2,926,188 622,921 3,549,109 1,384,095 17.55 59 年 2,064,627 520,992 2,585,619 745,485 20.15 13 年 3,056,802 578,695 3,635,497 1,361,962 15.92 60 年 2,271,073 514,057 2,785,130 514,057 18.46 14 年 3,114,735 584,848 3,699,583 1,382,162 15.81 61 年 2,755,824 549,805 3,305,629 1,063,461 16.63 15 年 3,265,899 587,074 3,852,973 1,418,770 15.24 62 年 2,524,624 568,995 3,093,619 1,094,404 18.39 16 年 3,217,503 587,594 3,805,097 1,408,485 15.44 63 年 2,683,206 642,205 3,325,411 1,219,650 19.31 17 年 3,273,884 579,442 3,853,326 1,411,676 15.04 平成元年 2,710,887 621,180 3,332,067 1,250,947 18.64 18 年 3,099,119 556,748 3,655,867 1,345,914 15.23 2 年 2,841,487 608,477 3,449,964 1,264,620 17.64 19 年 3,642,571 630,261 4,272,832 1,553,834 14.75 3 年 3,059,551 607,103 3,666,654 1,309,130 16.56 20 年 3,072,796 572,504 3,645,300 1,358,346 15.71 出所:諏訪市観光課「平成 20 年観光動態要覧」 24 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 図 7 上諏訪温泉宿泊客数の推移(人) 出所:諏訪市観光課「平成 20 年観光動態要覧」より作成 3 観光地別の観光客入り込み動向 (1) 上諏訪温泉・諏訪湖 昭和 50 年の延観光客総数は 207 万人,その内の 44 万人が宿泊客(宿泊比率 21.3%)で,観光消費額は 35 億 3,881 万円,観光客一人当たりに換算すると 1,708 円であった(表 3 参照) 。昭和 60 年に入ると観光客数は飛躍的に増加し,昭和 61 年には諏訪大社御柱祭や蓼科有料道路の無料化などにより,観光客数は対前 年比 18.7%の増加,観光消費額は 100 億円(対前年比 107%増)を突破した。平 成に入っても観光客数は 300 万人台を維持し,観光消費額も 130 億円台で推移し ている。平成 19 年はドラマ効果で,観光客数は 427 万人,観光消費額は 155 億 円と過去最高を記録している。しかし,宿泊客数をみると,平成 9 年の 68 万人 をピークに減少傾向にある。これは上諏訪温泉の宿泊客についても同様な傾向に あり,40 万人台から 30 万人台に落ち込みが続いている(図 7 参照)。 (2) 霧ヶ峰 霧ヶ峰への主要観光地である霧ヶ峰高原,霧ヶ峰スキー場への入り込み客は, その大半が日帰り観光客である(表 4 参照)。昭和 50 年以降,観光客数は増減を 繰り返しながらも増加基調にあり,昭和 50 年の 175 万人から平成 3 年には 254 万人にまで増加したが,その後,観光客数は急激に落ち込み,平成 13 年には 25 㧔ੱ㧕 図 8 霧ヶ峰の観光客数・観光消費額の推移 出所:諏訪市観光課「平成 20 年観光動態要覧」より作成 表 4 霧ヶ峰の日帰り・宿泊別の観光客の推移 日帰客 (人) 宿泊客 (人) 総計 (人) 観光消費額 宿泊客比率 (万円) (%) 日帰客 (人) 宿泊客 (人) 総計 (人) 観光消費額 宿泊客比率 (万円) (%) 昭和 50 年 1,611,279 140,098 1,751,377 235,957 8.00 4 年 2,263,797 109,706 2,373,503 579,529 4.62 51 年 1,641,664 123,088 1,764,752 254,705 6.97 5 年 1,574,891 85,162 1,660,053 410,648 5.13 52 年 1,843,172 128,439 1,971,611 307,859 6.51 6 年 2,090,239 101,273 2,191,512 535,079 4.62 53 年 1,938,330 124,801 2,063,131 317,953 6.05 7 年 1,964,903 101,478 2,066,381 508,304 4.91 54 年 1,895,507 124,407 2,019,914 322,529 6.16 8 年 1,874,762 93,381 1,968,143 482,073 4.74 55 年 1,880,344 123,211 2,003,555 347,776 6.15 9 年 1,821,715 89,188 1,910,903 467,176 4.67 56 年 2,051,364 122,587 2,173,951 401,275 5.64 10 年 1,644,219 80,348 1,724,567 449,000 4.66 57 年 1,845,587 110,990 1,956,577 381,584 5.67 11 年 1,634,575 75,195 1,709,770 442,144 4.40 58 年 1,724,634 107,124 1,831,758 368,894 5.85 12 年 1,652,966 77,983 1,730,949 448,869 4.51 59 年 1,892,825 116,439 2,009,264 412,924 5.80 13 年 1,630,227 67,215 1,697,442 433,951 3.96 60 年 1,883,702 109,148 1,992,850 418,629 5.48 14 年 3,101,987 73,559 3,175,546 776,704 2.32 61 年 2,213,931 98,100 2,312,031 504,703 4.24 15 年 3,118,579 77,397 3,195,976 783,966 2.42 62 年 2,303,663 108,259 2,411,922 556,878 4.49 16 年 3,089,698 76,255 3,165,953 776,323 2.41 63 年 2,257,490 105,873 2,363,363 553,482 4.48 17 年 3,090,800 74,652 3,165,452 775,129 2.36 平成元年 2,281,900 105,513 2,387,413 579,873 4.42 18 年 2,921,694 65,297 2,986,991 727,966 2.19 2 年 2,364,565 107,909 2,472,474 603,428 4.36 19 年 3,115,965 68,486 3,184,451 775,329 2.15 3 年 2,431,975 110,959 2,542,934 616,744 4.36 20 年 2,653,121 56,750 2,709,871 658,753 2.09 出所:諏訪市観光課「平成 20 年観光動態要覧」 26 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 㧔ੱ㧕 図 9 諏訪大社の観光客数・観光消費額の推移 出所:諏訪市観光課「平成 20 年観光動態要覧」より作成 170 万人弱にまで減少した。しかし,平成 14 年には,霧ヶ峰有料道路(ビーナ スライン)の無料化により,観光客数は 318 万人と大幅に増加し,その内,日帰 り観光客は 150 万人の増加であった。高速道路の無料化は,宿泊客比率を減少さ せているが,その反面,日帰り観光客の増加により観光消費額は 40 億円台から 70 億円台に増加している。平成 19 年は NHK 大河ドラマ「風林火山」や“信州キャ ンペーン” ,JTB の“日本の旬”などの各種キャンペーンで観光客数,観光消費 額に好影響を与えたが,平成 20 年は,その反動に加え,ガソリン価格の高騰や 景気の底冷えにより,延観光客数は 271 万人にまで減少し,観光消費額も 70 億 円を下回った。 (3) 諏訪大社 諏訪大社への観光客は,全て日帰り観光客である。諏訪大社の 6 年ごとに行わ れる御柱祭の年は観光客数,観光消費額とも大幅に増加する。平成 4 年には,延 観光客数 173 万人,観光消費額 36 億円と大幅に増加したが,平成 10 年には,延 観光客数 159 万人,観光消費額 36 億円,平成 16 年には,延観光客数 94 万人, 観光消費額 21 億円と 6 年ごとの増加傾向にも陰りがみられる(図 9 参照)。 27 Ⅳ 観光消費弾性値の推計 1 推計式 観光地利用者(観光客)数の変化が観光消費額に対してどの程度の影響を与え るかを計測するために,以下の対数線形式を用いる。 lnY=α+βlnX (Y:観光消費額,X:観光地利用者数,α:係数,β:弾性値) この式を単回帰分析して,推計されたβが弾性値となり,β値が大きいほど観光 客数の変化が観光消費額に大きな影響を与えることになる。 2 推計結果 昭和 50 年から平成 20 年まで期間の長野県(観光地利用者数・観光消費額,日 帰客数・日帰客消費額,宿泊客数・宿泊客消費額),諏訪市(観光客数・観光消 費額),上諏訪温泉・諏訪湖(観光客数・観光消費額),霧ヶ峰(観光客数・観光 消費額),諏訪大社(観光客数・観光消費額)の観光消費弾性値を計測した(表 5 参照)。弾性値については,全て統計的に有意である。各弾性値をみると,全 て 1 より大きく弾力的である。長野県観光地利用者数の観光消費弾性値が最も大 きく(2.55),長野県日帰客数(2.15),上諏訪温泉・諏訪湖(1.92)と続く。逆に, 長野県宿泊者数(1.08),諏訪大社(1.12),霧ヶ峰(1.29)が比較的小さい。こ の結果から判断する限り,長野県の観光地利用者数,特に日帰観光客数の落ち込 みは観光消費額を大幅に減少させる。その効果は,宿泊客の 2 倍以上である。長 野県の観光消費額を拡大させようとする場合,宿泊客を増やすよりも日帰客を増 やすことのほうが効果は大きい。諏訪市についてみると,諏訪市内,上諏訪温泉・ 諏訪湖への観光客数の落ち込みは観光消費額に大きな影響を与える。特に,上諏 訪温泉の場合,宿泊者の比率が高いため,その落ち込みは観光消費額を大幅に減 らすことが考えられる。 28 第 2 章 長野県諏訪市の観光動向 表 5 観光地別の観光消費弾性値 α 長 野 県 β R2 利用者総数 −7.14 2.55 (−11.12) (−19.69) 0.92 日帰客 −5.06 2.15 (−13.39) (26.84) 0.95 1.08 (−4.16) 0.33 諏訪市 −6.24 1.84 (−11.11) (21.15) 0.94 上諏訪温泉・諏訪湖 −6.46 1.92 (−10.02) (19.31) 0.92 霧ヶ峰 −2.56 (−2.68) 1.29 (8.64) 0.69 諏訪大社 −1.38 1.12 (−7.48) (35.51) 0.98 宿泊客 0.33 (0.27) 注:α係数値,β弾性値,上段:推計値,下段:t 値 Ⅴ おわりに 長野県の観光動向を観光統計資料に見る限り,長野県内の宿泊客数の落ち込み は予想以上に大きい。その第一の要因はスキー場利用者数の大幅な落ち込みであ る。現在,長野県ではスキー観光依存体質から脱却して,滞在型観光による振興 策を進めている。飯田市を始め,長野県内の多くの自治体で農村滞在型の体験型 観光が実施されている。これらの事業が今後どのように展開するかは定かではな いが,研究対象として今後とも見守っていきたい。 最後になりますが,神頭広好教授には本論の掲載の機会をお与え頂き,ここに 記して厚く感謝致します。 29 参考・引用文献 諏訪市企画調整課(2008) 『諏訪市勢要覧』 諏訪市観光課(2009) 「平成 20 年観光動態要覧」 長野県(2001) 『長野県観光ビジョン―長野県観光振興基本計画―』 長野県(2008) 『「観光立県長野」再興計画[2008∼2012] 』 長野県観光企画課(2008) 「平成 20 年観光地利用者統計調査結果」 (社)日本観光協会『全国観光動向』各年度版 日本銀行松本支店(2006)資料「長野県の観光振興に向けて∼観光産業の停滞打開のため の視点∼」 参考ホームページ 諏訪市公式ホームページ http://www.city.suwa.lg.jp/www/normal_top.jsp 長野県観光企画課ウェブサイト http://www.pref.nagano.jp/kanko/kankoki/toukei/ 31 ᖱႎಣℂቇળ⎇ⓥႎ๔ IPSJ SIG Technical Report 第 3 章 ᖱႎᢎ⢒ߦ߅ߌࠆ↥ᬺⷰశߩᓎഀ ↥ᬺ ᖱႎ † ᄐભߺ╬ࠍ↪ߒߡޔ᭴ᚑຬߩⷫ⌬ࠍ࿑ࠆߚߦᣏⴕ߿วኋࠍ⹜ߺࠆ⎇ⓥቶߪᄙ ޔߒ߆ߒޕᐕޟᶏ᳓ᶎࠍ߿ߞߡޔ᳃ኋߢ㘶ߺޔᄛඨߦᵆ㈮ߒߡᨐߡࠆߣޠޕ ߁ࠃ߁ߥ༡ߺߦ⚳ࠊߞߡߒ߹߁ߎߣ߽߹߹ࠆᧄߢߎߘޕⓂߢߪⷰޔశ߇ᩮర ⊛ߦᜬߟޟ᳇ߠ߈⊛⾰ᧄࠆߔߣߓߪࠍޠ↪ࠍ⼂ߒߚߢޔㄭᐕߩⷰశቇߦ ߅ߡᵈ⋡ࠍ㓸ࠆ̌↥ᬺⷰశ̍ࠍ↪ߡޔᖱႎቇࠍቇ߱⧯⠪ߦࠕࠞ࠺ࡒ࠶ࠢߥ ޟ⊒ࠍޠਈ߃ࠆน⢻ᕈߦߟߡޔ㐳㊁⋵⺪⸰ᣇࠍߣߒߡᬌ⸛ߒߡߺߚޕ 㧔ᧄⓂߪޔᖱႎಣℂቇળ EIP-46 ߦߡ⊒ߒߚ⺰ᢥࠍォタߒߚ߽ߩߢࠆ㧕 The Role of Industrial Tourism in Education of Information Courses Akira Ide† ↥ᬺ There many laboratories which try to travel or camp together with members of laboratories during long vacations for deepening friendship among the members. However, there are many cases every year where they end up just doing things such as swimming, drinking at lodge and getting drunk after midnight, etc. In this paper, recognizing the essential effects of tourism such as “findings”, the possibility for giving academic “enlightenment” to young students in information course through “industrial tourism”, which is one of the hottest topics in tourism science, will be considered. 1 32 第 3 章 情報教育における産業観光の役割 1. ↥ᬺⷰశߩ⠨߃ᣇ 1.1. ᖱႎቇ߆ࠄ⠨߃ࠆⷰశߩᗧ ̌ⷰశߣߪ߆㧫̍ߣ߁ߪⷰޔశቇᓤߦߣߞߡߪߓߦ⊒ߖࠄࠇࠆߢࠅޔ ߒ߆߽᳗㆙ߦ╵߃߇ߟ߆ࠄߥ߽ߩߢࠆⷰޔߦ⊛⥸৻ޕశߣ߁⸒⪲ߢή᧦ઙߦ ᗧߐࠇߡࠆߩߪޔԘ㕖༡ᕈ ԙ㕖ᣣᏱᕈߩޔ㧞ߟߢࠆi ߩߎޕ㧞ὐߦߟߡ ߪⷰޔశቇ⠪ߩ㑆ߢ߽߶߷ࠦࡦࡦࠨࠬ߇ߣࠇߡࠆ߇ᦨߩߎޔዊ㒢ߩⷰశߩቯ⟵ߦ ┙⣉ߒߚߢߩߘߦࠄߐޔߦ߇ࠆߩ߆ߣ߁ὐߢߪ⎇ޔⓥ⠪ߦࠃߞߡቯ⟵߇ ࠇࠆ␠ޕળ⑼ቇߩⷰὐ߆ࠄߪ⚻ࡠࠢࡒޔᷣቇߩᔕ↪ߣߒߡߩㅢ⚻ᷣ⺰߿వ┵⚻༡ቇ ߣߒߡߩࡎ࠹࡞⚻༡ቇߥߤ߇ᵷ↢ಽ㊁ߣߒߡ⍮ߐࠇߡࠆޕ ߒ߆ߒⷰޔశ㧔㧩tourism㧕ߣ߁༡ὑ߇ᜬߟജߪޔනߥࠆ⚻ᷣᵴേߦߣߤ߹ࠆ߽ߩ ߢߪߥⷰޕశߣߪޔ㕖ᣣᏱߦりࠍ⟎ߊߎߣߢߦࠄ⥄ޔᣂߒ̌⌒̍ࠍਈ߃ࠆ༡ߺߢ ࠆߣ߁ᜰ៰߇ࠆޕᣣᏱ߆ࠄ⣕ߔࠆߎߣߢޔᣣᏱߦ߅ߡߪ᳇߇ߟ߆ߥ߆ߞߚߎ ߣߦޔೋߡ᳇߇ߟߊߣ߁ὐ߇ⷰశߦߪࠆߪࠇߘޕ᥉Ბዻߒߡࠆ␠ળ߇ᧄޔ ੱߦߪ᳇ߠ߆ߥߔ߫ࠄߒ㕙ࠍᜬߞߡߚࠅޔㅒߦ㉛ᖡߥ㕙ࠍᜬߞߡߚࠅߔ ࠆߎߣ߇ޔ ̌ⷰశߩ߹ߥߑߒ̍ߦࠃߞߡᗧ⼂ߩࡌ࡞߹ߢߒߡߊࠆߎߣࠍᗧߒߡ ࠆii ޕ ߎࠇߪⷰޔశ㧔㧩tourism㧕ߣ߁༡ߺ߇නߥࠆࠫࡖߢߪߥߊޔฦ tourist ߇⢛᥊ 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基幹産業としての製造業を中心とした産業振興を図り,安全で安心して暮らせる まちの実現を目指している。岡谷市のイメージは「湖」「山」「観光地」である。 「諏訪湖パスポート」に紹介されている観光としては「鶴峰公園つつじ祭」 (5 月), 「岡谷太鼓祭」 (8 月) , 「鳥居平やまびこ公園(ラベンダー公園など)である。又, 今回訪れたかっては日本の糸都として栄え「シルクのまち」と呼ばれる岡谷は産 48 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 業観光にも力をいれており近代産業遺産,製糸の歴史が色濃く残る芸術・文化の まちでもある。 「旧林家住宅」 「旧渡邊家住宅」「市立岡谷蚕糸博物館」 「岡谷絹工 房」はかっての製糸の岡谷を伝えており当時の状況が把握できる。 一方,諏訪市は諏訪湖や霧が峰高原のほか豊富な温泉といった自然資源や諏訪 大社をはじめとする歴史や伝統文化遺産に恵まれ,また蓄積された高度精密機械 に裏打ちされたハイテク産業を擁し地域の中核都市として発展している。諏訪市 では「豊かな人間性あふれるいきいきとした美しいまち」を将来像として掲げ個 性的で魅力ある環境文化都市を築くことを目指している(注 1)。 両方の都市は諏訪湖を挟んで類似点や相違点のある特有の観光があることから 比較検討し,更に諏訪地域の活性化の方策を提言する。これは長野県全体の観光 の底上げにもなろう。 Ⅰ 長野県の観光の現状 1 概観 平成 19 年 1 月に施行した「観光立国推進基本法」,平成 20 年 10 月 1 日に設置 された観光庁の設置(注 2)は 21 世紀の日本の観光の取り組みを示している。 長野県でも観光振興基本計画(2008―2012)を策定し将来に向けた再建計画を 立てている。長野県の観光は平成 5 年の善光寺御開帳と平成 10 年の長野オリン ピックのピークに観光旅行者数と観光消費額がともに減少傾向にある。特にス キー客をはじめとする冬季の観光旅行者の落ち込みが大きい。一方,外国人旅行 者については,日本政府の,ビジット・ジャパン・キャンペーン(2010 年まで に 1,000 万人の訪日外国人誘致)の展開などにより,東アジアを中心に急増して います。又,外国人宿泊者数も東アジアを中心に急増し平成 18 年は平成 11 年と 比べ約 4 倍の 18.4 万人に達している。 2010 年は御柱祭の年であることから観光客の増加が期待される。 廣田(2008)の試算によれば長野県の延利用者数と観光消費額の相関関係は相 関係数が 0.41 と両者には強い関係はない。その理由としては,①日帰り客が多 いこと②日帰り客の一人当たり消費額が少ないことをあげることが出来る。 49 観光旅行者数・消費額の動向 図 1 長野県観光の現状 このような長野県観光の現状を踏まえ,長野県は「観光振興計画(2008―2012) を策定した。基本的な達成目標は以下の 4 つである。 (4 つの目標) 目標の内容 2008 年 2012 年 1 県内の観光サービスに対する満足度 2 観光消費額 3,141 億円 4,000 億円 3 観光旅行者数 8,756 万人 1 億人 4 外国人宿泊者数 18.4 万人 37 万人 (出所)筆者作成 38.7% 50% 50 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 これを実現させるための行動目標は以下の 4 つである。 ①「もう 1 箇所(観光する)」②「もう 1 泊(宿泊する)」③「もう 1 コイン(500 円) を使ってもらう」④「もう 1 度(訪問してもらう) 」 これを実現させるためには,もう 1 回何かをしてもらう観光振興の戦略が必要 である。 Ⅱ 諏訪地域(岡谷市と諏訪市)の産業等の比較 表―1 は長野県 19 市の主要統計の比較である。 1 長野県における位置づけ 長野県に占める諏訪市の面積,人口,年間商品販売額はそれぞれ,0.8%, 2.4%。3.4%である。一方,岡谷市はそれぞれ,0.6%。2.4%,2.6%であった。 各指標は両市とも極めて低い数字ではあるが類似している。 2 諏訪市と岡谷市の比較 諏訪市は岡谷市と比べ人口はほぼ同じであるが,面積は約 1.3 倍,年間商品販 売額は約 1.4 倍と多くなっている。他方,工業(事業所数)は 65%,製造製品出 荷額でみると 60%にすぎない。諏訪市は商業での年間商品額に,岡谷市は製造 製品出荷額に比較優位をもつ。つまり商業の諏訪市,工業の岡谷市と大雑把に括 ることが出来る。 Ⅲ 諏訪地域の観光開発 1 諏訪地域の観光の特徴 (1) 諏訪地域の位置づけ 長野県に中央に位置する諏訪地方は周辺の交通アクセスに恵まれている。鉄道 では東京から中央本線の特急で約 2 時間,名古屋からも約 3 時間で行くことが出 来る。一方,高速道路を使用すると東京から中央自動車道で約 2 時間 30 分,名 51 表 1 長野県 19 市主要統計 人口集中 人口集中 商業(H19.6.1 飲食店除く) 面 積 世帯数 人 口 地区人口 地区面積 (H17.10.1) (H17.10.1) (H17.10.1) 年間商品販売額 (H17.10.1) (H17.10.1) 商店数 2 2 万円 km km 583,218,741 780,245 2,196,114 764,004 27,362 176.96 長 野 県 13,562.23 147,797,498 141,030 378,512 250,958 4,912 730.83 47.13 長 野 市 128,578,573 89,266 227,627 143,409 3,445 松 本 市 919.35 30.69 46,312,524 46,806 123,680 48,148 2,008 176.73 12.60 上 田 市 14,937,627 19,661 54,699 46,082 692 85.14 11.56 岡 谷 市 25,578,606 37,350 108,624 36,512 1,588 658.76 9.55 飯 田 市 諏 訪 市 109.06 20,796 53,240 17,742 4.29 821 20,206,904 須 坂 市 149.84 17,863 53,668 23,014 5.47 632 7,402,628 小 諸 市 98.66 16,251 45,499 12,263 3.71 493 10,094,507 伊 那 市 207.64 22,069 62,869 12,502 4.48 844 18,684,009 駒ヶ根市 165.92 12,035 34,417 8,019 2.21 477 6,557,801 中 野 市 112.06 14,591 46,788 12,915 3.13 643 8,287,897 大 町 市 464.84 10,439 29,798 7,535 2.55 385 4,299,494 飯 山 市 202.32 7,802 24,960 5,436 1.52 353 3,955,353 茅 野 市 266.40 21,529 57,099 12,507 3.94 569 9,561,997 塩 尻 市 290.13 24,860 68,346 34,086 7.95 742 16,409,748 佐 久 市 423.99 35,362 100,462 20,504 6.08 1,287 19,940,549 千 曲 市 119.84 21,251 64,022 21,037 6.50 693 12,650,834 東 御 市 112.30 10,212 31,271 5,780 1.69 307 5,743,475 安曇野市 331.82 32,743 96,266 8,672 2.36 933 16,901,350 工 業(H19.12.31) 事業所数 総農家数 小学校児童数 中学校生徒数 市 別 (従業者 4 人以上の事業所) (H18.10.1)(H17.2.1) (H20.5.1) (H20.5.1) 事業所数 製造品出荷額等 万円 6,358 長 野 県 703,320,316 119,608 126,857 127,126 64,920 637 長 野 市 49,030,928 20,883 13,166 21,741 10,274 404 松 本 市 62,834,166 13,777 5,666 12,797 6,004 496 上 田 市 58,068,838 8,472 4,360 9,492 5,039 341 岡 谷 市 20,823,783 2,999 553 3,093 1,495 370 飯 田 市 31,390,767 6,914 4,890 6,359 3,240 諏 訪 市 222 12,672,270 3,770 1,214 3,043 1,426 須 坂 市 195 12,936,756 2,721 2,346 3,192 1,539 小 諸 市 119 12,873,827 2,308 2,608 2,538 1,307 伊 那 市 190 21,514,953 3,587 4,216 4,278 2,140 駒ヶ根市 123 17,143,928 1,991 1,989 2,115 1,041 中 野 市 116 9,391,765 2,230 2,889 2,869 1,475 大 町 市 61 10,027,774 1,877 1,959 1,771 951 飯 山 市 28 3,790,046 1,313 2,907 1,398 761 茅 野 市 244 24,714,461 2,812 2,738 3,383 1,606 塩 尻 市 220 65,492,942 3,095 3,158 3,884 2,038 佐 久 市 309 24,118,048 5,180 4,721 6,072 3,008 千 曲 市 235 20,873,415 3,257 3,735 3,656 1,929 東 御 市 108 13,380,896 1,443 2,685 1,923 966 安曇野市 273 95,545,769 3,938 − 5,824 2,921 市 別 世帯数・人口は平成 17 年国勢調査 (出所)「諏訪市の統計」(平成 20 年版)長野県諏訪市 52 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 図 2 諏訪地域へのアクセス 古屋からも約 2 時間 30 分と比較的近い。 (2) 諏訪地域の観光客数と観光消費額 以下の表から諏訪市の観光客数は岡谷市を大きく離し,下諏訪市と比較しても 倍以上である。また,観光消費額については更に格差が拡大している。観光資源 の質と量の差によるものと考えられる。 53 図 3 諏訪地域の観光スポット 54 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 (諏訪地域の観光)―平成 19 年 観光客数(千人) 観光消費額(百万人) 岡谷市 427 261 諏訪市 8,051 23,889 下諏訪町 4,058 5,637 (出所)筆者作成 (3) 諏訪地域の発展の方向性と施策展開 長野県の 10 の広域行政図の観光振興策の計画化によれば 2008 年に調査した上 田(上小地区)は「歴史と自然が輝きおもてなしが彩る真田氏ゆかりの地」,佐 久は「人と水と緑のふれあいサイト,健康長寿の高原のふるさと」に対して諏訪 地区は「体験して初めてわかる,新しい発見と感動あふれる滞在型観光地「諏 訪」への進化である。 具体的には,上田市の観光開発は温泉リゾートやスキーリゾート,真田幸村と 風林火山,観光振興は水を軸としたまちづくり(千曲川のため池)である。佐久 市内の観光開発は「佐久鯉まつり」や「バルーン(熱気球) 」である。諏訪地区 の具体的な事例は以下の諏訪市と岡谷市の観光開発・地域開発の各論で述べる。 2 岡谷市の観光開発 (1) 第 4 次岡谷市総合計画(2009―2018) 前期基本計画(2009―2013) 重点プロジェクトは「たくましい産業の創造」と「輝く子どもの育成」であり 5 つの基本目標が立てられている。 ① 基本目標 1.「魅力と活力にあふれる,にぎわいのあるまち」 ② 基本目標 2.「ともに支えあい,健やかに暮らせるまち」 ③ 基本目標 3.「自然環境と暮らしが調和した安全。安心なまち」 ④ 基本目標 4.「生涯を通じて学び豊かな心を育むまち」 ⑤ 基本目標 5.「快適に生活できる都市機能の充実したまち」 観光に関しては基本目標 1 の産業振興の中に観光の振興がある。特色ある観光 55 振興と観光客の受け入れ整備により観光客数を現在の(2009 年)の 43 万人から 46 万人(2013 年)に増加させる。その他の観光関連内容は基本目標 3 の環境保 全の推進の中にある自然環境の保全である。地域の特性の応じた自然環境の保全 との触れ合いの推進によりこどもエコクラブ登録数を現在(2009 年)の 2 団体 から 2013 年には 33 団体に増加させる。又,基本目標 4 の文化・スポーツに振興 の中で文化施設の整備・活用と文化活動の促進支援により文化財ボランティア活 動を現在の 50 人から 70 人に増加,基本目標 5 では充実と良好な都市景観の保存 と創造(都市景観の整備)や都市緑化の推進,公園の整備に力を入れている。 (2) 岡谷市のイメージ 岡谷市によるイメージ調査によれば「湖」 「山」 「観光地」で関心が高いコンテ ンツは「諏訪の展望」 「桜並木」「蒲焼」 「つつじ」であった。 (3)今後に向けた観光開発の方向性 以下の点を挙げている。 ① 自然が美しい冬の温泉地 ② ワカサギ,白鳥,スケートの冬の観光 ③ 「ものづくりのまち」「シルク,うなぎの特産物」を PR ④ 産業観光都市としての認知・関心は途上にあるため強い ⑤ 近隣の観光コンテンツ「諏訪湖花火」 「たてしな高原」「御柱祭」や諏訪市や 下諏訪町との広域連携 (4) 今後の観光課発の施策 (i)これからの観光は「まちじゅう観光」とする。 旅行形態が個人が 71%なので「まち歩き」が重要。まちを歩くことによ り,街並み,自然,景観,歴史,伝統,文化,生活,食に触れることである, 」 そこでは「味わう」 「感じる」「触れる」 「話す」「体験する」という五感が楽 しめる。 (ii)岡谷市には製糸工場跡など近代化産業の遺産があるので,これらのまち歩 きは地域の活性化となる。 56 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 3 諏訪市の観光開発 1.諏訪市の観光客数は 850 万人(平成 19 年)であるが過去 5 カ年間をみると 平成 19 年は急増している。その要因は上諏訪温泉と諏訪湖の観光客の増加 であった。一方, 観光施設の利用件数も有力資源である「諏訪高原城」や「諏 訪湖間欠泉センター」が大きく寄与している。 2.諏訪市の地域開発はまちづくりであり「自分たちのまちは自分たちでつく る」を目標に平成 13 年度から平成 17 年度までの 5 年間に「おらほのまち づくり」を達成した。地区でまちづくりのアイデアを出し市が資金援助を する草の根のプロジェクトで 5 カ年間に 18 件が採択された。 住民が計画し,予算を管理し,計画を実行し,完成した公園や遊歩道など を自分の手で育てていくものである。住民の手による環境意識や環境重視 が反映されている。 3.平成 18 年度からは「辻と小径のまちづくり」と称し市が事業補助金を供与 している。前回同様,住民が自ら計画を立て,地域による協定を結び事象 的に行う道路や景観の整備,建物などの改修に対して支援する補助金であ る。平成 18 年度は「寺のまち地区」,平成 19 年度は「寺のまち地区」の継 続で地区の遊園地や火の見櫓,ガードパイプの建設や改修が含まれている。 その他, 「蔵まち地区」などで景観整備が予定されている。 4.下諏訪では御柱祭りで知られる諏訪大社が鎮守し江戸時代は 5 街道である 甲州街道と中山道の分岐点の宿場町として栄えた。また,温泉地,諏訪湖, 八島高原などの有力な観光資源を持っている。一方,主産業は製造業であ り戦前までは製糸業,戦前は時計,カメラ,オルゴールといった精密機械 で栄えた。 しかし,1980 年代以降の円高不況やバブル崩壊により中小企業が減少し, それに伴い,従業員の購買力は減少した。住民の購買力に依存していた商 店街は寂れて言った。そこで商店街の活性化が叫ばれ,「ものづくり」が 浮上した(注 3)。それを支えてきた知恵,や人材,能力を活用した新しいま ちづくりが考えられるようになり時計やオルゴールの製作体験に必要な工 房が設けられた。また,後継者不足からくる空き店舗の貸し出しが行われ 57 表2 観光地別観光客数 年 度 総 数 上諏訪温泉 諏 訪 湖 諏 訪 大 社 霧 ケ 峰 平成 10 年 11 12 13 14 15 16 17 18 19 6,768,309 5,942,058 6,016,204 6,002,905 7,467,054 7,611,718 7,907,291 7,486,918 7,185,859 8,051,206 3,452,801 3,427,167 3,549,109 3,635,497 3,699,853 3,852,973 3,805,097 3,853,326 3,655,867 4,272,832 1,590,941 805,121 736,146 669,966 591,925 562,769 936,241 468,140 543,001 593,923 1,724,567 1,709,790 1,730,949 1,697,442 3,175,546 3,195,976 3,165,953 3,165,452 2,986,991 3,184,451 表3 観光施設の利用状況 (単位:件) 年 度 霧ケ峰リフト 平成 10 年 11 12 13 14 15 16 17 18 19 406,856 314,095 277,752 280,155 259,310 218,772 188,376 336,469 336,805 367,992 霧 ケ 峰 諏訪湖間欠泉 温泉植物園 諏訪高島城 キャンプ場 セ ン タ ー 2,715 2,119 2,227 2,358 2,299 1,393 1,809 1,308 1,415 1,872 29,275 25,360 20,518 19,441 16,802 14,966 − − − − 56,936 53,693 54,573 57,170 52,161 47,016 43,616 43,331 41,170 130,870 78,091 79,496 74,453 66,327 50,287 44,061 40,440 68,241 104,258 130,378 (出所) 「諏訪市の統計」 (平成 20 年版)長野県諏訪市 調査の時に訪れた店舗では若者が革製品を販売していた。 5.歩きながら諏訪市を楽しむ。 諏訪市の MTO(商工会議所)協議会は以下の 4 つのコースを紹介してい る(注 4)。第 1 が「景観・芸術コース」で「片倉館」 「諏訪湖間欠泉センター」 「サ 58 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 表 4 18 事業 (出所)参考文献・資料 5 の P. 8 59 ンリツ服部美術館」など合計約 7.4km の散策コース,第 2 は「文学の山路 コース」で「高島城」「大和田の小路(江戸時代の水路) 」 「文学の道公園」 など合計約 11.2km,第 3 のコースは「山の手健脚」コースで市の天然記念 物の枝垂れ桜や和泉式部の墓もあり隠れた散策コース(合計約 9.6km)で 石を祭神として祀る珍しい神社(児玉神社)や医師団の手前の手水が温泉 という「手長神社」がある。第 4 のコースは「酔いの通い寺」と言い国道 20 号線にある歴史の香り漂う街並みと 5 件の造り酒屋がえる。呑み歩きに コース。(合計約 8.9km) 以上のように 4 つのコースから観光客は時間と関心のある分野により自由に選 択組み合わせを子ナウことが出きる。どれも徒歩で 10Km 程度であるのが魅了的 である。 Ⅳ 東信州(上田市,佐久市)と諏訪地域の観光の比較 以下の表は平成 18 年の長野県の主要観光地と延利用者数のベスト 20(抽出) を示したものである。 順位 1 市町村名 軽井沢 観光地 軽井沢高原 延利用者数(万人) 782 諏訪市 上諏訪温泉,諏訪湖 421 12 諏訪市・下諏訪町 諏訪大社 127 13 上田市 菅平高原 108 18 上田市 別所温泉 87 20 下諏訪町 八島高原 83 5 (出所)参考文献・資料 1 の P. 26 ベスト 20 のトップは軽井沢であるが,上田市や諏訪市も上位を占めている。 両市とも温泉や高原の有力な資源を持っているからである。その点では佐久市と 岡谷市は資源が不足して観光客数の規模や減少に繋がっている。今後は上田市と 諏訪湖視の観光振興の競争が更に激しくなると予想される。しかし,それが岡谷 60 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 市や佐久市の観光にプラスになればよいし,低迷する長野観光の活力となること が望まれる。 Ⅴ まとめ 諏訪市と東信地域を比較し共通する観光資源は温泉と高原である。しかし,他 と比べ比較優位を持つと思われる有力な資源は上田市の別所温泉と菅平高原(ス キーなどのスポーツ観光地),真田氏の居城跡である上田城址公園の 3 つは他の 都市と比べ大きな集客力と魅力ある資源として評価が高い。 同様に諏訪地区の「諏 訪湖」や御柱祭の「諏訪大社」は全国に知られており結果として主要観光地ベス ト 20 の表の順位にランクされている。佐久市や岡谷市は観光資源の規模は小さ く,又,全国的に訴求する有名な資源に恵まれていない。但し,佐久市はバルー ン(気球)で,岡谷市はシルクの都市としての歴史的文和遺産でアピールの努力 をしている。岡谷市は昔の製糸工場や邸宅が保存されており産業文化都市として 富岡の製糸工場をともに世界遺産の登録を希望している。 従って,諏訪地域の今後の観光開発と観光戦略は諏訪市を軸とし岡谷市への波 及効果を狙う必要がる。両氏の共通の資源のほかに他に無い資源として岡谷市の 産業文化観光とエコツーリズム,諏訪市の諏訪湖を活用したイベントづくり,も のづくりの体験,更に歩いて巡る 4 つのコースの活用など自然資源と人文資源を 有効に利用した観光開発や観光振興の戦略は十分の立てられると考えられる。 以上より以下の提言をしたい。 (1)まず知ってもらうことから諏訪地区の観光資源も PR を強化する。(特に他 と差別化される資源を取上げる。例えば産業文化観光や散策コース) (2)旅行者と地域住民との交流の場を拡大する。 (ユニークなイベントづくり) (3)国のビジットジャパンキャンペーンを活用したが帰国人観光客の誘致を強化 する。 (4)冬はスキー,夏は湖の新たな通年観光(諏訪湖の自然を発見する旅など)を 強化する。 (5)エコツーリズムや散策を見直し誰でもいつでも参加できる健康的な観光を企 61 画する。 (6)体験ツアーを推進する。 (7)地産地費の運動を推進する。 (8)岡谷の歴史をメディアを通して広く知らせる。 注 (注 1)参考文献・資料 6 の P. 3 を引用 (注 2)以下の 5 つを実施する。 (1)国際競争力の高い魅力ある観光地づくり (2)海外との観光交流を拡大 (3)旅行者ニーズに合った観光産業の高度化を支援 (4)観光分野に関する人材の育成と活用を推進 (5)休暇取得の推進や日本人海外旅行者の安全対策など観光をしやすい環境の整備 (注 3)原雅廣「ものずくりとまちづくり」 ― NPO 法人匠の町イモスワアキナイプロジェクト」を参照 (注 4)参考文献・資料 8 のパンフレットを参照 参考文献・資料 1 .廣田政一(共著)「中部地域のまちづくり―主に長野県東信地域を対象にして―」2008 年 3 月,愛知大学経営総合科学研究所叢書 32 2 .「第 4 次岡谷市総合計画(2009―2018)基本構想―前期基本計画(2009―2013)長野県岡 谷市 3 .「岡谷市の観光と今後の展開について」岡谷市役所商業観光課 4 .「諏訪市の統計」 (平成 20 年度版)長野県諏訪市 5 .「諏訪市おらほのまちづくり記録集」平成 18 年 2 月 6 .「諏訪市勢要覧」2006 年 3 月 7 .「諏訪湖端ポート」 (2009.4―2010.3)諏訪市経済部観光課 8 .「歩きながら楽しむ諏訪のまち」諏訪 TMO 推進本部(商工会議所) 9 .「ウオッチ事業案内」セイコーエプソン㈱ 10.「岡谷製糸業の展開(ふるさとの歴史・製糸業)農村から近代工業都市への道―」平成 62 第 4 章 諏訪地域の観光開発の現状と展望に関する考察 9 年 8 月 岡谷市教育委員会 11.観光白書(平成 21 年版)観光庁 12.拙稿(共著)(2003) 「国際経済開発論」学文社 13.―(2001) 「持続可能な観光開発への国際協力」日本観光学会誌 No. 38 14.―(2008) 「国際協力における観光開発プロジェクトの経済評価―シャドウプラ イス手法の導入と適用―」目白大学総合科学研究 第 4 号 15.―(2009)「観光公共財の理論的アプローチ」2009 年 10 月,日本観光学会全国 大会報告書 あとがき サステナブル(持続可能)都市の度合い(経済豊かさ度,環境保全度,社会安 定度の総合度)を探るために,日経グローカル(No. 139,2010 年,1 月 4 日号) において,2009 年の 10 月に全国 783 都市と東京都 23 区に対して回答のあった 641 市区を対象とした分析によると,長野県内の都市については,全国 200 市以 内ランキングでは 60 位(76)の飯田市(地方都市圏のサステナブル度では 10 位) , 108 位(90)の上田市,112 位(19)の松本市,132 位の塩尻市,155 位(72)の長野 市,172 位 (159)の佐久市,177 位の駒ケ根市,189 位の千曲市,194 位の小諸市 がある。ちなみに,1 位 (2)は武蔵野市,2 位(1)は三鷹市,3 位(5)は豊田市であ る。ただし, ( )内の数値は 2007 年に実施された時の順位を示している。 (以下 同様) また,サステナブル度総合評価の中での「経済的豊かさ度」に関して全国にお ける長野県内での上位都市は見られなかったが, 「社会安定度」では 16 位の駒ケ 根市,18 位の伊那市,37 位 (31)の松本市,43 位(14) の飯田市,48 位 (99)の茅野市, 52 位の塩尻市,84 位(91) の佐久市がある。 ついで,「環境保全度」については,上位 100 市の中で,24 位 (66)の飯田市, 69 位 (53) の上田市,100 位 (42)の長野市がある。 さらに,環境保全度分野別の 6 項目の中で 100 位内に入っている長野県内の都 市は,以下の通りである。ちなみに交通分担率項目における上位都市は見られな かった。 ① 行政体制作り・マネジメント分野:13 位(39) の松本市 ② 環境の質分野:24 位(65) の長野市 ③ 廃棄物対策分野:11 位の東御市,23 位の駒ケ根市,24 位(15) の飯田市 ④ 交通マネジメント分野:4 位の飯田市 ⑤ 都市生活環境分野:15 位(8)の松本市および 17 位(303) の大町市 ⑥ エネルギー対策分野:9 位(17)の飯田市,23 位 (76)の上田市 あとがき 上記の調査では,総合的評価は飯田市が比較的高く,とりわけ交通マネジメン トの分野での順位の上昇が目立つ。 今回視察した諏訪市では回答がなかったようであるが,岡谷市がサステナブル 度総合評価ではそれほど高くない。しかし「社会安定度」についてはセイコーエ プソンの立地している塩尻市,諏訪市に隣接している茅野市などが比較的高いこ とから,諏訪湖近辺の中信都市の社会安定度が比較的高いと考えられる。なお, 不況とは言え産業が盛んなこれらの都市が「経済的豊かさ度」の上位に入ってい ないのが意外であった。 今後は,諏訪市,岡谷市,塩尻市,茅野市などの周辺地域が連携して,アイディ アを出し合いながら,これら地域に豊富に存在する多種多様な観光資源の活用方 法を考えること,さらには産業観光という観点から地域活性化を図って行くこと が必要である。 著 者 紹 介(執筆担当) 神頭広好 愛知大学経営学部教授(第 1 章) 麻生憲一 奈良県立大学地域創造学部教授(第 2 章) 井出 明 首都大学東京都市環境学部准教授(第 3 章) 廣田政一 目白大学社会学部教授(第 4 章) 本書は,愛知大学の研究助成を受けた共同研究の成果 である。 愛知大学経営総合科学研究所叢書 35 観光と産業のまちづくり ―主に諏訪・岡谷を対象にして― 2010 年 3 月 24 日発行 著 者 神頭広好・麻生憲一・井出 明・廣田政一 発行所 愛 知 大 学 経 営 総 合 科 学 研 究 所 〒 470 ― 0296 愛知県みよし市黒笹町清水 370 印刷所 株式会社 クイックス 名古屋市熱田区桜田町 19―20 〔非売品〕