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4350 メディカルシステムネットワーク

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4350 メディカルシステムネットワーク
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
4350 メディカルシステムネットワーク
~調剤薬局のネットワークで業界 No.1 独自の地域ケアシステムを展開~
2015 年 8 月 14 日
東証 1 部
ポイント
・業績は会社計画を上回るペースで好調に推移している。6~7月のファイナンス(公募・
自己株式の処分等)で 28 億円を調達し、これまでの M&A や今後の投資に活かしつつ、懸案
の財務体質も一定程度改善した。事業強化に向けた提携戦略も活発化している。
・2018 年 3 月期までの新中期 3 カ年計画では、医薬品ネットワークの加盟店を現在の 1255
件から 2200 件へ拡大を目指すが、その先の展望も開けつつある。調剤薬局向けレセプト
コンピュータ(レセコン)で業界トップ(1.6 万件)のEMシステムズと業務提携して、当社
の「不動在庫消化サービス」
(期限切れ前に不用な医薬品を相互活用)を EMS 顧客でも使
えるようにする。こうした連携を梃子に、加盟店を大幅に増やす可能性が高まろう。
・中期計画では、地域医療を支える企業を目指し、医薬品ネットワークの拡大と「未病・
予防-医療-介護」を支える地域薬局機能の充実を目指す。自前の薬局は現在の 348 店を
500 店に伸ばす計画だ。2018 年 3 月期に売上高 1050 億円、経常利益 38 億円を目標とする
が、これは十分達成可能であろう。
・前期に続き、今 2016 年 3 月期もピーク利益を更新しよう。ネットワークに加え、調剤
薬局の業績が伸びてくることによる。薬価改定に伴う卸との価格交渉のあり方についても
一定の進展がみられた。2016 年 4 月には次の改定があるので、前回並みの改定を前提に
すると、2017 年 3 月期の業績は伸び悩みとなろうが、中期目標は射程内にある。
・当社は医薬品の卸と調剤薬局を結ぶネットワークで業界 No.1、医薬品の取扱高でも業
界トップクラスである。発注システム、在庫管理システム、レセプトデータ管理システム
など、自社開発によるネットワークシステムの提供で、自社店舗の売上高では業界 7 位に
とどまるが、ネットワーク加盟店舗数と医薬品の仕入高で独自の強みを発揮する。
・課題であったサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への投資のオフバランス化が、芙蓉
総合リース(コード 8424)との戦略的包括提携(不動産リーススキームの導入)で可能とな
り、過大な投資負担を避けて事業を推進できよう。ROE は 13%台にあり、5 年後には経常
目
次
利益 50 億円が想定できるので、
株式市場における評価も次第に高まるものと期待される。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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Independent Research Analyst Report
1. 特色
調剤薬局に独自のネットワークシステムを築く
2. 強み
自社開発のシステムでサービス向上と効率化を推進
3. 中期経営方針
4. 当面の業績
5. 企業評価
調剤薬局のネットワークで圧倒的トップを目指す
買収効果も上乗せとなり、2016 年 3 月期もピーク利益を更新へ
EMシステムズ、芙蓉総合リースとの連携効果に注目
企業レーティング B
株価(15 年 8 月 13 日) 585 円
PBR 1.97 倍
ROE 13.3%
時価総額 175 億円(29.9 百万株)
PER
14.3 倍
配当利回り 1.5%
(百万円、円)
決算期
売上高
2008.9
33785
2009.9
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
1153
995
973
43.3
2.50
36786
1440
1266
431
19.5
3.75
2010.9
41131
1528
1329
473
20.4
4.50
2011.9
46508
2262
2139
1001
38.6
6.25
2012.3
25410
1357
1314
518
20.0
3.75
2013.3
54827
2046
1912
756
29.1
8.00
2014.3
66181
2091
2019
668
27.7
8.00
2015.3
75548
2641
2540
885
37.1
8.00
2016.3(予)
85000
3400
3300
1200
40.9
9.00
2017.3(予)
89000
3300
3200
1100
37.5
9.00
(15.6 ベース)
総資産 45430 百万円
純資産 9012 百万円
自己資本比率 19.1%
BPS 296.3 円
(注)2012.3 期は決算期変更で、6 ヵ月決算。ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース。
09.9 期で 1:200、12 年 4 月、12 年 6 月に各々1:2 の株式分割を実施。それ以前の
EPS、配当は修正ベース。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の
可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要す
る、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
調剤薬局に独自のネットワークシステムを築く
薬局と医薬品の卸を結ぶ情報システム
当社は、病気になった患者が医者に診てもらったあと処方箋をもらい、近くの薬局に行
って薬を受け取る時の調剤薬局のネットワークビジネスが事業の柱である。調剤薬局では、
必要な薬を医薬品の卸問屋から仕入れる。この時の受発注システムや薬局内の薬にかかわ
る情報システムを得意とする。そのための情報システム開発を自社で行い、サービスを提
供している。
田尻社長は北海道の小樽で育ち、起業した時の三銃士も皆、小樽の仲間である。田尻氏
はかつて医薬品卸の会社で仕事をしていた。薬局や病院への営業は昼休みと夕方しか先方
に会えない。この仕事のやり方を、ネットを活用して抜本的に変えたいと考えていた。小
学校からの同級生であった秋野氏(副社長)は、実家が医薬品の卸をやっていたが、自ら薬
局を立ち上げていた。沖中氏(会長)は医薬品の卸に勤めていたが、その中でシステム開発
を手掛け、その後システムフォーというシステム会社を立ち上げていた。この 3 人が話し
合って、三銃士のごとく当社を起業したのである。
マネジメントとガバナンス
今回(2015 年 6 月)の役員人事で、三銃士の一人、沖中副社長が会長に就任した。田尻社
長(67 歳)より 4 歳年上なので会長となり、もう一人の秋野専務が副社長になった。また、
次世代を担うマネジメントとして、田中常務、坂下常務がいずれも専務に就任した。
独立社外取締役では、JR 北海道のトップを務めた小池明夫氏と、金融機関出身の一色浩
三氏(日本政策投資銀行元理事)の 2 名が入った。
サプライチェーンマネジメントの効率化を目指す
田尻社長は 16 年前、当時の流通の仕組みではコストがかかりもったいない、情報の提供
や物流の効率化で付加価値を作る必要がある、と考えた。90 年代にインターネットが普及
してきたので、このサプライチェーンマネジメントを担う情報システムを作ろうと決断し
た。日本の流通コストは 7~8%、米国は 3%以下である。
仕組みとしては、スーパー、コンビニの POS レジのようにできると考えた。仕入れ、在
庫に関わる受発注システムの自動化である。医薬品の価格は 2 年に 1 度の薬価改定で決ま
るが、卸と調剤薬局がバランスのとれた合理化で互いに収益を確保することを構想した。
北海道から全国に展開
当社(メディカルシステムネットワーク、MSNW)は 1999 年 9 月に創業した。当時、医薬品
産業 7 兆円の内、7~8%が流通コストであった。5000~6000 億円の流通経費を、米国並み
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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のコストに合理化すれば、3000~4000 億円の経費圧縮ができると考え、起業した。2002 年
3 月に、創業 2 年半で大証ヘラクレスに上場し、2008 年東証 2 部、会社設立 11 年目の 2010
年 6 月に東証 1 部に上場した。
北海道から本州を目指す時に、三井物産と組むことにした。三井物産は当社本体に 8%ほ
ど出資した。さらに医薬品ネットワーク事業に関して、エムエムネット(MM ネット:当社
51%、三井物産 49%)を合弁で作り、三井物産から代表取締役副社長が経営に入った。全
国の地銀を通して調剤薬局を紹介してもらうなどして、ネットワークの拡充に力を入れた。
この MM ネットは当初の目的を達成したので、三井物産との合弁は解消し、MM ネットの事業
も 2013 年 7 月に本体に吸収した。
メディカルシステムネットワーク(MSNW)の事業領域
SMO事業
(病院向け治験
サービス)
医薬品メーカー
医薬品卸
約100社
業界売上10.2兆円
約110社
業界売上9兆円
新薬メーカー
9.4兆円
給食事業
(病院・福祉施
設内受託業務)
サービス付き
高齢者向け
住宅
病院・医院
11万施設
患
メディカルモール
事業
医薬品
ネットワーク
事業
国民医療費
39.2兆円
調剤薬局
後発品(ジェネリック)
メーカー
者
5.7万店舗
業界売上6.7兆円
主要20社0.8兆円
地域医療を支える
「未病・予防-医療-介護」機能を充実
した薬局ネットワークの拡大
調剤薬局
事業
なの花ブランドは業界 7 位
ネットワークとは別に、当社が自前で展開する薬局のブランドは「なの花薬局」で、統
一化を進めている。北海道からスタートして地域薬局網作りに力を入れながら、全国展開
を図ってきた。目標は地域の人々の「かかりつけ薬局」になることで、そのための薬局の
教育(集合研修や e ラーニング)
、在宅診療のための在宅薬局にも力を入れている。自社調
剤薬局は 2015 年 6 月末現在 348 店舗に増えている。
自社ブランドの調剤薬局は、アインファーマシーズ、日本調剤、クラフト、共創未来グ
ループ、クオール、総合メディカルに次いで、MSNW は業界 7 位である。その中で、もとも
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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と基盤のある北海道では、店舗数でアインファーマシーズを抜いて、当社が業界トップで
ある。
調剤薬局が取り扱う薬品の市場は 6.7 兆円。このうち、業界トップのアインファーマシ
ーズでも売上高が 1000 億円台であり、その市場シェアは極めて低い。ドラッグストアは市
場が 6 兆円ある中で、トップのマツモトキヨシなど大手 6 社で 30%以上を占める。調剤薬
局は大手 6 社でシェア 10%前後にすぎず、今後大手がシェアを上げる余地は大きい。
M&A については、いくつかの形がある。調剤薬局事業を担うファーマホールディングが、
サンメディックや共栄ファーマシーを買収した時は株式譲渡であった。2011 年にサンメデ
ィックがメウスを買収した時は吸収合併、共栄ファーマシーがケイツージャパンを買収し
た時は事業譲渡の形をとって、店舗を中心に譲り受けてきた。
また、ドラッグストアの傘下にある調剤薬局の仕入れビジネスが当社に入ったという事
例もある。仕入額に一定の料金をかけたものが、ネットワークの使用料として当社の収入
となる。当社全体の平均的なネットワーク料率は 1.3%前後とリーズナブルである。
調剤薬局関連の上場企業比較(関連5社)
社名
コード
市場
MSNW
アイ ン ファ ーマシーズ
日本調剤
クオール
総合メディカル
4350
9627
3341
3034
4775
東証1
東証1
東証1
東証1
東証1
業界順位
店舗数
売上高(14年度)(億円)
経常利益(億円)
売上高経常利益率(%)
7位
345
755
25
3.4
1位
754
1879
117
6.2
2位
510
1818
60
3.3
5位
538
1144
43
3.7
6位
538
1079
52
4.8
株価 (8/13) (円)
時価総額 (億円)
PBR (倍)
ROE (%) PER (倍)
配当利回り (%)
585
175
1.97
13.3
14.3
1.5
6240
1990
4.12
15.0
27.3
0.6
10020
803
3.76
19.2
39.2
0.8
2027
727
3.83
13.7
27.9
1.0
4040
620
2.10
11.2
18.6
1.1
(注)売上高、経常利益は全社ベース。業界順位は調剤報酬額ベース。
PBR、ROE、PER、配当利回りは直近予想ベース。
なの花スタンダード作り
「なの花スタンダード」というネーミングを使っている。10 年後にリーディングカンパ
ニーを目指すには、なの花ブランドを特別なものにする必要がある。一定の水準をクリア
した薬局づくりということで、自ら新しい標準(スタンダード)を作ろうとしている。
なの花薬局は、
「なの花スタンダード」を確立すべく力を入れている。薬の過誤防止や在
宅医療の積極化など、地域密着を図っている。そのためには、教育レベルの向上が必須で
あり、研修担当者の増員を進めていく。これまでも、調剤報酬改定のハンドブックを出し
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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て好評である。薬剤師が患者の情報、状況をよく把握して、薬の事故を事前に避ける(プ
レアボイド)ように対応する。その情報を医者にフィードバックして、薬の組み合わせを
変えてもらい、副作用を防ぐ。毎月 200 事例もあり、社内ではそのコンテストも実施して
活動を盛り上げている。
また、当社は毎月 60 万枚の処方箋を取り扱っているが、そのうち在宅医療では、癌の疼
痛緩和の処方箋など自己で療養している患者の分が月 1.8 万枚程度ある。今後も増加する
よう取り組んでいく。
自社の薬局の構成は、小型の店が 4 割(薬剤師 2~3 人、20 坪)、中大型の店(50 坪程度)
が 3 割、医療モールの店が 2 割という内容である。将来は、薬局が予防や未病を担ってい
くことがリーディングカンパニーとして必要になってくる。そこで当社は栄養士による食
事療法のサポートにも取り組んでいる。
現在在宅実施店舗は 244 店で、全体の 70%を占める。いずれ全店に広げる。なお、在宅
支援薬局には、在宅専門の薬局もある。介護施設から処方箋を受け、それだけで成り立つ
薬局も出始めた。現在 2 つある。専門化できれば効率はよいが、まだ専門化できるところ
は少ないので、既存の薬局が両方へ対応していく。
医薬品ネットワークに加盟する調剤薬局の7エリア別店舗数
自社店舗数
2014.3末 2015.3末
加盟店店舗数
2014.3末 2015.3末
店)
合計
2014.3末 2015.3末
関東・甲信越エリア
67
75
231
287
298
362
北海道エリア
110
112
106
95
216
207
東海・北陸エリア
30
42
130
140
160
182
九州・沖縄エリア
37
35
87
106
124
141
近畿エリア
45
53
142
78
187
131
東北エリア
6
5
85
88
91
93
中国・四国エリア
26
23
61
61
87
84
合計
321
345
842
(注)2015.3は、大口脱退230店、新規加盟267店。
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在宅医療への薬局、薬剤師の役割
例えば、札幌のなの花薬局南郷店の薬剤師は、個人宅、グループホーム、介護付き老人
ホーム、特別養護老人ホームなど 260 名の在宅業務を担当しており、月に 1~2 回 410 件の
訪問を行っている。16km 圏内の地域を 1 件 10~30 分で訪問する。医師、看護師、薬剤師、
ケアマネジャー、介護士、福祉用具貸与業者など多職種がミーティングをしながら連携し
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ていく。医師と一緒に行く、ケアマネジャーと一緒に行く、薬の管理ができない人のとこ
ろに行く、などさまざまなケースがある。
在宅薬局は、居宅訪問 1 回につき 650 点(1点 10 円)の加算があるが、その報告書を書
くのに結構手間がかかる。また薬についても、飲み間違い、飲み忘れのないように色を付
けたり、箱に入れるなど分かりやすくする必要があり、在宅への対応は時間がかかる。
今後在宅薬局としてのサービスをどのように拡大していくかは課題である。需要は間違
いなく増えていくので、当社では、良いサービスと効率が両立するような在宅薬局の仕組
み作りに取り組んでいる。
ファミリーマートとの連携
業態の多様化が進んでいる。ドラッグストアとコンビニの組み合わせ、ドラッグストア
と調剤薬局の組み合わせ、コンビニと調剤薬局の組み合わせなどさまざまなパターンがあ
りうる。立地も重要で顧客がメリットを感じられるかどうかが最大のポイントである。
コンビニのファミリーマート(ファミマ)との業務提携に基づく、コンビニ一体型調剤
薬局を進めようとしている。このビジネスモデルは、個人を中心とする全国の調剤薬局へ、
コンビニ+薬局のフランチャイジーになることを提案していく。これによって、生活イン
フラと医療インフラの構築を共同で効率よく進めようというものである。
医療、介護、コンビニの機能を組み合わせて街づくりを支援するという発想だ。ファミ
マにとっては薬局への拡大が図れる。何よりも顧客にとっては、高齢化が進む中で、かか
りつけ薬局が身近なコンビニにあるというのは便利である。
ローソンは調剤薬局のクオールと提携している。ローソンの場合はコンビニに薬局を入
れるという考えである。当社は新業態を作ろうとしている。
SMO は調剤薬局とのシナジーに活用
当社は治験(臨床検査)の支援も行っている。新薬の開発にあたって、病院でさまざまな
治験が行われる。新薬を開発する医薬品メーカー側ではなく、治験を行う病院側をサポー
トするビジネスが SMO(病院などの治験施設を支援する業務)である。
少し大きな専門性のある病院は、何らかの新薬の開発に当たって、その協力をすること
がある。病気の治療を図るには、新薬が欠かせないからである。このサービスは調剤薬局
とシナジーがある。そういう病院で専門医として働く医師は、いずれ開業する可能性が高
い。その開業情報をいち早く仕入れて、開業サポートをし、メディカルモールとして調剤
薬局もオープンすれば、うまくシナジーが得られるのである。
SMO を担う子会社エスエムオーメディシスは、そのビジネス自体で利益をあげるというよ
りも、調剤薬局事業とのシナジー効果を重視している。この SMO については北海道のみで
展開している。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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薬剤師教育専門機関を社内に有する
当社は、薬剤師研修教育専門機関「北海道医薬総合研究所」を社内に有している。ここ
は、薬剤師研修の資格認定機関として日本薬剤師研修センターから認定を受けた研修認定
薬剤師制度実施機関の1つである「北海道医薬総合研究会」と連携している。
薬剤師は資格をとった後も、研修を受けて自らの技量を磨いていく必要がある。必要な
単位を認定されると、研修シールが発行され、認定薬剤師となる。ネットワークの加盟店
にもこうした研修を積極的に導入することで、質的向上を支援している。同業の大手企業
はこのような機能を有していないので、当社の特色となっている。
2.強み
自社開発のシステムでサービス向上と効率化を推進
医薬品ネットワーク事業でオンリーワン
当社は自前で 348 店舗(6 月末現在)の調剤薬局を展開するが、それも含めて、当社のネッ
トワークを活用している薬局は 1249 件に及ぶ。この数は業界トップである。当社のような
ネットワークシステムを持っている同業他社はない。その強みは何か。通常は医薬品卸へ
の大量発注によるバイイングパワー(購買力)を行使して、安く仕入れるということが考え
られるが、当社は方針として、無理なバイイングパワーは使わない。
薬局での薬の価格は国によって決められているので、販売価格に自由度はない。その中
で、薬局と卸がマージンの取り合いをしても生産的でないと考えている。むしろ、デッド
ストックにならないような在庫の有効利用によるコスト削減、薬剤師教育や店舗管理の効
率化などによって、当社の利用度をあげてもらうことに力を入れている。こうした当社の
ネットワークの使い勝手の良さが紹介営業に繋がっている。
医薬品等ネットワーク事業
2013.3
1033
948
2014.3
1163
1124
2015.3
1200
977
発注手数料(百万円)
897
1018
564
1255
システム販売額(百万円)
586
933
658
1213
その他(百万円)
138
174
124
181
合計(百万円)
1622
2126
1348
2650
(注)加盟店舗数には自社店舗も含む。2012.3は6ヵ月決算。
1490
1183
170
2843
1601
1029
183
2814
加盟店舗数(店)
医薬品発注取扱高(億円)
2010.9 2011.9
597
740
537
704
2012.3
854
415
卸と調剤薬局を結ぶ当社のネットワークシステムは、価格交渉、在庫管理、自動発注、
決済、薬剤師の教育などをビジネスとして担っている。年間の医薬品の取扱高は、05 年 9
月期の 118 億円から 2010 年 9 月期 537 億円、2014 年 3 月期 1124 億円と急ピッチで増えて
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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きた。ネットワーク事業の収入は売上全体の 4%だが、営業利益では 40~45%を占める高収
益部門である。ここを伸ばすことが最大の戦略である。
医薬品ネットワーク事業の営業利益率は 50%と高い
調剤薬局は、患者が医者の処方箋によって求めてくる薬をある程度取り揃えておく。そ
のために、必要と思われる薬を医薬品の卸に注文する。この受発注システムを当社が担当
して、その手数料を得る。必要な薬には常に余剰となるものがあり、どう在庫管理するか
によって無駄を排除し、コストの削減になる。薬局間で在庫のやり取りができれば、期限
切れの薬の廃棄ロスも少なくて済む。
ネットワーク事業は、加盟店がこのネットワークを通じて仕入れた金額の一定料率を発
注手数料として売上げにたてる。この収入が毎月入ってくるので、加盟店が増えるほど収
入は上がってくる。これとは別にシステムの販売もある。レセプトを処理するレセプトコ
ンピューター(ファーマシーエース)の販売も、新規加盟やシステムの入れ替えで収入と
なる。システム販売の利益は発注手数料に比べれば高くないが、安定した更新需要はある。
実際、新規加盟に伴う情報機器のシステム販売の粗利は 10%程度で、医薬品の発注手数料
で稼いでいく。当社のネットワーク事業は、売上高営業利益率が 50%前後と極めて高い。
セグメント別業績
2011.9
2012.3
2013.3
2014.3
(百万円、%)
2015.3
医薬品等ネットワーク事業
売上高
2126 (+31.0)
1348 (+30.2)
2650 (+8.7)
2843 (+7.3)
2814 (-1.0)
営業利益
997 (+26.3)
596 (+21.5)
1221 (+10.8)
1475 (+20.7)
1549 (+5.1)
同利益率
46.9
44.2
46.1
51.9
55.1
調剤薬局事業
売上高
44641 (+12.6) 24273 (+10.2)
52581 (+12.1) 63006 (+19.8) 71743 (+13.9)
営業利益
2032 (+42.4)
1233 (+17.1)
1766 (-20.1)
1840 (+4.2)
2377 (+29.2)
同利益率
4.6
5.1
3.4
2.9
3.3
賃貸・設備関連事業
(調剤薬局関連、
売上高
987 (+8.1)
509 (+0.3)
1122 (+13.6)
1317 (+17.4)
1517 (+15.2)
高齢者賃貸住宅関連) 営業利益
136 (+113.1)
65 (-12.1)
111 (-12.7)
-39 (na)
25 (na)
同利益率
13.8
12.8
9.9
-3.0
1.7
給食事業
(病院、福祉施設内) 売上高
607
1932 (+218.3)
営業利益
ー
ー
ー
-12
-13 (na)
同利益率
-2.0
-0.7
その他事業
(SMO、
売上高
225 (-12.2)
131 (+16.3)
252 (+3.1)
407 (+61.5)
182 (-55.2)
治験施設支援業務) 営業利益
-18 (na)
5 (na)
4
10 (+116.3)
-76 (na)
同利益率
-7.8
4.1
1.9
2.5
-41.8
合 計 売上高
46508 (+13.1) 25410 (+10.8)
54827 (+11.9) 66181 (+20.7) 75548 (+14.2)
営業利益
2262 (+48.0)
1357 (+15.4)
2046 (-16.2)
2091 (+2.2)
2641 (+26.3)
同利益率
4.9
5.3
3.7
3.2
3.5
(注)2012.3期は決算期変更で6ヵ月決算。カッコ内は前年同期比伸び率、naは黒転、赤転で計算できず。
給食事業は、TMS買収で2014.3期より加わる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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トータル・メディカルサービスを買収
2013 年 11 月に、当社の子会社で調剤薬局を統括するファーマホールディングが、トータ
ル・メディカルサービス(TMS)を公開買付(TOB)によって買収した。投資額は 51 億円であ
った。これによって、九州地区での店舗数が大幅に充実した。九州において、TMS は総合メ
ディカルに次いで、2 番手である。九州で TMS32 店+当社 5 店、中国地区で TMS3 店+当社
23 店という規模であった。全国では、282 店(2013 年 9 月末時点)に 35 店が加わったので、
その効果は大きいものであった。
当社は絶えずシナジーを考えており、ドミナントを形成できるかどうかがポイントであ
る。子会社となった TMS の大野社長はそのまま経営を担っている。TMS とのシナジーについ
て、大野社長とは考え方が合うので、九州は任せられる。TMS は、薬局のアメニティについ
ても高いものをもって実践している。当社のネットワークシステム、在宅医療サービスな
どで展開の余地はかなりある。
2014 年 3 月期の 12 月よりトータル・メディカルサービス(TMS)が連結に入った。TMS
の 2015 年 3 月期への寄与度は年商で 101 億円、経常利益 253 百万円となった。
TMS が手掛けている病院給食については、今後とも続けていく。当社のサ高住(サービス
付き高齢者向け住宅)で給食事業のノウハウが活用できる。給食事業はまだ赤字であるが、
利益面では収支トントンを目指していく。一方、TMS が行っていた事業の中で、医薬品の卸
については事業として撤退した。年商 15 億円ほどであるが、利益への影響はない。
調剤薬局のエリア別自社店舗数
エリア
北海道
関東甲信越
近畿
東海北陸
九州沖縄
中国四国
東北
2012.3末 2013.3末
101
34
41
20
4
19
4
109
62
44
24
5
20
5
TMS 2014.3末 出店数 退店数
0
0
0
0
32
3
0
M&A
(店)
2015.3末
110
67
45
30
37
26
6
2
4
3
1
0
0
0
-1
-2
-3
-1
-2
-3
-1
1
6
8
12
0
0
0
112
75
53
42
35
23
5
合計
223
269
35
321
(注)TMS(トータル・メディカルサービス)店舗数。
10
-13
27
345
薬局の収益性改善
これまで調剤薬局の子会社の収益格差が十分縮まらないことも、利益伸び悩みのもう一
つの要因であった。連結売上高の 10%を越えている子会社(薬局)は 4 つあるが、コムファ
に比べて、サンメディックや共栄ファーマシーの収益性が低かった。関西を基盤とする共
栄ファーマシーについては、経営体質の強化にここ数年力を入れてきたが、新規出店が上
手く行かなかったこともあり、収益性の回復が遅れていた。ここに手を打って、2015 年 3
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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月期からかなり好転している。
トータル・メディカルサービスの単体の業績にはのれんの償却分を含んでいるので、2 億
円近くその影響がある。実態としての薬局の収益力は 4%台を確保しているとみてよい。
主要子会社の業績
調剤薬局
決算期
売上高
(百万円、%)
経常利益 同利益率
コムファ
2013.3
2014.3
2015.3
11692
13546
13600
805
753
793
6.9
5.5
5.8
サンメデック
2013.3
2014.3
2015.3
7380
10433
13956
254
233
616
3.4
2.2
4.4
共栄ファーマシー
2013.3
2014.3
2015.3
15613
17163
17710
112
74
358
0.7
0.4
2.0
トータル・メディカル
サービス(TMS)
2015.3
10158
253
2.5
業界 9 位の阪神調剤薬局と業務提携
2012 年 11 月に業務提携した阪神調剤ホールディングと医薬品仕入れの合弁会社 H&M(出
資比率当社側 51%、阪神調剤 49%)は、2013 年 7 月から活動を開始した。関西では調剤薬局
300 件をまとめることになるので、業界でトップクラスである。医薬品の仕入れ、流通合理
化に共同で取り組み、サプライチェーンを強化していく。この H&M は一定の成果を上げた。
医薬品卸と価格形成について勉強会を行い、前回の薬価改定に活かすことができた。
阪神調剤薬局は、兵庫、大阪を中心に東京も含めて 218 の直営店舗を有し、業界 9 位で
ある。7 位の当社と単純合算すれば、両社で業界 4 位のポジションに位置する。業務提携し
た狙いは、仕入れにおける協業である。この 2 社の調剤薬局を合計すると、仕入れ規模で
は業界トップのアインファーマシーズを抜いてトップとなる。こうしたバイイングパワー
の強化を通して、田尻社長が長年主張していた医薬品卸と調剤薬局のプライシングのあり
方について、新しい仕組みを作っていこうとしている。
H&M では、卸との勉強会を 1 年余りに亘って続けてきた。マージンのあり方、決済期間と
金利負担、配送頻度と在庫の兼ね合いなど、どういう値決めが合理的かという点について
議論を重ねてきた。
2014 年 2 月に前回の薬価改定に伴う値決めが決着したが、その時には、今回の薬価改定
の影響についても、その折り込み方がほぼ固まっていた。2015 年 3 月期は 2014 年 9 月まで
に価格が決まった。その意味では、H&M によっていい効果は出てきている。
H&M のマネジメントでは、この 6 月に岩崎社長(阪神調剤ホールディングス社長)が会長
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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へ、田尻副社長(MSNW 社長)が社長に就いた。2 年を経て規定の路線である。
調剤薬局チェーンの業界順位
(2014年度ベース)
(億円、店)
調剤報酬額
店舗数
順位
会社名
アインファーマシーズ
1
1657
754
2
日本調剤
1559
510
3
クラフト
1305
564
4
クオール
922
509
5
共創未来グループ(東邦HD)
921
520
6
総合メディカル
793
538
ファーマホールディング(MSNW)
7
678
345
8
アイセイ薬局
529
303
9
阪神調剤薬局
455
218
ファーマライズホールディングス
10
367
228
11
たんぽぽ薬局
366
115
12
フロンティア
321
140
13
ファーコス
319
194
14
薬樹
299
148
15
メディカル一光
213
91
16
エスマイル
178
120
ファルコファーマシーズ
17
177
106
18
ファーマシィ
167
77
アポロメディカルホールディングス
19
161
92
20
ミック
141
113
(出所)ドラッグマガジン、2015年7月号
ネットワーク加盟と自前薬局は経営の両輪
薬局の役割も単なる薬の処方だけではなく、予防、医療、介護までを含めて新しいサー
ビスのあり方を工夫していく必要がある。
また、当社はネットワーク加盟店に対しては、薬剤師の研修も提供していく。社内の薬
剤師だけではなく、広く機会を提供して、人材の育成を通して連携の強化を図っていく。
2015 年 3 月期にココカラファインがネットワーク事業から抜けたセグメント利益への影
響はさほど大きくない。抜けた理由は、同業他社が計画した共同仕入れの仕組みに入って、
仕入れコストをより下げようとした。しかし、当社にとって、ネットワーク事業のコンペ
ティターというわけではないので、競合という点では心配する必要はない。
ネットワーク事業については、一段と強化していく。当社は医薬品受発注システムやレ
セコン(レセプトコンピュータシステム)、債権流動化サポート業務で独自の強みを有する
が、医療分野における IT 化を一段と促進していくことが求められる。サプライチェーンの
中で、新しいイノベーションを起こすことや、そのために他の企業とも連携していく。
加盟店を今後 2000~3000 件に増やす手立てとしては、当社のネットワークに加盟するメ
リットをよりはっきりさせていく必要がある。基本的には、システムベンダーとの連携を
強化していくことや、ジェネリックの仕入ネットワークを独自に作っていく方針である。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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日本の医薬品の市場は 10.2 兆円である。その内新薬が 9.4 兆円で、ジェネリックと言わ
れる後発品は 0.8 兆円である。ジェネリックは、新薬の特許が切れた後に同じ薬効のもの
を作るので、価格が安くなり、患者にとっても負担は軽くなる。こういったジェネリック
の指導も調剤薬局が担うことになるが、選ぶのは患者であり、高い薬の方が、収益性がよ
いのも明らかである。その薬局の受発注は全国でみるとまだ電話やファックスを利用して
いる方法が 4 割以上を占めており、ネットワークシステムの利用は遅れている。
沖中会長は調剤システムを担当し、秋野副社長が調剤薬局を担当している。ネットワー
クに加盟したいという薬局は大いに歓迎し、ネットワークに加盟している薬局でも当社と
経営を一体化したいというニーズもある。また、ネットワークに入るのではなく、直接当
社が M&A をする場合もある。
当社のネットワークが加盟店に役立つという点では、価格代行+決済代行+ファイナン
ス+在庫という機能がある。大量仕入れの中で価格が決まる。決済も速やかに進む。支払
いのサイトが通常は 3 カ月程度だが、当社は 2 カ月で対応する。流通在庫を減らすように
対応する、といったメリットがある。
メディカルモールに独自の強み
子会社である日本レーベンは、不動産の開発を手掛けている。サ高住(サービス付き高
齢者向け住宅)を手掛けるほか、薬局の不動産開発にも力を入れている。サ高住を単独で
拡大するよりも、それだけの資金があれば、サ高住とメディカルモール、薬局の開発を組
み合わせた新しい街づくりに力を入れている。
薬局の開発の中でもメディカルモールに力を入れ、348 店ほどある薬局のうち、70 店程
度がメディカルモール型である。メディカルモールとは、2 科以上のクリニック(医院)の前
に薬局を作るという一体型の医療施設開発でビル型が多い。
これは、ドクターが新たに開業したい場合に複数の診療科目を用意し、そこに薬局を併
設することで、集客力を高めることができ経営効率も上がる。立地をうまく考えることに
よって、患者サービスの向上にも結び付く。このメディカルモールについて、他社は不動
産業者に頼っているが、当社はグループで機動力を発揮し、実績を上げている。
サービス付き高齢者向け住宅ウィステリアの事業展開
ウィステリア清田は 6 月末で、75 戸に対して 9 割近い 65 戸が入居した。評判はよいので
2016 年 3 月期中にはほぼ満室となろう。当社第 2 号案件のウィステリア清田は、
「高齢者住
宅+医療モール+調剤薬局」+「病院」が一体となった再開発である。
JR札幌駅から 1km、北海道大学病院の近くにウィステリアN17 がある。これが第1号
である。64 室のサービス付き高齢者向け住宅である。有料老人ホームではないが、同様の
介護サービスを行うことのできる許可を北海道から受けている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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設立から 7 年を経ており、3 年目からはほぼ満室である。80 名が入居(1 室 1 名または 2
名)しており、平均年齢は 84 歳である。マンションの1階には内科循環器のクリニックと
調剤薬局(なの花薬局)がある。1室の広さは 65~73m2 と広く、リハビリのスペースも有し
ている。基本的に高級な施設である。
札幌市清田区の医療法人清田病院の前に当社として 2 棟目のサ高住となるウィステリア
清田を建設、2013 年 5 月から入居が始まった。札幌の清田病院の建て替えに伴い、その隣
に当社のウィステリアを作ることになった。1 棟目のウィステリアN17 が投資額 20 億円、
1 室のスペースも広めであったが、こちらは投資額 10 億円、1 人部屋タイプで 1 室が 25~
30m2 と標準的なものである。このサ高住は、家賃 7~8 万円と手頃である。75 戸のうち 65
戸を単身向けに作っている。
昭和 40 年代、50 年代の住宅、マンションも高齢化が進む中で、建て替え、住み替えが必
要になってきている。医療介護ゾーンにショッピングモールも組み合わせた新しいクラス
ターの形成も求められている。それに向けて、当社では、2012 年 10 月に開発の事業組織を
作って、担当常務のもと 20 名が活動を始めた。複合型医療・介護施設を計画している。但
し、投資をすべて自社で持つとバランスシートが重くなるので、土地は自社で購入すると
しても、建物については、オフバランスしてマネジメント業務のみを担当する方式とする。
基本的には、これ以上借入金を増やさずに事業展開していく方向である。
3.中期経営方針
調剤薬局のネットワークで圧倒的トップを目指す
今後の方向性
田尻社長は今後の経営環境を次のように認識している。2050 年をみると、日本の人口は
3300 万人ほど減少する一方で、65 歳以上の高齢者は 1200 万人ほど増加する。これに伴っ
て、医療から介護へという動きは加速する。調剤薬局の市場は、6 兆円から 8 兆円に増える
反面、今ある調剤薬局数 5.7 万件は 5.0 万件程度へ減少しよう。薬剤としてはジェネリッ
クが増加する一方で、中小薬局の統合は進んでいくという見方である。また、現在の動き
をみると医薬分業の比率も 80%へと、さらに高まりそうである。
その中にあって、当社の長期目標は 10 年後に、①医薬品サプライチェーンのキープレイ
ヤーとなり、流通の合理化に貢献すること、②調剤薬局のリーディングカンパニーとして、
ネットワークを活かして圧倒的業界№1になることである。
ネットワークの強化に向け 2 つの業務提携~芙蓉総合リースとEMシステムズ(EMS)
医薬品ネットワーク事業は、サプライチェーンの強化に向けて、2 つの手を打った。1 つ
は、芙蓉総合リースによって、新規に加盟する薬局の仕入れ代金の支払い条件が従来の 3
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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カ月から 2 カ月になっても、立て替え払いのファイナンスサービスが提供されることによ
って、資金繰り面で加盟しやすくなった。
また、EMシステムズ(EMS、コード 4820)との業務提携で、EMS のレセコンを使っている
薬局に対する営業アプローチがやりやすくなった。EMS は、同社のレセコンを使っている薬
局がかかえている不動在庫(デットストック)を、当社のネットワークシステムを使って、
互いに融通し合い、在庫削減に結び付けることができる。これは薬局のメリットと同時に、
EMS のサービス強化にもなる。同社は全国でトップレベルのシェア 30%強(1.6 万台)を有
する EMS のレセコンユーザー(薬局)に対して、加盟の促進に向けて営業ができるように
なる。
現在の加盟店が 1255 店、これを 3 カ年で 2200 店に伸ばすという計画もかなり順調に進
もう。さらにその先をみると、3000 件~5000 件というターゲットがみえてくるかもしれな
い。調剤ネットワークの加盟店の数が大幅に増加することが期待できる。その意味におい
て、今回の連携は大きな意味をもつ。ここが当社の差別化のコアであるから、この事業の
伸びしろが大きく広がるという点は大いに注目できよう。
デッドストックエクスチェンジサービス(不動在庫消化サービス)
EMS のユーザーに向けた「デッドストックエクスチェンジサービス」は、不動在庫消化サ
ービスである。つまり、各薬局にあって、期限切れで廃棄せざるをえない薬を早めに相互
にやり取りして、うまく使おうというものである。
EMS はこのサービスで新規ユーザーの獲得に力を入れることになろう。当社は、廃棄を減
らすというサービスはもともとやっていたので、これを機に EMS のユーザーに当社のネッ
トワークに加入してもらうことをプロモートする。双方にメリットがあるので、ウィンウ
ィンの関係になりうる。デッドストックがどのくらいあるかは薬局の店舗によって異なる
が、業界では売上高比 0.2%程度といわれる。これが活用されると業界全体では 1000~2000
億円の効果を生むことにもなる。
ネットワークの手数料は平均 1.3%程度である。1 店の年商が 1 億円とすれば年間で 130
万円ほど入ってくる。1000 件増えれば、13 億円の収入増となる計算である。
調剤薬局の薬樹と業務提携
6 月に、神奈川を本拠地とする調剤薬局、薬樹と業務提携した。薬樹は神奈川を中心に首
都圏に 150 の薬局を展開する。地元密着で質も高い。薬局の人材を育てる、地域医療を支
える、という点で双方のトップマネジメントの息が合った。当社のネットワークシステム
を活用するという面よりも、互いの教育研修システムを学ぶというところに主眼がある。
災害時における相互協力体制というのもユニークである。大事なことは、経営理念が共有
できるという点にあろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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第四次中期経営計画
地域包括ケアでは、看護、介護、調剤薬局がバラバラではなく、その機能を集約して連
携できるようにするのが望ましい。病院の建て替えの時に、介護やリハビリ、薬局、サ高
住などをまとめて立地していくことは有効である、在宅医療のための核に薬局がなってい
くことも便利である。どのようなコアを作りながら、業界が再編されていくか。その中で、
当社は一定の役割を果たすべく先手を打とうとしている。
基本方針として、地域医療を支えるために、ネットワークサービス、コミュニティケア
機能、コストコントロールにしっかり力を入れる。
第四次中期経営計画の骨子
(2016.3期~2018.3期)
テーマ
*地域医療を支える企業
*医薬品ネットワークの拡大
*「未病・予防-医療-介護」の地域薬局機能の充実
重点施策
1.医薬品ネットワークの拡大
・中小薬局への営業強化と新規サービス提供による加盟店の拡大
・芙蓉総合リースとの戦略的包括提携による新規加盟店向け「医薬品仕入れ代金立替払いサービス
(支払短期化に伴うファイナンスサービス)
・EMシステムズとの業務提携による営業チャネルの拡大
(EMシステムズのレセコンユーザー1.6万件に対して不用な医薬品の在庫消化サービスを開始)
2.「なの花スタンダード」の深化
・医療、安全、接遇、服薬指導、在宅、待ち時間短縮を一層促進
3.地域包括ケアシステムに対応した次世代モデル薬局の開発
・地域包括ケアシステムの5本柱(医療、介護、予防、住まい、生活支援)のうち、医療、介護、予防
(コミュニティケア機能)の付加と充実
4.調剤薬局のM&Aの推進
5.SMO事業の立て直し
6.業務の徹底的な効率化
7.財務健全性の確保
・芙蓉総合リースとの協業によるサ高住、メディカルモール等への不動産リーススキームの導入
・これによるバランスシートへの負荷の軽減
今回の第四次中期計画では、ネットワークの加盟店を大幅に増やすビジネスモデルが可
能となった。芙蓉総合リースと組んだ薬局向けファイナンスサービスと EMS と組んだ彼ら
の薬局ネットワークの活用が期待できるからである。ここからが勝負という見方ができる。
ネットワークでは、EMS のデッドストックエクスチェンジサービスが起爆剤となって、加
盟店が加速的に増えてこよう。薬局では、在宅サービスを全ての店舗で行えるようにする。
コミュニティケアとは、医療、介護、予防の 3 つの機能をサポートすることである。千里
と小樽のサ高住は、不動産リーススキームの導入で投資負担が軽減される見込みである。
SMO(治験施設支援)では、綜合臨床ホールディングス(コード 2399)と業務提携して、新規
案件の獲得と事業の効率化を目指す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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この中期計画の KPI はネットワーク加盟 2200 件以上、自社調剤薬局 500 店以上、売上高
1050 億円、売上高経常利益率 3.6%以上である。営業利益 40 億円(2015 年 3 月期 26.4 億
円)を目標にしているが、これに対する利益貢献では、ネットワーク事業で+6 億円、調剤
薬局で+6 億円と、丁度半々の寄与を見込んでいる。
その先の見通しとして、経常利益 50 億円は売上高が 1200 億円になってくれれば十分達
成できるので、4~5 年後にはこの水準にのってこよう。
中期計画のKPI(重要経営指標)
(件、億円、%)
2016.3
・・・
2018.3
(会社予想)
(会社計画)
1485
2200
400
500
医薬品ネットワーク加盟件数
地域薬局店舗数
2015.3
(実績)
1200
345
売上高
医薬品ネットワーク事業
調剤薬局事業
755
28
717
853
30
803
1050
36
995
営業利益
医薬品ネットワーク事業
調剤薬局事業
26
15
24
30
17
26
40
22
30
経常利益
25
29
売上高経常利益率
3.4
3.4
当期純利益
9
10
(注)セグメントの営業利益は全社的一般管理費前ベース。
38
3.6
15
薬価改定の合理性を追求
2014 年 4 月の薬価改定は、全体の医療費を抑えながら、医療サービスの質を上げる方向
に沿ったものであった。大病院の前に薬局を構えて、効率よく集客するという経営につい
ては、調剤報酬がより大きく引き下げられた。一方で、在宅や介護を重視する方向で、こ
こにはインセンティブが与えられた。在宅重視という点で、当社は 2~3 年先行してきたの
で、これを活かして加算をとっている。
2012 年 4 月に薬価改定があったが、それに伴う取引価格が卸と調剤薬局でなかなか妥決
しなかった。いつもなら 1 年かけて交渉し、3 月期末までには決まるのであるが、この時は
2 年目の 2 月までかかった。ビジネスにおいて、最も大事な価格が 1 年を経ても決まらない
というのは異常であった。
なぜ価格が決まらなかったのか。卸との交渉において、どの程度の価格が妥当なのか、
基準、根拠がはっきりしていないからである。価格は交渉事であるが、単に力の強い方が
いい値を通すという戦いではない。サプライチェーンの中で、何らかの基準について合意
できなければ価格は決まらない。その仕組みをきちんと作ろうというのが、田尻社長の創
業来の考えである。本来なら、薬価改定があったら、すぐに新しい価格が決まるのがある
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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べき姿であろう。
2 年越しで続いた前回の薬価改定に伴う卸との取引価格交渉は、2014 年 2~3 月に決着し
た。そして、2014 年 4 月から新たな薬価改定に伴う卸との取引価格交渉がスタートした。2
年に 1 度の改定である。消費税の増税もあったので、それを加味して名目と実質が決まっ
た。消費税+3%、薬価の実質引き下げ平均-5.7%を、医薬品の卸と調剤薬局で応分に負担
する。いつもと同じパターンのやりとりであった。
2014 年 4 月の薬価改定では 2 つの変化があった。1 つは、実質的に卸との価格交渉に期
限がついたことである。2014 年 9 月までに卸と調剤薬局サイドで取引価格が妥結しない場
合には、国がペナルティを課すことになった。妥結率の低い調剤薬局の調剤報酬が減額さ
れるという仕組みである。よって、9 月までには取引価格を決める方が得策である。いつま
でも価格が決まらず、仮の薬価で決算を行っていくのは望ましくないので、このような方
策がとられることとなった。
もう 1 つの変化は、大きな病院の前にある薬局(いわゆる門前薬局)で、処方箋受付回
数が 2500 回超で、1 つの病院に 90%超依存している薬局の調剤報酬は低く見積もられると
いう仕組みが導入されることになった。門前薬局で大きく稼いでいる大手調剤には、相対
的に厳しい影響が出てくる。地域密着の薬局を推進しようという流れに沿った施策の現れ
である。当社にとっては、この影響は相対的に低かった。
医薬品加盟件数と発注取扱高
2008.9
2009.9
2010.9
2011.9
2012.3
2013.3
2014.3
2015.3
加盟件数(件)
499
545
597
740
854
1033
1163
1200
医薬品発注高(億円)
398
474
537
704
830 *
948
1124
977
(注)*:6カ月を年率換算、2015.3は一部大口先の脱退で減少
ネットワークへの加盟は拡大傾向
価格の決め方について、当社は積極的な提案を行ってきた。薬価改定後の卸と薬局と値
決めについて、後決め、仮価格によるビジネス慣行を改め、妥当な方式によって価格がは
っきり分るようにしようというものである。ここがはっきりしてくれば、当社の医薬品ネ
ットワークへの加盟がさらに拡大してこよう。
ネットワーク加盟店について、最近は大口の引き合いも増えている。当社のネットワー
クの知名度が上がり、信頼も増してきていることによる。医薬品取扱高の増加につれて、
価格交渉におけるリーダーシップをとって、業界の流通改善に寄与することができるよう
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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になろう。単に大量仕入れをテコに、卸に対して値引きを要求するという構図ではない。
適正な価格をスピーディに決めて、互いの無駄を省こうという考えである。
医薬品のサプライチェーンの中で、さまざまな参入や再編が起きている。大手商社の医
薬品流通への参入、医薬品卸の調剤薬局の系列化、調剤薬局間の M&A、調剤薬局とドラッグ
ストアの提携など、いろいろなパターンがみられる。重要なことは、顧客のために役立っ
ているか、その方針にそって流通合理化で収益性が高まっているか、ということである。
この点でみると、調剤薬局を囲い込むというだけでは不十分で、ネットワークシステム
を強く築けるかどうかが重要である。その点で、当社はユニークな戦略を展開している。
高齢化時代の都市の再生
地域医療の立て直しが必要になっている。同時に福祉施設の充実も求められ、生活者と
しての街の機能も大切である。行政と民間の力をうまく合わせて、複合施設を開発してい
くことが、社会インフラ作りのイノベーションとしてビジネスになる。
当社は北海道からスタートしているので、札幌では知名度も基盤もある。病院の近くに
高齢者住宅と薬局と医療モールを複合的に開発するという計画がいくつか動き出している。
医療モールのプラン自体は既に一般的であるが、病院、クリニック、薬局、高齢者住宅を
含めたまちづくりで、独自のモデルを作ろうとしている。
小樽では、デパートとホテルが経営的に行き詰まった場所を 2 年半かけて再開発してき
た。サ高住は 2015 年 12 月にスタートする。また、大阪の千里中央では、東京海上のデー
タバックアップセンター跡地を取得して再開発しようというものである。2016 年 4 月にス
タート予定である。
札幌で画期的な複合型医療モールプロジェクトを開始
サ高住については、ウィステリア清田は 75 戸中入居が 65 戸となった。BEP(損益分岐点)
は超えている。ウィステリア小樽稲穂は 12 月から入居を開始する。81 戸で平均賃料は 7 万
円である。ウィステリア千里中央は 2016 年 4 月に入居開始予定である。この新規の 2 つは
流動化し、芙蓉総合リースに所有を移して当社はマネジメントのみを担う予定である。フ
ァイナンスリースにならないように、期間を長期化、買い戻し条件などもつけない。
札幌の中心地の案件については、計画を練り直しており、順調に行っても 3 年後となろ
う。建設費が 1.5 倍に上がっているので、開発内容を再検討している。新しいビジネスモ
デル作りが進んでいる。従来の大病院前に薬局を作るという方式から、医療モール、メデ
ィカルビルに展開しているが、さらにその次の形として、医療+福祉+まちづくりを推進
している。具体的には、高齢者住宅と医療モールと調剤薬局を複合的に組み合わせた再開
発である。札幌の中心地でそれを具体化する。
この場所は札幌市の中心部にあり、徒歩 5 分圏に札幌医科大学を含む総合病院 4 つ、医
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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院が 20 ほどある集積地である。ここに、医療、介護、見守り・配膳・買い物などの生活支
援サービス、バリアフリー高齢者住宅を含めた「地域包括ケアシステム」
(厚生労働省、国
土交通省提唱)を実現しようというプロジェクトである。
当社では、
「医療と福祉が一体となったまちづくり」と称している。この地域は病院の銀
座通りであるが、190 万人の札幌市民にとって、どこの病院も混み合っている状態にあり、
新しい医療モールを作っても十分ビジネスとして成り立つ地域である。この地域の調剤薬
局のトップクラスは、年商 10 億円(通常の薬局は 2 億円レベル)に達する。
日本レーベン(100%子会社)が札幌市から複合型医療・介護施設の建設用地を取得した。
日本レーベンは医療モール作りで培われたノウハウと実績を有しており、それが認められ
た。このプロジェクトへの入札(コンペ)で、同業他社に勝った。13 億円で土地を購入し、
ここの医療開発をリードする。
今後の展開に当っては、まちづくりの建物については、自ら投資するのではなく、当社
はそれを 1 棟借りして、運営に当るという方式をとる。そうすれば固定投資の負担が重く
なって、バランスシートの有利子負債が重くなるという点を回避できる。
サービス付高齢者向け住宅
~サ高住+医療モール+調剤薬局+病院~
開設
ウィステリアN17
投資額 サ高住
(戸数)
2007.12
20
64
サ高住
(賃料)
25
診療所
ウィステリア清田
2014.5
10
75
8
○
ウィステリア小樽稲穂 2015.12
17
81
7
ウィステリア千里中央 2016.4
35
84
15
○
○
(億円、戸、万円/戸)
急性期 調剤
介護
病院
薬局 事務所
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
(注)投資額は全体を含む。○は有。賃料は月額。
サ高住の建物はオフバランス化
サ高住など広い意味での介護施設の M&A 案件はいろいろあるが、当社にはなかなか合わ
ない。そこに生活する人々の居心地は、建物というハードとサービスというソフトに依存
する。建物自身が、当社が考えるサービスに合わない場合が多いと田尻社長はいう。それ
ならば、自分達で作った方がよいのではないかという考えである。
大阪の千里中央で新しいサ高住の建設が進んでいる。14 階建てのビルの1~9 階が病院、
10~14 階がサ高住である。総投資額 35 億円、84 戸の予定で家賃は月額 15 万円程度からと
なろう。医療は純幸会、介護は日本レーベンが担う。この病院は救急が 3000 件と大阪で 2
番目に多い急性期病院である。
サ高住のオフバランスについては、オペレーティングリースをベースについて考えてい
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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くことになろう。当社の売上高の見込みは変わらないが、金利や償却負担がなくなるかわ
りにリース料が発生し、資産もバランスシートに載らない。投資利回りは低下するが、初
期負担が軽減され、バランスシート上長期負債が軽くなるので、財務上の健全化も図れる。
リースの活用が具体化、芙蓉総合リースと戦略的包括提携
今年 1 月に芙蓉総合リースと戦略的包括提携を結んだ。
業務面では通常のリース以外に、
2 つの戦略的内容を含む。1 つは、医薬品ネットワークに加盟する調剤薬局の加入時ファイ
ナンスをサポートする。これまで新規加入先は、医薬品仕入代金を 3 ヶ月サイトで支払っ
ていた場合、支払サイトを 2 ヶ月に短縮するために、新たな資金が必要となるケースがあ
った。このため、加入月の医薬品仕入代金を芙蓉総合リースが当社へ一括立替払いを行い、
加盟先は最長 60 回の分割払いで芙蓉総合リースへ返済、分割手数料は当社が負担する。こ
のサポートにより、当社のネットワークに加盟する薬局が年 100 店ペースで従来よりも上
乗せすることができる。芙蓉総合リースにとっても新しいビジネスとして収益機会となる。
もう 1 つは、サ高住及びメディカルモール等の不動産リーススキームの開発である。当
社にとってはサ高住を重要なビジネスと位置付けており、強みも有する。しかし、土地建
物を自前で所有すると、そのファイナンスには財務上限界がある。
このリースをファイナンスリースではなく、オペレーティングリースになる仕組みとし
て連携する。そうなると、当社のバランスシートには載らないので、サ高住の投資をオフ
バランス化でき、当社は賃料(リース料)を支払えばよい。費用も均等化できる。
MSNWのバランスシート
(百万円、%)
2009.9
2010.9
2011.9
2012.3
2013.3
2014.3
2015.3
流動資産
7238
8071
7786
8901
8271
10941
11023
現預金
1532
1792
1329
2072
2091
3106
2499
売掛金
2496
2803
2238
2596
1513
2801
3125
商品
1312
1497
1710
1735
2150
2650
3764
固定資産
12458
14411
16747
17700
22518
32172
34564
有形固定資産
5835
6752
9162
9975
11471
15975
17249
のれん
4630
5099
4900
4968
8176
12253
13214
投資等
1864
2448
2601
2684
2783
3797
3759
資産合計
19696
22482
24533
26602
30789
43114
45587
負債
16403
18184
19270
20923
24553
37761
39451
買掛金
3980
4595
5026
5158
5615
7798
8598
短期借入金
1540
845
1099
2405
3015
10270
5895
長期借入金
6955
8043
7364
5921
7510
9669
14201
純資産
3293
4297
5263
5679
6236
5352
6135
有利子負債
8525
9138
8663
9480
12193
22011
22743
有利子負債比率
43.3
40.6
35.3
35.6
39.6
51.1
49.9
自己資本比率
15.3
17.7
19.9
19.7
18.8
11.9
12.7
(注)2014.3期はM&Aでのれんが増加。三井物産との合弁解消で、自己株式が増加し純資産が減少。
TMSの買収で、資産負債とも増加。2015.3期は短借から長借へシフト。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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小樽、千里の新規案件から新しいリースのスキームがスタートしよう。サ高住のセグメ
ント利益率は、オペレーティングリースを利用して、オフバランス化を図るとある程度低
下するが、新しい社会インフラを作りつつ調剤薬局とのシナジーを出していくビジネスモ
デルなので、複合的に考えていく必要があろう。これで設備投資は調剤薬局の新規出店と
M&A が中心となる。サ高住の新規投資がリース契約となれば、初期投資額は大幅に軽減され、
財務体質の悪化が制約となる可能性も低下する。
調剤の新規出店は 10 店程度、M&A で 30~50 店程度となろう。投資額としては有形固定資
産で 10~15 億円、M&A で 15~30 億円という水準であろう。M&A については中小もベースに
するが、大型の案件についても機会があれば検討していく方向である。
MSNWのキャッシュ・フロー
2011.9
営業キャッシュ・フロー
3352
税引後当期純利益
1184
減価償却
633
のれん償却
337
投資キャッシュ・フロー
-2746
有形固定資産取得
-2487
子会社株式の取得
-220
フリー・キャッシュ・フロー
606
財務キャッシュ・フロー
-1069
長短借入金
-504
配当金
-116
自己株式の取得・処分
0
株式の発行
0
現金・同等物の期末残高
1314
(注)2012.3期は6カ月決算
2012.3
1565
648
353
177
-1247
-804
-43
318
425
829
-161
0
0
2058
2013.3
3790
840
840
487
-5425
-1624
-3543
-1635
1654
2581
-200
-129
0
2077
2014.3
3706
754
1076
669
-7559
-4180
-4179
-3853
4863
7055
-199
-1155
0
3088
(百万円)
2015.3 2016.3 (予) 2017.3 (予)
3838
3350
3250
1170
1200
1100
1209
1300
1300
849
850
850
-3958
-3000
-2500
-2360
-1500
-1000
-1626
-1500
-1500
-120
350
750
-483
-385
-500
481
-3000
-280
-190
-200
-220
0
1005
0
0
1810
0
2485
2630
2880
ファイナンスで財務体質は改善、希薄化は十分カバーできる見込み
6~7 月に実施したファイナンスでは 28 億円を調達し、これまでの M&A と今後の設備資金
への対応しつつ、財務体質の強化を図った。公募増資と第三者割当増資の中で、自己株式
の処分も行った。合弁解消で三井物産から買い取っていた自社株についても、今回のファ
イナンスの中で、処理できた。第三者割当では、綜合臨床ホールディングスへ 2.7%、芙蓉
総合リースへ 0.9%、その他りそな銀行、福岡銀行、北陸銀行と、ネットワーク事業におけ
る顧客紹介先を対象とした。
今回のファイナンスで、自己資本比率は前期末の 12.7%から、1Q 末(2015 年 6 月末)に
は 19.1%へ上昇した。基本的な方向として、自己資本比率は 25~30%に上げることを目標と
しているが、それに一歩近づいた。
発行済株式総数 2597 万株に対して、公募 336 万株、第三者割当自己株式の処分 170 万株
等によって、増資後の株式数は 2989 万株となった。ダイリューション(希薄化)は 25.1%
なる。発行価格は 488 円であった。ダイリューションを克服して、どこまで業績を上げら
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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れるかがポイントであるが、業績は十分伸ばせよう。
綜合臨床ホールディングスと資本業務提携
綜合臨床ホールディングス(コード 2399)とは、株式の相互持合になり、当社が先方の
2.5%を保有し、資本業務提携という形になった。これは、SMO(治験施設支援機関)の有力
企業である綜合臨床 HD と当社の子会社であるエスエムオーメディシス(SMO メディシス)
の連携を強化する。当社は北海道の病院とのつながりは強いが SMO の案件が少ない。綜合
臨床 HD は、SMO の案件はあるので、治験を実施する有力病院を強化できる。これでシナジ
ーが出せることになる。
4.当面の業績
買収効果も上乗せとなり、2016 年 3 月期もピーク利益を更新へ
2015 年 3 月期は大幅増益を達成
2015 年 3 月期は、売上高 75548 百万円(前年度比+14.2%)
、営業利益 2641 百万円(同+
26.3%)
、経常利益 2540 百万円(同+25.8%)、当期純利益 885 百万円(同+32.5%)とな
った。業績は好調であった。2014 年 4 月の調剤報酬の改定は厳しいものであったが、その
前の 2 年間に取り組んできた薬価改定への対応が医薬品卸との間でスムーズに進んだこと
による。また、買収後の収益改善が思わしくなかった関東、東海、関西の主要な会社がこ
こにきて成果をあげてきたことも貢献している。
ジェネリックの体制加算をとって、調剤薬局の収益に結びつけるという方針は先行して
手掛けてきたので、かなりの成果を上げている。薬局の既存店は+1.7%と順調であった。
ジェネリックの利用を促進して加点をもらう体制加算も利益に貢献している。
調剤薬局の売上内訳 (%)
内 訳
2014.3期
(伸び率) (既存店伸び率) 内 容
2015.3期
(伸び率) (既存店伸び率)
処方箋枚数(万枚) a
内 容
606.1 (+15.4)
(+0.6)
690.9
(+14.0)
(+0.7)
処方箋単価〈円/枚) b
技術料
薬剤収入
9831
2256
7576
(+5.5)
(+2.0)
(+6.6)
9809
2272
7537
(-0.2)
(+0.7)
(-0.5)
(+1.0)
(+1.2)
(+1.0)
(+6.1)
71743
67780
3963
(+13.9)
(+13.8)
(+15.8)
(+1.7)
(+5.1)
(+2.3)
(+6.0)
売上高(百万円)
63006 (+19.8)
調剤売上 a×b
59585 (+21.3)
その他
3421 (-1.5)
(注)伸び率は前年度比全店ベース。
2016 年 3 月期の 1Q は大幅増益
2016 年 3 月期の 1Q は、売上高 21303 百万円(前年同期比+19.9%)
、営業利益 902 百万円
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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(同+241.8%)
、経常利益 832 百万円(同+269.2%)
、当期純利益 408 百万円(同+464.2%)
と好調であった。
前年度が低調であったので、伸び率が高く出ているという面もあるが、予算と比べても
上回っている。これは、調剤薬局の既存店が前期比+7.1%と予算想定を大きく上回ってい
ることによる。処方箋枚数が+1.2%、処方箋単価が+5.9%(うち薬剤料+6.2%、技術料+
4.8%)と処方箋単価のアップがきいている。
また、予算には入っていたが、賃貸・設備関連事業で、販売用不動産(医療モール)を 1
件売却した。北海道の手稲に所有しており、クリニック4科と薬局が入っていたが、不動
産を持つ必要はないということで、売却した。この売却益が 242 百万円ほど入っている。
セグメント別にみると、ネットワーク事業は 1Q の増加が+49 件とややピッチが遅いが、
年間で 285 件という目標は達成できよう。調剤薬局は既存店が好調で、在宅処方箋、月間 2
万枚の目標に対して、1.8 万枚近くまできている。
セグメント別業績予想
2014.3
2015.3
2016.3
(予)
2017.3
(予)
医薬品等ネットワーク事業
売上高
2843
2814
3100
3500
営業利益
1475
1549
1700
1900
同利益率
51.9
55.1
54.8
54.2
調剤薬局事業
売上高
63006
71743
80000
83000
営業利益
1840
2377
2820
2890
同利益率
2.9
3.3
3.5
3.5
賃貸・設備関連事業
売上高
1317
1517
2300
2800
営業利益
-39
25
300
-140
同利益率
-2.9
1.7
13.0
-5.0
給食事業
売上高
607
1932
2200
2400
営業利益
-12
-13
-40
0
同利益率
-2.0
-0.7
-1.8
0.0
その他事業
売上高
407
182
200
300
営業利益
10
-76
-50
20
同利益率
2.5
-41.8
-25.0
6.7
売上高
66181
75548
85000
89000
営業利益
2091
2641
3400
3300
営業利益率
3.2
3.5
4.0
3.7
経常利益
2019
2540
3300
3200
経常利益率
3.1
3.4
3.9
3.6
当期純利益
668
885
1200
1100
(注)給食事業はTMS買収に伴い、2014年3月期3Qより加わる。(予)はアナリスト予想。
(百万円、%)
4~5年後の
業績イメージ
5000
2500
50.0
120000
4200
3.5
4000
200
5.0
2500
20
0.8
500
20
4.0
127000
5000
3.9
4800
3.8
1700
2016 年 3 月期も引き続きピーク利益更新へ
調剤薬局の既存店の好調さは、当分続くので、今期の業績は当初計画を上回ることにな
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ろう。調剤薬局の M&A は現在やや抑えている。価格が上がっているので、無理をする必要
がないとみている。その分売上がやや未達となる可能性もあるが、業績にはさほど影響は
でないとみてよい。
今 2016 年 3 月期についての会社計画は、売上高 85353 百万円(前年度比+13.0%)
、営
業利益 3036 百万円(同+14.9%)
、経常利益 2900 百万円(同+14.2%)、当期純利益は 1030
百万円(同+16.3%)である。これは十分達成でき、かなり上回ることになろう。
ネットワークは 1485 件(+285 件)を目指す。薬局の出店は自前で 10 店、M&A で 50 店
の計 60 店を予定する。SMO は黒字化を図り、サ高住のオフバラ(オフバランス化)も行う。
給食はまだ赤字だが黒字化を目指す。
薬価改定がない年なので、調剤薬局事業については、処方箋枚数の伸びや技術料などに
よる単価の上昇、後発医薬品の体制加算などの経営努力が寄与する。調剤の新規出店は無
理をせず、新しい業態との連携も含めて 10 店程度。M&A には力を入れていくので、この部
分の上乗せの方が大きい。
調剤薬局のセグメント利益について、M&A に伴う関連費用は、今期から経費としてその期
で処理するように会計方針が変更になった。2 億円前後はそうした影響を含んでいる。
配当については、配当性向 20%程度とし、前期の 8.0 円から 9.0 円への増配を予定して
いる。配当性向は 20%を目途としているので、業績が拡大すればさらに増配も見込めよう。
2016 年 4 月の薬価改定の行方
2016 年 4 月の薬価改定がどうなるか、2014 年 4 月のように国の政策によって、9 月まで
に価格交渉を妥決できるようになれば、期間としてはスムーズに運ぶ。ただ、当社が主張
するような合理的な値決めになるのはまだ難しい。配送回数を減らすことや返品を減らす
ことによる物流費などを考えた単品ごとの価格決めというレベルには至っていない。ジェ
ネリックメーカーが卸を通さない直接配送も徐々にではあるが増えている。そうなると卸
の機能が相対的に低下するので、彼らの業績にも影響してくる。せめぎ合いは続くとして
も、前回の価格交渉がベースとなろう。
2017 年 3 月期については、薬価改定があるので、これがスムーズに展開するかどうかが
ポイントである。前回で卸とのルール作りはできているので、それが改めてうまく機能す
るかどうかが問われる。順調にいけば、前回並みの厳しい改定(6%の引き下げ)になった
としても、会社全体としては、かなり吸収していくことができよう。
ネットワーク事業は順調に拡大しよう。今期にあった不動産売却益はなくなるので、こ
の分は減少する。サ高住の新規立ち上げも当初は赤字なので、負担が出る。これらを勘案
すると、業績は横這い圏に留まろうが、経常利益で 32 億円(前年度比-3%)は確保でき
よう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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5.企業評価
EMシステムズ、芙蓉総合リースとの連携効果に注目
ネットワーク事業の拡大に期待
中期的な業績の見方については、売上高で 1000 億円、営業利益で 40 億円台は十分射程
内にある。その先の見通しとして、経常利益 50 億円は売上高が 1200 億円になってくれれ
ば十分達成できるので、4~5 年後にはこの水準にのってこよう。
ネットワーク事業は、加盟店 2000~3000 店に向けて引き続き拡大が見込める。ここは高
収益で、当社の独自性を最も発揮するところである。ここで、売上高 50 億円、営業利益 25
億円は達成できよう。調剤薬局は M&A を入れて、1000 億円を超える規模は狙っていける。
ネットワーク事業を活かした薬の仕入れコストと調達の安定化、サ高住ビジネスの拡大
による薬局事業との連携など、シナジー効果も十分見込めよう。全体として、売上高営業
利益率で 4%台を確保できるかどうかが次の課題である。
田尻社長は、調剤薬局のサプライチェーンを効率化するというテーマに長年取り組んで
きたが、ここにきて、ようやく足並みが揃う兆しがある。医薬品の取扱額で業界トップク
ラスになってきたが、さらに効率化を図るべく新しいモデルを形成していくことに力を入
れていく。また、次世代を担う当社のマネジメント人材について、創業者の 3 人に続く人
材が育ってきていると、田尻社長は強調する。それが、M&A 案件で当社が先方からより信頼
される理由でもある。
調剤薬局向けレセコンで業界トップ(1.6 万件)の EMS と業務提携して、当社の「不動在庫
消化サービス」
(期限切れ前に不用な医薬品を互いに活用)が EMS 顧客でも使えるようにす
る。こうした連携を梃子に、加盟店を大幅に増やす可能性が高まろう。ネットワーク事業
は有望で、利益貢献はかなり期待できよう。
中小調剤薬局の収益性をどう改善するかが課題である。業界における調剤薬局 1 店当た
りの年商は平均で 1 億円規模である。当社は平均 2 億円であり、トップクラスの企業は 3
億円を超えている。中小の調剤薬局の M&A をするということは、相対的に効率の悪いとこ
ろを傘下に入れる可能性があるので、収益構造改革を行う必要がある。どのように効率を
高めていくか、という点で当社はすでに経験と実績を有している。低採算の M&A は実施し
ない方針であり、ネットワーク事業をもっていることが有利に展開できる余地も大きい。
調剤薬局の M&A とサービス付高齢者住宅(サ高住)への投資が、財務体質改善の制約とな
っていたが、課題であったサ高住のオフバランス化が、芙蓉総合リースとの戦略的包括提
携(不動産リーススキームの導入)で可能となる見込みである。これによって、過大な投資
負担を避けて事業が推進できるようになる。今後は加盟店の増加と共に、医薬品ネットワ
ーク事業のユニークさが注目されよう。
当社独自の強みを生かして、加盟店を 2000~3000 店へと拡大できそうであるが、その実
行戦略はもう少し見極める必要がある。激戦が続く調剤薬局業界で再編のコアとなって、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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業界トップを目指す田尻社長の経営戦略には期待が持てるが、そのためには、一定の努力
を要するので、企業レーティングはBとする。(企業レーティングについては表紙を参照)
株主数は 7000 名に増えている模様。現状では株主優待はやらない方針で、できるだけ配
当で報いていく考えである。株主数は一時 2000 人を切ったが、2012 年 4 月に続いて、同 6
月にも 1:2 の株式分割を行った。この 2 度の株式分割、J-ESOP の導入(2012 年 6 月に実施
した社員 1200 人への 1 単元株の株式給付)等の影響により、2015 年 3 月末の株主数は 5227
名となり、大幅に増加した。今回のファイナンスでさらに増加した模様である。
2016 年 3 月期の配当に関しては 9 円へ増配する。配当性向 20%程度を目途に、業績を見
ながら決めていく考えである。
8 月 13 日時点の株価(585 円)でみて、PBR が 1.97 倍、ROE が 13.3%、PER が 14.3 倍、配
当利回り 1.5%である。薬価改定と業務提携の成果を見る必要はあるが、業績が伸びていく
ことは十分見込めるので、それを反映して株価は今後とも見直されてくることになろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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