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平成18年度フィルム評価会報告
平成18年度フィルム評価会報告 結核予防会胸部検診対策委員会 精度管理部会委員長 (結核予防会複十字病院副院長) 尾形 英雄 1985年から始まって今回で22回目を迎えた精度 管理部会フィルム評価会は2006年12月21日,22日 の2日間,例年通り結核研究所講堂で開催されま した。全国支部から放射線技師・医師総勢90人が 参加し,6グループに分かれて予め各支部から提 出されていた間接撮影フィルム115本・アナログ直 接撮影フィルム95枚・デジタル直接撮影フィルム 48枚の画質評価を行いました。 ■今年度の評価成績とこれまでの成績 間接撮影フィルムは,A評価8%,B評価40%, C上評価47%,C中評価5%,C下評価0%で, 直接撮影フィルムは,A評価6%,B評価38%, C上評価54%,C中評価2%C下評価0%でした。 A評価は評価者が欠点を指摘できない模範的な写 真に与える評価なので,稀少価値があります。グ ラフの年次推移でわかるように評価会の発足時A 評価は間接撮影で7%・直接撮影で3%とわずか であったのが,10年ほどの経過で徐々に増加し一 時は15%を上回ったこともありました。しかし, その後徐々に減る傾向がみられ,今年は間接・直 接とも遂に10%を下回りました。一方Aほどでは ないが,読影医がストレスなく読めるB評価フィ ルムは,一貫して増加傾向にあり間接・直接とも 40%程度を占めるようになってきました。C上は 5段階評価の通知表でいえば3に相当する普通レ ベル評価で,発足当時を除けば,常に50%付近を 上下していてその頻度に変動はみられません。通 知表の2や1に相当し,読影に支障のあるとされ たC中・C下は一貫して減少傾向にあり,C下は このところみられません。 ■B・C評価の変動の要因 予防会の評価方法は,黒化度・コントラスト・ 鮮鋭度など10項目についての適否を評価表に書き 込むことで,瞬間的な印象による判断のブレを避 けてきました。またグループごとの甘辛と年度ご との甘辛を極力避けるため,初めに昨年評価済み のサンプルフィルム6枚をグループに分かれて評 価して,各グループのつけた評価点をみながら総 4 7/2007 複十字 No.316 合討議を行って均一の評価基準になるよう目合わ せを行っています。こうした工夫をしても完全に は年度ごとの甘辛を避けられませんが,22年間の 積み重ねがあるのでトレンドとして見えてくる変 化は,予防会の検診フィルムの精度を現している はずです。C中・C下評価がほぼなくなった要因 は,撮影機器の改善にあったと思います。評価会 発足当時には,高圧撮影できないX線装置を持つ 支部もあったので,いくら工夫しても充分な黒化 度をだせなかったと聞いています。フィルム評価 会の最大功績は,読影不能なフィルムを撮ってい た性能の悪いX線装置を各支部から一掃したこと にあったと思います。もう一つのトレンドである B評価の増加は,この延長上にあり,良いフィル ム作りに必要な使用フィルムと増感紙の適切な組 み合わせや,推奨される付加フィルター・グリッ ド・現像処理などの規格を明らかにしたので,少 し努力すればよい画像が提供できるようになった ためと考えられます。 ■A評価減少の意味 フィルムメーカーによるアナログフィルムの画 質を良くする試みは,ほぼ出尽くし既に完成の域 にある中で,近年A評価が減少してきていること を,どう考えればよいでしょうか。参加者の見る 目が厳しくなったのなら問題ないのですが,毎年 参加している複数のベテラン読影医から,目の覚 めるようなよい写真が減ったという声を聞きます。 これまでもA評価の写真を撮る支部は限られてい て,そこには必ず高い技術力を持つ熱心な放射線 技師がいました。予防会の胸部写真撮影技術の屋 台骨は,こうした放射線技師が支え,この技術力 を全国の支部に伝えることがフィルム評価会の最 大の目的だったはずです。しかし,その技術者が 定年を迎え現場から次々と離れたことが,A評価 減少の要因であるならば事態は深刻です。一般に 若い放射線技師の関心は,マルチスライスCT・ MRI・PETなどの新技術の習得に向いて,単純X 線撮影の技術習得には熱心ではないと聞くからで す。 ■今後のデジタル化への対応 胸部CT検診がいくらもてはやされても,医療費 や読影医の不足から胸部検診の主流にはならず, 今後も胸部検診は単純写真によって行われるはず です。予防会の胸部検診が今後も生き残るために は,検診の質を維持することが鍵となります。質 を保つためにはフィルムの精度管理が重要で,今 後もこのフィルム評価会を通して若い放射線技師 にベテランの技術を伝えることが必要です。ただ し間接写真フィルムは遠くない将来生産されなく なり,アナログ直接フィルムもいずれはその時期 を迎えるでしょう。これまでもフィルム評価会で は,デジタルフィルムの評価もしてきましたが, 今後デジタルフィルムの評価を強化して,フィル ムレス化している支部への対応も検討したいと思 います。 7/2007 複十字 No.316 5