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Page 1 Page 2 教育課程研究の視点から見る教育史 (1) ー1919〜25年

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Page 1 Page 2 教育課程研究の視点から見る教育史 (1) ー1919〜25年
\n
Title
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Citation
教育課程研究の視点から見る教育史(1) −1919∼25年にお
ける自由ヴァルドルフ学校の教育課程−
鈴木, そよ子; Suzuki, Soyoko
神奈川大学心理・教育研究論集, 31: 31-47
Date
2012-03-31
Type
Departmental Bulletin Paper
Rights
publisher
KANAGAWA University Repository
教育課程研究の視点か ら見る教育史 (1)
- 1919-25年 にお ける自由ヴ ァル ドル フ学校 の教育課程 -
鈴木そ よ子
それぞれの児童 ・生徒 がその成長過程 で,そ
は じめに
の子 自身の見かた,考 え方 を形成 できるための
カ リキュラムデザインの両極に 「
教科カ リキュ
知識 であるためには,知識 のつなが りがみ える
ラム」 と 「
経験カ リキュラム」 を置 きなが ら,
形や方法で教授 され ることが必要なのではない
この間に位 置す るカ リキュラムの類型化 は様 々
か。 この よ うな問題意識 を持 って教育課程研 究
な人物 によって提唱 され てきた。安彦忠彦氏は
を進 めていきたい。
「
『統合』 の方式,度合 いの違 いに
第一歩 と して,まず,小学校 か ら高等学校 ま
よる場合 が多い。」 1) と述 べ,研 究者 の共通点
でを見通 した うえで,上記 の教科カ リキュラム
をま とめ,一般 的な類型 として,教科カ リキュ
の問題点 を克服 できる教育課程構成 が可能 なの
類型 の軸 は
ラム,相 関カ リキュラム,融合 カ リキュラム,
か どうかを研究す る必要があ る。 その研 究方法
広域カ リキュラム, コア ・カ リキュラム,経験
の一つ として,教育史における学校 実践の中に,
カ リキュラムを挙げている。2)
検討対象 を見出 し,具体的に検討す る方法 をと
現代 日本 にお ける教育課程 は学習指導要領 を
る。
本 稿 で は , 自 由 ヴ ァル ドル フ 学 校
基準 として構成 されてお り,これが教科カ リキュ
(
di
e
ラムであるため,小学校 か ら高等学校 まで,敬
Frei
e Wal
dorfschule)4) の教育課程 につ いて
科 カ リキュラムが中心 となっている。
検討す る。 自由 グァル ドル フ学校 の教育課程 は,
この教科 カ リキュラムは,「
教科 ・科 目が,
1
91
9年 か ら2
5年 ま で に , R.シ ュ タイ ナ ー
相互 に独 立に組織,構成 され,並列的に配置 さ
(
Rudol
f Steiner) の指導 の も とで,個 々の教
れ ているもので,基本的に知識 の分類 に従 って
師たちの教育実践の中か ら教育課程 を積み上げ
い る。」3) そのためにあま りに相 互 に無 関係 で
てい った。5) それ が, 当時 の実践者 の一人 で
あ る C.
ハ イデ プ ラ ン トが ま とめ役 に な った
あ りす ぎるとい う問題点がある。
この よ うな学習の結果,た とえば,理科 ・生
『自由 ヴァル ドル フ学校 の教 育課程 につ いて』
物で 「
刺激 と動物 の反応 」 を学んで も,「
生命
(
"Vom Lehrpl
an der Frei
en l
V
al
dorfschule"
を維持す るはた らき」 を学んで も, 自分 自身の
1
9
2
5
)にま とめ られ ている。 この書 を資料 とし
営み と結びついていない。社会や政治経 済で衆
て 1学年 か ら1
2
学年 までの教育課程 における教
議院の優越性 について学んでも,現在起 こって
育内容構成 を検討す る。
いる国会 でのや り取 りは理解 できていない。社
自由 ヴァル ドル フ学校 の教育 についての理念
会の歴史分野や 日本史で江戸時代の一つひ とつ
や教育形態,時間割等の全体 的な検討 は,鈴木
の改革や,文化 を担 った一人ひ とり人物 の名前
そ よ子 「
草創期 自由 ヴァル ドル フ学校 にお ける
を覚 えるが,江戸時代像には結びついていない。
理念 と実践 -1
91
9-2
5
年の教育課程 を中心に -」
- 31-
神 奈川大学 心理 ・教 育研 究輪炎
第 31号 (
201
2年 3月 3L日)
(
鈴木 ,1
992) において詳 しく述べている。
図1 1
2
年間の領域 別教科 目
また, シュタイナーの教育思想 ,講演録 , 自
由 ヴァル ドル フ学校 の教育実践等について,今
1
日では多 くの書籍 が出版 されてい る 6)が,敬
3
2
4
5
67 8
9
1
01
11
2(
学年 )
言語領域
育課程 の展 開については, (
鈴木 , 1
992) が直
ド
接的な先行研究 であ り, 自由ヴァル ドル フ学校
イ
ツ
語
の教育課程 につ いての記述 は, (
鈴木 , 1
992)
文学
\
-ヽ
′
.
Jと 史
に負 ってい る。
l
英
語
なお ,1
91
9年 に創設 され た 自由 ヴァル ドル フ
と
フ ラ ンス語
ギ リシャ語 とラテ ン語
学校は,現在では600校 を超 え,世界 中に広がっ
てい る。本稿 で扱 う教育課程が, これ らの現在
の教育課程や実践 を示 しているわけではない こ
数
とも断わってお く。
薮 "--"/
領域
算
数
学
}
選
1. 自由ヴ ァル ドル フ学校教 育課程の基
択
享
幾何学 図形
本構成
自由 ヴ ァル ドル フ学 校 の教 育 課 程 は 112学 年 ま で , 8 - 1
0時 に 基 本 教 科 授 業
理科 .社会領
/幾
(
Haupt
unte
rrricht
)7) が置 かれ てお り, この
歴
何
史
学 …
画法幾 何学
と
圭郷 土 科
時間帯で指導 され る教科が①芸術 (
特に美術 ・
\
理
地
美学領域,②言語 (
国語)領域 ,③数領域,④
理科 ・社会領域 である。 1
0時以降の時間帯には,
物
音楽,オイ リュ トミー,体育,手工,手芸,園
化
理
学
芸な どの技術 ・体育 ・芸術領域の教科が続 く。
技 .芸術領域
1
-1
2学年 の各領域 の教科 目名 を図 1 「
1
2年 間
の領域別教科 目」に示す。
博
物
: 芸術 (
美学)
;色 彩 画 と線 画
担任 について触れ てお くと,基本教科授業は
音
l
一人のクラス担任 が 8年 間持 ちあが り,1
0時以
学
楽
オイリユトミー (トーンオイリユトミ
.
-.含)
降の授業は教科 日ごとの教科担任制で指導す る
l
ことが基本 にな っていた。8)
本稿 の添付資料 で ある, Cノ、イデプ ラン ト
l
体
育
手
芸
『自由 ヴァル ドル フ学校 の教育課程 について』
手
園
の抄訳 ・資料 1 「1
-1
2学年 の授 業 ・基本教科
の部」に もとづ きなが ら,①∼④ の各領域 につ
いて,他教科 との連 関を明確 に してい く。 引用
文はすべて添付資料 の当該学年 の当該教科 ・科
(
休操 .含)
[
重
奏
コ
芸l
芸l
「
う
麺コ
目についての記述か らの引用文であるため注記
を省略 している。
注 ・Ca
r
ol
i
neY
onHe
yde
br
and"Vom Le
hr
pl
an
de
rFr
e
i
e
nWal
dor
f
s
c
hul
e
"1
9
2
5に基 づ き、 鈴
木が作成 した。
-3
2-
教育課程研 究の視点か ら見 る教 育史 (】)- 1
91
9-25年 にお ける 自由 グァル ドル フ学校 の教育裸桂 一
芸術 的創 造力 がそ
が置かれ てい る。 そ して ,「
2.芸術領域
れ にふ さわ しい形で諸活動の 中に姿 を現す こと
図 1か らわか るよ うに 自由 ヴァル ドル フ学校
の教育課程 にお いて,芸術領域の教科のなかで
ができないな らば,個人 も人類 も十分 な意味で
健全 ではあ りえない とい う感 情 を育む。」
美術 ・美学だけが 8時か ら10時の時間帯の基本
この 9-1
2学年 の美学 で扱 われ る教材 で特 に
教科授業の 中に組み込まれ てい る。美術 ・美学
深い関係 を持 っているのが言語領域 の ドイ ツ語
が基本教科 と技術 ・体育 ・芸術諸教科の授業の
であ り,ゲーテをめぐる議論 との関わ りで,ジャ
共通基礎 となってい る。 そ して,基本教科 への
ン ・バ ウル の 『美学入門』 を扱 うが,その時,
導入 として も位 置づいている。
美学の初歩的問題 を扱 う。 そ して , 10学年 の美
この美術 ・美学の教育内容 と方法 を見てい く
学では,北方 ・南方 の芸術様 式の特徴 を示す例
と, 1- 3学年 , 4- 8学年, 9-1
2学年 の 3
として 『ェダ』 を教材 とす る。 この学年 の ドイ
段階に分かれている。
ツ語 では,文学の歴史的変遷 をた どる教材 とし
1- 3学年では,現色 を塗 り重ねてい く作業
て,また,詩が民族 に とって どの よ うな意義 を
(
色彩画)や 直線 ・曲線 ・円な どの基本 的 な形
もっているかを論 じる教材 と して用 い られ る。
態 を描 く作業 (
線画) を積み重ね る。 この作業
さらに,11
学年の美学では, 中世の騎士物語 で
か ら生 まれ る色彩感 覚や色彩体験 9) は,美術
ある 『パルチ フアル』のモチー フが,象徴的 一
の基礎 であると同時に, ノー トの積み重ねで教
古典的- ロマ ン的芸術史 を経 て,1
9世紀の終わ
科書 をつ くってい く基本教科授業の基礎 となる。
りには どの よ うに形成 され てい るか, とい う視
数領域の幾何学 は, 6学年 になって線画か ら分
点か ら扱われ る。 いわば,芸術 史の 中で 『パル
化 してい く。言語領域 の ドイ ツ語 では,彩 色さ
チ フアル』 を読む。 そ して,同 じ学年 の ドイ ツ
れた線画か ら文字 を作 り出 してい く。 そ して,
請 (
文学 と歴 史) では ,『パル チ フ アル』 のモ
理科 ・社会領域 の授業において も,板書 され る
チー フの変遷 を歴史的に辿 ることに よって,1
9
図をノー トに書 き写す際の基本的な力にな る。
世紀の世紀像 を描 き出す。
1- 3学年 の時期は,芸術的体験 を外か ら与え
1-1
2学年の美術 ・美学の教育課程構成 をま
るのではな く,子 どもの中か ら生み 出す時期 と
とめる と, 1- 3学年 では,子 ども自身 の活動
捉 えることがで きる。
か ら,美術的 ・芸術的基礎体験 を積み重ね る。
4- 8学年では,対象物の色彩 を観察 し,対
4- 8学年 では,芸術作品 と しての絵画 を描 く
象物 を模写す る段階に入 る。 この段階では,投
力 を付 ける。 9-1
2学年 では, これ までの芸術
影学 ・日陰学 ・遠近画法な どの絵画 の基本技術
的な体験 を基盤 としなが ら美学 を学ぶ。
1- 8学年の美術 ・美学は,他 の基本教科の
が指導 され る。 この段階では,技術的な もの と
美的な ものを対象の形態の中で結合 す ることが
教育内容 ・方法 と密接なっなが りを持 っている。
目指 され る。
また, 9-1
2
学年の美学で扱 われ る文学作品が,
一人ひ と りが書 きあげるノー トのなかに,美
術指導の成果 をみ るよ うな,美 しくしか も正確
ドイツ語 あるいは歴史の教材 と して同時 に活か
されている。
な動物のスケ ッチや実験装置の図 をみいだす こ
とがで きる。 この よ うに,基本教科 の中に も美
術の指導の成果 が生か されている。
3.数領域
数領域の教育課程 も, 1- 3学年 , 4- 8学
9-1
2学年 では,美学について学ぶ。美術,
詩学 ,音楽 ,建 築技術等 を介 しなが ら,「
芸術
午, 9-1
2学年 に 3区分す ることがで きる。
と魂 (
seel
e)」 の問題 を考察 す る こ とに主 眼
-3
3-
1- 3学年 では,整数 の範 囲内で,四則計算
神奈川大乍心理 ・教育研 究論炎 第 31号 (2012年 3ノ
」31日)
が 自由にできることが 目指 されている。そ して,
「
読む」について, 1学年 ではま とま った学
教育方法は,数 の導入 に際 して も,九九を記憶
習 をさせず 2 ・3学年 で,書 くことか ら読む こ
させ るに際 して も,子 どもの リズ ミカル な動 き
と-進 める。
を活用す ることを原則 とす る。 また,教育方法
1- 3学年 の 「
お話 ・再話 」は, 1学年 が童
の別の側面 では,初期 の算数教授方法 と倫理的
請, 2学年 が動物物語 ・寓話 , 3学年 が 旧約聖
思考方 法の関連性 を重視 して ,「
全体か ら部分
書である。
-」川) 計算 を進 める。
1 ・2学年 の教材 は,同学年 の郷土科教材 と
4- 8学年 では,算数 ・数学,幾何学 ともに,
実生活の数計算 ・手形勘定 ・図形線画な どの よ
関連 している。 また,教材 の一部 と して詩 を用
いることが この時期 の特徴 で もある。
うな,子 どもに とって具体的な ものや身近 な も
4- 8学年 では,手紙 ,文書作成,作文 を通
の との関わ りで,算数 ・数学,幾何学の基本 を
して書 く力 を養 う。 書類作成 のための材料 は,
学ぶ。
理科 ・社会領域の学習 内容が提供す る。
また,文法の学習 が 「
話 す 」「
書 く」 と融合
9- 12学年 では,数学,画法幾何学 と幾何
学図形 ともに専 門的な教育内容 をは じめるが,
した形で進 め られ る。 4学年 では時制 と前置詞,
同時に,その実用性 も理解 できるよ うな構成に
5学年 では能動態 と受動態,直接話法 , 6学年
なっている。た とえば,球面三角法に関連 して,
では接続 法, 7学年 では感嘆文 と希望文。 これ
天文学や航海術 の 3点が扱 われ,また,画法幾
らが 「
話す 」「
聞 く」力 を養 う一環 と して学習
何学は建築上の実際的応用 に至 るまで指導 され
され ることによって,単 に文 法学習 に とどまる
る。
ことな く,例 えば 5学年 の直接話法の扱 い方の
叙述 に も見 られ るよ うに,子 どもの内面形成 と
深 くかかわ った ものになっている。
4.言語領域 (ドイツ語)
8学年 には, これ までの ドイ ツ語学習の総括
ドイ ツ語 の教 育課程 も 1- 3学年, 4- 8学
午, 9- 12学年 に 3区分す ることができる。
として,また , 9学年以降の準備段階 と して,
長文の散文 ・韻文 を読む ことを中心 とす る。
1- 3学年 では,子 どもに とって とっつ きに
9- 1
2学年 では,ゲーテの作 品, ジャン ・バ
くい抽象的な文字 を徐 々に定着 させ てい くこと
ウル の 『美学入 門』, ニーべル ンゲ ンの うた
が主眼 となっている。 そのための教育方法は,
グー とルー ンの詩 ,パル チ フ アル, あわれなハ
子 どもたち 自身 の活動か ら文字 を作 り出 してい
イ ン リッヒ,そ して ,1
9世紀後 半の文学書 を読
くことを原則 と してい る。 彩色 された線画か ら
み進 め,議論す るが, これ らは文学作 品 として
一つひ とつのアル ファベ ッ トを作 り出 してい く。
鑑質 され るばか りでな く,美学的,文化 史的,
こ うして作 りだ した文字 を組み合 わせ て単語 を
言語的考察のための教材 と して活か され る。
,
作 る。 さらに簡 単な文章表現ができるよ うに指
1- 1
2学年の言語領域 (ドイ ツ語)の教育課
導 してい く。「1学年 では人が子 どもにい った
程 は, 1-3学年 に子 どもの活 動 を通 して 「
読
ことや子 ども自身が しよ うとすることについて,
む ・書 く ・話す」の言語力 を育む , 4- 8学年
簡単な方法 で書 き表せ る」 ところまで導 き, 2
に手紙 ・文書 ・作文 ・文法学習 を通 して, ドイ
学年 では 「
動 ・植物や 草原や森 な どについて教
ツ語の表現力 を高める, 9- 12学年 に これまで
え られ た ことを,簡単な文章 で書 き表せ るよ う
培 ってきた ドイ ツ語 の力 を基盤 としなが ら,文
にな らねばな らない。」 また, 3学年 では,「
見
学作品を観 質 し,理解す る とい う構成 になって
るもの,読む ものを書 き記す能力 を さらに拡大
いる。
す るO」
そ して,他教科 ・科 目との関連 に注 目す ると,
-3
4-
教育課程研 究の視点か ら見 る教育 史 (日 -1
91
9-25年 にお ける 自由 ヴァル ドル フ学校 の教 育課程 -
文書作成 の材料 に理科 ・社会領域の学習内容 を
学の基本概念 を身につ け,有機化学の基礎 を学
取 り入れ ること,作文のテーマ を歴 史の学習内
ぶ ところまで進む。 また,博物学では,初歩的
容 か ら選ぶ こと,文学作品を美学 ・文化史 ・言
人間学か ら始 ま り,動物界,植物界,鉱物界 に
語学の領域 か らも考察す ることな ど,他教科 と
ついて考察 し,再び人間学 に戻 る。
のつなが りのなかで ドイ ツ語学習が進め られて
これ らの教育内容 を他教科 との関わ りに注 目
してみ る と,「
気候 」 は, 6- 8学年 の地理 に
いる。
おいて地球の具体的な地域 との関連 で扱 われた
のち, 8学年 の物理 において流体力学 ・気体 と
5. 理科 ・社会頒域
並ぶ物理現象 の一つ と して考察 され る。 また,
理科 ・社会領域 も 1- 3学年, 4- 8学年 ,
7学年 の歴 史 にお いて 1
5世紀 か ら1
6世紀初 めに
至 る時代 を 「
発明 ・発見の時代か ら自然科学交
9-1
2学年 に 3区分す ることができる。
1- 3学年の科 目は郷 土科一つである。郷土
流の時代 と して特徴 づ け」 ることが,同時に,
科 は,子 どもの意識 を徐 々に環境 に向けてい く
同学年 で学習す る物理 ・化学の教育内容 を歴史
ことを課題 と している。特 にこの段階では,郷
的に捉 える 目を養 うことに な る。 そ して ,「
栄
土の 自然 を生 きた もの と して捉 えることに重点
養 と健康」 の関わ りにつ いては ,7学年 の博物
が置 かれ ている。鉱物 ・動物 ・植物 が, 「
互い
学において考察 され るが, この内容が, 8年 の
の偉大 さ,敬度 さ,暖か さ,野蛮 さな どを生 き
化学 にお いて栄養 と しての有機物の意義 を論 じ
生 き と語 りあ うよ うに表現す る。」 田畑の耕作,
ることへ と発展す る。 また, 6学年 か ら物理 で
農地,肥料,穀類 について学ぶ場合 も,耕作 と
学んできた光学 ・力学の知識 が, 8学年の博物
い う具体的なものの中に表れ る鉱物 ・動物 ・植
学において,骨 と筋力の仕組みや 目の内的構造
物の絡み合いを感 じるとらせ ることが主眼となっ
を理解す るために活用 され る。
ている。 それ ゆえ, 1- 3学年の郷 土科 は,郷
4- 8学年 の理科 ・社会領域 の各科 目の教育
土に教材 を求 めなが ら, 自然界の有機的連 関を
内容 は相互 に関連づけ られ てい る。 そ して,芸
感 じ取 らせ ることを課題 としているともいえる。
術領域の 4- 8学年の教育課程で述べたよ うに,
4学年 では じめて理科 と社会が分化す る。科
絵 を描 くことと理科 ・社会領域 の学習が不可分
目と しては博物 学 と郷土科 であるが, 4学年の
の こととして扱 われ ている。個 々の生徒が ノー
郷土科は,教育 内容か ら判断 して,歴史 と地理
ト作 りをす る際に,地図 を描 くこと,動物 ・植
の未分化 な科 目である。 それ ゆえ,社会領域の
物 ・鉱物 を描 くこと,実験装置 を描 くことが,
最初の科 目として位置づける。
文章 を書 くことと同様 に重視 され ている。
4- 8学年の理科 ・社会領域 は各科 目固有の
9-1
2学年の理科 ・社会領域は,歴史,地理,
教育内容 を展開 しなが ら,各科 目内容 を相互 に
物理,化学,博物 のそれ ぞれ の概観 が得 られ る
関連づ ける教育方法 を とっている。
よ うに構成 され ている。文明 と現代,あるいは
社会領域 の各科 目内容の概略 をた どってみ る
自然 と人間の相互関係 に対す る理解 を育む とい
と,歴史では,古代史か ら現代史までを概観 し,
うことが,各科 目の教育課程 の内容 を結ぶ共通
地理 では,身近 な地域 か ら地球全体への考察範
のテーマになってい る.
歴史では,9学年で近代史か ら現代史をた どっ
囲 を広げなが ら, 自然,資源,気候 ,経済 と精
神文化 の関わ りを考察 してい く。
て現代の特質 を把握 す る際に 「この間の人類の
理科領域 の各科 目内容 の概略は,物理 では,
意識 の拡大や視界の広が り」 に焦点 を当てる。
音響学,光学,熱学,電磁気学,力学の基本概
この ことが歴史の中で天文学や地理 を扱 う契機
念 を学ぶ。化学 では,燃焼現象 を媒介 として化
を与 えている。 10学年 では,地理 との関連性 を
-3
5-
神 奈 川 大学心理 ・教育研 究論塊
第 31号 (
201
2年 3月 31日)
生か しなが ら,古代史をま とめる。11
学年では,
され る。 また,植物学 ・細胞 学は大地や全宇宙
文学作品を介 しなが ら,中世 ・近世の歴 史 をた
(
全世界)の作用 との関連で扱 われ る。
以上の理科 ・社会領域の教育課程 の展開 をま
どる。 1
2学年 では,古代 ・中世 ・近世 ・現代の
文化の特徴 と民族史の個性 を扱 うことによって,
とめる と, 1- 3学年 では,郷土に教材 を求 め
「
すでに現れかけている未来像の概観 を得 る。」
なが ら, 自然界の有機 的関連 を感 じ取 らせ るこ
以上の よ うに歴史では,各時代の文化 ・文明
とを課題 と してお り, 4- 8学年 では各科 目固
の特徴 を捉 えることによって,全人類史を描 き
有の教育内容 を展 開 しなが ら,相互 に関連づけ
出そ うとしている。歴史的な観点か ら現代 を見,
てい る。 9- 12学年 では,各分野の概観 を得 る
未来 を見 る 目を養お うとしているのだが, この
と同時に,文明 (
歴史) と現代,または, 自然
方法によ り,同時に,歴史 を 自然諸科学 と関連
と人間の相互関連 に対す る理解 を育んでい る。
づけられている。 また,歴史で扱 ってテーマは,
国語作文のテーマ として も使 われ る。
同領域内での教育 内容の関連性 については,
領域 ごとに述べたが,他領域 との関連性 に関 し
物理では,近代物理学の成果 といえる機 関車,
て, とくに歴史考察のテーマ と ドイ ツ語作文の
電話,無線電話 , レン トゲン,放射能等 を教材
テーマの関連性 を再度指摘 してお く。 また,敬
とす る。 そ して ,「
近代物理学 と近代物理学 が
育方法の面では,色彩画 と線 画が理科 ・社会領
現代 の世界像 に与 えた影響 を論 じる。」 い いか
域の学習において重要 な位置 を占めている。
えれば,生徒 の生活 している現代社会 との関連
か ら物理学の知識 を問い直すのである。
化学では,酸 ・塩基 ・塩 の概念 を軸 に しなが
ま とめ
ら化学全体 を概観す る。 その際,人間,動物 ,
本稿 の課題 は,小学校か ら高等学校 までの教
植物,鉱物 とい う自然の中での実際の作用 を問
育課程 において,教科 問の連 関が可能 なのか ど
題 にす る。 この ことは,個 々の元素 を扱 う際に
うか を,教育史研究の中の実践例か ら考察す る
も当てはまる。 た とえば 「
硫黄 を扱 う場合 ,也
ことであった。 その事例 として 自由 ヴァル ドル
球の火 山活動の一部 と して考察す る と同時に,
フ学校 の教育課程 を とりあげた。
生 きたたんぱ く質の中に存在す る,動 ・植物お
自由ヴァル ドル フ学校の教育課程は,各教科 ・
よび人間の物質交換 (
新陳代謝) の促進力 とし
科 目の固有性 にもとづいた学習を進 めなが らも,
て考察す る。」 とい う例 が示す よ うに, 自然 と
内容 を関連づけなが ら,また,共通の教材 を使
人間の体内にお ける化学変化 の過程 を連続 的な
用 しなが ら,教育課程 を作 り上げてい くことが
もの と して捉 え る。 また一方で ,「
化学産業が
可能 なのだ とい うことを示 している事例 だ と,
現代文明に対 して持 ってい る意味 を考察す る。」
筆者 は捉 える。 そ して,カ リキュラムの類型 で
博物学においても, 自然 と人間の相互関連性
は,相 関カ リキュラムに位置 づ くと捉 える。
日本の学校 における教育課程 の構成原理は,
を理解す ることが,考察の焦点にな ってい る。
鉱物学 と結晶学の側面か ら人間を扱 う場合 も,
時代 とともに変化 してお り,学習指導要領 が告
た とえば石灰 を扱 うに際 して も,「
地上 での石
示 となる以前,試案 とい う位 置づけであった頃
灰化過程や人間 ・動物 にお ける皮膚形成 ・骨形
は,児童 中心主義的な発想 が生か され ていた。
成 は,いかに人 間が 自然の石灰化過程 を克服 し
だが,学力低下 を理 由に教科 中心主義 に変更 を
なけれ ばな らないか を示 してい る。」 とみ るこ
余儀 な くされ,教科カ リキュラムが徹底 された。
とか らわか るよ うに,鉱物界 と人間の体 内現象
その後,落 ちこぼれ が問題 とな り,「ゆ と り教
を連続的に考察す る。動物学において も,動物
育」の名の もので児童 中心主義の教育方法のひ
界全体 と人間の関連性 を背景 においた考察がな
とつである 「
総合的な学習の時間」が導入 され
-3
6-
教育課程研 究の視 点か ら見 る教育史 (1)-1
91
9-25年 にお け る 自由 グァル ドル フ学校 の教育課程 -
た。 教科教育 とは別 に設定 され たのだが,再び
明確 な実践について検討 を進 めることである。
学力低下が指摘 され,現在 は縮小 に向かってい
る。
第三は,学習指導要領 の レベル で教科 間,料
目間の内容の関連性 を明確 にす ることである。
それぞれ の時期 に育 った児童 ・生徒は, 自分
の受 けた教育 を土台に して歩む しかない。
この第三の点について,研究 ステ ップを次の 3
段階に分 ける。
日本 の教育課程 を概観す ると,教科カ リキュ
第一段階は,現在 の教育課程 を対象 と して,
ラム,経験 カ リキュラムを往復 しなが ら,それ
全体の構成 を教育課程論 として把握す ることで
ぞれ の問題 点ゆえに,振 り子の よ うな往復運動
ある。
を繰 り返 してきた といえる。 この歴 史的展 開は
第二段階は, 当該学年 の 目標 , さらに当該校
児童 の活動 の積 み重ねか ら教科 の基本知識 -導
種 にお ける 目標 , さらに初等 ・中等教育 を貫 く
いてい くことの困難 さと,教科 ごとに区切 られ
目標 を明確 に し,各教科 ・各科 目の固有な内容,
た知識 を習得す ることの困難 さを語 ってい るの
教科書の編,章,節 ,項 ごとのポイ ン トを再検
ではないだ ろ うか。
討す ることである。
小学校 か ら高等学校 まで とい う長期のスパ ン
第三段階は,第一 と第二の作業 を踏 まえて,
で教 育課程 を組 み立て るために,相 関カ リキュ
小学校 か ら高等学校 にお ける教 育課程 について
ラムの原理 をいかす ことで, これ までの歴 史が
目標 か ら教材 に至 るまでの教育課程案 を提示す
繰 り返 して きた振 り子の よ うな編成 の繰 り返 し
ることである。
を避 けることができるのではないだろ うか。
自由 ヴ7ル ドル フ学校 の教育課程 を検討す る
ことか ら,現在 の 日本 の教科カ リキュラムが抱
注
えている問題点 を克服す ることが可能だ とい う
1)安彦 忠彦 「
カ リキ ュラムの類型 」『新教育
示唆 を得 ることができる。 もちろん,1
920年代
学 大事 典』 第 2巻 ,第 - 法規 , 1
990年 ,
と今 日では科学技術の進歩 にお いて も大 きな違
p
.
5
5
0
いがある し, ヨー ロッパ文化, ドイ ツの文学作
2)同書 ,p
p
.
5
5
5
6
品を教材 と しているとい う違い もある。 これ ら
3)同書 ,p
.
5
6
。
。
の違 いは教 育内容 に直接 関わって くる,だが,
4) 自由 ヴァル ドル フ学校 は, 1
91
9年 9月 7
教育課程 のデザイ ンとしてみた とき, 日本 にお
日, ワイマール共和国の南部,バーデ ン ・
いて も,現在 の教科カ リキュラムを基本形 に し
ヴユルテ ンベル グ州のシ ュツ ッツガル トに
なが らも,相関カ リキュラムの形 を とることが
て開校 した。 ヴァル ドル フ ・アス トリア煙
可能 だ とい う方 向性 を持つ ことがで きる。 そ し
草工場の支配人 であったエ ミール ・モル ト
て,児童 ・生徒 に各教科 ・科 目の関連性 と,坐
の経済支援 に よって開校 できた ことに由来
活や実社会 との関連性 を理解 させ ることができ
して, この校名 となった。
5) 1
91
9年 8月 21日∼ 9月 6 日まで, シュタイ
るのではないか と考 える。
ナーの指導 による教師養成 のための講習会
今後の研 究 と しては, 3つの方向を並行 して
が行 われ ,開校時に教師 になったのは1
2名
進 める。
だった。芸術家,技術者 ,研究者 ,宗教家
第一は, 自由 ヴァル ドル フ学校 の教育課程に
な どによって構成 された。
ついては,教育理念 との関係 か ら導 き出 され る
6)現在 は,多 くの文献が刊行 され てい る。 そ
教育課程構成原理 をま とめることである。
第二は,教育史研究の対象 となる教育実践の
うち,初等教育か ら中等教育までの教育課程が
- 37-
のなかか ら,基本文献 と してシュタイナー
の講演の翻訳 である 2点 を紹介す る。ル ド
神奈川大J
7
:
心理 ・教育研 究論娘
第 31号 (
201
2年 3ノ
」31日)
ル フ ・シュタイナー,新 田義之訳 『オ ック
「
プ ラ トン的世界観 でい う 『熟慮』 す なわ
スフォー ド講演 :教育の根底 を支 える精神
ち言葉 の持 つ最 も高貴 な意 味 にお い ての
的心意的な諸力』イザ ラ書房 ,2
0
01
年。ル
『節 度 』 を育 て る 」 た め で あ る。 同書 ,
p
p.1
7
3
-1
7
8
0
ドル フ ・シュタイナー,新 田義之訳 『教育
の基礎 とな る一般 人間学』 イ ザ ラ書房 ,
2
0
0
3
年。
引用文献
7) 基 本 教科授 業 は周 期集 中授 業 (
E
p
o
c
h
e
n
-
鈴木そ よ子
1
9
9
2 「草創期 自由 ヴァル ドル フ学
u
n
t
e
r
ri
c
h
t) 方 式 で行 われ る。 8-1
0時
校 にお ける理念 と実践 -1
91
9-2
5
年 の教育課
の時間帯で,4- 6週間継続 して同 じ教科 ・
程 を中心 に -」 神 奈川 大 学教職 課程研 究 室
科 目の授業 が行 われたのち,他 の教科 にか
『神奈川大学
わ る方式である。
p
p
.
3
4
-5
3
0
心理 ・教育研 究論集』第 1
0号,
8) 9学年以降の教科はすべて教科担任制 となっ
ている。開校 時は ,1
2
名の教員であったが,
生徒数 は 1
91
9年 の2
5
6
名 か ら1
9
2
4年 には約
9
0
0
名 に増 えてお り,生徒数 の増加 に伴 っ
参考文献
電子図書 として
R.シュタイナー,新 田義之訳 『いかにカルマ
は作用す るか』み くに出版 ,2
0
0
9
年
て,教員数 も2
4
年 には4
7
名 に増 えた。
9) 「
色彩体験」 とは, シュタイナーが,オ ッ
クス フォー ド講演 『教育の根底 を支 える精
神的心意的 な諸力』第 7話の中で用いた言
R.シュタイナー,新 田義之編 『人智学 ・神秘
主義 ・仏教』み くに出版 ,2
0
0
9
年
R.シュタイナー,新 田義之監修 『精神 科学の
立場か ら見た子供 の教育』み くに出版 ,2
0
0
9
葉 である。
パ レッ トか ら絵具 を とって描 くのではな
年
く,水 に溶 か した絵の具を壷か らとって使
う。 そ して,画用紙の全面 を色彩面 と色彩
形態で覆 い尽 くす。 この時できる色彩 と色
彩重な りや隣あいか ら,何かの形 を読み り,
また,色の調和 ・不調和 を感 じとることを
指 して ,「
色彩体験」 とい う。 ル ドル フ ・
シュタイナー著,新田義之訳 『
オックスフォー
ド講演 :教育の根底 を支 える精神 的心意的
0
01
年 .p
p
.
2
2
7
-2
2
9
な諸力』イザ ラ書房 ,2
1
0
)「
全体 か ら部分 -」 とい う計算方法 の例 と
して, シュタイナーは,オ ックスフォー ド
講演において,次のよ うな例 をあげている。
リンゴひ と山を年齢 の違 う 3人の子 どもた
ちに,年齢 に応 じて分 けてい くのだが, こ
の際に 「
私達の前に リンゴの山があ ります。
これ を私達 は, 3つに分 けます。 そ して,
全体 と 3つの部分 とは同 じであ るとい うこ
とを教 えます。 全体 - 3部分 です。」 この
よ うに総計 か ら部分-進んでい くことは,
-3
8-
教育課程研究の視点から見る教育史(1)- 1919- 25年における自由ヴァル ドルフ乍校の教育課程-
資料 1
1-1
2
学年の教育課程 ・基本教科 の部
う。技術的なものと、美的な もの を対 象 の形態 の中
注 ・Car
ol
i
neYon He
yde
brand ‥Vom Le
hr
-
で結合す ることに対 す る理解が、 子 ど もの中 に 目覚
pl
ande
rFr
e
l
e
nWal
dor
f
s
c
hul
e■
'を、抄訳 ・
めるよ うに努める。
」(
S.3
0.
)
要約 した ものであるo
- 7年 一
遠 近 画 法 の交 接 (Dur
c
hdr
i
ngunge
n)、 縮 尺
l.芸術領域 (
美術 ・美学)
(
Ve
r
kG
r
z
unge
n)
、重ね あわせ (Obe
rde
c
kunge
n)
を練習す る。特 に技術的な もの の 中 に あ る美 的 な も
色彩画 と線画 (
Mal
enundZei
chnen)
のに対す る理解 とセ ンスを磨 く。
- 1- 3年 一
- 8年 6・7年 の内容 を継続 しなが ら、 芸術 的 な もの-
色彩画 は、絵具壷か らとり出 した原色 の絵 具 を そ
のまま囲画用紙 の上で塗 り重 ねて い く。 ノ
ヾレッ トの
高 める。
上で混色 す る方法 はと らない。 こ う してで きる色 と
色の重 な りか ら、体験 的 に中間色 を理 解 す る力 を養
Mal
en)
色彩画 (
い、 また、色 の調 和 ・不調 和 に対 す る 「色彩 感 覚 」
- 8年 「1-7年を通 して、色彩 を体 験 し、 色 彩 の相互 作
(
Far
bs
i
nn)を養 う。
線画 は、色彩画 の色 と色 の境 目を線 と して み る こ
用 を学んで きた。 8年で は、 対象 物 の中 で の光 と色
とか ら展開 され る。 また、子 ど も自身 が、 曲線 ・直
の融合 を観察 し、描写す るよ うに導 く。 そ して、 た
線 ・円 ・楕 円 ・双 曲線等 の形 を走 った り、 苗 に措 い
。「ここで、
た りした ことの追体験 として展開 され る
とえば風景 を、色 の情調 (
Farbs
t
i
mmung) に基づ
いて色彩的に措 く。
」 (
S.
3
7.
)
For
me
n)の持 つ言 葉 を理解 す る。
」
子 ど もは形体 (
(
S.
1
6.
)外在す る ものを模 写 す ることは、 で き る限
美学 (
KL
?
nS
t
Unt
er
ri
cht:As
t
he
t
i
k)
り避 ける0
- 9年 一
- 4・5年 -
舌代か らレムプラン ト頃 まで の北 ・南 方 の芸術 家
1- 3年 は、教師の指示 ・見本 に従 って画 いて き
の代表的な作品に沿 いなが ら、 造 形 美 術 の歴 史 を辿
た。 これに対 して、 4年 か らは、 子 ど も自身 の創 造
る.「
生徒達 はその主 な例 か ら r美J の概念 を具体 的
e Kr畠f
t
e
ni
hr
e
re
i
ge
ne
ns
c
h6p的想 像 力 (di
r
e
r
i
s
c
be
n Phant
as
i
e) に基 づ いた作業 を進 め る。
やルネサ ンスの美 などの変形 と しての芸術 の概念 を、
色彩画 を通 して培 われて きた 「
色彩感 覚」 が、 これ
」(
S.3
9
.
) この
具体的な形で理解せねばな らな い.
か らは、 「子 ど もたちが授業 中 に体 験 した もの を表
よ うに芸術史の概観 を得 ると同時 に、「た とえば、 ギ
な形で理解せねばな らない。 そ して、 ギ リシ ャの美
現す る手段 と して」 いか され る。 また、 線 画 や塑 像
Gi
ot
t
o)か らレムプ ラン トに至 る絵画 の
オ ッ トー (
(
わん ど工作) を通 して養われて きた、 円や半 円、 直
変遷 において、 自己の年齢が (
dase
i
ge
neLe
be
n-
線 ・曲線 などの純粋形体 を見 る力や作 る力が、「外 在
sal
t
e
r)魂 の上 に常 に織 りあ げ て き た 、 魂 の 問 題
S.2
4.
)と
す るものの中に純粋形体 を再発見す る」(
(
Se
e
l
e
npr
obl
e
me
) につ いての芸術 的な解答 を、 と
ころまで高 め られ る。 た とえば椅子 の曲が り方 の中
らわれのない目で直視す る。
」 (
S.3
9
.
)
に曲線 を兄 い出す とい うよ うに。
-1
0
年-
そ して 、 4年 か らは、 写生 や模 写 が許 され る。
詩人の領域か ら芸術的 ・美 的 な もの を扱 う。 言 葉
「なぜな ら、子 ど もた ち は、 す で に、 自己活動 の中
は詩人の世界 の芸衝 的な要素 と して理解 され る。 そ
で内面 的 に、 形 体 を感 じとって きたか らで あ る。」
して詩人が彼 の芸術的言語能力 を通 じて、 時代 の魂
(
S.
2
4.
)
(
Se
e
l
e
) とどのよ うに闘 って い るか を理 解 す るため
線画 (
Zei
chnen)
(
Eur
yt
hmi
e
) との関連 で、詩 学 (韻 律 学 ) の基礎
- 6年 -
事項 を意識化す る。
に、理論家の散文 と詩人 の詩 を学 ぶ。 オイ リュ トミー
北方 と南方 の芸術 の違 いが、 朗読
「
投影学 と日陰学 の初歩 を学 ぶ。 構 造 を強調 す る
(6脚韻の詩句一
ことな く、影 の中にある色彩 的 な もの ・形 態 的 な も
叙事詩) と時涌 (
頭韻一叙情詩 ) の ス タイルの対称
Ge
s
t
al
t
m畠s
si
ge
)を扱 う. フ リーハ ン ドで画 く
の (
こと、定規 とコ ンパ スで画 くことを並 行 して お こな
性 において明 らかにされ る。 ホ ー マ ー と ラフ ァエル
におけ る類似 のスタイルの要素 、 エ ダ (
古代 アイ ス
-3
9-
神 奈川大学心理 .教育研究論銀
第 31号 (
201
2年 3月 31日)
ラン ドの神話 ・英雄伝説及 び詩法集) とデューラー、
彼 の r総合芸術作品J を通 じて全 体 的人 間 の新 た な
ダ リュ-ネパル ト、 レムプラ ン ト等 にお ける疑似 の
芸術表現へ再度到 ろうと した ことを示 す ことが で き
スタイルの要素 を感 じとるよ うにす る。 この時、 同
9
世紀 の終わ りの芸術 形成 の中 で の
る。 それか ら、1
時 に、 アポロ的 ・デ ィオ二 ソス的姿 勢 の対称 性 を浮
パ ルテ フ ァル
き彫 りにす る。
また、 ゲーテの詩 を 「耳で きいて理解 す るJ 場合
も、「文学史が肝腎 なので はな く、 ゲーテが彼 の叙 情
(
Pa
r
z
i
v
a
l中世騎 士伝 ) の モチ ー フ
の新 たな変形 につ いて述 べ ることがで きる。
」 (S.
4
7
∫
.
)
-1
2
年-
詩 を通 して彼 の魂 の発展 を明 らか に して い く様 を聞
「代表的な文化史的形体 と様式 の中 で、 建 築 技 術
」(
S.4
3.
)
きとることが肝腎であ る。
に関連す る建築芸術 についての理解 を育 む。 象 徴 的
- 11年 -
芸術、古典 的芸術、 ロマ ン的芸術 とい う三 段 階 を踏
「9・1
0
年 の題材 を新 たな方法で再 び採 り上 げ る。
んで進 んで い くことが、芸術 のす べ て の分 野 に お い
彫刻一絵画の精神方向 (アポロ的生 ) と音楽一 詩 の
て明 らか にな ってい くだろ う。 建 築 芸術 の様 々 な 問
精神方向 (デ ィオニ ソス的生) が、 近 代 ドイ ツの精
題 に関す る理解 は、現代 のそれに至 るまで導 かれ る。
神生活 に、 どのよ うに関わ って きた のか を追 求 して
その結果、 た とえば コンク リー ト建築 が様 々 な可 能
い く。 この ことは、 アポ ロ的生 とデ ィオエ ソス的生
性 を もって生 まれた ことについて、 明確 な イメ ー ジ
の対称性を更 に深 めて い く可 能 性 を与 えて くれ る。
が生 じる。
そ して、 この対称 性が純粋 にキ リス ト教 的人 間像 の
更 に、全芸術 の もっている包括 的 な意 義 と独 自の
前で どのよ うに現 われ るのか を追 求 す る可能性 を与
法則 につ いての最終的概観が与 え られ る. こ うす る
えて くれ る。 この ことは、r視覚的人 間」 と、 r聴 覚
ことによ って、芸術 は全世界 の活 動 を一 つ にま とめ
的人間Jの対称性 - と関連 してい く。 また、 感覚 的
る世界構成要素 として、姿 を現わ す。 そ して、 芸 術
世界 を通 して道 を求 め る人間 と、 音 の非 造形 的世 界
的創造力 がそれにふ さわ しい形 で諸 活動 の中 に姿 を
を通 して道 を求 め る人 間の対称 性 につ なが る。 この
現 わす ことがで きないな らば、 個 人 も人 類 も十 分 な
方法 によって、更 に広 い美学概念 と、.
r人間の美 的教
意味で健全で はあ り得 ないとい う感情 を育 む。
育J の概念が、実例 の中で兄 い出され る。
こうして、 シラ-の r人間の美 的教 育 J を、 現 代
ここで、再 び芸術 における北 方 と南方 の民族 の様
的な意 味で改 めて取 り上 げることが試 み られ る。
式が変形 された形 で示 され る。 そ して、 この対 称性
このよ うに、 ヴ ァル ドル フ学 校 時代 の終 わ りに、
に、西方 と東方 の人生観 の対称 性 が加 え られ る。 た
生徒達 が現実的な美学 の要素 と芸 術 史 の具 体 的 な傾
とえば、ゲーテとい う人物 の中 で、 北 ・南 ・東方 そ
向に対 す る理解 を もち、世界 (自由 の世 界 ) の美 的
して西方がどのよ うな関連 を も って現 われ よ うと し
課題 に対す る眼 を鋭 くす るように導 かれ る。」
(
S.5
2.
)
たのかが示 され る。
ゲーテは、生を全体 と して見 るとい う、 芸術 的 で
あると同時 に厳密 な方法 を とった, しか し、 彼 の こ
の方法が継承 され ることな く、1
9世紀 の様 々な新 し
2. 数 領 域
(
Re
c
hn
e
n
)
い衝動 によって、 ロマ ン主義 と唯物 主 義 に分 岐 した
算数
のはなぜか、 とい うことに対す る理 解 を、 生徒 達 の
- 1年 -
中に目醒 めさせ る。 この ことは、 す べて の芸術 の発
「最初 2
0までの範囲で、 その後 で きれば、1
0
0まで
展が r象徴的」芸衝 か ら、 r
古典 的j 芸術 へ、 更 に
範囲 を広 げて、四則 を練習す るO その際 、 芸術 的感
rロマ ン的J芸術 へ、 とい う道 を辿 って いることを示
覚
す際 に
(
1
2
年で詳説 され る)、芸術上 の多 くの例 で示
され る。
(
de
rkuns
t
l
e
r
i
s
c
he
nEmpf
i
nde
n)に基づいて、
全体 か ら部分-進 めて教 え る。 た とえ ば加 法 は合 計
か ら、乗法 は積 か ら進 め るとい った具 合 に。 実 生 活
それか ら、具体 的な例 を用 いて、 音 楽 の内的発 展
にお いて も、人 はまず最初 に全体 を把 逢 し、 そ れ か
過程 を特徴づ けるC その際、新 たな精 神志 向 やすべ
ら部分 に注 目す る。子 どもが算数 を習得 す る方法 は、
ての芸祷形 態 の特 徴 を示 す もの と して特徴 づ け るo
成長 しつつ あ る脳 の形 成 に関 わ って い る。 そ して、
いかに、音楽的な ものが言葉 を得 よ うと し、 言語 的
子 ど もが後 にな って総合的 に もの を見 て考 え る よ う
な ものが音楽を得 よ うとす るか。 た とえば、1
9世紀
にな るか、 それ とも、個 々を別 々 に考 え るよ うにな
の この傾向の例 と して、 リチ ャー ド・ワーグナーが、
るか、 とい うことは、 おおいに初 期算 数教 授 の方 法
- 40-
教育課程研 究の視点か ら見 る教育史 (】)-1
91
9-25年 にお ける 自由 ヴァル ドル フ学校 の教育談精 一
にかか っている。子 どもがあ る数 の りん ごを人 に分
- 11年 一
け与 えることを最初 に覚 え るか、 それ と も、 加 法 に
おいて、次 々と自分 が獲得 してい くことを覚えるか、
指数方程式 を、対数計井及 び様 々な具休 的応 用 と
関連づ けて練 習す る。平面三 角法 に球面 三 角 法 が加
とい うことは、倫理的 に も大 きな意味を持 ってい る。
わ る。 これに関連 して、天文学 と、 航 海術 の 3点 が
教師 は、捜美 を通 して教育 す ること、 また、 性 格 や
取 り扱 われ る。
気質 に深 く働 きか けてい くことを常 に努力 せね ばな
-1
2
年一
様 々な数学領域 の概観 を関連 づ け る。 平 面 及 び空
らないO
リズ ミカルに動 くこと、走 ること、手 を叩 くこと、
そ して、跳ね ることは、子 ど もを数 の中へ 引 き入 れ
間 (
立体) の解析 を取 り扱 うことに よ って、 代数 学
と幾何学 を結合 す る。微分 ・穣分 の初歩。
」 (
S.1
7.
)
るふ さわ しい方法であ る。
- 2年 -
Ge
ome
t
r
i
e
)
幾何学 (
「四則 をより広 い数字範囲で練 習 し、 で きるだ l
ナ
- 6年 -
」「およそ歯 の生 え替 わ りが済 ん だ
多 く時罪 をする。
For
me
nz
e
i
c
hne
n
)
1年か ら続 けて きた形体線画 (
頃、九九 を始 め る。九九 の概 念 を原理 的 に説 明 し理
か ら、幾何学 を展開す る。 これ まで芸 術 的 図形 と し
解 させた後、記憶力 に基 づ いて習得 させ る。 リズ ミ
て措 いて きた三角形 ・正方形 ・円等 の図形 を、 知 的
カルに、 そ して拍子 にあわせて動 いた り、 手 を叩 い
な幾何学概念 で把達す ることを学 ぶ。
た り、跳 ねた りす ることは、九 九 の習得 の際 に子 ど
- 7年 ピタゴラスの定理 まで進 める。
もを支えるであろ う。歯 の生 え替 わ りか ら性 的成熟
Ent
f
a
l
t
u
r
l
g)
までの年齢 にあ る時、
記憶力 は真の展開(
- 8年 一
と強化 (
Kr
a
f
t
i
gu
ng)の時 期 に あ る。 この時期 に、
平面図形 の面 積 と長 さの計算 練 習。 立体幾 何 を、
正 しい育成 ・形成がなされねばな らない。
」 (
S.2
0.
)
体積 ・面積 ・辺 の長 さの計罪 と結 びつ け る。 軌 跡 論
- 3年 -
へ導入。
よ り複雑 な数で四則 の練習 をす る。 また、 実生 活
の簡単な例を用 いて応用 す る。
画法幾何学 と幾何学図形
- 4年 一
(
Dar
s
t
el
l
endeGe
ome
t
r
i
cundge
ome
t
r
i
s
che
s
Zel
C
hne
n)
- 9年 一
分数 ・小数への移行 を試 み る。
- 5年 一
分数 ・小数 の計箕 を進 め る。 どん な数 で も自由 に
画法幾何学 の図形 と製図板 を用 いた図形 画 を始 め
計罪で きる力をっ け る。
る。
- 6年 一
-1
0・11年 -
9年 の内容 を継続す る。
歩合 ・百分率を始 め る。手 形 勘 定 や手形 割 引勘定
を用 いる。
-1
2
年一
数学 (
Mat
h
e
mat
i
k
)
テ ィブ
- 7年 一
れ、建築上 の実用的応用へ導 かれ る。
画法幾何学上 の作業 は、カバ リア ー ・パ ー スペ ク
(
Kav
al
i
e
トPe
r
s
pkt
i
v
e
)論 に よ って補 足 さ
自乗 ・平方根 ・負 の数、 そ して、方程式の練習 を、
実生活 との関わ りで徹底 す る。
- 8年 7年 の学習内容 を多方面 に応用す る。
- 9年 -
3. 言 語 領
域
(ドイツ語)
書 く ・話す .読 む (
Sc
hr
ei
b
e
n,Spr
e
c
he
n.Le
s
en
)
純粋な思考活動 の中で、多面的 な練習をおこな う。
- 1年 「
彩色 された線画か ら r
普 く」 を展 開 す る。 最 初
組み合わせ論を扱 う。代数分野 で は、 多元一次方 程
式、複雑 なカ ッコ表現 や 2項定理 の解決 に進む。
子 どもは抽象的な文字 を智 くこ とに対 して何 の と っ
-1
0
*一
かか りも持 って いないo そ して、 入 校 自体 も最 初 か
代数 的 ・幾何学 的数列 につ いて論 じ、 対 数計算 へ
導入す る。三角関数 を扱 う。
ら文字 を使 ったのではな く、具 象 的 な像 を描 くこ と
か ら次第 に文字 を展開す るようにな った。 それ に も
- 41-
神 奈 川 大学 心理 ・教 育研 究 論張
かかわ らず、子 ど もに習慣的 に用 い られ て い る文字
第 3Ⅰ号 (
201
2年 3)
】3Ⅰ日)
について考える時、子 ど もは四肢 を動 かそ うとす る。
をその まま憶 え込 ませ るな らば、 それ は子 ど もを早
r槌 で打 っJとい う語 を考 え る時 、 子 ど もは手 で
期 に老化 させ ることになる。 成 長 しつつ あ る人 間本
r
槌を打っ」動 きを したが る。形容詞 は動詞に比 べ て
al
eWe
r
de
ndeMe
ns
c
he
nnat
ur) は、 芸 術 的
性 (
子 どもを落 ち着かせ る。子 ど もの 四肢 を動 か す動 詞
な ものか ら知的な ものへ、手 の活動 か ら精神労働 へ、
のよ うに意志的 にで はな く、 物 の特 徴 を敏感 に感 じ
jr
読むJ へ進 ん で
つ ま り、色彩画 や線画か ら r
雷く
なが ら体験す る。名詞 は子 ど もに と って最 も遠 くに
い くことを要求す る。 た とえ ば、Fの文 字 につ いて
とどまってお り、冷 た く、抽象 的 で、 単 な る思考 の
い うな らば、子 ど もに魚 の形 をなぞ らせ て、 まず最
対象物である。 こうして、子 ど もに文 法 を人 間 的 に
初 は絵 の形 で文字 を与え るO手 は巨が気 持 ち よ くと
体験 させ る。簡単 で具体 的な方 法 を用 いて文 の構 造
らえた ものを文字 として完成 させ、 E
]は愛情 を もっ
を説明す る。 この段階で の文法学 習 は、 子 ど もが本
てペ ンを動 かすo こうす ると苦 さ方 は、 個 性 的 で美
能的 に用いて い る もの をわ ず か に意識 化 して い く。
しい ものになる。 1年で は、 人 が子 ど もに言 った こ
また、言語 の法則 を学ぶ ことによ って、人生 OJ
e
be
n)
とや、子 ど も自身 が しよ うとす ることにつ いて、 簡
の中でゆ っくりと育 ちつつ あ る人 問 の 自我 の偉 大 さ
」 (
S.2
0.
)
に触 れ る。
単 な方 法で雪 き表 わせ るようになるまで導 く。
F読 むJ で は、 ラテ ン語 の大 文字 を描 いて習 得 す
- 3年 「ラテ ン語筆記体 の線画 的変 形 か ら、 ドイ ツ語筆
る。子 ど もが印刷物 を前 に して親 しみ をお ぼえ る程
」(
S.1
6.
)
度 まで指導 し、 ま とまった学習 はさせない。
記体 を展開す る。 ドイツ語 の活 字 体 もまず措 き、 そ
r
r話 す』 で は、教師がお話 を して、 生 徒 が言 葉 や
れか ら読 む ( 読 むj)o 見 るもの、読 む ものを書 き
文字 で再話 す る。 1年 のお話 し教材 はメル ヘ ンの中
記す能力 を更 に拡大 す る ( 書 くJ)o この学年 の
か ら選 ばれ るO また、 お話の一部分 に詩 を用 い る場
r
話すJでは、特 に、話 し言葉 の句切 り方 と文構成 の
合、特 に詩 の芸術 形体 (
di
ekd
ns
t
l
e
r
i
s
c
heFor
m)
力 を蕃 う。 これまで本能 的 に用 いて きた音 の長短 や
(
言葉 の メロデ ィ、韻, リズム、 拍 子) に注意 を払
鋭 さを意識化す る。 そのために、 聞 いた音 を正 確 に
う。 こうして、 た とえば、のば した音、 鋭 い昔 等 に
対す る子 ど もの言語感覚 を養 う。 同様 に して、 歌 を
r
発音す る練習を重ね る。
詩 の学習 に際 して、教 師 は、 言 葉 の リズムや メ ロ
うた うこと も言語感覚 の育成 に役立 て られ る。
ディに注意 を払 うと同時 に、 詩 の 内 的美 しさを子 ど
-2年 -
もの感情 の中に運 び込む よ うに心 懸 け る。 こ うす る
「ラテ ン語大文字 の線画的色 彩画 か ら、 ラテ ン語
筆記体 を暫 くこ とへ進 む。 ラテ ン語 活字体 を読 む。
ことによ って、8・9歳 の子 ど もの心 の営 み が深 ま
り、 このような内的美 しさを感 じやす くす る。
そ して、人 が話 したことを徐 々 に智 き とめ られ るよ
この学年 のお話 ・再話 の教材 は、 子 ど もに と って
うに指導 して い く。後 には、動 ・植 物 や草原 や森 な
世界史 や文化史 の始 ま りを意 味 す る旧約 聖雷 が提 供
どにつ いて教 え られた ことを、 簡単 な文 章 で書 き表
S.2
1.
)
す る。」 (
わせ るよ うにな らねばな らないe お話 ・再 話 の教 材
文法で は、 r話す』 に組 み入 れ られているよ うに、
は、 メルヘ ンか ら動物 寓話 や動物 物語 へ移 行 す る。
「品詞、文成分、文構成 について の感覚 を養 い、 句
この年 齢の子 ど もは彼の環境 と強 い結 びつ きを持 っ
読点 を文中 に組 み入 れ ることを学 習 す る。
」(
S.2
1.
)
てい る。 そ して彼 らは、動物 連 が人 間 の よ うに振 舞
う時、動物 を最 もよ く理解す る。 子 ど もは ま さに寓
話 の中で生 きてい る。 お話をす る際 に、 動物 に関 す
る体験 と r完全性 に向か って努 力 す る人 間」 につ い
」 (
S.1
9
f
.
)
ての理解 を育 む内容を組 みあわせ る。
ドイツ語 (
derdeut
s
chspr
achl
i
che Unt
er
r
.
l
Cht
)
- 4年 「これ まで教 師 の お話 を文 字 で杏 いて再話 した り、
何かあることを文章 で表現 して きた。 4年 で は、 こ
そ して、r話すJ授業 の中 に、文法 の基本 を絡 み あ
わせ る。特 に文法 の授業 の中 で教 師 に求 め られ るの
うして学んだすべての ものが、 様 々 な手紙 を督 くこ
とへ展開 され る。 この中 には事務上 の手紙 も含む。
は、愛嬬 あ るユ ーモアを絶対欠か さない ことであ る。
文法では、特 に動詞 の変化 形 に よ って表現 され る
こうす るこ とによって、子 ど もの負担 や退屈 を除 く
ものを通 して、明確 な時制概 念 を注 意 深 く形 成 して
ことがで きると考 え られ る。 文法学 習 は動詞 か ら形
い く。 また、子 どもは、前置 詞 とそ の前置詞 が属 し
容詞、 さ らに名詞 へ進 む。「動詞か ら始 め る。動 詞 は
てい る言葉 との問 にあ る関係 を、 感 情 的 に、 そ して
子 ど もにと って全 くいきいさと して い るか ら。 動詞
本能的 に感 じとることを学 ばね ば な らな い。 子 ど も
-4
2-
教育鋭程研究の視点から見る教育史(1)- 1
91
9-25年における自由ヴァル ドルフ乍校の教育課程-
0
歳 の時 に、母国語の中で、言 語 を造形 的 に
は 9・1
- 8年 -
gl
i
e
de
r
n) 練 習 を積
感 じと り、系統 的に整理す る (
まねばな らない.
に入 って初めて理解 で きるよ うな叙 情詩 や劇風 の も
「
長大な散文 ・韻文 に対 す る理 解 を育 む。 思春期
この学年 のお話教材 ・読本教材 は、 と りわ けゲ ル
のを読む。ゲーテ とその時代 及 び彼 が与 えた文化 的
」(
S.2
4.
)
マ ンの神話 と英雄時代 の伝説が提供す る。
影響 について論 じる。 ヘル ダーの r
人類歴史哲学考J
- 5年 -
や シラーの r
3
0
年戦争J
)の抜粋 が 、 お話 ・読本 の教
「
子 どもが動詞 の能動態 と受動態 の相 違 を感 じと
材 として使われ る。
れ るよ うにな らなければな らない。 また、 聞 いた こ
とや読 んだ ことを、思 うがままに再話 す るので は な
商業的 ・実業的な事柄 は、 r話 す」 授業 の中で特
」 (
S.3
2.
)
に強 く養われ る。
く、 直接話 法 を用 いて話す ことを芋 ばねばな らな い。
この年齢 において大切 なことは、 自分 自身 の意 見 を
再現す ることと、他 の人 の意 見 を再現 す る ことの違
ドイツ語 (
derdeut
s
chspr
achi
geUnt
er
ri
cht
)
- 9年 「ゲーテ及 び彼 の時代 につ い て の議 論 が継 続 され
いに対 して、 感 覚 を鋭 くす ることで あ るo つ ま り、
子 ど も自身 が考 えた り、見 た り、 問 いた り した こ と
る。 ヘルマ ン ・グ リムのゲー テ講 義 の一部分 を生 徒
と、他人 の口を通 して得 た報告 との問 の区別 を は っ
達 といっしょに読む。 ジャン ・バ ウルの r
美学入 門」
きり意識 す ることが肝腎である。 子 ど もは、 話 した
が、美学 の初歩 的 な問題 を取 り扱 う機 会 を与 え る。
り香 いた りす る ことの中で、 この ことに注意 を払 う
特 にユーモアの章 がふ さわ しい。
ことを覚 えねば な らない。 これ に関連 して、 文 章 上
作文 は、 これまで歴史教科 で扱 って きた内容 か ら
の記号 や引用符 の使用方法を完全 に習得 して いか ね
」 (
S.3
9.
)
テーマを選んでか くO
ばな らない。
年一
-1
0
手紙 を苦 くことは継続す る。
文字 の授菜 を通 して、人類 の 問 いが生 徒 自身 の心
お話 ・読本教 材 は、特 に古典 的 な舌代 伝 説 が提 供
す る。
」 (
S,2
7.
)
- 6年 -
(
Se
e
l
e
)にも共通 してい ることを示 すO 「ニーベル
ンケ ンのうた」 と、 ダー トル ー ンの詩 が中高 ドイ ツ
語で、
全般的 に論 じられ る。詩 が民族 にとって、 どの
「教 師 は接続 法の使用 に対す る文体感 覚 を、 話 す
よ うな芸術的意義 を持 って い るか とい うことを論 じ
ことや書 くことを通 じて、子 ど もの中 にで き るだ け
0
年 の項 を参 照 ) と、 ニーベル
るO ユダ (「
美学 」1
強 く呼 び起 こ し、形成す るように試み る。
ンゲ ンのうた、 そ して、 ダー トル ー ンの詩 の比較 か
手 紙 を 雷 く こ とか ら発 展 して、 簡 単 な用 件 文
ら、 「
生徒達 は、近親者 への非 個 人 的 な愛 か ら個人
(
Ge
s
c
hSf
t
sauf
s畠
t
z
e
)へ進むo用件文 の内容 ・材 料
的な愛へ、超人問的な ものの叙述 か ら人間の叙述 へ、
を 3年 の時 か ら用意 して きたわけで あ る。 (3年 の
」(
S.
4
2.
)
異教か らキ リス ト教-の変遷 を体 験す る。
「
郷土科」参照
一 鈴木注)
中高 ドイ ツ語 と新 高 ドイ ツ語 の文 法 の比較 か ら、
お話 ・読本 の教材 は、民族学の分野か ら選ばれる。
」
自己の民族の発展 を特徴 づ け る素 材 を得 る。
(
S.2
9.
)
Me
t
r
i
kundPoe
t
i
k) は、実際の詩 と関
韻律学 (
- 7年 -
連づけなが ら、総合的 に論 じられ る。
文学 に関連 して、古代 ゲルマ ン史 を扱 う。
「
正 しくて明確 な希望 や感 嘆文 の表 現形 式 の把 握
力を育 む。子 どもは感情 の内面 的形成 に基 づ いて文
を作 ることを学 ぶO た とえば、 何 か願望 を表 わす 文
Li
t
er
at
urund Ges
chi
cht
e
)
文学 と歴史 (
を子 どもに作 らせて、 それか ら驚 きを表 わす文 を作
- 11年 「この学年 で は、歴史 との対 比 で、 文学 史 が前面
らせ る。願 望 文 と感 嘆文 を比較す る こ とに よ って 、
言語 の もつ内面 的な力がはっき りとわ か るよ うに な
に出て くる。主要 なテーマは、 ウ ォル フ ラム ・フ ォ
Wol
f
ram Y
onEs
c
he
nbac
h)
ン ・エシェ ンバ ッ- (
るので あ る。
作文す る場合、博物学 の内容 に題 材 を求 め、 状 況
描写 や性格描写 をさせ る。
のパ ルツイファル (
Parz
i
val
) であ る。 この物語 の
内容や時代史を説明 した後、精 選 され た部分 を オ リ
読本 ・お話 の教材 は、民族学 ・人種学 が提供 す る。
ジナルで読 む。現代 と関係づ け な が らパ ル ツ イフ ァ
実務 的 ・実践 的感覚 は、実務 的 な手 紙 や作 文 の 中
ルにつ いて議論す る。 た とえば 、 パ ル ツ イフ ァルの
」 (
S.2
9.
)
で、更 に注意深 く養 われ る。
中にあ らわれ る人 々や物語 が、 今 日の文学作 品上 の
- 43-
神 奈川 大学 心 理 ・教 育研 究 指炎
第 31号 (
201
2年 3ノ
」31日)
人々や物語 と似 ているか否かを はっきりさせ る。 パ
抽 象 的 に話 す ので はな く、 想像力 に満 ち た倫 理 的
ルツイファルのモチーフは、 しば しば認識 し難 く変
(
moral
i
s
c
h) な方法で説明す るo
」 (
S.
1
7.
)
形 されなが らも、中世以来、数百年 の文学作品 を経
つ ま り、 自然物が互 いの偉大 さ、敬度 さ、暖か さ、
過 して、1
9
世紀 に至 るまで継承 されて きて いる。 一
野蛮 さなどをいきいきと語 りあ うよ うに表 現 す るの
万、-ル トマ ン ・フォ ン ・アウエ (
Har
t
mann Yon
であ る。
Åue
)の rあわれな-イ ンリッヒ」(
a
rme
rHe
i
nl
i
c
h)
のモチーフを用 いて、中世で は精神 的な もの と物質
別物教授 (
Sachunt
er
ri
cht
)
的な ものモ統一 的 に捉 えて いた ことを示 すのだが、
- 3年 -
このモチーフは1
5・6世紀 には消えてい くのであ る。
パルツイファルの例で、中世 の世俗人 と僧侶 の教
「
別物教授 は、意識的に子 ど もを最 も近 い環 境 の
中-引 き入 れ る。 まず、 モル タルの調 合 や家 を つ く
るときの使用法等 について話す。 子 ど もは、 田畑 の
養の本質的な相連 を示す。
パルツイファルや rあわれな- イ ン リッヒJ の モ
チーフや、 また、両者 の発展や単純化 の中で、 個 々
耕作 や耕地 ・肥料 について も学 び、 穀物 の類別 もで
きるよ うにす る。
の例に別 して示 して きた ことを、全休像 と して拡大
子 ど もは、動物が植物を栄養 と し、 植物 は動 物 を
し、最終的には1
9
世紀 を、 それ以前 の世紀 の集大成
肥料 と し、 また鉱物を強化 と滋養 のため に吸収 す る
として論 じる。 この際、1
9
世紀全体 の構成 が、 それ
ことを感 じとる。
以前の世紀 の発展 だ とい うことに留意 しなけれ ばな
この よ うに、別物教授 は、世界中 (
Wel
t
) の もの
らない。古来の精神的な ものが1
9
世紀の終わ りに は、
の不思議 な絡 みあいに対す る感情 を、 子 ど もの 中 で
失われて しまい、すべての伝統 が細 い細 い糸 の よ う
育 み、 また、人間の力の及ばない もの に対 す る感 謝
に落ちぶれて しまった ことを示す。
」
の念 を芽生 えさせる。そ して この場 合 に、 倫理 的 ・
(
S.4
7
.
)
感情 的 な ことか ら、実際的 ・実践 的 な こ と-、 再 三
戻 って、後 の簡単 な用件文の材料 を提供 で きるよ う
ドイツ語 (
derdeut
s
chspr
achi
geUnt
er
ri
cht
)
-1
2
年-
に準備す る。
」 (
S.2
2.
)
「ドイツ文学史 の全体像 が与 え られ る。 ゴー ト、
舌高 ドイツ、中高 ドイツ時代 の古 い文献 が取 り扱 わ
郷土科 (
Hei
mat
kunde
)
れ、 その後、前古典 (
派)・古典(
派)・ロマ ン(
派)時
- 4年 -
代、そ して、現代 が取 り扱われ る。 こう して、 ドイ
「自分 のまわりの世界を考察 す る作叢 が、 郷 土 の
ツ文学史発展 の全体像がで きあが る. 概 観 は、 具体
歴史や地理へ と発展 してい く。郷土でので きごとが、
的で重要ない くつかの例 によって作 られ る。 この よ
歴史的経過 の中で述べ られる。 た とえば、 果樹 栽 培
うに して、人間が生 きてい くために必要 な ものが身
やぶ ど う栽培が この地方 に入 って きた経 過 や、 郷 土
についてい く。生徒達 は、数巷人 と して知 って お く
の工場 が起 こった経過 について述べ る。
」(
S.2
4.
)
べきことを身を もって知 らねばな らない。
1
9
世紀後半の ものの中か ら、 ニーチェ、イプセ ン、
トルス トイ、 ドス トエフスキ ーにつ いて詳細 に論 じ
る。生徒達のまだ知 らない典型例 で、 この概観 の一
般観点を説明す る。
」 (S.5l
f
.
)
歴史 (
Ge
s
chi
cht
e
)
- 5年 4年 まで は、お話 し教材 (ドイ ツ語 ) や偉人 伝 を
通 して、歴史的なものを間接的 に扱 って きたが、 こ
れか らは 「
子 どもが個々の時代 の文化 の特 徴 を、 特
徴 的な出来事 にもとづいて、 あ りあ りと思 い浮 かべ
られ るよ うに」 (
S.2
7.
)
・説 明 して い く。 で き るだ
4. 理 科 ・社 会 領 域
郷土科 (
Hei
mat
kunde
)
け鮮 明 なイメージを用いた説明を し、 常 に、 子 ど も
- 1年 ・2年 一
たちの感情を介 した理解 に働 きかける。
郷土科の課題 は、いまだ空想世界 を漂 って い る子
この学年では、東洋の諸民族及 びギ リシ ャ人 の歴
どもの意識を、徐 々に環境へ向けてい くことにあ る。
史 と文化 を扱 う0
それゆえ、意識的に郷土 と関連 づ けて、郷土科 の学
- 6年 -
習をすすめる。 日頃見慣れて い る植物 ・動物 ・石 ・
山 ・川 ・草原などを教材 と して、 これ らを、「
決 して
ローマ史 と、1
5
世紀初めまで の ギ リシ ャ ・ローマ
文化 の影響 を扱 う。
-4
4-
教育説経研究の視点から見る教育史(】)- 1919- 25年における自由ヴァル ドルフ乍校の教育課程-
- 7年 -
(ホーマー時代)
、 中世 (
偉大 な悲劇詩人 の時代 ) 、
1
5
世紀初 めか ら1
6
世紀初 め に至 る ヨー ロッパ内外
近代 (プラ トン ・ア リス トテ レス時代) を持 って い
の様 々な出来事 について話す。 この時期 は発 明 ・発
る。私 たちの舌代 (
ゲルマ ン神話 の時代 ) は、 いわ
見の時代 か ら自然科学交流の時代 と して特徴 づ け ら
ゆる中世が始 まる頃に位置 している。
歴史 を全体 的 に取 り扱 うことによ って、 古代 が、
れる。近代 の人類 の生が成長 して い くこの時代 の重
要 さについて、子 どもが深 い印象 を得 られ るよ うに
歴史 の全体性をどのように考 えた時代 で あ ったか も
配慮す る。
示す ことがで きる。 たとえば、 ローマの 7代 の王 に
- 8年 -
ついての リグィウスの叙述をとりあげるのであるが、
現代史 まで進む。 なぜな ら、 「生徒 が学校 を去 る
までに、彼 の心の中に人伝の歴史 につ いての イメー
彼 の叙述 には、 ローマ的観点か ら、 全人叛史 につ い
ての一種 の黙示録的考察が与え られているのであ るo
ジが出来上 が っていなければな らない」(
S.3
6.
)か
らである。
最後 に、現代の立場か ら全歴 史 を述 べ、 すで に現
われかけている未来像の概観を得 る。
近代文化史においては、子 ど もが、蒸気機 関 ・自
動織機 の もた らした変化を、 あ りあ りと思 い浮 かべ
こうす ることによって、全体 的 な発展 ・進 歩 の系
統立 った像 を生み出す ことがで きる。
」 (
S.5
2
f
.
)
られるよ うに説明す る0
- 9年 一
地理 (
Geo9r
aPhi
e
)
再 び、3
0
年戦争か ら現代 まで の歴史 を辿 る。 ただ
- 5年 一
郷土の隣接地域 の土地形態 と経 済 の関係 を話 しあ
し、 これまでは歴史的事実 につ いて多 く述べて きた
のに対 し、 この学年 で は歴史の要因に焦点をあて る。
この間の人類の意識 の拡大 や視 界 の広 が りは、 天文
う。
- 6年 -
学や地理を通 して描 き出 し、生徒 が現代 の特質 を知
よ り広 い地域を取 り扱 い、一所 の地域 の気候 関係
り、理解 できるように説明 される。
か ら地球全体 の気候関係へ話 を進 める。
-1
0
年一
- 7・8年 一
気候関係の考察を継続す る。精 神文化 状況 を、 物
古代東洋史及 びギ リシ ャ史 を全 般 的 に述 べ る。
質的 ・経済的関係 の既習内容 と関連づけて考察す る。
「
歴史考察 の初 めに、熱帯 また は温帯 におけ る、 大
- 9年 -
地への民族 の依存 について話す。 た とえば、 一 つの
アルプス地域の例か ら出発 して、 地球 全体 の山脈
民族 が山か ら谷 あいに下 りて きた ときの変化 につ い
構造 について論 じる。
て、地理的にで はな く、歴史的 に語 る。
」(
S.4
3
f
.
)
-1
0
年一
文学 と歴史 (
Li
t
er
at
urund Geschi
cht
e
)
- 11年 一
地球を、形態学的 ・物理学的全体 として描 き出す。
- 11年 -
土地測丑 と地理の関係を取 り扱 うO
ドイツ語 ・11
年の項 を参照。
Physj
k)
物理 (
- 6年 -
Geschi
cht
e)
歴史 (
-1
2
年-
1年か らの楽器の演奏体験を もとに して、 音楽 的
「この学年で肝腎な ことは、 考 察 を介 して歴 史 の
深層へ入 ってい くこと、そ して、 単 にい きい きと特
な ものか ら音響学へ と導 く。 (
喉頭 について も言 及 す
る。)
1年 か ら養 って きた色彩的 な ものか ら光学 - と導
徴づけ られた因果関係 の説明の域 を越 えて、 全体像
へと進 めることである。 い くつ もの民族史 あ るいは
く。
熱学 ・電磁気学の初歩 を始 め るが、 現象 か ら出発
文化史を特徴づ けよ うとすれば、 古代 ・中世 ・近代
とはどういうものであるかを述 べねばな らない。 無
し、現象 か らわか る範囲内で法則 を展開す る。
気力で不完全な文化が ど うい うもので あ るか も示 さ
- 7年 一
ねばな らない。 たとえば、 ア メ リカ文化 は初 めを持
音響学 ・光学 .熱学 ・電磁気学 の知識 を広 げて い
たない し、硬化 して しま って い る中国文化 は終 わ り
く。 これに加 えて、て こ ・波紋 ・滑車 ・斜面 ・気柱 ・
を持 たない。 これに反 して、 ギ リシャ時代 は、 古代
ね じ等 の、力学 の重要 な基礎概念 を学ぶ。
-4
5-
神 奈川 大学 心願 ・教育研 究諭盤
- 8年 -
第 3)早 (
201
2年 31】31E
l
)
- 11年 -
6・7年の継続。実際的応用 を示 す。 加 えて流体
「酸 ・塩基 ・塩 の概念 の拡大 を通 じて、 化 学 全 体
力学 ・気体力学 ・気候学 ・気象学 につ いて論 じる。
を概観す る。無機 ・有機化学 のあ らゆ る分 離 を避 け
- 9年 一
El
e
me
nt
e
)か ら出発す るので はな
るQ化学 の要素 (
重要 な交通 ・通信機関であ る機 関車 と電 話 を と り
く、過程 (
Pr
oz
e
s
s
)か ら出発 す る。 それ ゆ え、 た
あげ る。 そ して、機関車 との密接 な関係 で熱学 と力
とえば塩 ・酸 ・塩基 ・可燃性 物質 につ いて述 べ たの
学 を扱 い、電話 との関連 で電気学 と音響学 を扱 う。
ちに、個 々の元素 (
St
of
f
) について考察す るo た と
力学 の節物運動 を、数学的放 物 線 との関 わ りで論
じる。
えば、硫黄 を扱 う場合、地球 の火 山活動 の一 部 と し
-1
0
年一
動 ・植物及 び人間の物質交換 (
新 陳代 謝) の捉 進 力
簡単 な機械 などを用 いた傾 め投 げまで力学 を扱 う。
そ して、 ものを投 げた時 に措 か れ る放 物線 と数 学 的
て考案す ると同時 に、生 きた蛋 白質 の中に存在 す る、
として考察す る。 そ して、硫黄 元 粟 は、 自然 の普 遍
的な硫黄活動 の中で、活動を停 止 し、 静止 状 態 に遷
な放物線が一致す ることを示す。
した凝固部分 として把握 され るo あ らゆ る元 素 が こ
- 11
年一
のよ うに考察 され る。
無線電信 ・レン トゲ ン線 のよ うな、 電 気 学 領域 に
このよ うに硫黄 につ いて説明す るな らば、硫黄 は、
おける近代 の成果 を扱 う。同時 に、 放 射 能 につ いて
たとえば砂糖 や他 の炭素化合物 の よ うに、 r有 機 的J
も扱 う。
で、地球上 のすべての生 命活 動 を貫 通 して い る過 程
-1
2
年一
(
Proz
e
s
s
) と して姿 を現 わす。
光学
(1.光、 それ自体 と光度 測定 、 反 射 、 光 と
「
元素」 と、包括 的な世界活動 ・人 間活動 との関
わ りを示す ことによ って、 F
元 素 Jの中で硬 化 した
物質
2.屈折、像 の変化
」(
S.4
9.
)
ものが、
生 き生 きと した ものになるのである。
3.色の生成
-1
2
年-
4.偏光
「ここで もまた、 まとま りが重 要 にな る。 た とえ
5.喜複屈折)が扱われ る。
ば、 ペプシン形成 な どの過程 と、 自然界 にお け る生
更 に、近代物理学及 び、近 代物 理 学 が現 代 の世界
像 に与 えた影響 を論 じるO
成過程 の相違 を、例 を用 いて考察 す る。 また、 化 学
産業 が現代文 明に対 して持 ってい る意味を考察す る。
」
(
S.5
3.
)
化学 (
Chemi
e
)
博物学 (
Nat
Ur
kunde
)
- 7年 一
燃焼 とい う日常 的現象か ら出発 して、 簡単 な化 学
- 4年 「自然界を空想的倫理 的 に取 り扱 う姿勢 か ら、 自
的概念 を身 につけ る。
- 8年 一
然物 を客観的 に観察 し、認識 的 に取 り組 む姿 勢 へ と
工業 のための化学変化の意義 を述 べ、 有 機 物 (で
んぷん、糖、蛋 白質、脂肪) の構 造及 び、 人 間 の滋
進んでい く。
」 「まず初 歩 的 な人 間学 (Menschenkunde
) において、芸術 的 な また畏 敬 に充 ち た方 法
養 のための これ らの意味 につ いて論 じる。
で、人間を示す。 そ の の ち動物 界 を示 す。 そ の際 、
- 9年 一
動物界 は特 に人間 との関わ りで考 察 す る。 個 々 の動
Or
gani
sat
i
on)
物 につ いて説 明 し、動物 の器官 ・桟棟(
有機化学 を扱 う。
-1
0
年一
と人間のそれを比較す るのであ る。 教 師 は、 これ に
散 ・塩基 ・塩 を扱 う。無機 化 学 に お け る酸 ・アル
よ って、動物界 の多様性 が人 間 の中で は明確 な秩 序
カ リ液 につ いて述 べた後、植物 ・動物 ・人間の中で、
と調和 を保 って一 つ にま とめ あ げ られて い る とい う
つ ま り自然の中で、酸 ・塩基 とい う相 反 す る ものが
実感 を、子 どもたちに与 え られ るよ うに教えてい く。
」
生 き生 きと作用 していることを示 す。 「生 徒 が この
(
S.2
5.
)
- 5年 一
ことを納得 しない限 り、酸 ・塩基 ・塩 は、 空虚 な抽
象的概念 と して とどまってい るにすぎない。
」(
S.44.
)
子 どもたちに馴染 の薄 い動物 連 を扱 うが、 見 知 ら
た とえば、蜂蜜 ・す っぱい果汁 ・ア ル カ リ性 で あ る
ぬ動物 を も、子 ど もた ちが あ りあ りと思 い描 け るよ
血液 を例 にとりなが ら、殻 と塩基 の作用 を考察す る.
うに説明 してい く。
-4
6-
教
市秋程研 究の 批 点か ら見 る教育史 日 )- 1919-25年 にお ける 自由 ヴァル
次 には、観察対象が人間及 び動物か ら植物 へ と移
ドル フ学校 の教I
J
L
f耽柁 -
や、 人 間や動物 の生命体 (
Or
ganl
S
muS:有機体)
行す る。 「
植物学 は、つねに大地 の営 み との関連 で
の中での皮膚形成 ・骨形成 は、 いか に人 間が 自然 の
取 り扱われ る。 そ して、大地 は生 きた有機体 と して
石灰化過程を克服 しなければな らないか を示 して い
考え られる。。」 (
S.2
7.
)
る。
また、金属の様子や化学反応 を十分 に説 明 す る こ
- 6年 5年 の植物学 を継続 し、 それか ら鉱物界へ移行 す
る。 「
鉱物 は徹頭徹尾地理 との関係 で観察 され る必
とと並行 して、地理や人間の組織 にお け る作用 につ
いて も話す。
」 (
S.4
4.
)
要があ り、地質学的関連か らはとりたてて述べない。
たとえば、石灰岩の山 と花尚岩 の山が与 え る正反対
のイメージを、子 どもに理解 させ たの ち、 個 々の石
博物学 (Na
t
ur
ge
schi
cht
e
)
- 11年 「
細胞学が全般的に論 じられる。 そ して、 植物学
灰 岩 と花 商岩 を子 ど もの 目の前 に置 いて み る。」
は単子糞植物 まで。
(
S.
3
0.
)
一 7年 一
細胞学 は、最 も小 さい ものの中 において も大字苗
「
生徒 たちは、 これまでの数年 で、 人間か ら動物
界、植物界、大地、更 に個 々の鉱物 につ いて考察 を
進めて きた。 この自然観察 は、 再 び人 間へ と戻 って
的関係が現われていることが至 る ところで理解 で き
るように説明 され るO たとえば、 細胞分裂 の際、 有
犠体 は字苗の根源的現象 を再現 している。
植物学 においては、植物が、 大 地 や全宇笛 の作用
くる。
人間の栄養 と健康 の関係 につ いて述 べ る。 本来 の
子 ども時代 が終わ り、性的成熟期 に入 ろ うと して い
との関わ りで理解 され ることに重点をお く。
」
(
S.48.
)
-1
2
年「
顛花植物 について全般的に論 じるo それか ら再
るこの学年 の生徒たちは、栄養 と健康 の関係 につ い
て理解 し、興味をもつのに十分 な ほど成長 して い る
し、 また、 これ以後の人間が陥 って しま うよ うな ェ
ゴイズムに も、 まだ陥 っていな い時期 に位置 して い
び動物学の最終的な考察をおこな う。 動物界 のお も
な系統を説明 し、人間の個 々の器官組織が動物グルプの個々の組織への広が りと して明確化 され る。 同
時に、個々の動物 は人間の一個 の器官 あ るいは器官
る。
」 (
S.3
2
L)
- 8年 -
の一部分 として見徹 されるO
低学年の動物寓話や初歩的動物 学 の中で、 具体 的
「
生徒が社会 -出てい く時、彼 は、 自然界 の総体
(
Zus
amme
nf
as
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ung de
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ur
r
e
l
C
he),つ ま り
ミク ロコス モ ス (
Mi
kr
okos
mos) と しての人 間像
に教えた内容が、最終学年 で、学問的に考案 され る。
同時に、全体 をつな ぐ糸 と してす べての授業 を貫
流 している人間学 によって、 自然 の全嶺域 が全体 -
を携 えて出ていかねばな らない。
器官組総 の機能の相違や、組織 同士 の調和 の とれ
まとまりとして見渡せるように試 み る。
」 (
S.5
3.
)
た相互作用が明 らかに されねばな らない。 すで に、
身体的なもの、心的 ・精神的な もの との関連 で、 病
気 と健康 について学んだ。 いまや、生 徒 自身 の十分
に成長 した身体 を通 して、骨 と筋 肉 の仕組 みや、 目
の内的構造 など、人間 において力学 的及 び物理学 的
概念 によって理解 されるものについて学ぶ。
」(
S.3
6.
)
- 9年 一
人間学 (
Ant
hr
opol
ogi
e
)を継続0
-1
0
年「
人間学の中で、器官 (
Or
gan)及 び器官 の作 用
が、心意的 ・精神的な もの との関連で描 き出され る。
個人 としての人間か ら、民族学へ と進 む。 他 に、 鉱
物学 と結晶学が取 り扱 われ る。 授業 の この部分 は、
地球を形態学的全体 として措 く地理 とつなが って い
る。 こうして鉱物学的 ・地質学的な ものとの関連 で、
たとえば、石灰 について話す。 地上 で の石灰化過程
- 47-
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