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1 「タイ・インドの経済協力及びアジア共同体との関係」 チュララット

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1 「タイ・インドの経済協力及びアジア共同体との関係」 チュララット
「タイ・インドの経済協力及びアジア共同体との関係」
チュララット・ステートーン
タイ財務省財務政策局副局長
本日はお招きくださりありがとうございます。御礼申し上げます。今回のシンポジウム
は、非常にタイムリーで素晴らしいものだと思っております。
今日は、タイとインドの貿易について、何故、両国の経済協力が必要なのか、タイの貿
易国、投資先としての魅力、それからタイとインド、ASEAN とインド、BIMSTEC の FTA
について、そして将来の課題と展望について話をします。
まず両国の貿易関係ですが、両者の文化的、歴史的関係は長いのですが、貿易額は少な
いものでした。しかしこの3年間、非常に伸びています。タイからインドへの輸出は、機
械をはじめとする工業品が全体の75%を占め、タイのインドからの輸入は宝石、金属鉄
鋼等、原材料がそのほとんどです。
何故、両国間の経済協力の必要性があるのでしょうか?インドは平均関税率が18%と
高く、一方、タイ側は平均12%で、まだ統合までは時間がかかりますが、FTA の作業を進
めているので、将来的にインドは、タイにとって貿易、投資先として非常に有望でありま
す。1991年以降、インド政府の経済改革により、インドはより世界に開かれた国にな
ってきています。
インドの魅力は、人口が多く、その内、30%が富裕層であるという点です。次に労働力
です。IT 産業の中心地であり、年間35万人以上のエンジニアが大学を卒業しています。
賃金コストは低いし、英語も話せる。また経済成長率も6−7%と、アジアでは中国に次い
で2位の成長率です。確実に短期間で経済が成長することでしょう。しかし財政赤字の問
題があります。GDP 比10%の大きさで課題のひとつです。
またタイはインドの玄関口ともなっており、インフラ整備により、空路、海路、陸路と
も、タイがインドへ向かう交通の要衝になると考えております。
UNCTAD の調査によると、FDI の額で、タイは中国、インドに次いでアジアで3位、世
界全体で9位でした。IMD の調査では、競争力という点において第27位でした。日本は
タイへのトップ投資国です。国際協力銀行(JBIC)の調査によれば、日本のメーカーは海
外事業の場所として、中国に次ぐ2番目の国としてタイを選択しています。その理由とし
て、市場の可能性、サプライベースや産業クラスターがあり、政治的安定性、政府の政策
が良いなどを挙げています。
では何故、タイなのでしょうか?まず政権が安定していることです。そして政権のリー
ターがビジネスを理解していることです。タクシン首相のもとで、自由化改革が進められ
ています。また社会も安定し、外国人、外資を受け入れる土壌があります。道路、海上交
通網も整っており、新しい空港も来年開業します。さらにインフラ整備を進める方針で、
タイ政府は5年間総額で425億ドルの予算を認めています。タイは東南アジア、南アジ
アにも近いので有利であり、海路、空路、陸路の拠点となります。海上輸送に関しては、
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現在拡張中のラノン港が完成すれば、これまでインドまで25日かかっているところが4
日∼7日に短縮でき、輸送コストが大幅に削減できるのです。
世界銀行の調査では、タイは155ヶ国の中で、ビジネスのしやすさという意味で20
位に位置づけられています。労働者の賃金、オフィスの賃料、駐在員の生活費、工業用の
電気料金等がかなり安く、このようなコストを総合すると、バンコクでのビジネス・コス
トはかなり低いのです。
またタイは政策面でも規制が少ないのです。輸出規制はなく、製造業に関しては外資規
制もありません。投資の規制が少ないうえ、税制面等の優遇策も揃っています。
(スライド
を示しながら)政府が力を入れるターゲット・セクターは6つありますが、中でも、貴金
属・宝石、自動車、情報通信についてはインドと大きな利益を共有できるでしょう。
タイは、輸出市場拡大のために FTA を進めています。ASEAN 内、ASEAN と中国、タイ
とオーストラリア、ニュージーランド、インド、そして交渉中のアメリカ、ペルーとのも
のがあります。インドも FTA の交渉を進めており、アジアの中でインドの影響をひしひし
と感じられるようになっています。
(スライドを示しながら)タイは、ASEAN、日本・中国・韓国、そして BIMTEC をつなぎ、
ちょうど東アジアと南アジア、そして東南アジアを結ぶことができます。
次に FTA についてです。ASEAN に関しては、最初の6カ国間では、関税率が5%未満、
そして貿易の60%が無関税となっています。2005年には関税が全廃される予定です。
新加盟国に関しては、2015年が期限となっています。インドとタイの間の FTA 協議で
は、物に関して、早期収穫方式(early harvest)により、82品目については先に予定より前倒
しで関税引き下げを行うことで合意しています。2006年9月には関税がゼロとなる見
込みです。それ以外の品目についても交渉が進んでおり、2006年中に交渉が完成する
可能性もあります。関税全廃のターゲットは、2010年となっています。サービス、投
資についてはあまり大きな進展はありません。さらに、FTA において、重要なのは両国間
の経済協力という側面です。貿易の円滑化、相互認証、ビザ、情報通信、バイオテクノロ
ジー、知的財産権等々、協力すべき分野があります。
早期収穫方式の82品目についてはインド、タイ間の貿易が非常に短期間で大きく延び
ています。
ASEAN とインド間の FTA についてはタイ・インド間の FTA と基本的には同じ考え方で
進められています。ただ進捗は、当初の想定よりは時間がかかっております。というのは
ASEAN 内での意見調整に時間がかかっているからです。ASEAN とインドの間では早期収
穫方式を採用しないことが決まっています。
BIMSTEC については、南アジアを中心に7カ国が参加していますが、途上国、後発途上
国が入っていることで、合意はなかなか難しいです。枠組みに関し、今年中には妥結する
方向ですが困難かも知れません。
FTA が導入されて以来、タイとインドの間の貿易は増加していますし、今後、この伸び
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は加速するでしょう。ASEAN の関税撤廃が進み、タイ・インドの FTA も進むと、直接投資
も増えるでしょう。宝石、自動車、情報通信分野、中でも中小企業の投資が増えると期待
されています。
複数の FTA に入っていると、他の国に対する競争優位が生まれ、複数のところと FTA を
持っている国に投資が集まります。もちろん、FTA が増加することによるスパゲティ・ボ
ウル現象には気をつける必要があります。課題としては、競争を進め、コスト効率を上げ
ていかなければなりません。品質を国際基準にする必要もあり、政策を改善し国際的なシ
ステムに整合的な制度にしていくことが必要です。さらに R&D への投資、技術移転やジョ
イントベンチャーを進めること、クラスターの形成、前方・後方連関の実現等が必要とな
ってきます。
最後になりますが、自由貿易の枠組みの中で一番問題となるのが、所得分配の問題です。
アマルティア・センは、
「自由貿易の恩恵が意味をなすのは、恩恵が平等に分配されるとき
である」と言っています。インドがアジア、世界に与える影響は大きいものがあります。
インドが市場を全面的に開放するのであれば、タイはそのメリットを十分に受けることに
なるでしょう。そしてインドへの地理的な近さや文化的なつながりがあるタイは、インド
への玄関口となれると考えております。ご静聴ありがとうございました。
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