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分割版 第4節-3 (PDF形式:1192KB)

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分割版 第4節-3 (PDF形式:1192KB)
アジアのインフラ整備に向けた我が国の貢献
第4節
3 アジアのインフラ整備に向けて
(1)8 兆ドルに上るアジアのインフラニーズ
9
ADB によると 、今後アジアが潜在的成長力を発揮
するためには、2010∼2020 年の 11 年間に、域内イン
フラ整備のために約 8 兆ドルが必要とされている(第
2-4-3-1 表)。そのうち 68%は新たなインフラのための
必要額、32%は既存のインフラの維持・更新のための
第 2-4-3-2 図 アジア各国・地域の 1人当たり名目
GDP(2008 年)
(ドル)
60,000
50,000
40,000
30,000
第
2
章
ミャンマー
カンボジア
ラオス
インド
ベトナム
フィリピン
インドネシア
ア ジ ア 地 域 は オ ー ス ト ラ リ ア( 一 人 当 た り 名 目
中国
(2)インフラ整備の経済効果
タイ
にかかる費用の合計は約 2,900 億ドルといわれる。
マレーシア
ラプロジェクトが少なくとも 1,077 件存在し、これら
台湾
投資必要額のほか、既に計画されている広域的インフ
韓国
ル(29%)と大きな割合を占めている。これら各国の
ニュージーランド
0
香港
電力は 4 兆 900 億ドル(51%)、道路は 2 兆 4,700 億ド
ブルネイ
10,000
日本
信、運輸、水道・衛生の 4 分野にまたがり、なかでも
シンガポール
20,000
オーストラリア
必要額である。分野別では、エネルギー(電力)、通
資料:IMF「World Economic Outlook Database, April 2010」から作成。
第 2-4-3-3 図 アジア各地域の 1 人当たり GDP と
広域開発計画
日メコン経済産業協力イニシアティブ
GDP が 48,951 ドル)から、ミャンマー(同 479 ドル)
開発地域
まで経済格差が大きい。ASEAN10 でみるとシンガ
産業集積地
ポール、ブルネイ、マレーシアの 3 か国以外は、5,000
ドル以下となっている(第 2-4-3-2 図)
。
アジア域内には、前述のとおり、広域インフラプロ
IMT
(インドネシア・
マレーシア・タイ)
ジェクトの構想が多数存在しており、インフラ整備に
よって、産業集積地間や生産地と消費地を結ぶ効率的
:3,000 ドル以上
:1,000∼3,000 ドル
:500∼1,000 ドル
:250∼500 ドル
:250 ドル未満
な産業の動脈が生まれれば人や物の往来が活発化して
経済統合が深まり、地域間での切れ目のない発展が進
第 2-4-3-1 表 ア ジアのインフラ投資ニーズ 8 兆
ドル(2010~2020 年)
セクター
エネルギー(電力)
通信
運輸
空港
港湾
鉄道
道路
水道・衛生
計
単位:10 億ドル(2008 年実質価格)
新規
更新
計
3,176
912
4,089
325
730
1,056
1,762
704
2,466
7
5
11
50
25
76
3
36
39
1,702
638
2,341
155
226
381
5,419
2,573
7,992
備考:対象国・地域は、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、カ
ザフスタン、キルギス共和国、タジキスタン、ウズベキスタン、ブ
ルネイ、カンボジア、中国、インドネシア、ラオス、マレーシア、
モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナム、バングラデシュ、ブータ
ン、インド、ネパール、パキスタン、スリランカ、フィジー諸島、
キリバス、パプアニューギニア、サモア、ティモール、トンガ、バ
ヌアツの 30 か国。
資料:ADBI「INFRASTRUCTURE for a SEAMLESS ASIA」から作成。
資料:ERIA 資料を基に作成。
南部島嶼
地域開発
むことが期待される。CLMV 諸国(カンボジア・ラオ
ス・ミャンマー・ベトナム)や島嶼地域などの 1 人当
たり GDP が低い地域を含めて広域開発を行うことで、
大きな経済効果が見込まれる(第 2-4-3-3 図)。
また、ADB は、上述の約 8 兆ドルのインフラ投資が
行われることにより、2010 年以降、アジア開発途上
国の実質所得を約 13 兆ドル押し上げる効果が期待さ
れる、と指摘している。その内訳は、中国が 3 兆 5,500
億ドル、インドが 3 兆 1,400 億ドル、インドネシアが 1
兆 2,800 億ドル、タイが 1 兆 2,400 億ドル、マレーシア
が 8,300 億ドル、ベトナムが 4,000 億ドル等となってい
10
る 。
9 ADB(2009)
「INFRASTRUCTURE for a SEAMLESS ASIA」。
10 前掲、ADB(2009)。
通商白書 2010
207
第2章
アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み
(3)不足するインフラ投資資金
2010∼2020 年の 11 年間で 8 兆ドル(年平均 7,260 億
ドル)が必要とされるアジアのインフラ整備だが、実
第 2-4-3-5 図 アジア地域インフラプロジェクトへ
の民間投資額
(億ドル)
400
際にインフラプロジェクトに振り向けられた公的援助
350
開発資金や民間資金の額は、需要を大きく下回る水準
300
にとどまっている。先進国政府や国際援助機関から東
250
アジア地域のインフラプロジェクトに対して供与され
200
た公的援助資金(有償協力、無償協力、技術協力)の
150
額は年々減少傾向にあり、2007 年の供与額は約 70 億
ドルにとどまっている(第 2-4-3-4 図)。
エネルギー
通信
運輸
上下水道
合計
100
50
0
また、アジア地域のインフラプロジェクトに投入さ
れた民間資金については、1990 年代のアジア通貨危
機による急激な落ち込みから増加傾向にあるものの、
2007 年の投入額は約 220 億ドルにとどまっている(第
2-4-3-5 図)
。
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
備考:対象地域は世銀の地域分類による East Asia and Pacific (中国、
タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、カン
ボジア、ラオス、ミャンマー、モンゴル、北朝鮮、パプアニュー
ギニア、フィジー、サモア、アメリカンサモア、マーシャル諸島、
ソロモン諸島、ミクロネシア、ティモール、トンガ、キリバス、
バヌアツ、パラオ)。
資料:世銀「PPI database」から作成。
このように、アジアのインフラプロジェクトに対す
る公的援助資金供与額及び民間投資額を合計しても約
11
300 億ドル(2007 年)に過ぎず 、年平均 7,260 億ド
ルのインフラニーズとは約 7,000 億ドル近くもの乖離
がある(第 2-4-3-6 図)
。こうした資金不足を埋めるた
給が必要とされている。
(億ドル)
8,000
7,000
水道・衛生
6,000
運輸
5,000
4,000
3,000
第 2-4-3-4 図 東アジア地域のインフラプロジェク
トに対する公的援助資金の供与額
の推移
約7千億ドル
めには、民間資金を利用した新たな手法による資金供
第 2-4-3-6 図 アジアへの投資額とインフラニーズ
通信
2,000
民間投資
ODA
1,000
0
エネルギー
(電力)
インフラニーズ(年平均)
投資額
備考:ODA 供与額は 2007 年、民間投資額は 2008 年。
資料:OECD-DAC、世銀 PPI、ADBI から作成。
(億ドル)
140
東アジア諸国への ODA 供与額
日本による東アジア諸国への ODA 供与額
120
(4)我が国の政府開発援助(ODA)によるインフラ
100
整備協力
80
60
我が国からアジア地域へのインフラ関連での公的支
40
援としては、ODA による無償資金協力、有償資金協
20
力(円借款)、技術協力がある(第 2-4-3-7 図)。2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
0
備考:対象地域は中国、インドネシア、ラオス、マレーシア、モンゴル、
パプアニューギニア、フィリピン、タイ。
資料:OECD-DAC から作成。
年 の 二 国 間 ODA 全 体 額
12
の う ち、 ア ジ ア 向 け が
50.4%となっている。項目別では、教育・医療・上下
水道などの社会インフラ向けが 17.3%、道路・鉄道・
港湾などの運輸、電力・ガスなどのエネルギー関係等
の経済インフラ向けが 37.4%と、インフラ整備が全体
13
額の約半分を占める 。この経済・社会インフラ整備
11 また、これらにアジア各国政府自身の財政資金によるインフラ整備の金額を加えても、インフラ資金需要を満たすことはできていない
といわれる(経済産業省(2009)
「アジア PPP 政策研究会報告書」)。
12 外務省(2009)
「2009 年版政府開発援助(ODA)白書」より、無償資金協力、有償資金協力(貸付実行額)、技術協力の金額を合計。
13 前掲、外務省(2009)。
208
2010 White Paper on International Economy and Trade
アジアのインフラ整備に向けた我が国の貢献
分野を地域別実績でみると、2003 年から 2007 年の合
これまでに、タイのレム・チャバン港、インドネシア
計では、東アジア向けが 47%と大きな割合を占めて
のバリ国際空港などがあり、港湾、空港、鉄道、道路
いる(第 2-4-3-8 図)。
等の運輸インフラ向けを中心に整備が進められてきた
有償資金協力(円借款)による協力事例としては、
第4節
(第 2-4-3-9 図)。
第 2-4-3-7 図 日本の ODA の形態
アメリカ
南米 1%
北米・中米 1%
ヨーロッパ 6%
アフリカ
2
章
サハラ以南
アフリカ 3%
サハラ以北
アフリカ 5%
技術協力
有償資金協力
︵円借款︶
国際機関に対する出資
政府開発援助
︵ODA︶
研究員受入
専門家派遣
プロジェクト技術協力
開発調査
青年海外協力隊派遣
シニア海外ボランティア派遣
国際緊急援助隊派遣
プロジェクト借款
ノン・プロジェクト借款
債務繰延
オセアニア 1%
第
無償資金協力
二国間援助
一般無償援助
一般プロジェクト融資
債務救済無償
経済構造改善努力支援無償
(ノン・プロジェクト無償)
草の根無償
水産無償援助
緊急無償援助
食料援助
食料増産援助
第 2-4-3-8 図 経済・社会インフラ整備分野におけ
る日本の ODA 地域別実績割合
アジア
アジア地域・
多国間 6%
東アジア
47%
中央アジア
30%
備考:2003 ∼ 2007 年の合計。
出所:外務省 Web サイトを基に作成。
出所:外務省 Web サイト。
第 2-4-3-9 図 有償資金協力(円借款)による協力事例
【タイ】
レム・チャバン港(Ⅰ∼Ⅲ)
(1985 ∼ 1996)228 億円
【マレーシア】
クアラルンプール国際空港
(1994) 615 億円
【インドネシア】
バリ国際空港(E/S, Ⅰ∼Ⅱ)
(1986)314 億円
【中国】
チョンキンモノレール
(2000) 271 億円
【ベトナム】
南北トナム鉄道橋安全改修プロジェクト(I ∼ II)
(2003)230 億円
【インド】
デリーメトロ(フェーズ 1・2)
(1997 ∼ 2010)3750 億円
資料:国土交通省資料を基に作成。
通商白書 2010
209
第2章
アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み
(5)PPP による民間資金を活用したインフラ整備
2009 年 4 月に取りまとめられた経済産業省「アジア
電設備の建設を ODA が支援し、後続の発電設備の建
設には民間企業が参画した。
PPP 政 策 研 究 会 」 報 告 書 に よ る と、PPP(Public-
発 電 設 備 第 1 号 機 の 建 設 の た め、JICA は 1994∼
Private Partnership)とは「経済成長の源泉として「市
1999 年に円借款による支援を実施した。第 2 号機と第
場」と「競争」を通じ、公共サービスの効率性を向上
3 号機建設には、複数の我が国民間企業(電力会社及
させるとともに、新たな雇用を創出し、新たなサービ
び商社)が参画した。ここで発電された電力は 20 年
ス産業を創出する公共サービスの民間開放」とされ
間の売電契約に基づきベトナム電力公社に供給し、最
る。PPP 事業は公的機関を主体とした ODA による支
終的に発電設備はベトナム政府に譲渡する予定であ
援事業とは異なり、事業を公的機関から民間企業・各
る。
種団体などに開放するものである。さらに、先進国の
こうした事例のほか、先述のデリー・ムンバイ産業
政府・民間企業のみならず、相手国の民間企業も加
大動脈構想、メコン経済回廊、インドネシア経済回廊
わった官・民 4 者のパートナーシップによる事業展開
でも、民間資金の活用が期待されている。
が前提とされる。従来の開発援助では施設整備が中心
であったが、PPP による開発では、施設整備とその運
営・維持管理を一つのパッケージと捉え、サービスの
アウトプットにも重点がおかれる。
②戦略的な PPP 案件形成の必要性
もっとも、このように具体的に実現した例は現状で
は限られている。これは、PPP プロジェクトには公的
資金による支援スキームの整備が十分でないことや、
官民の役割やリスクの分担の複雑さなどから、一般的
① PPP 事業の事例
PPP によるインフラ整備の類型には、運営譲渡方式
14
や前後方式等がある 。
な民間投資案件と比較して難易度が高いためと推測さ
れる。こうしたことから、欧米の開発援助機関におい
ては、民間セクターへの支援を強化している。日本政
(a)カイメップ・チーバイ国際港湾開発事業(ベト
ナム)
:運営譲渡方式
府においても戦略的な案件形成が必要であり、インフ
ラ関連事業者の国際競争力の強化、ファイナンスツー
ベトナムのカイメップ・チーバイ国際港湾の開発事
ル等の政策支援ツールの拡充、様々な外交チャネルを
業は、ODA で港湾整備を支援し、完成した港湾の管
活用した相手国への働きかけが必要と考えられる。ま
理・運営を民間に委託することを目指している。
た、案件形成の初期段階から関与を行うための F/S
ベトナム政府からの要請に基づき、JICA は、2001
年∼2002 年に南部地域における総合的な港湾開発計
(フィージビリティ・スタディ)等の案件形成支援
ツールの拡充も求められる。
画の策定等を目的とする調査を実施、2004 年∼2006
経済産業省では、2009 年 7 月に開催した「PPP 政策
年にはカイメップ・チーバイ国際港湾建設事業の事前
タスクフォース」において、上記の課題に対する検討
調査を実施し、2005 年には同事業への円借款供与を
を進めるとともに、相手国政府との PPP 政策対話を
行った。この事業によって整備される港湾の運営・維
通じて、民間企業が進出しやすくなるよう事業環境整
持管理には、我が国企業等をはじめとする民間企業の
備を働きかけている。
参入を前提としており、運営方策の策定手法、民間セ
クターの港湾運営参入に係る規制体系の整備等の技術
協力があわせて行われている。
(6)注目を集めるインフラ・ファンド
インフラ整備の需要が拡大する中で、民間資金を活
用したインフラ・ファンドも注目を集めている。ファ
(b)フーミー火力発電所建設事業(ベトナム):前後
方式
ベトナムのフーミー火力発電所事業は、先行する発
ンドは、「集団投資スキーム」とも呼ばれ、他者から
資金を集め、何らかの事業・投資を行い、その収益を
出資者に分配する仕組みであり、インフラ・ファンド
14 JICA によれば、「運営譲渡方式」は、ODA で設備を建設し、完成後の設備の管理・運営を民間が行う方式。「上下方式」は、計画策定
や先行する設備の建設を ODA で支援し、後続の設備の拡張等を民間企業が実施する方式(JICAWeb サイト:http://www.jica.go.jp/
priv_partner/policy/05.html)。
210
2010 White Paper on International Economy and Trade
アジアのインフラ整備に向けた我が国の貢献
第4節
第 2-4-3-10 表 主なアジア向けインフラ・ファンド
企業名
AIG Investments - Infrastructure
Macquarie Capital Funds
拠点
募集開始年
ファンド規模
米国
1997 USD 1,670
オーストラリア
2006 KRW 1,214,200
状況
完了
完了
Challenger MBK Fund Management
シンガポール
2008 USD 1,200
調達中
AIG Investments - Infrastructure
CPG Capital Partners
米国
シンガポール
1994 USD 1,087
2009 USD 1,000
完了
調達中
Standard Chartered Private Equity
シンガポール
2008 USD 800
2 回目完了
1994 USD 780
完了
2009 USD 750
調達中
2001 USD 730.5
2006 KRW 580,000
完了
完了
AIF Capital
香港
Babcock & Brown - Infrastructure
オーストラリア
Division
Emerging Markets Partnership
(Bahrain)バーレーン
Darby Overseas Investments
米国
第
ファンド名
AIG Asian Infrastructure II
Macquarie Korea Opportunities Fund
Challenger Mitsui Emerging Markets
Infrastructure Fund
AIG Asian Infrastructure
CPG China Toll Road Fund
SC-IL&FS Asia Infrastructure Growth
Fund
AIF Asia I
Babcock & Brown Asia Infrastructure
Fund
IDB Infrastructure Fund
Korea Emerging Infrastructure
出所:経済産業省「グローバル金融メカニズム分科会報告書」。
原出所:
「2009 Preqin Infrastructure Review」。
章
2
第 2-4-3-11 表 主なインド向けインフラ・ファンド
ファンド名
Macquarie State Bank of India
Infrastructure Fund
3i India Infrastructure Fund
Trikona Infrastructure Trikona
India Infrastructure Advantage Fund
Principle Europa Indian Infrastructure
Fund
IDFC India Infrastructure Fund
JPMorgan Asian Infrastructure &
Related Resources Opportunity Fund
Asian Giants Infrastructure Fund
IDFC Private Equity Fund III
Old Lane India Specific Fund
企業名
拠点
募集開始年
ファンド規模
状況
Macquarie Capital Funds
オーストラリア
2009 USD 2,000
初回完了
3i
Capital
ICICI Venture Funds Management
英国
インド
インド
2008 USD 1,200
2007 USD 1,000
2008 USD 1,000
完了
完了
調達中
Principle Europa Indian Equity Partners スイス
2009 USD 1,000
調達中
IDFC Project Equity Company
JPMorgan - Infrastructure Investments
Group
AMP Capital Investors
IDFC Private Equity
Old Lane Management
インド
2008 USD 1,000
2 回目完了
米国
2008 USD 1,000
2 回目完了
オーストラリア
インド
米国
2009 USD 750
2008 USD 700
2006 USD 500
初回完了
完了
完了
出所:経済産業省「グローバル金融メカニズム分科会報告書」。
原出所:
「2009 Preqin Infrastructure Review」。
とは、インフラ投資を専門とするファンドの総称であ
要に対して、PPP 等を活用したインフラ開発を推進す
る。
るため、2009 年 10 月、前述の「PPP 政策タスクフォー
現在設立されているインフラ・ファンドは、主に欧
ス」のもと、「グローバル金融メカニズム分科会」を
米の年金基金等の資金による、欧米向けの投資ファン
開催した。機動的かつ効果的にインフラ整備を推進す
ドが多い。近年ではインド向けファンドの組成が増え
るための新たな金融メカニズムを開発するため、本分
るなどアジアにおけるインフラ投資向けの動きもみら
科会は、我が国の対応の方向性として、我が国の年金
れる(第 2-4-3-10 表、第 2-4-3-11 表)
。
基金、機関投資家が主体となるインフラ・ファンドの
ADB は 2009 年 9 月、「シームレス・アジアに向けた
創設支援等を通じたインフラ・ファンドへの投資促進
インフラストラクチャー」を公表し、アジアインフ
や、プロジェクト・ボンドの活用の促進について提言
ラ・ファンド(AIF)の設立の必要性を提言した。国
している。
際的にもインフラ・ファンドに対する注目が高まりつ
つある。また、ADB は 2010 年 4 月に、日本の個人・
法人投資家に向けて「ウォーター・ボンド」の販売を
(7)アジアのインフラ投資による我が国の成長に向
けて
開始した。本債権により調達された資金は、アジア太
これまで欧米を中心とした先進国の需要に依存し、
平洋地域における ADB の水関連事業の資金として活
高成長を遂げてきたアジア経済は、貯蓄率は高いもの
15
用される 。
経済産業省では、アジアにおける膨大なインフラ需
の、域内への投資が低く抑えられている。今後はアジ
アの貯蓄を、インフラ整備を中心としたアジア域内へ
15 ADB 及び大和証券グループのプレスリリースより。
通商白書 2010
211
第2章
212
アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み
の投資に向け、内需の拡大による持続的な成長を促す
業権の獲得等により、長期にわたり収益を確保できる
ことが望まれる。我が国においても、国内の金融資産
ようなビジネスモデルを構築することなどを通じ、ア
を成長するアジアのインフラ整備に投資すること、ま
ジアの成長を我が国の成長に結びつけることが期待さ
た、我が国企業がアジアでのインフラ整備を通じた事
れる。
2010 White Paper on International Economy and Trade
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