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第11章 視覚系の情報処理 20040306 11.3 外側膝状
第11章 視覚系の情報処理 20040306 11.3 外側膝状体と視覚野の情報処理 視覚野はブロードマン脳地図17野を第1次視覚野 ( primary visual cortex あるいは visual area I;V1)といい、隣接する18野、19野を視覚前野prestriatevisual coortexと いう.視覚前野はさらに、機能別に、第2次視覚野(visual area II;V2), V3、V4、 MT(middle temporal area )、MST(middle superior temporal area)などの領野 に分けられる.さらに、視覚機能は、頭頂葉、前頭葉にも及ぶ. 視覚野も体性感覚野と同様に、深さ方向は6層に分けられる.4層には、外側膝状体か らの入力がある.4層を除き、深さ方向には性質のよく似た細胞が並び、コラム構造に なっている.V1野はS図11.1に示すように、方位選択型コラムorientation columnと眼優位性コラムocular dominance columnがあり、別の方向で並んでいる.v 1の細胞は方位選択性をもち、同一の方位にのみ反応する方位選択型細胞が集まり、皮質 の表面に沿って、選択する方位が規則的に少しずつ変わる.図では、側断面の棒線の傾き で、選択する方位を示す.また左右の眼球からの信号のうち、いずれかが優位なものが、 方位無選択性細胞のコラム ブロッブ 方位選択性細胞のコラム 1 2 3 表層 R 4 5 6 L R L 白質 右眼優位コラム 左眼優位コラム 方位 網膜 M より P 外側膝状体 図S11.1 サルのV1野のコラム構造の模式図 ---------------------------------------------------------------------------(注13.1)眼球運動には性質と機能の異なるいくつかの種類に分けられる.1章で述べた前庭動眼反 射もその1つである.人間の眼球運動には、例えば、左右両眼が同方向に動く共役性眼球運動 conjugate eye movements、視覚対象が前後に動くときの眼球運動の輻輳運動 vergence movement (立体・奥行き知覚に重要)、固視微動がある.共役性眼球運動は、低速の連続的な追従性眼球運動 smooth pursuit movementと高速の跳躍性眼球運動saccadeの二つに分けられる.固視微動は、0.03-5 秒の間隔で起こる視角約20分のステップ状の動きや300HZの成分を含む視角約15秒の微小な動き 11-1/14 (a) (b) (c) (d) 主観的輪郭線とV2野細胞の適刺激 図S11.2 V2野の主観的輪郭に反応する細胞 交互に規則正しく細胞が配列されている.Lは左眼優位で、Rは右眼優位である.方位選 択性細胞の間に、方位無選択型細胞のコラムであるブロッブ領域が島状に点在している. 2、3層と5、6層にあって、円柱状である.波長選択性を示し、色情報の処理に関与す る細胞群である. 4 高次視覚野 V2には、興味ある細胞として、両眼視差選択性細胞、終端停止型(end-stopped ) 細 胞、主観的輪郭に反応する細胞がある.我々人間は図s11.2のaやbの図形を与えら れると、実際にはないのに、あたかも輪郭があるかのように、主観的輪郭線を感知でき る.図(a)上図では、線分の切れ目で滑らかな線が見え、また左右で異なった面に見え る.下図は、主観的輪郭を生じさせる有名な例にKaniszaの三角形である.物理的には存 在しない三角形が見え、それが手前にあり、黒い円が背後にある.このような主観的輪郭 線に反応する細胞が見つかっている.図S11.2(b)のように線が食い違って入る境 界に対して最大応答をする細胞がある.図を90度回転させると反応しない.図bのパタ ンを左右に動かすと、図cを動かしたときと同じ反応をしめすが、図dを動かしても反応 しない.奥行き知覚に関与する細胞であることが分かる. さらに、高次視覚野や高次中枢について小領野の機能が全て分かっているわけではな い.網膜からV1までは特定の色(狭い帯域の波長)に反応する細胞は存在しないが、V 4にはスペクトル特性が急峻で、特定の波長に反応する細胞がある. 11-2/14 図S11.3サルの 顔ニューロンの反応 IT野のうち,AIT野は、それを壊すと視覚的再認(以前見たことのある物体の認 識)にし障害を与えることから、視覚的認識の場所であると考えられている.円、三角 形、十字などの図形を区別するように訓練されたサルでは、それらの図形に選択的に反応 する細胞が見つかっている.また、AIT野には顔や手に選択的に反応する細胞があり、 さらにAITから投射を受ける側頭葉(STP野)では、顔に選択的に反応する細胞が集 まっていることも分かってきた(図S11.3). このように.1次あるいは高次の感覚野や連合野の細胞には、ある刺激の特徴に対して のみ選択的に反応するという反応選択性を備えている.つまり刺激の特徴の認知が単一の 細胞の活動として現れている.この考えを推し進めると、感覚や知覚、思考の過程までも が単一の細胞の活動に帰着することになる.人混みの中から自分のお祖母さんを見つけた ときは、お祖母さんの認知を司る細胞が、活動するはずである.”おばあさん細胞”の仮 説である.しかし、反論もおおく、一般には、認識や思考などは単一の細胞の活動ではな く、密接に関連する細胞集団の時間的空間的な活動パタンから生まれるとの考えが多い. 視覚刺激に含まれる要素の中で、動きは視覚環境を正しく認識するときに重要な手がか りを与える.さて、我々は、自ら動くこともできるが、これはパタンの動きを複雑にす -------------------------------------------------------------------------------------------(注11.2) パタンの動きの情報を正しく得るには、二つの機能がいる.1つは、身体運動に影響さ れずに物体の動きを計算するシステム.視野の局所とその背景の相対運動を計算するシステム.もう1つ は、物体の動きに 邪魔されずに、身体運動による広視野の動きを計算するシステムである.MT,MS T野でこれらの処理が段階を踏んでなされている(斉藤、1989) 11-3/14 図S11.4 空間周波数順応の例 マルチチャネル理論 る.視覚系ではパタンの動きは、物体の実際の動きと観察者の動きの組み合わせで生じて いる.脳の処理システムでは、MT野で局所運動方向の分析、MST野で背景運動と物体 運動の分離処理がなされており、これらによりパタンの動きの情報が正しく得られている (注11.2). 頭頂連合野の7a野は、MST野からも信号を受けており、視線の制御に密接に関係し ている.7a野には、視覚空間のある位置に視線を向けたときだけに反応する注視細胞と 呼ばれる細胞がある.視線の方向と位置に選択性を示すので、三次元空間認知に関与する と考えられる.さらに、実際に視線を動かさないで、空間の特定の位置に注意を払っただ けで活動する細胞も見つかっている. 11.4 視覚の心理現象 <周波数特性と空間周波数多チャネル理論> 線形系の特性を調べるために、周波数特性を測定することが多い.視覚系においても周 11-4/14 波数特性MTF (a) (b) (modulation transfer f unction)を測定してい る.ただし視覚系では、 空間、時間、時空間があ り、物理量として輝度、 色度がある.その結果、 組み合わせが幾通りもで (c) (d) きる.ここでは基本的な 輝度の空間周波数特性に ついて述べる.刺激とし て、図11.10の明暗 が空間的に正弦波状に変 化する縞パタン(空間正 図S11.5 対比の例.内側の縞模様の見 弦波パタン:あるいは正 え方がa,bでは異なる. 弦波グレーティング)を 使用する.空間位置xにおける輝度L(x)は、 L(x)=Lo + m cos 2πνx (11.1) である.Loは平均輝度、mはコントラスト変調の大きさ、νは空間周波数である.空間 正弦波パタンの周波数をいろいろ変え、縞の存在が知覚できるコントラストの閾値(弁別 閾)を各空間周波数で調べる.この閾値の逆数(コントラスト感度)をもって伝達関数と 考える.輝度信号に対するMTFは、約3ー5cpd(空間周波数の単位:単位視覚あた 0.80 520 540 CIE(G) 緑 560 0.60 黄 緑 500 y 明度 580 L* 黄 b* 0.40 600 620 640 680 C*白 0.20 赤紫 480 - a* CIE(R) 青 紫 0 赤 700∼780 (a)xy色度図 -b* 純紫軌跡 460 440 380∼410 420 0.20 CIE(B) a* x 0.40 (b)Lab表色系 0.60 図S11.6 xy色度図とLab表色系 11-5/14 りの縞の数;cycle per degree)にピークがあり、バンドパスフィルタの特性を示す(図 s11.4). ある空間周波数の正弦波パタンを長時間続けて見ると、コントラスト全体が低下せず、 その周波数を中心に半値幅2オクターブの帯域幅で、感度が低下する.このような結果よ り、視覚系にはこの帯域幅を持つ空間周波数チャネルが複数存在することが示された(視 覚の多チャネル理論).つまり至適周波数の異なる多数のチャネル(これは帯域の狭いバ ンドパスフィルタ特性をもつチャネル)が集まって、全体として約3ー5cpdにピーク があるようなバンドパスフィルタの周波数特性をもつ空間フィルタとなっている.図s1 1.4に結果を模式的に示す. この理論は、例えば、図S11.5の空間周波数対比の現象から理解できる.図の中心 部の縞の周波数は同じである.(a)、(b)は中心部と周辺部の格子の方位が同じで、(c)、 (d)は異なる・中心部の格子が、aに比べbの方が周波数が低く見える(平井、199 5).c、dは周辺部の縞が中心部とは方位が違っているので、周波数の変化は生じな い.多チャネルが方位選択性を持つことを示す. < 色覚> 色覚には三色説、反対色説、及び両者を組み入れた説があり、また表色にも幾通りかあ る.基本のみ述べる.3色説は、R、G、Bの三種類の光受容器があり、ある任意の色は R、G、Bの反応の大きさが異なり、その和で色の感覚が生じるという説である(ヤン グ).混じり気のない四つのユニークな色(赤、黄、緑、青)があり、任意の色はこれら の混じり合ったものであるとするのが、反対色説である(ヘリング).赤と緑が同時に感 じられることはない訳である.これら2つの説は、完全ではなく、それらを融合した説が 色覚を実際に近い.つまり、網膜の段階では3色説に近い処理機構があり、中枢神経系で 反対色説に対応する処理機構がある、とする考えである. 色を扱う実験では、国際的に認められた標準で色を記述する.色を表現するには、 色合い または 色相 hue 明るさlightnessあるいは 明度value 彩度 saturationまたは あざやかさ chroma の3要素が必要である.表色系にも3原色説と反対色説のように大きく分けて2通りあ る. まず前者について述べる.一般にあらゆる色は、赤、緑、青の3色の混合により得られ る.国際照明委員会は、赤(R)700nm、緑(G)546.1nm,青(B)43 5.8nmを原始色とし、任意の色はそれぞれの色の強度、r、g、bによって合成表現 できるとした.変量(r、g、b)を以下のように色相を表す変量(x、y、z)に変換 し(数値は概略値である)、 x 2.8 1.8 y = k 1.0 4.6 z 0 0.06 1.1 r 0.06 g (S11.1) 5.6 b 11-6/14 図S11.7 顔(Gleitman,1981)と 花瓶(Rubin,1915) と 凹凸 (Ramachandram,1987) (右の図を上下逆さまにしてみてくださ い: 光源は上にあるという経験による判 断) さらに、kをx+y+z=1となるように定める(小杉ほか、2000).これにより、図S 11.6(a)に示すxy色度図chromaticity diagramが得られる.任意の色は、x、y 座標上の1点で表される.中央のcは白色点で、この点を挟んだ直線上の2点は反対色で ある.一般に色度図上の2点の色を混合すると、その色はその2点間の直線上にある.色 相の範囲を客観的に表現できるので工業デザイン分野などで広く使用されている. 後者には、マンセル表色系,L*a*b*表色系などがある.簡単なL*a*b*表色 系を説明する.図S11.6(b)に示すように、縦軸は明度L*、a*b*の座標で色 相、彩度が表される.a*軸は赤ー緑方向で、b*が黄ー青方向である.色相を外周、彩 度を中心からの大きさとして色を表現する.例えば、L*=30,a*=45,b*=1 0,c*(彩度)= c* = a* 2 + b* 2 =46.1のように表現される. 画面の輝度を一定に保ち、色度の変化によってグレーティングパタンを表して、色度に 対するMTFを測定すると、輝度のMTFと同様に帯域通過特性となる.しかし、周波数 は輝度の場合の約1/10である.現在のカラーテレビの伝送方式にはこの特性が利用さ れている.つまり、搬送波の周波数に関して、輝度に対して広い帯域を、色差信号に対し て狭い帯域を用いている. 11-7/14 3 運動と図形の知覚 運動の知覚の一例として、仮現運動apparent movementがある.実際には動いてるパ タンを見ているのではないのに、それが動いているよように知覚される現象である.例え ば、ある程度の距離を置いて、二つの視覚パタン刺激を適当な時間間隔(約60ms)で 短時間提示すると 滑らかな運度が知覚される.2つの視覚パタンは同じでもよいし、丸 と3角形のように少し違ってもよい.章の初め11.1に述べたように、これは静止画を 継時的に提示することにより動きを知覚させる映画などに利用されている. 図形の知覚では興味ある現象がいくつか報告されている.マッハ効果、主観的輪郭線、 錯視、図と地の反転現象(白黒の図で、見方によって盃(花瓶)がみえたり、二人の向か い合う顔が見えたりする(Rubin,1915 の盃)(Gleitman,1981)(図S11.7)、群化 (視野内に複数の対象が同時に存在するとき、これらは単純化、整理されて知覚されるこ とが多い)である.群化との関係で、輪郭の知覚を紹介する. 画像処理では、物体の輪郭の抽出は基本あるが、正確に得ることは難しい.一方、網膜 に置いても、投影される輪郭はとぎれていたりして、明確ではないが、その不完全な情報 から、その後の視覚系での処理により、容易に輪郭を抽出しいている.例を図11.12 に示す.断片的に線が散らばっているが、円の輪郭を容易に知覚できる.この輪郭知覚の 脳内メカニズムは十分には分かっていないが、V1野の細胞で見つかった共線型結合によ り説明できることが示され た(Yen and Finkle,1998 ).V1野には、例えば、水平線分 に反応する細胞は、その延長線上にある、同じ方位に選択的な細胞と結合している.延長 線が円弧でも同様である. 11.5 画像処理のフィルタ 2 単純型細胞のモデルと画像処理の例 生物における視覚情報処理と工学的な画像処理は類似している点が多く、また神経生理 学の研究と工学研究は緊密な連携をたもちながら展開をしている。ここでは、視覚情報の 基本的な処理を担っている単純型細胞に着目し、そのモデルおよびガボールフィルタを用 いた目の領域抽出法について簡単に説明する(赤澤ほか1995). 単純型細胞の基本的な性質は三つある.第1に,直線状の視覚刺激に良く応答する.第 2に,方位選択性を有する.第3は,ON時に応答する部位とOFF時に応答する部位が 受容野内で分かれていることである.単純型細胞は,「ガボール関数による空間の記述装 置」と考えられる.ガボール関数Gbは空間周波数ν,空間位相φを持つ正弦波とガウス 関数の積、 Gb ( x) = e − x 2 2 2 cos(2 x − ) (11.7) (S11.2) で表わされる.φ=0はcos型のガボール関数,φ=π /2はsin型である.実際の 応答との比較でいえば,xは最適方位と直交する方向での受容野内での位置,出力G 11-8/14 図S11.8 DOGフィルタ 1次元と2次元の例 (x)の値の正は,視覚刺激に対してのON反応の強さに,負はOFF反応の強さに対応 する. φ=0∼2πのあらゆる位相の単純型細胞が等頻度で存在する.図11.13のヒ ストグラムは生理実験結果で,横軸は最適方位と直交する方向での受容野内の位置,縦軸 の正方向は視覚刺激のバーをON/OFFさせた時のON反応の強さ(パルス頻度),負方向 はOFF反応の強さをプロットしたものである。この細胞の場合は,ちょうどコサイン型 のガボール関数で記述されることが分かる。 単純型細胞の空間的応答特性は2次元のガボール関数で記述され、それは特定の空間周 波数、方位、位相のパタンに選択的に応答するようなフィルタ特性に対応する。これを利 用して目の領域検出のために開発した特徴抽出ネットワークを紹介する[11]。図11.1 4にその構成と処理結果の一例を示す。図の左より順に、入力(与えられた顔画像、画素 数120x120のグレイスケール)、2次元のガボール関数フィルタ(白は正、黒は負 を表わす)、いき値処理、この処理で得られる顔画像、線形加算、いき値処理、出力(以 上の結果得られる顔画像)、である。なおガボール関数フィルタとしては、対象とする正 面の顔画像の目の抽出に適切であると考えられた12通りを用いた。つまり、方位が3π /8、4π/8、5π/8の3通り、周波数が1/4√2、1/8、1/8√2、1/16の4通 り、位相はπ(-cos型ガボール関数)である。また、図の線形加算では、興奮性(図 で+)と抑制性(図でー)がある。ここでは、目領域以外、たとえば頭、肩などの領域 (比較的低い空間周波数の領域)に対して大きな出力を出すユニットからの出力が抑制性 となるようにしている。以上のような構成により、この図に見られるように、目の領域が 抽出されているのが分かる。異なる人物、顔の大きさ、向き、表情、などがある程度まで 変化しても、このネットワークにより目の領域抽出ができることが示されている。 11-9/14 3 補足説明: 受容野とフィルタ 網膜神経節細胞の同心円型受容野や単純型細胞の受容野を空間フィルタの観点から説明 する.画像処理への応用としても重要である.例えば、オンセンタ型の受容野の特性は、 空間的な2次微分に対応し、この形状と類似したものが画像処理においてエッジを強調す る場合によく使用される.ここでは基本のみ述べる.詳細は文献(平井、1995)を参 照のこと. < 同心円型受容野> 同心円型受容野のモデルとして、ガウシャン・ラプラシアン・フィルタ(ガウス関数を 2次微分した形式のフィルタ)やDOG(Difference of two Gaussians、2つのガウ ス関数の差)フィルタが用いられる.まずガウシャンフィルタから述べる. ガウシャンフィルタは、 − 1 g (x) = e 2 x 2 2 2 (S11.3) で定義される.そのフーリエ変換は G( )= e 2 − 2 2 (S11.4) である.ローパスフィルタであるので、信号(入力画像)の平滑化を行い、画像に含まれ る高い周波数の雑音を除去する働きがある.さて、フィルタの理想としては、空間的な広 がりを小さく、そして周波数領域での広がりを小さくしたいが、両者を同時に満足させる ことは不可能である(不確定性原理).ガウシャンフィルタは、その積を最小にするとい う点で、最適なフィルタである. DOGフィルタは、1次元では − 1 g DOG ( x) = e 2 x 2 2 2 e e −A − 1 2 e x 2 2 2 i (S11.5) i である.図S11.8に形状を模式的に示す.2次元で表現すると、ガウシャンフィルタ g(x、y)は、 g (x, y) = − 1 2 2 e 2 2 x + y 2 2 で定義され、そのフーリエ変換は 11-10/14 (S11.6) G ( x, y )= e 2( − x 2 + 2 y ) 2 (S11.7) である.2次元のDOGフィルタは、 g DOG( x, y) = − 1 2 2 e x 2+ y 2 2 e2 e −A − 1 e 2 2 x 2 + y2 2 i2 (S11.8) i である.ここで、 x2+y2=r2、 ωx2+ωy2=ωr2 とおく.フーリエ変換は、 2 G ( r )= e − e r 2 2 − Ae − i 2 r 2 2 (S11.9) となる.Aは興奮領域と抑制領域の相対的な強さを表す. e , i は広がりを表す.例え ば、Aが1.0のとき、バンドパスフィルタであるが、Aが減少するに従いローパスフィ ルタに移行する.周辺抑制が弱い網膜神経節細胞レベルでは、ローパスフィルタで、周辺 抑制が強い外側膝状体ではバンドパスフィルタとなる.ローパスフィルタの遮断周波数、 バンドパスフィルタの中心周波数は、σeを大きくすると減少する(中心周波数は式を微 分してゼロと置けば求まる).つまり、σeを大きくすると、細かなエッジは無視され、 大きなエッジが検出され、逆にeを小さくすると、細かなエッジが抽出される. < 単純型細胞の受容野とガボール関数 > 単純型細胞は方位選択性を持ち、その受容野特性がガボールフィルタGabor filterで記 述されることを述べたが、不確定性原理の意味で最適なフィルタである.2次元のガボー ル関数は、楕円型ガウス関数に複素指数関数を掛けたもので、 G f , , , p (x, y) =e − 2 fp 2 (X 2 +Y 2 ) cos(2 f X − ) (S11.10a) X = x cos + ysin (s11.10b) Y = −x sin + ycos f p = f cos2 (tan−1 (Y / X)) + p 2 sin 2 (tan−1 (Y / X)) (s11.10c) 11-11/14 で表現される.fは中心周波数、αは最適方位、θは位相、pは扁平率である.楕円型ガ ボールフィルタG f , , , p (x, y)の一例は、f=1/14(cycles/pixel) 、α =30 [deg],θ=0、p=2である. 前項で述べた目の抽出において、種々の周波数、方位につ いて検討して適切なガボールフィルタを選んでいる. 入力をI(x、y)とし、出力をOf , (x, y) とすると、 Of , (x, y) = ∫ ∫ I(u,v) G v f , , ,p (u − x,v − y)dudv (s11.10d) u となる. なお、ここではラプラシアンガウンシャンフィルタについては省略する.式の形が若干 異なるが、基本的にはDOGフィルタと同様である. 11.6 課題 課題11.1 本章の本文に説明したように、空間周波数における帯域通過フィルタの機能をもつこと を示す.具体的には、明暗の波が単位視覚当たり3−5サイクルであるような図形に対し て感度が高い.その帯域の縞模様の図形を高精度で判別できる. 課題 11.2 1 G ( ) = F 2 = ここで、 F[e − t 2 − e 1 2 ]= 2 x 2 2 2 = 1 2 − ( 1 2 ) x2 F e 2 (s11.11) とおき、 − e 2 4 を利用すると、 1 G( ) = 2 −( 1 2) x2 1 F e 2 = 2 [ − F e x2 ] 1 = 2 11-12/14 e − 2 4 (s11.12) せよ. ここで、再び G ( ) = e − 2 2 = 1 2 2 を代入すると、 2 (11.6) (11.6)、(本章での(S11.4))を得る. 課題11.3 ガボール関数の3D表示の例は図S11.9に示す通りである. 課題 11.4 オンセンタ型受容野は、断面を見ると0−> 負ー>正ー>負ー>0 とな る.これは、側抑制回路(本の64ページ、(6.3)式)で述べたように、 2次微分に相当する.図s11.8 に示すような2次元のDOGフィルタで 表現される. 参考文献 (福田、96)福田忠彦:生体情報システム論、産業図書、1996. 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