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言語聴覚療法 臨床マニュアル

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言語聴覚療法 臨床マニュアル
最新刊
言語聴覚療法
臨床マニュアル
平野哲雄・長谷川賢一・立石恒雄・能登谷晶子・
倉井成子・斉藤吉人・椎名英貴・藤原百合・
苅安 誠・城本 修・矢守麻奈 ● 編集
● B5・568頁・2色刷 定価
(本体 6,800 円+税)
ISBN 978-4-7639-3049-1
言語聴覚士にとって
必要な知識と技術を網羅した 最新版
茶本
待望の
改訂版
2
!
本書は,言語聴覚士を目指す学生にとって,重要な一冊であるとともに,臨床現場でも活
用できることを考慮しています.
各章では,臨床の流れを図で示し,言語聴覚士が臨床において患者の障害に対してどのよ
うにかかわるのか,わかりやすく示しています.また,すべての項目は見開き 2 ページで読
み切ることができるように構成され,多くの図表とともに,臨床の進め方が手に取るように
わかるようになっています.
3
第 1 章 ● 総 論
374
第 1部
第 1部
言語聴覚士が行う臨床業務の流れ(訓練,検査,助言,指導,その他の援助)
状態把握
経過記録
(S:主観的所見,O:客観的所見)
病歴聴取
主訴(S)
既往歴(S)
発達歴(S) 生活歴
家族歴(S) 生育歴注)
社会歴(S)
医療・歯科医療
を行う福祉機関
介護機関
など
がある .
1)
構音と構音器官の観察は,言語聴覚障害を疑う
医師
介護老人保健施設など
訓練の目標と方針の設定(P)
訓練課題レベルの設定(P)
訓練プログラム(P)
(再評価の場合)
訓練効果の判定(A)
(報告書類)
(報告書類)
(報告書類)
関係部門からの情報(O)
医師・歯科医師
看護師
理学療法士
作業療法士
心理専門職
ソーシャルワーカー
教育・療育関係者
など
※介護報酬の請求には
医師の指示が必要な
サービスがある
能力を反映するからである.構音器官の観察の目
訓練などの実施
(訓練する機能による分類)
発声訓練
構音訓練
言語訓練
高次脳訓練
コミュニケーション訓練
摂食・嚥下訓練
聴能訓練
など
(再検討)
(修正)
施
倫理綱領
倫理規定
義務
責任
禁止事項
(p.8~参照)
患者の全てに行なわれる.構音は,言語と発語の
訓 練
訓練計画
経過記録(訓練の種類による 経過記録(訓練内容と実施所見
(S・O・A・P))
分類名・訓練する
(指導・助言・援助内容と
機能による分類名)
実施所見(S・O・A・P)
)
(訓練の種類による分類)
基礎訓練・応用訓練
個人訓練・集団訓練
自主訓練
(再検討)
訓練に必要な
指導,助言,援助
第
6
部
発
声
発
語
の
障
害
指導・助言・支援
(保健・福祉・教育機関相談)
経過記録
(指導,助言,支援内容と実施所見(S・O・A・P))
本人に対して
関係者に対して
家族
教師
保育士
ソーシャルワーカー
など
(健常者を対象とする場合)
言語聴覚士
「指導,助言,その他の援助」
教育機関(学校)
教育相談機関
など
(健常者以外)
医療・歯科医療を行わない
福祉機関
状態把握
経過記録
(S:主観的所見,O:客観的所見)
病歴聴取
主訴(S)
既往歴(S)
発達歴(S) 生活歴
家族歴(S) 生育歴注)
社会歴(S)
症状の直接的観察(O)
指導・助言・支援
医療機関に紹介
あるいは受診を勧めるかの判定(A)
障害の予防・早期発見
障害の受容・理解
慢性期の機能維持
社会的不利の軽減
適切な専門機関の紹介
社会資源の利用
コミュニケーション障害に関する意識の向上
など
をもぐもぐする(ジスキネジア),ゆがませてしか
の異常が他の原因によるものであることを示すた
め顔をする(アテトーゼ)等の不随意運動がある
めである.構音器官の観察は,定番の手技であ
かを記述する.
態を観察するように,段階を踏んで臨みたい.
▶ 顔面(上部顔面)
▶▶
安静時の観察
安静時の顔面をよくみる.鼻唇溝や口角から顔
運動時の観察
る?」「真似してみて」と言うか,「こちょこちょ
口唇の横引き・突出:口唇を横に引く,口唇を
運動時の観察
こちょ」と言ってくすぐると自然な笑いを引き出
下顎の開閉を行わせる.下顎の左右のずれがな
せる.大人の場合は,口頭指示による笑いの後に
いかをみる.患者の前方から親指を両側の頰骨,
中,左側・右側から呼気が漏れ出ているか,口唇
「おっつ!いい笑顔ですね」とすぐに言う,
「今度
人差し指を下顎骨の関節突起の部位に置き,中指
は,自然に笑えますか?そんなこと聞く人いませ
んよねー」と言うと自然な笑みがひき出せる.
こともあるため,情報収集は丹念に行う.
,薬指でゆっく
を下顎骨体,
りと口を開けさせる(図 3).下顎が斜めになるま
発
声
発
語
の
障
害
▶▶
予後推定・治療計画立案を行う
現症に関する医学的情報や,患者に必要な社会
第
7
部
摂
食
・
嚥
下
障
害
認知機能障害,味覚障害,準備・口
腔・咽頭各期の障害により食べにくい
ものがある
食物を嚙みづらい,もぐもぐするば
かりでなかなか飲まない
う歯や義歯不適合・歯周病等歯科領域
の問題,咬筋の障害,舌の筋力低下・
運動障害による食塊移送障害
食物が口からこぼれる
捕食の障害,口唇・顎の障害,協調運
動障害
飲み込みにくい,上を向くと飲みや
すい,お茶で流し込むと飲める
食塊移送障害
食物がのどに残る感じがする
咽頭残留,食道入口部開大不全
食事中にむせる,咳き込む
誤嚥,咽頭残留
呼吸機能低下,誤嚥,耐久性低下
夜間に咳き込む
唾液の咽頭残留,不顕性誤嚥
誤嚥,誤嚥性肺炎
表 2 ● 情報収集による摂食嚥下障害の把握
設定を行い,具体的な治療計画を立案する.
▶▶
患者・家族からの情報
唾液の誤嚥
朝起きたときに白っぽい痰が多い
風邪が長引いた,咳が続く,よく熱
を出す,痰が増えた
的資源など種々の情報を収集し,予後推定や目標
▶ 情報収集の種類と方法
誤嚥
食事中に痰が絡む,声が変わる
食事の途中から疲れる
項目
確認すべき情報
内容
病歴・現在の状況
既往歴・現病歴
患者・家族の訴えを確認する.むせを風邪の咳
嚥下障害の原因となる
疾患の有無
脳血管障害,神経筋疾患,口腔・
咽頭疾患,逆流性食道炎,変形性
頸椎症,放射線治療後など
いつむせるか
食事開始時,食後,食事に無関
係,夜間
ながら,口唇を横に引く.
口唇を突出させる.声を出さずに上下の歯を咬ん
強さ
喀痰・喀出能力の有無
ミオクローヌスやチックが出現していないかをみ
だ状態で,口唇だけ動かすように,口唇を横に引
グローブを着け,上下の歯を咬んだ状態で人差
があるか感じる.強く歯をかみしめた状態で左右
意識レベル
JCS,GCS
経口摂取の開始基準は JCS 1 桁,
GCS14 点 E-4 以上
る.デジタルカメラで撮影するとよい.
き,口唇を突出する低速(1 Hz 前後)で交互変換
し指を両側の口角または,頰内側(大臼歯まで)に
のこめかみと下顎枝を触り,筋の膨らみに左右差
夫する.表 1 のような訴えがあれば,発現時期,
服薬状況
運動を行う.
挿入し軽く抵抗をかけ,口唇を尖らすように指示
があるかをみる.
経過,軽快・増悪の有無,困難の生じる部位や食
摂食嚥下機能に影響す
る薬物の使用の有無
,筋
向精神作用(中枢神経作用)
弛緩作用,錐体外路症状を誘発す
る薬剤
し,左右の内方への引きの速さを感じる(図 2).
全身状態
せて口の開き(顎の位置)の違いをみる.
物形態・一口量,日間・日内変動など詳細を確認
脱水・低栄養
活動状況・尿量など
低活動,傾眠傾向,尿量減少,口
腔内乾燥,体重減少など
体重減少率が 1 週間で 2%以上,
1カ月で 5%以上,3カ月で 7.5%
以上,6カ月で 10%以上であれば
高度な栄養障害
呼吸機能
発熱・咳・呼吸困難な
ど
37.5℃以上の発熱(ただし無熱性
,湿性の咳,
肺炎もあり要注意)
頻呼吸,気管切開,酸素投与
運動時の観察
額に皺を寄せる,眉間に皺を寄せることができ
口唇の閉鎖と丸め:下顎の代償を抑えるため
るかをみる.目を閉じる時のまつ毛の長さを左右
に,上下の歯を咬んだ状態で口唇を突出する.そ
で比べる.前頭筋の収縮方向に,人差し指,中
のままで保持させる.咬んだ状態で口唇を上下に
指,薬指で抵抗をかけて額に皺を寄せ,左右の挙
開閉させる.
上する速さをみる(図 1).
.
頰の膨らませ:「あっぷっぷ」と頰を膨らませ
▶▶
▶▶
抵抗運動時の観察
での軌跡をみて,薬指を下に押す力に左右で違い
外的刺激時の観察
▶▶
抵抗運動時の観察
害や筋萎縮性側索硬化症の患者で頭が後屈する.
診票を利用するなど,問題を見落とさないよう工
(図 4)左右差があるかをみる.
くりと閉口させ,
開口する際は,頭頸部の後屈がないかもみる.
得られることもある.摂食嚥下障害によって生じ
た活動制限や参加制約も確認する.
▶▶
診療記録からの情報
療法士,作業療法士,管理栄養士,薬剤師など,
血液検査
白血球(WBC)増多,C 反応蛋白
炎症反応の有無,栄養 値(CRP) 上 昇, 血 清 総 蛋 白
状態,脱水
(TP),アルブミン(Alb),クレ
アチニン(Cr)など
,親指を打腱器で叩
他職種の記録から関連する情報を得る(表 2).特
画像
胸 部 単 純 X 線, 胸 部
CT 所見
肺炎像の有無
に薬剤は摂食嚥下機能への影響が大きいので注意
認知機能
認知症・高次脳機能障
害の有無
認知,注意,記憶,遂行機能など
の障害
コミュニケー
ション能力
失語症・構音障害・挿
管・気管切開の有無
指示理解・意思伝達能力
周辺を指で外側方向へ触っていくと口角が引か
方ずつ膨らませるのをさせて,頰のゆがみがある
れ,頭部が回旋し口が開く.吸啜反射は,無歯顎
をみる.
かをみる.
の場合は指,有歯顎の場合は舌圧子を口唇正中か
下顎が閉口方向へ動く.
を払う .職業や地域での活動など社会参加の情
笑顔:「 笑 っ て み
てください」と指示
表 1 ● 構音器官の運動時の観察部位と課題
部位
舌
,下顎骨関節
舌の正中と左右
非言語性課題
しわ寄せ
言語性課題
なし
反射
笑顔,触れ・挿入 食事
咀嚼
引っぱり
提出,前進と後退,挙上
口呼吸
呼吸,咳払い
非構音活動
眉間叩打
開口と閉口
喉頭声帯 甲状軟骨
発声,高音
咀嚼嚥下
吸う動作があるかをみる.原始反射は乳児期だけ
の反射であり,残存していれば病的と考える.
よる笑いと自然な笑
▶下顎
との差をみる.子ど
もの場合は,観察者
が変な顔をしてみせ
ガス
た 後 に「 真 似 で き
呼吸嚥下,息む
ら挿入し,口を尖らし,吸啜窩に舌を押しあて,
をする.口頭指示に
こする,おさえる 呼吸嚥下
第 1 部 総 論
第 1 章 ● 総 論 言語聴覚士が行う臨床業務の流れ/言語聴覚療法の定義/言
語聴覚士が扱う言語障害の特徴/言語聴覚療法の基本と倫理/各リハビリテー
ション期の言語聴覚療法/言語聴覚療法の進め方/言語聴覚療法と障害者自立
支援法/言語聴覚療法と言語聴覚士法
第 2 部 聴覚障害
第 2 章 ● 聴覚障害 臨床の流れ/基礎知識/検査・評価・分析/補聴器の適
合/人工内耳のマッピング/小児の指導/高齢聴覚障害者への指導,助言/中
途失聴者への指導,助言/事例/構音・発声の指導と助言/長期経過/親指
導・助言
第 3 部 言語発達障害
第 3 章 ● 言語発達障害 支援としての検査,評価,訓練,指導,助言,その他の援
助の流れ/基礎知識/検査・評価・訓練/年齢別支援・家族支援と地域連携/関
連する障害 ∼自閉症スペクトラム/学習障害/知的障害 /種々の支援アプローチ
[TEACCH/行動習得・介入/<S−S 法>/語用論/AAC]
第 4 部 脳性麻痺
第 4 章 ● 脳性麻痺 臨床の流れ∼検査,評価,訓練,指導の流れ/基礎知識/脳性
麻痺の 下障害/脳性麻痺のコミュニケーション障害/評価・訓練・指導/指導・
助言
第 5 部 高次脳機能障害
第 5 章 ● 失語症 臨床の流れ/基礎知識/検査・評価[言語機能に関するもの/コ
ミュニケーション等に関するもの/掘り下げ検査=deep testに関するもの/医療・福祉の社
会制度の利用に関するもの]/訓練/非流暢性失語の症例[全失語/ブローカ失語/
超皮質性運動失語]/流暢性失語の症例[ウェルニッケ失語/伝導失語/超皮質性感
覚失語/失名詞失語]/皮質下性失語の症例[視床失語/被殻失語]/経過・訓練
▶▶
安静時の観察
口が開いたままかをみる.下顎のふるえ,ずれ
があるかをみる.
▶▶
外的刺激時の観察
医師や看護師,医療ソーシャルワーカー,理学
1)
所見(例)
推測される状況
ゴロゴロしている(湿性)
声門上に唾液貯留しても
不顕性誤嚥
かすれている(気息性・粗糙性) むせない
誤嚥
小さい(無力性)
声門閉鎖不全
むせても喀出不可
発声持続短縮
呼吸機能低下
話しことば
口腔内残留
咀嚼・食塊形成・移送障 早期咽頭流入
不明瞭(内容を知っていればわか
害
咽頭残留
る程度~重度)
軟口蓋挙上不全
むせ
誤嚥
食べこぼし
口に運ぶ際にこぼす
口の周りが汚れる
むせ
食事の後半特に多い
疲労,注意障害
水分でむせる
咽頭期嚥下の遅延
口の中の物をお茶で流し込もうと
咽頭早期流入
しむせる
食事時間・
ペース
栄養障害
半量食を 40 分経っても食べきれ
疲労,注意障害,認知障 脱水
ない
害,食欲不振
むせ
ペースが不安定
誤嚥
.気が散る刺激はないか
.喉頭挙上は見えるか(服やエプ
ロン等で隠れていないか
.座面の硬さ,背もたれの高さ等
が適切な椅子や車椅子を使用し
ているか
.頸部過伸展や体幹前傾はないか
.食具の選択は適切か
.食べにくそうなもの,飲めずに
吐き出しているものがないか
.テーブルの高さは症例に適して
いるか
.足底は接地しているか
図 1 ● 摂食観察のポイント(姿位・環境等)
構音評価:誤り音の種類や共鳴異常の
有無によって各嚥下器官の運動機能を評
価し,口腔内保持・食塊形成・移送など
の障害の発見につなげる.口唇音([
舌・軟口蓋音([
]
[
]
]
[ ]
])の歪み・省略は早
期咽頭流入・咽頭残留を疑う.開鼻声な
らば,軟口蓋挙上不全による喉頭蓋谷残
留の恐れがある2).
▶ 言語・高次脳機能を含むコミュニケーショ
ン機能
言語機能:聴覚的理解力低下は摂食嚥下訓
練の導入に影響する.障害のタイプや重症度
を正確に評価するとともに,文脈や視覚的刺
激に対する理解状況を把握し,訓練や食事介
助に生かす.
高次脳機能:認知症や注意・記憶・遂行機
能などの高次脳機能障害は,先行期や準備期
に大きく影響する.神経心理学的検査による評価
も大切だが,検査では見えない情報が生活場面か
▶▶
口腔・咽喉頭機能
発声発語の特徴を捉えることで摂食嚥下障害も
音声の聴覚心理的評価:面接や会話など様々な
場面から音声の聴覚心理的評価を行う.気息性・
誤嚥の場合,障害が発見されないまま食事開始と
粗糙性嗄声で声門閉鎖不全を,湿性嗄声で梨状
なる恐れがある.早期に摂食場面を観察し,障害
窩・声門上の唾液貯留を疑う.大きさの変動や震
なった一方,テンプレート化による正確な状況再
徴候の有無を確認する.医師,看護師,作業療法
え・翻転の有無,声量低下といった聴覚印象も記
現の難しさといった課題も生じている.
士,管理栄養士などと共に行うことが望ましい.
録する.音声に浮動性があれば嚥下機能にも浮動
その他の臨床的観察:就寝中や,マット上・机
痺側,声帯の固定位置などを確認する.
腔内圧低下,舌尖挙上音([
[ ]) の歪み・省略は食塊移送障害,奥
摂食嚥下障害の徴候とみなす.
職種協働での評価入力といった情報共有が容易に
上での訓練場面にも注目する.臥位での咳頻発や
いても,弓状弛緩・喉頭麻痺の有無,麻
[ ]) の歪み・省略は口唇閉鎖不全や口
作業中の流涎があれば,唾液誤嚥や口唇麻痺など
推測可能である(表 3).
み,これらの情報確認や嚥下造影動画の供覧,多
観察
の効果を観察する.声門閉鎖の状態につ
不顕性誤嚥
誤嚥
報は目標設定に関与する.カルテの電子化が進
摂食場面の観察(図 1,表 3):急性期や不顕性
鎖機能,感覚障害の有無,代償的嚥下法
食具を適切に選べない,
栄養障害
使えない
不顕性誤嚥
知覚低下,認知障害
誤嚥
口唇筋力低下,口呼吸
文献
▶▶
視診:内視鏡検査では咽喉頭の状態を
観察する.形態的異常の有無や鼻咽腔閉
嚥下しにくい食物がある むせ
食べカスをティッシュや皿に吐き
咀 嚼 困 難, 食 塊 形 成 困 誤嚥
出す
難,送り込み障害
栄養障害
テーブル上の 焼き魚に手を付けない
様子
適切な食具を提供できて 一口量の調整不良に
いない,自分で適切な食 よるむせ・窒息,栄
る,かきこむ
具を選べない
養障害
,
(MPT) の短縮がみられれば声門閉鎖不
全を疑う.
指示が入らない
口腔・咽頭残留
コミュニケー 止めてもお茶を飲み,むせる
認知障害,理解障害,注
むせ
ション・認知 次々と口に入れる
意障害,脱抑制,道具の
誤嚥
機能
一口量が多い
強制使用
窒息
わずかな刺激でキョロキョロする
1)田崎義昭,斎藤佳雄:ベッドサイドの神経の診かた,
.
第 17 版.南山堂,2010,
2)田中 薫,白坂康俊:検査(3)発声発語器官の検査
(日本言語療法士協会・編:言語聴覚療法臨床マニュ
.
アル).協同医書出版社,1992,
(執筆者:池上敏幸,苅安 誠)
率の顕著な上昇や最長発声持続時間
起こりうるリスク
声
水分,パサつくもの,唾液
軽く口を開けた状態(中間開口位)で下顎反射
原始反射をみる.探索反射は,口角または口唇
唇からの空気の漏れの有無もみる.頰を両方と片
,口蓋弓
口蓋咽頭 口蓋(硬軟)
何でむせるか
く.橋の三叉神経核よりも上位の障害があると,
る.左右の膨らみの違いがあるか(頰の緊張),口
眉間反射をみる.眉間を軽く叩いた時の両側の
を防ぐために,後方から患者の視線よりも高い位
外的刺激時の観察
むせ
問の角度を変える,より具体的な質問をする,問
する.生活環境調査目的での居宅訪問で新情報が
,ゆっ
頭後屈反射をみる.顔を下に向けて,人中部分
に人差し指を置き,打腱器で叩く.両側錐体路障
と思い込むなど,知識不足による誤解も多い.質
瞬きをみて,左右差を比較する.予測しての反応
下顎
協同医書出版社
▶▶
突出する,フーッと息を吹くことで,口唇の正
が片側に引かれていないかをみる.
る.原因は器質性,運動障害性,機能性(精神疾
患も含む)と多岐にわたり,複合して重症化する
第
6
部
表 3 ● 摂食観察のポイント(摂食嚥下機能)
疑われる主な病態・障害
認知機能障害
半側空間無視
食べるのに時間がかかる,食べよう
としない,特定のものを食べない,
好みが変わった
れや頭部の傾きを知る.眼の周りの動きで,眼球
顔面上部 眼瞼,額の皺,眉間
(執筆者:平野哲雄,立石恒雄,長谷川賢一)
▶▶
障害メカニズムと原因について仮説を立てる
収集した情報から,摂食嚥下機能に生じた問題
とその原因について仮説を立て,評価につなげ
図 3 ● 顎の開く運動の
観察
図 4 ● 顎の開きの抵抗運動の観察
患者・家族からの訴え
食物で遊ぶ,なんでも混ぜて食べて
いる
膳の食べ残しがある
面の対称性を,耳介・顎関節の位置から姿勢の崩
口部顔面 鼻口溝,上下赤唇,口角 横引き・尖らし,閉鎖開放
注)主訴以外の病歴を,成人では生活歴,小児では生育歴という.
▶情報収集の目的
▶▶
るかをみる.鼻唇溝の深さより左右差をみる.口
は,構音器官には異常がないことを確かめ,構音
り,正常の成人小児での経験を踏まえ,患者の状
図 2 ● 口部顔面(唇と頰)の内方の引きの強さの観察
安静時の観察
口を軽く閉じるように指示をする.上下口唇の
を観察する.左右の口角の位置は水平になってい
作にあるのかを明らかにすることである.第二
関係部門からの情報(O)
経過記録の記載内容は,S:主観的所見(subjective data),O:客観的所見(objective data),A:評価(assessment)
,P:計画(plan)で
分類する方法に拠った.
▶▶
閉鎖状態から,赤唇部の厚み,
に,直接の原因が構音器官の構造や感覚運動,操
▶▶
本人・関係者に対して
図 1 ● 上部顔面(額)の
皺寄せの観察
▶口唇・頰(口部顔面)
的は,2 つある.第一は,構音の異常がある場合
▶▶
経過記録
(指導,助言,支援内容と実施所見(S・O・A・P))
評 価
経過記録(A:評価,P:計画)
障害の有無・鑑別(A)
タイプ分類(A)
重症度の判定(A)
コミュニケーション補助具の使用状況(A)
社会適応の状況(A)
(学校,職場,家庭など)
評価(1)
情報収集,摂食嚥下障害の徴候
これは,パーキンソニズム,パーキンソン病等の
錐体外路系の疾患や神経質な患者でみられること
(再 評 価)
評 価
経過記録(A:評価,P:計画)
障害の有無(A)
障害の鑑別(A)
障害のタイプ分類(A)
障害の重症度(A)
機能的な予後の判定(A)
訓練の必要性に関する判定(A)
コミュニケーション補助具の使用状況(A)
社会適応の状況(A)
(学校,職場,家庭など)
(訓練を行わない場合)
症状の直接的観察
言語的検査(O)
心理的検査(O)
機器を用いた検査(O)
自然状況下での観察(O)
実
病院,医院などの
医療・歯科医療機関
訓練プログラム
言語聴覚士
「言語聴覚療法」
(指示・指導/監督)
(介護保険機関入所・利用)
言語聴覚士が扱う
言語障害の特徴
(p.6~参照)
医師
(関連専門分野)
耳鼻咽喉科
脳神経外科
口腔外科
小児科
神経内科
神経・精神科
リハビリテーション科
内科
外科
歯科
など
475
第 10 章 ●
表 1 ● 摂食嚥下障害を疑う訴え(例)
く 10 回~ 15 回程度叩打した後で瞬きが消失せず
に,瞬きが続くことがある(マイヤーソン徴候).
論
論
(再 評 価)
(指示・指導/監督)
きこえの問題
ことばの問題
声の問題
発音の問題
食べることの問題
474
置から,見えないように叩く.眉間を連続して軽
構音器官の観察(1)
※診療報酬の請求には,保険医の
指示・指導/監督が必須
(医療機関受診)
本人・家族
教師・保健師・保育士など
が発見
375
第 8 章 ● 構音障害
検査・評価(2)
総
総
臨床(業務)
ら得られることも多いので丁寧に観察する.
聴力:聴力低下もリハビリテーションを阻害す
る.補聴器が適切に調整されているか確認する.
文 献
1)嚥下に悪影響を与える薬剤一覧(藤島一郎・監修:疾
.
患別にみる嚥下障害).医歯薬出版,2012,
2)矢守麻奈:摂食・嚥下障害(廣瀬肇・監修:言語聴覚
.医歯薬出版,2011,
.
士テキスト,第 2 版)
(執筆者:小林典子)
性があると推察される.
その他の音声検査:空気力学的検査で呼気流
効果/訓練の終了と家庭・社会生活への提案/AAC/生活訓練と家庭・社会生
活への移行/家庭生活支援/就労支援・就労継続支援/失語症友の会の活動
第 6 章 ● 言語障害と関わりの深い高次神経機能障害 基礎知識[高次神経機能障
害総論/急性期・回復期の高次神経機能障害/慢性期(維持期)の高次神経機能障
害]/認知症/聴覚失認/発語失行/失読・失書/失行/視覚失認/半側空間
無視/構成障害/記憶障害/注意障害
第 6 部 発声発語の障害
第 7 章 ● 音声障害 音声障害の言語聴覚療法の流れ/基礎知識/検査・評価[問
診と自覚的評価/聴覚心理的評価と喉頭視診/発声機能検査・機器による評価]/評
価/訓練[声の衛生指導/症状(病態)対処的訓練と包括的訓練/病態対処的訓練 /
声帯の緊張を緩める訓練/包括的訓練/ Vocal Function Exercises /アクセント法/訓
練終了基準]
/指導∼喉頭摘出者の発声指導
第 8 章 ● 構音障害 構音障害の臨床の流れ/ことばが不明瞭な子どもの診か
た,臨床の流れ/基礎知識/検査・評価[顔面口腔の見方と解釈/構音器官の観
察/音声評価/構音検査/明瞭度評価/機器を用いた評価]/《1.機能性構音障
害》基礎知識/検査・評価/訓練/事例/《2.器質性構音障害》口蓋裂 基礎
知識/検査・評価∼口腔・顎・顔面および鼻咽腔閉鎖機能/訓練/症例/口腔・中咽
頭がん 基礎知識/検査・評価/訓練/《3.運動障害性構音障害》基礎知識/検
査・評価/訓練/指導[実用使用の促進/口腔顔面の運動促進/拡大・代替コミュニ
ケーション(AAC)
/集団訓練]
第 9 章 ● 吃 音 臨床の流れ/基礎知識/評価/検査・評価[発話の聴取と記
録/非流暢性分析,音響分析/行動観察]/訓練・指導[治療法の枠組みと内容/流
暢性の促進/認知行動療法の導入/指導と環境調整/セルフヘルプグループ]
第 7 部 摂食・
下障害
第 10 章 ● 摂食・ 下障害 摂食 下リハビリテーションの流れ/基礎知識/評
価/訓練[基礎的 下訓練/バルーン法/摂食訓練]/指導・助言/医学的治療・管
理/症例[急性期/回復期/維持期/小児/進行性疾患/悪性腫瘍]
〒113-0033 東京都文京区本郷 3-21-10
Tel. 03-3818-2361/Fax. 03-3818-2368
http://www.kyodo-isho.co.jp/
第
7
部
摂
食
・
嚥
下
障
害
大好評
《訪問》言語聴覚士という道を切り拓いてきた著者が伝える
“楽しさ”と進め方の実際
この道の
り
が楽
しみ
《訪問》言語聴覚士 仕事
の
平澤哲哉
●著
フォトドキュメント
『今日もこの道を』 写真 ● 大西成明
《訪問》言語聴覚士としての 11 年余りの経験から,訪問活動をめざす言語聴覚士へその
意義と実際を伝える.早期退院が促進されるなか,
ことばに障害を抱えたまま自宅に帰っ
た人たちに言語聴覚士はどのように関わることができるのか?
● A5・188
頁
定価
(本体 2,000 円+税)
ISBN 978-4-7639-3048-4
医療において早期退院が促進されるなか,
リハビリテーションも
「退院後」
がいっそう重要になっています.
自
身も失語症当事者としての経験を持ち,
すでに11 年余り地域密着で《訪問》言語聴覚士として在宅ケアを展
開してきた著者が,
これから訪問活動をめざす言語聴覚士へその意義と実際を伝えます.在宅ケアに関心の
ある言語聴覚士の方,
必読です.
これまで出会った患者さんとの豊かなエピソードは,
在宅ケアの重要性を強く伝えています.
そして,
《訪問》
と病院の臨床では何がどのように違うのか,
どのようにして進めていけばよいのか,《訪問》で生計を立てて
いけるのか,
といった具体的な疑問や不安にもきちんと答えます.
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〈キリトリ線〉
注
文
書(FAX:03-3818-2847)
書 名
定 価
言語聴覚療法 臨床マニュアル 改訂第3版
この道のりが楽しみ 《訪問》言語聴覚士の仕事
冊 数
定価
(本体6,800円+税)
定価
(本体2,000円+税)
フリガナ
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