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富里高校における台湾の学校との学校交流について

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富里高校における台湾の学校との学校交流について
「富里高校における台湾の学校との学校交流について」
千葉県立富里高等学校
教 諭
飯 田
太
(1)はじめに
本校は,成田空港に隣接した場所に立地しており,教育目標の一つを「国際社会の中で、
広く活躍できる積極的な人間の育成をめざす。」としている。一昨年度から海外への修学旅
行を実施し,一昨年度は韓国を訪問し,昨年度と今年度の 2 回,台湾への修学旅行を実施
した。来年度以降も台湾への修学旅行を実施する予定である。また今年度の 4 月に台湾か
らの修学旅行団が来校し,学校交流を行った。このように本校は台湾の学校との学校交流
の機会が増加しており,今後もその傾向は続くものと思われる。そこで筆者は今回の千葉
県教職員国際交流事業を本校と台湾の学校との交流の促進するための貴重な機会だと捉え,
台湾への修学旅行の実施や国際理解教育の推進に有用な情報収集等を行い,授業や学校行
事に活用できる教材や情報の収集を行い,台湾の学校関係者との友好を深めることを目的
として参加することとした。
(2)本校と台湾の学校との学校交流
【平成 26 年度富里高校修学旅行】
①期日:平成 26 年 11 月 6 日~9 日,3 泊 4 日
②学校交流:〔交流校〕穀保高級家事商業職業学校
〔交流内容〕両校校長挨拶,記念品交換,両校代表生徒挨拶
授業体験:穀保家商の交流授業に参加
③見学地:タイペイアイ(京劇鑑賞),九份散策,士林夜市,中正記念堂,故宮博物院
忠烈祠,二二八記念館,龍山寺
④体験学習:小籠包作り,パイナップルケーキ作り,野柳海岸見学,天燈飛ばし(十份)
【平成 27 年度富里高校修学旅行】
①期日:平成 27 年 11 月 12 日~15 日,3 泊 4 日
②学校交流:〔交流校〕桃園市立平鎮高級中学校
〔交流内容〕両校校長挨拶,記念品交換,両校代表生徒挨拶
両校出し物披露
平鎮高中:武術,儀じょう体
富里高校:学校紹介ビデオ上映,演劇部演劇,
書道部パフォーマンス,合唱(ふるさと)
授業体験:平鎮高中の特色授業に参加
③見学地:タイペイアイ(京劇鑑賞),九份散策,士林夜市,中正記念堂,故宮博物院
忠烈祠,二二八記念館,龍山寺
④体験学習:小籠包作り,パイナップルケーキ作り
【平成 27 年度国立鳳山高級中学(高雄)来校,学校交流】
〔交流内容〕両校校長挨拶,記念品交換,両校代表生徒挨拶
両校出し物披露
鳳山高中:合唱,ダンス公演,楽器演奏
富里高校:演劇部演劇,ジャズオーケストラ部演奏
授業体験:鳳山高中の生徒が富里高校の授業に参加
(3)今回の事業での学校訪問先について
①桃園市立南崁高級中学
桃園国際空港のある桃園市にある市立南崁高級中学(写真 1)を訪問した。南崁高級中学
は西暦 2000 年に設立された新しい学校であり,実績のある進学校である。3 学年で生徒数
1,478 人,教職員数 130 人の大規模校である。1 学年は普通科が 11 クラスで 440 人が在籍
する。この他に美術科と音楽科,体育科が1クラスずつあり,各クラスに 30 人が在籍する。
校舎等の施設・設備が新しく整えられており,例えば,音楽では音楽室が二つあり,それ
ぞれで合奏が可能である(写真 2)
。またピアノのある個室が 40 ほどあり(写真 3)
,多く
の生徒が個人練習をすることが可能であり,800 人収容可能な音楽ホール兼講堂もある(写
真 4)。また各教室にプロジェクターと Wifi 環境があり,映像教材を容易に使用して授業を
実施することができる(写真 5)。理科の教室には各机に排気設備があり(写真 6)教室に
白衣が備え付けられており(写真 7)
,地学教室に専用の座席が付いたプラネタリウムがあ
る(写真 8)など,通常,日本の学校には見られないものもあり,実験や体験をする環境は
非常に整っている。
日本の学校との学校交流が盛んであり,今年度は鳥取県立境高校の生徒 5 名が 12 月に来
校し半日学校交流を行った。境高校の生徒が授業やクラブ活動へ参加し,熱心に交流して
いたそうである。また南崁高級中学の生徒が今年度日本へ教育旅行(日本の修学旅行にあ
たる)に行き,千葉県の君津高校と君津青葉高校を訪問して,半日学校交流を行った。教
育旅行では他に東京や埼玉,大阪を観光した。また日本以外ではアメリカのテキサスと桃
園市内の市立高校が学校交流を実施しており,桃園市からは毎年,各校 2 人ずつをアメリ
カのテキサスへ派遣し,3 月にはテキサスからもホームステイを受け入れるとのことである。
日本の学校との交流では,特に,10 人くらいの生徒をお互いに派遣して,2 週間程度でホ
ームステイをしながら交流をしたいという要望が聞かれた。英語の授業を見学したが,先
に述べたプロジェクターを活用して視聴覚教材を用いた授業が実施されていた。驚いたの
は生徒がスマートフォンを用いて回答している場面があり,wifi 環境が十分に生かされてい
た(写真 9,10)
。生徒は非常に熱中して取り組んでいた。担当者によると,英語について
はこれまで読み書き中心で会話はあまりやっていないので,このようなツールを活用して
会話の能力を高めることが狙いとのことであった。第二外国語があり,一番多いのが日本
語で 60 人が 2 クラスに分かれて週2コマの授業がある。生徒達は日本のアニメに関心があ
り,特にそういったことに興味や関心が強い生徒が選択しているそうである。
写真 1
写真 2
写真 3
写真 4
写真 5
写真 6
写真 7
写真 8
写真 9
写真 10
②高雄市政府教育局
日本の高等学校にあたる高級中学は高雄に 34 校ある。うち,約半数が日本の学校と交流
の機会をもったことがある。交流の内容としては,高雄の高級中学が教育旅行(日本の修
学旅行にあたる)で日本を訪問した際に日本の学校と学校交流をしたケースがほとんどで
ある。教育旅行については,日本の他には韓国やアメリカ合衆国を訪問することが多い。
一方で日本の高等学校による高雄市内の高級中学訪問は,非常に少ない。昨年,千葉県の
森田知事と高雄市長が会談して,若者の交流が増えるように約束したこともあり,高雄市
内の高級中学は,日本の学校が修学旅行や少人数での学校交流等で高雄市内を訪問して高
雄市内の高級中学と交流することを期待している。訪問当日も,トップである范局長の挨
拶(写真 11)の中で,高雄市内の高級中学と日本の高等学校との学校交流についての話が
あり,今後更に交流の機会を増やしたいとのお話があった。他の方々からも千葉県の高校
との交流を強く望んでいるという声が聞かれた。また高雄市についての紹介のビデオが上
映され,エコツアーや農業体験,工業や漁業といった産業現場の見学といった,修学旅行
の行事として魅力的なコンテンツが,分かりやすく紹介されていた。以上のことから高雄
市の政府教育局が日本の学校に高雄市を訪問してもらいたいことが十分伝わってきた。
③高雄市立林園高級中学
高雄市にある林園高級中学を訪問した。林園高級中学は,日本の中学校にあたる国民中
学が併設されており,高級中学は各学年 6 クラスで,普通科 5 クラスの他に体育科が設け
られている。第二外国語として日本語の授業があり,週に一コマ設けられている。林園高
級中学は 2014 年から,企業との産学連携を高雄市内の石油化学工業の企業である台湾中油
との間で行っている。この産学連携では,高級中学の生徒が夏休みの 2 週間に 36 時間,台
湾中油で実習を行う。実習内容は,おもに環境や産業についての基礎知識を学習し,工場現
場で職場体験を行うというものであり,修了すると 2 単位が与えられる。実習の目的は,
専門知識を得ること,自分の適性を見極めること,環境や産業を学習すること,地域を理
解することである(写真 12)。参加する生徒は希望者であり,今年度は 40 人が参加した。
参加した生徒にとっては,就職に便利,自分の街を理解できる,技術や知識を学べるとい
ったことがメリットとなっているようであり,生徒の約 50%がこの会社に就職したいとの
ことであった(写真 13)
。林園高級中学では授業の見学を行い,生徒が積極的に授業に取り
組んでいる姿が印象的であった(写真 14,15)
。南部にあるためか,高雄は陽気な性格の人々
が多いようであり,高級中学の生徒も明るく人懐こい生徒が多く,笑顔が印象的であった。
校長やPTA会長の挨拶の中で日本の学校が訪問することを強く希望しているとの話があ
り,教員や生徒の様子を見ても我々に対する歓迎の気持ちが強く表れていた。
(5)訪問から感じたこと
台北や桃園など台湾北部では学校交流で日本の学校を受け入れる機会が多く,日本の学
校との交流に慣れている。ただ過密状態であり,修学旅行では交流校を探すのが困難にな
りつつある。また,今回訪問した南崁高級中学では修学旅行の受け入れよりは,少人数で
の学校交流を望んでいる。修学旅行や教育旅行といった大規模な人数での交流では半日程
度の短時間の交流となる。少人数での交流の方が,長期間の交流が可能であり,ホームス
テイを行うことでよりよりお互いの国の文化や風習に触れることが可能である。おそらく
このような考えの高級中学は他にもあるものと思われる。一方台湾南部の高雄ではこれま
で日本の学校が訪問する機会が少なく,高雄市教育局や市内の高級中学はその機会を増や
すことを強く希望している。台湾の人々が親日的であり,特に高雄の人々は台湾の中でも
親日的であるということのことであったが,今回の高雄訪問の中でもそれは十分感じられ
た。学校交流を行う上で非常に友好的に交流を進めることができると思われる。また学校
交流では,校内での交流以外にも,校外でその地域を見学し体験を行うということも重要
である。高雄は台湾北部に比べると,故宮博物院や中正紀念堂,龍山寺,九扮といった歴
史的な建築物や街並みは少ない。ただ,南部の熱帯地方の自然を生かしたマリンスポーツ
の体験やエコツアーや農業体験,台湾を代表する工業地域の見学など,高雄ならではの体
験や見学が可能である。また地下鉄やモノレールなどの交通機関も整備されてきているこ
とや,臨海部や市内を流れる愛河では船舶による観光(写真 16)も可能であることから,
高雄市内での班別行動等の見学も行事の一つとして考えられる。以上のことから高雄は,
千葉県など日本の高校の海外修学旅行や学校交流の訪問地として有望であると思われる。
写真 11 高雄市政府教育局
范局長
写真 12 台湾中油での
産学連携の紹介
写真 13 産学連携実習の
参加生徒
写真 14 林園高級中学の
授業の様子
写真 15 林園高級中学の
写真 16 高雄市内愛河
授業の様子
の水上バス
(5)成果の反映
学校・教育施設の見学で得られた知見や情報を,本校から台湾への修学旅行時や台湾か
らの修学旅行受け入れ時の学校交流における事前準備等に活用することとした。まずは,
来年度修学旅行を引率する予定の 1 学年の教職員に対して,報告会を実施し,撮影した写
真を用いて,見学先の説明を行った(写真 17)。修学旅行の下見には別の職員が参加するこ
とになっており,今回の報告会をはじめとして様々なサポートを行いたい。また,1学年
の生徒対象に,1 学年通信で台湾の紹介を行っている(写真 18)。本校では平成 29 年度の
修学旅行も台湾に行くことになり,その準備作業にも活用していく予定であり,特に高雄
など台湾南部の情報が今まで乏しかったので,今回の交流事業で得た知見は大いに役立つ
ものと思われる。
写真 17
写真 18
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