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車が変わる、生活も変わる ICT技術が次世代交通を進化させる!最新
今月の特集 車が変わる、生活も変わる IC T 技術が次世代交通を進化させる! 最新交通支援システム 車が自動で目的地まで走ってくれる…。夢の世界はすぐそこまで来てい ます。すでにスマートフォン等の “ICT端末”のような車の開発が一部 メーカーで始まりました。ICT技術を活用した、運行状況等の管理をサ ポートする新しいシステムも登場しています。私たちの生活を快適にす る 「車とICT」 の関係。これからの暮らしを支えるトピックを紹介します。 車と車が会話する? ICTが生み出す未来の交通 隔操作、SNSを通じて他車や周辺 は、車両単体にとどまらず交通体 機器との情報交換が可能となり、 系としての高度化へと進んでいま 交差点の角等に停車している車両 す。そのためには、自動車に新た ICT (情報通信)技術が車社会を を事前に察知することや友人の車 な通信機器の取り付けや、道路や 変えようとしています。例えば、 1 両とコミュニケーションすること 周辺施設等への新たな情報発信機 台の車を共同で利用するカーシェ もできるようになります。ボディ 器の設置が必要です。コストを要 アリング。京都市では、次世代自 全面がディスプレイとなって車体 しますが、これらを少しずつ実施 動車の普及促進事業を進めていま 色を自由に変更できる等、スマー し、公共交通機関と同等の利便性・ す。事業の一環として、電気自動 トフォンのような「ICT端末」とし 安全性の高いものにすることは不 車に欠かせない、充電設備の場所 ての未来を予感させる車に仕上げ 可能ではありません。 や空き状況等を携帯電話やカーナ ています。 り利便性の高いカーシェアリング ICT化の目的、それは… 快適な暮らしと経済成長 を目指す試行実験を行う等、新シ ところで、ICTを駆使した交通 ステムの開発が急ピッチで進んで 支援システムの構築は何を目的と います。 しているのでしょう。それは私た ビゲーションを使って共有し、よ ちの暮らしを快適で便利にするこ 一方で、トヨタ自動車株式会社 では、 「走るICT端末」をコンセプ トにした自動車の開発を始めまし た。重視したのは、社会と人を「つ とです。公共交通という公益性の 高いサービスに私たちが望むのは 「低コスト」かつ「安心・安全」であ 電気自動車 「Fun-Vii (ファンビー) 」 時流に乗るのはいま! 自動車のICT化が始まる では、通信ネットワークを経由し 電車等の公共交通機関は生活に ます。 て、 駆動系、 制御系等の各種ソフト 欠かせないものです。時刻表通り 国土交通省は2007年5月、ICT ウェアを最新版にアップデートし 円滑に運行させるために、ICT技 の利活用によるイノベーション施 続ける機能を備えています。 術の活用はすでに始まっていま 策をとりまとめた「国土交通分野 それにより、電気自動車の要と す。 イノベーション推進大綱」を発表 なる充電池の充電状況や車両の遠 同様に、自動車に関わるICT化 しました。大綱では、ICTを国土 なぐ」 機能。2011年秋に発表した 2 スマートフォンで好きな画像を選び車に向 けて画面上で指をスライドさせることで、 ボディーの表示が変えられる。 2012.4 ることです。交通支援システムは、 そうしたことの実現に向かってい 最新 交通支援 システム 交通分野で最大限に利活用して国 能 (コンピュータに電話を統合し 「あいあいタクシー」の運行を支 民生活の質の向上や経済成長の実 た技術)を備えています。利用者 援するシステム導入をサポートし 現を可能にするとして、具体的な から予約電話を受けるとモニター た西日本電信電話株式会社 香川 プロジェクトが示されています。 に事前登録済みの個人情報が自動 支店 法人営業部 第一営業担当 増 すでに発表から5年、これを受け 的に表示されるため、 オペレーター 田伸一氏は、 「この地域でバスを利 様々な取り組みが官民を挙げて進 は“利用時間を聞く”“予約内容を 用される方は病院等に通われる高 められています。 確認する”のふた手間で簡単に予 齢者が多いため、タクシーより安 ……………………………………… 約が受けられ、利用者も毎回細か い運賃等の面でも満足いただいて ここからは、交通支援システム な情報を伝えなくても済みます。 います」と導入後の町での反応を の高度化に対する取り組みとし それだけでなく、例えば車両の 語られました。 て、 (1) 交通利用者への利便性の 位置情報をGPS機能により、予約 向上(地域のバス利用における新 センターに通知する等、効率的な しい取り組み)と (2)運転手を中 運行支援を行うことも可能です。 心とした利用者全般への利便性の 運転手を中心とした 利用者の利便性の向上 高速道路の渋滞解消 国交省のビジョンとは… 向上 (高速道路の情報サービス)に ついて紹介していきます。 運転者を中心とした利用者全般 の利便性を向上させる例も見てい 交通利用者の利便性の向上 タクシーなのにバス料金!? 地方自治体が次々導入 一部の地方自治体では利用者の 予約センターのパソコンに表示されるオペレ ーション画面。 交通支援システムの導入事例 (香川県・まんのう町) きましょう。 現状の交通インフラ・システム は交通渋滞、交通事故、環境悪化等 の諸問題を抱えているように見え ます。この問題の解決に向けて、 ニーズに合わせ、 ワゴン車等を使っ 香川県南西部に位置する「まん ITS (高度道路交通システム)の研 て利用者の玄関先から指定した場 のう町」では、住民の高齢化に対応 究開発・普及が進められています。 所まで “ドア・ツー・ドア”で送り した乗合タクシー「あいあいタク 国土交通省が2011年から導入を 届けてくれる “デマンド型”交通サ シー」を2009年11月から導入。3 始めた「ITSスポットサービス」も ービスが始まっています。バスと 地区各1台の体制で運行を開始し その1つです。 同水準の低料金でありながらタク て い ま す。 通 常 の 乗 車 券 は1回 「ITSスポットサービス」とは、道 シー並みのサービスが受けられる 300円。1日の平均利用者は40~ 路交通情報や安全運転支援情報 ことから、過疎地域を中心に赤字 60名。多い時には80名以上とい を、音声やカーナビゲーション等 のバス路線の代わりに導入されて う日もある等、町民に定着してい への図形(地図等)表示によりドラ います。 ます。 イバーに伝達するサービスのこと デマンド型の運用には、利用者 であり、同時にETCのサービスを のニーズに合わせて車両を効率的 受けることができます。 に動かす交通支援システムの仕組 国土交通省 道路局 道路交通管 みを活用することが有効となりま 理課 ITS推進室室長の奥村康博氏 す。例えば東日本電信電話株式会 は、このサービスの概要ついて、 社/西日本電信電話株式会社が販 「道路交通情報をカーナビゲーショ 売するデマンド交通業務を支援す ン画面を通して提供するVICSと るソフトウェアでは、 予約センター での受け付けや自動車への送迎指 示といった業務を支援するCTI機 ETCとを進化させて一体化し、ド 買い物を終えたお客様を乗せる「あいあい タクシー」 。名称には「愛」と「出逢い」の意 味が込められているという。 ライバーにさらに多様なサービス をオールインワンで提供するのが 2012.4 3 最新 交通支援 システム 今月の特集 狙いです。全国の高速道路上を中 と同様に、高い信頼性の通信技術 路延長約1,000km (首都圏での例 心に約1,600カ所に設置したITS を使っており、確実に情報が提供 ではほぼ首都圏全域)のルート情 スポットと、自動車に搭載された できる上、通信料が無料なのも大 報へと広範囲になっています。 対応カーナビゲーションとの間で きなメリット。こうしたシステム 「安全運転支援」は、ドライブ中 高速・大容量通信を行い、文字や の実用化は、まだ世界では例があ の “ヒヤリ”を減らすため道路上の 地図、画像等を表示して高度な情 りません。 落下物等を事前に注意喚起するも 報サービスを実現します」と話し ます。 このシステムでは、従来のETC “ITSスポット”が渋滞解消 や安全運転に貢献 の。雪や霧等の天候やトンネル内 ITSスポットが現在提供してい もちろん「ETC」サービスも対 るのは、 「ダイナミックルートガイ 応。さらに、全国各地のSA・PA、 の渋滞も画像で把握でき、事故削 減に寄与しています。 ダンス」 「安全運転支援」 「ETC」の 道の駅等に設置したITSスポット 国土交通省 道路局 道路交通管理課 ITS推進室室長 3つのサービスです。 を通して、地域の観光情報等の閲 奥村 康博氏 「ダイナミックルートガイダン 覧も可能です。 ス」は、広範囲の渋滞データを受信 今後、ドライバー等のニーズを して、カーナビゲーションが最適 踏まえつつ、多彩なサービスが提 なルートを選択するもの。提供で 供される予定です。 きる渋滞データは、既存のVICS対 例えば、九州地方で物流業者の 応カーナビゲーションが都道府県 車両を使用して、ITSによる物流 単位の情報範囲のルートを網羅す 効率化に関する官民実証実験を実 るのに対して、 ITSスポットでは道 施していたり、大手ハンバーガー ITSスポットは、従来のカーナビやETCに比 べてはるかに利便性の高い高度なサービス です。ドライバーの皆様には、 ぜひ対応カー ナビを搭載して利用していただき、また、企 業の皆様には、 活用に向けたアイデアを積極 的に提案していただければと思います。 チェーンがITSを活用した次世代 ドライブスルーの実証実験に取り 図 ITSスポットサービス 組む等、将来に向けて様々な試み ■ダイナミックルートガイダンス ・広範囲の渋滞データを受信 ・カーナビゲーションが最適なルートを選択 ■安全運転支援 ・ドライブ中の“ヒヤリ”をなくす、事前の注意喚起 ■ETC が行われています。 人と社会を豊かに 扉を開く鍵はICT ITSスポット 紹介した各種の取り組みや開発 を見ると、新しい技術と今の技術 とが出会い、更なる利便性・安全 性の向上につながるように感じら れます。このことはGPSシステム と高度なカーナビゲーションの普 ITSスポット対応 カーナビゲーション 及とが組み合わされ、 1つの交通支 高速・大容量通信 援システムとなる例からも良く分 かります。ICT技術を利用した新 交通システム。人と社会を豊かに するこのシステムの未来は “情報” が握っているのです。 4 2012.4