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正答と解説
学説試験 問 正解 問 正解 問 正解 問 正解 問 正解 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 2 2 3 4 3 5 5 4 1 1 3 3 4 4 3 4 1 3 2 1 4 4 2 4 1 5 3 2 5 1 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 3 2 4 5 3 5 4 4 3 4 2 3 4 3 2 4 4 5 4 3 3 4 4 4 1 3 1 2 2 4 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 2 1 4 3 4 3 4 2 4 5 3 3 2 5 4 3 5 1 2 2 4 5 1 5 3 1 4 3 2 5 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 1 1 4 3 3 5 5 2 2 4 1 1 2 2 2 4 5 5 2 4 1 4 1 5 1 5 5 1 1 4 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 1 4 4 2 3 2 1 4 5 2 5 1 1 5 4 2 3 5 5 2 1 5 4 5 5 3 2 3 5 4 実地問題 課題 問 正解 問 正解 問 正解 問 正解 問 正解 1 2 3 4 5 6 7 8 4 3 5 5 4 2 2 2 9 10 11 − − − − − 3 4 4 − − − − − 1 2 3 4 5 6 7 8 1 1 4 2 1 2 3 1 9 10 11 12 13 14 15 16 4 3 5 2 4 2 1 2 17 18 19 20 21 22 23 24 5 5 5 3 4 3 2 4 1 <解説> 問 1∼6 解剖学 解説なし 問 7∼12 実験動物学 解説なし 問 13∼17 生理学 問 13 (a)呼吸中枢(呼息および吸息中枢)は延髄にあり(呼吸調節中枢は橋)、そのニューロン群は、発射パターンと 投射様式から四つ(漸増型吸気性ニューロン:横隔膜や外肋間筋(主吸息筋)を神経支配、漸減型呼気性ニュー ロン:声門開大筋である喉頭の背側の背側輪状披裂筋や腹側の輪状甲状筋、漸増型呼気性ニューロン:内肋間筋 など、漸減型呼気性ニューロン:声門閉鎖筋である喉頭の側筋の甲状披裂筋や外側輪状披裂筋)に分けられる。 これらのパターンの相違は、弾性仕事(胸郭や肺の弾性やコンプライアンス(弾性の静特性) )や気道抵抗で説明 できる。 (b)ヘーリングブロイエル反射は、肺伸展による吸気抑制と呼気促進をもたらすが、呼吸パターンの形成にも関 与していると考えられている。 (c) 主に PaO2 低下を受容する。 問 14 VFAs:volatile fatty acids 揮発性脂肪酸は第1胃と第2胃で主に吸収され、反芻動物でのエネルギー源の 60 – 80%を供給している。反芻動物では低めの血糖値(ウシやヒツジで 40 – 80 mg/dl, イヌやネコでは 70120 mg/dl) が特徴であるが、グルコースは特に神経系に必須で、糖新生が重要である。反芻動物の場合、VFA のうち、酢酸 は TCA 回路に組み込まれて主要なエネルギー源となり、プロピオン酸は糖新生に使われる。 問 15 (a) これは心筋の場合 (b) 強縮が生理的収縮である。 (c) トロポニン C に結合し、アクチンとミオシンがクロスブリッジを形成する。 問 16 (a) 表在性痛覚のうち、細い有髄線維(Aδ)が伝えるのが速い(早い)痛み fast pain(刺痛 pricking pain) で、痛みの部位が認知される。これに対して、無髄線維(C)が伝える遅い痛み slow pain(灼熱痛 burning pain)は、例えば火傷の場合で、瀰漫性で自律性反応を伴う。 (b) 関連痛という(人の心臓発作では左胸と左腕が痛くなる)。投射痛とは体性感覚の場合で、代表例は肘を打っ たときの第3、第4指のしびれ感。 (c) 痛みは順応しない。 問 17 小腸の上皮細胞における膜輸送では、刷子縁(小腸内腔側)に二次(性)能動輸送である SGLT1(Na+依存性グル コース輸送体)があり、Na+とグルコースを共輸送している。また側底膜(血管側)には一次(性)能動輸送である Na+K+ ATPase(ナトリウムポンプ)と促通拡散であるグルコーストランスポーター(小腸の場合 GLUT2)がある。 言い換えると、Na+の吸収にはグルコースが必要ともみなせる。 問 18∼25 薬理学 問 18 a × 一般に、静脈注射>筋肉内注射・腹腔内注射>皮下注射>経口投与の順で薬物の吸収・作用発現が早い。 b ○ 細胞膜は脂質であるため、親水性・解離型(イオン型)の薬は通過しにくい(教科書図 31) 。 c ○ 酸性薬は血漿中のアルブミンに結合しやすく、塩基性薬はα1 酸性糖タンパク質に結合しやすい。結合型 の比率が多くなると組織への分布が遅くなり、薬理効果が現れにくい(血中濃度は高い) 。 d × 第 I 相反応では、薬は酸化、還元、加水分解を受けるが、肝ミクロソーム酵素系のチトクロム P450 (CYP) による酸化が重要である。 e × ネコはグルクロン酸抱合能がなく、イヌはアセチル化能がなく、ブタは硫酸抱合能がない。反芻動物はこ れらの抱合能が高い。 問 19 a ○ dツボクラリン(ニコチン受容体拮抗薬) 。その他、ヘキサメトニウム(ニコチン受容体拮抗薬) 、アトロ ピン(ムスカリン受容体拮抗薬)など。 2 b × フェニレフリン(α1 受容体作動薬) 、プロプラノロール(β1、β2 受容体拮抗薬) 。α受容体拮抗薬とし ては、プラゾシン(α1 受容体) 、フェノキシベンザミン(α1、α2 受容体) 、ヨヒンビン(α2 受容体) 。 c ○ シメチジン(H2 受容体拮抗薬) 。その他、ジフェンヒドラミン(H1 受容体拮抗薬)など。 d × スピロノラクトンはアルドステロン受容体拮抗薬。 e ○ ドパミン(D2 受容体作動薬) 、ハロペリドール(D2 受容体拮抗薬) 。その他、クロルプロマジン(D2 受容 体拮抗薬)など。 問 20 1. ○ アセチルコリンは血中のコリンエステラーゼで速やかに分解されるが、カルバコールは分解されず強力 で持続的な作用を発揮する。 2. × フィゾスチグミンは血液−脳関門を通過し中枢作用を示すが、ネオスチグミンは通過できない。 3. × アドレナリン(交換神経)により瞳孔(虹彩)散大筋の収縮により散瞳する。アセチルコリン(副交感 神経)により瞳孔(虹彩)括約筋の収縮により縮瞳する。 4. × クロニジンはα2 受容体作動薬で、主に延髄の血管運動中枢からの交感神経発射を抑制してノルアドレナ リン放出を抑制し血圧を下降させる(高血圧治療薬) 。 5. × アトロピンはムスカリン受容体拮抗薬(副交感神経遮断薬)⇒散瞳、眼内圧の上昇、心拍数増加、消化 管運動抑制、気管支拡張、汗腺・涙腺・唾液腺分泌抑制(口渇) 、鼻・咽頭・気管・胃腸管の腺分泌抑制(教科書 表 71 参照) 。 問 21 a × dツボクラリンは競合性遮断薬であり、終板のニコチン受容体へのアセチルコリン結合に競合拮抗し筋弛 緩作用を示す。脱分極性遮断薬のスキサメトニウム(サクシニルコリン)は終板のニコチン受容体を活性化して 脱分極を起こす。スキサメトニウムはコリンエステラーゼで分解されにくいため、終板の脱分極が持続した結果、 Na+チャネルの不活化・ニコチン受容体の脱感作が起き、神経筋接合部の伝達は阻害される。 b × 局所麻酔薬はその構造からエステル型とアミド型に分けられる。エステル型の局所麻酔薬(プロカイン) は、組織・血中のエステラーゼで分解されやすく作用時間が短い。アミド型(リドカイン)は、肝臓で代謝され る。 c ○ 血液/ガス分配係数が大きい(血液に溶けやすい)吸入麻酔薬は、導入と覚醒に時間がかかる(脳へ移行 しにくい) 。脂質/ガス分配係数が大きい(細胞膜に溶けやすい)と、効力が強くなる。 d ○ 新皮質−視床系を抑制する一方、辺縁系、網様体賦活系を活性化するため解離性麻酔薬と呼ばれる。その ため、一見覚醒しているように見えるが、周囲環境に対し無反応で、鎮痛・健忘状態になる。動物は目を開いた ままのカタレプシー状態(四肢の硬直)になるのが特徴。 e × チオペンタールは脂溶性が高く脂肪に移行しやすいため作用時間が短く、追加投与には注意が必要。同じ 超短時間型のプロポホールは、急速に肝臓で代謝されるため、作用が短く、持続・連続投与が可能。 問 22 a × H1:血管拡張・透過性亢進、血管以外の平滑筋(気管支、腸管、子宮)の収縮、知覚神経刺激、H2:血管 拡張、胃酸分泌促進。 (教科書表 91) b × カプトプリルなどのアンギオテンシン変換酵素阻害薬はアンギオテンシン II の生成を阻害する。同時に ブラジキニンの分解を抑制する結果、ブラジキニンの血管拡張作用により降圧効果を生じる c ○ ロサルタンは AT1 受容体拮抗薬であり、アンギオテンシン II による末梢血管抵抗と体液量の増加に拮抗 して、血圧を下降させる。 (教科書図 95) d ○ PGE2 は発痛増強作用のほか、発熱を促進する作用もある。 e × アスピリン・インドメタシンなどはシクロオキシゲナーゼを阻害しプロスタノイド(プロスタグランジン 類とトロンボキサン類の総称)産生を阻害する。ステロイド系抗炎症薬はホスホリパーゼ A2 の発現抑制などによ りエイコサノイド(プロスタグランジン類、トロンボキサン類とロイコトリエン類の総称)産生を阻害する。 (教 科書図 98) 問 23 a ○ ジギトニンの強心作用:Na+, K+ATPase 阻害⇒細胞内に Na+が蓄積⇒Na+Ca2+交換系の抑制⇒Ca2+の排出抑 制(細胞内 Ca2+濃度上昇)⇒筋小胞体 Ca2+量増加⇒次の収縮に利用される Ca2+量増加により強心作用。 (教科書図 114) 3 b × キニジンは Na+チャネル遮断と、K+チャネル抑制作用を持つ。その結果活動電位の 0 相の立ち上がり速度を 減少(伝導速度の減少)し、膜の再分極を延長(有効不応期を延長)する(3 相) 。その結果、心電図の QT 間隔を 延長する。 (教科書図 115) c × リドカインはキニジンと同じ第 I 群に分類される抗不整脈薬で、Na+チャネル抑制が主な作用機序である。 心室性不整脈に頻用されるが、心房性不整脈には効果がない。 (教科書表 112, 113) d × ニフェジピンは血管の Ca2+チャネルを強く遮断するため、降圧薬や抗狭心症薬として用いられる。ベラパ ミルは心臓の Ca2+チャネルを強く抑制し、抗不整脈薬(第 IV 群)として用いられる。 (教科書表 114) e ○ ニトログリセリンは体内に入ると還元を受けて NO を遊離する。遊離した NO は、血管平滑筋細胞のグアニ ル酸シクラーゼを活性化し血管を弛緩させる。 問 24 a × ヘパリンは、活性化トロンビン・IX・X 因子を阻害するアンチトロンビン III の作用を増強することによ り、血液凝固阻害作用を示す。 b × ウロキナーゼはプラスミノーゲンからプラスミンへの変換を触媒する。プラスミンがフィブリンを溶解す ることにより血栓が溶解する。 (教科書図 121) c × 活性化した血小板から放出される ADP は、周りの血小板を活性化させ、その結果血小板凝集が起きる。チ クロピジンは ADP の作用を阻害することで、血小板凝集を抑制する。 (教科書図 124) d ○ ビタミン B12 や葉酸は赤血球の成熟に必要な因子であり、その不足・欠乏が原因で起きる貧血を悪性貧血 と呼ぶ。治療には、ビタミン B12 や葉酸製剤が投与される。 問 25 a × サルファ薬は葉酸合成過程におけるジヒドロプテロイン酸合成を阻害(パラアミノ安息香酸と競合)する ことで抗菌活性を示し、作用は静菌的。抗菌スペクトルは広い。耐性菌が生じやすく、交差耐性を示す。プロカ インは代謝されるとパラアミノ安息香酸を生じサルファ薬の効力を低下させる。 (教科書図 182) b ○ トリメトプリムは葉酸拮抗薬であり、ジヒドロ葉酸の代謝拮抗薬として働く。単独で用いると耐性を生じ やすいが、サルファ薬との併用で相乗効果を示す。 c ○ マクロライド系抗生物質のエリスロマイシンは、主としてグラム陽性菌に有効である。また、マイコプラ ズマ、クラミジア、リケッチアにも有効(マクロライド系、テトラサイクリン系) 。細菌のタンパク合成を阻害し、 その作用は静菌的である。 d ○ 抗真菌薬のアムホテリシン B は、細胞膜のエルゴステロールに結合し、膜に小孔を作る。このため、膜透 過性が亢進(細胞外物質の流入、細胞内物質の流出)し、真菌細胞が死滅する。 問 26∼31 毒性学及び法規 問 26 エデト酸カルシウム二ナトリウムやペニシラミンは鉛中毒に有効であり、ジメルカプトールはメチル水銀中 毒に無効である。 問 27 a, d, e の記述は正しく、b, c が誤り。 アミノグリコシド系抗生物質 −−第Ⅷ脳神経障害 、腎障害 ペニシリン類−−アレルギー反応 問 28 変異原性物質に対する哺乳類動物細胞の感受性が最も高い時期は DNA 合成期である。 問 29 安全性試験の標準的な実施方法は示していない。 問 30 200x0.75+400x0.25=250 1が正解。 問 31 獣医師は、診療簿及び検案簿を3年以上で農林水産省令で定める期間保存しなければならないが、診療簿 又は検案簿を保存しなかつた者は、20 万円以下の罰金に処される。 問 32∼39 微生物学及び法規 問 32 4 *ハーナーテトラチオン酸塩培地はサルモネラの増菌、スキロー培地はキャンピロ、サブロー寒天培地は真菌 用。 問 33 問 34 *オームの嘴・羽毛病はサーコウイルス、馬伝染性貧血はレトロウイルス 問 35 *家畜では馬のみ発症。ベクターは蚊。 問 36 *高病原性鳥インフルエンザは Orthomyxovirus, 産卵低下症候群は Atadenovirus, 伝染性喉頭気管炎は Herpesvirus となる。 問 37 *症状がほとんどなく退色卵が認められることから、またワクチン暦もないことから、産卵低下症候群(EDS ウ イルス)が疑われる。 問 38 *海外で承認されている医薬品も輸入する場合には、届出だけでは不可。申請して許可を得る必要がある。医 薬品のほとんどは要指示薬で獣医師の指示書が必要。市販医薬品といえども勝手に混合し注射することはできな い。 問 39 *b,c以外は全て家畜伝染病 問 40∼41 微生物 問 40 a:弱毒生ワクチンは、抗原量が少ないが生体で増殖するため、アジュバントの添加は不要である。 b,c:不活化ワクチンは、一般的に細胞性免疫の誘導が弱い。また、そのワクチン効果は低いため、多量の抗原を 複数回接種する必要がある。 問 41 アデノウイルス dsDNA エンベロープ無 レオウイルス dsRNA エンベロープ無 パラミクソウイルス ssRNA エンベロープ有 コロナウイルス ssRNA エンベロープ有 ラブドウイルス ssRNA エンベロープ有 問 42∼47 寄生虫学 問 42 寄生虫診断に必要な基礎的知識を問うもので,線虫,吸虫,条虫類から一般的な寄生虫種を取り上げその虫卵 の形態を問の対象とした. 問 43 線虫の幼虫移行症の原因となる虫種を問うもので,固有宿主と非固有宿主での病原性の違いを理解しているか を問うもの. 問 44 最近多発している鶏の外部寄生虫で,その基本的な形態・生態についての知識を問うもの.ダニ類の形態と生 態の関する知識を必要とする. 問 45 寄生虫種の同定において虫卵の形態のみで判別が困難な虫種と同定に必要な手法の選択を問うもの.自由生活 期での糞線虫の発育についての知識が必要. 問 46 代表的な駆虫薬とその適応寄生虫種に関する知識を問うもの.プラジカンテルが線虫類には無効であることが 理解されているか. 問 47 馬,牛,鶏の代表的な寄生虫病とその原因となる寄生虫種,併せて学名にいついての理解度を問うもの. 5 問 48∼50 病理学 問 48 a.誤 CowdryA 型 → full 型 b.正 c.誤 初期 → 後期 d.正 e.正 問 49 a.誤 全身的 → 局所的 b.正 c.正 d.正 e.誤 シッフ反応 → コッサ反応 問 50 血管反応の経過については動物病理学総論 144 ページ参照 問 51∼55 公衆衛生学 問 51:消毒薬 教科書59∼60ページ参照 問 52:水道水の水質基準 教科書362ページ本文および表V−4参照 気圧と健康障害 教科書356ページ (教科書には記述されていないが1気圧は 760mmHg は基本事項) 気象と温熱条件 教科書355∼356ページ参照 (湿度80%では快適とはいえません。 ) 大気汚染物質(一酸化炭素) 教科書394∼395ページ参照 太陽光線の人体に体する影響 教科書353∼354ページ参照 問 53:カンピロバクター 教科書121∼122ページ参照 教科書203∼204ページ参照 問 54:汚染指標菌 教科書262∼267ページ参照 教科書266ページ9行目(糞便系大腸菌) 注:大腸菌群は加熱で容易に死滅するため加熱食品の汚染指標には適さない。 問 55:ダイオキシン 教科書239ページなどにおおざっぱな記述がある。 本問は、見学実習にて解説していただいた項目である。 問 56∼69 内科学 問 56 解説:テトラサイクリンがネコのクラミジア感染症の第一選択薬である。 問 57 解説:ネコパルボウイルスは胎子の小脳形成を阻害することがある。2および3は子猫における感染が最も多 く認められるウイルスであるが、目やにや鼻汁といった症状が主である。4はネコ伝染性腹膜炎や腸炎を引き起 こすウイルスであり、5は白血病やリンパ腫といった血液腫瘍を引き起こしたり、貧血をおこしたりする。 問 58 6 解説:アテノロールは 遮断薬、ジゴキシンは陽性変力薬、プロプラノロールは 作動薬、プロカインアミドは 抗不整脈薬である。 問 59 解説:胃潰瘍や十二指腸潰瘍などにより蛋白喪失性腸症が引き起こされることは極めて稀である。 問 60 IX 神経系の疾患 解説:咀嚼筋炎は開口困難が初期症状として現れる。肉芽腫性髄膜脳炎は大脳および小脳に病変を形成し、発作 が主な症状として現れることが多い。ジステンパーウイルス感染症では呼吸器症状および神経症状を呈するが、 末梢神経麻痺のみが認められることは稀である。多発性神経根炎は脊髄神経根の炎症であり、痛みや四肢の麻痺 を特徴とする。 問 61 解説:連銭形成は高蛋白血症などによる過粘稠症候群で認められる。球状赤血球症は溶血性貧血を示唆する所見 である。犬においてハインツ小体の形成はあまり一般的ではなく、タマネギ中毒などで認められる。楕円赤血球 症は遺伝性疾患であり、赤血球膜蛋白の異常により発症する。血色素の減少は 問 62 解説:2および5は甲状腺機能の測定検査であり、4は糖尿病に対する検査である。 問 63 異物は第二胃から穿孔することによって起こり、第二胃炎や胸膜炎から継発する。病変の程度によって治療法の 選択は異なるが、治療を行っても概して経済的に採算が取れない。 問 64 病変が小さい場合には無症状であることが多い。 問 65 乳熱と呼ばれるが、実際には熱発より低体温が認められることがある。乳牛の分娩時には高血糖を示すが、乳熱 を発症した牛ではこれが顕著となるため、低血糖は誤り。 問 66 各種動物における白筋症はビタミン E の欠乏によって起こる。 問 67 ピング音以外は胸部の打診時に認められる音。 問 68 結石はリン酸塩(リン酸アンモニウムマグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウムなど)であること が多いが、これらは尿の pH が上昇した際に出現する。尿路閉塞は発生することがあり、部分閉塞では血尿、頻尿、 排尿痛が見られることがあり、また完全閉塞では排尿姿勢はとるものの排尿できないといった排尿困難に関する 症状を呈する。 問 69 原因はマグネシウム欠乏による。本症の経過は一般に急性である。病型としては甚急性型、急性型、慢性型に分 類される。 問 70∼78 外科学 解説なし 問 79∼82 産業動物獣医学 問 83∼87 獣医繁殖学) 問 83 馬の黄体退行は全身循環で子宮内膜由来の PGF2α が卵巣の黄体に到達して退行を促すと考えられている。 問 84 卵胞発育の初期は FSH に依存するが、最終ステージでは LH に依存する。卵胞波は、1つの発情周期の間に2、 3回出現する。 問 85 泌乳初期には乾物摂取量が低下するが、泌乳量が増大するので BCS は低下する。一方、乾乳期には泌乳しなくな るので BCS は維持あるいは増加するのが一般的である。 問 86 7 一側の陰唇腫大、外子宮口および胎子触知不能は子宮捻転の特徴的症状。子宮捻転と診断された時にまず採るべ き処置は整復である。 問 87 テストステロンは精巣の間質細胞から分泌される。一方、中腎管抑制物質はセルトリ細胞から分泌される。 問 88∼90 画像診断学及び法規 解説なし 問 91∼101 新興感染症学 解説なし 問 102∼113 分子病態学 問 102 アミノ酸の異化反応において各アミノ酸の窒素は主にアミノ基転移飯能によりグルタミン酸に集積する。 問 103 b. アルブミンは血漿タンパク質の 60‾70%を占めている。 d. ヘムは造血細胞や肝細胞でグリシンとスクシニル CoA を出発材料として合成される。 問 104 ビタミン C が欠乏すると壊血病になる。 問 105 脂溶性ビタミンの組合せ 問 106 a. インスリンは肝細胞、筋肉細胞、脂肪細胞などに作用してグリコーゲン合成や解糖系を促進して血糖値を下げ る。 b. インスリンとグルカゴンは拮抗的に作用し、それぞれ血糖値の低下と上昇に作用する. e. 副甲状腺から分泌されるパラトルモン(PTH)は結成カルシウム濃度を上昇させる。 問 107 DNA はデオキシリボースの 3’位と 5’位の間でリン酸ジエステル結合により鎖状に伸びている。 問 114∼122 外科学 解説なし 問 123∼126 獣医繁殖学 解説なし 問 127∼130 家畜衛生学 解説なし 問 131∼140 法規 問 131 * 家畜伝染病予防法の「第五十二条の二」に不服申立ての制限として記載されている事項であり、家畜の所有 者が蒙る被害よりも伝染病蔓延防止を優先することが国民の利益にかなうという考え方に基づいた行政不服審査 法の適用除外である。行政不服審査法は、行政庁の違法又は不当な公権力の行使から国民の権利利益の救済を図 るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とするものであり、不服申立ての適用除外が定められてい る法律は多くはない。 問 132 * 第十七条に規定された殺処分に該当するのは家畜伝染病(法定伝染病)のみであり、届出伝染病は該当しな い。マレック病、トキソプラズマ病、イバラキ病、レプトスピラ症は届出伝染病である。97 種類ある届出伝染病 を覚える必要はないが、数が少ない 26 種の家畜伝染病は記憶しておくこと。 「と殺する義務」は家畜の所有者に 対する規定であり、 「殺処分」は都道府県知事の権限を規定したものである。 問 133 * 第十三条の例外規定は、自家用(a) 、不慮の災害(c) 、切迫(d)のみであり、その場合においても、解体ま で許されるのは自家用(a)のみであり、不慮の災害や切迫の場合はと畜場に搬入して解体しなければならない。 問 134 * 第十四条にはその他の規定もあるが、a∼c は常識である。d について迷うと思うが、問題文にあるように、 実際に担当するのはと畜検査員(獣医師)であるが、法律上は所轄する行政長が責任をとる表現になっている。 大臣が不正を働いた場合に総理大臣の任命責任が問われるように、と畜検査員が不正を働いた場合にも知事の雇 用責任が問われる。 問 135 * 狂犬病予防法第二条で適用範囲が「犬」 、ならびに「猫その他の動物」と規定されており、後者については狂 8 犬病予防法施行令で「猫、あらいぐま、きつね、スカンク」と規定されている。犬については狂犬病予防法の全 ての条項(登録。予防接種等)が適用されるが、 「猫その他の動物」については法規定の一部(検疫等)が適用さ れる。動物検疫所における輸入検疫の区分としては、 「犬と猫」と「あらいぐま、きつね、スカンク」に分かれて 規定されている。コウモリについては、狂犬病予防法ではなく、マストミス(和名ヤワゲネズミ)とともに感染 症法と検疫法により輸入禁止となっている(法令の所轄が農水省と厚労省に分かれる) 。 問 136 * 全ての動物と言いたいところだが、食料生産、公衆衛生、動物愛護に係わる動物種に限定されている。ハマ チ等の養殖魚や観賞魚の鯉については、薬事法に絡む動物薬の使用に関してのみ獣医師が関与している。イノシ シ、兎、ダチョウ等も食料生産の側面があるが、現時点では含まれていない。法に定められている飼育動物を覚 えておくこと。 問 137 * 平成一八年一二月に法改正されているので、要注意。一類感染症は覚えておくこと(改正前は、エボラ出血 熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱の 5 種だったが痘そうと南米出血熱が加わっ た) 。痘瘡は 1980 年に WHO が根絶宣言をし、米国、ソ連、英国の 3 箇所の研究所にのみウイルス株が残されたが、 9.11 事件後米国が盛んにその脅威を報じており、そのウイルス株がテロリストに渡っているものと推測され、そ のために付け加えられたのではないか? 一類感染症(7 種) 二類感染症(4 種) エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マール ブルグ病、ラッサ熱 急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイル ス属SARSコロナウイルスであるものに限る。 ) 三類感染症(5 種) コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス 四類感染症(10 種+ E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザ、ボツリヌス 政令 31 種) 症、マラリア、野兎病、政令で定めるもの(ウエストナイル熱など) インフルエンザ(鳥インフルエンザを除く。 ) 、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型 五類感染症(8 種+厚 肝炎を除く。 ) 、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア 生労働省令 33 種) 感染症、梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、厚生労働省令で定 めるもの(アメーバ赤痢など) 問 138 * 法第五十四条で輸入禁止とされている動物は、 「厚生労働省令、農林水産省令で定める地域から発送または経 由したもの」という限定があり、施行令の指定動物で「イタチアナグマ、コウモリ、サル、タヌキ、ハクビシン、 プレーリードッグ、ヤワゲネズミ(マストミス) 」の 7 種と定められている。また、法第五十五条で輸入検疫が定 められており、その対象となる指定動物は施行令で「サルについて、エボラ出血熱及びマールブルグ病とする」 となっている。 問 139 * 法第十三条で「獣医師は、エボラ出血熱、マールブルグ病その他の政令で定める感染症ごとに当該感染症を 人に感染させるおそれが高いものとして政令で定めるサルその他の動物について、当該動物が当該感染症にかか り、又はかかっている疑いがあると診断したときは、直ちに、当該動物の所有者の氏名その他厚生労働省令で定 める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない」とされており、施行令第五条 で具体的に示されている。北海道でエキノコックス症を伝播しているのはキタキツネであり、犬も終宿主である (e の対象動物は犬) 。中間宿主として巻添えに合っているのは、ヒトと豚であり、猫については報告がない。 問 140 * 水道法が平成 18 年に改正され、第4条に基づく「水質基準に関する省令」も変更された。大腸菌群には糞便 に由来しない土壌細菌が含まれており、食品はともかく、水道水にまで土壌汚染を認めない訳にはいかない。実 態に即した改正として、 「大腸菌群」から「大腸菌」に変更された。水道法では「シアン、水銀その他の有毒物質 を含まないこと」となっているが、「基準に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める」とされ、「含まないこ と」の基準値として「検出限界値」が採用されていることは講義で話してある。アルミニウムは痴呆症との関連が 指摘されている。消毒副生成物として、総トリハロメタン(クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジク 9 ロロメタン及びブロモホルムのそれぞれの濃度の総和)は従前どおり 0.1mg/L 以下であるが、新たに 4 項目付け 足された。その一方で、シマジンなどの農薬の規制がなくなった。 新旧対照表(太字箇所に注意) 細菌 金属 新 旧 大腸菌:検出されないこと。 大腸菌群:検出されないこと。 ホウ素及びその化合物:1.0mg/L 以下 規定なし アルミニウム及びその化合物:0.2mg/L 以下 規定なし 1,4ジオキサン:0.05mg/L 以 規定なし 削除 1,2ジクロロエタン:0.004mg/L 以下 有機 化合 物 揮発 性有 1,1,2トリクロロエタン:0.006mg/L 以 削除 機化 合物 下 削除 1,1,1トリクロロエタン:0.3mg/L 以下 クロロ酢酸:0.02mg/L 以下 規定なし 消毒 ジクロロ酢酸:0.04mg/L 以下 規定なし 副生 臭素酸:0.01mg/L 以下 規定なし 成物 トリクロロ酢酸:0.2mg/L 以下 規定なし ホルムアルデヒド:0.08mg/L 以下 規定なし 削除 1,3ジクロロプロペン:0.002mg/L 以下 削除 シマジン:0.003mg/L 以下 削除 チウラム:0.006mg/L 以下 削除 チオベンカルブ:0.02mg/L 以下 臭気 ジェオスミン:0.00001mg/L 以下 規定なし 物質 2メチルイソボルネオール:0.00001mg/L 以下 規定なし 非イオン界面活性剤:0.02mg/L 以下 規定なし 全有機炭素(TOC)の量:5mg/L 以下 規定なし 農薬 面活 性剤 一般 性状 有機物等(過マンガン酸カリウム消費 削除 量) :10mg/L 以下 問 141∼146 公衆衛生学 問 141 * 「国際保健規則」が世界保健会議によって 2005 年 5 月に改定され 2007 年 6 月から施行された。これと平行 して日本の「検疫法」も 2006 年 12 月に改正された。改正間もないので出題されない(出やすい?)かも知れな いが、講義の際に説明した a は現時点では誤りであり、この問題の b∼d は記憶しておくこと。 1951 国際衛生規則(ISR)制定 1969 国際保健規則(IHR: International Health Regulations)と改名 1981 一部改正(対象疾患が 6 疾患→3 疾患へ) 1995 新興・再興感染症の流行を受け、第 48 回世界保健総会にて IHR 改正を要求する決議案が採択 2005 第 58 回世界保健総会にて IHR 改正案が採択 2007 IHR(2005)発効 問 142 * 食中毒にウイルスの項目が付け加えられたのは 1998 年からであるが、細菌性食中毒が事故件数、患者数とも 減少傾向にあるのに対し、ウイルス性食中毒はともに増加傾向を示している。さらに、ウイルス性食中毒では 1 件当りの患者数が多いのが特徴である。ウイルス性食中毒の大半は小型球形ウイルス(SRSV)を含むノロウイル スである(2002 年に SRSV 等がノロウイルスに統一された) 。ヒトの小腸粘膜細胞でのみ増殖する。無症状でも糞 便中にウイルスが検出される。ノロウイルスは、食中毒以外に「ヒトーヒト感染」を起こし、感染症法で 5 類感 10 染症定点把握疾患に定められている感染性胃腸炎の一種であり、食中毒以外の症例もある。選択肢 a は、季節と ともに、SRSV とノロウイルスの関係の誤解、ノロウイルス感染症を食中毒に限定していることも誤りである。 年 細菌性食中毒 ウイルス性食中毒 件数 患者数 件数 患者数 1998 2620 36337 123 5213 1999 2356 27741 116 5217 2000 1783 32417 247 8117 2001 1469 15710 269 7348 2002 1377 17533 269 7983 2003 1110 16551 282 10702 2004 1152 13078 277 12537 2005 1065 16678 275 8728 2006 774 9666 504 27696 問 143 * 狂犬病予防法施行は 1950 年。国内ではヒト 1954 年の1例、イヌ 1956 年の6例、ネコ 1957 年1例が最後の 報告である。日本人が海外で犬の咬傷により感染し帰国後死亡した例は、1970 年 1 名(ネパール) 、2006 年 2 名 (フィリピン)がある。隣国中国では年間 2000 名を超える死亡があり、注目されている。日本獣医師会誌に掲載 されたフィリピンと中国の発生状況は、しっかり見ておくこと。 11 フィリピンにおける人と犬の狂犬病発生状況 中国における最近の人の狂犬病発生状況 問 144 * ワクチンは開発されていない。1990 年代に米国に出現したハンタウイルス肺症候群は、Hantavirus 属に属す る新種のウイルスによるものである。 問 145 * 近年、疫学用語の出題もあり、基本的用語は正確に理解しておくこと。地域の比較や過去との比較のための 人口構成補正に使われる基準人口は、現在、平成 17 年国勢調査による人口としている。罹患率(incidence)は感 受性集団のリスクを表すものであり、有病率(prevalence)は観察期間における患者数の地域人口に占める割合を いう。新生児死亡率は生後4週(28 日)未満、乳児死亡率は生後1年未満の死亡数を出生数で割ったものである。 問 146 * 世界では飲用可能な水の恩恵を受けていない人々が約 11 億人、地球上全人口の 5.5 人に 1 人に相当するとい われている。1996 年に人口 13800 人の埼玉県越生町で 8812 人のクリプトスポリジウム感染症が発生した。水道の 漏水率は減ってはいるが、配管の破損とのイタチゴッコであり、まして、配管工事があった場合は汚染を想定し なければならない。 問 147∼150 追加 問 147 a) 膀胱の粘膜は移行上皮で構成され、移行上皮癌の発生が多い。 b) 正解。猫では近位曲尿細管上皮、犬では近位直尿細管上皮に脂肪滴が多い。 c) エリスロポイエチンは主に腎間質の線維芽細胞で合成される。 d) 牛には腎盂(腎盤)がない。 e) レプトスピラ症の組織診断には銀染色法(Levaditi 染色や WarthinStarry 染色)や特異的抗血清を使用した 12 間接螢光抗体法などがある。periodic acid Schiff(PAS)染色は多糖類の染色法であり、腎臓の組織学的検査や 真菌検査に汎用されるがレプトスピラ症の組織診断としては一般的でない。 問 148 iPS 細胞は、induced pulripotent stem cells の略称で、ES 細胞と同様の能力を持つと考えられます。したがっ て、生体のあらゆる細胞というのは誤った表現で、胎盤組織には分化しないと考えられます。胎盤も含めた組織 になる場合、分化全能性 totipotency と呼ばれます。iPS 細胞は、胚を経ずに作製できることから、再生医療にお ける倫理上の問題をクリアできると思われます。ただ、癌化が懸念されますので、今後の進展が待たれます。 問 149 解説なし 問 150 実地問題 問1 解説:毛包内における毛包虫の多数寄生がみられ、周囲の真皮には炎症細胞浸潤が認められる。 ・皮膚真菌症は化膿性炎や肉芽腫性炎がみられ、毛包炎の場合には毛包内には真菌の菌糸が認められるが HE 染色 では明瞭に染色されないことが多い。 ・皮膚乳頭腫は表皮の増殖性変化による良性腫瘍であり、パピローマウイルスの感染によって生ずるとされてい る。 ・トリヒナ症は成虫が腸管内で幼虫は横紋筋内に寄生する。 ・アレルギー性皮膚炎は表皮の肥厚と真皮の浅層における浮腫やリンパ球、好酸球、マクロファージ、肥満細胞 の浸潤がみられる。 問2 解説:リンパ球の減数と細網内皮系細胞における大小の滴状好塩基性細胞質内封入体が多数認められる。このブ ドウの房状の封入体形成は豚サーコウイルス(PCV2)感染の特徴的な病変であり、PCV2 の感染が PMWS の主たる原 因と考えられている。 ・豚コレラはリンパ組織の壊死と血管障害による全身性の病変が認められるが封入体形成はない。 ・豚丹毒は敗血症、蕁麻疹型、関節炎型、心内膜炎型があり、関節炎型の際に所属リンパ節に腫脹がみられるこ とがあるが封入体はない。 ・豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は母豚の繁殖障害と若齢豚における呼吸器障害を特徴とし、若齢豚では間質 性肺炎に加えてリンパ節炎も発生することがあり、ウイルス抗原も肺やリンパ組織のマクロファージに検出され るが封入体はない。 ・豚抗酸菌症は非定型抗酸菌感染による肉芽腫性リンパ節炎が認められ、乾酪壊死巣を類上皮細胞、ラングハン ス型巨細胞、リンパ球、形質細胞、線維増生が囲むが封入体はない。 問3 解説:ヨーネ病の病変の特徴である類上皮細胞、ラングハンス型巨細胞、リンパ球等の浸潤が認められる肉芽腫 性腸炎像である。腸結核に比べて結合織の増生は強くなく、乾酪壊死は認められない。 ・牛ウイルス性下痢・粘膜病はウイルスの標的となる陰窩上皮細胞とパイエル板の変性壊死が主な特徴であり、 血管炎もみられ、慢性化すると固有層にはマクロファージの浸潤が重度になるが、ラングハンス型巨細胞はみら れない。 ・牛コロナウイルス腸炎は新生子牛の下痢症の原因であり、病変は粘膜面にみられ、吸収上皮細胞に感染して絨 毛の萎縮・融合を発生させる。 ・出血性壊死性腸炎は Clostridium perfringens による出血性で下痢性の腸炎であり、粘膜上皮から粘膜下織ま での出血と壊死が様々な程度にみられる。 ・悪性カタル熱はリンパ球浸潤と血管炎で粘膜に線維素性壊死性腸炎が出血とともにみられる。 課題1 Salmonella Abortusequi:雌馬で一過性の発熱,妊娠後期の流産。多発性関節炎,き甲癆,精巣炎を起こすこと あり。子馬では敗血症,関節炎,化膿,慢性下痢などを引き起こす。 Taylorella equigenitalis: 雄馬は無症状。雌馬は発症後,陰門部から灰白色で粘稠性に富む滲出液を多量に排 13 泄。感染雌馬の多くは軽微もしくは無症状。受胎率の低下を引き起こす。Burkholideria mallei: 40∼41℃の発 熱,元気食欲の減退。貧血,黄疸,浮腫,鼻漏をみる。慢性では著変を認めない。 鼻腔の鼻疽性結節およひ潰瘍,体表リンパ節の腫脹等。 Burkholideria pseudomallei:急性:発熱,食欲消失,脱力,神経症状を呈して敗血症死。慢性:食欲減退,運 動失調とともに発咳,膿様鼻汁を出す。体表部の化膿,乳房炎もみられる。 問2 R.equi は、グラム陽性、無芽胞性、非運動性の桿菌。C.pseudotuberculosis は、牛または羊赤血球寒天培地上に 弱い溶血環を作るが、R.equi と交差培養した場合 R.equi の equi 因子によってそれが増強され交差部位に完全溶 血帯が生じる(CAMP 陽性)。ELISA による血清抗体価の測定が、感染子馬のスクーリニングに有効。ワクチンはな い。 課題2 問3 1. 馬インフルエンザ:RNA ウイルス 2. 馬パラチフス: Salmonella Abortusequi 3. 腺疫:Streptococcus equi 4. 馬鼻肺炎:馬ヘルペスウイルス(DNA) 5. 馬ウイルス性動脈炎:ウマ動脈炎ウイルス(RNA) 写真 3 の核内封入体から DNA ウイルスを予想できれば、答えは、4しかない。5 も流産を起こすが、RNA ウイルス であり核内封入体は作らない。 問4 課題3 問5 問6 パルボウイルスは動物に感染する最小のウイルスの一つです。核酸は 1 本鎖 DNA で、エンベロープを欠き、非常 に抵抗性の高いウイルスで、70%エタノールに抵抗性である。宿主細胞分裂周期の S 期の細胞機能に依存してい るために、細胞分裂を繰り返している細胞で良く増殖する。 課題4 * ヨーネ病は近年増加しており、2004 年には全国で 1000 頭を超え、2006 年には 1182 頭に達した。これに対し て農水省は 2006 年に「牛のヨーネ病防疫対策要領」を定めており、全国的監視体制を強化している。 1.はブルセラ菌の性状である。結核菌などの抗酸菌はグラム染色によってうまく染色できないため、グラム不 定 (Gramvariable) と言うことがある。ただし、抗酸染色と同様に加温染色するとグラム陽性となり、細胞壁の 構造、他の菌との近縁関係などから、分類学上はグラム陽性菌に分類される。 課題5 * まん延防止のための予防接種は、発生畜舎の同居牛及び汚染畜舎の飼育牛を対象として、患畜の最終発生後 10 日間を経過してから実施すると規定されている。抗菌性物質の投与は新たな発症を抑えるためであり、予防接 種は新たな発症がなくなった段階で汚染環境からの更なる感染を防ぐためである。また、病性鑑定用の材料の採 取に当たっては、できる限り切開部位を少なくし、切開部位からの血液、体液の漏出による周囲への汚染防止を 図ることが重要であるとされている。問 3 は難しいが、問 1 と問 2 ができない方は、国家試験受験を諦めた方が 良い。 課題6 * 出血を起こす植物中毒は他にもあるが、血液検査と病理組織所見から骨髄の造血機能低下が顕著であり、汎 骨髄癆(はんこつずいろう)とよばれる反芻動物のワラビ中毒の典型例である。このデータは平成 15 年の和歌山 の事例を基にしているが、現在でも散発的に発生している。様々な植物による中毒症があるが、わらびと馬酔木 (アセビ)は記憶しておくこと。ソテツ中毒はサイカシン投与によって再現できず、別の物質と考えられている。 家畜が中毒を起こす主な植物 有毒植物 家畜 特徴的所見 原因物質 わらび 牛 汎骨髄癆 プタキロシド ソテツ 牛 脊髄の軸索変性による後肢の麻痺 (サイカシン) 14 イチイ 牛 ユズリハ 牛 キョウチクトウ 牛、馬 センダン 牛、馬 アセビ、ネジキ、 レンゲツツジ クララ、ルピナス 馬 馬 食欲廃絶,反芻停止,四肢の振戦,呼吸浅 速 疝痛,黄疸,チアノーゼ,第一胃運動の停 止 特徴的兆候がなく急死 痙攣,運動失調,沈鬱,麻痺、循環性ショ ック 沈衰,四肢開張,蹌踉,知覚過敏 流涎、沈欝、歩様不整、脈拍疾速、呼吸瀕 数 タキシン ダフニマクリン 強心配糖体オレアンドリン メリアトキシン グラヤノトキシン キノリチジンアルカロイド 課題7 * エンドファイトについては、平成 19 年 3 月に農水省通達が出され、日本獣医師会長も地方獣医師会長へ その旨を周知したことが日本獣医師会誌に掲載された。また、牛の中毒に派生して、乳肉への移行や残留による ヒトの健康障害リスクも検討課題となっている。トピック性のある話題なので、概要を理解しておく必要がある。 エンドファイト(endophyte)は植物に感染している菌類(図 1)であり、それが産生する生理活性物質によ り、耐虫性・耐病性が増強され成長も旺盛になり、両者は共生関係にある。しかし、その生理活性物質の一部は 害虫のみならず哺乳動物にも悪影響を及ぼすことがある。ゴルフ場等の芝(トールフェスク、ペレニアルライグ ラス等の品種)を生産している米国農家が種子を採取した後、残かん(ストロー)を家畜飼料として日本に輸出 している。それらの芝に感染しているエンドファイトは、糸状菌の一種 Neotyphodium coenophialum や N. loli とされ、イタリアンライグラスが感染している N. occultans は家畜に有害な毒素を産生しない。トールフェスク が感染している N. coenophialum が産生するエルゴバリン(ergovaline)の牛の中毒濃度は、全飼料中換算で 500 ∼825ppb とされ、筋肉の攣縮、起立障害、痙攣、末梢血管の収縮による耳・蹄・尾の壊疽(図 2)を引起すとさ れている。ペレニアルライグラスに.感染する N. loli が産生するロリトレム B(Lolitrem B)の牛の中毒濃度は、 全飼料中換算で 1800∼2000 ppb とされ、頸部や筋肉の痙攣、歩行異常などの神経症状を引起すとされている。 トールフェスクが原因で起こる中毒には,3 つの病態がある。 (1) フェスク・トキシコーシス(fescue toxicosis) :増体量の低下,唾液分泌の亢進,体温の上昇,呼吸数 の増加,受胎成績の悪化,泌乳量の減少等が見られる.これらの症状は夏期に顕著に見られるため,サマーシン ドロームあるいはサマースランプと呼ばれる。麦角アルカロイドは血管収縮作用を持つため,皮膚からの体熱の 放散が阻害されて体温が上昇する。また,麦角アルカロイドのドパミンレセプター刺激によりプロラクチン分泌 が抑制され,これにより泌乳量の低下や受胎成績の悪化が起こる。 (2) フェスク・フット(fescue foot) :牛の耳や尾の先,そしてひづめ等に壊疽が見られ、中世ヨーロッパ で麦角に汚染されたライ麦を食べた人の手足が壊疽になる「聖アンソニーの火」と呼ばれた疾病と類似のもので、 麦角アルカロイドの末梢血管収縮作用により、末端部の血行障害が起こるためと考えられている。 (3) ファット・ネクローシス(fat necrosis) :牛の腹腔脂肪が壊死する。窒素肥料を多肥した圃場で生育 したトールフェスクを給与すると起こりやすく、血中コレステロール濃度が低下し、脂肪壊死塊のエーテル抽出 物中長鎖脂肪酸量は正常脂肪と同程度だがコレステロール量は正常脂肪より 3∼4 倍ほど高いことが報告されてい る.しかし,エンドファイト関与の有無や発症メカニズムは明確にはなっていない。 ペレニアルライグラスが原因で起こる中毒 ニュージーランドでは 90 年ほど前から報告されていた羊の足の硬直や痙攣を主徴とするライグラス・スタッ ガーがあったが、1981 にペレニアルライグラスから強い神経毒性を持つロリトレム B が単離され、エンドファイ ト(後に N. lolii と同定)感染率とライグラススタッガー発症との関連が明らかになった。中毒症状は、頚部の 痙攣、歩行異常さらに筋の激しい痙攣やテタニー様発作まで、5 段階に分類されている。血液生化学的所見として は、CK および AST 活性の上昇が報告されている。 こうした輸入粗飼料に起因する中毒の発生の背景には、農薬や環境汚染物質等の化学物質に対する国民的関心 に応えるための対応に手一杯であり、自然毒にまで手が回らなかった社会状況がある。流通段階ではライグラス・ ストローと一括表示されており、農家が識別できない中で中毒が起きている。食品安全委員会では、 「エンドファ 15 イト毒素の牛への影響および畜産物残留性の解明」や「エンドファイト毒素の毒性試験調査」などの事業を行っ ている。 課題8 * 牛結核は、牛乳の殺菌処理をする基準(日本では 56℃30 分あるいはそれと同等の処理)ともなっており、人 畜共通感染症の代表的存在である。日本ではツベルクリン反応陽性牛(接種部位は尾根部皺襞:すうへき)の摘 発・淘汰によってほぼ制圧されたが、海外ではアナグマ(英国)やバイソン(米国)などの野生動物に潜んでお り、未殺菌乳の流通と相俟ってヒトの Mycobacterium bovis 感染例(ナチュラル・安心・ポックリ病?)が続い ている。同居家畜の殺処分は、BSE や高病原性鳥インフルエンザで実施され、当然視される風潮にあるが、無益な 殺生(せっしょう)は食品の安全性とは無関係である。 課題9 * ヒトや馬は終末感染であり、豚が増幅動物となるのは日本脳炎であってウエストナイル熱に感染しない。ウ イルスの干渉現象は黄熱とデング熱の例が知られているが、ウエストナイル熱と日本脳炎に関しては不明である (そうであって欲しい!)。日本のウエストナイル熱への対応は、 「感染症法」で四類感染症に指定され、農水省 は「ウエストナイルウイルス感染症防疫マニュアル」を策定し、侵入防止のために蚊、野鳥、馬等の監視体制が しかれている。 課題10 * 「国際保健規則」が改正され、黄熱(yellow fever)の地位は下降し、 「汚染地」という表現から「感染のリ スクが存在する国」に変わったが、重要疾病であることに変わりはない(下図も記憶しておくこと)。 「ジャング ル型(サルー蚊) 」と「都市型(ヒトー蚊) 」がある。 アフリカおよび南アメリカにおける浸淫地域(汚染地域) この 10 年余の発生状況(国立感染症研究所) 年次 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 患者数 4,336 2,712 295 393 1,439 974 424 190 303 208 - 死亡者数 410 751 102 117 491 247 223 89 117 101 - この表では減少傾向にあるが・・・ アフリカの擬似患者数(WHO) 擬似患者数 2001 2002 2003 2004 662 1054 1568 2172 楽観は許されない 16 17