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救急活動 - SCN[湘南ケーブルネットワーク]

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救急活動 - SCN[湘南ケーブルネットワーク]
隊長指揮訓練(救急現場における消防隊との連携)
1
PA 連携(CPA・外傷を除く緊急度・重症度の高いもの)
(1) 傷病者接触までの活動
ア
指令内容の確認及び隊員への周知・指示
イ
搬出資器材の確認及び隊員への周知・指示
ウ
感染防御の確認及び隊員への周知・指示
エ
救急隊が先着ならば、現場周囲の安全確認を行い、後続部隊が有れば、現場状況等
を後続部隊に伝える
オ
救急隊が後着ならば、先着部隊から現場周囲等の情報を得る
カ
救急隊と消防隊等が同時に現場到着したならば、連絡を密にして相互に現場周囲の
安全確認等を行う。
(2) 傷病者接触してからの活動
ア
初期評価(気道・呼吸・循環・意識)
傷病者の姿勢、顔貌・顔色、身体の動き、呼吸様式やおおよその呼吸数を評価し、
呼びかけに対する反応を見ながら、可能な傷病者の訴えを聴取する。さらに、意識、
呼吸、循環の状態を大まかに評価する。
(ア) 急度・重症度判断(新生児・乳児・幼児を除く)
a
意識:JCS100 以上
b
呼吸:10 回/分未満または 30 回/分以上、呼吸音の左右差、異常呼吸
c 脈拍:120 回/分以上または 50 回/分未満
d 血圧:収縮期血圧 90 ㎜ Hg 未満または収縮期血圧 200 ㎜ Hg 以上
e
SPO2:90%未満
f その他:ショック症状
※
イ
上記のいずれかが認められる場合は、重症以上と判断する。
生命維持を念頭においた処置
(ア)
気道確保(回復の体位、用手気道確保、経口・経鼻エアウエイ)
(イ)
酸素投与(ショック症状及び SPO2 95%未満は酸素投与を実施する)
(ウ)
必要があれば、BVM による補助換気(気道狭窄・呼吸不全・心不全・意識障
害)
ウ
全身観察(バイタルサイン等を含む)
・重点観察
(ア) 全身観察:ショック症状や切迫した呼吸不全等で、意識状態が低下して意思の
疎通が困難な場合は、全身観察を優先することが多い。
a
外因性・内因性にかかわらず、原則として頭部から下肢に向けて、生命に直結
するような重大な所見を迅速に調べる。
(イ) 重点観察:傷病者の訴えが身体の一部に限局する場合で、呼吸・循環に切迫
した危険がないと判断した場合は、重点観察を選択することが多い。
a
傷病者が訴えが集中する部分を中心に、解剖学的及び機能的に関連する部分
を系統的に調べる。
エ
傷病者接触:緊急度・重症度の把握
(ア)
初期評価、全身観察、重点観察(問診を含む)等から症状等を判断して緊急
度・重症度の把握をする。
(3) 病院選定・交渉
ア
緊急度・重症度を判断して病院選定を行う。
イ
交渉は簡潔に行う
(ア)
傷病者の年齢・性別
(イ) 主訴(胸痛、腹痛、頭痛、呼吸困難、意識障害、麻痺等)
:どこがどのようか。
(ウ)
現病歴:今の病気や怪我がどういうように起こってきたか(今までの経過)
(エ)
バイタルサイン(意識レベル、脈拍数、呼吸数、血圧、Spo2、体温)
(オ)
既往歴等:今までにかかった病気、アレルギー、服用薬の確認
(カ)
行った処置
(キ)
傷病者の氏名・生年月日(緊急度・重症度が高い場合は、第 2 報でもよい)
(ク)
病医到着までの時間
(4) 車内収容後
ア
現場で行った必要な処置の確認
イ
車載モニター等の装着及びバイタルサインや意識の再確認
ウ
継続・詳細観察(詳細な問診等も含む)
エ
第 2 報病院連絡
(ア) 詳細バイタル ・ 詳細観察にて得た所見 ・ 傷病者の変化等
2 活動要領
救急隊は、先着、後着、同着であっても、傷病者接触からの活動は基本的には同じであ
る。ただし、消防隊等は、先着、後着、同着等の状況により、初期評価、用手による気道
確保、回復の体位など一次救命処置を行う場合もある。また、病院交渉に必要な情報の聴
取及び搬送準備、傷病者を搬送した後の現場の最終確認を実施する。
1
PA 連携(救命:CPA=湘南 MC 心肺蘇生ガイドラインに従い実施)
(1) 傷病者接触までの活動
ア
指令内容の確認及び隊員への周知・指示
イ
搬出資器材の確認及び隊員への周知・指示
ウ
感染防御の確認及び隊員への周知・指示
エ
救急隊が先着ならば、現場周囲の安全確認を行い、後続部隊が有れば、現場状況等
を後続部隊に伝える
オ
救急隊が後着ならば、先着部隊から現場周囲等の情報を得る
カ
救急隊と消防隊等が同時に現場到着したならば、連絡を密にして相互に現場周囲の
安全確認等を行う。
(2) 傷病者接触してからの活動
ア
初期評価(気道・呼吸・循環・意識)
傷病者の姿勢、顔貌・顔色、身体の動き、意識、気道、呼吸様式や循環の状態を評
価し、心肺停止を速やかに確認する。
(ア) 意識の確認
a
呼びかける。反応がなければ強い痛み刺激を与える。
(イ)用手気道確保
a
頭部後屈あご先挙上法又は下顎挙上法を行う。ただし、頸椎損傷が疑われる場
合は、下顎挙上法を第 1 選択とする。
(ウ)
a
呼吸確認
胸郭の上下運動、呼吸音を耳で 10 秒以内で観察し、呼吸の有無を確認する。
d 非常に弱く不十分な呼吸、反射性のあえぎ呼吸(死戦期呼吸)は呼吸停止と判
断する。
(エ)
a
循環のサイン
頸動脈で脈拍を確認しながら、呼吸・咳・体動の有無を確認し循環のサインの
有無を確認する。
b
イ
呼吸・咳・体動のうちいずれかを認めれば、循環のサイン有りと判断する。
処置(湘南 MC 心肺蘇生ガイドラインに従い実施する)
(ア) 胸骨圧迫
a
循環のサインがなければ、直ちに胸骨圧迫を実施する。
(イ) 除細動器
a 心肺蘇生開始後、直ちに自動体外式除細動器(AED)を準備する。
b 電気的除細動の要点
(a)
対象は 1 歳以上の小児および成人
(b)
発生現場での除細動の実施回数は、2 回までとする。
(ウ)
人工呼吸等
a 呼吸停止と判断した場合には、直ちに BVM で換気を開始する。
b 酸素ボンベを携行している場合は、高濃度酸素で人工呼吸を実施することが望まし
い。
c
用手により気道確保が不十分な場合やその維持が困難な場合は経鼻エアウェイを
使用する。ただし、頭部・顔面外傷では経鼻エアウェイは禁忌である。
(エ) 特定行為等
a CPR1クール(約 2 分)ごとにECG調律確認プロトコールを実施する.
b 静脈路確保、器具を用いた気道確保はCPR(約 2 分)中に実施するが、アドレナ
リン投与は ECG 調律確認プロトコール実施中に心拍再開がないことを確認した後、
速やかに実施する
c 湘南 MC で定めた活動の優先順位及び各種プロトコールに従い実施する。
※ 発生現場で処置が困難な場合、救急車内への移送は、早い段階で臨機応変に行うもの
とする。移送中は絶え間ない胸骨圧迫に努める。
(3)
ア
特定行為指示要請及び病院選定・交渉
特定行為指示要請は、現着後直ちに傷病者の状態を確認し速やかに行う。病院選定・交
渉は、二次当番病院、かかりつけ等を考慮して行う。
(ア)
傷病者の年齢・性別
(イ)
状態:心肺停止等(初期波形を含む)
(ウ)
現病歴:心肺停止等に至った経過
(エ)
特定行為指示要請は、これから行う処置、病院選定・交渉は行った処置
(オ)
既往歴:今までにかかった病気、服用薬の確認
(カ)
傷病者の氏名・生年月日(病院選定・交渉のみ)
(キ)
病医到着までの時間
(4)車内収容後
ア
現場で行った必要な処置の確認
イ
車載モニター等(酸素切り替えを含む)の装着及びバイタルサインや状態の再確認
ウ
継続・詳細観察(詳細な問診等も含む)
エ
湘南 MC で定めた活動の各種プロトコールに従い実施する。
2 活動要領
救急隊は、先着、後着、同着であっても、傷病者接触からの活動は基本的には同じである。た
だし、消防隊等は、先着、後着、同着等の状況により、初期評価、用手による気道確保、一次救
命処置等を行う場合もある。また、特定行為指示要請又は病院交渉に必要な情報の聴取及び搬送
準備、傷病者を搬送した後の現場の最終確認を実施する。
1 PA 連携(外傷=JPTEC 及び湘南 MC 外傷ガイドラインに従い実施する)
(1)
傷病者接触までの活動
ア
指令内容の確認及び隊員への周知・指示
イ
搬出資器材の確認及び隊員への周知・指示
ウ
感染防御の確認及び隊員への周知・指示
エ
救急隊が先着ならば、現場周囲の安全確認及び負傷者数等の確認を行い、後続部隊が有
れば、この現場状況等を後続部隊に伝える
オ
救急隊が後着ならば、先着部隊から現場周囲の状況及び負傷者数等の情報を得る
カ
救急隊と消防隊等が同時に現場到着したならば、連絡を密にして相互に現場周囲の安全
確認及び負傷者数等の確認を行う。
(2)
傷病者接触してからの活動
ア
初期評価(気道・呼吸・循環・意識)
頸椎固定後、呼びかけかけで意識の確認を行った後、気道・呼吸・循環等の状態を大まか
に評価する。
(ア) 頸椎固定後(意識の確認後、頭部保持を交替し ABC を確認する)
a
意識:呼びかけ/痛み→何桁?
b 気道:発声?
c 呼吸:見て、聞いて、感じる (速さ・深さ・胸の動き)
d 循環:脈(強さ、速さ) 皮膚の湿潤・温度 外出血
e CPA,気道管理困難ならば以下の観察中断 即ロード&ゴー
イ
初期評価による処置
初期評価の結果から、気道確保、吸引、酸素投与、補助換気を実施する。
ウ
全身観察
原則として頭部から下肢に向けて、生命に直結するような重大な所見を迅速に調べる。
(ア)頭部 : 明らかな外表の損傷(視診+触診)
(イ)顔面 : 同上 + 上顎・下顎
(ウ)頸部 : 明らかな外表の損傷、腫脹、変形(視診、触診)気管偏位・頸静脈の怒張・
皮下気腫・後頸部の圧痛、ヘルメットの着用があれば頸部の確認
(エ)胸部 : 明らかな外表の損傷、胸郭の変形・圧痛、左右差 奇異呼吸 腹式呼吸呼吸
音の左右差
(オ)腹部 : 明らかな外表の損傷 膨隆 腹壁の緊張・圧痛
(カ)骨盤 : 明らかな外表の損傷 下肢長差 圧痛 動揺(圧迫は1回だけ!!)
(キ)大腿 : 明らかな外表の損傷 変形 腫脹 下肢長差 圧痛 動揺
(ク)四肢 : あきらかな外傷があるか簡潔にみる
(ケ)神経学的所見(手を握れるか?足首を動かせるか?)
(コ)背部 : 明らかな外表の損傷
エ
全身観察の評価による処置
全身観察の結果から、ネックカラー、三辺テーピング、フレイル固定、穿通性異物固定
を実施する。
オ
バックボード固定
JPTEC に準拠して実施する。
(3)
ア
車内活動
病院連絡 まず第一報(ポイントだけ簡潔に)
(ア) 年齢・性別・受傷機転・意識(JCS 何桁?)・ABCの異常、行った処置・到
着予定時間
※ ロード&ゴーでない場合は詳細観察後でよい
イ
バイタルサインの確認
(ア)
モニター装着、脈拍数、呼吸数、血圧、脈圧、Spo2、心電図、体温
(イ)
意識レベル再評価 (JCS 1 2 3,・・・・300?)
ウ
患者から聴取(SAMPLE/GUMBA)
(ア)1.受傷機転 2.主訴 3.最終食事時間 4.既往歴 5.アレルギー
エ
保温、行った処置の確認 止血は? 車内酸素の切り替えは?
オ
継続観察:病院到着まで繰り返し観察
カ
詳細観察
カ
第二報病院連絡
(ア)詳細バイタル ・ 詳細観察にて得た所見 ・ 傷病者の変化等
2 活動要領
救急隊は、先着、後着、同着であっても、傷病者接触からの活動は基本的には同じである。た
だし、消防隊等は、先着、後着、同着等の状況により、初期評価、頭部保持、全身観察、バック
ボード固定等の処置を行う場合もある。また、病院交渉に必要な情報の聴取及び搬送準備、救急
隊活動中の安全確保、傷病者を搬送した後の現場の最終確認を実施する。
報酬系
報酬 系とは、 ヒト ・動物 の脳 において、欲 求が 満たされたと き、あ るい は満 たされ
ることが 分か ったときに 活性化し 、そ の個 体に快の 感覚 を与 える神 経系のことで す。
ここ でいう欲 求に は、喉 の渇 き・食欲・体 温調 整欲求といっ た生物 学的 で短 期的な
ものから 、他 者に誉めら れること ・愛 され ること・ 子供 の養 育など 、より高次で 社会
的・長期 的な ものまで含 まれる。 認知 心理 学者は、 ヒト にお いては むしろ後者の 欲求
の方が、 行動 の決定に重 要な役割 を果 たし ていると 主張 して います 。
哺乳 類の場合 、報 酬系は 中脳 の腹側被蓋野 から 大脳皮質に投 射する ドパ ミン 神経系
( 別 名 A10 神 経 系 ) で あ る と 言 わ れ て い ま す 。 こ れ は 、 覚 醒 剤 や コ カ イ ン な ど 依 存 性
を有する 薬剤 の大部分は 、ドパミ ン賦 活作 用を持っ てい るこ とから も支持されま す。
また、動 物に おいて中脳 に電極を 挿入 し、 その個体 がボ タン を押す と電流が流れ るよ
うな装置 を作 ると、とめ どなく押 し続 ける という報 告も あり ます。
報酬 系の働き は、 学習や 環境 への適応にお いて 重要な役割を 果たし てい ます 。例え
ば我々は、
「 こ の 仕 事 を 完 了 し た ら ボ ー ナ ス が も ら え る 」な ど と 、長 期 的 な 報 酬 を 予 測
すること で、 疲労や空腹 といった 短期 的欲 求を抑え て仕 事を 優先で きます。しか し、
当てにし てい たボーナス がカット され ると 、報酬系 が抑 制さ れ、不 快さを感じる ので
か
そ
す。また 、報 酬系神経系 の働きが 、大 脳皮 質の可塑 性に 影響 するとい う報告もあ り、
学習にお いて も同様に報 酬系が重 要で あり 、
「 誉 め て 育 て る 」と い う 言 葉 は こ の こ と を
言い得て いま す。
報酬 系が活性 化す るのは 、必 ずしも欲求が 満た されたときだ けでは なく 、報 酬を得
ることを 期待 して行動を している 時に も活 性化しま す。 例え ば、喉 が渇いている ヒト
が水を飲 んだ ときには、 脳内で報 酬系 が活 性化し快 の感 覚を 感じま す。しかし、 ヒト
であれば 歩い ている途中 に自動販 売機 を見 つけた場 合、 その 時点で 水分が飲める こと
が当然推 測で きるので、 見つけた 時点 で報 酬系が活 性化 して います 。これに似た よう
な 実 験 を シ ュ ル ツ ら ( 1 993 ) が サ ル に お い て 行 っ て い ま す 。 彼 ら は 、 あ る 視 覚 刺 激 を
呈示して 数秒 後にエサが 出てくる とい う装 置を作り 、サ ルを それに 馴れさせ、同 時に
中脳のド パミ ン系細胞に 電極を挿 入し 活動 を記録し たと ころ 、実験 初期にはエサ が出
て い じ
てきた時 点で 細胞が活性 化してい まし たが 、実験に 馴れ て来 ると、 視覚刺激が 呈示さ
れた時点 で神 経活動が活 性化して いま した 。
と こ ろ で 、 報 酬 系 の ユ ニ ー ク な A 10( エ イ ・ テ ン ) と は 、 そ れ が 活 性 化 さ れ る と 快
感 を 感 ず る こ と で す 。こ の 神 経 の 発 見 は 196 4 年 、そ れ が 快 感 神 経 と 分 か っ た の は 197 8
年だと言 いま す。
この 神経は脳 幹の 神経核 と呼 ばれる場所か ら出 て、性欲や食 欲、体 温調 整の 中枢が
ある視床 下部 から大脳に 入り、恐 れ・ 警戒 ・探索に 関係 して 攻撃性 を生じると言 われ
ている扁 桃核 や記憶の貯 蔵庫と言 われ る海 馬、態度 や表 情を 生ずる 尾状核、行動 力発
現の脳と 言わ れる中隔核 などがあ る大 脳辺 縁系を経 て、 最も 進化し た人間精神を 生ず
ると言わ れる 前頭連合野 と記憶・ 学習 を総 合する側 頭葉 へ入 り終わ っています。 この
神経が刺 激さ れるとドー パミンと いう 神経 伝達物資 が分 泌さ れると 共に快感を生 じま
す。大脳 辺縁 系で生じる 喜怒哀楽 など の情 動の源が この 神経 のよう です。そこで 、こ
れを快感 神経 または快楽 神経とか 恍惚 神経 とか呼ば れて いま す。
A 1 0 神 経 は 人 間 精 神 を 創 出 す る 神 経 系 へ だ け 進 ん で い る の で す 。こ れ は 裸 電 線 の よ
うな無髄 神経 で、端的に いって、 神経 細胞 というよ りホ ルモ ン分泌 細胞なのです 。そ
こ で こ の 神 経 は ど こ か ら で も 神 経 伝 達 物 質 で あ る ド ー パ ミ ン を 分 泌 し 、そ れ に よ っ て 、
全身的に 快感 や喜怒哀楽 の情動を 生ず るの です。
ドーパ ミン はアミノ酸 の一種、 チロ シン から作ら れた アミ ンの一 種ですが、チ ロシ
ンは脳内 麻薬 の主成分で もありま す。 ドー パミンは 本来 有毒 な物質 なのです。そ れが
まんべん
精神系へ と拡 散的に、満遍 なく広 く分 泌さ れると、 それ を受 けたそれ ぞれの脳は 覚醒
し、快感 を生 じる仕組み なのです 。エ フェ ドリンや コカ イン のよう な覚醒剤はド ーパ
ミンによ く似 た薬で、ド ーパミン の再 吸収 を抑えて ドー パミ ンの作 用を高めると 言わ
れていま す。
統合失 調症 はこのドー パミンの 不足 や過 剰によっ て起 こる と言わ れます。ドー パミ
ンが減る と思 考が乱れ、 気分が悪 くな った り妄想に とら われ たりし ます。ドーパ ミン
は前頭連 合野 で一番よく 働いてい ます 。
そもそ も、 脳の働きと しては、 まず 、知 覚した「 世界 」を 分解し 、再構成して 短期
記憶に蓄 えま す。それを 長期記憶 と組 み合 わせて色 々考 えて 行動プ ランを作り、 運動
プログラ ムを 作り、筋肉 を動かし て「 世界 」と関係 しま す。 一時的 に色々な情報 を得
て、それ を組 み合わせて ひとつの 結論 を出 すという 働き をワ ーキン グメモリー、 日本
語では「 作業 記憶」と言 います。 これ が「 思考」と いう もの ですが 、前頭連合野 こそ
がこの働 きの センターな のです。
前頭連 合野 のドーパミ ンが不足 する と、 この思考 の基 礎で あるワ ーキングメモ リー
の働きが おか しくなる。 それが統 合失 調症 の主な症 状で 、適 切な発 想が出てこな い、
おかしな 言葉 を話す、話 しがどん どん 飛ぶ などの症 状が 現れ ます。 また、ドーパ ミン
が働かな いと 記憶が失わ れると言 いま す。 要するに ドー パミ ンは脳 の神経細胞そ のも
のの働き を支 えていると いうわけ です 。
A 1 0 神 経 は 、ひ と り で 勝 手 気 ま ま に 快 感 を 作 り 出 し て い る わ け で は な く 、ス ト レ ス
が 過 剰 に な る と 不 快 に な る よ う に A 10 神 経 は 他 の 神 経 や ホ ル モ ン か ら も 強 い 影 響 を
受 け て い る の で す 。A 10 神 経 の 働 き に 深 く 関 係 し て い る も の 三 つ を あ げ る と 第 一 に A
じょうせい
10 神 経 の 仲 間 で 、同 じ よ う に 喜 怒 哀 楽 の 情 動 を 醸 成 す る 脳 幹 の 多 数 の 無 髄 神 経( 例 え
ば 、A 6 神 経 )。第 二 に 、上 位 に あ る 高 級 な 大 脳 や 小 脳 の 進 化 し た 有 髄 神 経 。第 三 に 、
ホ ル モ ン 分 泌 細 胞 で す 。第 二 の 大 脳 辺 縁 系 か ら 出 て 最 も 強 く A 10 神 経 を コ ン ト ロ ー ル
している のは 神経伝達物 質として ギャ バ( ガンマ・ アミ ノ酪 酸)を 分泌して標的 細胞
に 抑 制 的 に 働 く ギ ャ バ 有 髄 神 経 で す 。A 10 神 経 が ギ ャ バ 神 経 か ら 抑 制 を 受 け る 一 方 で 、
ギ ャ バ 神 経 も ま た 、 介 在 神 経 を 通 し て A 10 神 経 の コ ン ト ロ ー ル を 受 け て い る と い う
「負のフ ィー ドバック」 の関係を 保っ てい ます。そ の機 構に よって 相互に働き過 ぎを
抑えて一 定値 が保てるよ うにして いる ので す。
ブルガダ 症候 群
ブ ル ガ ダ 症 候 群 ( ブ ル ガ ダ し ょ う こ う ぐ ん 、 英 : Brugad a s ynd rom e ) は 、 199 2 年 に
ス ペ イ ン 人 医 師 ペ ド ロ ・ ブ ル ガ ダ と そ の 兄 弟 に よ っ て 報 告 さ れ た 心 疾 患 [ 1] 。 ブ ル ガ ー
ダ症候群 とも 呼ばれる。 重篤な不 整脈 であ る心室細 動に より 失神し 、死に至る場 合が
ある。
心 電 図 で 、典 型 的 に は 右 脚 ブ ロ ッ ク 様 波 形 ( V1,2 の rS R
パ タ ー ン ) と V1 ∼ V3 に か け
て の co ved 型 、 ま た は sa ddl eback 型 の ST 上 昇 を 来 す 。 心 室 細 動 の 他 に 発 作 性 心 房 細
動を来す こと もある。自 律神経の 影響 から 夜間に突 然死 する ことも ある。
キ ャ リ ア の 9 0% が 男 性 で 、 1000 人 に 1 ∼ 2 人 の 割 合 で 存 在 す る 。 発 作 は 心 室 細 動 で
AED( 体 外 用 除 細 動 器 )ま た は I CD( 体 内 埋 め 込 み 型 除 細 動 器 )な ど の 電 気 シ ョ ッ ク で
回 復 す る 。 心 室 細 動 の 発 作 が い つ 起 こ る か 解 ら な い た め 、 I CD の 利 用 が 多 く な っ て き
て い る 。I CD は 電 磁 波 に よ っ て 誤 作 動 の 危 険 性 も あ り 、社 会 的 な 環 境 保 全 が 待 た れ る 。
電子調理 器・ 盗難防止用 電子ゲー ト・ 大型 のジェネ レー ター などが 誤作動を誘発 する
恐れがあ る。
サイトカイン・ストーム
サイトカインの過剰産生をサイトカイン・ストームと呼ぶ。スペイン風邪やトリイ
ンフルエンザによる死亡原因と考えられている。この場合サイトカインは免疫系によ
る感染症への防御反応として産生されるのだが、それが過剰なレベルになると気道閉
塞 や 多 臓 器 不 全 を 引 き 起 こ す( ア レ ル ギ ー 反 応 と 似 て い る )。こ れ ら の 疾 患 で は 免 疫 系
の活発な反応がサイトカインの過剰産生につながるため、若くて健康な人がかえって
罹患しやすいと考えられる。
サ イ ト カ イ ン (cytokine) と は 、 細 胞 か ら 分 泌 さ れ る タ ン パ ク 質 で 、 特 定 の 細 胞 に
情報伝達をするものをいう。多くの種類があるが特に免疫、炎症に関係したものが多
い。また細胞の増殖、分化、細胞死、あるいは創傷治癒などに関係するものがある。
ホルモンと似ているが、ホルモンは分泌する臓器があり、比較的低分子のペプチドが
多 い( し か し 、サ イ ト カ イ ン と ホ ル モ ン は 、は っ き り と し た 区 別 が あ る も の で は な く 、
エ リ ス ロ ポ エ チ ン (erythropoietin) や レ プ チ ン (leptin) な ど 両 方 に 分 類 さ れ る こ
と が あ る )。
ま た 、 リ ン パ 球 に 由 来 す る サ イ ト カ イ ン を 、 リ ン フ ォ カ イ ン (lymphokine) と い う
ことが多い。
一部は医薬品として用いられている
サイトカインは多機能的、つまり単一のサイトカインが標的細胞の状態によって異
なる効果をもたらす。例えば免疫応答に対して促進と抑制の両作用をもつサイトカイ
ンがいくつか知られている。
またサイトカインは他のサイトカインの発現を調節する働きをもち、連鎖的反応
(サイトカインカスケード)を起こすことが多い。このカスケードに含まれるサイト
カインとそれを産生する細胞は相互作用して複雑なサイトカインネットワークを作る。
たとえば炎症応答では白血球がサイトカインを放出しそれがリンパ球を誘引して血管
壁を透過させ炎症部位に誘導する。またサイトカインの遊離により、創傷治癒カスケ
ードの引き金が引かれる。
サイトカインはまた脳卒中における血液の再還流による組織へのダメージにも関
与する。さらに臨床的にはサイトカインの精神症状への影響(抑鬱)も指摘されてい
る。
I/C について
以前、救急医療メーリングリスト(以下:e メール)で I/C について話題になり、興味
を持った話がありましたので、参考にして下さい。
話題となった発端は、薬剤投与救急救命士標準テキスト追補版Ⅱに記載されていた下記
の文からです。
インフォームドコンセントが適応とされない状況として,緊急に医療を施さなければな
らない場合や患者に判断能力がないと判断された場合などがある。心肺停止傷病者は両方
の条件を満足するもので,薬剤(エピネフリン)投与にさいしてインフォームドコンセント
を得る必要はないが,家人がそばに居る場合には,医師への指示要請をするかたわら薬剤
投与の必要性を簡潔に説明して了解を得るのが望ましい。
この文では、心肺停止傷病者ではインフォームドコンセントは必要ないとなり、本当に
必要ないのか e メールで話題となり、下記(前文省略)の意見が投書されました。
だいだく
同意書改訂において代諾 ということが問題となりました。基本的に診療行為を代諾でき
るのは法的代理人(両親,後見人)だけとのことです。よって,本人以外からとる同意は
基本的には I/C にはならないということです。I/C はあくまで本人への治療行為の説明で
あり,本人以外に説明している行為は基本的には I/C ではないというのが法律家(弁護士)
の意見でした。
よって,心肺停止の方に対する I/C は本来あり得ません。もし,本人が承諾できないと
きには,その行為は法医学の先生(同意書を研究対象にしているかたで 100 通ぐらいの同
意書を集めたそうです)によると緊急事務管理という状態になるそうです。
民法第 698 条〔緊急事務管理〕は次のようになっています。
「管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管
理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠
償する責任を負わない。」この時,治療者は管理者に該当し、本人は患者のこと、事務管理
は診療のことです。治療者が、患者の緊急時、迅速・適切な治療が必要とされる場合には、
説明義務を尽くさず患者の同意がないまま治療を行っても過失はないと考えられます。
緊急時の医療行為の承諾というのはややこしいところはあると考えますが,基本的に本
人以外に対する I/C という言葉自体が成り立たない可能性があります。
上記の文章はだからといって家族に説明する必要がないといっているわけではありませ
ん。治療を円滑に行い,双方納得をするには(特に心肺停止など)必要なことです。
代諾:本人以外の第三者の同意(親権を行う者、配偶者、後見人その他これに準じる者な
どから同意をいう)
標準化 に よっ て もた らさ れる効 果
・プレホ スピ タルにおけ る救急活 動が 全国 レベルで 均一 化す る、
・標準化 され ることによ って、観 察上 の重 大な見落 とし 判断 上の誤 り、不適切な 応急
処置 は軽減さ れ、 トリ ア ージ も現在より改 善す ることが期待 され る 。
・標準化 によ ってもたら される最 大の 効果 は、傷病 者に 悪い 影響を 与える処置・ 判断
が避 けられる こと であ る 。
・救急隊 員か ら医療機関 へ提供さ れる 傷病 者につい ての 情報 の内容 が標準化され るこ
とに より、ブ レホ スピタ ルか ら医療機関へ の流 れが無駄なく 効率的 に行 われ るよう
にな る。
・標準化 され たプロトコ ールに基 づく シナ リオを用 いた シミ ュレー ションを繰り 返し
反復 ・訓練す るこ とによ り、 救急現場にお ける 救急活動に要 する時 間の 短縮 が実現
する 。
・プロト コー ルが示され ることに より 、事 後検証の 方法 が明 確にな る。
・救急隊 員の 救急活動に 対する教 育の 一貫 性と簡便 さが もた らされ る。
・標準化 され ることによ り、各地 域に おけ る救急医 療体 制の 問題点 が明らかにな るで
あ ろ う 。す な わ ち 、各 地 域 の 医 療 機 関・医 療 体 制・地 域 の 状 況 が 違 う こ と を 、比 較 ・
検討 でき様に なる から で ある 。
・副次的 には 、標準化の 教育プロ グラ ムを 提供する こと によ り、救 急隊員自身が 自ら
勉強 し、かつ 、興 味をも って 接するように なり 、ひいては、 観察・ 処置 ・判 断の各
ステ ージの精 度が 向上 す るこ とが期待され る。
・これら の効 果の総合的 な結果と して 、最 終的には 、プ レホ スピタ ルにおける救 急活
動に 求められ る、 傷病 者 の予 後が改善する こと が期待される 。
硫化水素
硫化水素は、硫黄と水素からなる無機化合物で、無色の気体。化学式 H2S。卵が腐ったときに
示す独特の臭いを持つ。
特徴
空気より重く、無色、水によく溶け弱い酸性を示し、腐った卵に似た特徴的な強い刺激臭(腐卵
臭とはそもそも硫化水素を主成分とする臭いである)があり、目、皮膚、粘膜を刺激する有毒な気
体である。悪臭防止法に基づく特定悪臭物質のひとつ。
人為的な発生源には石油化学工業などがあり、また、下水処理場、ごみ処理場などにおいても、
硫黄が嫌気性細菌によって還元され硫化水素が発生する。また糞、屁にも若干含まれる。
また、自然由来としては、火山ガスや温泉などに含まれる。空気よりも重いため火山地帯、温
泉の吹き出し口などの窪地にたまりやすい。
可燃性ガスであり引火性がある。爆発限界は 4.3∼46v/v%。燃焼した場合には硫黄酸化物となる。
毒性
毒性は、化学的な反応性の高さによる皮膚粘膜への刺激性とシトクロム c オキシダーゼの阻害
が挙げられる。
シトクロム c オキシダーゼ阻害作用は非常に急速に発生し、高濃度での暴露を受けた場合には
数呼吸で昏倒に至る。この現象は「ノックダウン」とよばれる。皮膚粘膜への刺激性は中長期的
な影響となり、気管支炎や肺水腫を起こす。
独特の臭気があるが、嗅覚を麻痺させる作用があるため、濃度が高くなると逆に匂いを感知で
きなくなる。このため、濃度が致死量に近づいているにもかかわらず、それと気づかないケース
が多いので注意が必要である。火山周辺では警告の看板に注意する事が必要である。知らずに近
づいた登山者やスキー客・温泉客が死亡する例も見受けられる。
鉱工業においては下水道や排水プラント・化学工業・実験施設において事故が度々発生しており、
このような場所での作業では監視・管理が法規制されている。年余にわたる微量の曝露では変異
原性が指摘されている。
2007 年頃より硫化水素を発生させ自殺する事件が度々起こっている。この際、救助しようとし
た人間が巻き込まれたり、階下の住民が巻き添えとなった事例も報告されている。高い確実性の
ある自殺の具体的手法がインターネット上に多数流通していることを受け、京都府警察がプロバ
イダにこれらの情報の削除を要求する事態にまで発展した。硫化水素ガスを吸入した場合、遺体
は緑色に変色し、溺死体のようになる。
治療
急性中毒の治療は、まず外気に当てて衣服等に含まれる硫化水素を飛ばし、患者には 100%酸素
を吸入させる。その際ジャクソンリースのような再呼吸式の吸入具は有毒ガス呼出の妨げとなる
ため、絶対に使用してはならない。
解毒剤として有効性が示されているのは亜硝酸アミルなどの亜硝酸塩のみである。硫化水素は
血管壁の亜酸化窒素合成を阻害することが毒性の発現経路のひとつであるためだが、曝露後数分
以内に投与しなければ著効が期待できない。
最初の数時間を乗り切った重症患者は、後に急性肺傷害を発病する危険性が高い。このため気
管挿管と人工呼吸器管理が必要となるが、これらの処置を行う医療従事者は 2 次汚染を防ぐため
の万全の対策を以て臨まなければならない。
濃度対危険度
濃度(単位:ppm) 作用
1,000∼2,000
即死
600
約 1 時間で致命的中毒
200∼300
約 1 時間で急性中毒
100∼200
症状:臭覚麻痺
50∼100
症状:気道刺激、結膜炎
10
労働安全衛生法規制値(許容限界濃度)
5
作業環境測定基準
0.41
不快臭
0.02∼0.2
悪臭防止法に基づく大気濃度規制値
0.00041
臭いの閾値
労働安全衛生法施行令別表第3において特定化学物質(第二類物質35)
(第六条、第十五条、第
十七条、第二十一条、第二十二条関係)に指定されている。
酸素欠乏症等防止規則
(換気)
第五条 事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合は、当該作業を行う場所の空気
中の酸素の濃度を十八パーセント以上(第二種酸素欠乏危険作業に係る場所にあつては、空気中
の酸素の濃度を十八パーセント以上、かつ、硫化水素の濃度を百万分の十以下)に保つように換
気しなければならない。ただし、爆発、酸化等を防止するため換気することができない場合又は
作業の性質上換気することが著しく困難な場合は、この限りでない。
2
事業者は、前項の規定により換気するときは、純酸素を使用してはならない。
作業環境測定基準
労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十五条第二項の規定に基づき、作業環境
測定基準を次のように定め、作業環境測定法(昭和五十年法律第二十八号)附則第四条のうち労
働安全衛生法第六十五条の改正規定中同条に四項を加える部分の施行の日から適用する。
特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令並びに作業環境測定基準及び作業環境評価
基準の一部を改正する告示についての改正
別表(第二条関係)
硫化水素
管理濃度(改正後)
5ppm
管理濃度(改正前)
10ppm
スプレ ー タイ プ のニ トロ (ミオ コール スプ レー・ ニトロ ールス プレ ー)
1 . ニトロ っ てど ん なお 薬
一般に ニ トロ と よば れているお 薬は、
「 硝 酸 剤 」と い う お 薬 で 、狭 心 症 の 発 作 時
に用いら れま す。発作時 に使用さ れる 代表 的なもの には 、ニ トロペ ン錠・ニトロ ール
錠・ミオ コー ルスプレー ・ニトロ ール スプ レーなど があ りま す。
これ らのお薬 は、 心臓に 酸素 や栄養を送っ てい る「冠動脈」 という 血管 を拡 げて、
心筋(心 臓の 筋肉)への 血のめぐ りを よく します。 狭心 症の 発作は 狭くなった冠 動脈
では心臓 に送 られる酸素 の量が足 りな かっ たり、冠 動脈 がれ ん縮( 痙攣)をおこ した
りして、 心筋 に酸素が不 足するた めに 胸痛 ・胸の圧 迫感 がお こりま すので、 ニト ロ
で発作が おさ まるわけで す。
「硝酸剤 」に はそのほか にも、全 身の 血管 を拡張さ せて 心臓 への負 担を軽くした り、
血圧をさ げた りする作用 もありま す。
2 . ニトロ の 使い か た
現在、 発作 時に使われ る主な ニト ロ は大きく 2つ のタ イプに 分けられます 。
1つは 「舌下」 とい って、飲み込 まずに舌 の下に錠 剤を 入れ て溶か すタイプで、 ニト
ログリセ リン 錠・ニトロ ペン錠・ ニト ロー ル錠はこ の使 い方 をしま す。
ニ ト ロ ペ ン は 1 ,2 分 で 溶 け ま す が 、ニ ト ロ ー ル は そ れ よ り 少 し 時 間 が か か り ま す( 2 、
3 分)の で、 早く効かせ たいとき は荒 く噛 み砕いて から 溶か しても かまいません 。い
ずれの場 合も 飲み込んで しまうと 、な かな か効果が でな いの で、必 ずお口の中で 溶か
してくだ さい 。
2 つ め は スプ レ ータ イ プ の も の で 、ミ オコ ー ル ス プ レー やニ ト ロ ー ル ス プ レ ー が この
タイ プのもの です 。
こ れ ら の お 薬 は お 口 を 開 け て 、舌 の 下 に「 ぷ し ゅ ー っ 」と 1 回 吹 き 付 け て 使 用 し ま す 。
新しいも のや しばらく使 っていな かっ たも のは、使 用前 に数 回、空 中に空噴きし てか
ら 、使 い ま す 。お 口 の 中 に 吹 き 付 け た ら 、す ぐ に お 口 を 閉 じ て 、30 秒 く ら い は「 つ ば 」
を飲み込 むの を我慢して ください 。
ま た 、缶 が 横 に な っ て い る と お 薬 が き ち ん と 出 て き ま せ ん の で 、缶 は 立 て て 使 い ま す 。
唾液 が出にく い方 や錠剤 をと りだしにくい 方な どは,スプレ ータイ プの もの のほう
が使いや すい 場合もあり ます。
肝性脳症とは(昏睡状態に陥るとき肝性昏睡と呼ぶ。)
肝臓は生体のなかで最大の代謝をつかさどる臓器です。肝臓が機能不全に陥るとさまざ
まな代謝産物が体内にたまることになり、神経有毒物質あるいは神経機能に必要な物質の
欠乏により神経症状が現れます。
肝性脳症は肝硬変が高度に進行した時に起きることがあるもので、意識障害が主な症状
です。肝性脳症は比較的軽い意識障害のことから、重くなると昏睡(完全に意識を失うこと)
になる場合もあります。一般的には、肝性脳症の重症度は昏睡度分類(下表)に従い分類
します。特にⅠ度では家族の方が「何かいつもと違う(夜寝ずに昼間寝ている、気分にむ
らがあるなど)」程度しかわからない場合が多いようです。進行した肝硬変のかたでは、肝
性脳症が、出血・発熱・便秘など体に負荷が少しかかっただけでもでることがあります。
肝性脳症は肝硬変などによる肝機能不全や、門脈の血液が肝臓に入らず、肝臓での処理
を受けることなく大循環系に流入する短絡路(シャント)による門脈大循環性脳症(シャ
ント脳症)、尿素を処理できずアンモニアが大量に生じてしまう尿素サイクル酵素欠損症な
どで起こります。症状は急性、間欠性(時々生じる)、あるいは慢性に発症します。
肝性脳症(昏睡)の段階
昏睡度
精神症状
1
睡眠覚醒リズムの逆転、多幸気分、抑鬱状態
2
指南力障害、異常行動、傾眠、羽ばたき振戦
3
興奮状態、譫妄状態、反抗的態度、嗜眠状態
4
昏睡、痛覚刺激に応答
5
深昏睡、痛覚刺激に無応答
原因は何か
病気の原因は不明な部分もありますが、2つの要因、すなわち肝不全因子とアンモニア
が重要と考えられており、その組み合わせでさまざまな型の肝性脳症が起こると考えられ
ています。アンモニアの毒性機序(仕組み)は確定していませんが、脳内の神経伝達障害
や機能障害などが考えられています。またアミノ酸の量的、質的不均衡により、神経伝達
の抑制が起こるとする説などがあります。
症状の現れ方
神経症状としては、意識障害を中心としてさまざまな精神症状と運動系の症状が現れま
す。昏睡を起こす前の時期では多幸(たこう)気分、異常行動、せん妄などを示し、見当識
障害、言語障害も加わり、次第に昏睡になっていきます。また不随意(ふずい)運動、ミオ
クローヌス、固定姿勢保持困難、羽ばたき振戦(しんせん)など、さまざまの特異な運動障
害がみられます。
診断
肝性脳症の診断には、高アンモニア 血症などの肝機能障害、意識障害などの精神症状、
羽ばたき振戦などの神経学的変化などが参考になります。
しかし、軽度の肝性脳症(意識障害や 動作性能力の極軽度の異常)を正確に評価することは
容易ではありません。血液中のアンモニア濃度の測定、血液中アミノ酸比の測定、脳波所
見や定量的神経機能テストも有効です。
肝性脳症の診断のために最も信頼性の高い生化学的検査は血中アンモニア濃度の定量で
す。その他に、血液中アミノ酸比の測定も大切です。
肝性脳症時の特徴的な脳波所見は、 三相波の出現とされています。また、各種の刺激に
よる大脳誘発電位の重要性も認められ、肝性脳症の診断に応用されています。
アルコール性肝硬変では、アルコールによる脳障害、硬膜下血腫やアルコール離脱症状
は肝性脳症と誤診されることもあり注意が必要です。
肝硬変では糖尿病の合併が多いため、糖尿病の悪化例では、糖尿病の合併症による意識
障害も起こります。
薬の代謝が悪くなると、睡眠薬などによる意識障害も起こることがあります。
治療と予防
起こってしまった肝性脳症の薬による治療の大切さは言うにおよびません。早期発見早
期治療とともに、その予防、特に日常生活上での予防も大切です。
日常生活上での注意点としては、 肝性脳症の誘因(便秘などの便通異常・高蛋白食・過
剰の利尿薬・風邪などの感染症・出血)となるものを極力避け ましょう。あまり無理せず、
不必要な高蛋白食を戒め、便通の調整(1日 1∼2 回の排便があるように)を心がけて下さい。
病状の軽微な変化の把握のための日常生活上のチェックポイントとしては、急激な体重
や尿量の変化・便秘や下痢・睡眠バランスの変化・次の日まで持ち越す疲労・記憶力や記
銘力の変化・手のふるえなどが大切です。
譫妄状態:「せんもう」と読みます(まれに「せんぼう」とも読みます)。錯覚や幻覚を伴
い、しばしば興奮状態を呈する意識障害の一種です。
不穏状態:周囲の様子がただならぬ感じがして、緊張が高まり落ち着きの無くなっている
しょうそう
状態のことです。不安、焦 燥 状態と言っても良いと思います。ちょっとした錯
乱状態。
ほんいち
錯乱状態:不穏状態が更に高まって観念奔逸 、思考滅裂、多弁、多動になった状態です。
い
ど こうふん
これが、更に高まると「易怒 亢奮 状態」、「精神運動亢奮状態」へとなっていき
ます。
い
ど
易怒 :怒りっぽい
2008 年 3 月 31 日
610ハップとサンポールの混合事件の後処理について
大日本除虫菊株式会社
1.サンポールと610の混合による硫化水素ガス発生について
610ハップ中のイオウ成分は、複雑な構造をしており、単純な構造ではありませんが、
一般的には、多硫化物として溶解していると考えられ、多硫化物と酸とが次式のように反応
して、硫化水素ガスを発生すると推定されます。
硫黄成分入浴剤 + サンポール → 硫化水素ガス +イオウ
Sn2−
+ 2H+
→
H2S↑ + Sn-1↓
(多硫化イオン)
(水素イオン)
(硫化水素)
(イオウ)
2.サンポールと610ハップとの混合による自殺事件の後処理方法
硫化水素発生試験の結果、自殺事件の後処理は単に中和処理を行うのではなく、以下
の①∼③の手順を踏む方が良いと考えられます。
① 現場には防毒対策をして入り、ガス検知管等で硫化水素ガス濃度を確認して、安全な濃
度まで換気等を行います。ただし、住宅密集地での換気には注意が必要です。(弊社は
硫化水素の除去の方法は持っていません)
② 数時間経過後の混合液の反応は終わっていると考えられるので、液性をpH 試験紙等で
数箇所確認してすべて酸性又はアルカリ性であることを確認します。酸性とアルカリ性の
両方が存在するときはアルカリ性の部分と酸性の部分が混ざると硫化水素が再発生する
ので、注意して作業を行う必要があります。アルカリ剤(苛性ソーダ等)で酸を中和してか
ら注意して回収作業を行う必要があります。
③ pH を確認した混合液は排水には流さないで、布や紙、紙おむつなどに吸収してビニール
袋等に回収、密閉し廃棄物として処理します。廃棄に関しては市町村又は専門業者に硫
黄を含む廃棄物として相談の上処理した方が良いと考えます。(回収後、液が再混合され、
反応する可能性もあるので、回収物からガスが発生していないことも確認します。)
(参考)硫化水素発生試験結果
硫化水素発生試験の結果、以下の①∼④のことがわかりました。
① サンポールと610ハップの混合による硫化水素の発生反応は速く、実験室で攪拌する
と、5 分の時点でほとんどのガスが発生していました(表 1 参照)。数時間経過した事故
の後処理の段階では反応は終わっている可能性が高いと思われます。ただし、混合の
仕方によっては、未混合の箇所がある場合も想定されるので、注意を要します。
② 混合後の液の色が赤褐色∼黄色の場合、液性はアルカリ性で610ハップの多硫化物
が残っています。液の色が無色∼緑色(沈殿が薄緑色に着色)の場合は酸性を示しま
した(表 2 参照)。
③ 酢と610ハップの反応でも硫化水素は発生し、サンポールの4∼5倍量でほぼ同等の反
応性を示しました(表3参照)。
④ 反応後の液を少量でも排水に流すと排水口から硫黄系の臭いがかなりするため、反応
後の液を大量に排水に流すのはできるだけ避けるべきです。(排水と反応している可
能性も考えられます。)
表1 サンポールと 610 ハップ(2ml)硫化水素発生試験結果(n=3)
22ℓ 容器中の硫化水素濃度(ppm)
混合比率
(硫化水素発生量())
サンポール:610 ハップ
5分後
10 分後
20 分後
60 分後
1ml : 2ml
705
(0.016)
850
(0.019)
863
(0.019)
835
(0.018)
2ml : 2ml
2200
(0.048)
2333
(0.051)
2267
(0.050)
−
−
2.3ml : 2ml
2700
(0.059)
2867
(0.063)
2700
(0.059)
−
−
2.4ml : 2ml
2700
(0.059)
2800
(0.062)
2700
(0.059)
−
−
4ml : 2ml
2467
(0.054)
2667
(0.059)
2433
(0.054)
−
−
(試験方法)
サンポールと610ハップを 22ℓ 容器内で混合し、ガステック社製のガス検知管で硫化水
素濃度を測定した。硫化水素発生量()は以下の式で算出した。
硫化水素発生量()=(硫化水素濃度 ppm)×22ℓ ÷1,000,000
表2 サンポールと610ハップの混合後の液性と液(沈殿)の色
サンポール : 610 ハップ
混合比率
1ml : 2ml
2ml : 2ml
2.3ml : 2ml
2.4ml : 2ml
4ml : 2ml
液性*1
アルカリ性
アルカリ性
アルカリ性
酸性
酸性
赤褐色
黄色
薄黄色
薄緑 *2
薄緑 *2
塩酸
塩酸
混合液
(沈殿)
の色
残存物
未反応硫化物 未反応硫化物 未反応硫化物
*1 pH 試験紙(ADVANTEC 社製)で測定
*2 混合液は透明で沈殿がサンポールの染料で着色している
表3 酢と610ハップ(1ml)の混合試験結果
22ℓ 容器中の硫化水素濃度(ppm)
(硫化水素発生量())
酢:610ハップ
混合後の液性
5分
10分
15分
4ml : 1ml
アルカリ性
700
(0.015)
700
(0.015)
−
5ml : 1ml
酸性
1100
(0.024)
1200
(0.026)
1150
(0.025)
以上
救急隊月例訓練について
急速な高齢化社会の進展等に伴い、救急需要は年々増大しており、また傷病者の症状も
徐々に重症化する傾向にあることから、救急隊員の資質を一段と向上させ、高度な知識や
熟練した技術を有する、優れた救急隊員の養成を図ることが重要な課題と思われる。
このため、当市においても救急隊員の訓練体制のあり方について検討し、訓練の充実と
救急隊員の資質の向上に資するため、救急隊員訓練カリキュラムを定め、職場における訓
練を計画的、効果的に実施して行かなければならないと考え、下記の案を作成した。
案
1
訓練実施方法について
各救急隊は月に 1 回、訓練計画を立て、旭出張所において午前 9 時から 11 時 30 分、
若しくは、午後 13 時 30 分から 16 時までの 2 時間 30 分を原則、救急出動せずに救急に
関する訓練を行う。尚、その間は救急予備隊を編成し対応する。
(1)
訓練日時
訓練日時は、金目消防隊が 5 名確保(非直助勤を含む)ができ、かつ消防隊の主
要な消防業務がない日時とする。
(2)
訓練計画
訓練を効率よく効果的に行うため、訓練を行う前に各隊は、訓練内容を協議し、
別紙様式1の救急隊員訓練カリキュラムを作成し、警備課長に提出すること。又、
訓練の内容、効果を評価するため別紙様式2の救急隊員訓練評価票による評価を行
い、訓練終了後に警備課長に提出すること。
(3)
救急予備隊の編成
救急予備隊は、分遣所の 2 名と金目消防隊のⅡ課程・標準課程者 1 名をもって編
成する。
(4)
救急予備隊の出動
救急予備隊は、訓練中の隊の部署に配置し救急出動する。尚、重症症例と思われ
る救急要請についてはペアー出動を行う。
4
救急隊員訓練カリキュラムについて
訓練は、救急資器材等を使用した個別の手技に約 1 時間、各種の症例を想定したシミ
ュレーション・ロールプレイに約 1 時間 30 分行う。又、各種の症例を想定した訓練で
は、あらかじめ大まかなシナリオを設定しおくこと。
(1)
救急資器材等を使用した個別の手技とは
1
バイタルサインの観察(血圧、脈拍、呼吸数など)
2
身体所見の観察(視診、触診、聴診など)
3
モニターの装着(心電図、パルスオキシメーターなど)
4
酸素投与
5
吸引処置
6
バッグ・バルブ・マスク法
7
胸骨圧迫心マッサージ
8
喉頭鏡の使用
9
食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク等
10 経鼻・経口エアウェイ
11 気管挿管
12 抹消静脈路確保
13 点滴ラインの準備
14 緊急薬剤の使用
15 除細動
16 骨折の処置
17 創傷の処置
18 ネックカラーの装着
19 3辺テーピング
20 フレイルチェストの固定
21 腸管脱出処置
22 ヘルメットの脱がせ方
23 バックボードによる固定(ログロール等による全脊柱固定)
24 車外救出
25 その他、救急活動に関わる手技について行う。
(2) 各種の症例を想定したシミュレーション・ロールプレイとは
1
湘南地区メディカルコントロール協議会の心肺蘇生・外傷ガイドラインに沿
ったものであること。
2
状態、状況から何の疾病・負傷を疑い、緊急度・重症度の評価したかを明ら
かにすること。
3
個別手技で行った訓練を取り入れた、シミュレーション・ロールプレイであ
ること。
4
自隊が体験した、緊急度・重症度の高い症例を取り入れること。(検証票を
活用)
5
シミュレーション・ロールプレイの中で、患者の状態を色々と変化させて行
うこと。
6
多数傷病者を想定した場合は、先着救急隊となったことを考え行うこと。
7
各自、隊長、機関員、隊員役を必ず1回は行うこと。
以上のことを考慮して行う。
(3) シナリオ例題
①
心筋梗塞を想定
50歳、男性が自宅で食事中に急に胸が苦しくなり、冷や汗をかき倒れてしまっ
た。救急隊到着時には、JCSⅠ桁、顔面蒼白、苦悶様、全身冷汗あり。
②
くも膜下出血を想定
65歳、女性がスパーで買い物中、レジ付近で後頭部が激しく痛み、嘔吐し、座
り込んでしまった。救急隊到着時には、JCSⅠ桁、顔面正常、苦悶様、口唇に食
物残渣あり。
③
気道異物を想定
84歳の女性が自宅で、家族と一緒に団子を食べていたところ、急に苦しがり倒
れてしまい意識喪失した。救急隊到着時には、JCSⅢ桁、顔面蒼白・無表情。
④
オートバイの単独事故を想定
23歳の男性が秦野県道を走行中、スピードを出しすぎ、ガードレールに激突し
てしまった。救急隊到着時には、JCSⅡ桁、顔面蒼白・苦悶様。
⑤
食中毒による多数傷病者を想定
公民館で老人会の昼食後に、生ガキを食べた男性の3人が吐気と下痢を訴えた。
救急隊到着時には、80歳男性、JCSⅡ桁、顔面蒼白・苦悶様。76歳男性、J
CSⅠ桁、顔面正常・苦悶様。81歳男性、JCSⅡ桁、顔面蒼白、全身冷汗。
5
救急隊員訓練評価票について
救急隊員訓練評価票を用い、訓練の内容、効果を評価し、何が良かったか、何を改善す
べきかを具体的に見つけ出し、自己評価を行い、自己の能力、技能を理解して現場活動
にフィードバックするものである。
6
その他
(1)
シミュレーションとは
模擬実験、実際には実験を行わず、モデルを使ってある現象を解析する方法。
(2)
ロールプレイとは
ロールプレイは「役割演技」「役割行動」と呼ばれ、それは何らかの学習を意
図して役割を演じることである。人は、その社会において何らかの役割(ロール)
をもっているが、その役割を常に自分が自覚しているとはいえない。したがって
その自覚されていない役割をめぐって葛藤が生まれる。ロールプレイとは、その
役割を交代することによって、課せられてはいたが自分に自覚されていなかった
役割を発見して行くことが目的である。
別紙様式1
救急隊員訓練カリキュラム
日
時
表
題
年
月
日(
)
時
分∼
時
分
訓練目的
到達目標
項
目
個別手技
想定訓練
想定訓練
シナリオ
内
容
時
間
別紙様式2
救急隊員訓練評価票
隊名
氏名
訓練実施日
年
月
日
訓練目的
到達目標
項
目
分
訓練目的
訓練の目的を理解できたか。
到達目標
到達目標は達成できたか。
類
指
標
評価点数
救急資器材の取り扱いについて理解できたか。
個別手技
救急資器材を正しく取り扱うことができたか。
状況評価を正確に行うこができたか。
初期評価、全身観察、重点観察ができたか。
想定訓練
緊急度・重症度の判断ができたか。
救急処置が正確・確実にできたか。
現着から現発までの間、スムーズな活動ができたか。
現場活動に直結した訓練ができたか。
訓練総括
部隊のコミュニケーションを取りながら訓練ができたか。
訓練を改善するところがあったか。(あった方を1とする)
計
良かったところ・悪かったところ
※
自己評価で行う。評価点数は 5 段階評価とし、できれば5、できない場合を 1 として
付け、60点を満点とする。
EOG 滅菌
EOG 滅菌(Ethylene Oxide Gas エチレンオキサイトガス)は、国内では医療機関など数
万か所で使用され、加熱滅菌が難しいチューブやプラスチック製の医療用器具の滅菌用ガ
スに用いられていますが、近年、取り扱い方法や排気の問題で法的規制が厳しくなり管理・
実施が大変難しくなっています。
EOG は簡便な滅菌法でしたが、使用後の排ガスが大気に放出され環境を汚染し、また、
使用時の吸引による発癌性が指摘されるようになり、その使用や製造に規制がかかること
となりました。労働安全衛生法の特定化学物質等障害予防規則(いわゆる特化則/2001 年
5 月施行、2 年間の移行措置)によって使用のための条件が定められ、EOG は第 2 類物質(ガ
ン等の慢性障害を引き起こす物質)に分類され、作業主任者の選任、局所排気装置の設置、
作業環境の測定(年 2 回)、健康診断の年 2 回実施などが定められています。測定は環境測
定士に民間委託し 1 回 5 万円ほどかかるらしいです。
EOG の毒性に対する規制
(1)
日本産業衛生学会勧告
1.発癌物質第 1 群(人間に対して、発癌性がある物質)に分類した。(1996)
2.暴露許容濃度を 1ppm とした。(以前は 50ppm) (1994)
(2)
日本医療ガス協会 EOG 滅菌ガス使用基準(1990.12 月改定)
1.8 時間継続限界値:1ppm
50ppm 以上での長時間作業には防毒マスクを着用する。
(3)
PRTP 法(特定化学物質の環境への排出量の把握および管理の改善の促進に関
する法律)の施行(平成 13 年 1 月)
(4)
労働安全衛生法施行令別表第三第二号の第二類物質に EOG を追加(平成 13 年
5 月 1 日施行)
(5)
東京都環境確保条例(平成 13 年 3 月)により、排気濃度を 90mg/立米(46.66ppm)
に規制された。
労働安全衛生法の特定化学物質等障害予防規則の HP
http://www.chemlaw.co.jp/LaborLink/tokukasoku.htm
薬は不要養生で回復
「かぜは薬で治すものではありません」という
新常識
を普及しようと、昨年、日本呼
吸器学会は、かぜの診療指針を発表した。
かぜとは、鼻からのどまでの空気の通り道である上気道の炎症を言う。8―9割は、ラ
イノウイルスなどのウイルスが原因で、インフルエンザを除いて、効く薬はない。
いわゆるかぜ薬は、熱やせき、鼻水といった症状を抑えるのが目的だ。しばしば医療機
関で処方される抗生物質は、細菌を退治する薬。弱った体への細菌感染を予防しようと処
方されてきたが、予防効果があるという科学的な証拠はなく、かぜには本来、必要はない。
五十嵐さんは「かぜの症状を訴える患者さんでは、かぜなのか、それともインフルエン
ザや扁桃(へんとう)炎、気管支炎、肺炎などの別の病気が隠れていないかの見極めが重
要です。軽いかぜなら、養生で大丈夫。症状がつらかったり、別の病気なら薬を考えます」
と言う。
養生、つまり体が持っているウイルスと戦う免疫の力を養うこと。軽いかぜなら、それ
で治る。かぜは万病の元。インフルエンザや肺炎も怖い。上手な乗り切り方を紹介する。
かぜの養生
〈1〉水分をとる
発熱すると水分が失われるため補う。鼻水やたんが水っぽくなり、
鼻詰まりやせきが軽くなる。
〈2〉ビタミンを多く含む食事をとる
かぜウイルスと戦う感染防御(免疫)反応に必
要。発熱時は特に。野菜や果物を。
〈3〉休養をとる
エネルギーを感染防御に優先使用するため、睡眠を十分にとる。
〈4〉乾燥をさける(湿度60%弱に)
乾燥すると中耳炎や肺炎につながる2次感染
が起こりやすくなる。
〈5〉細菌の侵入の防止
手洗い、うがい、マスクの活用。人ごみを避ける。
救急現 場における問 診
問 診 ・触 診 ・聴 診 ・打 診 による診 察 法 を、古 来 より「身 体 的 検 査 」と呼 び、この身 体 的 検 査 によ
って得 られた全 体の結果を「身 体所 見」と呼 びます。救 急現 場において身 体 所見を取 る目 的は、
あくまでも患 者の病 態をある程 度 把 握 することにより、適 切 な搬 送 医 療 機 関を選 定 することを目
的 とするものであり、病 院 でのように最 終 治 療 手 段 を決 定 するための検 査 ではありません。あま
り、踏 み込 み過 ぎた 聴 取 、女 性 への触 診 や聴 診 は、かえって本 人 や家 族 の不 快 感 と不 信 感 を
招く結 果 になりかねません。救 急 現場 での身 体 的 検 査の意 義と限 界を正しく理 解したうえで、患
者・家 族の立 場になって、節度 ある検査に留めておく必要があります。
Ⅰ 問 診
1 問 診で知りうること
患 者が話 すことが出来 れば、問 診 により主 訴 の症 状や強さの程度 、症 状 発現 の時期 や、症 状
発 現から救 急 隊 到 着 したときまでの症 状の変 化などを知ることが出 来 ます。「疾 病 によっては問
診 だけでもおおよその診 断がつけられることがある」とは、問 診の重 要 性を強 調 する際 に常 に言
われることです。
① 聞き上 手になる
問診というと、こちらから(医療 人)が質問し、患 者・家族は答えるだけの人といったイメージで捉
えられがちです。しかし、問 診とは、実 は答 診であり、医療 側 は患者 ・家 族からの答 えによって考
え、患者 側 も医療 側 の質 問 によって思い出すという、インホームド・コンセントと同じような双 方向
性 のやりとりなのです。この意 味 で、問 診 だけが他の身 体 所 見 とは少 し異 なった性 格 をもってい
ます。質 問 をすることが問 診 の主 たる目 的 ではなく、質 問 によって相 手 の答 えをうまく引 き出 し、
さらに、相 手 により正 確 に思い出 し直 すように考えてもらい、傷 病 に対するより正 確な情報 を、双
方が協力して得ることが目 的です。
② 救急現 場で必要な情報
救急 現場では、時 間的 余裕 がないため、何が最 も必要とされていることかを見 極め、最 小限の
時間内 に、どうしても取 らねばならない、最低限 必 要な情報を手 に入れることが必 要です。
A 質 問する相手
1
患者さん本人
2
家族
3
友人
4
現場にいた人 、目撃 者
5
加害者
B 質問の内容
1
なぜ救急車を呼 ぼうと思 ったのか
2
どこが、どんな具 合なのか
3
その状態はいつ起こったのか
4
何か前いぶれがあったか
5
経過はどんな具合か
6
他に具 合の悪いところはないか
7
今と同じ状態 に関して治療を受けたことはあるか
8
あるとすればどこの病院でか
9
常用薬はあるか
10 ○○病院へ行くが、よいか
Point
1 問 診は「答 診」です、要領 のよい問いから、必要 な情報を教えてもらうことです。
2 質 問によって、忘れていたことを思い出すこともあります。
3 事 故 原 因 の正 確 な情 報 は、警 察 ばかりか診 断 と治 療 を行 ううえにも必 要 な情 報 です、相 手
の車のへこみ具 合、飛ばされた距離 等、目撃した人 にも協力をお願いすることも必 要です。
問 診は、病 院選 定 に必 要な情 報を確 実 に手 に入 れ、患 者 にとっては苦しさや辛さを訴えること
によって少しは気 持 ちを楽 にすることができ、さらに救 急 隊 に対 する信 頼 感 を増 すことができる、
そんな問 診 の仕 方 を考 えることが必 要 ではないでしょうか。日 本 語 を話 せば通 じるということと、
よりよき会 話を作 り上げるということは別 問 題です。上 手な質 問 の仕 方 も、努 力なしで、歳をとれ
ばなるといったものではありません、プロとして自 覚 と努力の結 果ではないでしょうか。
拡大性感染症「クラミジア」
◆エイズ感染の危険も倍増
性行為の低年齢化は、
「望まない妊娠」だけでなく、病気も増やしている。
昔、
「性病」といえば、梅毒、淋(りん)病など数種だった。が、今では「性感染症(STD)
」と
呼ばれ、種類が増えて、身近にもなってきた。
その代表が「クラミジア」で、厚生労働省研究班の推定では男性15万人、女性85万人が感染し
ている。特に高校生の3年間の感染ぶりはすさまじい。女子生徒では、卒業時の感染率が、入学時の
6倍にも激増している。
東京都予防医学協会が、何らかの理由で都内の産婦人科を受診した女性を調べたところ、感染率は
10%前後。中でも15∼19歳は4人に1人と、最も多い感染年代になっている。
クラミジアとは細菌とウイルスの中間に位置する病原体で、細胞内に入り込んで悪さをする。近ご
ろ、あまり見られなくなったトラコーマという結膜炎の原因でもある。
性器がクラミジアに感染すると、男性は尿道炎や前立腺炎、女性では子宮から卵管を通っておなか
に入って骨盤内感染症を起こす。とりわけ女性は自覚症状が少なく、腹痛やおりものが多くなったと
いう程度。気づきにくい分、静かに拡大していく。
「最近は、喉(のど)の粘膜から検出されることも多くなっています」と日本家族計画協会クリニ
ック所長の北村邦夫さんは、性行動に伴う感染経路の多様化を指摘する。
クラミジアに感染すると不妊症になったり、未治療のまま出産した赤ちゃんが肺炎や結膜炎にかか
ったりする。
さらに深刻なのは免疫力が落ちてか、エイズウイルス(HIV)に感染する危険性が3∼5倍も高
くなることだ。
「クラミジアもHIVもセックスでの感染環境は同じ。クラミジアの早期発見と治療こそがエイズ
を防ぐ近道でもある」
(北村さん)
クラミジアなら抗生物質を1、2週間服用すればいい。ただしパートナーと一緒に治療しないと感
染を繰り返す。
性感染症を防ぐにはコンドームしかない。が、これでも完ぺきとは言い切れない。
若者を中心にエイズも確実に広がる中、クラミジアをエイズまん延に対する警報の第一声ととらえ
たい。
脳卒中発症には「夜間血圧」より「早朝の急激な血圧上昇」がリスク
日本人の高血圧高齢者約 500 人を対象にした前向き追跡研究で、早朝の急激な血圧上昇が、24
時間血圧や夜間血圧とは独立した脳卒中の危険因子であることがわかった。この研究は、昨年 11
月の米国心臓協会(AHA)学術集会でも注目を集めた報告の一つで(関連トピックス参照)
、待望
の原著論文が発表された。論文は Circulation 誌3月 18 日号に掲載される予定で、このほど、重
要性の高い研究を本誌発行前にホームページに掲載する
Rapid Access Publications として公
表された。
この研究を行ったのは、自治医科大学循環器内科の苅尾七臣氏ら。心血管系疾患や腎障害、肝
障害を認めない 50 歳以上(平均 72 歳)の高血圧患者 519 人を平均 41 カ月追跡し、脳卒中発症と
24 時間血圧との関連を検討した。追跡期間中に脳卒中を発症したのは 44 人。早朝昇圧度は、
「起
床2時間後の平均収縮期血圧−夜間最低血圧前後1時間の平均収縮期血圧」で評価した。
その結果、早朝昇圧度を 10 分位数で分けて比較すると、最も早朝昇圧度の高い群(モーニング・
サージ群、55mmHg 以上)では、他の9群に比べ脳卒中発症率が有意に高いことが判明(19%対 7.3%、
p=0.004)。モーニング・サージ群の平均年齢はそれ以外の人より5歳高齢で、24 時間平均血圧
も 8/4mmHg 高かったが、
そうした点で補正後もこの増加は有意だった
(相対リスク 2.7、p=0.04)
。
多変量解析で脳卒中発症イベントの独立した危険因子を求めると、
「10 歳の加齢」
「24 時間血圧
10mmHg の上昇」
「試験開始時の無症候性脳梗塞」とならび「起床後 10mmHg の昇圧(起床2時間後
血圧が夜間最低血圧の 10mmHg 以上)
」が有意な因子だった。ただし「覚醒後起床前 10mmHg の昇圧」
は脳卒中増加傾向を示すが、有意な因子ではなかった。また、年齢、肥満度、喫煙、糖尿病や高
脂血症は独立した因子ではなかった。
一方、夜間血圧に関しては、夜間血圧が低下しない「ノン・ディッパー」、過度の低下がある「エ
クストリーム・ディッパー」
、上昇する「ライザー」を、日内変動に従い夜間血圧が低下する「デ
ィッパー」と比較した。すると、いずれも脳卒中リスクは増加していたが、有意な増加を認めた
のは「ライザー」のみだった。
苅尾氏らはこれらより、
「早朝の急激な血圧上昇」を抑制することが、脳卒中予防につながる可
能性を呈示。24 時間血圧測定による早朝血圧コントロール管理の重要性があらためて示唆された
形となった。加えて、
「ディッパー」と「ノン・ディッパー」「エクストリーム・ディッパー」と
に脳卒中発症リスクの有意差がないとのデータは、夜間から早朝にかけての血圧コントロールに
適した降圧薬の選択にも大いに参考となりそうだ。
早朝血圧が脳卒中発症リスクの予測指標として有用
自由行動下 24 時間血圧測定(ABPM)により、1日の時間帯別の血圧指標を詳細に検討すること
が可能だが、最近関心を集めているのは、早朝の血圧が高血圧の心血管合併症に及ぼす影響であ
る。早朝の高血圧が脳卒中や心疾患のリスクを増大させることは、すでにいくつかの成績によっ
て明らかになっているが、自治医大の苅尾七臣氏は、早朝血圧を他の時間帯の血圧と比較すると
いう新たな方法により早朝血圧と脳卒中リスクの関係を検討した成績を報告した。20 日、セッシ
ョン「Morning high BP for elderly」で発表した。
研究対象は心血管合併症の認められない高齢高血圧患者 519 例(外来血圧 140/90mmHg 以上、平
均年齢 72 歳)である。全例に ABPM を実施したあと、平均 41 カ月、経過を追跡し、各種血圧指標
と脳卒中発症リスクの関係を検討した。採用した血圧指標は外来収縮期血圧のほか、24 時間、日
中覚醒時、夜間睡眠時、夜間就寝前2時間、早朝起床前2時間、起床後2時間の収縮期血圧平均
値である。これらのほか、夜間就寝前と早朝起床後の収縮期血圧の平均値(ME 平均)と両者の差
(ME 差)についても検討した。
上記の血圧指標のなかで、脳卒中発症リスクを有意に増大させたのは早朝起床後血圧、
ME 平均、
ME 差の3指標であった。
各指標の 10mmHg の上昇にともない、
脳卒中の相対リスクはそれぞれ 44%、
41%、24%増大した。
次に ME 平均、ME 差にもとづき被験者を1.白衣高血圧(ME 平均<135mmHg、ME 差<20mmHg、147
例)
、2.早朝の血圧上昇をともなう白衣高血圧(ME 平均<135mmHg、ME 差≧20mmHg、58 例)
、3.
持続性高血圧(ME 平均≧135mmHg、ME 差<20mmHg、228 例)、4.早朝高血圧(ME 平均≧135mmHg、
ME 差≧20mmHg、86 例)の4群に分け脳卒中発症リスクを比較した。その結果、早朝高血圧群の脳
卒中発症リスクは白衣高血圧群の 6.6 倍であり、他の3群に比べ有意に高かった。
苅尾氏らの成績は、ABPM で測定される血圧指標のなかで早朝血圧が脳卒中発症リスクの予測指
標としてもっとも有用であることを示した。早朝起床後血圧および夜間就寝前血圧の平均値と差
が脳卒中リスクに関与することを明らかにした点も興味深い。苅尾氏は、この時間帯の血圧が家
庭血圧計でも測定可能であることから、実地臨床で高血圧患者の家庭血圧を観察する場合には、
まず第一に早朝起床後の血圧を測定し、さらに可能であれば夜間就寝前の血圧値を得ることが望
ましいと語った。
「重症心不全患者にも運動療法を」、AHA が声明
米国心臓協会(AHA)は3月4日、心不全の運動療法に関する同学会の見解を発表した。生命予
後改善効果は十分に示されていないものの、運動療法には血管機能や神経ホルモン分泌などを改
善する作用があり、運動強度などを適切に設定すれば心移植を待つレベルの重度心不全患者でも
安全に行えるとするもの。声明文は、同日付の Circulation 誌に掲載された。
心臓リハビリテーションの一環として、心不全患者への運動療法に取り組む医療機関は少なく
ない。しかし、そのような施設でも、重度心不全患者に対しては「安静」を指示することが多か
った。今回の声明は、そうした重度心不全患者に対しても適切な運動療法を行うよう推奨した点
で、従来の見解とは一線を画すものとなっている。
一方、重症度などに応じた具体的な運動処方は呈示されておらず、実際の適用にあたっては個
別に運動処方を組む必要がある。ただし、各種の介入研究で用いられた運動メニューは例示され
ており、心不全患者の運動療法に対する主要な介入試験が網羅されている点は、運動療法研究の
現況を把握する上で有用な情報源になるだろう。
なお、今回の声明に関し AHA が発表したニュース・リリースによると、心不全患者 3000 人を対
象とした無作為化比較試験の患者登録が、この3月から始まるという。NYHA 心機能分類が2から
4度の患者が対象で、
「循環器専門施設での運動療法」と「運動を勧める患者教育」とを比較。運
動療法の生命予後改善効果や、運動療法のリスクが高い患者群の同定などを検討する予定だ。
START式
PCI
経皮的冠動脈インターベンション Percutaneous Coronary Intervention の略称。
経皮的冠動脈形成術(けいひてきかんどうみゃくけいせいじゅつ、英 PTCA:percutaneous
transluminal coronary angioplasty)とは、アテローム等により狭窄した心臓の冠状動脈
を拡張し、血流の増加をはかる治療法で虚血性心疾患に対して行われる。
一般には、英名の略である PTCA として知られている。
この治療法によって虚血性心疾患における内科学領域の循環器学と外科学領域の心臓血管
外科学は限りなく近くなり、病院によっては「循環器センター」等に大きく統合されてい
くきっかけともなった。
具体的な方法としては、狭窄した病変部にガイドワイヤーと呼ばれる細い針金を通過さ
せ、そのワイヤーに沿ってバルーンカテーテル(風船)を病変部まで届けて、風船を膨ら
ま せ て 病 変 を 拡 げ る 治 療 が も っ と も 古 く シ ン プ ル な 治 療 で 、 POBA (plain old balloon
atherectomy) と呼ぶ。拡張した部分にステントと呼ばれる金属の内張りを留置することが
多い。 また病変部の石灰化が強い場合、風船で拡がりきらずロータブレーターと呼ばれる
ダイヤモンドチップをまぶしたドリル状の先端チップを高速回転させ石灰化を削り取る治
療法もある。この治療法は、千葉西総合病院院長・心臓病センター長の三角和雄氏が日本
で唯一の指導医である。
このように、カテーテルを用いて治療を行うことを総称して(経皮的)カテーテルイン
ターベンション (PCI) と呼ぶ。
脳卒中病院前救護
PSLS(Prehospital Stroke Life Support)
日本臨床救急医学会の PSLS 策定までの経緯
病院前救護や院内救急室での治療の標準化が求められるなか、心肺停止における
BLS/ACLS,外傷における JPTEC/JATEC のプロトコールが策定され実施されている。しかし、
救急現場で遭遇する機会の多い内因性疾患(心肺停止を除く)に対してのガイドラインは、
未だ標準化として定められたものがない。特に、日常の救急医療でよく経験する脳卒中に関
しては、一般市民への啓発を含めて、病院前救護と脳卒中の専門医療機関の整備、すなわち
脳卒中の連鎖を早急に構築することが求められている。脳卒中の 75%を占めるといわれる
虚血性脳病変(脳梗塞)への画期的な治療が可能となったことも背景にあり、発症現場から
医療機関まで脳卒中指向型の救急医療体制を連やかに構築する必要性が強調されている。
このような状況の下に本学会では、日本救急医学会と日本神経救急学会と共同して脳卒
中病院前救護ガイドライン検討委員会(以下、PSLS 委員会)を立ち上げ、脳卒中に対する病
院 前 救 護 の 体 系 化 ・ 標 準 化 を し た 脳 卒 中 病 院 前 救 護 (PSLS :Prehospital Stroke Lifb
Support)を策定した。
当初は脳卒中を含めた全ての意識障害の教育プログラムとして、PCEC(PrehospitaI Coma
Evaluation &Care)の作成と教育コースの開発を行った。しかし虚血性脳卒中の治療薬で
ある t-PA の潜在的適応症例がまだ多くあることにより、PCEC より先に PSLS を策定するこ
とが急務であると判断されたため、日本臨床救急医学会は PSLS 委員会(委員長:堤晴彦)を
2006 年5月に立ち上げ、標準化プログラムの策定とコースガイドブックの出版に至った。
PSLS は救急現場における脳卒中の救護に関する教育プログラムを提示したもので、典型
的なカリキュラムは提示するものの、それを強要するものではない。また、インストラクタ
ーを作らず、地域の救急体制や医療事情に合わせた脳卒中救急医療体制の構築に寄与する
ことを目的としている。現在、カリキュラムの提示やその管理は教育研修委員会(委員長:横
田裕行)が担当し、随時改定していく予定である。
1
G2000における脳卒中
Ⅳ
脳卒中に対する認識と脳卒中が疑われる傷病者に対する対策
脳卒中は,成人の死因および脳損傷の原因では第1位である。毎年,何百万人もの成人
が新規または再発性の脳卒中を患い,約 1/4 が死亡する 112)。最近まで,脳卒中傷病者の
管理は大部分が合併症治療に焦点をあてた保存療法であった 113)。治療は脳卒中そのもの
の経過を変えようとする方向ではなかったので,迅速な確認,搬送,インターベンション
についてはほとんど強調されなかった 113)。
現在,線溶療法は脳虚血発作傷病者の神経学的損傷を限局化し,予後を改善させる機会
を提供する 114,121)。線溶療法は,適応傷病者の脳卒中による機能障害と死亡を減少させる
114∼ 121)
。さらに,線溶療法で加療された傷病者は自宅退院しやすくなり,リハビリ施設や
慢性期管理施設へ転院する可能性を少なくする。線溶療法は費用に比べて効果がよく,結
果としてQOLの改善は持続する, 118,122)。これらの理由により,急性虚血性脳卒中に合致
する徴候や症状の発症から,3時間以内に病院に照会されるすべての傷病者に対する経静
脈的線溶療法は,考慮されるべきである(クラス I)114,117,118,121)。また,発症から3∼6
時間以内の経動脈的線溶薬の使用も中大脳動脈閉塞により引き起こされた脳卒中傷病者に
有益であるかもしれない(クラスⅡb) 115,119,120)。
この有益な治療法を施行できる時間の幅は狭い。ほとんどの脳卒中傷病者に対して最終
的な病院をベースに行うインターベンションは,
「発症後3時間以内」に行わなければなら
ない。現在,脳卒中で利用できる時間制限のある治療法は,市民救助者,第一実施者,救
急救助サービス要員たちの重要な役割であると強調してきた。早期の認識,早期のインタ
ーベンション,脳卒中の疑いがある傷病者を現場から病院まで迅速に搬送できれば,実際
に脳卒中の罹患率と死亡率が減少できる。
Ⅴ
脳卒中の症状発現
一過性脳虚血発作(transient ischemic attack,TIA)は,一般的には数分から数
時間継続する可逆的な局所的・神経学的障害である。発症の時点で,脳卒中とTIAを見
分けることは不可能である。もし,神経学的症候が 24 時間以内に完全に回復すればTIA
として分類される。しかし,ほとんどのTIAは 15分以下しか継続しない 123,124)。 T
IAは,脳卒中の危険に対する重要な指標である。脳卒中となった患者の約 l/4 は TI
Aの既往を有する 125)。さらに,治療されていないTIAの 5%は脳 卒中を起こす 1 13 ,126 )。
脳卒中は脳への血流供給の途絶が引き起こす神経学的な損傷である。約 75%の脳卒中は
虚血性で,血栓あるいは塞栓による脳血管の完全閉塞の結果として起こる。出血脳卒中は,
脳の表面(くも膜下出血)あるいは脳組織内(脳内出血)への出血を伴った脳動脈の破裂
により起こる 127,128)。くも膜下出血の最もよくみられる原因は脳動脈瘤である。高血圧は
脳内出血の最もよくみられる原因である 129,130)。
虚血性脳卒中,出血性脳卒中ともに生命危機状態となる可能性があるが,虚血性脳卒
中が− 時間 以内 に死 亡す るこ とは まれ であ る。 これに 対し ,出 血性 脳卒 中は 発症 時に致
死的となる。虚血性脳卒中は,症状が出現してから3時間以内に投薬が可能ならば,線溶
療法により治療することが可能である。線溶療法は,出血性脳卒中の患者には脳内出
血を悪化させるので施行できない。出血性脳卒中患者の一部は外科的インターベンション
によるメリットがある 131,132)。
脳卒中,心臓発作ともに,不十分な血液供給は,障害している凝血塊が原因である。迅
2
速な線溶療法によるインターベンションは,急性心筋梗塞と同様に虚血性脳卒中の予
後を改善することができる
114)
。
脳卒中の徴候と症候を見極めることは,早期インターベンションと治療を決定づける。
脳卒中の症状発現はとらえがたいかもしれない。脳卒中の徴候と症候としては,目立たな
いか,あるいは,患者本人や家族により否定される軽度の顔面麻癖あるいは困難な発語のみ
が含まれるだろう 133)。他の徴候と症候は,意識の変化(混迷,昏迷,昏睡),片側に突然
認められる顔面や四肢の筋力低下と感覚麻痺,不明瞭な会話,説明できないめまい,不安
定,突然の転倒,片側の視力の低下などである。市民救助者は,脳卒中の徴候と症状を疑
った場合にはただちにEMS(救急医療サービス)システムに通報する必要がある。
脳卒中患者は,急性AMI傷病者のようには 自分自身が脳卒中になっていることを理
解できないし,症状を正当化し否定するかもしれない 134)。ほとんどの脳卒中傷病者は,
症状発現後数時間ほど治療への対応が遅れる 123,133∼ 142)。悲劇的なことに,この遅れは線溶
療法の可能性をしばしばなくしてしまう。脳卒中傷病者は,脳卒中の症状を否定しあるい
は理解できないかもしれない。したがって,市民救助者は率先して速やかにEMSシステ
ムに通報し,また必要であればBLSを行う必要がある。
Ⅵ
脳卒中管理の7つの
D
脳卒中患者の管理は7つの D として覚えることができる。発見(Detection),出動
(Dispatch),搬送(Delivery),救急外来入口(Door),情報(Data),決定(Decision)
と薬剤(Drug)である 143)。これらの管理点のどこにおいても遅れは起こりうるので,脳
卒中傷病者の対応と管理は各時点で,熟練した技術を駆使して効率的に行わなければなら
ない。はじめの3つの D"(detection, dispatch, delivery)は地域社会で,市民である
公衆,EMS対応者などBLS実施者の責任である。患者,家族あるいはバイスタンダー
は,脳卒中あるいは TIAの徴候と症状を見極め(Detects),EMSシステムに通報する。
その後,救急医療出動指令者は,AMIや重症外傷の傷病者と同様に脳卒中の疑いがある
患者への電話連絡を優先し,次に高い搬送優先権をもった救急医療チームを派遣する
(Dispatch)。派遣されたEMS従事者はただちに脳卒中の徴候と症状を確認し,脳卒中セ
ンター(EDに到着後1時間以内に線溶療法を施行できる施設)に患者を搬送する
(Delivery)。残りの4つの D",つまりEDでの 早急な優先順位づけ(Door),神経学
的検査とCTスキャンの読影(Data),線溶療法の適応傷病者の選択と決定(Decision),
線溶療法による治療(Drug)は病院のなかで開始される。
Ⅶ
市民の脳卒中に対する一次救命処置
脳卒中の徴候と症状が現れた場合には,ただちにEMSシステムに通報することが基本
である。EMSを利用した場合には,使わなかった場合より早く病院に到着する(時間因
子が決定的な治療においては,これは最大の利益となる) 133,135,144∼ 149 )。さらに,EMD
は派遣対応を優先する最も適切な救急チームを派遣し,また,EMS要員が到着するまで
の患者の処置を指示する 150∼ 152)。 EMSシステムは患者を脳卒中センターに早く搬送し,
迅速な 病院 での 評価 と治 療を 確実 に受 ける ため に到着 前に 状況 を知 らせ る。 傷病 者や家
族が家庭医に連絡したり,自家用車で搬送したりした場合には,病院への到着と病院での
評価は遅れる。このような遅れは,傷病稀を線溶療法の適応外としてしまう 133,146,148)。
3
現在,アメリカでは脳卒中傷病者の半数だけがEMSシステムにより病院へ搬送される
。傷病者が1人のとき,あるいは寝ているときに脳卒中が発症した場合には,症状
の迅速な確認と治療の開始をさらに遅らせる 153)。脳卒中の85%は自宅で発症する 136)。
その結果を受けて,市民教育プログラムは,危険因子を有する者,その家族,友人に焦点
をあてている 136)。この教育は,EDに到着するまでの時間を短縮することに成功してい
る 136,137)。
EMSシステムに連絡後,再確認を含め,補助的ケアを施行する。傷病者を回復位にす
る。傷病者が反応しなくなった場合には,呼吸補助を施行し,必要であればCPRの他の
段階も施行する。
133,136)
Ⅷ
脳卒中に対する院外処置
BLS救急車要員は線溶療法を施行できる病院を選定することと同様に,脳卒中患者の
識別,安定化,早急な搬送に重大な役割を担う。以前は,脳卒中の評価と処置に関しては
最小限の訓練しか受けてこなかった 7,150∼ 152,154)。現在では,プログラムは脳卒中傷病者に
対する正確な識別と優先づけを EMS要員に訓練することを必要としている 54,60,155∼ 164)。
線溶療法を施行できる医療施設があれば,急性虚血性脳卒中の徴候と症状を認めた人た
ちに対して,AMIや重症外傷と同様に,出動指令,治療,搬送の優先権が救急車サービ
スの政策として要求されるべきである。気道狭窄や意識の変化を伴う脳卒中傷病者には,
脳卒中以外で同様の問題を有する患者と同様に,出動指令,治療,搬送に関する優先権が
与えられるべきである(クラスⅡb)。脳卒中後の気道狭窄はよく起こることである。多く
の脳卒中傷病者では,発症後数時間から数日に心室頻拍性不繁脈や心房細動などの不整脈
を認めるが,心停止は比較的まれである 165∼ 167)。
BL S救 急車 要員 によ る脳 卒中 の疑 いが ある 患 者に 対す る院 外で の管 理目 標は 以下の
とおりである。l)優先的出動と応答,2)初期評価と気道確保,酸素化,換気,循環を
含む管理,3)脳卒中の早期識別(標準的な脳卒中スケールを用いた),4)到着後1時間
以内に線溶療法を施行できる施設への急速搬送,5)到着前の病院への通知。
虚血性と出血性脳卒中の臨床的症状発現はしばしば重複し,症状のみからの診断決定は
困難である。一般的に,頭痛(しばしば傷病者自身によって,突然に発症した 人生のな
かで最もひどい頭痛 と表現される),意識障害,嘔気,嘔吐は脳内出血においてより重症
である。意識消失は一過性で,患者が医療を受けた時間には回復している。くも膜下出血
の患者では,局所的な神経学的徴候を伴わない激しい頭痛を有する。
虚血性脳卒中の,患者は,院内での線溶療法の治療適応者になる。しかし,虚血性脳卒
中の診 断と 適応 の決 定に は, 患者 が病 院に 到着 してか ら時 間を 浪費 する いく つか の段階
が必要である。治療チームが動員される,患者は評価され適応が決定される,CTスキャ
ンの撮影,脳内出血の除外(を解釈する),治療の施行。これらのすべての段階は,患者の
「症候が発症してから3時間以内」に薬剤投与ができるように完了されなければならない 。
BLS救急車要員は,早急に脳卒中の可能性を見極め,早急に脳卒中センターに搬送し,
受け入れ病院に到着前の通告をすることにより,線溶療法の適応の見込みは最大になりう
る。この管理では時間が決定的であり,そのことの重要性を院外評価と管理のプロトコー
ルに包含するべきである。
「BLS救急車要員は,脳卒中の徴候と症状の発症した時刻を確証すべきである。この
時刻は,治療の可能性に重要な関連がある」。症状の発症は脳卒中の発症としてみられ,
線溶療法の適応はその時間から3時間で終了する。傷病者が症状と徴候の発症した時刻を
推定できない場合には,現場で家族や友人に質問する。傷病者を最後に目撃したのはいつ
4
か,症状が起こったときになにをしていたか(たとえば,昼食の準備),そして,受け入れ
病院が症状の発症時刻を推定できるその他の情報を決定することが可能である。
PSLS の概要
PCEC と PSLS の基本的なアルゴリズムは、初期評価で気道・呼吸・循環が安定している場
合は、意識を観察し、問診を行ったのち脳卒中と判断される傷病者は PSLS のアルゴリズム
に従う。
PSLS のアルゴリズムにおける脳卒中スケール
シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)
「シンシナティ病院前脳卒中スケール」は開発された地域にちなんで命名されており,
たった3つの身体所見で高率に脳卒中患者を同定できる。
1.顔面弛緩(患者に,笑い顔をする,あるいは歯を見せるよう指示する)
2.上肢の浮動(目を閉じて腕をまっすぐ差し伸ばすよう指示する)
3.言語障害(患者に, You can
t teach
an old dog new tricks
と言わせる)
救急医や ED(救急部門・救急部あるいは救急外来など)の看護師を含めた救急従者は,
1分以内にシンシナティ病院前脳卒中スケールで患者を評価することができる。これら3
つの徴候のうち「新たに」1つでも認められれば虚血性脳卒中である確率は 72%で あり ,
3つすべてが認められれば 85%以上の陽性的中率である。ただちにメディカルコントロー
ル担当医師,収容予定 ED に連絡を取り、病院到着前情報提供をする。これらの患者は迅
速な病院搬送を必要とする。
5
ロサンゼルス病院前脳卒中スクリーン
ロサンゼルス病院前脳卒中スクリーン(LAPSS)は,急性脳卒中についてさらに厳密な
検査法である。 LAPSS は年齢、痙攣の既往歴,症状持続時間,血糖値、病前の歩行能力
に問題がないこととう基準をシンシナティ病院前脳卒中スケールの3つの身体所見のうち
の2つに加えている。当然のことながら LAPSS による陽性的中率はより高くなり,7つ
の基準を満たす患者が急性脳卒中である確率は 97%である。表 1 を参照。
即時搬送(load and go)
症状発現から「ED 到着までの時間は最短」にしなければならない。これは EMS 要員の
責務である。急性脳卒中は
即時搬送
の適応がある。脳卒中の特別な治療は適切な医療
機関の ED でしかできないため,現場活動時間の延長は最終的な治療を遅らせ,場合によ
っては治療法を制限することになる。さらなる患者評価や補助療法は病院へ向かう途中や
ED において続ければよい(訳注:1oad and go;受傷機転やバイタルサインから判断して
現場活動時間を短縮し,すくに病院への搬送に移ること)。
脳卒中の徴候の発症時間確定
もし可能なら,病院前救護者は正確な脳卒中の徴候や症状が発現した時間を確定すべき
である。正確な発現時間は線溶療法の適応を評価するさいに必要となる。発症からの時間
を
ゼロ
と見なした時間から,すべての評価と治療が開始される。
早い情報提供があれば,ED 従事者は搬入が近づいている脳卒中患者に対して準備がで
き,急性脳卒中治療の適応の有無を判断する時間を短縮できる。
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倉敷病院前脳卒中スケール(KPSS)
CPSS で脳卒中の疑いがあると判断された場合、さらに脳卒中の重症度を評価するため
KPSS を使用する。
評価とファーストコール、及び車内活動
医療機関の選定を行い、医療機関へ適切な情報提供を行う。傷病者を救急車内に収容し、
継続観察、そして必要があれば適宜医療機関へ情報提供を行う。
7
rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法
欧米での臨床試験において、急性期脳梗塞の治療に有効性が高いと認められた遺伝子組
み換え組織型プラスミノゲン・アクティベーター(rt・PA)(薬剤名:アルテプラーゼ)の
静脈内投与が 2005 年 10 月にわが国でも急性期脳梗塞の治療薬として認可された。
1,脳梗塞という病気について
脳梗塞とは、脳の血管が細くなったり,血のかたまり(血栓)が詰まったりして、脳に酸素
や栄養が送られなくなるため、脳の神経細胞が傷害される病気である。
脳梗塞は、さらに脳血栓症と脳塞栓症に大別される。脳血栓症は、動脈硬化のため脳の
血管が徐々に血栓の細くなり、脳の血管に血栓詰まって脳の細胞が障害されるために起こ
るもので、一方、脳塞栓症は心臓や脳につながる大きな血管に付いた血栓の一部がはがれ
て脳の血管に流れて脳の血管が詰まって脳細胞が傷害されるために起こるものである。
主な症状としては、手足の麻庫、しびれ、ろれつが回らない、めまい、意識障害などが
みられる。
2.
急性期脳梗塞の治療にアルテプラーゼの静脈療法について
脳梗塞の治療では、できるだけ早く(症状が出現してから3時間以内)に脳の血の流れを
良くすることが大切である。
血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)は、詰まった血管の血栓を溶かすことによっ
て、血液の流れを再開させ、脳梗塞を治療する。
方
法:症状が出現してから3時間以内にアルテプラーゼという薬を 0.6mg/kg(34.8 万国
際単位/kg)の 10%を注射で、残りの 90%を1時間で点滴する。
効 果:米国で行われた臨床試験では、アルテプラーゼを使った人の 39%がほとんど障害の
ない状態にまで回復した(使わなかった人では 26%であった)。日本で行った試験
では 37%の人がほとんど障害のない状態まで回復した。
副作用:この薬の特性から最も多い副作用は出血で、その程度は様々であるが、脳梗塞の
患者では、特に「出血性脳梗塞」に注意する必要がある。
米国の試験では、
「症状の悪化を伴った出血性脳梗塞」は 6.4%で、うち死亡は 2.9%
であった。
(アルテブラーゼを使わなかった人では O.66%で、うち死亡は 2.9%であ
った)。日本での試験では、5.8%で、うち死亡は 0.9%であった。
その他の副作用として、消化器.膀胱や肺など、いろいろな臓器出血を起こした
り、出血に伴う貧血、血圧低下、発汗、熱感、発熱などがあるが、いずれの副作
用も 1%未満である。
出血性脳梗塞
出血性脳梗塞とは、脳梗塞内への出血である。脳梗塞の中でも、塞栓症に多く見られる
と言われている。虚血範囲の大きいものほど出血しやすい傾向にある。出血は、①脳血管
の近位部で閉塞が起こり血流が停止した後に、周囲血管系から側副血行により血液供給が
おこなわれる時や、②一度、閉塞した血管から塞子の融解により再開通したときなど、再
開通した虚血部に起こる。再開通後に高血圧が続いたり、心原性脳塞栓症で抗凝固薬を投
与していたりしているような場合には、大出血を起こすおそれがある。これは、高血圧に
よる穿通枝の破綻や、抗凝固薬による止血機構の低下によって大出血となるもので、多く
は症状が増悪し危険である。
注:
日本脳卒中学会医療向上・社会保険委員会 rt・PA(アルテプラーゼ)静注療法指
針部会作成の rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針(2005 年 10 月)よ
り一部内容を抜粋しています。
8
無条件反射と条件反射
無条件反射は生物の種に属し、条件反射は個体によって形成される。条件反射は生物と
環境との一時的結合であるから、個体の生活過程で獲得され、反復されることによって強
化されるが、長時間もちいられないで放置されると消えてしまう。だが、同じ種類の条件
反射をくり返して形成させるような環境が存在する場合には、長時間にわたって結合が持
続し、生命物質のなかにその痕跡を残すにいたる。すなわち獲得された環境への適応の仕
方が遺伝し、その種に定着される。条件反射が無条件反射に転化し、それ以前の無条件反
射を変化させるのである。
無条件条件には、食餌反射・防禦反射・性反射・自由を求める反射・探究反射などがあ
る。自由を求める反射とは身体を拘束しようとすると抵抗する反射である。また探究反射
とは環境のごくわずかの動揺に対してもこれに対応する感覚器官をその要因の方向に向け
る反射であって、たとえば馬が小さな物音に対してピクリと耳を動かすのがこれである。
「おや、なんだろう」という反射であるから、探究反射のことを「おやなんだ反射」とも
いう。――さて、これらの無条件反射がいずれも生きることに、すなわち生物体の自己保
存に関係があることは容易にわかる。もっとも関係がなさそうにみえるのが探究反射であ
るが、探究した結果もしもその刺激が生命に危険なものの接近を示すものであればつぎに
防禦反射がおこるのであって、探究反射はいわば防禦反射の準備段階なのである。無条件
反射をおこす刺激を無条件刺激というが、無条件刺激はいずれも直接的に生物学的な意味
をもった、すなわち生物体の自己保存に直接的に関係のある刺激である。
適応性(模倣反射と探究反射)
適応性も本性のひとつです。適応性はその要素としての「模倣反射」と「探究反射」に
分けて考えることが多いです。
「模倣反射」はそのエネルギーによって「マネしたい」という欲求になり、
「探究反射」は
「知りたい」という探究欲になって、そのような行動をとらせることいになるのです。
人間の子どもは生まれつき適応性という本性を備えていて、周りにいる人間の行動を模
倣します。這っていた乳児がやがて二本足で立ち上がろうとすることさえ、
「 マネをしたい」
という模倣性からくるエネルギーのなせるワザなのです。そのため乳児の近くに、たって
歩いているモデルがいなければ、模倣する対象がないため乳児もまた立ち上がることはあ
りません。
何かを「知ろうとする」探究反射も、あらゆる動物が先天的に備えています。
興味・好奇心が強いほど社会の現象を見・模倣し・知ろうとしますから、より社会に適
応しやすくなりますが、この源にあるのはやはり適応性という本性であり、エネルギーの
高さといえるでしょう。
パンデミック
パンデミック(pandemic)とは、世界的な流行病に対する医学用語で、限られた期間に
ある感染症が世界的に流行することを言う。感 染爆発、あるいは汎発流行 ともいい、WHO
の発表によると、インフルエンザ・パンデミックは、多くの感染者および死亡者を伴うと
予想され、世界的な脅威になっている。
これに対して感染症が一部地域で、あるいは散発的に流行することは「エピデミック
(epidemic)」、「地方流行」と呼ばれる。
歴史的なパンデミックとしては、14 世紀にヨーロッパで流行した黒死病(ペスト)、19
世紀から 20 世紀にかけて地域を変えながら 7 回の大流行を起こしたコレラ、1918 年から
1919 年にかけて全世界で 2500 万人(4000∼5000 万人という説もあり)が死亡したスペイ
ンかぜ(インフルエンザ)日本では約 39 万人の死者を出した。1957 年のアジアインフル
エンザ、1968 年の香港インフルエンザ、1977 年のソ連インフルエンザなどがある。
こうした新型インフルエンザのパンデミックは 10 年から 40 年の周期で発生するといわ
れている。現在では人口の増加や都市への人口集中、飛行機などの交通機関の発達などか
ら、非常に短期間に地球全体に蔓延し、甚大な被害をもたらすことが予測される。米国疾
病管理センターの予測では、日本では、約 1/4 の人が感染し、医療機関を受診する患者は
最大で 2500 万人と推定されている。
パンデミックがいつ発生するかを予測することはできないが、現在の世界は、航空機な
どの輸送機関の発達によりパンデミックが起こりやすい状況になっているため、新型イン
フルエンザの発生からパンデミックに至るには短期間で推移する可能性は高く、パンデミ
ックが起こる事を事前に予測して、各地域状況や環境に合わせたパンデミック対策を計画
する事が大切で、特に、人々の生活維持に不可欠な社会機能を維持することが求められる。
更に、社会機能維持に関わる機関・企業は表に示される人々が該当し、個々の機関・企業
においては被害を最小限に抑え、業務が滞らないようにするために、ワクチン接種、時に
は抗ウイルス剤の予防投与も行われるが、これらも含めた事前の対策を講じ、準備をして
おくことはきわめて重要である。また、検疫を行うなどして感染症の流入を防ぐ対策がと
られている。
近年東南アジア諸国で発生している高病原性鳥インフルエンザウイルス H5N1 型による
トリインフルエンザにより、現在でもパンデミックが起こる恐れがあり、世界保健機関が
途上国を中心に対策を立てている。日本では、厚生労働省を中心に地方自治体が対策をと
っているが、患者が急増した際の医療機関の混乱や、交通機関のまひ、食料の供給不足な
どを懸念する専門家の指摘もある。
喘鳴
"stridor"(英語読みをカタカナ表記にすると「ストライダー」でしょうか)は、小児を診
療される方にとっては珍しくないと思いますが、主に上気道の狭窄によって生じる吸気性
の喘鳴を言います。
比較的(下気道と比較して、という意味です)大きな気道の狭窄部位で乱流が生じること
による雑音で、高調で軋むような、ヒューというよりはキューッという感じです。吸気は
通常短時間で終了するので、雑音の持続時間は短いです。呼気時に雑音が生じることも珍
しくありませんが(呼気の延長があっても不思議ではありません)、通常は呼出による気道
内圧の上昇で狭窄が若干改善するのに対し、吸気時は狭窄が増強するため、圧倒的に吸気
時の雑音が優位となります。
頚部で生じる雑音なので、聴診器を当てなくても明らかに音が聞こえます。音が放散する
ため、胸部だけの聴診では"wheezing"と間違えることがありますが、紛らわしいときは喉
に聴診器をあててみると、胸部よりも強く直接的な雑音が直下に聞こえるので、胸部で聴
取される雑音が喉からの放散音であることがわかります。おそらく臨床ではそのまま「ス
トライダー」と言うことが多いと思います。
日本語表記は「吸気性喘鳴(ストライダー)」または原語のままで「吸気性喘鳴(stridor)」
がわかりやすいと思います。
"wheezing"(フィージング)は、成人を診療される方には説明不要でしょうが、主に下気
道の狭窄によって生じる喘鳴で、吸気でも呼気でも生じますが、呼気の方がやや目立ちま
す。
"stridor"とは逆に呼気時の胸腔内圧上昇によって狭窄が増強するためです。"stridor"より
もはるかに狭い気道で生じる乱流音で、高調成分がややまろやかになって、キーというよ
りはヒュー、またはザーという感じでしょうか。下気道狭窄では呼気が延長するため、雑
音は"stridor"よりも長く持続します。当然ながら雑音は胸部で最も強く聴取されます。ち
なみに喘息の既往がない小児の突然の"wheezing"で局在性が強い場合(片側性など)は、
気管異物を疑います。
雑音は呼気に限るわけではないのですが、"stridor"との区別を強調するために「呼気性喘
鳴(フィージング)」または「呼気性喘鳴(wheezing)」としてもよいでしょうし、単に
「喘鳴(wheezing)」でもよいと思います。
アナフィラキシーショックでは、喉頭浮腫による上気道狭窄で"stridor"を、気管支痙攣ま
たは浮腫による下気道狭窄で"wheezing"を、それぞれ起こす可能性がありますが、同時に
"stridor"と"wheezing"があったとしても発生部位が異なるため、それぞれ別個のものとし
て考えればよいはずです。
"wheezing stridor"なる用語はありません(たぶん)ので、ご心配はいらないと思います。
余談ですが、みなさんは「喘鳴」をどう発音されますか?
「ぜんめい」それとも「ぜい
めい」?
インフルエンザ脳症を疑え
厚労省研究班が初のガイドラインを発表
急速に意識障害が進行し、患者の 1∼3 割が死亡するインフルエンザ脳症。毎年、臨床
医を悩ませ、乳幼児を持つ親の不安をかきたててきたこの重篤疾患に対する診療ガイドラ
インが、ついに完成した。
この「インフルエンザ脳症ガイドライン」は、厚生労働省インフルエンザ脳症研究班(主
任研究者:岡山大小児科教授の森島恒雄氏)が昨年 11 月末に発表した。内容は、(1)初期
対応(2) 診断指針(3) 治療指針(4)後遺症に対するリハビリテーション(5) グリーフケア(家
族・遺族のケア)─の 5 項目から構成されている。
初期対応
けいれんの見極めがカギ
プライマリケアに携わる医師にとって最も有用なのは、インフルエンザ脳症が疑われる
症例に対する初期対応のフローチャートだろう(図 1)。インフルエンザ患者で脳症を疑う
ポイントは、意識障害、けいれん、異常言動・行動の 3 つ。このうち最も重要なのが意識
障害で、明らかな意識障害があれば、直ちに 2 次または 3 次医療機関へ紹介する。
一方、けいれんと異常行動については、初期対応である程度の鑑別を要する。インフル
エンザでけいれんを起こす患児は、全体の 2 ∼ 5%と多いが、そのうち(1) 持続時間が 15
分以内(2) 繰り返さない(3) 左右対称─という 3 条件を満たすけいれんを「単純型」とし、
それ以外の「複雑型」をまず搬送の対象とする。
単純型の場合、けいれんが治まって意識がはっきりしていれば経過観察していいが、
「呼
びかけには反応するが、返答があいまいでボーッとしている」など、意識状態の判定が困
難な場合は、意識の回復が確認できるまで院内で様子を観察する。目安として 1 時間経過
しても意識がはっきりしない場合は、搬送する。
1.誰でも勝手に酸素吸入して大丈夫なのでしょうか「酸素バー」なるものが流行しています。
○はじめに:
最近、テレビ番組などで疲労回復などのために健常者が酸素を吸う方法が紹介されています。空気
中の酸素の濃度を高める器械や酸素発生器が使われているようです。医療用の酸素ボンベや液体酸素
は規制がなされておりますが、業者で使われている器械は使用者に法的規制ができておりません。あ
らゆる人に酸素を使ってなんの問題もないのでしょうか。
○ 酸素療法本来の目的:
心臓や肺に障害をもつ方々や群発頭痛の治療に一部、吸入空気中の酸素濃度を高めることが医療機関
ではごく普通の治療法として行われおります。呼吸するのに使われるエネルギーを減らしたり、心臓の
負担を軽くしてあげるために使われるものです。
ご承知の通り人間の体にとって酸素は不可欠なもので
す。
息を吸うことで大気中の空気を肺に取り込んで、肺の中の一番奥である、空気の最終的到達点である
肺胞と呼ばれる空気がたまる場所に到達します。肺胞にある空気と、全身から運ばれた静脈血が網目状
の毛細血管と混ざります。体内で酸素が使われ少なくなり、炭酸ガスが発生して多くなった静脈血であ
る血液拡散と呼ばれる仕組みで、酸素がガス中から血液に、また炭酸ガスが血液中からガス中へ移動し
てガス交換が行われます。
酸素は大気中に 21%程度含まれています。大気中の酸素の比率を人工的に酸素を付加することで肺
胞の酸素の濃度を増加させることで、
より多くの酸素を体内に取り込ませようとする治療法が用いられ
ているのです。
○ 酸素濃度が正常な人に酸素吸入は本当に有効なのでしょうか
動脈中の酸素は主に、
ヘモグロビンと呼ばれる蛋白と結合して存在する酸素と血漿中に解けている酸
素という2つの形で存在します。
健康なヒトの血液中の酸素の含まれる量(酸素含量)を計算してみます。
・ヘモグロビンと結合する酸素の量=1.34×ヘモグロビン濃度×酸素飽和度
・血漿中含まれる酸素の量=0.003×酸素分圧
通常 Hb15g/dl、酸素分圧100mm 水銀柱(Torr.)、酸素飽和度96%とすると、このヒトの血液
中の酸素の含まれる量は19.3g/dl となります。
吸入する酸素の濃度を増すと、酸素飽和度が増加し、血漿中に含まれる酸素の量が増加することが期
待できます。特に心臓や肺などが悪く動脈中の酸素飽和度が低い低酸素血症のヒトは酸素飽和度が低い
ため酸素を外部から投与したときに酸素含量がずいぶん多くなります。
これが低酸素血症患者さんへの
酸素療法の仕組みです。
しかし、通常の人間は大気の酸素程度ですでにヘモグロビンと酸素はほとんど結合しており、低流量
の酸素投与では、せいぜい1∼2%しか増加致しません。また血漿中に含まれる酸素が21%から4
0%に増加したとしても、0.003g/dl 程度しか増えませんのでほとんど無視できる量です。
健常者に酸素療法を勧めている業者は後述する高濃度酸素療法の副作用が怖いため低濃度の酸素し
か利用者に勧めないはずです。仮に勧めたとしたら、前述の高濃度酸素療法の害を無視した加害行為で
す。それで、せいぜい40%程度の吸入酸素と仮定致します。この程度の低濃度の酸素で効果が期待で
きるのは酸素含量は1−2%の増加があるかどうかです。もともと低酸素の人はヘモグロビンと酸素が
充分に結合していない酸素飽和度の低い人なので有効で、そのために心臓や肺に障害のある方々の治療
法としては効果的です。しかし、本来健常な方が酸素を吸っても全身へ運ばれる酸素の量の増加は極わ
ずかなのです。
○ 鼻カニューラ法は酸素濃度の調整は困難:
酸素を吸う方法には
1)低流量酸素療法
2)高流量非再呼吸法
3)高流量再呼吸法
があります。
酸素の投与量を厳格に測定しながら投与する方法は、2)のベンチュリー法と呼ばれる方法を用
いて行いますが、酸素量がかなり多く病院以外では現実的には使用不能です。
通常用いられるのは鼻にチューブをかけて行う鼻カニューラです。鼻カニューラはかなり少ない
量で肺の奥に到達する酸素の量を保つことができます。この問題点は酸素の吸入濃度を一定にする
ことがかなりむずかしいのです。ですから医療の現場では動脈から実際に血液を採って評価しなが
ら酸素投与量を決定しています。
○ 高濃度酸素の問題点:
酸素濃度が高いと
1)吸入の酸素濃度が50%を越えると健常な肺でも肺障害を生じます。これはフリー・ラジカルが
その機序と考えられます。
2)換気能に問題があると動脈中の炭酸ガスが高くなり、時には意識障害を生じます。炭酸ガスナル
コーシスなどと呼ばれています。
3)一部換気のわるい肺の部分があると窒素の量が多くなり、そこの部分の肺が小さくなり、逆に動
脈中の酸素が少なくなります。
動脈中の酸素が正常なヒトに長期的・習慣性に酸素投与をしたときの有害作用は不明なことが多
いのです。健康情報に敏感な方々はフリー・ラジカルという言葉に敏感なのにかかわらずあえてフ
リー・ラジカル暴露の危険性を選ぶというのは皮肉なことと思えます。
○QuackWatch:
Quackery(いかさま療法)というのがあります。確定的でない健康に関する知識や明らかに誤っている
似非医学知識を披露して、時にはその人自身もその知識を盲信してしまい、無益あるいは有害でさえ
ある治療法を喧伝されているのをよく見聞きします。最近は科学番組風なテレビ番組でも見られるよ
うになっています。
問題になりそうな Quackery はかなりの部分が実は輸入品です。
Quackwatch というサイトをみると、
マイナスイオンなどを含め多くのおなじみの Quackery 関連記事を見いだすことができます。
酸素バー (oxygen bar)はファッションとして米国でも流行しているらしく、FDA でも注意を促し
ております。
一部引用すると
・長期酸素投与が必要な患者さんたちがいるが、それ以外の人には不要
・酸素投与にて呼吸抑制を生じる人たちがいる
・芳香剤を添加しているところがあり、肺への炎症(リポイド肺炎)やアレルゲンとして作用する可
能性
・たばこの火からの引火
・酸素ボンベの取り扱いの難しさ
・スポーツでの使用も偽薬効果で、空気の吸入と効果に違いはない
など多くの問題が指摘され、効果が懐疑的であることが見てとれます。高濃度の酸素を投与しても
体内に蓄積することはできません。仕事帰りに疲れをとるために酸素を吸ったとしてもそのときしか
肺内の酸素を高めることができません。たとえば15分すったとしても酸素療法を終了した次の一呼
吸ではもう酸素は高めることはできません。
○ 酸素濃縮装置:
酸素を好きなときに取り出す装置は、1)液化酸素、2)圧縮ボンベ、3)酸素濃縮装置の3つが一
般的です。
他に化学的反応を利用した酸素発生器がありますが、
酸素濃度の調整コントロールが難しく、
一定でないため医療機関では滅多に使われません。
1)2)の酸素は人体に使用する場合、日本薬局方にさだめられている酸素を利用しますので、だれ
でも、人体に使用することはできません。酸素濃縮装置は日本で開発が先行している機器です。これは
特殊な吸着装置や膜を利用して酸素を集め、慢性的に動脈中の酸素が低い方のために開発された
器械です。日本ではこれを利用して在宅で酸素を利用している方が多いのです。この器械は当初の取り
扱いが簡単なため、家庭用の電源があれば簡単に自宅でも酸素を吸うことができます。しかしながら、
大気中の空気を取り込むためにフィルターにゴミが付着しやすく、また、酸素のチューブなども定期的
に交換したり、
乾燥した気体のため粘膜を損傷するのを防ぐため気泡を通すなどの管理をしながら使用
する器械です。管理上の知識が少ない者が安直に使用することで、アレルギー性疾患や呼吸器疾患の引
き金になる可能性も有ります。
化学的反応を利用した酸素発生パウダーなどに使用されている過酸化水
素は喘息などの気道過敏性のある方には危険性があります。
○まとめ:
在宅で酸素を利用するために作られた器械が Quackery に利用されているのは医療従事者として悲し
いと思います。
シャピロさんの書かれた呼吸療法士の教科書には、
「酸素というのは薬剤であり、重篤な患者さんに
は有効な薬剤であることはよく知られているが、不幸なことにその副作用についてはあまり知られて
いない」とかかれています。酸素という薬剤を人体に使用する場合にも慎重な取り扱いが必要です。
単なるファッションとして酸素という薬剤を健康ドリンクのように利用することが、無駄で危険を含
むものかをご理解頂きたいと思います。
喉頭蓋について質問
食物が咽頭を通過するさい、気道に食物が入らないように嚥下反射で喉頭蓋の閉鎖がおき
るのは理解が出来るのですが、のどぼとけ(喉頭隆起)を見ていると物が咽頭を通過する
さいにうえに上がります。これは喉頭蓋もしたに下がるが、気管もうえに上がると解釈し
てよいのでしょうか。また、喉頭蓋が閉鎖する時にのどぼとけが上がるということは、逆
にのどぼとけを下げれば、喉頭蓋が開くと解釈してよいのでしょうか。
(反射がないときは
開いていると思いますが)もしこれが成り立つなら、心停止等で筋肉や靱帯が弛緩してい
るときに、のどぼとけを下げれば、少しは喉頭蓋は開くのでしょうか。
信州大学医学部解剖学の川岸です。
表記の件について専門外ながら書かきます。
食物が咽頭を通過する際の一連の動きは嚥下反射(口腔期-咽頭期-食道期)として説明さ
れています。
口腔期は食物が口腔を通過する際、食道期は食道での蠕動運動ですので本件とは少し離
れます。
嚥下反射の咽頭期が松田さんのご質問の時期となると思います。
このタイミングは鼻腔、口腔、喉頭への食物の侵入を防ぐために多くの運動が同時に起
こります。
特にご質問のあった喉頭(気道)への食物の侵入を防ぐために以下のメカニズムが存在し
ます。
まず食物は正中を通らずに下方へ送られる。喉頭蓋が凸型をしており、食物は左右に割
り振られます。
(これが魚の骨等が梨状陥凹に引っかかりやすい理由です)
2 次的に食物の重力、舌骨等の上方移動、咽頭筋の収縮により喉頭蓋が下方に下がり喉頭
孔に近づきますが、これはあくまでも二次的なものです。
(喉頭蓋を下方に引き寄せ喉頭孔
に密着させる筋は存在しません。
)
甲状軟骨は喉頭孔を喉頭蓋に近づけるために舌骨・輪状軟骨とともに上前方へ挙上され
ます。
(老人ではこの動きをする舌骨上筋群が弱まっており、甲状軟骨が下がっており、挙上も完
全に出来ず誤嚥が起こりやすい)
これらの動きのよって食物の喉頭(気道)への侵入が防がれています。
一般的に気道の入り口に上からふたをするようなイメージが持たれがちですが、それら
は受動的なもので、能動的には甲状軟骨が挙上することによって気道を保護しています。
これらの動きの理解は BURP 法の際に非常に重要になります。
B=後方すなわち脊柱方向への圧迫=挿管実施者へ見やすい方向への圧迫
U=上方への圧迫=挿管実施者へ見やすい方向への圧迫(しかし舌根を喉頭展開で持ち上
げた後でなければ気道を閉塞する方向への圧迫になる!)
R=右側への圧迫=挿管実施者へ見やすい方向への圧迫(喉頭鏡の構造による。視線が右
側から入るため)
P=push
わけもわからず BURP 法をすることは気道を閉塞する方向への処置になります。必ず挿
管実施者の指示の元にすることが肝要です。
またセリック法との混同も注意が必要かと思われます。
さて、上記で述べさせていただきましたように、喉頭を下方に移動することは結果的に
喉頭孔を広げることになります。喉頭蓋は能動的に動かす筋がほとんどなく、弛緩した状
態ではある程度脊柱側にシフトすると思われますが、同じく甲状軟骨を下方に移動すると
力点(甲状軟骨と喉頭蓋の接点)が支点(喉頭蓋と舌根の靭帯)よりも下方に引かれるた
め、多少効果はあるかと思われます。
東京法令出版の気管挿管インストラクターハンドブックの解剖の部分に図がありますので、
同僚の方がお持ちであれば、参考にご覧下さい。
静脈還流・呼吸ポンプ等
静脈還流
たとえば足の静脈にある血液が右心房へともどるためには重力に打ち勝って心臓の高さまで血液を
押上げるだけの力が働かなければならない。その要因としては次のようなことがあげられる。
① 静脈血圧
② 筋ポンプ:とくに四肢の静脈では、その周囲にある骨格筋の収縮や併走している動脈の拍動によ
って常に一定の部位が圧迫され、血液が心臓に向って押しだされる。この程度の静脈になると、静脈内
のところどころに静脈弁が存在し、常に心臓に向う一定方向のみ血液を押出すことになり、逆方向(心
臓から遠ざかる)への血流を阻止するので、血液が常に心臓に向って循環される。
③ 呼吸ポンプ:吸息時には横隔膜が収縮して下降するために、胸腔内圧が低下し、腹腔内圧が高く
なる。したがって胸腔内の静脈内腔が拡げられる結果となり、腹腔内圧によって押された腹腔内の静脈
から血液がより円滑に胸腔内へと送りこまれる。呼息時には腹腔内圧が低下するため、下肢の静脈から
腹腔へと血液が送りこまれる。
④ 右心房内圧:心室の等容性収縮期には右心房圧が陰圧となり、これが大静脈から血液を引きこむ
力として働いている。
血管の神経支配
血管壁には平滑筋があり、これらが収縮・弛緩することによってその内腔を変化させ、血圧を調節し
ている。血管を支配している神経を血管運動神経と総称するが、これらのうち血圧調節に重要な意味を
もっているのは交感神経性血管収縮神経と交感神性経血管拡張神経である。後者は主に骨格筋に分布し、
血管を拡張させることによって骨格筋への血流量を増加させる。交感神経性血管収縮神経は持続的にイ
ンパルスを発射して(持続性支配)常に血管をある程度の収縮状態に保たせている。この神経のインパ
ルスが増加すれば、血管はさらに収縮して血圧を上昇させ、インパルスが減少すれば血管が拡張して血
圧が低下する。このような交感神経性血管収縮神経のインパルスを調節しているのは延髄の血管運動中
枢である。血管運動中枢には、血圧上昇(領)野と血圧下降(領)野とがある、前者は交感神経性血管収縮
神経のインパルスを増加させ、後者は減少させる。
循環の調節
筋運動時には、筋の 02 消費量が安静時の 20 倍にもなる。このような状態では交感神経活動が亢進し、
一方では心拍数、心拍出量を増大させるとともに交感神経性血管収縮神経の興奮によって血管を収縮さ
せ、その結果、血圧が上昇する。しかし、一方、交感神経性血管拡張神経の興奮により骨格筋の血管が
拡張し,血液がより多く供給され、その運動を行うためにつごうのよい働きを果たす、 最高血圧を変
動させる主な要因としては、①心拍出量,拍出速度、②動脈の弾性があげられる、最低血圧は主として、
①血流の末梢抵抗、②動脈の弾性により変動する。すなわち、血管運動神経による血管の収縮・拡張は
主として最低血圧に反映されることになる。
循環に関する反射
1)頚動脈洞反射,大動脈反射
頚動脈洞、および大動脈弓には圧受容器が存在し、そこで血圧の上昇を感受すると血管運動中枢、心
臓中枢を介して血圧を低下させるように働く。すなわち、心拍出量が減少し、血管が拡張する。
2)ベインブリッジ反射
静脈内に急速に血液を注入して、静派還流量を増加させると心拍数が増加する。この反射ははじめか
ら心拍数が多いときは現れにくい。また、その生理的意義もあまり明確ではない。
3)呼吸性不整脈
健康な成人では、心拍数が呼吸周期とともに変動する。吸急時には心拍が遅く,呼急時に速くなる。
吸急により肺が伸展されると肺の伸展受容器から迷走神経を介して阪急中枢が抑制される(ヘーリン
グ・ブロイエル反射)、同時に心臓抑制中枢も抑制されるので迷走神経のインパルスが減少し、心拍数
が増大する。呼急時にはこの抑制がとれるので心拍数が減少する。この呼吸によって生ずる不整脈は洞
性不整脈とも呼ばれ,正常な現象である。
ヘーリング・ブロイエル反射
呼吸をしているとき息を吸い続けていると、息を吐きたくなる。逆に息を吐き続けてい
ると息を吸いたくなる。これは呼吸反射によるものであり、ヘーリング・ブロイエル反射
という。
これは、肺の広がりを感知する神経が存在するためである。肺が広がって息を吸うと吸
息中枢は抑制的に、吐息中枢は抑制的に働く。肺が縮まって息をはくとこの反射は吸息時
の逆に働く。
過換気症候群
話題の過換気症候群に対する紙袋再吸入法(paper bag rebreathing 法以下 PBR 法)な
んですが、うちの会社としては、3年ぐらい前にPBR法は低酸素症の危険性があり、ま
た CO2 再吸入効果は大したことはないので行わない。まず、ゆっくり呼吸させ落ち着か
せることを優先する。それでも落ち着かない時は、リザーバー付きの酸素マスクで低濃度
の酸素を流す。ということで統一しました。このことは、各病院にも知らせました。その
為、病院でも PBR 法は行われなくなりましたね。
…一部の病院では医師や看護師が頻
繁に変わるので、時々行われるようですが…。しかし、救急医療ジャーナルや他のアメリ
カのテキストには、PBR 法は効果がないようなことが書かれていますが、日本のテキスト
の多くは過換気症候群に対して PBR 法が推奨されているんですよね。
救急医療ジャーナル 1998 年第 6 巻第 4 号(通巻第 32 号)
JEMS REPORT
--------------------------------------------------------過換気状態の患者に酸素は必要か?
酸索投与は過換気状態の患者に有害か?
答えはどちらもノーである。病態生理を思い出してみればわかるように、過換気に伴う
症状に対して、大量の酸素投与を行う必要はまったくない。
しかし、過換気状態の患者がますます不安になり混乱するのは、脳が低酸素状態になる
ためであることを考えると、低流量の酸素投与(鼻力ニューレで 4∼6L/分、あるいは簡
単なマスクで 6L/分)を行うことによって、患者の混乱が鎮まり、患者は状態をより理解
し、協力が得られやすくなるかもしれない。また、過換気状態の原因が重篤疾患である疑
いがある場合、酸素投与を実施しておけば、患者に必要な酸素を投与しなかったという
ことにならずにすむ。
紙袋は必要か?
患者に呼吸を指導し、おそらく酸素投与を開始したことと思うが、それでは紙袋はどう
なったのか?正直にいえば、紙袋の最善の使用法は、あなたがためていた包み紙や生ゴミ
を入れることだ。確かに、過換気状態の患者は紙袋で呼吸させることになっており、過換
気状態の初期には、自分自身の CO2 を再呼吸するのがよいかもしれない。しかし、救急
隊が現場に到着する頃には、紙袋は役に立たなくなってしまっている。
過換気状態が数分間続けば、紙袋の中に吐かれる二酸化炭素はほとんどなくなる。その
ため、紙袋で患者を治療するには、患者を説得して治療するのとちょうど同じくらいの時
間が必要になる。さらに、患者が他の重大な疾患である危検性、また、どんな袋でも窒息
死の危険性があることを考えると、紙袋はよい方法とはいえない。
PBR法には低酸素症の危険性があり、また CO2 再吸入効果は大したことはない。
PBR法で用いられるバック(袋)は教科書的には3∼5Lの容量のものとされていま
す。患者さんの酸素消費量が 200ml/分、CO2 排出量が 160ml/分、バック容量を5Lと
します。バック中の酸素は約 1000ml ですから、2.5 分PBRを行いますと約 500ml の酸
素が消費されて、バック中の酸素濃度は約 10%となります。すなわちこれを吸うと低酸素
症に陥る危険性があります。
2.5 分後までに患者さんが排出する CO2 の総量は 400ml で、これがバック中に均等に
拡がりますとバック中の CO2 濃度は 0.8%位しか上がりません。これをミリ水銀柱になお
しますと (760-47)x 0.008= 6 mmHg。なお水蒸気圧を 47mmHg と仮定しました。
患者さんの動脈血中の CO2 分圧(PaCO2)が 30mmHg 以下に低下している時、上記の
ガスを吸入しても 6, 7 mmHg 位しか PaCO2 は上昇しないことになります。低酸素の危
険性の少ない1分後位だと 3, 4 mmHg のみ。
あと、以下のような要因があります。
・紙袋の容量を小さくすると、CO2 の再吸入量は増すが、吸入酸素濃度はますます下がる。
・口元で漏れがある場合、吸入酸素濃度は下がりにくいが、CO2 再吸入量も減る。
・バックの中のガス濃度は均一ではなくて、たぶん吸入 CO2 濃度は今回の計算よりも高
いが、吸入酸素濃度はもっと低い。
・余談ですが、むかし術後患者さんの深呼吸を促すために CO2 ガスを吸入させたことが
ありました(欧米で結構ポピュラーに)。あの CO2 ガスの濃度が確か 2-3%位だったよ
うに思います。マスクは顔に密着させないので、吸入 CO2 濃度はもっと低い。
・ 言い忘れましたが空気中の CO2 濃度は 0.08%位だったと思います(地球の温暖化に関
係があるわけですが。)
最後に、教科書的には以下のような注意がされることがあります。
・5分以上PBRをしない。
・はじめにバックを純酸素で満たしてからPBRを行わせる。
・酸素吸入をしながら(経鼻カニュラなどで)PBRをする。
・ 今頃だったら、パルスオキシメーターをつけてPBRをさせなさいと言う人もあるか
も。
Paper Bag Rebreathing 法における吸入気 CO2 及び O2 平均濃度の分析
愛媛医学,14,200-205,1995
越智元郎,他:
過換気症候群の対症療法の 1 つである paper bag rebreathing(PBR)法によって再吸
入される CO2 平均濃度(FICO2),FIO2 と bag 容量(Vbag)との関連性について,コンピ
ュ−タ・シミュレ−ションによる分析を試みた。Bag の一端から呼気を吹き込み,ここか
ら再吸入する。また,反対側の一端に開口があり,空気が出入りできるものとした。死腔
付加によって CO2 排出量,O2 消費量,呼吸商,一回換気量(TV)及び呼吸回数は変化せず,
一方,吸入された CO2 は死腔部分のそれを除き全量肺循環に取り込まれると仮定した。こ
の結果,再呼吸開始 n 呼吸目の FICO2 と FIO2 を,Vbag の TV に対する比および n の関
数で表現することができた。死腔負荷後の FICO2 はおよそ 10 呼吸でプラト−に達し,そ
の濃度は Vbag と TV が等しい時に高値を示した。Vbag または TV が増加すると FICO2
は低下し,TV =500 ml の時の FICO2 が約 4.3%であったのに対し,2000 ml 以上では 2%
程度にとどまった。FIO2 においては,Vbag と TV が等しい時 FIO2 は直線的に下降し,4
呼吸目位には 10%以下に低下した。Vbag が 2000 ml 以上の時 FIO2 の低下は 17%までで
あったが,同 1000 ml 以下では 15%を下回った。結論として,過換気症候群に対する PBR
では CO2 蓄積効果が不十分であったり,hypoxia を来たす危険性があり,CO2 や O2 濃度の
モニタ−や O2 吸入などの配慮が必要と考えられた。
酸素マスク
普通の酸素マスクやネーゼルカニューレなどの低流量式とは純酸素を流し、患者の口鼻
の周囲にて空気と混合させ、結果として吸入酸素濃度を上げようとするものです。
低流量式の酸素マスクは鼻腔周囲の穴が小さく開けてあります。これはマスク内の酸素
を逃がさないようにするためであり、5∼6 リッターで 40∼50%、
7∼8 リッターで 50∼60%、
9∼10 リッターで 60∼70%の吸入酸素濃度が得られるといわれています。
マスク内で純酸素と空気とを混合させるため、5 リッター以下の酸素流量では吸入気の酸
素濃度が上がらず、40%以上の酸素吸入が必要なときには、5 リッター以上の酸素流量で使
用するそうです。
但し 5 リッター以上の流量を鼻腔カニューレで流すと不快感が増加し、鼻腔内が乾燥す
るため、5 リッター以上流したいときにはマスクを使用するのが原則です。
酸素療法とは
呼吸器疾患、心疾患、ショックなどによって組織の正常酸素飽和力が直接または間接的
に妨げられておこる酸素不足を専用の器具を使って酸素投与する治療方法
目的
酸素を投与することにより、PaO2 及び PaCO2 を正常レベルに改善し、身体・精神機能を
維持する。
PaO2低下による症状
50Torr 以下:判断力の低下、腎臓の機能障害
40Torr 以下:心不全
30Torr 以下:意識障害
酸素を補うことで心肺にかかる仕事量を軽減させる
酸素消費量が正常より多くなる高熱患者や手術後患者に酸素を投与し、呼吸の正常化を
図る
適応
呼吸不全(PaO2 60Torr 以下)のとき
肺胞低換気によるもの
酸素運搬能力低下によるもの
「圧すだけの蘇生」<気道確保と人工呼吸を行わない救急蘇生法の可能性>
京都府立医科大学麻酔学教室
* Institute of Critical Care Medicine in Palm Springs, California
福井道彦、唐万春*、佐藤陽二*、藤田和子、今井啓人、小松るりこ、田中義文 麻酔
第
46 巻第 3 号, 1997(5/21/97、eml 3515 より)
要旨
「初期心肺蘇生の成功に気道確保と人工呼吸は必須でない」との実験報告が独立に複数
の研究者からなされている。その際のガス交換を中心に、胸部圧迫のみを行う蘇生法の可
能性 を 文献 的 に検 討 した 。 気道 確 保: 心 停止 後 に生 じ る喘 ぎ 様の 自 発呼 吸(spontaneous
gasping)により気道が開放することが明らかとなった。換気:胸部圧迫と gasping による
換気量はそれぞれ最大で 100ml・kg-1・min-1、150ml・kg-1・min-1 であった。蘇生中、動脈
血は高炭酸ガスを示すが酸素分圧は生理的レベルに保たれていた。結論:前胸部圧迫のみ
の蘇生法は、口対口呼吸に伴う感染の危険と違和感を除外でき、治療の早期開始を促す有
用な手技である。
はじめに
蘇生治療は心停止後すみやかに目撃者により開始される必要性から、気道確保(A)、人工
呼吸(B)、前胸部圧迫(C)を「蘇生の ABC」として一般に普及させる活動が 30 年来続けられ
てきた。しかし、長年の普及努力にも関わらず心停止患者の社会復帰率は低いままであり、
問題点の一つに口対口呼吸に伴う感染の危険と違和感が蘇生開始を躊躇させていることが
指摘されている(1)。この報告を受けて、蘇生の初期治療から人工呼吸を除外した実験的研
究が複数の独立した研究者により行われ、
「 心肺蘇生の初期処置において人工呼吸は必須で
はない」との報告がなされている。本稿では、これらの報告とわれわれが行った実験結果
をもとに、「圧すだけの蘇生法」の換気能力を検証しその可能性を探りたい。
人工呼吸を行わない蘇生では、表 1 に示す様に、炭酸ガス分圧の上昇をみるものの蘇生
率は概ね従来法と同等であった。蘇生率が低かった報告に Idris ら(4)とわれわれの実験
(9)がある。前者では、従来法の群にのみ酸素投与がなされている上に、心停止前に筋弛緩
薬が投与され心停止中のガス交換を補助する喘ぎ様自発呼吸 (spontaneous gasping)が抑
制されている。後者の実験は、人工呼吸を行わない蘇生中の酸素投与の影響を調べており、
酸素投与が行われないと蘇生率が低下することを示している。これら二つの実験は、圧す
だけの蘇生法を考える際には、蘇生中の gasping と酸素投与の影響も含めて検討する必要
があることを示している。以下では、まず gasping に関する知見を紹介し、気道確保・人
工呼吸の手技自体が蘇生に及ぼす効果、動脈血ガスと蘇生成否の関係について概説する。
Gasping
gasping は、脳幹部の低酸素により引き起こされる換気運動で、急速な吸気と緩徐な呼
気を特徴とし、正常呼吸と比べ周期・大きさともに不規則である(10), (11)。また、gasping
は生命の誕生と終わりに観察される普遍的な反応として知られ、心停止直後であれば全て
の患者に出現すると考えられる。図 1 は、ブタで測定した従来法による心肺蘇生中の循
環・換気変化である。gasping の発生は、食道内圧を低下させ陽圧呼吸の呼気相であるに
も関わらず短時間の吸気を形成している。この大きな胸腔内陰圧は循環にも影響し、静脈
還流増加や血流の発生も期待できる。心停止後 4 分間放置したブタの左心室容量は、コン
ダクタンス法による測定で gasping に伴い 1ml・kg ー 1 と正常心の一回拍出量に近い変化を
示した(12)。 また gasping 中には、咽頭の神経筋興奮が起こり上気道が開放することも
指摘されている(13),(14),(15)。乳児では、gasping を引き金に無呼吸心停止状態から自
然回復する「autoresuscitation」の作用や(15), (16)、一般の心停止 患者でも gasping
が 観 察 さ れ る と 蘇 生 予 後 が 良 好 で あ る こ と (17) な ど が 報 告 さ れ て い る 。 心 停 止 中 の
gasping の働きには、気道保持、換気、血流の発生などがあり、蘇生に有利な反射である
と考えられる(18)。
気道確保(Airway protection)
表 1 の結果は、心停止において上気道閉塞が必発ではないことを示している。心停止患
者における気道確保の必要性は、重度意識障害患者で観察される気道閉塞をその根拠とし
ている。機序として舌根沈下(19)、軟口蓋と上咽頭の間で生じる閉塞(20)が指摘されてき
たが、現在でも総て明らかになったとはいえない状況にある(21)。 表 1 の実験は、意識障
害の背景なしに突然心停止が生じた場合と考えられ、この様な条件での報告は過去に見あ
たらない。
気道確保を行わない心停止ラットにおいて、gasping は、首の後屈と下顎・舌を大きく
動かす開口運動を起こし気道を開放した (8)。一方で、気道確保を全く行わないと動脈血
炭酸ガス分圧は上昇し(8)、gasping の気道開放が不確実なことも示唆された。筋弛緩薬に
より gasping を抑制した救急蘇生では、気道確保の有無が蘇生率に影響していることも(4),
(5)、gasping が気道保持にはたす役割が大きいことを示している。
現在気道確保の手技として、 Basic Life Support (BLS)では頭部後屈・下顎挙上などが
用いられ、Advanced Life Support (ALS)においては、誤嚥の回避とそれに続く陽圧呼吸を
確実にするため気管内挿管が用いられている(22), (23), (24)。しかし、人工呼吸を前提
としない場合、その接続口としての気管チューブの意義は減少し、誤嚥の発生も上部消化
管への送気量減少などから頻度の低減が予想される。また気管内挿管は、熟達者でも、3
分以上を要することも多く(25)、今回の実験結果からは、ALS においても気管内挿管にこ
だわらず、より簡便な気道確保の後、前胸部圧迫を中断しない蘇生法が有用と考えられる。
人工呼吸
(Breathing)
陽圧換気以外で救急蘇生中にガス交換を生じる源としては、 gasping と胸部圧迫が考え
られる。これら換気の動力源は、図 1 に示した通り救急蘇生中互いに干渉し合うと考えら
れる。ブタを用いた実験では(7)、無治療の心停止状態において gasping のみで約 150 ml・
kg-1・min-1 を生じたが、救急蘇生が開始された直後には 130 ml・kg-1・min-1 に、更に 8 分
後には 40 ml・kg-1・min-1 に低下した。この実験で筋弛緩薬の前処置により gasping の影響
を除外し胸部圧迫のみによる換気量を測定すると、蘇生開始直後は約 80 ml・ kg-1・min-1
であったが、8 分間の蘇生により 40 ml・kg-1・min-1 に低下した。犬を用いた実験では、14
分間圧すだけの蘇生を行っても、換気量は約 200 ml・kg-1・min-1 で一定に保たれていたと
の報告もある(3)。前胸部圧迫に伴う吸気は胸郭 recoil により生じると考えられ、蘇生に
伴う recoil の損傷が、吸気量を低下させることになる。その程度は、胸部圧迫の強さと胸
郭の弾性に左右され、使用した動物の大きさや種類の影響を受けると考えられる。
前胸部圧迫による一回換気量は、約 1ml・kg-1 と解剖学的死腔量以下にまで低下したが、
その頻度が 1-2Hz と高頻度換気(HFV)であることから、微少な一回換気量での酸素化に成功
したと考えられる(26), (27), (28)。しかし、HFV においても炭酸ガスの排出は、依然と
して一回換気量の大きさに左右されることが知られており(29)、3-4 倍の一回換気量を持
つ gasping の発生が動脈血炭酸ガス分圧を低下させたと考えられる(7)。
これらの結果からは、蘇生を成功させるのに必要な換気量が、比較的少量でもよいこと
が分かる。その換気量は胸郭 recoil が保たれている場合、胸部圧迫のみにて生み出せ、軽
度 の recoil 損 傷 は 、 gasping に よ っ て 代 償 可 能 で あ る 。 近 年 紹 介 さ れ た active
compression decompression device(30), (31)等、強制的胸郭拡張を行う手技では、胸郭
recoil の損傷に関わりなく能動的に吸気を生じさせられると考えられ、換気面からの検討
が期待される。
蘇生の成否と炭酸ガス・酸素分圧
動脈血炭酸ガス分圧を人為的に上昇させた蘇生実験において、動脈血分圧が 200mmHg を
こえてはじめて心蘇生に影響することが、ラットと(32)ブタで(33)明らかにされた。高炭
酸ガスは、直接心筋収縮力を低下させると考えられ(34), (35), (36)、心筋組織での測定
では炭酸ガス分圧 350mmHg を境界値として心蘇生の成否が分かれることが示されている
(33), (37)。蘇生中の静脈血炭酸ガス分圧の上昇は以前から注目されてきたが(38), (39)、
この変化からは、成否を予測できないことも示された(37)。図 2 は、心肺蘇生中の部位別
炭酸ガス分圧の状態をまとめたものである。心筋で低酸素に伴い増加した二酸化炭素は、
低灌流のために循環への洗い出しがわるく、組織と血液の間で大きな分圧格差を生じるこ
とになる。表 1 に示された程度の動脈血炭酸ガス分圧上昇は、それ自体心筋レベルの変化
に与える影響が極めて小さいと考えられる。
一方、圧すだけの蘇生において上気道への酸素投与は蘇生率を向上させ、酸素投与され
たラットは 10 頭中 9 頭蘇生し、大気を吸入した 10 頭は全て死亡した(9)。この実験におけ
る救急蘇生中の動脈血酸素解離曲線(図 3)は、P50 が 67mmHg と高炭酸ガスによるアシドー
シスのために大きく右方移動していた。更に、肺胞炭酸ガス分圧の上昇は、肺胞酸素分圧
の低下を招くと考えられる。従って、高炭酸ガスの状態で動脈血の酸素化を図るためには、
より高い吸入酸素濃度が必要になる。大動物(ブタ)では、大気を吸入させても一定の蘇生
率が得られているが(表 1)、臨床応用を考えると、上気道への酸素投与は、可能なかぎり
速やかに行うことが勧められよう。
圧すだけの救急蘇生法の可能性
本稿で紹介した実験報告は、口対口呼吸法が有する問題を打開する一つの糸口を示して
いる。ここから導き出される蘇生の開始手順は、
「肩枕の挿入などすみやかに行える気道保
持ののち、ひたすら前胸部圧迫を続ける」という単純で一般市民による治療開始を促しや
すいものであると考える。
今後検討を要する問題に、圧すだけの蘇生法を用いて BLS が開始された際、それに続く
ALS では、どの時点で何を指標に気管内挿管・人工呼吸を開始するのかを明確にする必要
がある。 本邦における DOA 患者の多くは1時間に及ぶ救急蘇生を受けており(40)、今回取
り上げた実験研究の 3 ー 4 倍の蘇生時間になっている。ALS の開始が遅れた場合、長時間に
わたる圧すだけの蘇生法の効果・影響も検討が必要であろう。
「初期救急蘇生の成功に人工呼吸は必須でない」という複数の実験報告は、口対口呼吸
を除外し蘇生開始手順を簡略化して、一般市民による早期蘇生開始を促すことが期待され
る。
と
かく
兎 に角 、胸を圧せ
SOS-KANTO 長尾 建ら(駿河台日本大学病院救命救急 センター) Lancet 2007;369:920-926
蘇生は如何にあるべきか?という研究で、心臓マッサージ(心マ)のみと、気道確保・
人工呼吸( mouth to mouth)を含めた教科書的な蘇生を比較している。
by−stander が蘇生を開始することで、神経学的予後は改善するのは当たり前として、
教科書的な蘇生と心マのみと較べても、予後に大きな違いが見られないばかりか、心室頻
拍(VT/pulseless VT)オッズ比 1.9[95% CI 1.0-3.5]、無呼吸オッズ比 2.0[1.1-3.7]のよ
うな場合でも、【心マのみ】の方が神経学的予後がよかったという部分的な解析結果が得
られている。層別化した場合は、疑陽性の結果をもたらす危険もあるので、改めての検証
が必要となるが、得られた結論は、
『兎に角、早く、胸を圧せ』と言うことになる。4 分以
内に蘇生を開始した場合でも、心マのみの方が良いオッズ比 2.1[1.1-4.0]を得ている。
胸郭を圧すだけでも、ある程度の換気は行われる。一方で気道内圧を高め縦隔の内圧が
上がると、全身からの還流が阻害され心拍出量が減少し、末梢のうっ血も来しやすい可能
性も考えられる。
専門医の資格に蘇生法の習得は必要なかったのだが、循環器学会専門医も内科認定医も
それを要求するようになっていて、足の裏の米粒をとるにも色々手間暇が掛かるようにな
りつつあるが、その教科書が書き換えられるネタになるような研究である。
また、SARS などの事例では口−口呼吸で感染例もある。また、気道確保のために下顎の
挙上が必要だが、頚椎損傷の患者かどうか、周囲の人には即座には判断できない。そうい
た意味では、善意の一般市民に強いる事も躊躇われるので、今回の「胸だけ」というのは、
良い教訓を得たと言える。
シンシナティ病院前脳卒中スケール
「シンシナティ病院前脳卒中スケール」は開発された地域にちなんで命名されており,
たった3つの身体所見で高率に脳卒中患者を同定できる。
1.顔面弛緩(患者に,笑い顔をする,あるいは歯を見せるよう指示する)
2.上肢の浮動(目を閉じて腕をまっすぐ差し伸ばすよう指示する)
3.言語障害(患者に, You can
t teach
an old dog new tricks
と言わせる)
表 1 を参照。
救急医や ED(救急部門・救急部あるいは救急外来など)の看護師を含めた救急従者は,
1分以内にシンシナティ病院前脳卒中スケールで患者を評価することができる。これら3
つの徴候のうち「新たに」1つでも認められれば虚血性脳卒中である確率は 72%であり,
3つすべてが認められれば 85%以上の陽性的中率である。ただちにメディカルコントロー
ル担当医師,収容予定 ED に連絡を取り、病院到着前情報提供をする。これらの患者は迅
速な病院搬送を必要とする。
ロサンゼルス病院前脳卒中スクリーン
ロサンゼルス病院前脳卒中スクリーン(LAPSS)は,急性脳卒中についてさらに厳密な
検査法である。 LAPSS は年齢、痙攣の既往歴,症状持続時間,血糖値、病前の歩行能力
に問題がないこととう基準をシンシナティ病院前脳卒中スケールの3つの身体所見のうち
の2つに加えている。当然のことながら LAPSS による陽性的中率はより高くなり,7つ
の基準を満たす患者が急性脳卒中である確率は 97%である。表 1 を参照。
即時搬送(load and go)
症状発現から「ED 到着までの時間は最短」にしなければならない。これは EMS 要員の
責務である。急性脳卒中は
即時搬送
の適応がある。脳卒中の特別な治療は適切な医療
機関の ED でしかできないため,現場活動時間の延長は最終的な治療を遅らせ,場合によ
っては治療法を制限することになる。さらなる患者評価や補助療法は病院へ向かう途中や
ED において続ければよい(訳注:1oad and go;受傷機転やバイタルサインから判断して
現場活動時間を短縮し,すくに病院への搬送に移ること)。
脳卒中の徴候の発症時間確定
もし可能なら,病院前救護者は正確な脳卒中の徴候や症状が発現した時間を確定すべき
である。正確な発現時間は線溶療法の適応を評価するさいに必要となる。発症からの時間
を
ゼロ
と見なした時間から,すべての評価と治療が開始される。
早い情報提供があれば,ED 従事者は搬入が近づいている脳卒中患者に対して準備がで
き,急性脳卒中治療の適応の有無を判断する時間を短縮できる。
心臓喘息
心不全には右心不全と左心不全とがあり、前者では主として静脈系から心臓への血液の
戻りが悪くなるため静脈の怒張や静脈圧上昇、肝臓のうっ血、浮腫、腹水などが認められ
ます。後者では肺のうっ血が主症状で、呼吸困難、起座呼吸(呼吸が苦しくなり寝ていら
れなくなって、起き上がり前かがみに座って、大きく肩で息をする状態)、夜間の発作性呼
吸困難、急性肺水腫などが認められます。
心臓喘息とは重篤な左心不全により咳、痰、喘鳴(呼吸をするとゼーゼーあるいはヒュ
ーヒューと音がすること)を伴う呼吸困難発作が起こり、あたかも気管支喘息の発作のよ
うな喘鳴を伴う状態を指します。気道の狭窄は気管支の攣縮が著しいときに起こり、気管
支のうっ血、気管支粘膜の浮腫、分泌液増加がかかわり、気管支喘息と鑑別のむずかしい
ことがあります。
気管支からくる呼吸
困難息が吐けなくなります。
心臓からくる呼吸困難
息が吸えなくなります。
ラ音を聴取する。左心不全に伴うものは、通常両側肺底部に始まる湿性ラ音で、心不全の
増悪とともに全肺野で聞かれるようになる。高度の肺水腫では気管支狭窄音を聴取するこ
ともまれではなく、気管支喘息様であり
心臓喘息
と呼ばれることもある。
先天性耳瘻孔
耳の回りの皮膚に小さな穴があいてて、そのまま過ごされる場合もあれば感染を起こし
てそこが膨れたり痛くなることがあります。こういう疾患をいいます。
原因ですが母親の胎内の発生の過程で、耳たぶとその周囲は 6 つの原器が合わさって出
来るのですが、ときどき完全に閉鎖せずに発生を終えて、そのまま出産する場合、この閉
鎖しない部分が先天性耳瘻孔として、穴として残ります。けっこう多いのですが、治療の
対象になるのは要するにこれが感染するかしないかなのです。
しかも瘻は単純な穴から複雑に迷路のように皮下とか結合組織に入り込んで、長くなっ
てる人から様々です。できる位置とか長さも人によって違います。
この先天性耳瘻孔をもってる方はけっこうパーセンテージにして多いのです。遺伝形式
は解っていませんが、家族でも多い家系はあります。だからといっても問題にはならない
でしょう。小さなものから含めると 100 人に数人はもってるといいます。
ただ病気として扱うかどうかは『感染するかしないか』穴からウミが出るかどうか何で
す。まず一般的に、この穴に感染を起こすとそこが腫れたり、痛みを帯びたりそこから膿
が出たりします。こういう時には下手にいじらずに、耳鼻科、もしくは形成外科へ受診な
さってください。たいてい耳鼻科でも、其の際抗生物質を投与すると大抵一旦はウミは治
ります。
こうやって手術しないまま一生を過ごす人もいます。
どういう町の耳鼻科でも、一応(もちろん形成外科でも)手術すべきかは判断可能なの
で一応行かれて見たらいかがでしょうか?耳鼻科でも形成外科でもいいでしょう。そこか
ら手術対象なら紹介してくださると思います。
手術適応としては『穴があいてるだけでは手術になりません』のですね。要するに年に
何度もこういった感染を起こす人で、けっこう子供に多いけど大人にもあり、困られる方
が手術適応です。
やはり保存的に治療するより『先天性耳瘻孔ごとごっそりとってしまう』方がいいと主
治医の先生がご判断(あるいはご本人がご希望)した場合です。
で手術は形成外科か耳鼻科で行いますが、そういうわけでいろいろなパターンがあるの
です。感染状態を(できたら膿が出てる状態で)実際形成外科や耳鼻科へ行かれて診察医
の先生に見ていただくことが大切でしょう。
この 救急 の炎 症の 際は 抗生 物質 と消 炎鎮 痛剤 で 一旦 炎症 を止 めた 方が いい ので 一応形
成外科や一般耳鼻科で応急処置(投薬)はしてくださるでしょう。
先天性耳瘻孔は実は穴ですが、そのまま感染のときは実際抗生物質だけで押さえてて、
感染してないとき手術して除く場合が多いです。
感染してるとき、余計にいじくったり何度も切開すると患部が回りに癒着して、手術で
取り除く時に難しくなり、こういった方には『感染の時はなるべく触らずに耳鼻科にいら
して適切な指示を仰いでください。』と言っています。外科で切開をされる方もいますが。
この疾患は切開は上の理由でしていただきたくない疾患です。なお手術については耳鼻科
もしくは形成外科で今後の事を相談されたらいいと思っています。今から感染しないこと
もあります。手術は何度もこういった感染を繰り返し困っている場合によるのです。
泳げる人の溺死
生理学の研究が進み分かったことの中から、 水泳中<ダイビング中>に溺れるはずがない
と思われていた
泳げる人の溺死
事故の主な原因について述べます。
知っておくと、予防し避けることも、抵抗力<免疫力とも呼ばれる>を付けることもでき
ます。
錐体内出血
1. 呼吸のタイミングを誤って、鼻から水を吸い咳き込むと、耳管を水がピストン運動
をして、内耳に近い脳の錐体に出血が起る。
2. 耳鳴り・吐き気・目眩を感じ泳ぎが上手な人でも、
背の立つところで、倒れ
て水没し溺れる。
気管内吸水ショック
1. 体温よりも低い温度の水を吸い込むショックで心臓の抑制反射が起り 10∼20 秒
で急速に意識が消失し沈み、周囲から気付かれないことが多い。
2. 30∼40 秒後に意識が戻るが、意識が戻る前に水中であえぎ呼吸が始まり、水を吸い
込んで溺れる。
ノーパニック症候群
前兆・パニック・吸気へのもがき無しに、急速に意識を失う症候群
過呼吸型
素潜りの距離と時間を延ばそうと深呼吸を繰返すと、ヒトが息苦しさを感じる炭酸ガス
濃度が低くなりすぎ、酸素濃度が低下しても、息苦しさを感じずに意識が消失する。
間欠呼吸型
息堪え後 の爆発的な呼吸で、脳への血流が減少して失神する。
冷・水圧刺激によるショック型
体温よりも低い水に浸かると水は空気の約200倍体熱を奪うことから、体温低下を防
ごうと体表面の血管が収縮し<水圧も加わって>心臓への環流量が増大することが引
き金。ショックは水へ入った直後の 60秒以内に起る。
温水プールでも低体温は起きる
ヒトが水中へ入ると皮膚と水との間の熱抵抗は、ほとんど無くなり、体熱が対流と熱伝
導で 空気中の約 200 倍水に奪われる。
「冷さ・温かさ」感覚を感じる冷点と温点の特徴
1.冷点は、25℃付近を中心に神経インパルスを発射し体温を高める反射を起す。
2.温点は、43℃を頂点に神経インパルスを発射し、体温を下げる反射を起します。
3.個人差がありますが、28℃∼32℃の範囲内では、両点が拮抗的に働き「冷さ・温
かさ」をさほど感じません。
4.叉、大気中では代謝による産熱と放散によるバランスが保たれ、裸でいても「寒くも、
暑くも」感じません。
5.ところが、同じ温度の水中へ入ると冷点は「冷たい」とは感じないが 、空気中の約2
00倍体熱が水に奪われて体温が急速に低下。
6.これを循環血液温度を感じる脳内のセンサーでは感じ、
「寒さ」を意識でき、体温を高
める反射が起ります。
7.例えば、体温より1℃冷たい35℃の風呂へ入ると、冷点は冷たさを感じませんが、
−165℃の冷凍庫へ入ったのと同じ速度で、体温が35℃へ低下しそうになるので、
我慢できなくなります。
水中の体温維持
奪われる体熱を筋肉運動で発生する熱で補なおうとしても、
水泳は体重を支えない事から、運動に加わる筋肉群が少ない軽運動で、発生した熱
は、直ちに水に奪われ、よほど激しく泳がないと体温を高めることは出来ません。
1.我慢すると栄養素を化学的酸化による燃焼で、体温を高めるための代謝が起り、冷た
さへの適応力は高まり、食べたエネルギーの消費に役立ちますが、
2.脂肪組織の熱伝導率は、筋肉組織等の約半分で血流量も少ない ことから、大切な内臓
のあるお腹の温度低下を防ぐために皮下脂肪が厚く付きます。
体温低下による障害
1. 体温が35℃に下ると感覚が鈍くなり震えが起り、自分がどこで何をしているのか分か
らなくり、
2.33℃に下がると記憶喪失が起り、
3.30∼31℃で、意識を失い呼吸が止り、いわゆる
凍死 に至る!
と言われ
ています。30∼31℃は、一般的な温水プールの温度です。
水泳中 <ダイビング中>の予防法と救急法
1.水泳中は口から息を吸い鼻から吐く。耳栓をするよりも、鼻栓の方が有効と水泳医学
百科には書いてありますが マスクを使う方がもっと効果的
2.鼻から水を吸い気分が悪くなったら、水から出る。
3.平衡感覚が失調して、ふらついている人を見たら、水から出させる。
4. 没後3∼4分以内なら、人工呼吸で助かるので、異常な状態で沈んでいるのを発見す
るのが、 生死を分ける。
4.1 ブラックアウトとハイパーベンチレーション
ここでは、スキンダイビングにおけるもっとも危険な障害である水中での『ブラックア
ウト(失神)』と、これに大きく関連する『ハイパーベンチレーション(過度の深呼吸)』
について解説します。
1.ブラックアウト
脳は、常時大量の酸素を消費しており、その量は、身体全体の酸素消費量の5分の1以
上に達するともされています。また、筋肉などとは違い、組織内に酸素を蓄積することも
できなければ、一時的に酸素負債を作ることもできませんので、何らかの原因で血液中の
酸素濃度(酸素分圧)が限界値より低下すると、たちどころに意識を失います。
このような、主として酸素欠乏が原因となって起きる失神を、『ブラックアウト
(blackout)』と呼びます。ブラックアウトの兆候は、一般に、激しい動悸、耳鳴り、視
野の狭窄などといわれていますが、とくにスキンダイビングの場合、必ずしもこれらの兆
候が確実に感じられるとも限らず、突然ブラックアウトが起こることもあります。
ブラックアウトが起こると、全身の筋肉の緊張が緩むために失禁などが起こりますが、
息こらえ中に気道を塞いでいた筋肉の緊張も解けるため、水中でブラックアウトが起こる
と、気管や肺に水が入り、運良くただちに救助された場合でも、蘇生できなかったり後遺
障害が残ったりする場合もあります。
なお、ブラックアウトの発生後も酸素欠乏の状態が続くと、全身の筋肉が痙攣した後、
最終的に死に至ります。
*温水プールでのブラックアウトについて
一般に、呼吸停止してから呼吸再開までの時間が5分以内であれば、適切な蘇生術によ
って、比較的容易に蘇生することが可能であるとされています。しかし、温水プールでブ
ラックアウトを起こした場合、直ちに水中から引き上げられないと、30℃前後というか
なり高い水温の影響で、脳細胞の破壊が急速に進行し、比較的短時間のうちに蘇生術が施
されても、蘇生が不可能となるケースが数多く報告されています。
したがって、温水プールでの練習では、とくにブラックアウトを起こさないよう注意す
るとともに、必ず監視者を置くことが重要といえます。また、風呂で息こらえの練習をす
ることが、いかに危険かということもお分かりいただけると思います。
同様のことは、真夏の沖縄など、海水温の高い場所でも起こる可能性があるわけですが、
逆に、海水温が比較的低い場合は、救助されるまで長時間水中に沈んでいたケースでも、
脳細胞の破壊が抑えられ、蘇生に成功したケースも報告されていますから、あきらめずに
蘇生術を施すことが必要です。
2.ハイパーベンチレーションとブラックアウト
スキンダイビングにある程度慣れてくると、より長時間潜水するため、潜行前に、意図
的に、あるいは無意識のうちに、速いピッチで深呼吸を繰り返すスキンダイバーが多数見
受けられます。この、速いピッチで繰り返される深呼吸を『ハイパーベンチレーション
(hyperventilation)』と呼びます。
たしかに、ハイパーベンチレーションには、より長時間の息こらえを可能とする要素も
あります。
人間の呼吸は、血液中の酸素や二酸化炭素の分圧を生体センサーが感知することで調節
されていますが、息苦しさの感覚は、主として二酸化炭素分圧によって支配されています。
ハイパーベンチレーションを行うと、血液中の二酸化炭素分圧は通常よりも低下します。
そして、この状態で息こらえを行うと、二酸化炭素分圧が増加して息苦しさを感じるまで
の時間は長くなり、より長時間の息こらえが可能となるわけです。ハイパーベンチレーシ
ョン行うと、軽い頭痛や眠気、あるいは手足がチクチクとする感覚などを感じることがあ
りますが、これは、血液中の二酸化炭素分圧が著しく減少したことによる副作用です。
しかし、血液中の酸素分圧は、通常、肺の中の酸素分圧よりわずかに低い値で平衡して
おり、ハイパーベンチレーションを行っても、ほとんど上昇しません。そのため、ハイパ
ーベンチレーションを行って長時間の息こらえを行った場合、血液中の酸素分圧が大きく
低下し、ブラックアウトが起こる危険性があります。
上に示した図は、血液中の酸素分圧と二酸化炭素分圧の変化を示したイメージ図です。
各々のグラフは、相対的な位置関係のみに意味があり、絶対量やグラフの形には意味を持
ちません。
さて、ここで、血液中の二酸化炭素分圧がある一定のレベル PCO2 L に達すると、ダイ
バーは息苦しさを感じ浮上を決断するものとします。
ハイパーベンチレーションを行わない場合の血液中の二酸化炭素分圧の変化を PCO2 N
であらわすと、時間Aが経過してダイバーが息苦しさを感じた時点では、血液中の酸素分
圧は PO2 LN となります。
つぎに、潜行前にハイパーベンチレーションを行った場合、血液中の二酸化炭素分圧は
PCO2 H のように、PCO2 N よりも低く推移します。したがって、ダイバーが息苦しさを感じ
るのは、時間Bが経過後となり、より長時間の息こらえが可能となります。
しかし、この時点での血液中の酸素分圧は PO2 LH まで低下しますので、仮に、PO2 LH が、
意識を保つために最低限必要な血液中の酸素分圧 PO2 LL よりも低くなった場合には、ブ
ラックアウトとなるわけです。
ただ、陸上での息こらえでは、酸素欠乏が徐々に進行するため、ブラックアウトに至る
までには、激しい動悸、耳鳴り、視野の狭窄などの兆候があることが普通です。そのため、
実際には、ブラックアウトが起こるまで自分の意思で息こらえを続けることは、口や鼻が
物理的に閉塞されていない限り、極めて難しいといえます。
しかし、実際の息こらえ潜水では、陸上での息こらえとは異なり、潜行・浮上に伴って
周囲の圧力が変化するため、もっと複雑な現象が生じます。
上の図は、水深15mまで息こらえ潜水を行ったときの、血液中の酸素分圧と二酸化炭
素分圧の変化を示したイメージ図です。図に示した数値は思考実験を行うための仮の数値
であり、実際の状況とは異なります。
1のグラフ(太線:酸素分圧、細線:二酸化炭素分圧)は、ハイパーベンチレーション
を行わない場合の例です。この例では、15秒間で水深15mまで潜行していますが、潜
行中は、水圧の増加に伴って、酸素分圧、二酸化炭素分圧ともに急激に上昇します。その
後、身体が酸素を消費し二酸化炭素を産生することにより、酸素分圧は低下し二酸化炭素
分圧は上昇します。
ところで、息苦しさの感覚が、主として二酸化炭素分圧によって支配されていると書き
ましたが、血液中の酸素分圧が通常よりも高い場合には、息苦しさを感じる二酸化炭素分
圧も、通常よりも高くなります。このことから、ある程度深くまで潜水すると、ダイバー
は、一時的に、いつまでも息こらえが続けていられるような幸福感を得ることになります。
しかし、それでも、やがて二酸化炭素分圧は息苦しさを感じるレベルまで上昇し、ダイ
バーは浮上を開始することになります。この例では、潜行開始後40秒を経過し、二酸化
炭素分圧が100mmHg に到達した時点で息苦しさを感じるとします。
ダイバーが浮上を開始すると、今度は、浮上に伴う水圧の減少によって、酸素分圧は急
激に低下します。しかし、同時に二酸化炭素分圧も低下しますので、浮上中も、それほど
息苦しさは強くなりません。そして、水面に到達したときには、酸素分圧が約65mmHg、
二酸化炭素分圧が約45mmHg となりますが、これはやや息苦しさを感じるものの、酸素分
圧は意識を保つために十分なレベルにあります。
さて、今度は2のグラフで、潜行前にハイパーベンチレーションを行ったケースを考え
ます。潜行開始時点での二酸化炭素分圧が、ハイパーベンチレーションを行わないときに
比べて低下していますので、二酸化炭素分圧が息苦しさを感じるレベルまで上昇するのは、
潜行開始80秒経過後と、ほぼ倍の時間となります。
そして、浮上後水面に到達したときには、酸素分圧は約30mmHg まで低下します。一般
に、酸素分圧が約40mmHg より低下するとブラックアウトの危険があるといわれています
ので、このケースでは、水面に到達する直前でブラックアウトが起こることになります。
このようなブラックアウトは、とくに水圧の減少率の大きい水深5m程度から水面の間
で起こることが多く、血液中の酸素分圧の低下があまりにも急激なため、酸素分圧の低下
よる兆候を感じる間もなくブラックアウトに至る場合がほとんどです。
ここで注意が必要なのは、水面到達時の二酸化炭素分圧は約45mmHg と、ハイパーベン
チレーションを行わない場合と同じであるため、ダイバーは、二酸化炭素分圧の増加によ
る息苦しさもあまり感じることがない、 ということです。
水中でブラックアウトが起こった場合、よほど迅速な救助が行われない限り、結果的に
溺死することになります。実際、スキンダイビングにおける死亡事故の大半は、ハイパー
ベンチレーションによるブラックアウトが原因である、 とする資料もあります。
また、ブラックアウトが、水面で呼吸を再開した直後に起こることもあります。発生の
メカニズムは浮上中のブラックアウトとまったく同じなのですが、水面へ浮上して呼吸を
再開しても、新たに取り込んだ酸素が血流によって脳へ届くまでには5秒近くの時間がか
かるといわれており、この間に脳の酸素欠乏が進行し、ブラックアウトが起こるのです。
水面到達後ということで、本人も周囲も油断しがちですので、注意が必要です。
なお、医学用語としては、ストレスやパニックによって起こる、浅くて速い呼吸のこと
を『ハイパーベンチレーション』と呼ぶことが普通です。この場合、日本語では『過換気
症候群』などと訳されますが、息こらえ潜水におけるハイパーベンチレーションとは別の
ものですので、注意が必要です。(ただし、体内で起こる生化学的反応は類似しています。)
−警 告−
重大な障害または死亡に結びつく危険性がありますので、けっして、潜行前にハイパー
ベンチレーションを行ってはなりません。
3.ブラックアウトを起こしやすいスキンダイバー
スキンダイビングに不慣れな初心者のうちは、まだ、それほど深くまで潜水することが
できないので、ブラックアウトを起こすことはあまりありません。
しかし、ある程度の経験を積んで上達過程にあるスキンダイバーは、しばしば自己の限
界を超えて潜水してしまう場合が見られるため、ブラックアウトを起こす危険性がもっと
も高いといえます。
一説には、スキンダイビングでブラックアウトを起こす典型的なスキンダイバーは、競
争心が強い、10代から30代前半までの、男性スキンダイバーである、 ともいわれてい
ます。
が、若いスキンダイバーほどブラックアウトを起こす危険性が高いことが、技術レベルが
未熟であるためか、あるいは他の要素によるものかは、よくわかっていないようです。ま
た、女性のほうがブラックアウトを起こす危険性が低いことは、女性のほうが酸素不足・
二酸化炭素過多の状態に対する耐性が高いためとされていますが、これについては否定的
な見解もあります。
いずれにしても、若いスキンダイバーは、よりいっそう慎重に、ブラックアウトの予防
を図らなければなりません。もちろん、このことは、熟練のスキンダイバーにも共通する
ことです。
4.ブラックアウトの予防
以下に、ブラックアウトを予防するために留意すべき点をまとめておきます。
☆ハイパーベンチレーションをしない
すでに述べたように、潜行前のハイパーベンチレーションは、浮上中のブラックアウト
の危険性を著しく増大させる、大変危険な行為です。
何回以上の深呼吸が危険なハイパーベンチレーションであるかについては、必ずしも定
説はありませんが、現在、ほとんどの潜水指導団体では、4呼吸以上深呼吸を繰り返すこ
とは危険であるとしています。潜行前の深呼吸は、精神安定の意味も兼ねて、ゆっくりと
2∼3回行うだけにとどめておくことが重要です。
☆自己の限界内で潜水する
実際に潜水することができる時間は、けっして陸上での息こらえ時間を超えることはで
きません。通常は、陸上で安静にして息こらえができる時間の半分程度の時間しか潜水す
ることはできません。これらのことから、一般のスキンダイバーは、潜水時間を極力1分
以内に制限することが望ましいでしょう。
☆十分な水面休息を取る
ある程度の時間潜水して浮上した直後の身体は、極端な酸素不足の状態となっています
ので、浮上直後の呼吸は、息苦しさから、速く浅いものになりがちです。しかし、すでに
述べたように、速く浅い呼吸は換気の効率が極端に低下しますので、意識して、ゆっくり
とした大きな呼吸をすることが重要です。したがって、肺の中でガス交換が十分に行われ
るよう、ゆっくりと大きな呼吸をすることが必要です。
また、浮上直後の低酸素状態は比較的短時間で回復するのですが、潜水中に体内に蓄積
された二酸化炭素の排出には、ある程度の時間が必要となります。
さらに、身体中の筋肉も、疲労物質である乳酸が蓄積し、酸素負債が生じた状態になっ
ていますので、この状態で繰り返し潜水すると、筋肉の運動効率が低下して、酸素消費が
増大するばかりでなく、潜水中に脚などの筋肉が攣ってしまうこともあります。
したがって、一般に、直前の潜水時間の倍以上の時間をかけて、ゆっくりと水面休息を
取る必要がある、 とされています。
過換気症候群とは
過呼吸によって換気過剰(過換気)となり、呼吸系、循環器系、神経系、消化器系及び精神に
多彩な症状を起こします。
疫学
女性が男性の約 2 倍の発症率を有しています。
10 代後半から 20 代にかけてが最も多いです。
過換気症候群とパニック障害は 50%以上合併するとされています。
誘因
繰り返すものは心理的ストレスが誘因となることが少なくありません。
発作自体が心理的ストレスとなって悪循環を形成しがちです。
症状
・呼吸器症状: 呼吸困難感、空気飢餓感(吸っても吸っても空気が足りないと感じる)
。多呼吸
が認められます。
・循環器症状: 心悸亢進、胸部絞扼感・圧迫痛、胸痛など
・神経症状:
四肢末端と顔面(特に口唇周囲)のしびれ感、四肢硬直、テタニー様痙攣発作が
認められます。意識が遠のく感じ、めまい感は約半数に現れます。意識喪失に至る例もあります。
・消化器症状: 約 1/4 の患者に認められます。腹痛・悪心などが多いです。
・精神症状:
大多数の患者に認められます。
「死んでしまうのではないか」「気が狂ってしまう
のではないか」などと訴えます。離人感が見られることも少なくありません。
診断
発作時に動脈血ガス分析を行い、CO2 分圧の異常な低下と pH の異常な上昇(呼吸性アルカロ
ーシス)を確認する。
病態生理
パニック障害の「誤アラーム仮説」によると、パニック障害患者は呼吸中枢の反応性が亢進し
ているために、少量の CO2 負荷であってもそれを「破局的事態」と誤認してパニックになると説
明される。そのため日常から過換気状態を保ち、
「アラーム」の作動を予防しているという。過換
気症候群も同様のメカニズムを持ち、軽度の過換気はパニック発作の予防策であると考えられる。
過剰な過換気、すなわち過換気発作はこの防衛の破綻として理解することができる。
治療
<発作時>
説得・保証
患者は「自分では手に負えない異常な事態になってしまった」と認知し、混乱してパニック状
態になっています。
「症状が強く不安であることはよくわかります。しかし、特別な病気ではない
ので、慌てなければ短時間で症状が治まりますよ」と説得・保証を行い、認知の修正を行う。
薬物療法
抗不安薬を使用して発作の鎮静化を図ります。
軽症: ロラゼパム(ワイパックス)0.5mg∼1mg 経口投与
中等症以上: ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)5∼10mg 筋注ないし静注
呼吸法の指導
ペーパーバッグ呼吸法が推奨されてきましたが、高度のアルカローシスでない限り人為的な低
換気は本質的な治療ではありません。また、パニック障害の患者は CO2 負荷によりパニック発作
が誘発されます。また、過呼吸後には無呼吸を含む低換気が生じるので、低換気を強めることは
危険を伴います。以上の理由で、近年ではペーパーバッグ呼吸法は以前ほど推奨されません。
ゆっくり呼吸を行う(吸った時点で一回息を止め、可能な限りゆっくり吐き出し、力を抜いて
自然に吸う)ように指導することがより重要と考えられるようになってきています。
<非発作時>
一般心理療法
訴えを十分に受容しながら、過換気症候群の病状・病態について説明します。治療法が確立し
た病態であること、予後は良好であることを十分説明し、今回の発作が次の過剰な不安を呼び起
こさないように保証します。
「何ともない」といって病態の説明をせずに帰すことは症状を慢性化
させやすいので注意します。
発作の背景となった心理社会的ストレス因子があれば、ききます。
発作時の対応の指導を行います。慌てさえしなければ数分以内で発作は鎮静化する、発作時に
は「いくら苦しい発作が起きても重大な事態にならない」という言葉を思い浮かべること、薬剤
を使うこと、ゆっくり呼吸すること、水をゆっくり飲むこと、「やり過ごす」つもりで「大丈夫」
と自分に語りかけること、などが有効です。
認知行動療法
予期不安・空間恐怖のある場合に行います。
日常生活の指導
アルコールやカフェインをなるべく避けます。乳酸も発作誘発物質ですので、激しい運動や空
腹時の労作に注意します。
薬物療法
抗不安薬、抗うつ薬など病態に応じて用います。
必要に応じ、アルプラゾラム(ソラナックス)1.2mg/日やロフラゼプ酸エチル(メイラックス)
2mg/日などの高力価ベンゾジアゼピンを内服し、再度の発作が起こりそうであればロラゼパム
(ワイパックス)0.5mg または 1mg 錠を頓用します。
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