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感染管理マニュアル E.疾患別感染対策 Ⅹ.感染性下痢症 2010 年 8

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感染管理マニュアル E.疾患別感染対策 Ⅹ.感染性下痢症 2010 年 8
感染管理マニュアル
E.疾患別感染対策
Ⅹ.感染性下痢症
Ⅹ.感染性下痢症
1. 下痢の原因
 非感染性
硬水、香辛料の多量摂取(特に海外)、過食、飲酒、薬剤など
 感染性
小腸型 : 非炎症性でトキシンによる。ノロウイルス、毒素原性大腸菌など
大腸型 : 炎症性で組織侵襲による。血便、粘液便がサイン
1 週間以上長引く下痢 : 原虫、寄生虫
 季節性
感染性下痢の原因は7割がウイルス性であり、冬(秋~春)はウイルス性が特に多い
原因微生物:種類と潜伏期間
黄色ブドウ球菌
1~6 時間
腸炎ビブリオ
3~20 時間
ウェルシュ菌
6~18 時間
(Clostridium perfringens)
サルモネラ
ボツリヌス
毒素原性大腸菌
12~24 時間
12~36 時間
12 時間~2 日
腸管侵入性大腸菌
カンピロバクター
腸管出血性大腸菌
2 日~3 日
2 日~7 日
3 日~7 日
(O157 など)
1) 便培養
入院3日までの下痢に対しては、病原微生物特定のため便培養提出を積極的に考慮する。
2) 血液培養
下痢に敗血症症状を伴う場合は、血液培養も考慮する。
3) CD トキシンチェック
入院から4日以上経って発症した下痢の9割はクロストリジウム・ディフィシル感染による下痢で
あるとされている。
*クロストリジウム・ディフィシルは院内感染によって拡がるため、感染対策の徹底が必要である
※腸管出血性大腸菌、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、パラチフスは三類感染症であり、届出が必要
となる。(「H.感染症に伴う届出事項」を参照)
2010 年 8 月 改定
感染管理マニュアル
E.疾患別感染対策
Ⅹ.感染性下痢症
2.発症者への対応
感染対策としては、標準予防策が基本であり、正しく防護用具を使用し、手指衛生を遵守す
る。下痢症状が強く、衛生行動が取れない場合やオムツを使用している場合は周囲環境を汚
染する可能性があるため個室隔離とし、接触感染対策を追加し徹底する。
隔離患者の入院生活
1) 食事:食器類に関しては、通常の取扱いでよい。むしろ、患者に精神的負担をかけないことが
重要である。
① 食器は別個あるいはディスポにする必要はない
② 配膳下膳に手袋、エプロンを用いる必要はない
③ 患者の食器やトレーにふれた後は手を徐汚する
④ 食器の洗浄は病院の厨房にての通常の洗浄でよい
2) トイレの使用
① 個室内のトイレまたはポータブルトイレを利用する
② 便座は毎日清掃する
③ 排泄物はそのままトイレに流してよい
④ 患者退室後にはトイレは清掃、便器等は洗浄後ニッサンアノンにて消毒、乾燥する
3) 入浴・洗髪
① 入浴可能ならば、順番はその日の最後に入浴してもらう
② 洗髪や身体の洗浄は通常のシャンプーや石鹸でよい
③ 入浴後の清掃は通常の清掃の清拭を行う
4) 廃棄物処理
① ゴミは通常の廃棄方法でよい
② 患者排泄物、体液の付着したものと患者ケアーに使用した防護用具(エプロン、手
袋、マスク)は感染性廃棄物に廃棄する
5) リネン類の処理
①
リネンを取り扱うときは、プラスチックエプロンと手袋を必ず着用する。
②
③
リネン類は、埃をたてないように静かにたたむ
リネン類の洗濯:白いビニール袋(感染性)にいれ提出する
④
家庭に持ち帰って洗濯する場合(血液・体液・排泄物で汚染されたものを除く) 通常
の方法で十分である。日光で乾かすかアイロンをかけるとよりよい。
6) 患者の使用した物品の管理
使用器具(血圧計、酸素モニターなど)は個人専用とする。個人専用化が不可能な場合には
使用ごとに 70%アルコールまたは 0.05~0.1%次亜塩素酸によって清拭消毒を実施する。
7)清掃
① 毎日の清掃:高頻度手指接触面(手指が頻繁に触れる部分:オーバーテーブル、ベッド柵、
床頭台、ドアノブなど)はアルコールによる清拭清掃を行う。ノロウイルス・ロタウイルスは
アルコールに耐性のため 0.05~0.1%次亜塩素酸を用いて清拭する。クロストリジウム・デ
ィフィシルは 0.1%以上の濃度の次亜塩素酸を用いて清拭する。
② 床の清掃は清掃業者により実施する
・ 消毒剤を用いる必要は無い
・
清掃員に感染症の情報を伝える
③ 退室後の清掃
・
退院時清掃の特別清掃を依頼する
2010 年 8 月 改定
感染管理マニュアル
E.疾患別感染対策
Ⅹ.感染性下痢症
3.ノロウイルス
ノロウイルスの感染様式は食中毒に加えて接触感染、糞口感染である。このため手洗い
が基本となるが、嘔吐物や糞便からの感染性粒子のエアゾル(バイオエアゾル)を介して伝
播するという報告もあり、しばしばアウトブレイクを引き起こす。また、アルコールに抵抗性を
示すため、感染対策には注意が必要である。
臨床症状
①
潜伏期間:1~2 日
② 原因:ノロウイルス(小型球形ウイルス;SRSV)の感染
③ 感染経路:カキの中腸腺に蓄積されたノロウイルスがヒトの小腸で増殖して引き起こされる急性
胃腸炎である。ノロウイルスによる急性胃腸炎は食品によるほか、水を介する場合、さらにヒト‐
ヒトで伝播し、主に小児で流行する場合もあることが明らかになってきた。
④ 感染性:ウイルスは、症状が消失した後も 3~7 日間ほど患者の便中に排出されるため、2 次
感染に注意が必要である。
⑤ 症状:乳児から成人まで感染するが、一般に症状は軽症であり、治療を必要とせずに軽快する。
まれに重症化する例もあり、老人や免疫力の低下した乳児では死亡例も報告されている。嘔気、
嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛などを伴う こともある。
診断:ノロウイルスの検出はあくまでも電子顕微鏡による観察が基本である。現在は PCR や
EIA 法も開発され、迅速な診断も可能になった。
*ノロウイルス簡易検査(クイックナビ
TM
ノロ)・・集団発生の状況や症状によって実施する。検査
を希望する場合は感染制御部(5093)にコンサルトする。
消毒
身近な感染防止策として手洗いの励行は重要である。また、ノロウイルスでは、吐物など、ウイ
ルスを含む 汚染物の処理にも注意が必要である。粒子は胃液の酸度(pH3)や飲料水に含まれ
る程度の低レベルの塩素には抵抗性を示す。また温度に対しては、60℃程度の熱には抵抗性を
示す。したがってウイルス粒子の感染性を奪うには、次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒するか、
85℃以上で少なくとも 1 分以上加熱する必要があるとされている。
4.院内で複数患者に下痢症状が発生した場合
下痢を呈する患者が集団発生した場合、院内感染なのか食中毒なのかを判断する必要があ
る。感染制御部にコンサルトする。
同一病棟で同時期に 2 名以上の患者に下痢などの症状が発現
院内の食事などを介した
ノロウイルスその他による
集団食中毒の可能性
院内感染の可能性
・短期間に爆発的に発生
・比較的長期間に渡って発生
感染制御部にコンサルト
2010 年 8 月 改定
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