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経済・金融の国際化と不動産 第6章

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経済・金融の国際化と不動産 第6章
第6章 経済・金融の国際化と不動産
第6章
経済・金融の国際化と不動産
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⃝金融市場の急速なグローバリゼーションにより、世界の「外国為替市場」における取引高は飛躍的に拡
大した。これに加えて、世界的な「金融危機」に対応すべく米国や英国、日本、EU等において展開さ
れた大規模な「金融緩和」は、金融市場におけるマネーの動きに波及し、輸出入などの実態経済を凌駕
する規模となっている。「シャドーバンキング」が為替取引高の4割を占めている実態が明らかとなり、
金融市場の「ガバナンス」の問題が「国際通貨基金(IMF)
」における重要課題として議論されている。
⃝グローバリゼーションと金融緩和による「マネー」の台頭は、我が国の「国際収支」や為替市場、不動
産市場にも構造的な変化を与えている。「貿易収支」の黒字によって「外貨準備高」を高めてきた我が
国の「国際収支」構造が一変し、過去の対外投資の配当等による「経常収支」の黒字化が始まり、更な
る「直接投資」の拡大を通じて日本の世界における成熟度が高まる方向にある。
⃝海外投資家により「J-REIT」取引は倍増したが、
「公募REIT」と株価との「相関」が高まったことよっ
て不動産らしさが失われ、「私募REIT」市場が拡大しようとしている。不動産市場では、金融市場の連
動と共に差別化も進み、金融市場を通じた国際化を通じて、投資の選択肢は一層多様化するだろう。
1.経済回復に向けた各国中央銀行の動き
⑴ 米国の動き
米国連邦準備制度理事会
(FRB)は、平成19
(2007)年の
「サブプライム問題」や平成20
(2008)
年の「リーマンショック」からの経済・金融市場回復のために、政策金利の低利誘導のみ
ならず、平成20年11月~平成22(2010)年6月には財務省債や住宅ローン担保証券(MBS)
を購入する第1弾の量的緩和(QE1)を実施し、1兆7,250億ドルを市場に供給した。
さらに、平成22年11月~平成23(2011)年6月の第2弾のQE2では、米国の景気回復
ペースの鈍化に対応するために、財務省債を中心に6,000億ドルを新たに供給した。平成
24(2012)年9月に導入された第3弾のQE3では、労働市場(雇用)を刺激して景気を回復
させるために、住宅市場に重要なMBSを月額400億ドルの水準で追加的に買い取ることとした。
この結果、雇用を含めた経済状況は着実に改善し、回復基調に転じたことから、FRB
は平成26(2014)年10月29日に量的緩和の取りやめを決定し、現在は買い入れ資産の残高
を減少させるテーパリングを実施している。ただし、金利の低利誘導策は安定的な雇用確
保が達成できるまで「相当な期間」は継続する方針となり、市場ではこの終了時期がいつ
になるかが注目されている。
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第6章 経済・金融の国際化と不動産
⑵ 英国の動き
英国銀行(BoE)ではインフレ目標を2%とし、政策金利の低利誘導や国債等の買取り
を平成21(2009)年3月から継続してきた経緯がある。一時インフレ率は2%(実質)を
達成したが、その後再びEU景気の低迷などからインフレ率が目標を割ったため、利上げ
を留保し、国債等の残高のテーパリングは行わず、残高を3,750ポンドで維持している。
⑶ 日本の動き(第3章3⑶ D〜F参照)
わが国では、平成25(2013)年4月から、日本銀行主導による「量的にみても質的にみても、
これまでとは全く次元の違う金融緩和」、いわゆる「異次元緩和」が開始された。インフ
レ目標2%(実質)の達成をめざし、資金供給量(マネタリーベース)を2年間で2倍に
拡大することとなっている。平成26(2014)年10月には、目標達成を確実にするために、
やし、
年間約80兆円とすることになった。このため、長期国債の買い入れを約30兆円増やし、
平均残存期間も最大3年間程度延長し7年~ 10年程度とする他、ETF及びJ-REITの買い
入れペースを3倍にし、各々年間約3兆円及び約900億円相当を買い入れる。平成28(2016)
年1月には、従来からのマネタリーベースの増加や各種資産の買い入れに加えて、いわゆ
る「マイナス金利政策」の採用が決定され、場合によっては更なる追加策も講じる方針が
示されている。
⑷ EUの動き
欧州中央銀行(ECB)は、平成26(2014)年10月から投資適格な民間資産担保債(ABS)
やカバードボンド(CB、注)等の買い付けを始めていたが、効果は限定的であった。こ
のため、ドイツの反対を押し切り、平成27(2015)年3月から対象として国債を加え、イ
ンフレ率2%(実質)を目標に、月600億ユーロの規模で買取りを行うこととなり、平成
28(2016)年9月までに1兆ユーロ以上の資金供給を行なうこととした。
(注)ローン返済収入と資産担保だけに裏付けられた米国のMBSとは異なり、債券発行体の
償還責任を伴う資産担保証券である。代表的なものにはドイツを中心に普及している
ファンドブリーフ債などがある。
図表6-1 日米のマネタリーベースの動向比較 (2000年1月=100とする指数)
出所: 日銀及びFRBデータから作成。
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経済・金融編
第2弾としてマネタリーベースの増加ペースを現在の年間60 ~ 70兆円から10 ~ 20兆円増
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