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8 月 7 日 第 7 回講義 「日銀の金融政策」 日銀グランプリに向けて 1 / 3
8 月 7 日 第 7 回講義 「日銀の金融政策」 日銀グランプリに向けて 伝統的金融政策 「日銀が短期国債を銀行と売買することで、無担保翌日物コールレートを変化させる金融 政策」 ・無担保翌日物コールレート…銀行間の資金需給(インターバンク市場)を左右するレー ト 呼べばすぐ戻るからコール 短期の公開市場操作でこれを左右することができるので、日 銀 の資金供給の際の金利となる ・特徴…債務不履行リスクがなく、満期型短期(1 年未満)であるため、満期途中に売買す るときの市場価格の変化も無視できる程度のもの 非伝統的金融政策 「金融市場の安定確保のための、長期国債買い入れ増額(=通貨供給を増やす手段) 」 ・デメリット 1 長期国債の大量購入は政府の国債発行による資金調達を日銀が引き受けることになる →日銀の物価安定という目的を逸脱→日銀の金融政策に対する市場の信認が失われる→意 に反して長期金利が上昇してしまう ※長期金利上昇→企業の設備投資、家計の住宅投資上昇 官 日銀 長期国債 民 2 市場 中央銀行が満期前に売却する場合には市場価格の低下により損失を被る可能性がある 1/3 8 月 7 日 第 7 回講義 「日銀の金融政策」 日銀グランプリに向けて →満期までの残存期間が長くなるにつれて市場リスクも大きくなる ・FRB の例 「信用緩和(従来買い入れなかった証券を担保とする貸し出し) 」 1 CP や資産担保 CP の買い入れ(CP:事業会社によって市場で発行される短期資金調達 のための無担保手形) 2 学生ローン、自動車ローン、クレジットカードローンなどを担保とする資産担保証券(ロ ーンの債権保有者がこの債権を分離して証券化)を担保とする貸し出し 3 政府支援機関の長期債と政府支援機関発行の住宅ローン担保証券及び長期国債の買い 入れ ・この信用緩和は、短期国債を買い入れる「量的緩和」と何が違うのか 中央銀行が短期国債を買い入れても、銀行は増えた中央銀行当座預金を保有するだけで、 新たに証券を購入したり貸し出しを増やしたりはしないかもしれない 日本の量的金融緩和政策には、この問題が見受けられる 事実、日銀の短期国債の買い入れに伴い、日銀当座預金が増えただけで、銀行の証券購入 はほとんど増えず、貸し出しはむしろ減少し続けた FRB がいつでも CP を購入してくれることが約束されれば、銀行は信用リスクがあっても CP を買ってもよいと考える→銀行の CP 購入が増えれば、銀行以外の投資家も安心して CP に投資する→企業も CP による資金調達が容易になれば、資金繰り難から債務不履行に 陥るリスクが減る→CP 市場が安定し、企業は CP 市場で調達した貨幣で、在庫投資や設備 投資を増加→生産拡大→景気拡大 ・日米の比較 2009 年 3 月末 米:非伝統的金融政策による FRB の信用供与は全体の信用供与の約 26% 日:2.4% 2/3 8 月 7 日 第 7 回講義 「日銀の金融政策」 日銀グランプリに向けて 信用リスクと市場リスクを進んで取れるのは政府と日銀(中央銀行)のみ ゼロ金利の副作用 郵貯金、金融資産の運用利回りが低下し、高齢者・年金生活者の暮らしが悪くなる 反論:金利が上がったところで、生活が一変するほどの預金者は限られた富裕層 中央銀行代表の発言と市場の評価 日銀:「ゼロ金利を早いうちに解除したい」→市場:「ゼロ金利が終わりそうだからお金を 借りるはやめよう」→銀行の貸出金利の低下は終わる→市場のお金が少なくなる=ゼロ金 利政策の効果がなくなってしまう FRB:「ゼロ金利政策以外にも、打つ手はたくさんある」→市場:「ほかにも効果的な経済 政策があるんだったら、お金を借りても大丈夫そうだなあ(急に金利が上がることはなさ そうだなあ) 」 参考文献(日銀批判よりではあるが・・・) 「日本銀行は信用できるか」 岩田規久男 講談社現代新書 2010 「この金融政策が日本経済を救う」 高橋洋一 光文社新書 2008」 3/3