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食育論 - 女子栄養大学オープンコースウェア
食育論 生活習慣と発育発達 香川雅春 [email protected] この講義で理解する事 • 日本における生活習慣の変化について理 解する • 現在の小―高校生の生活習慣の実態につ いて理解する • 生活習慣が発育発達に及ぼす影響を学ぶ 日本の生活環境の変化 • • • • • • 西洋化 社会情勢(オイルショック・戦争) 経済成長・下落(バブル崩壊) 核家族化 共働きの増加(女性の社会進出) 技術革新(医療・交通・食品加工・流通) 日本の生活習慣の変化は 経済状況と関連 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4545.html 日本における自動車の保有率の変化 子どもの身体活動も大きく変化 http://www.janjanblog.com/wp-content/uploads/2010/08/UNI_4741-%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC-500x435.jpg http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/007/257/52/N000/000/012/136927771718813208723_IMG_NEW_20130523115517.jpg 男女共にゲーム時間が増えている Benesse 第2回子ども生活実態基本調査、2009 体力の低下が問題になっている • 新体力テスト施行後直近の2年間で向上が見られる • 昭和60年を基準とするとまだ平均を下回っている • 運動をしていない子供ほど体力・運動能力が無い(特 に女子で顕著) 文部科学省.H23年度体力・運動能力調査結果の概要および報告書 戦後の飽食の時代 http://www.oradoko.jp/gourmet/assets_c/2012/05/503m1-thumb-480x360-7665.jpg 栄養摂取も大きく様変わり • CHO減少、タンパク質と脂質増加 • エネルギー摂取量は増加後減少している 饗場、「近年における子どもたちの食生活の変化」 http://www.shaho-net.co.jp/zuiso/2009/images/12.gif 戦後の発育 170 160 Height (cm) 150 1950 1960 1970 1980 1990 2000 140 130 120 110 100 6 7 Kagawa and Hills. Open Obesity J, 2011 8 9 10 11 12 13 Age (years) 14 15 16 17 女子の初潮時期が早まっている • 国際的な傾向として1~2 年早まっている • 日本:12.2ヶ月(2008) – 1997年以降横ばい http://www.coverbrowser.com/image/time/4057-1.jpg 第12回全国初潮調査結果 大阪大学大学院 人間科学研究科 感染症から慢性疾患へ 2012年の主要な死因は(1)がん、 (2)心疾患、(3)肺炎、(4)脳血管疾患 (平成24年人口動態統計) 自然環境の変化 http://feww.files.wordpress.com/2009/09/ozone-hole-comparison.jpg http://image.excite.co.jp/feed/news/Searchina/200807010440000view.jpg http://pictures.howbits.com/wp-content/uploads/Global-Warming-Polar-bear.jpg http://farm4.static.flickr.com/3656/3448871957_ec4832cfc0.jpg 過去よりも1,000倍速いスピードで 生物が絶滅している • 将来はさらに10倍速くなると 考えられている http://livedoor.blogimg.jp/atenales/imgs/2/7/276c24a6.jpg http://pds.exblog.jp/pds/1/200902/23/14/d0063814_11222351.jpg 地球環境の ヒトへの影響 http://schools-wikipedia.org/2006/images/38/3856.jpg http://news.bbc.co.uk/olmedia/610000/images/_610046_pollut-fish300.jpg http://www.longer-living.com/skin_care/images/06skincancer.jpg http://www.urban-climate-energy.com/images/FinalFlyerCheckLowRes_6_0002.jpg ヒートアイランドによる熱中症 環境省地球環境局.地球温暖化の影響・適応情報資料集、2009 • 生活環境の気温が高くなることで体温が上昇 恒常性を保つため体内の水分が気化することで熱を放射 脱水症状や熱中症の増加 • 水分&電解質のこまめな補給が重要 ペットボトル症候群 のリスク • 清涼飲料水の過度な 摂取 ⇒急激な血糖値の上昇 • 頻繁なインスリン分泌 &低下の繰り返し ⇒Ⅱ型糖尿病 • エネルギー代謝 亢進によるVB群不足 ⇒脚気 http://sora1.sakura.ne.jp/sblo_files/sora-staff/image/E3839AE38383E38388E3839CE38388E383ABE79787E58099E7BEA4.jpg http://water-news.info/wp-content/uploads/2011/07/5233546650_e1d6866282-300x200.jpg WHOによる新しいガイドライン • WHOは2014年3月5日に砂糖などの糖類が1日 の摂取エネルギー量に占める割合を5%未満と する新しい指針案を発表(成人と子ども両方) – エネルギー5%相当の糖類=標準範囲のBMIの成人 であれば25gの砂糖に相当 – 殆どの清涼飲料水(500mlペットボトル)でアウト • 2002年に発表された現行の指針は10%未満 • 特に清涼飲料水などによる砂糖を含む糖分の過 剰摂取 ⇒エネルギーの過剰摂取(肥満・生活習慣病) ⇒むし歯 地球温暖化と感染症リスク • 地球規模の気候変化 生態系の変容感染症が大流行 する可能性(National Geographics, 2008) – 日本でもデング熱などの媒介 蚊の北上が認められている (環境省地球環境局、2009) • Deadly dozen (死に至る12の病)1) ライム病、2)黄熱、3)ペスト、4)鳥インフ ルエンザ、5)バベシア症、6)コレラ、7)エ ボラ出血熱、8)腸内寄生虫および外部 寄生虫、9)赤潮、10)リフトバレー熱、11) アフリカ睡眠病、12)結核 http://mahatmabug.com/mosquito.jpg http://happysadness.files.wordpress.com/2006/10/gpw-20050430a-fullsize-ebola-virus-cdc-phil-id-1181.jpg 学童のアレルギー疾患有病率 • • • • 全国の36,830校(小・中・高・中等教育学校) 12,773,554人(有効回答率:97.9%) 全体的に男子の方で多く報告 都道府県でバラつき • 先行研究より低い傾向(軽病者が報告していない可能 性) 平成19年 アレルギーに関する調査研究報告書 食物アレルギーを持つ小児・学童が増加 • 基本的に全ての 種類で起こりうる • 小麦、そば、 ピーナッツ、卵、 大豆、甲殻類、 魚介類など • グルテンを除去 した食品や料理 の普及 給食管理の徹底 約150万名の食物アレルギー患者 • – – – 乳児の5万〜10万名 幼児期の30万名 学童以降の100万名 • 『食物アレルギー』斎藤博久監修 海老澤元宏編 診断と治療社 2007 http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/ped/patient/new/images/epipen_002.gif アナフィラキシーを持つ児童が増加 • 児童生徒のアナフィラキ シー急増 県内公立小 中高で集計(山陽新聞 2013年6月1日) 岡山県内の公立小中高校 で、生命の危険を伴う重 度のアレルギー反応「アナ フィラキシーショック」の恐 れがある児童生徒が、3 月現在で119人に上るこ とが県教委の調査で分 かった。 http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2013060119201074/ シックハウス症候群 • 建材に含まれている化学物質でめまいや吐き気 などの悪影響が引き起こされる症候群 • ホルムアルデヒドやトルエン、キシレン、エチルベ ンゼン • 国内の約5%にあたる約600万人が症候群をもっ ていると推定されている • 住宅では無く学校なども危険 • 建築基準法の法改正などの対策も取られている ヒトの生理現象には 規則正しいリズムが存在する • メラトニンは起床後14~ 16時間後に分泌開始 • カルシウムの吸収は午 後8時から深夜0時まで が盛ん • 学童では6-8時間 が適切とされる(個 人差有) http://livedoor.blogimg.jp/thnkks0304/imgs/f/5/f5f9ddce.jpg 睡眠時間は学年が上がるにつれて減少する • 1. 2. 3. Benesse 第2回子ども生活実態基本調査、2009 就寝時間が遅くなると朝食欠食率は高くなる イライラしやすくなるイジメを起こしやすくなる 怪我をしやすくなる 間食をしやすくなる肥満になりやすくなる 十分な睡眠による脳の発達 • Taki et al. Neuroimage. 2011 5-18歳の子供 290名の睡眠習 慣と脳における 白質と灰白質の 体積をMRIを使 い調査 • 睡眠時間が長 い子供ほど海 馬の灰白質の 体積が多い傾 向が見られた 朝日と朝食が時計遺伝子を調節 ヒトの体内時 計は25時間周 期 中枢と末梢時 計遺伝子が同 じリズムで動 いていること =「同調」 朝食欠食 同調が 適切に行 われない 日本栄養・食料学会.時間栄養学 p18 学童期の食の重要性 • 学童期後半:自主性・自 己管理能力長期 • 個食や孤食、固食、粉食 :偏食・孤独感の増加・し つけ・コミュニケーション 不足につながる • 小学生児童(4-6年)の夕 食を一人で食べる割合( よくある・時々ある): 10.9%(2004年) ⇒10.8%(2009年) で横ばい (Benesse 子ども生活実態基本調査) 内閣府、「親子のための食育読本」、2010 朝食欠食の割合は中学生で高い • 10年前よりは改善がされているが、まだ多くの子 供たちが朝食を食べていない – 平成13年度に朝食を食べている小学生は76%、中学生は70.5% 朝ごはんが脳に与える影響 Taki et al. Plos One, 2010、川島隆太 講演スライド • 5-18歳までの男女(各145名)に対してMRIを実施 • 年齢、性別、SESなどを調整した後でも、朝食にごはん を食べる子供のほうが脳内の灰白質の割合が高かった • 成長期ほど割合の差が大きくなった • GIが違い(低GI食の方が安定したグルコースを供給) 食育と認知機能 東北大学 川島隆太教授 講演スライド 朝ごはんを食べる子ほど ペーパーテストの点数が良い 国立教育政策研究所 平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査 小5・6年生各10万人 http://stillwantto.be/blog/rogo3.PNG 心の健康状態の把握 平成14年保健室利用状況に関する調査報告書 • 保健室の利用状況、整備状況、訪問理由などを 調査 • 保健室登校が増加中 心を病んでいる学生が増加 学校及び教員を取り巻く状況に関する参考資料 • 小・中ともに不登校児童や学内での暴力事件が 急増 • 家庭環境やいじめ、ストレス いじめの定義の変更 • 文部科学省初等中等教育局児童生徒課・国立教育政 策研究所生徒指導・進路指導研究センターによるいじめ の定義: 「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、 物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じて いるもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問 わない。 • それまでの定義: 「①自分より弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的 な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じている もの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」とす る。なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表 面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場 に立って行うこと。 いじめの認知件数は減少傾向? 内閣府「いじめ問題等の対応について(第一次提言)」 文部科学省初等中等教育局児童生徒課 平成22 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について いじめのメカニズムには 生活環境も影響 • 親との関係 • しつけやモラ ルの欠如 • 集団行動に対 する適応 福岡県教育センター.いじめに対する基本的な考え方 最近のニュース • かくれんぼができない子供急増…いじめ遠因 に? 京都中丹地区 (産経新聞 2013年6月 23日) ・・・「子供たちはひとりぼっちになるのを極端に怖 がる。こうした状況が、子供たちの間に見て見ぬ ふりをするいじめを生む原因にもなっている」と説 いた。また、「子供たちを見ているのは親や教師だ け。別の角度から子供を見る『社会的な親』の存 在が大切になってくる」などと述べた。 学校における自殺の増加 • 自殺は10-14歳の死因第3位、15-18歳の死因第2位 (平成19年度人口動態統計) • 高校生の5割以上が死にたいと感じた経験があり、自傷 行為は女子で多い 少年犯罪は若年者犯罪より多い 強盗・障害・窃盗が多い • 若年=20歳以上30歳未満 平成23年版犯罪白書-少年・若年犯罪者の実態と再犯防止- 未成年者の飲酒状況の推移 平成19 年度厚生労働科学研究費補助金「未成年者の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研 究」 調査名「2007 年度お酒とタバコについての全国調査」 • 中高生共に学年が上がるにつれて飲酒率が高く なっている(喫煙率も同様) 国内におけるHIV感染者/AIDS患者の推移 ~青少年の現状~ 平成21年版 青少年白書 http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h21honpenhtml/html/b1_sho1_1.html http://api-net.jfap.or.jp/lot/images/h23_ACjapan_poster.jpg