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GPS と GLONASS の利用衛星選択による干渉測位の高精度化

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GPS と GLONASS の利用衛星選択による干渉測位の高精度化
GPS と GLONASS の利用衛星選択による干渉測位の高精度化
High Accuracy of Interferometric Positioning of Satellite Selection by GPS and GLONASS
佐田達典 2
Tatsunori Sada2
2.マルチパスによる誤差電波の判別手法
マルチパスの影響を受ける衛星電波の判別手法として,
本研究では搬送波の位相遅延量の特性を用いて,判別に有
効な指標を算出する.
搬送波の位相遅延量は,伝搬経路内の総電子数と電波の
周波数帯に依存する.そのため,低仰角衛星ほど 1 周波,
2 周波の周波数帯の異なる搬送波間の位相遅延量の差は大
きくなり,位相変化に差が生じる.位相変化は,正確な光
速を乗じ,周波数で割ることで衛星と受信機間の距離変化
が得られる.搬送波間の位相遅延量の差が大きくなる場合,
式(1)より 1 周波,2 周波の距離変化の差は大きくなるもの
と推察される.
=(
)
(
)
( )
:距離変化の差
:位相積算値 :時刻(秒)
:光速
:搬送波周波数
:1 周波
:2 周波
なお,電離層の影響は設置受信機間の距離が数十 km の
範囲であればほぼ同一であるため,式(1)で得られる結果は
双方の受信機でほとんど同じ値となり,較差は小さくなる.
しかし,一方の受信機がマルチパスの影響を受けた場合,
位相に誤差を含むため,較差は大きな値になるものと考え
られる.本研究では,この較差をマルチパスの影響を表す
指標とする.
G02
G18
G03
G19
5.0
G04
G20
G05
G21
G06
G22
G07
G23
G08
G24
G09
G25
G10
G26
G11
G27
G12
G28
G13
G29
G14
G30
G15
G31
G16
G32
2.5
0.0
-2.5
R02
R14
5.0
R03
R15
R05
R17
R07
R08
方位角(°)
R19
R20
R06
R18
R09
R21
R10
R22
R11
R23
360
340
320
300
280
260
240
220
200
180
160
140
120
80
R04
R16
100
60
40
0
-5.0
R12
R24
2.5
0.0
-2.5
360
340
320
300
280
260
240
220
200
180
160
140
120
100
80
60
-5.0
40
R01
R13
較差の標準偏差値
(mm)
衛星測位の利用については,現在 GPS が主流であるが,
-公共測量-作業規定準則において,GPS と GLONASS の
併用手法が明記されるなど,複数衛星系による併用測位が
今後一般的になるものと想定される.
利用可能な衛星が増加した場合,遮蔽環境下においても
測位に必要な衛星電波を受信できる可能性がある.しかし
ながら,マルチパス等の誤差を含む衛星電波の増加も考え
られ,公共測量等の高精度を必要とする作業では,観測衛
星の電波状態を把握する必要がある.本研究では,マルチ
パスの影響を受ける衛星電波の判別手法を提案し,高精度
測位における衛星選択効果の検証を目的とする.
較差の標準偏差値
(mm)
G01
G17
20
1. まえがき
2:日本大学理工学部
2: College of Science and Technology, Nihon University
0
1:日本大学大学院理工学研究科
1:Graduate School of Science and Technology, Nihon University
20
池田隆博 1
Takahiro Ikeda1
方位角(°)
図 1 北遮蔽と遮蔽物なしにおける較差の標準偏差値
(上:GPS 下:GLONASS)
表 1 各観測点における Fix 解の測位率(単位:%)
観測点
北遮蔽
南遮蔽
東遮蔽
西遮蔽
東西遮蔽
斜め遮蔽
全観測衛星使用時
GPSのみ
GPS+GLONASS
34.6
30.9
54.6
55.2
23.8
34.2
41.5
37.6
4.0
3.2
53.3
37.2
利用衛星選択時
GPSのみ
GPS+GLONASS
53.5
62.0
72.8
77.6
25.7
43.0
67.4
82.0
7.9
33.7
88.5
87.8
を求めて GPS,GLONASS 各衛星の傾向を確認した.方
位角に対する傾向を確認すると,平均値についてはほとん
どの衛星に対し較差は 1.0mm 以内と大きな変化は見られ
なかったが,標準偏差値については較差が大きくなる傾向
が見られた(図 1).衛星位置との関係を確認すると,遮
蔽物により不可視となる衛星の方位角と,標準偏差値が大
きくなる際の方位角が一致する傾向が見られた.不可視衛
星からの受信電波は,建物の回折等によりマルチパスの影
響を強く受けているものと推察されるため,本研究で示し
た指標は有効であると考えられる.
また,高精度測位における利用衛星選択効果を検証する
ため,較差の平均値と標準偏差値が 1.0mm 以内となる時
間帯の衛星を使用し,[GPS のみ]と[GPS+GLONASS]の
条件で Kinematic 処理を行った.解析ツールは,RTKLIB
Vertion2.4.1 を使用し,評価対象は Fix 解の測位率である.
表 1 の評価結果より,[GPS のみ]と[GPS+GLONASS]と
もに,利用衛星を選択することで Fix 率の向上が見られた.
3.誤差電波判別実験と結果
周囲に遮蔽物のない観測点と遮蔽環境の異なる複数の観
測点(北遮蔽,南遮蔽,東遮蔽,西遮蔽,東西遮蔽,斜め
遮蔽)に 2 周波受信機を設置し,GPS と GLONASS の
RINEX データを 1Hz で取得した.実験日時は,2011 年
11 月 12~14 日 10:00~16:30 であり,各観測点で 3 時間測
位を行った.
双方の受信機で得られた同時間帯の観測結果より較差を
算出し,1 分間毎(データ数:60)に平均値と標準偏差値
4.結論と今後の課題
提案したマルチパス判別手法の指標を基に,利用衛星を
選択することで Fix 率の向上が見られた.今後は,衛星数
および幾何学的な配置についても検証を行う予定である.
謝辞:本研究は平成 23 年度科学研究費補助金(基盤研究
C)23560632 の助成を受けた.ここに記して謝意を申し上
げる.
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