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第2章 大気汚染自動測定機の取扱要領

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第2章 大気汚染自動測定機の取扱要領
第2章 大気汚染自動測定機の取扱要領
1.測定局の設置
1.1 測定局設置の目的
測定局には一般環境大気測定局と自動車排出ガス測定局の2種類があり、設置目的で分類されて
いる。
(1)一般環境大気測定局
一般環境大気測定局は大気汚染防止法第 22 条に基づいて、環境大気の汚染状況を常時監視する測
定局である。測定局の設置目的は次のとおり大気汚染防止対策のための資料を得ることにある。
① 大気に係る環境基準適合状況の判断のための資料を得る。
② 大気汚染により人の健康及び生活環境に係る被害の発生を未然に防止するための緊急時の
措置を円滑に進めるための資料を得る。
③ 大気汚染防止による汚染の防止対策の策定とその効果の評価のための資料を得る。
④ 有害大気汚染物質による大気の汚染状況の把握のための資料を得る。
⑤ 地球的規模の汚染や広域的・地域的な大気汚染の防止を目的とした施策の策定及び進捗状
況を点検するための資料を得る。
(2)自動車排出ガス測定局
自動車排出ガス測定局は、大気汚染防止法第 20 条及び 22 条に基づいて自動車排出ガスによる環
境大気の汚染状況を常時監視する測定局である。測定局の設置目的は次のとおり大気汚染防止のた
めの資料を得ることにある。
① 大気の汚染に係る環境基準適合状況の判断のための資料を得る。
② 都道府県公安委員会に対して道路交通法の規定に基づく措置を取るべきことを要請する際
に、当該道路の部分の構造等に関して道路管理者又は関係行政機関の長に意見を述べる際に、
その根拠となる資料を得る。
③ 自動車から排出される有害大気汚染物質による汚染状況の把握のための資料を得る。
④ 地球的規模の汚染や広域的・地域的な大気汚染の防止を目的とした施策の策定及び進捗状
況を点検するための資料を得る。
1.2
測定局の配置
(1)一般環境大気測定局
一般環境大気測定局は、設置の目的から2種類に分類される。ひとつは環境基準の適合状況の
把握、大気汚染対策の効果の確認など地域全体の汚染状況を把握するもので、もうひとつは特定
発生源の影響を受け高濃度の局所汚染が出現し易い地域での緊急時の措置に対処するためのも
のとがある。一般環境大気測定局の多くは、前者の目的で設置されている。
-5-
一般環境大気測定局の配置に当たっては、対象地域全体の汚染の分布状態を限られた測定点に
よってできるだけ正しく把握できるように、その地域の汚染の程度、汚染の変動状況、気象の特
徴、地形、発生源分布等の各事項について検討を加えた上決定する必要がある。
また、現在設置されている測定局においても、社会経済動向の変化、大気汚染物質の排出源及
び環境濃度の動向などに注意を払い、その配置について定期的に点検及び評価を行い、適宜見直
しを行う必要がある。
次に測定局の配置の際に留意すべき事項を示す。
① 汚染物質の発生源特性、発生源分布及び風向特性を考慮して配置する。
② 人口密集地域には、他の地域に比べて、きめ細かく配置する。
③ 隣接自治体の発生源分布と気象状況を考慮して、境界領域にも配置する。
④ 将来の土地利用計画も考慮して配置する。
⑤ 特定地域に偏った配置をしない。
⑥ 配置地域の濃度分布パターンの推定には既に導入されている「総量規制マニュアル」や
「窒素酸化物総量規制マニュアル」に示されているシミュレーションモデル等を利用して行
う。
(2)自動車排出ガス測定局
自動車排出ガス測定局の設置に当たっては、自動車排出ガスによる大気汚染の状況が効率的に
監視できるよう、道路、交通量等の状況を勘案した配置地点の類型化を行い配置する。
次に測定局の配置の際に留意すべき事項を示す。
① 道路・地域の類型化を行う。
気象条件や地理的条件などで地域を区分し、地域内の道路について自動車交通量、走行速
度、大型車混入率、道路構造、沿道建物の状況等を勘案し、道路の類型化を行い、測定局を
配置することが望ましい。この場合、特定の道路・地域に偏らないように配置する。
② 地域・道路等のランク付けを行う。
道路・地域の類型化とともに地域の一般的な大気汚染状況であるバックグランドが高い大
都市の市街地、交通量の著しい交差点など地域や道路についてランク付けを行い、監視の密
度に差を付けるなど効率的な配置を行うようにする。
③ 高濃度汚染地域に重点的に配置する。
一般環境大気測定局や移動測定車などの臨時の調査で二酸化窒素や浮遊粒子状物質など
の濃度が既に環境基準を超過している地域や将来の地域開発計画などを勘案すると環境基
準を超過する恐れがあるところなど高濃度汚染となる地域では同一類型地域に複数の測定
局を配置することや細かな類型化を行うなどして重点的に測定局を配置する。
④ 一般環境大気測定局と関連性を持たせる。
二酸化窒素や浮遊粒子状物質等については、自動車の寄与度が大きくなってきており、道
路沿いだけではなく道路後背地を含む広域的な監視が必要となっている。このため、一般環
境大気測定局の配置との関連性を持たせ、汚染質の拡散、分布状況が把握できるようにする
ことが望まれる。
-6-
1.3
測定局の設置場所
(1)一般環境大気測定局
測定局の設置にあたっては、配置地域内を代表する測定値が得られるよう、特定の発生源の影
響を直接受けない場所等を選定しなければならない。
次に設置場所の選定の際に留意すべき事項を示す。
① 川岸のように下降気流が発生するところなど特異な地形や特異な気象条件が起こる場所を
避ける。
② 周辺の建物や樹木による吹き溜まりや乱気流の発生する場所を避ける。
③ 中高層建物が建ち並ぶ地域では、気流の乱れが大きいため、設置に当たり影響の少ないと
ころを選ぶ。
④ 特定の発生源の影響を強く受ける場所を避ける。
(2)自動車排出ガス測定局
測定局の設置は人が常時生活し、活動している場所で、自動車排出ガスの影響が最も強く現れ
る道路端又はこれにできるだけ近接した場所にすることが望ましい。
次に設置場所の選定の際に留意すべき事項を示す。
① 測定局を人への健康影響が懸念される高濃度地点に設置するためには、汚染質の距離減衰
を考慮し、道路端から 10m程度以内にすることが望ましい。また、設置場所の用地の確保が
困難な場合においても道路端から 20m程度以内にする。
② 高架道路の場合には最大濃度の出現する場所は道路から直線的に離れた地点になることも
考えられるので、高濃度が出現し易い場所に設置することに留意する必要がある。
③ その他、一般環境大気測定局と同様の検討を行い設置する。
1.4
測定局の規模
測定局の床面積は、測定機器、付属機器、設備等を収容するスペースと機器の保守、点検等のた
めのスペースを合わせた広さが必要となる。
(1)一般環境大気測定局
一般環境大気測定局における収容測定機器、設備等は、表 2-1-1 に示した。収容機器としては、
環境基準や濃度指針が設定されている汚染物質の測定機器、有害大気汚染物質の測定機器及び汚
染予報に必要な気象観測機器がある。また、乾式自動測定機で測定を行う場合には、校正用標準
ガスを収容することになる。
測定局の床面積は、これら機器の設置スペースと機器の保守点検などのスペースを合わせた広
さが必要であり、その面積は5~30m2になる。
(2)自動車排出ガス測定局
測定機器、付属機器、設備等を収容するスペース及び機器の保守、点検等のスペースを合わせ
た広さが必要であり、その面積は5~20m2程度となる。
-7-
1.5
測定局の構造
測定局の構造は、既設の建物の一部を利用する場合と一戸建てとして建設する場合等設置条件に
より異なる。
(1)既設の建物の一部を利用して建設する場合
既設の建物の一部を利用して建設する場合には、物理的制約を受けることが多いため、実状に
合わせた測定機器のレイアウトを行い、室内の間仕切りや設備工事をする必要がある。また、試
料空気の採取位置は建物自体の影響を受けない場所でかつ採取管の長さが長くならないように
する。
(2)一戸建てとして建設する場合
1) 固定タイプ
一般的には、木造、プレハブ造り、コンクリートブロック造りなどがあり、経済性、組み立
て、解体の容易性から見るとプレハブ造りが適当であるが、耐久性、防火、室内管理面から見
るとコンクリートブロック造りが最も望ましい。また、木造は、防火面や耐久面、安全面など
から木材の使用は必要最小限にとどめた方がよい。特に、床面に使用する材料は、機器1台当
たりの重量が 100kg 程度ある機器もあるため、木材では長期間の使用に耐えない。
図 2-1-1(省略)に一般環境大気測定局の固定タイプの例を示す。
2) コンテナタイプ
アルミ製又は鉄製のコンテナに測定機器を設置し、測定局とするので、固定タイプより面積
はやや狭くなる。この方法は防火上の問題が少なく、建築物の設置が制限されている公園等に
も設置し易く、設置後に測定値の代表性の問題や土地使用上の問題等で移転せざるを得ない事
態を生じた時の対処が容易である。しかし、コンテナの設置に当たっては、コンテナの地震に
よる傾斜等の被害を避けるため、アンカボルトでコンクリート基礎にしっかり固定することが
必要である。また、室内の空調効果を高めるためコンテナの外壁などは断熱材などで被うこと
が望ましい。
図 2-1-2(省略)にコンテナタイプの例を示す。
3) 移動測定車タイプ
バス又はトレーラに測定機器を設置し、測定局とするので、常時監視測定局を補完する短期
間の臨時測定局等として使用される。移動測定車を造る場合には、次の事項に留意する必要が
ある。
① バスやトレーラへの機器の設置後は機器の移動や増設が困難となるので、測定車の使用目
的等充分検討し設置機器の種類を決定する。また、設置機器のレイアウトは、測定車の中の
重量バランスを考慮して行う必要がある。
② 測定機器は測定車の走行時の振動等で移動しないような固定と防振対策を施す必要がある。
③ 測定車は観測時の振動を避け、必要に応じて、水平に固定するためのジャッキアップ装置
を設置する。
④ 測定機器の稼動や測定車バッテリー充電用の電源として外部電源を引くための受電装置を
-8-
設置する。
⑤ バス又はトレーラを改造して使用する場合には、道路運送関係法令の車両規則及び保安基準
に適合しなければならない。
図 2-1-3(省略)に移動測定車タイプの例を示す。
表 2-1-1
一 般 環 境 測 定 局 に お け る 収 容 測 定 機 器 、 設 備 等 の スペース及 び 所 要 電 力 、 重 量
保 守 スペースを 含 む 所 要 電 力
外径寸法
重量
機器の設置目的等
測定機器及び設備等
2
( 縦 × 横 cm) 設 置 面 積 ( m ) ( × 100VA) ( kg)
1-2
80-110
二酸化硫黄
50-57× 46-50
0.9-1.0 1)
窒素酸化物
45-53× 46-52
2-4
80-110
0.8-1.0 1)
① 環境基準及び濃度指針
オキシダント
45× 45-53
2-3
80-110
0.8-1.0 1)
が設定されている汚染物
一酸化炭素
50-59× 45-60
3-6
60-160
0.9-1.1 1)
質の自動測定機及び汚染
4-6
60-140
浮遊状粒子物質
39-70× 50-70
0.8-1.4 1)
予報に必要な気象条件の
非 メ タ ン 炭 化 水 素 55-70× 38-52
5-12
60-150
測定機
3.0 2 )
気象観測機器
35-45× 45-50
0.8
1
10-70
日射量計
40× 45
0.8
2
10-30
② 地域の特性に応じて測
定する未規制物質測定機
器
③ テレメータ、クーラ等
の設備及び高圧容器の格
納
ハイボリウムエア
サンプラ
ローボリウムエア
サンプラ
テレメータ
クーラ
換 気 扇 ( 4台 )
照明
机
棚
流し台
ボンベ格納庫
④ 一般環境測定局共通
スペース
⑤ 予備電源
-
-
6
30
-
-
2
30
40-50× 50-60
-
-
-
90× 60
40× 120
50× 120
180× 100
0.8
-
-
-
-
-
-
1.8
1
20
3
3
-
-
-
-
30-150
-
-
-
-
-
-
-
600× 200 3)
12
-
-
5
注 1) 測 定 機 の 保 守 スペースを 含 む 設 置 面 積 は 、 測 定 機 を 壁 面 よ り 約 80cm
各 測 定 機 の 間 隔 を 40cmに な る よ う に 配 置 し た 場 合 の も の で あ る 。
注 2) 測 定 機 の 間 仕 切 を 含 め た も の で あ る 。
注 3) 測 定 機 の 前 面 と 壁 と の 間 隔 を 2mと し た 場 合 の 面 積 で あ る 。
表 2-1-2
自 動 車 排 出 ガ ス 測 定 局 に お け る 収 容 測 定 機 器 、 設 備 等 の スペース及 び 所 要 電 力 、 重 量
保 守 スペースを 含 む 所 要 電 力
外径寸法
重量
機器の設置目的等
測定機器及び設備等
2
( 縦 × 横 cm) 設 置 面 積 ( m ) ( × 100VA) ( kg)
二酸化硫黄
50-57× 46-50
1-2
80-110
0.9-1.0 1)
2-4
80-110
窒素酸化物
45-53× 46-52
0.8-1.0 1)
① 自動車排出ガスによる
一酸化炭素
50-59× 45-60
3-6
60-160
0.9-1.1 1)
汚染状況の監視用自動測
1)
浮
遊
状
粒
子
物
質
39-70×
50-70
4-6
60-140
0.8-1.4
定機
2)
非 メ タ ン 炭 化 水 素 55-70× 38-52
5-12
60-150
3.0
気象観測機器
35-45× 45-50
0.8
1
10-70
② 自動車走行量の把握用
トラフィック
測定機
カウンタ
③ テレメータ、クーラ等
の設備及び高圧容器の格
納
④ 自動車排出ガス測定局
共 通 スペース
⑤ 予備電源
テレメータ
クーラ
換 気 扇 ( 4台 )
照明
机
棚
流し台
ボンベ格納庫
40-50× 50-60
-
-
-
90× 60
40× 120
50× 120
180× 100
1.0
-
-
-
-
-
-
1.8
1
20
3
3
-
-
-
-
10-30
-
-
-
-
-
-
-
400× 200 3)
8
-
-
5
注 1) 測 定 機 の 保 守 スペースを 含 む 設 置 面 積 は 、 測 定 機 を 壁 面 よ り 約 80cm
各 測 定 機 の 間 隔 を 40cmに な る よ う に 配 置 し た 場 合 の も の で あ る 。
注 2) 測 定 機 の 間 仕 切 を 含 め た も の で あ る 。
注 3) 測 定 機 の 前 面 と 壁 と の 間 隔 を 2mと し た 場 合 の 面 積 で あ る 。
-9-
<図 2-1-1 測定局の固定タイプの例>
- 10 -
<図 2-1-2 測定局のコンテナタイプの例>
<図 2-1-3 移動測定車の例>
- 11 -
1.6
測定局の設備
測定局には次の項目の設備が必要である。
(1)電気設備
1)電源容量
電気設備は、測定機器の稼動に不可欠な設備であり、過負荷な電気使用にならないように当
初から充分余裕を持った電源容量を設定することが必要である。所要電源容量は、表 2-1-1 の
各測定機器の所要電力から求めると、予備電力を加え、一般環境大気測定局の場合 70A程度、
自動車排出ガス測定局の場合 60A程度となる。
有害大気汚染物質を測定する場合は更に余裕を持たせることが望ましい。
2)測定機器用コンセント
各測定機器への配電は、配電盤で効果的に分電された3線式接地型コンセント(引っ掛け型
コンセントが望ましい)からとることとし、いわゆる「タコ足配線」は防災上問題があるので、
絶対にしないよう注意する必要がある。
コンセントは、設置測定機器用のほかに有害大気汚染物質の調査機器用や点検用等の予備コ
ンセントと屋外に屋外測定用の防水型コンセントを設置する必要がある。
3)クーラ、ヒータ用コンセント
クーラ、ヒータ、コンプレッサ等の負荷変動の大きい電源系統に測定機器を連結することは、
測定値へのノイズの原因となる。したがって、これらの負荷変動の大きい設備への配電は、測
定機器と別系統にする。
4)耐雷トランス、アレスタ
落雷の危険性の高い地域では、耐雷トランス、アレスタを設置することが望ましい。
(2)アースの設置
接地コンセントが設置されていない場合には、測定機器(測定値)への落雷影響防止及び安全
のため第3種 100 オーム以下のアースの設置工事を施す。
(3)室内照明灯の設置
点検、調整等の作業に充分必要なだけの照明が必要であり、300W程度確保することが望ましい。
なお、測定機内部の点検や手暗がりの対策として移動灯を常備することが望ましい。
(4)換気扇の設置
ガス漏れが発生した場合の排気対策及び室内換気のため換気扇を設置する必要があり、特にビ
ルの内部に測定局を設置している場合は、安全対策のためにガス検知器、自動警報装置及び電源
遮断装置の設置が必要になる。また、換気口についても設置することが望ましいが、この場合は
フィルタを付け、粉じんやごみが舞い込まないように注意しなければならない。
(5)空調設備の設置
測定機器には、一般に使用周囲温度が表示されているが、夏期の高温時には、試料大気採取ポ
ンプや温度調整用ヒータ等の熱源があるため、測定機器内はこの測定温度の上限を超すことも考
- 12 -
えられる。そこで、測定機器を正常に稼動させるためには、空調設備の設置が必要である。測定
局の空調設備としては、測定局の面積、構造等によって異なるが、2000~6000 Kcal/h 程度の冷
房能力の設備が必要と考えられる。
(6)気象観測用ケーブル及び電源用ケーブル等入り口の設置
気象測機器から記録計へのケーブル、電源の室内連絡ケーブル、テレメータ等の取り入れ口を
作る必要がある。
(7)高圧ガスの消費、貯蔵における安全施設の設置
炭化水素自動測定機、一酸化炭素自動測定機及び乾式自動測定機のように可燃性ガスや高圧ガ
スを使用する測定機器を設置する測定局は、高圧ガス保安法で定める貯蔵及び消費の技術基準に
従わなければならない。また、環境庁は各地方自治体に大気汚染測定局における高圧ガスの使用
について「大気汚染測定における安全対策の確立について」(資料2)を通知し、注意を喚起し
ている。測定局の安全施設の設置は、通知の中の環境大気自動測定における高圧ガス管理取扱い
手引書に従うことが望ましい。安全対策として次の施設を設置しなければならない。
1)可燃性ガス使用機器隔離室の設置
一般高圧ガス保安規則によると、可燃性ガスを使用する測定機器の回り5m以内で喫煙、火
気の使用を禁止し、かつ、引火性、発火性のものを置かないことになっている。しかし、測定
局では、測定機器をこの規則に従い配置することは困難である。このため測定局内を間仕切り
し、可燃性ガスを使用する測定機器を隔離する部屋を設置する。間仕切りの方法や部屋の設備
等は通知に記述されている。
2)可燃性ガス検知器の設置
可燃性ガスの検知器を設置し、室内の可燃性ガス濃度が一定以上になった場合には、測定機
器への供給電源を遮断するか又は換気扇が作動するなどの方法をとることが望ましい。
検知レベルの設定は水素ガスの爆発限界濃度(4%)の 1/5~1/10 程度とする。特に容器
詰め水素ガスを使用する時には、漏れがあった場合には短時間に多量の水素が漏れる可能性も
あり爆発等の危険性が増大するので検知器の設置が重要になる。このような水素ガスの漏れに
よる爆発等の事故防止のため、なるべく容器詰め水素ガスの使用を避け、単位時間当たりの水
素発生量の少ない水素発生器(発生量 200 mL/min 以下)を使用する。
3)高圧ガス容器格納庫の設置
可燃性ガスや酸素、毒性ガス以外の高圧容器(ボンベ)は規則的には測定局内に置くことが
できるが、可燃性ガス等を含めボンベの交換作業の簡便さや、安全対策上、測定局外にボンベ
格納庫を設置することが望ましい。ボンベ格納庫は安全対策の点から外気との通気を保つ構造
とし、可燃性ガス、酸素と他のガスを区分しておく必要がある。この場合のボンベは、外気に
より汚れるためボンベの交換時に配管などに粉じんなどが入らないように注意する。また、ボ
ンベは地震による転倒を防止するためバンドで固定する等の安全対策を講じる。
(8)消火器の設置
防災上消火器を設置する必要がある。消火器の種類としては炭酸ガス消火器が望ましい。
- 13 -
(9)給水設備の設置
試料採取管等のガラス器具類洗浄用、室内清掃用等として、給水設備の設置が望ましい。
(10)排水設備の設置
給水設備を設置した場合には、当然排水設備が必要となるが測定局における排水は清掃排水程
度に止める。窒素酸化物やオキシダント自動測定機の廃液は、そのまま排水すると水質汚濁の原
因となるので、測定局で処分してはならない。また、二酸化硫黄自動測定機の廃液は「廃棄物の
処理及び清掃に関する法律」の「産業廃棄物」または「特別管理産業廃棄物」に該当するので、
法律に基づいて適正な処理を行う必要がある。
2.測定機器の設置
測定機器を精度良く稼動させ、信頼性の高い測定結果を得るためには、使用する測定機器の原理、
機能に精通し取り扱うことはもとより、測定機器の設置場所の条件や測定機器への試料の採取の過
程も測定結果に重要な影響を与えるので注意しなければならない。
2.1
試料大気採取口の位置
試料大気採取口の位置は、測定局の配置地域を代表する測定値を得る上で重要となる。採取口の
高さは、環境基準設定に係る通知及び大気汚染防止法の施行に係る通知(表 2-2-1)に示されてお
り、原則として人が通常生活し呼吸する面の高さである地上 1.5m以上 10m以下が確保できるよう
な場所を選定しなければならない。
次に採取口の位置を設定する際に留意すべき事項を示す。
① 高層集合住居等地上 10m以上の高さにおいて人が多数生活している実態があり、試料大気
採取口の高さを、地上 1.5m以上 10m以下とすることが適当でないと考えられる場合には、そ
の実態に応じ地域代表が得られる適切な高さを設定する。
② 測定局設置場所の用地の確保が困難であったり、周辺の建物、樹木による吹き溜まり、乱
気流の発生などのために設置地域を代表するような測定値が得られないなどやむを得ない理
由で試料大気の採取口の高さが地上 10m以上になる場所は、次の項目について評価を行い適切
であるかを判断する。(資料 11)
ア 採取口の高さが地上 30mを超えていないこと。
イ 地上 1.5m以上 10m以下の高さにおいて連続して1か月以上の並行測定を行った場合の
測定結果と比較して、1時間値の日平均値の平均の差が大気環境基準の下限値の1/10 を超
えていないこと。並行試験は、四季の変化による影響を知るため各季節ごとに年間に4回以
上行う。
③ 一酸化炭素については、大気汚染防止法第 23 条(緊急時の措置)に係る措置についての記
述の一部に「概ね 1.5m」とあるもので、測定局一般に適用するものではなく、通常は二酸化
硫黄等と同じ高さとする。(資料 11)
- 14 -
表 2-2-1 試料大気採取口高さ
※
2.2
汚染物質名
SO2、NOx、OX
SPM
CO
採取口高さ
原則として
原則として
概ね
(m)
1.5~10
3~10
※
1.5
通常は③による。
試料大気の採取方法
試料大気を測定機器に導入し目的成分が測定されるまでの測定系は、一般に次の構成になってい
る。
試料大気採取管―フィルタ―流量計―ガス吸収部―流量制御部―吸引ポンプ
これらの測定系は、測定精度に影響を与える要素が多くあり、その取り扱いには注意が必要であ
る。次に各部の一般的な注意事項を示す。
(1)試料大気採取管
試料大気を測定機器に導入するまでの管である。試料大気採取管の材質は、測定対象物質の吸
着や分解があったり、また、測定を妨害するガスの発生がない材質を選択する必要がある。さら
に、汚染物質の吸着及び反応が試料大気採取管と試料大気との接触時間に比例することから試料
大気採取管の長さは短く、また、大気の採取流速が速いほどよい。
1)試料大気採取管の構造
試料大気の採取方法には個別採取管法と集合分配管法とがある。それらの構造、使用上の注
意点を次に示す。
① 個別採取管法
測定機器ごとに採取管を設置する方法である。個別採取管法の採用は、ガス状汚染物質の
場合には採取管への吸着が問題となることから、試料大気採取点から測定機器までの採取管
の長さが概ね 5m以内の場合に適用される。採取管は、雨水等が入らないように先端にロー
ト等を付け下方に曲げる。また、配管は極端な屈曲にならないように注意する。
浮遊粒子状物質の場合には、採取管への付着を少なくするため、水平方向の長さを短くし
た個別採取管法が望ましい。
試料大気採取管の口径は、各自動計測器 JIS の試料大気導入口の規格により浮遊粒子状物
質自動測定機を除く各測定機とも4~8mm になっている。浮遊粒子状物質自動測定機の採取
管口径は9~18mm である。
② 集合採気分配管法
ブロアにより試料大気採取点から室内に一括吸引採取し、室内で各測定機器に分配する方
法である。ガス状物質の場合に採取管が長くなると吸着などが問題となるので試料大気採取
点から測定機器までの採取管の長さが5m以上の場合に採用される。分配管の構造は図
2-2-1(省略)が一般に使用される。
分配管は、直径が細い場合には測定機器の入り口が負圧になる可能性がある。このため、
分配管の設置時や測定機器を増設した場合に圧力を測定することが望ましい。
分配管から浮遊粒子状物質自動測定機への配管は分配管内の大気流と並流している分配口
- 15 -
に連結する。
図 2-2-1
2)採取管の材質
個別採取管法や集合採気分配管から測定機器までの試料大気採取管の材質は測定対象物質の
性質を考慮し選定する。表 2-2-2 に汚染物質の性質と採取管の材質を示した。
① 吸着性の大きい汚染物質
吸着性の大きいSO2、NOx、NMHCには、吸着性の少ないふっ素系樹脂か硬質ガラスを用
いる。
② 分解の大きい汚染物質
分解の大きい OX には、ふっ素系樹脂か硬質ガラスを用いる。また、OX は衝突によって
も分解するため採取管の配管は極端な屈曲が生じないようにする。
③ 付着損失の大きい汚染物質
付着損失の大きい浮遊粒子状物質には、軟質塩化ビニルを用いる。軟質塩化ビニル管には
気温の上昇時に測定を妨害するガスを発生するものがあるので注意する。また、ふっ素系樹
脂は帯電があるので使用を避ける。
④ 吸着、分解の小さい汚染物質
吸着、分解の小さいCOには、軟質塩化ビニル又はふっ素系樹脂を用いる。
⑤ 採気分配管の材質には、一般にガスの吸着の少ない硬質ガラスが使用される。
表 2-2-2 汚染物質の性質と採取管の材質
汚染物質の性質
汚染物質名
採取管の材質
吸着性大
SO2、NOx、NMHC
4ふっ化エチレン樹脂
分解大
OX
硬質ガラス
付着損失大
SPM
塩化ビニル
吸着、分解小
CO
- 16 -
塩化ビニル
4ふっ化エチレン樹脂
(2)フィルタ
1)フィルタの材質
フィルタは、測定機器の分析部に及ぼす粉じんの影響を除去する目的があるので試料大気採
取管と同様に測定対象物質の性質を考慮し、吸着あるいは、分解のない材質を選ぶ必要がある。
表 2-2-3 に汚染物質別の使用可能なフィルタの材質を示す。
① 吸着性の大きい汚染物質
吸着性の大きいSO2、NOx、NMHCには、吸着性の少ないふっ素系樹脂を用いる。特に
ガラス繊維フィルタはアルカリ性物質が含まれているため、SO2測定には使用できない。
② 分解の大きい汚染物質
分解の大きい OX には、ふっ素系樹脂を用いるが、OX は衝突により分解するため一般
に使用しているフィルタよりもやや薄く孔径の大きい、厚さ 0.5 mm、孔径 45μm 程度の
ものを使用する。
③ 吸着、分解の少ない汚染物質
吸着、分解の小さい CO には、ガラス繊維、セルロース繊維を用いる。
表 2-2-3 汚染物質とフィルタの材質
汚染物質名
SO2,NOx,OX,NMHC
フィルタ材質
4ふっ化エチレン樹脂
ガラス繊維、ガラスろ紙
セルロース繊維
CO
(3)流量計
測定機によっては、試料大気採取流量の誤差は、測定精度に直接影響する。したがって、流量
計の目盛確認等の保守点検を定期的に実施しなければならない。測定機に使用されている流量計
は、フロート形面積流量計(フローメータ)と質量流量計(マスフローメータ)がある。これら
流量計の保守点検事項等を次に示す。
1)フロート形面積流量計(フローメータ)
フローメータは上方に向かって管径を大きくした管(テーパ管)に、こま形や球形のフロー
トを封入したもので、小形で簡便なことから、測定機に広く用いられている。
この流量計は、流路内壁に付着する粉じん等の汚れにより指示が不正確になるので、定期的に
測定機の試料大気採取流量の確認、流量計の洗浄及び交換を行う。
2)質量流量計(マスフローメータ)
質量流量計として熱式質量流量計が現在市販されている。この質量流量計は、ガス流量を質
量で測定することから、面積流量計など体積流量計に必要な圧力や温度変化に対する補正は不
要となる。測定機では、質量流量計を試料大気採取流量の確認用として用いており、流量計か
らの出力信号を表示したり記録できる機種もある。また、試料大気採取流量の制御用に質量流
量計と流量制御バルブを組み合わせ、制御バルブを流量計からの出力信号で制御している。
熱式質量流量計は、図 2-2-2(省略)に示す細管の外側2個所に自己加熱型抵抗体を巻いた
方式と、図 2-2-3(省略)に示す2個の発熱抵抗体をガス流路内とガス流路外に置いた方式があ
る。
細管に2本の自己加熱抵抗体を巻いた方式の測定原理は、細管を流れる測定ガスにより熱が
- 17 -
上流側から下流側へ移動する。この熱の移動量が質量流量に比例していることによっている。
流量計は、この熱の移動により生ずる上流側と下流側の抵抗体間の抵抗値差を、ブリッジ回
路で検出する方法である。
図 2-2-2 熱式流量計(1)
管に 2 本の自己加熱体を巻いた方式
図 2-2-3 熱式流量計(2)
発熱抵抗体をガス流路内とガス流路外に置いた方式
発熱抵抗体をガス流路内とガス流路外に置いた方式の測定原理は、測定ガスにより運び去ら
れる熱量が質量流量に比例していることによっている。流量計は、測定ガス流路内に置かれた
発熱抵抗体が測定ガスにより冷却され、ガス流路外に置いた発熱抵抗体間で温度差が生ずるの
で、この温度差を演算回路で検知する。
この流量計の使用に当たっては、測定ガスの流量を精密膜流量計等の基準流量計で計量し、
流量と抵抗値の変化量との関係を求めておく必要がある。また、流量計は使用にともないガス
流路管内が汚れ、流量の測定誤差を生ずる原因となるので、定期的に交換するか、洗浄できる
タイプのもはでは、オーバーホールし、洗浄する。
<基準流量計の作製>
基準にする流量計は、最大目盛値がチェックしようとする測定機の試料大気採取流量の 1.2~
2 倍の流量計を選び、JIS-Z8761 フロート形面積流量計(フローメータ)の目盛校正方法に従い
校正する。この校正に必要な装置がない場合には、簡便法として次に示す湿式ガスメータ又は精
密膜流量計を用いる校正方法で行う。
① 湿式ガスメータを用いる方法
湿式ガスメータによる基準流量計の校正は次の手順で行う。
a
図 2-2-4(省略)の湿式ガスメータを用いた校正装置を組み、基準とする流量計を装置の
入り口側に垂直に接続する。
- 18 -
b 校正装置のポンプを稼動させ、基準とする流量計の流量を、流量確認を行う測定機の試
料大気採取流量付近に、流量調整バルブで設定する。
c 流量計のフロートが安定した後、湿式ガスメータの2回転に用する採取時間(sec)を計
測する。これを3回繰り返し実施して、平均値を求める。
d 次に基準とする流量計の流量を±10%程度変化させ、前項cを実施する。
e 同時に流量校正時のガスメータの温度(℃)、ガスメータのゲージ圧(kPa)又は(mmHg)、
大気圧(kPa)又は(mmHg)を読み取る。
f 前項c、dで行った湿式ガスメータの計量値は次式を用い、温度、圧力、水蒸気圧の補
正を行う。
なお、試料大気採取容積は 20℃、101.32 kPa(760 mmHg)の容積に補正するが、補正式
を次に示す。ただし、圧力(Pa、Pm、Pv)を水銀柱ミリメートル(mmHg)で計った時には、
式中の 101.32 は 760 とする。
293
Pa+Pm-Pv
60
Vs = V ×────×──────×──
273+t
101.32
T
Vs:試料大気採取流量(L/min 、20℃)
V :ガスメータで測定された試料ガス量(L)
t :ガスメータにおける水温(℃)
Pa:大気圧(kPa)又は(mmHg)
Pm:ガスメータにおけるゲージ圧(kPa)又は(mmHg)
Pv:t℃における飽和水蒸気圧(kPa)又は(mmHg)
T:採取時間(sec)
g
前項の結果に基づき、校正曲線を作成する。
② 精密膜流量計を用いる方法
精密膜流量計による基準流量計の校正は、次の手順で行う。
a 図 2-2-4(省略)の精密膜流量計を用いた校正装置を組み、基準とする流量計を装置の入
り口側に垂直に接続する。
b 校正装置のポンプを稼動させ、基準にする流量計の流量を、流量確認を行う測定機の試
料大気採取流量付近に、流量調整バルブで設定する。
c 流量計のフロートが安定した後、精密膜流量計の標線間を通過する時間(sec)を計測す
る。これを3回繰り返し実施して、平均値を求める。
d 次に基準とする流量計の流量を±10%程度変化させ、前項cを求める。
e 同時に流量校正時のガスの温度(℃)、大気圧(kPa)又は(mmHg)を読み取る。
f 前項c、dで行った精密膜流量計の計量値は次式を使用し、温度、圧力、水蒸気圧の補
正を行う。
なお、試料大気採取容積は 20℃、101.32 kPa(760 mmHg)の容積に補正する。補正式を
次に示す。ただし、圧力(Pa、Pv)を水銀柱ミリメートル(mmHg)で計った時には、式中
の 101.32 は 760 とする。
- 19 -
293
Vs = V ×────
273+t
Pa - Pv
60
×────── ×──
101.32
T
Vs:試料大気採取流量(L/min 、20℃)
V :精密膜流量計の標線間の体積(L)
t :ガスの温度(℃)
Pa:大気圧(kPa)又は(mmHg)
Pv:t℃における飽和水蒸気圧(kPa)又は(mmHg)
T :標線間を通過する時間(sec)
g 前項の結果に基づき、校正曲線を作成する。
図 2-2-4 基準流量計の校正装置
(4)ガス吸収部
自動測定機に使用されている試料大気吸収管のタイプは、インピンジャ、バブラ又は向流吸収
管の3種類である。これらの吸収管は大気を長時間吸引している間に、内部に藻又はかびの発生
や目詰まりが生じ、測定の妨害、吸収効率の低下の原因になる。このため定期的に洗浄する必要
がある。ガス吸収管の汚れによる測定精度への影響が問題になる条件は、表 2-2-4 に示す。
汚染物質名
SO2
NOx
OX
表 2-2-4 ガス吸収管の汚れの影響
現象
影響
吸収液中のH2O2の分解に
藻又はかびの発生
よりSO2の酸化が進まない
吸収液中の試薬による
試料大気採取流量の変動
バブラの目詰まり
藻又はかびの発生
測定感度の低下
- 20 -
(5)吸引ポンプ
自動測定機に使用されている大気吸引ポンプは、ダイヤフラムポンプがほとんどで、このほか
にカーボンベーンロータリポンプ、油浸形ロータリポンプ等が使用されている。
吸引ポンプの劣化は、流量や圧力変動の原因になるので定期的な保守が必要である。ダイヤフ
ラムポンプでは、ダイヤフラムやバルブの交換を定期的に行う。
(6)流量制御部
流量制御部は、試料大気採取流量の調整と安定化を図る部分で、手動調整方式と自動調整方式
がある。
1)手動調整方式
自動測定機の試料大気採取流量の調整部に広く用いられている方式で、流量調整用ニードル
弁、ポンプ吸引量調整空気導入口用フィルタ、脈動防止用オリフィス等で構成されている。図
2-2-5(省略)に手動方式の試料大気採取流量調整部の構成例を示す。
図 2-2-5
2)自動調整方式
自動測定機の試料大気採取流量の安定化を図るために装置化されている。装置には、面積流
量計のフロートの位置をコントロールする方式マスフローコントローラによる方式及び圧力
調整方式等がある。図 2-2-6(省略)に、これらの構成例を示す。
面積流量計のフロートの位置をコントロールする方式は、試料大気採取流量の設定値からの
ズレを検出し、これをもとに電動流量調整ニードル弁等を駆動して流量制御する方式である。
構成は、流量検知器、電動流量調整ニードル弁、ニードル弁駆動モータ等からなっている。
マスフローコントローラによる制御方式は、質量流量計からの電気信号と流量設定器からの
信号を比較し、流量制御バルブを駆動して流量制御する。構成は、質量流量計、流量設定器、
流量制御バルブ等からなっている。
- 21 -
圧力調整方式は乾式自動測定機の流量制御に広く用いられている方式で、圧力調整器、毛細
管又はオリフィスノズル等で構成されている。
図 2-2-6
2.3
測定局舎の管理
(1)測定局の温度管理
測定機器の中には、使用温度範囲内であっても、測定機器の設置温度が目盛校正の実施時の温
度と異なる場合には、測定誤差を生ずる場合がある。例えば、測定機器に設置されているフロー
ト形面積流量計の目盛校正温度は、一般に 20℃で行われている。このため、測定機の目盛校正を
静的校正によっている場合には、温度計の校正温度と大きく異なる状態で使用すると試料大気採
取実流量に誤差を生ずることになる。また、オキシダント自動測定機の目盛校正は、標準測定法
により濃度を決定したオゾン標準ガスを用い、動的校正により行うことが決められている。標準
測定法は、吸収液や標準ガスの温度を 20℃に保ち行う手分析法となっている。オキシダント自動
測定機では、吸収液と酸化性物質との反応で遊離するよう素の吸収液からの揮散量が、周囲温度
により異なることが知られている。このため、測定機の動的校正を、標準測定法に基づいて濃度
決定したオゾンガスで常時実施する場合には問題とはならないが、動的校正の頻度が少なく常時
監視時の温度が動的校正時の温度と異なる場合には、測定値に誤差を生ずることになる。これら
のことから、測定局に空調設備を設置し、校正時の温度との差を小さく保つか、又は測定局の室
温調整が可能な室温で校正を実施することが望ましい。
- 22 -
なお、夏期の高温時に、校正時の温度を保つため室温を下げすぎると、試料大気採取管内で水
分の凝縮が起こり、誤差が生じる可能性があるので、採取管を保温する必要がある。夏期には、
外気との温度差を考慮して室温を設定するようにし、校正をこの温度にあわせて実施することが
望ましい。
(2) 採取管の洗浄、交換頻度
採取管内の汚れは、管内壁に付着した粉じん等によって測定対象物質の吸着あるいは分解を高
める原因となり、測定精度を低下させる。このため採取管は定期的に洗浄又は交換を行う。洗浄
又は交換の頻度は測定地点の汚染の状況により異なるが、少なくとも年1回以上行うことが望ま
しい。
集合分配管についても、年1回以上の内部洗浄(清掃)が必要である。
1)採取管の洗浄方法
① 個別採取管の洗浄方法
ア
採取管内の大きなごみは、ポンプの逆吸引を行い除去する。
イ
採取管内に付着した細かい汚れは、採取管内に小さなガラス球と洗剤を入れよく振る。
ウ
汚れが落ちたら水道管に直結し、20~30 分間水を流す。
エ
洗浄後の乾燥は、2~3
時間空吸引を行うか、アルコール、アセトンで洗い乾燥する。
② 集合採気分配管の洗浄方法
ア
分配装置の本体、吸引管、排気管は、フランジ部で分解する。
イ
洗浄棒に水気を含んだ布を巻き付け、管内に付着した汚れを除去する。
ウ
その後、乾いた布で管内の水分を拭き取る。
エ
水分を完全に除去するために、10~20 分間空吸引を行う。
オ
フランジ部に漏れがないかを確認する。確認は吸引管部、分岐管部及び排気管部に栓
をし、分岐管の一つからポンプで一定圧に加圧し、炭化水素自動測定機の漏れチェック
液で調べる方法で行う。
(3)フィルタの交換頻度
交換頻度は2週に1回とし、粉じんによる汚染の著しい地域においては更に頻度を増やす。
(4)測定機の試料大気採取流量の確認
測定機の試料大気採取流量の確認は、基準流量計の指示値と測定機の流量計の指示値とを比較
する方法で行う。
1)測定機の試料大気採取流量の確認方法
測定機の試料大気採取流量の確認は、作製した基準流量計を測定機の試料大気採取口に接続
し、基準流量計と測定機の流量計の指示値を比較する方法を用い、次の手順で行う。
① 測定機の大気導入口に前記の基準流量計を垂直になるように接続する。
② ガスポンプを動作させ、基準流量計の指示値を規定流量に流量調整バルブで調節する。
③ 基準流量計及び測定機の流量計のフロートが安定した後、測定機の流量計の指示値を読み
取る。
- 23 -
④ 次に基準流量計の指示値を、規定流量の±10%程度変化させ、前項③を求める。
2)流量計の洗浄、交換
基準流量計で確認した測定機の採取流量に±3%を超える計量誤差(流量計の 1 目盛程度)
がある場合には、流量計の洗浄又は交換を行う。
流量計の洗浄は次の手順で行う。
① 測定機から流量計を取り出し、分解する。
② ストッパ、フロートをアルコール入りビーカに取り洗浄する。
③ アルコールを浸したガーゼをテーパ管内に通して清掃する。
④ ストッパ、フロート、テーパ管を乾燥ガーゼで拭き、乾燥した後組み立てる。
3)試料大気採取流量の変動
測定機の試料大気採取流量が設定値の±7%を超えて変動(流量計の1~2目盛)している
場合には、吸引ポンプの劣化や流量調節部等にごみ等が詰まっている可能性がある。変動した
原因を確認し対処する。
2.4
測定機器設置の注意事項
測定機器の設置場所は、次の条件を備えることが望ましい。
① 振動が少ないこと。
測定機器は、吸引ポンプ等の振動源があり、特に木製の床の場合、他の測定機に振動を与
える恐れがあるので、場合によっては床に防震対策を施す必要がある。
② 腐食性ガスや粉じんが少ないこと。
腐食性ガスや粉じんは、測定機器のリレー接点部の接点不良を起こす恐れがある。このた
めこれらの物質の測定局内への侵入を防ぎ、室内での腐食性ガスを発生する試薬類の使用、
保存を避ける必要がある。特に吸光光度法窒素酸化物自動測定機は吸収液に酢酸を使用する
ため、その調製時や測定後の排ガスを処理する必要がある。吸光光度法窒素酸化物自動測定
機の排ガスは水で処理した後、排気する。
③ 湿度が高くないこと。また、温度が目盛校正実施時の温度付近であること。
測定局内の湿度が高い場合には、②と同様に接点不良の原因となる。また、測定局内の温
度は、測定機器の使用可能温度が一般に0~40℃と表示されているが、測定機器の目盛校正
を実施した時の温度と使用時の温度とが異なる場合には、この使用温度範囲内であっても測
定誤差を生じる場合がある。測定局の室温は測定機器の目盛校正時の温度付近で制御するこ
とが望ましい。
④ 電源電圧及び周波数の変動が少ないこと。また、近くに大きな電磁誘導設備や火花放電
の発生装置がないこと。地域によっては避雷対策を行うこと。
⑤ 測定機器が傾かないように水平に設置できること。
⑥ 保守点検作業が容易に安全に行えること。
測定機器の保守や修理作業を測定機器の裏側から行う場合がある。このため、裏側での作
業ができるように壁との間隔をとり設置することが望ましい。
- 24 -
⑦ 試料大気導入管が短くてすむこと。また、雨水、排ガスなどを直接吸引しないこと。
導入管により測定成分の吸着又は分解の恐れのある測定機器は、導入管の長さが各項目で
示すようにできるだけ短くなるように測定機器を測定局に配置することが望ましい。
3.共通事項
3・1 記録計
記録計にはアナログ記録、デジタル記録、アナログ・デジタル記録がある。また、近年では記憶
媒体を使用したものもある。
(1)アナログ記録計
アナログ記録計の記録方式にはペン記録、打点記録、
ペン・打点切り換え記録があり、これらの点検要領を次
に示す。
1)記録紙の有無及び装填
記録紙残量が1週間分より少なければ交換する。交
換時は記録紙の引っ掛かりを避けるため図 2-3-1(省
略)のようにほぐして使用する。また、記録紙の時刻
表示を現在の時間に合わせる場合、記録紙の先が記録
紙ホルダに1折以上たたみ込まれた状態にしてから
行う。
2)記録状況
インクが鮮明に出ているか確認する。インク等の補
充は次のとおり行う。
図2-3-1
① ペン記録方式
インクが薄くなったり、濁ってきた場合にはインクタンク式ではインクの交換を行う。また、
フェルトペン式ではフェルトペンカートリッジを交換する。
② 打点記録方式
インクパッドケースを取り出し、インクの色を間違えないように各色を1~2滴ずつ補充す
る。長期間使用して記録が不鮮明になってきたり、インクが混合した場合にはインクパッドを
交換する。
3)注油
注油箇所(ギヤ、軸受け等の回転部分)のごみ、油を拭き取った後注油する。
4)すべり抵抗の清掃
すべり抵抗及びブラシにごみが付着すると、記録異常の原因になるので、ガーゼ等で軽く磨く。
5)ゼロ点、スパンの確認
記録計は、長期間使用しているとゼロ点やスパンがズレる可能性がある。定期的に次の方法で
確認することが望ましい。
- 25 -
レコーダの入力端子に直流電圧発生器を接続し、0%相当の電圧を加え、記録紙上でゼロ位
を示すことを確認する。ズレている場合にはゼロ位調整ネジで調整する。ゼロ位調整後 100%
相当の電圧を加え、記録紙上の最大目盛を示すことを確認する。ズレている場合にはスパン調
整ネジで調整する。スパン位を調整した場合にはゼロ位を再び確認する。
6)感度(ゲイン)の確認
記録計は、長期間使用しているとレコーダ増幅器の感度(ゲイン)が変化して指針の動きが
にぶくなったり、平衡時に指針が振動して安定しないことがある。定期的に感度の確認をする
ことが望ましい。感度の確認は、レコーダの入力端子に一定入力を与え、プーリを持って指針
を平衡点から右及び左に約1%ずらせて静かに手を離し、この時の指針の戻りを見ることで行
う。指針がもとに戻らない場合には、感度が低下しているので、ゲイン調整ネジで調整する。
また、指針が振動している場合は感度が高くなっているので同様にゲイン調整ネジで調整する。
(2)デジタル記録計(プリンタ)
デジタル記録計の記録方式には、感熱記録、ドットインパクト記録、プロッタ記録、放電記録
があり、これらの点検要領を次に示す。
1)記録紙の有無及び装填
記録紙残量が1週間分より少なければ交換する。交換する記録紙は紙詰まりを避けるため指
定されたものを使用する。
2)記録状況
印字が不鮮明な場合の対処は次のとおりに行う。
① 感熱記録方式
印字が不鮮明な場合には、サーマルヘッドを交換する。また、感熱紙は紫外線により変色
するため未使用及び記録済みとも遮光して保存する必要がある。
② ドットインパクト記録方式
印字が不鮮明な場合には、インクリボンを交換する。
③ プロッタ記録方式
印字が不鮮明な場合には、プロッタペンを交換する。
④ 放電記録方式
印字が不鮮明な場合には、ヘッドの研磨を行う。また、記録紙を装填しない状態での印字
は、印字機構が損傷し印字が不鮮明になるので注意する。
(3)アナログ・デジタル記録計(ハイブリット記録計)
アナログ記録計の機能にデジタル記録計の機能を付加したもので、同一記録紙上にアナログ記
録、測定値の1時間平均値、24 時間平均値等のデジタル印字ができる。
記録方式は、アナログ記録の方が打点記録又はペン記録、デジタル記録の方がプロッタ記録に
なっている。
これらの点検要領を次に示す。
1)記録紙の装填及び記録状況
記録紙の装填やインクの補充交換等はアナログ記録計やデジタル記録計と同様に行う。
2)ゼロ位、スパン位の確認
- 26 -
レコーダの入力端子に直流電圧発生器を接続し、0%相当及び 100%相当の電圧を加えた時、
アナログ記録、デジタル記録のそれぞれの指示値が0%及び 100%を示すことを確認する。ズレ
がある場合は、アナログ記録部及びデジタル記録部を別々に調整する。調整は機械的な調整機構
はなく、ソフトウエア上で処理される。
なお調整操作法は、各記録計により異なるのでそれぞれ機種の指示に従って行う。
3.2 標準ガス
測定機の校正に使用する標準ガスには、計量法のトレーサビリティ制度に基づく1級又は2級の
標準ガスを使用する。この制度は、認定事業者であるメーカーが値付けし、供給した標準ガスが、
国家計量標準とつながりがあるということを対外的に証明する体系である。制度上では、有効期限
は定められていないが、認定事業者が定めた有効期限を守って使用することになる。表 2-3-1 に、
この制度に基づく標準ガスの種類、範囲及び精度を示す。
3.3 校正用ガス調製装置
校正用ガス調製装置には、分析装置の校正に用いるスパンガス調製装置、標準ガス濃度分割装置
(希釈装置、混合装置)、ゼロガス精製装置等がある。これらの装置のうちスパンガス調製装置とゼ
ロガス調製装置は、従来の計量法に基づく検査制度の対象からは除外されたが、公的機関での試験
規定はある。しかし、低濃度域の装置については、試験も難しいとされているので、メーカー等の
協力による自主管理が必要である。
表 2-3-1 標準ガスの種類、範囲及び精度
種類
範囲
精度(%)
1級標準ガス 2級標準ガス
メタン(空気ベース)
1 vol ppm ~ 50 vol ppm
±1.0
±2.0
プロパン(空気ベース)
3.5 vol ppm ~ 500 vol ppm
±1.0
±2.0
プロパン(窒素ベース)
150 vol ppm ~ 1.5 vol%
±1.0
±2.0
一酸化炭素
3 vol ppm ~ 50 vol %
±1.5
±2.5
(窒素ベース)
50 vol ppm超 ~ 15 vol%
±1.0
±2.0
二酸化炭素(窒素ベース)
300 vol ppm ~ 16 vol%
±1.0
±2.0
0.5 vol ppm ~ 1 vol ppm
-
±5.0
一酸化窒素(窒素ベース)
1 vol ppm超 ~ 30 vol ppm
±1.5
±2.5
30 vol ppm超 ~ 5 vol%
±1.0
±2.0
二酸化窒素(空気ベース)
5 vol ppm ~ 50 vol ppm
±5.0
-
酸素(窒素ベース)
1 vol% ~ 25 vol%
±1.0
±2.0
0.5 vol ppm ~ 1 vol ppm
-
±5.0
二酸化硫黄(窒素ベース)
1 vol ppm超 ~ 50 vol ppm
±1.5
±2.5
50 vol ppm超 ~ 1 vol%
±1.0
±2.0
注) 1級標準ガスとは、認定事業者が値付けした標準ガスのうち全数について、通商産業大臣が指定し
た指定校正機関が濃度信頼性試験を実施した時、測定濃度が表の精度欄に掲げる1級標準ガスの精度
以内のもの。
2級標準ガスとは、認定事業者が値付けした標準ガスのうち1/3を抜き取り、指定校正機関が濃度
信頼性試験を実施した時、測定濃度が表の精度欄に掲げる2級標準ガスの精度以内のもの
- 27 -
(1) 校正用ガス調製装置の仕様
試料大気中の各種ガス濃度を精度良く測定するためには、自動測定機を適切に校正する必要が
あり、校正用ガス調製装置の性能は重要な項目である。表 2-3-2 に基本的な項目について望ましい
仕様を示す。
表 2-3-2 校正用ガス調製装置基本仕様
項 目
ゼロガス純度(精製能力)
スパンガス調製精度 希釈率精度
繰返し性
総合精度
仕
様
測定対象成分ガス濃度 1ppb以下
±2.0%以内
調製濃度の±2.0%以内
調製濃度の±4.0%以内
(2)スパンガス調製装置
スパンガス調製装置には流量比混合法、容積比混合法、拡散管法、化学反応法及び光化学反応
法がある。
1)流量比混合法
流量比混合法は、原料ガスと JIS K 0055 「ガス分析装置校正方法通則」に記載されている
希釈ガスの流量をそれぞれ正確に計測して調節し、流量比によって混合する方法である。それ
ぞれのガス流量の計測と調節には毛細管流量計、フロート形面積流量計及び質量流量計が使用
されている。図 2-3-2 に毛細管流量計と質量流量計を用いた装置の構成例を示す。
2)容積比混合法
容積比混合法は、混合ポンプや回転バルブを用いて原料ガスと希釈ガスの混合比を調節する
方法である。
3)拡散管法(パーミエイションチューブ法)
拡散管は、一定温度に保ち、管壁又はふっ化エチレン製樹脂膜から浸透気化する原料ガスを、
流量調節された希釈ガス中に混合する方法であり、SO2、NO2の発生に多く使用されてい
る。図 2-3-3 に拡散管法を用いた装置の構成例を示す。
4)化学反応法
原料ガスの全部又はその一部を、連続して化学反応させ標準ガスを得る方法である。この方
法を利用した装置としては、気相滴定(GPT)法と酸素酸化法によるNO、NO2、及びO3
の発生装置がある。図 2-3-4 に GPT 法を用いた装置の構成例を、図 2-3-5 に酸素酸化法を用い
た構成例を示す。
5)光化学反応法
希釈ガスに水銀灯による紫外線を照射し、希釈ガスの一部を光化学反応させて標準ガスを得
る方法であり、通常、精製空気からオゾンを発生させて使用されている。図 2-3-6 に光化学反
応を用いたオゾン発生装置の構成例を示す。
(3)ゼロガス調製装置
大気を精製してゼロガス又は希釈ガスを得る装置で、一般に大気中の不純物を触媒を用いた加
熱又はオゾンで酸化した後、モレキュラシーブ等の吸着剤を通して精製する方法である。
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図 2-3-7 にゼロガス調製装置の構成例を示す。
調圧器
毛細管
成分ガス
調圧器
調
製
ガ
ス
混合器
毛細管
希釈ガス
マスフロ-
コントロ-ラ
成分ガス
調
製
ガ
ス
混合器
マスフロ-
コントロ-ラ
希釈ガス
図 2-3-2 スパンガス調製装置の構成例(流量比混合法)
圧力
調整器
流量
調整弁
流量計
調
製
ガ
ス
温度計
高圧容器詰め
合成空気
又は精製空気
(希釈用)
銅製コイル
恒温槽
パ-ミエイション
チュ-ブ
及びホルダ
図 2-3-3 スパンガス調製装置の構成例(拡散法)
高圧容器詰め
合成空気
又は精製空気
(希釈用)
流量
調整弁
流量計
流量
調整弁
流量計
オゾン
発生器
流量
調整弁
反応器
混合器
流量計
一酸化窒素
標準ガス
図 2-3-4 スパンガス調製装置の構成例(GPT 法)
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調
製
ガ
ス
高圧容器詰め
合成空気
又は精製空気
流量
調整弁
流量計
流量
調整弁
流量計
流量
調整弁
流量計
窒素
混合器
酸化器
切替弁
流量
調整弁
調
製
ガ
ス
混合器
流量計
一酸化窒素
標準ガス
図 2-3-5 スパンガス調製装置の構成例(酸素酸化法)
圧力計
オゾン
発生器
フィルタ
除湿器
空気入口
オゾン
発生器
水銀灯
調
製
ガ
ス
窒素酸化
物除去剤
ポンプ
電源
スリ-ブ
図 2-3-6 スパンガス調製装置の構成例(光化学反応法)
(ドレイン)
吸着
圧縮
空
気
圧縮
除湿
触媒
酸化
切
替
冷却
吸着
(再生)
ドレイン
ドレイン
ドレイン
図 2-3-7 ゼロガス調製装置
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フィルタ
精
製
空
気
(4)操作上の注意事項
1)スパンガス調製装置
① 希釈ガスとして、高圧容器詰め環境用零位調整標準ガス(合成空気)又はゼロガス調製装
置により大気を精製したガスを用いる。
② 成分ガスとして、計量法のトレーサビリティ制度に基づく高圧容器詰め標準ガスを用いる。
③ 排気は圧力損失の少ない状態で、安全な場所に排出できるように配管する。機種によって
は、高濃度の成分ガスの一部が排出されるので、排気管を接続し、安全な室外に排気する。
④ 各部の配管はできるだけ短くし、漏れのないことを確かめる。
⑤ ガス漏れの確認には減圧方式と加圧方式がある。具体的な方法は、機種によって異なるの
でそれぞれの指示に従う。
⑥ 暖機を要する機種は、あらかじめ電源を入れ希釈ガスを流しておく。
⑦ 電気系統の通電後、各表示灯の点灯状況や流量設定器の動作の点検を行う。ただし、質量
流量計、デジタル表示器及び混合器の内部は不用意に触らない。
⑧ 容器のガス充填圧力が充分あることを確認し、あらかじめ圧力調整器や配管内のガス置換
を充分に行う。
⑨ 供給圧力が規定の範囲に設定できる調圧弁を用いる。成分ガス用調圧弁は内部が腐蝕され
ない材質を使用したものを使用する。
⑩ 希釈ガス及び成分ガスの圧力は、それぞれの機種ごとの指定値に設定する。
⑪ 流路切換部及び流量制御部を操作して設定濃度のガスを発生させる。設定濃度を発生させ
るには、次式(1)による計算又は流量設定用検量線、濃度設定用検量線を用いる。また、必
要により温度や圧力の補正も行う。
C1× Q1
C2× Q2
C =────── +──────
Q1+ Q2
Q1+ Q2
C
:設定ガス濃度(ppm)
(1)
C1
:成分ガス濃度(ppm)
C2
:希釈ガス中に不純物として含まれる成分ガス濃度(ppm)
Q1
:成分ガス流量(L/min)
Q2
:希釈ガス流量(L/min)
⑫ オーバーフローの流量計の浮子が浮いている状態で発生量を設定する。
⑬ ガス洗浄放出機構がある機種については、確実に操作して滞留ガスを排出する。
⑭ ガス洗浄排出機構がない機種については、成分ガス流路を希釈ガスで洗浄する。
⑮ 特に吸着性、腐食性の強い二酸化硫黄、一酸化窒素及び二酸化窒素を使用した時は、充分
にガス洗浄排出を行う。
⑯ 配管にガスが吸着するのを防ぐために、使用しない場合は配管に栓をしておく。
2)ゼロガス調製装置
① 原料ガスは、できるだけ清浄な大気を使用する。
② 暖機を要する機種はあらかじめ電源を入れ、ポンプを動作させ、最小流量で清浄空気を流
しておく。
③ 連続で使用する場合、乾燥剤や吸着剤の浄化処理破過量を超えないように、早めに交換す
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る。
④ ゼロガス調製装置の内部は、加圧又は減圧にされていることがあるので、始動時には他
の機器を接続する前に空気の供給口を開け、大気圧と平衡させてから接続する。
⑤ ゼロガス調製装置を長時間使用しないで放置すると、すぐには精製能力が得られないこと
がある。そのような場合には、吸着筒、乾燥筒の充分な暖機が必要である。
⑥ 処理能力の確認は、測定機にゼロガス調製装置から調製したガスと、高圧容器詰め環境用
零位調整標準ガス(合成空気)を交互に導入して行う。
(5)点検要領
校正用ガス調製装置を常に最良の状態に維持し、精度高い測定値を得るためには、適切な保守
管理が必要である。使用する校正用ガス調製装置の調製原理、構造、特徴はもとより使用条件を
充分理解した上で、保守管理を実施すれば、性能を長期にわたり最大限に維持できる。また、不
具合を早期に発見し対応することにより、無用な故障や欠測を未然に防止することができる。一
般的な保守点検要領は表 2-3-3 に示すが、詳細は各校正用ガス調製装置の指示等を参考にして、
点検項目、周期等を適切に決める。
一般的な故障対策は表 2-3-4 に示す。この故障対策は、校正用ガス調製装置が正常に動作しな
い時に、使用者が処置することができる範囲での故障及び故障箇所と考えられる部分についての
対策と判断基準を与えるものである。
スパンガス調製装置は、二酸化硫黄又は一酸化窒素の高濃度標準ガスを用いて、実際の測定領
域よりも高濃度領域において、流量等の計測による希釈率の検査を、メーカーの協力を得るなど
して実施する。また、公的機関が行う関連検査を受けた「基準調製装置」と、各測定機装着のス
パンガス調製装置とを比較する方法により、更に精度確保に万全を期することが望ましい。一方、
メタン又は一酸化炭素の低濃度域でも安定な標準ガスを準備し、高濃度標準ガスを用いてスパン
ガス調製装置により実際の測定領域と同程度の濃度のガスを調製し、メタン又は一酸化炭素の測
定機で両者の濃度を比較する方法でも精度を確認することができる。
いずれの方法も、精度を維持するため定期的(1 年に 1 回以上)に実施する必要がある。
なお、高濃度ガスによる精度検査を実施した場合には、希釈ゼロガス中の対象成分は無視でき
るが、検査時の高濃度ガスが装置内に吸着され、低濃度の校正実用ガス調製時に脱着する恐れも
あり、充分注意する必要がある。また、ガスは濃度、種類によって粘度や比重に違いがあり、基
本的には、実流量に影響することが考えられる。
3.4 測定機器用の水
測定機器の吸収液、等価液の調製及び炭化水素自動測定機の水素発生器に使用する水は、脱イオ
ン水を使用することになっている。脱イオン水の調製は、イオン交換樹脂法によっているが、現状
では原水の汚れにより、イオン交換樹脂床を通す精製法のみでは、電気伝導率 0.1mS/m(1μS/cm、
20℃)以下の水が調製し難い。このため、溶液導電率法二酸化硫黄測定やオキシダント測定用の吸
収液及び吸光光度法窒素酸化物測定用の酸化液を調製するための水並びに水素発生器用の水を得る
ことが困難になり、含有機物の影響も生じている。したがって、この純度の水を得るためには、蒸
留法、逆浸透法等他の精製法と組み合わせて製造する必要がある。現在では、これらの精製法を組
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み合わせた装置が市販されており、原水の水質に合わせた装置を選択する必要がある。
(1)イオン交換樹脂法―蒸留法(又は蒸留法―イオン交換樹脂法)
有機炭素の多い原水の場合には、イオン交換樹脂法で充分に除去することが困難であるため、
蒸留法を組み合わせた装置が望ましい。この精製法で得る脱イオン蒸留水は、吸収液の調製に適
している。
(2)逆浸透法―イオン交換樹脂法(又は逆浸透法―蒸留法)
逆浸透法は、無機イオン及び有機物を除去することができるが、イオン交換樹脂法や蒸留法に
比べ除去率が低い。このため、イオン交換樹脂法の前段に取り付け、イオン交換樹脂の劣化を防
ぐ前処理法として利用される。
本マニュアルでは(1)、(2)の方法で調製した水を「純水」とする。
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