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口ノ津港再編事業について
口ノ津港再編事業について 島原振興局 建設部 河港課 ◎城戸 学 ○酒井 優作 1.口ノ津港の概況 口ノ津港は島原半島南端に位置し、対岸には天 図-1 位置図 草を望み、東、北、西を丘陵に囲まれた天然の良 港である。長崎港や平戸港よりも早い永禄5年( 1562年)に開港し、ポルトガル船が来航する など古い歴史を持つ港である。 明治22年には貿易港に指定され、三井三池炭 鉱の石炭の積出港として活況を呈していたが、昭 和41年に当時の貿易港としての最低基準を割り 、貿易港としての歴史にピリオドを打っている。 現在は、熊本県の鬼池港を結ぶ島鉄フェリーの 就航や砂利・砂の陸揚げなど、島原半島南部の物 口ノ津港 流拠点として重要な役割を果たしている。 特にフェリーは1日に15~17便が就航して おり、港全体の貨物量は県内9位の約150万ト ンの取扱量、乗降人員についても県内9位の35 万人となっている。 また、7月には南島原市の夏の最大のイベント であるマリンフェスタの会場としても利用されて いる。 写-2 明治30年代の口ノ津港 写真-1 マリンフェスタ状況 2.現状と課題 口ノ津港が位置する島原半島南部は、 平成28年度に世界遺産登録を目指す『長 崎の教会郡とキリスト教関連遺産』の構成 資産である『日野江城跡』、『原城跡』や、 日本で始めて世界ジオパークに認定された 島原半島ジオパーク等を有している。 また、最近では早崎瀬戸を中心として行 われるイルカウォッチングが新たな観光資 源となっている。 写真-3 イルカウォッチング 南島原市では、これらの観光資源を活か した観光による地域活性化を市の総合計画 に掲げており、口ノ津港はその拠点となる ものである。 しかしながら、現在の口ノ津港は、ター ミナルビルや発着桟橋等の老朽化が著しく、 待合所も狭いことから、フェリーターミナ ルとしてのサービス機能が充実していない。 写真-4 日野江城跡 また、駐車場も狭く、路線バスとフェリー 待ち車両で混雑し、ゴールデンウィーク等 の多客期には隣接する国道251号にフェ リー待ちの車両が並ぶなど、一般車両の通 行に支障を来している。 観光面では、口ノ津港周辺に観光案内所 などが無く、土産店なども不足し、観光客 が立ち寄りたくなるような演出に貧しい。 また、口ノ津港内のイルカウォッチングの 発着施設や口ノ津港資料館はターミナルビ 写真-5 駐車場混雑状況1 ルから離れており、不便な状況である。 このような状況から、現在の口ノ津港は 島原や雲仙、長崎市、熊本県天草市への1 通過点となってしまっている。 写真-6 駐車場混雑状況2 3.口之津みなとまちづくり協議会について 南島原市は、先にあげた課題を解決し島原 半島南部の発展、地域の活性化のため、平成 24年7月に「口之津みなとまちづくり協議 会」を立ち上げ、口ノ津港を中心としたみな とまちづくりの計画策定に着手した。 協議会は、副市長を会長とし、市議会議 員、地元漁協、商工会、観光船組合、などの 代表者11名を委員とし、島原振興局河港課 は協議会にオブザーバーとして参加し、計画 写真-7 協議会状況 立案等も積極的に行った。事前協議を含め、7回の協議会を開催しており、ターミナ ル整備の先進地として長崎港や福江港の視察も行っている。 協議会に先立ち委員候補者と事前協議、意見交換会などを行い、フェリーターミナ ルの港口部への移転やヨットハーバーなどの提案がなされている。 第1回協議会では、主に事前協議で提案された港口にフェリーターミナルを移転し てはとの意見に対する協議を行っている。意見の趣旨は港内の混雑解消のためという ことであったが、口之津商店街とのコミュニティーが分断され、市街地の活性化が図 れないなどの理由から、現在のターミナル周辺に整備することとした。 第2回協議会では、交流拠点ゾーニングと整備内容についての協議を、第3回協議 会ではターミナルビル内の配置案、埋立地の配置ゾーニング案を協議した。 第4回から第6回協議会では、それまでの内容をさらに協議し、決定したのが下記 パース(図-2)となる ターミナルビルは、口ノ津港資料館、南島原市役所口之津支所、イルカウォッチン グ営業所などを備えた複合施設とし、フェリー乗降用施設、イルカウォッチングをは じめとした観光船乗降用浮桟橋、親水タイプの護岸を整備することとした。 図-2 口ノ津みなとづくり協議会策定パース図 4.実施にあたって 整備の区分は、従来の港湾施設の整備方針に基づき、ターミナルビル及びその駐車 場を南島原市が、その他の港湾施設を県が整備することとした。 県が受け持つ港湾施設の整備は、平成26年度の新規事業として採択された。初年 度は、各港湾施設の設計を行っている。 ①可動橋計画の見直し 島原振興局管内には、口ノ津港を含め、多比良港、島原港で4社のフェリーが就航 している。そのいずれも車両のフェリーへの乗降施設として可動橋が整備されており、 今回のフェリーへの乗降施設も通常の可動橋で計画していた。 しかしながら、平成26年6月に多比良港 の可動橋で油圧シリンダーの不具合が生じ補 修が必要な状況となった。多比良港において は、可動橋が2基整備されていたため、物流 に重大な影響を与えなかったが、多比良港の 可動橋は整備後15年程度で比較的新しいも のであるが1日に20便程度が就航し利用頻 度が高いため、他の港に比べ老朽化の進行が 速いことが原因と考えられた。 写真-8 油圧シリンダーオイル漏れ状況 口ノ津港の場合には1基の整備となること。 また、フェリーの就航数も1日に15~17便と多く、多比良港と同様に老朽化の進 行が速いと考えられ、油圧シリンダーに不具合が生じた場合、フェリーを利用した物 流及び人流がストップし、地域経済に重大な影響を与えることが想定された。 このため、班内で浮桟橋方式での整備を検討することとした。浮桟橋式とするメリ ットは可動橋の昇降操作が不要となり、油圧シリンダー等の機械類を最低限にできる ことで、仮に機械類に不具合が生じた場合にも人力での対応が可能となることがあげ られる。デメリットは大型車両載荷時の浮桟橋の動揺が考えられたが、動揺量と大型 車通過時のクリアランスを求めることで問題がないことを確認し、フェリー事業者か らも了解を得た。これにより浮桟橋による乗降施設の整備に決定した。 図-3 当初案 可動橋側面図(参考図) 図-4 採用案 浮桟橋側面図 側 面 図(L側) 48800 1295 (エプロン伸縮量) 10255 36750 300 200 45275 A1 路面 +4.50 H.W.L+3.50 排水勾配1% +6.50 +6.00 1700 H.W.L +5.50 500 +4.00 12.5% L.W.L ±0.00 +0.15 8% i=11.86% ) (L.W.L時 浮体天端高+1.20 L.W.L±0.00 ②観光船用浮桟橋の見直し 観光船用浮桟橋の整備においては、当初、護岸に平行に配置し、同時に3隻の渓流 ができるように計画していた。 口ノ津港周辺では現在3社のイルカウォッチングが営業しているが、対岸の天草で は約20社が営業している。世界遺産登録などにより今後の観光客の増加が見込まれ、 新規のイルカウォッチングやその他の遊覧船の参入なども考えられるが、現在の配置 計画では拡張が困難である。このため、計画を見直し護岸から垂直方向に配置するこ ととした。 これにより、係留隻数が3隻から4隻に増加し、前面への拡張も可能な配置となっ た。また、当初計画では連絡橋がフェリー浮桟橋側の1カ所であったが、今回の変更 により2カ所となり、乗降客の利便性も向上すると考えられる。 co 水門 図-5 計画変更前配置図 co co M co 1 00 0 10 00 × BOX co co co co co co HP 60 0 車止 co 水 器 配 電 盤 co ベ E 量 止 ンチ co co 止 co 止 co As co As 観光船用浮桟橋 係留船舶 3隻 co ベ ンチ co co ベ ン As co チ co co ベ ンチ co co co co co co co co co co co フェリー用可動橋 co co 散水栓 E co As co As 排 排 排 co 配線B OX ポ 公衆トイレ ン プ co 排 看板 排 As co HP2 看 00 板 建物 イ ンター 排 止 ロック As As 看板 F 遊具 As 遊具 止 As 車止 遊具 遊具 遊具 排 82 5ヒ0 62 -2 港幹1 0 建物 止 排 As As As As 車止 E As co co いまむら家具 As co 止 As co 止 As co 建物 止 Co 看板 co 看板 HP 60 0 ロッ ター イン As ク co M 図-6 計画変更後配置図 co ベンチ 観光船用浮桟橋 係留船舶 4隻 co 建物 ベン チ co 水門 co co M co co co co co H P6 00 co 量 水 器 配 電 盤 co E co co 止 co 止 co co As As co ンチ co ベ ン As co co チ 高 速船 側 ベ 型 最大 船舶19. 0G.T型 co ベ ンチ 止 最 大船舶1 9.0G.T co 車止 . L 00 . C 0×10 5 1 00 8 BO X co co ベ ンチ co co co フェ リー 側 As co co co co co 舷門 co 2. 0% 最 大船舶19 .0G.T型 最大船舶 19.0G .T型 co 号 サザ ンクロ ス8 m,( B) 4.50m ( L) 22. 63 co co 散水栓 co E 管理橋 管理橋 可動フラップ - 5 co L C As フェリー用浮桟橋 co As 排 排 co 排 配線BO X 公衆トイレ ポ ン プ co 排 看板 排 As co 看 板 H P2 00 排 建物 インタ 遊具 止 As 遊具 As 車止 遊具 遊具 遊具 L C 排 82 5ヒ0 62 -2 港幹10 建物 止 排 As As As As 車止 E As As co 止 As As co 止 Co 看板 看板 ック ーロ タ イン As 止 8 25 ハ96 1- 5 港幹9 As 排 止 HP 60 0 co 止 建物 co co co いまむら家具 可動フラップ 止 看板 ク As 可動フラップ ーロッ As F 5.終わりに 今回、当初計画された構造形式や配置計画をより現地にあった整備手法に変更し設 計できたものと考えている。 口ノ津港再編事業は、今年の5月には現地工事に着手し基礎部の地盤改良を行って いるところである。 今後護岸整備を行うにあたり、運行するフェリーとの調整が必要となる。フェリー は約30分置きに運行しており、作業時間の制限、作業船とフェリーとの輻輳による 周辺海域への影響が予想される。このことから関係者と協議を密に行い、事故等なよ うに整備を行いたい。 口ノ津港再編事業は地域の活性化がつながるものと確信しており、今後とも重点的 に取り組んでいきたい。 なお、平成28年度後半から埋立土の搬入を予定しているが土砂が不足しているこ とから、施工時期が合う事業があれば協力をお願いしたい。 図―7 計画変更後パース図