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1-8-3-3 バッグインドラム

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1-8-3-3 バッグインドラム
【技術分類】1-8
食品の保護性を追求した包装容器/輸送包装用包装容器
【技術名称】1-8-3
食品用大型包装容器
【技術内容】
輸送容器には、一般にドラム、缶、ビン、紙容器などが、その特長を生かし用途に応じて使用され
ている。しかし、食品は輸送中に変質・変敗するという大きな問題があり、その主要な変質要因は、
多水分食品では微生物による腐敗であり、乾燥食品では吸湿と酸化・変色である。そこで、食品用の
バッグインカートン(BIC)、バッグインボックス(BIB)、バッグインドラム(BID)、バッグインコ
ンテナは、中に大形の袋(バッグ)を入れ、その中に食品を入れるとともに、多水分食品では無菌充
填で微生物の影響をなくし、乾燥食品では防湿性・バリアー性のある包材で酸化・変色などをなくし、
内容物の品質保持を図っている。
バッグの中に入れられる食品は、ビスケットやココア、ミックス類などのように吸湿して変質する
ものから、お酒のようなアルコールを含むものや果汁のように香気成分を含むもの、調味液のように
風味を重んじるものなどの液体食品では、風味の劣化が問題になる。このような食品に対して、成分
の酸化・変色などを防ぎ、香気を保持するために各種のハイバリアーフィルムが用いられている。
また、液体としての特性も、さらさらしたものから濃縮したピュレーやペーストのような粘凋なも
のまで、さまざまなものがある。液体の粘度が異なると、特に大形容器では輸送中の振動による波に
より袋の破断が起こる可能性がある。
これらの様々な問題を解決して、現在の BIC、BIB、BID、バッグインコンテナなどが多用される
ようになっている。
液体用容器の種類を図1に示す。
【図】
図 1 液体用容器の種類
出典:
「紙容器(2) 液体用紙容器」、食品と容器
技術研究会発行、313 頁
第1表
40 巻 6 号、1999 年 6 月 1 日、梅田勝彦著、缶詰
液体用容器の種類
【出典】
「紙容器(2)
液体用紙容器」、食品と容器
40 巻 6 号、1999 年 6 月 1 日、梅田勝彦著、缶詰技術研
究会発行、312-317 頁
― 203 ―
【技術分類】1-8-3
食品の保護性を追求した包装容器/輸送包装用包装容器/食品用大型包装
容器
【技術名称】1-8-3-1
バッグインカートン
【技術内容】
バングインカートン(bag in carton、BIC)は、ラインドカートン(lined carton)とも呼ばれ、 カー
トンの中にさらに袋(バッグ)が同時に組み込まれているものである。このバッグには、充填される
食品、薬品類を保護するために防湿性、耐久性、耐油性、保香性、ガス遮断性などの機能を持った各
種プラスチックフィルムや、プラスチックフィルムとアルミ箔や紙をラミネートしたものが用いられ
る。BIC は、包装作業の合理化、省力化および包装諸経費の低減を目的として開発されたものである。
この包装形態が重要視されている理由は、内容物の保護機能を高め、包装の省力化が図れ、包装容器
の廃棄処分の時に外側の紙器と中のプラスチックバッグとを分別し、それぞれを回収することができ
ることであり、環境対応機能を兼ね備えているからである。つまり、あらゆる種類の合成樹脂フィル
ムを利用して袋を作ることができ、これによりガス遮断性、保香性、耐油性などの機能を満足させ、
外側の紙器で強度、展示性、輸送性などの簡便さをねらったものである。
BIC を大別すると二種類に分けられるが、すべて充填機と密接な関係をもつシステムを形成してい
る。一つは、袋を内蔵するカートンを作り、このカートンを組み立てると自動的に袋の口が開き内容
物を入れることができる仕組みのもので、袋はカートンの内壁に糊で貼られている。この形の利点は、
印刷・紙器会社でフォールディングカートンのままで製造することができ、食品の充填工場では、充
填後、袋のシールと蓋のシールを行えばよい。もう一つは、印刷・紙器会社は、カートンブランクと
フィルムを別個に納め、充填工場ではまず袋を作り、これに充填・シール後、箱がラッピングされる
とともに成形、糊付けされて外箱となる形式である。この方は、充填機に付属する装置が複雑で高価
となる。用途によりこの両種のものが使い分けられるが、前者は大量生産でも時々サイズが変更され
るもの、後者は年間を通じてほとんどサイズが変更されないものの方に適しているが、前者のほうが
一般的である。
前者の方法は、特殊機能のサックマシンで作られたカートンと、そのカートン専用の充填包装機を
組み合わせて商品を包装するシステムであり、(1)ダブルカートンシステム、(2)セカテーナーシステム、
(3)ライナーカートンシステムの3つの方法がある。図1にダブルカートンとセカテーナーの展開図A
と、ライナーカートンの展開図 B を示す。斜線部はフレキシブル包材である。充填包装機内の包装工
程は図2に示す通りである。
BIC システムは、内容物の保護機能や包装作業の合理化、省力化に優れているため、食品関係の採
用が多く、乾燥食品ではココア、ビスケット、クラッカー、ポテトチップ、米菓、食卓塩、ホットケー
キミックスなどの包装に用いられる。また、かつては酒類、液体複合調味料などの液体食品に多く用
いられたが、紙容器自体の遮断性が向上し、多くはそのままバッグ無しで無菌充填して使われるよう
になっている。
― 204 ―
【図】
図1
BIC の比較展開図
図2
充填包装機内の包装工程図
出典(図1)
:「紙器製造技術のすべて(20) 紙器の包装システム」、CARTON・BOX 9 巻 8 号、
1990 年 8 月 5 日、大沢良明著、株式会社日報発行、77 頁
図 9 バッグインカートンの3社
比較展開図
出典(図2)
:「紙器製造技術のすべて(20) 紙器の包装システム」、CARTON・BOX 9 巻 8 号、
1990 年 8 月 5 日、大沢良明著、株式会社日報発行、78 頁
図 10 充填包装機内での包装工程
【出典】
「紙器製造技術のすべて(20) 紙器の包装システム」、CARTON・BOX 9 巻 8 号、1990 年 8 月 5 日、
大沢良明著、株式会社日報発行、72-79 頁
【参考資料】
「包装技術便覧」
、1995 年 7 月 1 日、社団法人日本包装技術協会編、社団法人日本包装技術協会発行、
1028-1029 頁
「包装実務ハンドブック」、21 世紀包装研究協会、2001 年 1 月 31 日、株式会社日刊工業新聞社発行、
78-80 頁
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【技術分類】1-8-3
食品の保護性を追求した包装容器/輸送包装用包装容器/食品用大型包装
容器
【技術名称】1-8-3-2
バッグインボックス
【技術内容】
バッグインボックス(BIB)が日本市場に登場したのは、昭和 39 年藤森工業(株)が米国のヘドウィ
ン社より技術導入した「キュービテーナー※」が最初であるとされている。BIB が液体容器として、
土ガメ、樽、簾巻ビンを代替し、さらにガラスビン、金属缶分野に進出し、業務用液体容器の分類に
明確な位置付けがなされるようになった。BIB は、現在、食酢、清酒、醤油、ソース、調味料などの
食品分野や、農薬、現像液、次亜塩素酸ソーダ、接着剤などの工業分野に、一般的な容器として認め
られ、使用されている。
BIB とは、薄肉成形容器やフィルムの袋を内装とし、段ボール箱を外装とする複合形態の液体容器
である。即ち、内装は耐水性、耐薬品性を有し、フレキシブルで折りたたみができ、密封できる容器
や袋と、外装は保管・輸送時に必要な剛性と、積重ね性、持運び性のある段ボール箱とを組合せるこ
とにより、金属缶のもつ積重ね性や持運び性とプラスチックブロー缶のもつ耐薬品性と強度性能など
を同時に満足させる折りたたみの出来る合理的な液体容器である。
BIB が共通して持っている特長は、以下の通りである。1)軽量で持運びに便利で、廃棄処理が容
易である。2)輸送・保管など流通コストが安い。3)丈夫で落してもガラスのように破損の心配が
少なく、金属缶のように変形の恐れが少ない。4)化学的性質に優れている。5)衛生性に優れてい
る。6)ワンウェー容器であり、容器回収が不要である。7)商品性がよい。逆に欠点もあり、注意
する必要がある点は、1)水に弱い、2)内容品の保護性(バリアー性がガラス瓶より劣る)、3)
PE の場合、界面活性剤やアルコール類の特定内容品によってストレスクラックが生じ、実用上問題
になることがあるが、EVA や LLDPE の樹脂改良により、ほとんど防止出来るようになった。
BIB は、内装の種類で二つに分類出来る。1 つは成形容器であり、 一つはフィルムから作られる袋
である。成形容器はさらに成形方式により真空成形とブロー成形に分けられる。成形タイプの BIB の
例を図 1 に、ヒートシールタイプの BIB の例を図2に示す。
真空成形方式の BIB は、2 枚のシートを真空成形して溶着し、
一方あらかじめ射出成形されたクロー
ジャーボディーを、物理的に取り付ける独特な成形方式であり、薄肉で折りたたみ出来る容器に適し
た方法である。用途は食酢、清酒、味林、複合調味料などの食品用途と、現像液、液肥、洗剤、表面
処理剤、接着剤などの工業用途である。ハイバリアータイプは、日本酒、ワイン、調味料、ジュース、
コーヒー、香料などに用いられている。更に付属部品には各種コック類が用意され、未端ユーザーで
の小出しが容易に出来るようになっている。
ブロー方式の BIB は、押出機より押出されたパリソンを、予備ブローしながらパリソンを切断し、
金型で型締めしてブロー成形する方法で、あらかじめ射出成形されたクロージャーボディーを、金型
から内部に供給し、ブロー時に容器に溶着する方法である。用途は真空成形方式と全く同様であり、
食酢、味淋、タレなどの食品用途と、現像波、ホルマリン等化学薬品や接着剤、液肥、農薬など工業
用途である。ブロー方式の BIB の充填方法を図3に示す。まず、内装容器(バッグ)を外装段ボール
ケースに収納し、液体などの内容品を充填機で自動的に充填する。充填後は内装容器のキャップを閉
じて、外装段ボールケースの天面フラップを封かんテープや糊などで封かんして完成する。
ヒートシール方式の BIB は、インフレーション法で作ったチューブを2枚重ねて4方シールし、射
出成形によりあらかじめ作られたクロージャーボディーを袋に溶着して取付け、内袋とする単純な方
法である。ヒートシールタイプは成形タイプの方式に比べ、安価なインフレーションフィルムが使用
出来るので、コスト的に安く供給が出来ること、内容品に応じてバリアー性が必要な場合は、ラミネー
トフィルムにより PVDC、EVOH 層やアルミ蒸着フィルムを2層、3層袋の一層に組込むなど、成形
方式では容易に製造しにくい方法が可能という特長がある。用途は成形タイプの BIB と同じ用途に使
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用され、醤油、ソース、ワイン、食酢、味淋、 クリーム、シェークミックス等食品分野と、酢酸ビニ
ル系接着剤、現像液、バッテリー用稀硫酸、蒸留水など工業分野に用いられている。ヒートシールタ
イプの特長であるバリアー性を持ったラミネートフィルムを適用した例は、全体的には少ないと言え、
酸素により変色、変質の生じやすいしょう油、ソース、各種タレなどへの適用は徐々に増加しており、
更にアセプティック化も行われている。
【図】
図1
成形タイプの BIB
図3
BIB の充填方法
図2
ヒートシールタイプの BIB
出典(図 1):「食品包装便覧」、1988 年 3 月 1 日、社団法人日本包装技術協会編、社団法人日本包
装技術協会発行、562 頁
成形タイプバッグインボックス
出典(図2)
:
「食品包装便覧」、1988 年 3 月 1 日、社団法人日本包装技術協会編、社団法人日本包
装技術協会発行、562 頁
ヒートシールタイプバッグインボックス
出典(図3)
:「包装早わかり」、2006 年 10 月、社団法人日本包装技術協会発行、61 頁
充填方法
【出典】
「食品包装便覧」
、1988 年 3 月 1 日、社団法人日本包装技術協会編、社団法人日本包装技術協会発行、
558-567 頁
「包装早わかり」、2006 年 10 月、社団法人日本包装技術協会発行、59-61 頁
※キュービテーナー:ヘドウィンコーポレーションの登録商標
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【技術分類】1-8-3
食品の保護性を追求した包装容器/輸送包装用包装容器/食品用大型包装
容器
【技術名称】1-8-3-3
バッグインドラム
【技術内容】
バッグインボックスが液体輸送用のワンウェイ容器であったのに対し、バッグインドラム(BID)、
バッグインコンテナは、内層の袋をワンウェイとし、容器の構造体である外層は再使用する形態のも
のが一般的である。しかし、内装・外装とも再使用する形態も、環境問題、廃容器の処理問題の対応で
種々のタイプが使われている。
BID は食品用では濃縮果汁の輸送に用いられている。一方、海外では 1970 年代からショーリー社
が 1000 リッター容量のワンウェイ容器(内装にプラスチックの三重袋、外層に三層段ボールを使用)
を無菌充填方式でトマトケチャップやピューレの輸送包装容器として使用している例がある。従って、
一口に BID、バッグインコンテナといっても多種多様であるといえる。
BID、バッグインコンテナの特徴としては、(1)化学的性質に優れる。内層の接液面に安定な PE を
使用しているので、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れ、錆の発生する心配がない。(2)
衛生性に優れる。一般的に内装は衛生的に製造され取り扱われているので、容器の洗浄が不要である。
また、食品用途には食品衛生法に基づく規格に適合した内装が準備されている。(3)回収容器の洗浄が
容易である。使用後の回収容器は内装を取り除くことによって、外装をそのまま再使用するか、ある
いは簡単な洗浄で良いので、洗浄の費用、洗浄廃液の処理費用が削減または不要となる。
ワンウェイ容器仕様のタイプについてはさらに、(A)容器の回収費用が不要、(B)外装も容易に折り
畳め、保管スペースが少なくて済む、(C)紙製外装は再資源として利用できる、(D)空容器の管理費用
が不要などの利点がある。注出口のあるクローズドタイプについてはさらに、(1)再封性があるので、
内容品の小出し使用がしやすい。(2)無菌充填ができる。専用の無菌充填機を使用することによって無
菌充填が可能となり、(A)冷蔵・冷凍流通を常温流通にできることによる物流コストの低減、(B)濃縮、
解凍による品質劣化の防止などのメリットがでてくる。
BID、バッグインコンテナには多くの利点があるが、実使用にあたっては以下のような配慮をしな
ければならない。(1)法的な規制がある。液体輸送容器には BIB と同様に、内容品の性質、容量・数
量に応じた法規制があるので確認が必要である。例えば、(A)食品衛生法、(B)毒物及び劇物取締法、
(C)消防法、(D)日本薬局方などである。(2)内容品の品質保護性が必要である。内装の接液面の材質に
は耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、物理的強度、衛生性、無味無臭性などの優れた特徴をもってい
る PE が一般的に使用されるが、PE 単体ではガスバリアー性の点で金属容器やガラス容器に比べて
劣るので、空気中の酸素によって酸化・変色するもの、あるいは内容品の成分が透過・逸散すること
で品質が著しく劣化するような食品などについては、事前に充分な試験を行い、シェルフライフを考
慮に入れた使用(流通期間、流通温度など)が大切である。現在、内装には PE だけではなく、NY
積層フィルム、アルミ蒸着積層フィルムなどを初め、各種バリアー材を使用したものが多数上市され
ているので、内容品の要求品質レベルに応じて選択することも重要な点である。(3)外装の強度が重要
である。外装の強度設計にあたっては、(A)1個当たりの重量が重い、(B)中身が液体のため重心が移
動しやすい、などの点から輸送中や保管中に外装が担う強度を考慮に入れ、強度に充分な安全性をみ
る必要がある。特に、ワンウェイ容器で材質が紙製のものについては、強度の湿度依存性と流通条件
を考慮し、その上で経済的な設計をすることが大切である。(4)内装を使用する BID、バッグインコン
テナでは充填のしやすさが極めて重要なポイントであり、容器の取扱い方に沿った正しい充填方法を
とる必要がある。BID、バッグインコンテナを使用する時の充填作業は、タービン式流量計とコック
を組み合わせた簡単な治具から無菌充填システムまで、各種の充填システムが上市されているので、
用途・目的に合った方法を選択することができる。
従来、 ドラム缶サイズ(200 リッター) 以下の容量については、外装としてポリドラム、ファイ
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バードラム、金属ドラムを使い、内装には PE 製の成形品または内袋を使った組合せ容器が多く使用
されてきていた。
液体輸送容器の基本課題は「漏れない」ことに尽きるといっても過言ではない。この点については
内袋の性能が極めて重要となり、内容品の品質を保護する機能と共に、経済性と安全性を踏まえた材
質の選定と内袋の仕様設計が重要である。BID の内装の一例を図1に、またドラム缶に装着された様
子を図2に示す。さらに、組立て式1トンコンテナの内装及び外装を図3に、組立て後の形状を図4
に示す。
【図】
図1
BID 内装の一例
図3
組立て式 BIC の内装と外装
図4
組立て式 BIC 組立て図
図2
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内装を装着したドラム缶
出典(図1)
:「包装技術便覧」、1995 年 7 月 1 日、社団法人日本包装技術協会発行、888 頁
写真
3.66 BID 内装の一例
出典(図2)
:「包装実務ハンドブック」、2001 年 1 月 31 日、21 世紀包装研究協会編、株式会社日
刊工業新聞社発行、141 頁
写真 20.2 バッグ・イン・コンテナ
出典(図3)
:「包装技術便覧」、1995 年 7 月 1 日、社団法人日本包装技術協会発行、888 頁
写真
3.68 BIC-1 トンコンテナの例
出典(図4)
:「包装技術便覧」、1995 年 7 月 1 日、社団法人日本包装技術協会発行、888 頁
写真
3.69 BIC-1トンコンテナ組立外観
【出典】
「包装技術便覧」、1995 年 7 月 1 日、社団法人日本包装技術協会発行、887-890 頁
「包装実務ハンドブック」、2001 年 1 月 31 日、21 世紀包装研究協会編、株式会社日刊工業新聞社発
行、140-142 頁
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