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2001年10月
三 菱 電 線 工 業 時 報
第98号
シース用ポリエチレン材料のリサイクル検討
A Study on Recycled Polyethylene Materials for Cable Sheath
梅 尾 信 博
*1
葛 下 弘 和
N. Umeo
*2
森 澤 正 明
M. Morisawa
生 方 裕 史
H. Kuzushita
山 口 俊一郎
*2
*2
藤 井 英 清
S. Yamaguchi
*2
H. Ubukata
*1
小 池 忠 良
H. Fujii
*3
*3
山 崎 恵 俊
T. Oike
S. Yamazaki
要 約
電線・ケーブルの被覆材料のリサイクル率は,サーマルリサイクルを含めても 20% 程度に留まっており,ほとん
どが埋立処理されているのが現状である。
マテリアルリサイクルへの社会的要求に対応するため,メタル通信ケーブルに使用されているポリエチレンシー
ス材料について,撤去ケーブルの外被を再生処理し,その再生材料の特性評価を行なった。その結果,ポリエチレ
ン(PE)シース,ラミネートアルミ(LAP)シース,スタルペス(STAL)シースの三つのどのシース構造の外被か
ら再生されたポリエチレン材料であっても,メタル通信ケーブルに再利用可能であることが判明した。また,この
再生ポリエチレン材料は,技術的な検討を必要とするが,光通信ケーブル用としても再利用できる可能性があると
考えられる。
キーワード: 環境,リサイクル,再生,ポリエチレン,シース材料,メタル通信ケーブル,光通信ケーブル
Summary
The present recycling rate of cables and sheath materials is only 20% including thermal recycle, the rest is thrown
away for landfills.
In answer to growing concerns for material recycling, we considered the recycling of polyethylene sheath materials
used on metal communication cables. The outer sheath of discarded cables were recycled and their characteristics
were evaluated.
As a result, we found that any polyethylene material recycled from an outer cover of PE, LAP or STAL sheath
structures could be recycled to be used for metal communication cables. Furthermore, these recycled polyethylene
materials could possibly be used for optical fiber communication cables, though technical evaluations are still necessary
to be definite.
Key words:Ecology, Recycle, Reproduce, Polyethylene, Sheath material, Metal communication cables, Optical fiber
communication cables
1.まえがき
アルミは,その価値が比較的高いためにほとんどがリサイ
クルされているが,被覆材料はサーマルリサイクルを含め
近年,現在までの大量生産・大量消費・大量廃棄型社会
ても 20% 程度に留まっており,ほとんどが埋立処理されて
経済システムによって排出された廃棄物の焼却や埋立処理
いるのが現状である。
のために生じる地球環境の破壊が問題となっている。現在,
我が国では市場原理によって焼却処理が主流になる傾
政府は「循環型社会形成推進基本法」を含む「リサイクル
向があるが,安易な焼却処理やサーマルリサイクルは,廃
関連六法」を制定し終え,循環型社会経済システムへ転換
棄物の発生を低減できない上,リサイクル技術の開発や普
を図るため環境インフラとしての制度や法的枠組みを急速
及の障害になっている と指摘されており,マテリアルリ
に整備しつつある
∼
。
サイクルされた再生品を可能な限り原料として使用し,最
電線・ケーブルに関しては,導体に使用されている銅や
*1 技術本部 総合研究所
終処理される廃棄物の発生を抑制することは,生産者責任
*2 情報通信事業本部 通信技術部
− 38 −
*3 伊丹製作所
シース用ポリエチレン材料のリサイクル検討
の一環であるという情勢となりつつある。
ルで混練した後,圧縮成形機中で一旦溶融成形してから冷
本報では,これらの状況に対応するため,メタル通信
却して作製した。また,当社メタル通信ケーブルシースに
ケーブルに使用されているポリエチレンシース材料につ
採用しているバージン材料を比較対象に使用した。
いて,撤去ケーブルの外被を再生処理し,その再生材料の
特性評価を行なうことによって,通信ケーブル用シース材
2.2.2 融点,200℃酸化誘導期
料として再利用可能であるかを検討した。
示差走査熱量計にてアルミセルを使用し測定した。
2.実験
2.2.3 紫外線劣化試験
サンシャインウェザオメータを使用し,全照射,ブラッ
2.1 ポリエチレンシース材料の再生
クパネル温度 63℃,降雨 120 分中 18 分の紫外線照射条件
2.1.1 原材料
で促進劣化を施し,照射済試料の引張特性を測定した。
再生ポリエチレンを作製する原材料として,1976年から
1 9 9 1 年に製造されたメタル通信ケーブルの撤去ケーブル
2.2.4 電気特性
の外被を使用した。原材料の種類として,ポリエチレン(以
体積抵抗率は JIS K 6723 に,絶縁破壊電圧は JIS K 2110
下 PE)シース,アルミラミネート(以下 LAP)シース,ス
に準拠して測定した。
タルペス(以下STAL)シースの三つのシース構造から採取
2.2.5 摩擦係数
したポリエチレン外被に分類した。
JIS K 7125 に準拠して測定を行なった。
2.1.2 作製工程
PEシース材料の再生工程をFig. 1に示す。まず,撤去ケー
2.2.6 その他の特性
ブルから剥線機を使用して外被を分離した。次に,PE シー
その他の特性については JCS 375A に準拠して測定を行
スはそのままで,LAP シースは熱ロール処理によって LAP
なった。誘電特性は電圧上昇比法により 1MHz にて測定し
テープを剥離除去した後に,STAL シースは鋼帯を分離除
た。定ひずみ環境応力試験(ESR)の試験液にはパラノニ
去 し た 後 に 約 5 m m 角 に 破 砕 し た 。こ の 破 砕 原 材 料 を
ルポリオキシエチレンエーテル 10% 水溶液を使用し,500
20mmφ 二軸押出機を使用して造粒し,2mmφ × 3mm 程度
時間浸漬した。
のペレットを作製した。異物除去は押出時の金網によって
行ない,水洗などの洗浄工程は設定していない。異物除去
2.3 再生 PE 使用ケーブルの作製
用金網には 150,200,250 メッシュを使用した。
115mmφ 単軸押出機を使用し,クロスヘッド部設定温度
を 170℃,異物除去用金網を 80 メッシュにて,自己支持型
LAP シースメタル通信ケーブル(0.4-50CFS-R)を作製し
撤去ケーブル
た。
↓
2.4 再生 PE 使用ケーブルの特性評価
外被分離
2.4.1 剥離強度
↓
シース分別
PE LAP STAL LAP STAL 幅 10mm の LAP シースを速度 100mm/min にて外被とア
ルミテープに剥離したときの応力を測定した。
↓
アルミ/鋼帯分離
2.4.2 常温屈曲試験
ケーブルに曲率半径 6D(93mm)のマンドレルにて往復
↓
曲げを加えたとき,アルミテープに亀裂が生じる屈曲回数
破 砕
を測定した。
↓
2.4.3 低温衝撃屈曲試験
押出造粒
Fig. 1
− 30℃で 2時間保持したケーブルを曲率半径20mm のマ
ンドレルにて角度 90°で屈曲させたときのPE外被の亀裂の
Recycling procedure of PE sheath materials
有無を観察した。
PE シース材料の再生工程
2.2 再生 PE の特性評価
2.4.4 低温衝撃落下試験
2.2.1 試料
− 20℃で 1 時間保持したケーブルに,重量 1kg の錘を高
評価用シート試料は JCS 375A に準拠し,オープンロー
さ1mから落下したときのPE外被の亀裂の有無を観察した。
− 39 −
第98号
2001年10月
三 菱 電 線 工 業 時 報
Table 1
2.4.5 支持線引抜強度
Basic characteristics of recycled PEs according
ケーブル外被を 10cm 長残した試料から支持線を速度
to sheath structure
100mm/min で引き抜いたときの最大引抜力を測定した。
シース構造別再生 PE の基本特性
3.実験結果と考察
3.1 再生 PE の材料特性に対するシース構造の影響
シース構造の種類
PE
LAP
STAL
Virgin
MFR(g/10min)
0.25
0.14
0.27
0.17
密度(kg/m3)
937
936
948
933
引張破断強さ(MPa)
18.4
20.5
16.9
17.5
635
前述のように再生 P E の原材料として使用される撤去メ
引張破断伸び(%)
714
668
681
− 60℃耐寒性(F 数 /N)
0/5
0/5
0/5
0/5
タル通信ケーブルのシース構造には,PE シース,LAP シー
カーボン含有量(%)
2.76
2.57
3.94
2.59
ス,STAL シースの 3 種類がある。まず,再生 PE の材料特
性に対するシース構造の影響を調査するために,Fig. 1 の
工程に従いそれぞれのシース構造から再生 PE ペレットの
カーボン分散度(級)
6.2
7.0
7.6
6.6
定ひずみ ESR(F 数 /N)
0/10
0/10
0/10
0/10
200℃酸化誘導期(min)
82
37
86
57
硬度(ショア D)
54
55
53
54
作製を試みた。撤去ケーブルのシース表面には土砂や錆な
体積抵抗率(Ω·m)
どの汚れが強力に付着しているが,本検討では積極的な洗
絶縁破壊電圧(kV/mm)
0.3 × 1015 1.1 × 1015 1.9 × 1015 0.9 × 1015
35
36
33
39
浄工程は設定せず,異物除去は押出造粒時の金網に頼るこ
ととした。金網はどのシース構造に対しても 200 メッシュ
の,問題ないレベルにあることが確認された。
を使用した。その結果,すべてのシース構造において異物
以上の結果より,20 年前後経過したケーブルから採取さ
の目詰まりと考えられる吐出量減少が起こり,一定サイク
れた外被の再生 PE は,シース構造にかかわらず,バージン
ルで金網の交換が必要となった。特に,LAP シースはケー
材料と同等の基本特性を保持していることが明らかと
ブル撤去時や解体時にアルミテープが P E に食い込んでい
なった。
るとアルミ分離工程では除去しきれず,アルミ屑が目詰ま
りするため頻繁に金網の交換が必要となった。
3.1.2 長期信頼性評価
次に,LAPシースからアルミテープを剥離分離したとき,
次に,長期信頼性試験として実施した 100℃加熱老化試
接着剤がアルミ側と PE 側のどちらに付着するか不規則で
験結果を Fig. 2a,Fig. 2b に,紫外線劣化試験結果を
あるため,LAPシースからの再生PEには接着剤が混入して
F i g . 3a,F i g . 3b に示す。加熱老化試験,紫外線劣化試験
しまうことがわかった。同様に,PE シースからの再生 PE
の両方において,どのシース構造の再生PEもバージン材料
には除去困難な押え巻きテープのポリエステルなどの毛
と同様に特性低下がなく,同等以上の引張破断強さと引張
羽が,STAL シースからの再生 PE にも除去困難な防湿混和
破断伸びを示した。
物が,それぞれ混入してしまうことがわかった。
以上の結果より,どのシース構造の外被から再生された
3.1.1 基本特性評価
性を十分に有していることが確認できた。
PE材料も,ケーブルシース材料として要求される長期信頼
それぞれのシース構造から作製された再生 PE ペレット
の基本特性の評価結果を Table 1 に示す。メルトフローレ
3.2 再生 PE の材料特性に対する異物の影響
イト(MFR)
,密度,引張強さ,引張破断伸び,− 60℃耐
撤去ケーブルのシース表面には,特に地下系ケーブルに
寒性,カーボン分散性,カーボン含有量,500 時間定ひず
は土砂や錆などの汚れが強力に付着している。本検討では
み ESR 特性,200℃酸化誘導期,硬度,体積抵抗率,絶縁
これらの異物除去は,押出造粒時の金網でのみ行なうこと
破壊電圧について評価した。
としたが,それらの異物の混入が,再生 PE の材料特性にど
PE シースと STAL シースの再生 PE ペレットは,バージ
の程度の影響があるのかを調査した。
ン材料に比較すると,経年劣化による低分子量化のためと
考えられるMFRの増加傾向が見られたが,LAPシースは同
3.2.1 基本特性評価
等であった。引張特性,耐寒性,500 時間定ひずみ ESR 特
LAP シースからの再生工程において,異物除去用金網に
性,ショア D 硬度など力学特性は,すべての再生 PE がバー
150,200,250 メッシュを使用した再生PE を作製した。そ
ジン材料と同等以上の特性を示した。また,カーボンの含
れらの基本特性評価結果を Table 2 に示す。同じシース構
有量とカーボン分散度は,PE および LAP シースの再生 PE
造であるため,金網の目開きを変えてもほぼ同等の基本特
は特に変化のないことがわかった。STAL シースの再生 PE
性を示し,バージン材料に比較し,酸化誘導期や電気特性
は含有量が高く分散度が 7.6 級を示したが,これは混入し
がやや劣るものの,引張特性を含め同等以上の力学特性を
ている防湿混和物に起因するものと考えられる。2 0 0 ℃酸
示した。異物混入レベルの影響としては,目開きが大きい
化誘導期は,LAP シースの再生 PE が 37min と最も短い時
ほどカーボン分散度が悪くなっていることである。経年劣
間を示したが,特に問題となるレベルではない。体積抵抗
化によりカーボンの凝集が変化するとは考えられないた
率も同等であり,絶縁破壊電圧もやや低下傾向はあるもの
め,異物をカウントしているものと考えられるが,カーボ
− 40 −
シース用ポリエチレン材料のリサイクル検討
22
800
Tensile strain at break (%)
Tensile stress at break (MPa)
PE
20
18
16
PE
14
LAP
STAL
12
LAP
700
STAL
Virgin
600
500
Virgin
10
400
0
10
20
30
40
50
0
60
1000
2000
Time (day)
3000
4000
5000
Time (hour)
Fig. 2a Tensile stress at break when aged at 100℃
Fig. 3b Tensile strain at break under UV exposure
引張破断強さの 100℃加熱老化性
引張破断伸びの紫外線劣化性
Table 2
800
Basic characteristics of recycled PEs according
Tensile strain at break (%)
to the level of contamination
異物混入レベル別再生 PE の基本特性
700
600
PE
LAP
500
STAL
Virgin
400
0
10
20
30
40
50
60
Time (day)
Fig. 2b Tensile strain at break when aged at 100℃
引張破断伸びの 100℃加熱老化性
Virgin
LAP
シース構造の種類
金網の種類
#150
#200
#250
金網の目開き(mm)
0.104
0.074
0.061
−
MFR(g/10min)
0.10
0.14
0.12
0.17
−
密度(kg/m3)
938
936
944
933
引張破断強さ(MPa)
21.8
20.5
22.6
17.5
635
引張破断伸び(%)
649
668
675
− 60℃耐寒性(F 数 /N)
0/5
0/5
0/5
0/5
カーボン含有量(%)
2.62
2.57
2.68
2.59
カーボン分散度(級)
7.6
7.0
6.0
6.6
定ひずみ ESR(F 数 /N)
0/10
0/10
0/10
0/10
200℃酸化誘導期(min)
42
37
45
57
硬度(ショア D)
54
55
52
54
体積抵抗率(Ω·m)
0.6 × 1015 1.1 × 1015 0.3 × 1015 0.9 × 1015
絶縁破壊電圧(kV/mm)
30
36
28
39
Tensile stress at break (MPa)
22
3.2.2 長期信頼性評価
20
次に,長期信頼性試験として実施した 100℃加熱老化試
験結果をFig. 4a,Fig. 4bに,紫外線劣化試験結果をFig.5a,
18
Fig. 5b に示す。加熱老化試験,紫外線劣化試験の両方にお
16
いて,どの再生 P E も異物除去用金網の目開きに影響され
14
12
PE
ず,バージン材料と同様に特性低下がなく,同等以上の引
LAP
張破断強さと引張破断伸びを示した。
STAL
以上の結果より,150 メッシュ金網で除去可能な粒径
Virgin
0.1mm 以上の異物が除去されていれば,ケーブルシース材
10
0
1000
2000
3000
4000
料として要求される長期信頼性を十分に有していること
5000
が確認できた。また,それ以上細かな異物を除去した場合
Time (hour)
も長期信頼性に変化がないことがわかった。
Fig. 3a Tensile stress at break under UV exposure
引張破断強さの紫外線劣化性
3.3 再生 PE のメタル通信ケーブルシースへの適用
再生 P E を実際にケーブルシースに適用するため,再生
ンと異物を明確に区別するのは非常に難しい。
PE を使用した 0.4-50CFS-R を作製し,そのケーブル特性
以上の結果より,再生 PE の基本特性は,異物混入レベ
の評価を行なった。再生 PE 材料には,LAP シース構造の外
ルに影響されないことが確認された。
被を原材料とし,押出造粒時の異物除去用金網に 150 メッ
− 41 −
2001年10月
三 菱 電 線 工 業 時 報
第98号
800
25
Tensile strain at break (%)
Tensile stress at break (MPa)
150mesh
20
15
150mesh
200mesh
10
250mesh
200mesh
700
250mesh
Virgin
600
500
Virgin
400
5
0
10
20
30
40
50
60
0
1000
2000
3000
4000
5000
Time (hour)
Time (day)
Fig. 5b Tensile strain at break under UV exposure
Fig. 4a Tensile stress at break when aged at 100℃
引張破断強さの 100℃加熱老化性
引張破断伸びの紫外線劣化性
800
となる傾向にあるが非常に良好であった。ケーブルより採
Tensile strain at break (%)
取した外被の材料特性,ケーブル特性ともにバージン材料
を使用しているケーブルと同等の特性を示した。
700
以上の結果より,少なくとも LAP シースからの再生 PE
は,メタル通信ケーブルシースとしての要求特性を満たし
600
ており,本検討の再生工程にて作製された PE 材料は,再利
150mesh
用可能であることが確認できた。
200mesh
500
250mesh
Table 3
Virgin
Characteristics of a cable using recycled PE
再生 PE シースケーブルの特性
400
0
10
20
30
40
50
60
PE シース材料
Time (day)
引張破断伸びの 100℃加熱老化性
25
Tensile stress at break (MPa)
15.5
MFR(g/10min)
0.19
0.26
引張破断強さ(MPa)
20.0
20.0
引張破断伸び(%)
577
542
96
100℃× 48h
引張破断強さ残率(%)
85
加熱老化性
引張破断伸び残率(%)
88
96
0/5
0/5
− 50℃耐寒性(F 数 /N)
定ひずみ ESR(F 数 /N)
20
ケーブル外観
0/10
0/10
良好
良好
(やや艶消)
39
テープ剥離強度(N/10mm)
38
常温屈曲試験(回)
75
60
150mesh
低温衝撃屈曲試験(F 数 /N)
0/2
0/2
200mesh
低温衝撃落下試験(F 数 /N)
0/2
0/2
250mesh
支持線引抜強度(N)
1195
1274
15
10
1.6
ケーブル外径(mm)
Fig. 4b Tensile strain at break when aged at 100℃
Virgin
Recycled
シース厚さ(mm)
Virgin
3.4 再生 PE の光通信ケーブルシースへの適用の可能性
5
0
1000
2000
3000
4000
5000
再生 P E がメタル通信ケーブルシース材料として再利用
Time (hour)
可能であることが確認できたが,より需要の多い光通信
Fig. 5a Tensile stress at break under UV exposure
ケーブルに再利用可能であれば,ケーブルシース材料のリ
引張破断強さの紫外線劣化性
サイクルとしてより完全なものとなるだろう。
光通信ケーブルシース材料には,ケーブルの多条布設を
シュを用いて作製したペレットを使用した。
可能とするために,低い摩擦特性が要求されている。再生
ケーブル特性の評価結果を Table 3 に示す。再生 PE 使用
PE の摩擦特性評価結果を Table 4a,Table 4b に示す。相
ケーブルの外観は,バージン材料に比較すればやや艶消し
手材には試験片と同一材料または硬質塩化ビニル(P V C )
− 42 −
シース用ポリエチレン材料のリサイクル検討
を使用して評価を実施した。
ルシース材料として再利用可能である。
Table 4a に示すように,異物の除去金網に 200 メッシュ
P E シースからの再生は材料特性上問題ないものの,ポ
を使用して再生した場合,摩擦特性に対するシース構造の
リエステルなどの押え巻きテープの毛羽が再生 P E に混入
影響はなく,各摩擦係数もバージン材料とほぼ同等である
しているため,再利用には注意が必要である。
ことが確認できた。
S T A L シースからの再生は材料特性上問題ないものの,
Table 4a Friction characteristics of recycled PEs according
to sheath structure
相手材
摩擦係数(−)
同一材
PVC
なくとも,押出造粒工程での異物除去用金網に 1 5 0 メッ
シュより細かなものを使用すれば,材料特性上問題となる
Virgin
PE
LAP
STAL
static
0.53
0.50
0.50
0.51
レベルにはない。
kinematic
0.40
0.44
0.39
0.40
static
0.31
0.26
0.27
0.29
メタル通信ケーブルの外被から再生されたシース材料
kinematic
0.26
0.21
0.22
0.24
は,再生PEの配合比率や二重シース構造の内層に使用する
など摩擦特性の視点からの配慮が必要であるが,光通信
Table 4b Friction characteristics of recycled PEs according
to the level of contamination
摩擦係数(−)
同一材
PVC
異物除去金網の目開き
ケーブル用シース材料として適用できる可能性があると
考えられる。
現在ではシース材料の使用量はメタル通信ケーブルよ
異物混入レベル別再生 PE の摩擦特性
相手材
取扱いが非常に困難である。
再生工程に水洗などの積極的な異物除去工程を設置し
シース構造別再生 PE の摩擦特性
シース構造
防湿混和物が付着しているため,再生処理装置が汚染され
りも光通信ケーブルの方が格段に多く,環境負荷低減のた
めには,光通信ケーブルへの適用の可能性を追求していく
Virgin
#150
#200
#250
static
0.60
0.50
0.54
0.51
kinematic
0.46
0.44
0.42
0.40
static
0.25
0.26
0.28
0.29
kinematic
0.23
0.21
0.23
0.24
必要があると考えている。
参考文献
一方,異物混入レベルの影響は Table 4b に示すように,
金網の目開きが荒く異物の混入量が多いと考えられる再
生 P E において高くなる傾向にあることがわかった。特に
150 メッシュを使用している再生 PE の同一材料に対する
動摩擦係数は 0.46 であり,光通信ケーブルシース材料とし
ての要求特性を満足しない結果となった。
草川紀久.循環型社会対応リサイクリング技術. プラ
飯島林蔵.プラスチックリサイクルの最新動向.プラ
草川紀久.ここまで進んだ材料リサイクル技術.工業
大谷寛治.プラスチックリサイクル技術の展望.ECO
以上の結果より,摩擦特性に対しシース構造は影響しな
いが,異物の除去が不十分な場合に摩擦係数は増加傾向に
あることが確認できた。
本検討は数社の電線メーカーの外被の混合物から再生
されたPEについてだけの調査結果でしかなく,元来メタル
通信ケーブルシース材料は低い摩擦特性を特に付与した
材料ではない。しかし,摩擦特性に影響を及ぼさない配合
比率で再生 PE を使用していくことや二重シース構造の外
層にバージン材料を内層に再生 P E を使用していくことな
ど,光通信ケーブルシースへの適用の可能性を追求するこ
とは,環境負荷の低減にとって重要であると考えられる。
4.む す び
実フィールドから撤去されたメタル通信ケーブルの PE
外被の再生,再利用について検討した結果,以下の知見が
得られた。
PE,LAP,STAL シースのどのシース構造の外被から作
製された再生 PE も,シース材料としての基本特性,長期信
頼性およびケーブル特性を有しており,メタル通信ケーブ
− 43 −
スチックス.51(7)
,2000,p.17-23.
スチックス.51(10)
,2000,p.41-46.
材料.49(4)
,2001,p.17-22.
INDUSTRY.6(1)
,2000,p.24-34.
三 菱 電 線 工 業 時 報
第98号
梅尾信博(うめお のぶひろ)
技術本部 総合研究所 通信材料グループ
通信ケーブル用材料の研究に従事
葛下弘和(くずした ひろかず)
技術本部 総合研究所 通信材料グループ
通信ケーブル用材料の研究に従事
電子情報通信学会会員
森澤正明(もりさわ まさあき)
情報通信事業本部 通信技術部 技術課
通信ケーブル関連製品の市場および技術動向調査なら
びに需要先に対する技術折衝に従事
電子情報通信学会会員
山口俊一郎(やまぐち しゅんいちろう)
情報通信事業本部 通信技術部 技術課
通信ケーブル関連製品の市場および技術動向調査なら
びに需要先に対する技術折衝に従事
藤井英清(ふじい ひできよ)
情報通信事業本部 通信技術部 通信技術課
(現在,伊丹製作所 品質保証室)
通信ケーブルの開発・設計に従事
生方裕史(うぶかた ひろし)
情報通信事業本部 通信技術部
通信用ケーブル類の技術事項統括に従事
小池忠良(おいけ ただよし)
伊丹製作所 通信製造課
通信ケーブルの生産技術開発および品質改善に従事
山崎恵俊(やまざき しげとし)
伊丹製作所 品質保証室 検査グループ
(現在,伊丹製作所 通信製造課)
通信ケーブルの品質保証業務に従事
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2001年10月
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