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通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などのネットワーク基盤を実現する技術 目次 ■ TV電話サービス品質推定モデル −ITU標準G.1070として採択− ■ SIPトラヒック制御システム ■ R15対応心線対照技術 ■ 故障修理支援ツール ■ 広域ユビキタスネットワーク用ワイヤレスシステム技術 ■ 10G-EPON用SiGe BiCMOS光バースト受信器 通信ネットワーク技術 品質 評価 TV電話 マルチメディア TV電話サービス品質推定モデル −ITU標準G.1070として採択− NTTサービスインテグレーション基盤研究所 アクセス回線のブロードバンド化が進み、家庭でもTV電話や映像配信などの映像通信サービスを楽しめるようになってきました。 これに基づいてネットワーク 音声・映像といった視聴覚メディアを用いた通信サービスでは、ユーザが感じる品質(QoE*1)を評価し、 や端末の品質を設計・管理することが重要です。例えばIP電話サービスでは、品質設計パラメータからQoEを推定するモデル (E-modelと呼ばれ、 これによる評価値がR値)が国際標準化機関であるITU*2の勧告G.107として標準化されており、 日本国内でも IP電話の品質規定に広く用いられています。TV電話サービスに対しても同様の技術が必要とされます。NTT研究所では、 このような 「TV電話版E-model」の研究開発にいち早く取り組んできました。このNTT技術の有効性はITUによって認められ、正式に勧告 G.1070として採択されました。 本技術は、 ネットワークや端末/アプリケーションの品質設計パラメータからTV電話サービスのQoEを推定する計算モデルであり、 ①音声品質推定モデル、 ②映像品質推定モデル、 ③マルチメディア品質統合モデル、 から構成されます(下図)。 NTT研究所は、 膨大な 主観品質データベース(ユーザ体感品質を定量的に評価した結果)を蓄積しており、②映像品質推定モデルと③マルチメディア品質 統合モデルは、 これらデータベースに基づいて構築された信頼性の高い技術です。 現在の技術はTV電話サービスを対象としていますが、今後はIPTV*3の品質評価に適用領域を拡大し、NGN*4における映像通信 サービスの適切な品質設計・管理に反映させる予定です。 *1 *2 *3 *4 QoE: Quality of Experience ITU: International Telecommunication Union IPTV: Internet Protocol Television NGN: Next Generation Network テレビ電話サービスの品質評価モデルの概念 ITU-T*勧告G.1070で規定された テレビ電話サービス品質評価モデル 音声品質パラメータ ● 符号化方式、 符号化ビットレート ● パケッ ト損失率 ①音声品質推定モデル (E-model) ● 遅延時間 ● 音量、 エコー量 など ③マルチメディア 品質統合モデル (NTT提案技術) 映像品質パラメータ 総合品質 推定値 ● 符号化方式、 符号化ビットレート ● パケッ ト損失率 ● 遅延時間 ②映像品質推定モデル (NTT提案技術) ● 画像解像度、 画面サイズ など * ITU-T: International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector H-NW-1 copyright©2007NTT 通信ネットワーク技術 IP電話 SIPサーバ ワンギリ DoS攻撃 SIPトラヒック制御システム NTTネットワークサービスシステム研究所 電話網のIP化が進み、SIP*1を用いたIP電話へと移行が進んでいます。これに伴い、今までの電話網で起こっていたワンギリや 電話番号スキャンのほかに、新たにインターネットで起こっているDoS*2攻撃などの脅威への対応が要求されています。このような 要求に対して、NTT研究所ではリコンフィギャラブルプロセッサという次世代のプロセッサを使用し、SIPサーバを防御するSIPトラ ヒック制御システムを開発しました。 SIPトラヒック制御システムは、 リアルタイムでSIPサーバあての異常トラヒックを分析し、SIPパケットの種類、発信電話番号、着信 電話番号のそれぞれのトラヒック量を制御するシステムです。異常トラヒック分析の機能は、発信電話番号ごと、着信電話番号ごとに トラヒック量の多い順に表示することが可能なため、異常トラヒックの分析が容易に行えます。また、 トラヒック制御の機能は、異常時に 警察・消防などへの電話をつながりやすくする機能などを実現しています。本システムを用いることにより、 ワンギリ業者やウイルス に感染したPCからの大量トラヒックの検出や規制、停電復旧後のIP電話の一斉電話登録によるSIPサーバの輻輳制御などが可能と なります。本システムは、1Gbit/sの高速処理により、複数のSIPサーバを同時に防御することができ、 さらにはサービスを中断する ことなく、動作中に新しい攻撃に対応する機能を追加することが可能となっています。 今後、 IP電話に対する攻撃が予想されるため、 本システムの適用時期、 ひかり電話やNGN*3への適用方法も含め、 継続的に研究開発 を推進していきます。また、SIPサーバばかりではなく、 さまざまなサーバ防御への適用を検討していく予定です。 *1 SIP: Session Initiation Protocol *2 DoS: Denial of Service *3 NGN: Next Generation Network SIPトラヒック制御システムの適用例 悪い電話は シャットアウト ! ! 混んでいる時は 少しだけ規制 SIPサーバ ワンギリ業者など 混んでいても つながります ウイルス感染 チケット予約など H-NW-2 copyright©2007NTT 通信ネットワーク技術 FTTH 光設備の保守・運用 IDテスタ R15対応心線対照技術 NTTアクセスサービスシステム研究所 現在、開通、切り替えなどの施工を効率的に行うために、取り扱いが容易な曲げに強い「R15」心線の導入が、アクセス線路、特に 架空線路やお客さま宅近傍の引き込み・宅内区間で進んでいます。この「R15」心線は、従来から用いられている光心線と比較して、 曲げを加えても光信号が心線外部へ漏えいしにくく、 施工時における損失変動が小さいことが特徴です。しかし「R15」心線は、 通信光 同様、試験光も漏えいしにくいことから、施工時に行う心線対照作業*1が困難になるという課題も有しており、 「R15」心線にかかわる 施工を確実に行うためにも、 「R15」に対応した心線対照技術の実現が求められていました。 これに対応するため、従来の心線対照器(IDテスタ*2)の曲げヘッド部に透過型素材を用いた新たな心線対照技術を開発しました。 曲げヘッド部に透過型素材を用いることで、検知できる漏えい光量を増加させ、微弱な漏えい光でも対照を可能としています。今回 開発した曲げヘッド部を既存の心線対照器に装着することで、簡易かつ確実に「R15」心線の対照が可能です。また、曲げヘッド部の 形状を従来のものから変更することなく、漏えい光量を増加させていることから、既存の光心線を対照しても、従来のものと同等の 低損失での心線対照が可能であり、心線種別にかかわらず本開発品が利用できます。 今後も多様な現場のニーズに対応できるよう、光アクセス線路の開発状況を踏まえた心線対照技術の開発に取り組んでいきます。 *1 心線対照作業: 光線路の建設保守作業時において「作業対象の心線」を確実に特定するための技術 *2 IDテスタ: IDentificationテスタの略で、心線対照作業を行うツール R15対応心線対照技術 通信光 試験光 光ファイバ IDテスタ 心線対照作業 試験光 試験光 光ファイバ 漏えい光 光ファイバ 漏えい光 受光素子 受光素子 曲げ部(現行品) 曲げ部(開発品:透過型) 光ファイバに与える曲げ形状 H-NW-3 copyright©2007NTT 通信ネットワーク技術 FTTH Bフレッツ故障修理 故障修理支援ツール NTTアクセスサービスシステム研究所 Bフレッツをはじめとした光アクセスサービスの加入者数が著しい増加を見せる中、さらなる開通工事の即応化に加え、大量に 構築された光設備をいかに効率よく保守・運用していくかが重要な課題です。光設備の大量構築による故障対応稼動の増加が、保守・ 運用の課題の一つとして考えられています。光アクセス線路故障の多くは、所外スプリッタからお客さま宅までの引き込み区間で 発生しています。PON*方式では、 所外スプリッタで8分岐接続になっているため、 所内からの媒体試験だけでは故障位置判定が困難で、 切り分けに時間を要しているのが現状です。このため、故障位置特定、切り分けが簡易で、現場への配備率向上も期待できる経済的な ツールの開発が求められてきました。 これらの課題に対応するため、 お客さま宅側から試験を行う小型の媒体試験ツールを新たに開発しました。故障発生が多いお客さま 宅から所外スプリッタ区間に、 試験範囲を限定することで、 ツールの必要機能を精査でき、 大幅な操作性向上と小型化、 および経済化を 実現しています。また、パルス波形とは別に故障点までの距離を表示させることにより、故障探索のスキルレス化を実現しています。 本開発品により、今後の大量光設備時代に向けた光アクセス線路の故障対応の効率化がなされていくものと期待されています。 今後も、 さらなる故障修理対応の効率化に向けた技術開発に取り組んでいきます。 * PON: Passive Optical Network Bフレッツは、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社の登録商標です。 故障修理支援ツール 試験波形 結果表示 故障修理支援ツール 測定イメージ 故障地点 所内光スプリッタ *1 ONU: Optical Network Unit 所内光スプリッタ GE-OLT*3 ONU*1 故障修理支援ツールを ONUと置き換えて測定 IDM*2 測定区間 *2 IDM: Integrated Distribution Modules H-NW-4 *3 GE-OLT: Gigabit Ethernet-Optical Line Terminal copyright©2007NTT 通信ネットワーク技術 広域ユビキタスネットワーク ワイヤレスシステム 広域ユビキタスネットワーク用ワイヤレスシステム技術 NTT未来ねっと研究所 公共空間、一般家庭、工場、森林や海洋などからもたらされるさまざまなセンシング情報を、センサを用いて収集・応用する、 あるいはアクチュエータ*1を駆動して制御・管理することで、安心・安全でより便利な社会を実現するため、NTT研究所では、超小型 無線端末を用いた広域ユビキタスネットワークの研究開発を進めてきました。一般に、センサやアクチュエータの取り扱うデータ量 は小さく、またバッテリー駆動での長寿命化が求められることから、本研究では無線区間におけるデータ伝送速度を低速な 9,600bit/s程度とし、 また距離減衰が小さく、回折による電波の回りこみが期待できるVHF*2帯やUHF*3帯の周波数を利用して、 数kmのセル半径とすることにより、無線端末の小型化・低消費電力化とネットワークの広域化・経済化を実現する各種技術開発を フィールド実験と併せて進めてきました。 具体的には、広域ユビキタスネットワークへのサービス要求条件から無線区間におけるシステム要求条件を整理し、センサや アクチュエータなどのユーザ端末とのインタフェース仕様、広域ユビキタスネットワーク装置とのインタフェース仕様、および無線 インタフェース仕様をまとめました。特に、無線インタフェース仕様では、基地局と無線端末間の機能分担を整理し、適用するセル 構成、ダイバーシチ* 4、誤り制御、および変復調技術などのワイヤレスシステム技術に関する計算機シミュレーション結果を基に、 システム諸元をまとめました。さらに、基地局間同期技術の実現性、およびサイトダイバーシチ効果を確認するとともに、大多数の 無線端末との通信を実現する無線メディアアクセス制御技術の基本特性を確認しました。 今後は、基地局間同期技術、無線メディアアクセス制御技術の妥当性を室内実験、 フィールド実験で検証するとともに、商用化に 向けたワイヤレスシステム技術の研究開発に取り組んでいきます。 *1 アクチュエータ: 入力されたエネルギーを物理運動量に変換するものであり、機械・電気回路の構成要素です。電気モータが最も代表的な アクチュエータであり、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換を行っています。 *2 VHF: Very High Frequency *3 UHF: Ultra High Frequency *4 ダイバーシチ: フェージングなどの無線特有の現象に起因する受信信号レベルの変動を補償して、通信品質を向上させる技術。ダイバーシチ には、複数の受信アンテナを用いて信号を受信し、受信レベルの高いアンテナを選択する方法や、受信信号を合成する方法などがあります。 広域ユビキタスネットワークのシステムイメージ IPネットワーク データ ベース 固定CO2センサ 沿道遮蔽度 緑地化度 経路選択 個別環境負荷評価 CO2排出量 交通量把握 在庫・待ち客情報 運転情報・警告 : 広域ユビキタスネットワーク用無線端末 位置確認 移動CO2センサ H-NW-5 copyright©2007NTT 通信ネットワーク技術 PON 10G 光バースト受信器 光受信器 10G-EPON用SiGe BiCMOS光バースト受信器 NTTアクセスサービスシステム研究所、NTTマイクロシステムインテグレーション研究所、NTTフォトニクス研究所 近年、 インターネットトラフィックは爆発的な増大を続けており、高速かつ安価な光アクセス回線へのニーズは日に日に高まって います。また、総帯域1ギガビットのGE-PON*1システムが商用サービスとして導入され、FTTH加入者数は急激に増大しています。 GE-PONシステムは、1心の光ファイバを複数の加入者間で共有することができるため、安価なネットワークを実現できる優れた システムです。さらなる高速化を目指して、 総帯域10ギガビットを実現する10G-EPONの標準化がすでに開始されています(IEEE*2 802.3av)。10倍の高速化を成し遂げるためには、強度やタイミングの異なる信号を瞬時に増幅して識別再生を行う光バースト受信 技術の高速化が最大の課題の一つでした。NTTでは、世界に先駆けて10G-EPON用光バースト受信器の開発に成功しました。 受信器で用いるTIA*3、 LA*4、 CDR*5の各ICは、 低コスト化が可能な0.25μm SiGe*6 BiCMOS*7プロセスを用いて作製しました。 図は異なる強度の光信号を受信した時の受信器の入出力波形を示しています。開発した受信器は、強度やタイミングの異なる信号を 受信しても、一定振幅のデジタル信号として再生することができます。最小受光レベル-18dBm、 ダイナミックレンジ16.5dB以上を 実現しました。伝送効率を下げる要因となるガードタイム(無信号期間)とプリアンブル時間(受信器の応答時間)は、それぞれ 100nsと75nsであり、GE-PONでの1024ns、800nsと比べて、大幅な時間短縮に成功しました。 今後は、 受信用ICの応答時間のさらなる短縮化、 高機能化、 小型経済化を推進するとともに、 送信用ICの開発を進めていく予定です。 *1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 GE-PON: Gigabit Ethernet-Passive Optical Network IEEE: The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc. TIA: TransImpedance Amplifier LA: Limiting Amplifier CDR: Clock and Data Recovery SiGe: Silicon Germanium BiCMOS: Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor PONシステムと、異なる強度の光バースト信号入力に対する瞬時応答性 お客さま NTT局舎 1 下り: 連続信号 1 2 …… n 2 WDM*1フィルタ 送信系 PIN-PD*2 カプラ n TIA n …… 2 1 LA CDR バースト受信器 上り: バースト信号 ペイロード プリアンブル ガードタイム ペイロード 100mV/div. −1.5dBm −18.0dBm 50ns/div. 100mV/div. −1.5dBm入力時 光入力波形 −18.0dBm入力時 20ps/div. 受信器の出力波形 *1 WDM: Wavelength Division Multiplexing *2 PIN-PD: Positive Intrinsic Negative-Photodiode H-NW-6 copyright©2007NTT