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1 「10年後の到達点」 広島学習センター 石川 由美子 放送大学での受講

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1 「10年後の到達点」 広島学習センター 石川 由美子 放送大学での受講
「10年後の到達点」
広島学習センター
石川
由美子
放送大学での受講を決めたのは二人目を妊娠し、仕事を中断せざるを得なかったからだ。
出産までの半年間、何もせずに時間だけが過ぎる毎日ではもったいない。今後の自分にと
って役立つ何かをしたかった。
ただし、制約がある。上の子は幼稚園に通っている。夫は転勤族でいつどこに異動にな
るか分からない。時間と場所がネックとなる中で、放送大学の学びの環境は私にとって最
善で最高のものであった。
案の定、三年間の受講期間中、学習センターは神戸から広島へ代わった。引越しと試験
が近く再試験に回し、出産のため半期の休学もした。それでも少しずつ単位を積み重ねな
がら続けてこられた。
だが、二人目が産まれてさらに時間を作るのが厳しくなった。どうしたら効率よく勉強
できるだろうか、と考えてたどりついたのが今の生活スタイルである。
二人の子どもとも早寝早起きだった。午前中は下の子に合わせて外で一緒に遊ぶ時間に
当てたかった。午後は夕飯の準備、上の子のお迎えと時間がない。それならば、子どもと
同じ時間に就寝、朝の三時ごろに私だけ起床し、洗濯などの家事をしてしまう。そうする
ことで一日の流れがスムーズになった。この早朝の家事の時間が、私の勉強時間とも重な
ることになる。録音・録画しておいた放送教材を聴きながら、家事をするのである。
誰にも邪魔されず聴くことができる。気になった点は繰り返し、メモしながら進めてい
る。時間に余裕がある時よりも集中力が増し効率がいい。一日の中で最も有意義な密度の
濃い時間である。
受講科目については「今後の仕事に役立つもの」と決めていた。小学校の特別支援教育
支援員を経験していたため、知識を理論的に整理しようと、大学院の『障害児・障害者心
理学特論』から始めた。そこから心理学に興味を持ち、学校臨床・家族臨床・発達心理学
と受講を続けた。
勉強を続けていく中で、家族との関係性、人の一生を学ぶ中でのこれからの自分の人生
について、二人のこどもの成長について、理論としての知識をもとに考えるようになった。
そんな中、二人目のこどものことで気がかりな点がおこった。一才ぐらいまでは順調に
育っていたように感じていたが、歩行開始が一才六ヶ月過ぎと遅かったのである。小児科
医を何件も回った。
「念のため療育センターで診てもらった方がいい」と紹介状をもらった。
そこから不安の日々が始まった。「療育?」「障害?」自分は今、この分野の勉強をして
いるのだ。それなのに自分の子どものこととなると全く別のことのように感じた。
「専門性をもって人の役に立つ仕事したい」と思い勉強を続けてきた。早期療育の重要
性、障害の内容は分かっている。でも、今、自分の目の前のこの子がこれからどんな発達
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過程をたどるのか、私には分からない。
専門書を読み、色々な可能性を考えた。素人の意見ではなく、専門家のことばが欲しかっ
た。
結局、療育センターでは三ヶ月ごとの経過観察となり、近々、発達検査を受けることに
なっている。
私が勉強していることって何なのか。私がやりたかったことって何なのか。これをきっ
かけに改めて考えた。
現在の乳幼児健診では、一才六ヶ月・三才児健診が重要視され、発達障害の早期発見に
力を入れているようだ。ただ、そこで「気になる子」として引っかかった子どものケア、
母親へのケアはどうなっているだろうか。
日々の子育てを背負っている母親にとって、どうしたらいいのか分からない、辛い毎日
である。
私は、子どもの発達を専門にしている大学の先生に相談に行った。子どもの様子を見て
もらい、私の話を一時間にわたり聞いてもらった。どれだけ心が楽になっただろうか。子
どもの悩みはひとりで抱えていては絶対にいけない。心を許せる人にじっくりと聞いても
らえるだけで、前に進むことができるのである。
私はそんな心の専門家になりたいと思う。
まだまだ子育てに時間を取られるが、できる限り勉強を進め、まずは「認定心理士」の資
格を取りたい。その後、
「臨床心理士」の資格を取得して、子どもの成長や発達に悩みを抱
える「お母さん」を支えられる専門家になりたいと思う。
10年後。私はどこまで到達できているだろうか。放送大学を軸にして、家族とともに
歩み、成長していきたいと思う。
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